説明

導電膜、タッチパネル及び太陽電池

【課題】長波長領域まで高透過率であり、かつ高導電性を有し、耐光性及び耐マイグレーション性が向上した導電膜、並びにタッチパネル、及び太陽電池の提供。
【解決手段】導電性繊維を含有する導電膜であって、前記導電膜中の前記導電性繊維を構成する元素の含有量Aと、前記導電膜中のハロゲン元素の含有量Xとの原子比(X/A)が、次式、0.01<X/A<0.9を満たす導電膜である。0.1≦X/A<0.9を満たす態様、0.4≦X/A<0.9を満たす態様、前記導電膜中のハロゲン元素の含有量が400,000質量ppm以下である態様などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜、並びに該導電膜を用いたタッチパネル及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯ゲーム機、携帯電話等にタッチパネルの需要が急速に拡大している。このタッチパネルには、透明導電材料としてITO(酸化インジウムスズ)が広く利用されており、銀ナノワイヤーを用いた透明導電膜の開発も報告されている。銀ナノワイヤーは、有機溶剤を用いた高温中での合成が一般的であり、また、合成された銀ナノワイヤーの太さに起因して、ヘイズが高く、コントラストの低下が著しいこと、最表層に光硬化樹脂等のコーティングを施さないと実用的な耐久性が得られないこと、及び最表層へのコーティングにより抵抗が上がり、面内抵抗の均一性が低下してしまうという課題がある。
【0003】
前記課題を解決するため、例えば金属ナノワイヤーに金属微粒子を混合し、該金属微粒子に外部エネルギーを印加することにより溶解し、金属ナノワイヤー同士の接触を向上させ、低抵抗化を図ることが提案されている(特許文献1参照)。
しかし、この提案では、製造工程において微粒子と金属ナノワイヤーを共に安定分散させることが困難であり、金属ナノワイヤーとは別に、金属微粒子を合成する工程、洗浄工程、濃縮工程などが必要である。また、金属ナノワイヤーの直径が比較的細い領域では、該金属ナノワイヤー自体が光により溶解してしまい、電気的に断線して抵抗が上昇してしまうという新たな課題が見出され、特に、屋外用途においては、耐光性が高いレベルで要求されるため、抜本的な対策が必要である。
【0004】
一方、低コストで環境負荷の少ないプロセスとして、ナノ粒子を含むインクを印刷、インクジェット等の手法で塗設し、配線を形成する技術の開発が試みられている。例えば、銅微粒子と該銅微粒子の表面の少なくとも一部を被覆している銅とからなる銀被覆銅微粒子中のハロゲン元素の含有量が銅に対して20質量ppm以下である銀被覆銅微粒子が提案されている(特許文献2参照)。この提案には、金属粒子に対するハロゲン元素の含有量を低減することで、マイグレーション及び電子材料の腐食などを抑制する効果があることが開示されている。
しかし、この提案は、金属ナノワイヤーを用いるものではなく、導電膜中のハロゲン元素の含有量を低く抑えることにより、耐光性が向上することについては何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−94033号公報
【特許文献2】特開2010−77495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、長波長領域まで高透過率であり、かつ高導電性を有し、耐光性及び耐マイグレーション性が向上した導電膜、並びに該導電膜を用いたタッチパネル及び太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明者が鋭意検討を重ねた結果、導電性繊維として金属ナノワイヤーを含む導電膜中のハロゲン元素の含有量を調整して低く抑えることにより、前記導電性繊維として水系合成による細径金属ナノワイヤーを用いた場合でも、長波長領域まで高透過率であり、かつ高導電性を有し、耐光性及び耐マイグレーション性が向上することを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 導電性繊維を含有する導電膜であって、
前記導電膜中の前記導電性繊維を構成する元素の含有量Aと、前記導電膜中のハロゲン元素の含有量Xとの原子比(X/A)が、次式、0.01<X/A<0.9を満たすことを特徴とする導電膜である。
<2> 0.1≦X/A<0.9を満たす前記<1>に記載の導電膜である。
<3> 0.4≦X/A<0.9を満たす前記<1>から<2>のいずれかに記載の導電膜である。
<4> 導電膜中のハロゲン元素の含有量が400,000質量ppm以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の導電膜である。
<5> 導電膜中のハロゲン元素の含有量が4,000質量ppm〜300,000質量ppmである前記<4>に記載の導電膜である。
<6> 表面抵抗が500Ω/□以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の導電膜である。
<7> 導電性繊維が、金属ナノワイヤーである前記<1>から<6>のいずれかに記載の導電膜である。
<8> 金属ナノワイヤーが、銀、及び銀と銀以外の金属との合金のいずれかからなる前記<7>に記載の導電膜である。
<9> 導電性繊維の平均短軸長さが50nm以下であり、かつ平均長軸長さが1μm以上である前記<1>から<8>のいずれかに記載の導電膜である。
<10> 導電性繊維の含有量が、0.005g/m〜0.5g/mである前記<1>から<9>のいずれかに記載の導電膜である。
<11> 更にポリマーを含有し、導電性繊維の含有量(A)と、前記ポリマーの含有量(B)との質量比(A/B)が、0.2〜3である前記<1>から<10>のいずれかに記載の導電膜である。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の導電膜を用いたタッチパネルである。
<13> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の導電膜を用いた太陽電池である。
<14> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の導電膜を支持体上に有してなることを特徴とする導電体である。
<15> 支持体上に、導電性繊維及びポリマーを含有する導電層組成物からなる導電層を形成する導電層形成工程と、
前記導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液をパターン状に付与する溶解液付与工程と、を少なくとも含むことを特徴とする導電体の製造方法である。
<16> パターン状に付与された部分が非導電部となる前記<15>に記載の導電体の製造方法である。
<17> 導電層における導電性繊維の含有量(A)と、導電層におけるポリマーの含有量(B)との質量比(A/B)が、0.2〜3である前記<15>から<16>のいずれかに記載の導電体の製造方法である。
<18> 溶解液の粘度が、25℃で、5mPa・s〜300,000mPa・sである前記<15>から<17>のいずれかに記載の導電体の製造方法である。
<19> 溶解液のパターン状の付与をスクリーン印刷で行う前記<15>から<18>のいずれかに記載の導電体の製造方法である。
<20> 溶解液のパターン状の付与をインクジェット印刷で行う前記<15>から<18>のいずれかに記載の導電体の製造方法である。
<21> 溶解液のパターン状の付与を溶解槽内に浸漬することで行う前記<15>から<18>のいずれかに記載の導電体の製造方法である。
<22> 溶解液が、導電性繊維を酸化する作用を有する前記<15>から<21>のいずれかに記載の導電体の製造方法である。
<23> 支持体上に導電性繊維及びポリマーを含有する導電層組成物からなる導電層を形成する導電層形成工程と、パターン状露光工程と、現像工程とを少なくとも含むことを特徴とする導電体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、長波長領域まで高透過率であり、かつ高導電性を有し、耐光性及び耐マイグレーション性が向上した導電膜、並びに該導電膜を用いたタッチパネル及び太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、タッチパネルの一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、タッチパネルの他の一例を示す概略説明図である。
【図3】図3は、図2に示すタッチパネルにおける導電体の配置例を示す概略平面図である。
【図4】図4は、タッチパネルの更に他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(導電膜)
本発明の導電膜は、導電性繊維を含有し、ポリマーを含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0012】
前記導電膜の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられ、また、その平面形状としては、四角形、円形などが挙げられ、前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられ、前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記導電膜は、可撓性を有し、透明が好ましく、前記透明には、無色透明のほか、有色透明、半透明、有色半透明などが含まれる。
【0013】
前記導電膜は、パターニングされていてもパターニングされていなくてもよいが、パターニングされている場合には、後述する導電体の製造方法で詳細に説明するように、導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液を、前記導電膜にパターン状に付与し、該付与された部分が非導電部を形成し、付与されていない部分が導電部を形成して、導電性の有無により二次元の平面状パターンが形成されていることが好ましい。また、感光性樹脂と導電性繊維を混合して、フォトリソグラフィによりパターンを形成することも好ましい。
【0014】
本発明においては、前記導電膜中の前記導電性繊維を構成する元素の含有量Aと、前記導電膜中のハロゲン元素の含有量Xとの原子比(X/A)は、次式、0.01<X/A<0.9を満たす。上限値は、0.89以下がより好ましく、0.85以下が更に好ましく、0.65以下がより更に好ましい。一方、下限値は、0.1以上がより好ましい。また好ましい範囲としては、0.1≦X/A<0.9(より厳密には、0.10≦X/A<0.90)が好ましく、0.4≦X/A<0.9(より厳密には、0.40≦X/A<0.90)がより好ましく、0.40≦X/A≦0.85が更に好ましい。
前記原子比(X/A)が、0.9以上であると、耐光性及び耐マイグレーション性が低下してしまうことがあり、0.01以下であると、プロセスに長時間を要する場合がある。例えば、前記導電性繊維が銀ナノワイヤーであり、ハロゲン元素が塩素、臭素、フッ素、又はヨウ素の場合には、導電膜中の銀の含有量Aと、導電膜中の塩素、臭素、フッ素、及びヨウ素の含有量Xとの原子比(X/A)を求める。
前記原子比(X/A)は、例えば、蛍光X線分析装置(XRF)、イオンクロマトグラフィーなどで測定することにより求めることができる。
【0015】
前記導電膜中のハロゲン元素の含有量は、400,000質量ppm以下が好ましく、300,000質量ppm以下がより好ましく、270,000質量ppm以下が更に好ましい。下限値は、4,000質量ppm以上が好ましく、10,000質量ppm以上がより好ましく、30,000質量ppm以上が更に好ましい。好ましい範囲としては、4,000質量ppm〜300,000質量ppmがより好ましく、10,000質量ppm〜270,000質量ppmが更に好ましい。前記含有量が、400,000質量ppmを超えると、耐光性及び耐マイグレーション性が低下してしまうことがある。また、超音波洗浄などにより導電膜中のハロゲン元素の含有量を少なくすることが可能であるが、この場合には導電性繊維が劣化して導電膜の表面抵抗が上昇してしまい、導電性が低下してしまうことがある。
ここで、前記導電膜中のハロゲン元素の含有量は、例えば、蛍光X線分析装置(XRF)、イオンクロマトグラフィーなどにより測定することができる。
前記ハロゲン元素としては、例えば、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素などの導電性繊維の製造に由来する元素が挙げられる。これらの中でも、製造工程中、様々な薬品中に不純物として含まれる可能性の高い、塩素、臭素、ヨウ素の含有量を制御することが特に好ましい。
【0016】
前記導電膜中のハロゲン元素の含有量を調整する方法としては、例えば、(1)導電層形成用塗布液を限外濾過する方法、(2)導電層形成用塗布液に純水等の溶媒を添加して遠心分離後、上澄みを除去する洗浄を繰り返して行う方法、(3)導電膜形成後に該導電膜を洗浄(例えば、純水等の洗浄溶媒中に浸漬)する方法、などが挙げられる。これらの中でも、前記(3)の導電膜を洗浄する方法が特に好ましい。
【0017】
前記(1)の限外濾過は、限外濾過膜を用いて導電層形成用塗布液を限外濾過し、該限外濾過した導電層形成用塗布液を用いて導電膜を形成するものである。前記限外濾過膜としては、分画分子量は5,000〜200,000が好ましい。前記限外濾過は、デッドエンド方式でもクロスフロー方式でもよいが、クロスフロー方式で行うことが好ましい。
【0018】
前記(2)の導電層形成用塗布液に純水等の溶媒を添加して遠心分離後、上澄みを除去する洗浄を繰り返して行う方法としては、導電層形成用塗布液に純水等の溶媒を添加して遠心分離後、上澄みを除去する洗浄工程を1回以上行うことが好ましく、2回以上行うことがより好ましく、2〜5回行うことが更に好ましい。前記純水等の溶媒の添加量は、体積比で、導電層形成用塗布液1に対し10〜500が好ましい。
【0019】
前記(3)の導電膜を洗浄する方法では、洗浄溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が特に好ましい。前記水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の精製後の水、又は純水、超純水などが挙げられる。これらの中でも、純水が特に好ましい。
前記洗浄溶媒を用いて導電膜を浸漬処理する。また、前記浸漬と同じ効果を達成する方法として、前記洗浄溶媒を前記導電膜に対しスプレー、シャワー、リンスすることも好ましく、これらを組み合わせて行うことがより好ましい。
前記浸漬の条件としては、例えば、洗浄溶媒が純水の場合には、5℃〜40℃で1秒間〜30分間が好ましく、10℃〜30℃で3秒間〜3分間がより好ましい。
【0020】
<導電性繊維>
前記導電性繊維の構造としては、中実構造及び中空構造のいずれかが好ましい。
ここで、中実構造の繊維をワイヤーと呼ぶことがあり、中空構造の繊維をチューブと呼ぶことがある。
平均短軸長さが1nm〜1,000nmであって、平均長軸長さが1μm〜100μmの導電性繊維をナノワイヤーと呼ぶことがある。
また、平均短軸長さが1nm〜1,000nm、平均長軸長さが0.1μm〜1,000μmであって、中空構造を持つ導電性繊維をナノチューブと呼ぶことがある。
前記導電性繊維の材料としては、導電性を有していればよく、金属及びカーボンの少なくともいずれかが好ましく、これらの中でも、前記導電性繊維は、金属ナノワイヤー、金属ナノチューブ、及びカーボンナノチューブの少なくともいずれかが好ましい。
【0021】
<<金属ナノワイヤー>>
−金属−
前記金属ナノワイヤーの材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2族〜第14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましく、主成分として含むことが特に好ましい。
【0022】
前記金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、導電性に優れる点で、銀、及び銀との合金が好ましい。
前記銀との合金で使用する金属としては、白金、オスミウム、パラジウム、イリジウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
−形状−
前記金属ナノワイヤーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状、断面の多角形の角が丸まっている断面形状が好ましい。
前記金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べることができる。
【0024】
−平均短軸長さ及び平均長軸長さ−
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(「平均短軸径」、「平均直径」と称することがある)としては、50nm以下が好ましく、1nm〜50nmがより好ましく、10nm〜40nmが更に好ましく、15nm〜35nmが特に好ましい。
前記平均短軸長さが、1nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあり、50nmを超えると、金属ナノワイヤー起因の散乱が生じ、十分な透明性を得ることができないことがある。
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均短軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーの短軸が円形でない場合の短軸長さは、最も長いものを短軸長さとした。
【0025】
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(「平均長さ」と称することがある)としては、1μm以上が好ましく、1μm〜40μmがより好ましく、3μm〜35μmが更に好ましく、5μm〜30μmが特に好ましい。
前記平均長軸長さが、1μm未満であると、密なネットワークを形成することが難しく、十分な導電性を得ることができないことがあり、40μmを超えると、金属ナノワイヤーが長すぎて製造時に絡まり、製造過程で凝集物が生じてしまうことがある。
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均長軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーが曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値を長軸長さとした。
【0026】
−製造方法−
前記金属ナノワイヤーの製造方法としてはいかなる方法で製造してもよいが、以下のようにハロゲン化合物と分散添加剤とを溶解した溶媒中で加熱しながら金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。なお、ハロゲン化合物を用いる方法では、導電膜中にハロゲン元素が含まれるが、上述したようにハロゲン元素の含有量を調整することで、導電膜として好ましい特性が得られる。
また、金属ナノワイヤーの製造方法としては、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報などに記載の方法を用いることができる。
【0027】
前記溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、アセトンなどが挙げられる。
【0028】
前記加熱時の加熱温度としては、250℃以下が好ましく、20℃〜200℃がより好ましく、30℃〜180℃がより好ましく、40℃〜170℃が更に好ましい。
前記加熱温度が、20℃未満であると、前記加熱温度が低くなる程、核形成確率が下がり金属ナノワイヤーが長くなりすぎるので金属ナノワイヤーが絡みやすく、分散安定性が悪くなることがあり、250℃を超えると、金属ナノワイヤーの断面の角が急峻になり、塗布膜評価での透過率が低くなることがある。
必要に応じて、金属ナノワイヤーの形成過程で温度を変更してもよく、途中での温度変更により、金属ナノワイヤーの核形成の制御、再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果を向上させることができる。
【0029】
前記加熱の際には、還元剤を添加して行うことが好ましい。
前記還元剤としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アルカノールアミン、脂肪族アミン、ヘテロ環式アミン、芳香族アミン、アラルキルアミン、アルコール、有機酸類、還元糖類、糖アルコール類、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、エチレングリコール、グルタチオンなどが挙げられる。これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
前記水素化ホウ素金属塩としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムなどが挙げられる。
前記水素化アルミニウム塩としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウムなどが挙げられる。
前記アルカノールアミンとしては、例えば、ジエチルアミノエタノール、エタノールアミン、プロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノールなどが挙げられる。
前記脂肪族アミンとしては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピレンアミン、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミンなどが挙げられる。
前記ヘテロ環式アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリンなどが挙げられる。
前記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、N−メチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジンなどが挙げられる。
前記アラルキルアミンとしては、例えば、ベンジルアミン、キシレンジアミン、N−メチルベンジルアミンなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。
前記有機酸類としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸又はそれらの塩などが挙げられる。
前記還元糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオースなどが挙げられる。
前記糖アルコール類としては、例えば、ソルビトールなどが挙げられる。
【0030】
前記還元剤によっては、機能として分散添加剤、溶媒としても働く場合があり、同様に好ましく用いることができる。
【0031】
前記金属ナノワイヤー製造の際には、分散添加剤と、ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子とを添加して行うことが好ましい。
前記分散添加剤と、ハロゲン化合物との添加のタイミングとしては、還元剤の添加前でも添加後でもよく、金属イオンあるいはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよいが、単分散性のよりよい金属ナノワイヤーを得るためには、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
【0032】
前記分散添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、合成高分子、これらに由来するゲルなどが挙げられる。これらの中でも、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体が好ましい。
前記分散添加剤として使用可能な構造については、例えば、「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
また、使用する分散添加剤の種類によって、得られる金属ナノワイヤーの形状を変化させることもできる。
【0033】
前記ハロゲン化合物としては、臭素、塩素、ヨウ素を含有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリハライド、下記の分散添加剤と併用できる化合物が好ましい。
前記ハロゲン化合物によっては、分散添加剤として機能するものがありうるが、同様に好ましく用いることができる。
【0034】
前記ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよいし、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を共に使用してもよい。
【0035】
前記分散添加剤と、ハロゲン化合物又はハロゲン化銀微粒子とは、同一物質で併用してもよい。前記分散添加剤と、ハロゲン化合物とを併用した化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含むHTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)、アミノ基と塩化物イオンを含むHTAC(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド)などが挙げられる。
【0036】
前記脱塩処理は、金属ナノワイヤーを形成した後、限外濾過、透析、ゲル濾過、デカンテーション、遠心分離などの手法により行うことができる。
【0037】
<<金属ナノチューブ>>
−金属−
前記金属ナノチューブの材料としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、例えば、前記した金属ナノワイヤーの材料などを使用することができる。
【0038】
−形状−
前記金属ナノチューブの形状としては、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層が好ましい。
【0039】
−平均短軸長さ、平均長軸長さ、厚み−
前記金属ナノチューブの厚み(外径と内径との差)としては、3nm〜80nmが好ましく、3nm〜30nmがより好ましい。
前記厚みが、3nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあり、80nmを超えると、金属ナノチューブ起因の散乱が生じることがある。
前記金属ナノチューブの平均長軸長さは、1μm〜40μmが好ましく、3μm〜35μmがより好ましく、5μm〜30μmが更に好ましい。
【0040】
−製造方法−
前記金属ナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよく、例えば、米国出願公開2005/0056118号明細書等に記載の公知の方法などを用いることができる。
【0041】
<<カーボンナノチューブ>>
前記カーボンナノチューブ(CNT)は、グラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が、単層あるいは多層の同軸管状になった物質である。単層のカーボンナノチューブはシングルウォールナノチューブ(SWNT)、多層のカーボンナノチューブはマルチウォールナノチューブ(MWNT)と呼ばれ、特に、2層のカーボンナノチューブはダブルウォールナノチューブ(DWNT)とも呼ばれる。本発明で用いられる導電性繊維において、前記カーボンナノチューブは、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層が好ましい。
【0042】
−製造方法−
前記カーボンナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよく、例えば、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱CVD法、プラズマCVD法、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等の公知の手段を用いることができる。
また、これらの方法で得られたカーボンナノチューブは、洗浄、遠心分離、濾過、酸化、クロマトグラフ等の方法により、副生成物、触媒金属等の残留物を除去することが、高純度化されたカーボンナノチューブを得ることができる点で好ましい。
【0043】
<<アスペクト比>>
前記導電性繊維のアスペクト比としては、10以上が好ましい。前記アスペクト比とは、一般的には繊維状の物質の長辺と短辺との比(平均長軸長さ/平均短軸長さ)を意味する。
前記アスペクト比の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子顕微鏡等により測定する方法などが挙げられる。
前記導電性繊維のアスペクト比を電子顕微鏡で測定する場合、前記導電性繊維のアスペクト比が10以上であるか否かは、電子顕微鏡の1視野で確認できればよい。また、前記導電性繊維の長軸長さと短軸長さとを各々別に測定することによって、前記導電性繊維全体のアスペクト比を見積もることができる。
なお、前記導電性繊維がチューブ状の場合には、前記アスペクト比を算出するための直径としては、該チューブの外径を用いる。
【0044】
前記導電性繊維のアスペクト比としては、10以上であればよく、50〜1,000,000が好ましく、100〜1,000,000がより好ましい。
前記アスペクト比が、10未満であると、前記導電性繊維によるネットワーク形成がなされず導電性が十分取れないことがあり、1,000,000を超えると、導電性繊維の形成時、その後の取り扱いにおいて、成膜前に導電性繊維が絡まり凝集するため、安定な液が得られないことがある。
【0045】
<<アスペクト比が10以上の導電性繊維の比率>>
前記アスペクト比が10以上の導電性繊維の比率としては、全導電性組成物中に体積比で、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。これらの導電性繊維の割合を、以下、「導電性繊維の比率」と呼ぶことがある。
前記導電性繊維の比率が、50%未満であると、導電性に寄与する導電性物質が減少し導電性が低下してしまうことがあり、同時に密なネットワークを形成できないために電圧集中が生じ、耐久性が低下してしまうことがある。また、導電性繊維以外の形状の粒子は、導電性に大きく寄与しない上に吸収を持つため好ましくない。特に金属の場合で、球形などのプラズモン吸収が強い場合には透明度が悪化してしまうことがある。
【0046】
ここで、前記導電性繊維の比率は、例えば、導電性繊維が銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー水分散液を濾過して、銀ナノワイヤーと、それ以外の粒子とを分離し、ICP発光分析装置を用いて濾紙に残っている銀の量と、濾紙を透過した銀の量とを各々測定することで、導電性繊維の比率を求めることができる。濾紙に残っている導電性繊維をTEMで観察し、300個の導電性繊維の短軸長さを観察し、その分布を調べることにより、短軸長さが200nm以下であり、かつ長軸長さが1μm以上である導電性繊維であることを確認する。なお、濾紙は、TEM像で短軸長さが200nm以下であり、かつ長軸長さが1μm以上である導電性繊維以外の粒子の最長軸を計測し、その最長軸の2倍以上であり、かつ導電性繊維の長軸の最短長以下の長さのものを用いることが好ましい。
【0047】
ここで、前記導電性繊維の平均短軸長さ及び平均長軸長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)又は光学顕微鏡を用い、TEM像又は光学顕微鏡像を観察することにより求めることができ、本発明においては、導電性繊維の平均短軸長さ及び平均長軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)により300個の導電性繊維を観察し、その平均値から求めたものである。
【0048】
<ポリマー>
前記ポリマーとしては、水溶性ポリマー、及び非水溶性ポリマーのいずれも好適に用いることができるが、これらの中でも、湿度耐久性の点で、非水溶性ポリマーが特に好ましい。
【0049】
<<水溶性ポリマー>>
前記水溶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、ガゼイン、寒天、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストラン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電性繊維の含有量(A)と前記水溶性ポリマーの含有量(B)との質量比(A/B)は、0.2〜3が好ましく、0.5〜2.5がより好ましい。
前記質量比(A/B)が、0.2未満であると、前記導電性繊維に対して前記ポリマーが多くなりすぎ、僅かな塗布量変動により抵抗が上がってしまう懸念があり、3を超えると、ポリマーが少ないため、膜強度が実用上十分にならない場合がある。
【0050】
<<非水溶性ポリマー>>
前記非水溶性ポリマーは、バインダーとしての機能を有しており、中性付近の水に実質的に溶解しないポリマーである。前記非水溶性ポリマーとは、本明細書においては、SP値(沖津法により算出)が、18MPa1/2〜30MPa1/2のポリマーを意味する。
【0051】
前記SP値としては、18MPa1/2〜30MPa1/2が好ましく、19MPa1/2〜28MPa1/2がより好ましく、19.5MPa1/2〜27MPa1/2が更に好ましい。
前記SP値が、18MPa1/2未満であると、付着した有機汚れを洗浄するのが困難になる場合があり、30MPa1/2を超えると、水との親和性が高くなり、塗布膜の含水率上昇に起因し、赤外線領域の吸収が高くなるためか、例えば太陽電池を作製したときに変換効率が減少してしまうことがある。
【0052】
ここで、前記SP値は、沖津法(沖津俊直著「日本接着学会誌」29(3)(1993))によって算出したものである。具体的には、SP値は以下の式で計算されるものである。なお、ΔFは文献記載の値である。
SP値(δ)=ΣΔF(Molar Attraction Constants)/V(モル容積)
複数の非水溶性ポリマーを用いた場合のSP値(σ)及びSP値の水素結合項(σh)は次の式により算出する。
【0053】
【数1】

ただし、σnは、非水溶性ポリマーと水のSP値又はSP値の水素結合項を、Mnは、混合液中における非水溶性ポリマーと水のモル分率を、Vnは、溶媒のモル体積を、nは、溶媒の種類を表す2以上の整数をそれぞれ表す。
【0054】
前記非水溶性ポリマーとしては、特に制限されないが、塗膜の基板への密着性、摺りなどに対する耐久性という点で、エチレン性不飽和基を有するポリマーが好ましい。これらの中でも、主鎖に連結する側鎖に、エチレン性不飽和結合の少なくとも1種を含むことが好ましい。前記エチレン性不飽和結合は、側鎖中に複数含まれていてもよい。また、前記エチレン性不飽和結合は、非水溶性ポリマーの側鎖中に、前記分岐及び/又は脂環構造、並びに/又は前記酸性基とともに含まれていてもよい。
【0055】
前記非水溶性ポリマーとしては、下記ポリマーラテックスの中から適宜使用することができる。
【0056】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、Nipol LX855、857x2(以上、日本ゼオン社製);Voncoat R3370(大日本インキ化学工業社製);ジュリマーET−410(日本純薬社製);AE116、AE119、AE121、AE125、AE134、AE137、AE140、AE173(以上、JSR社製);アロンA−104(東亞合成社製)など(いずれも商品名)が挙げられる。
【0057】
ポリエステル類としては、例えば、FINETEX ES650、611、675、850(以上、大日本インキ化学工業社製);WD−size、WMS(以上、イーストマンケミカル社製);A−110、A−115GE、A−120、A−121、A−124GP、A−124S、A−160P、A−210、A−215GE、A−510、A−513E、A−515GE、A−520、A−610、A−613、A−615GE、A−620、WAC−10、WAC−15、WAC−17XC、WAC−20、S−110、S−110EA、S−111SL、S−120、S−140、S−140A、S−250、S−252G、S−250S、S−320、S−680、DNS−63P、NS−122L、NS−122LX、NS−244LX、NS−140L、NS−141LX、NS−282LX(以上、高松油脂社製);アロンメルトPES−1000シリーズ、PES−2000シリーズ(以上、東亞合成社製);バイロナールMD−1100、MD−1200、MD−1220、MD−1245、MD−1250、MD−1335、MD−1400、MD−1480、MD−1500、MD−1930、MD−1985(以上、東洋紡社製);セポルジョンES(住友精化社製)など(いずれも商品名)が挙げられる。
【0058】
ポリウレタン類としては、例えば、HYDRAN AP10、AP20、AP30、AP40、101H、Vondic 1320NS、1610NS(以上、大日本インキ化学工業社製);D−1000、D−2000、D−6000、D−4000、D−9000(以上、大日精化社製);NS−155X、NS−310A、NS−310X、NS−311X(以上、高松油脂社製);エラストロン(第一工業製薬社製)など(いずれも商品名)が挙げられる。
【0059】
ゴム類としては、例えば、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上、大日本インキ化学工業社製)、Nipol LX416、LX410、LX430、LX435、LX110、LX415A、LX415M、LX438C、2507H、LX303A、LX407BPシリーズ、V1004、MH5055(以上、日本ゼオン社製)など(いずれも商品名)が挙げられる。
【0060】
ポリ塩化ビニル類としては、例えば、G351、G576(以上、日本ゼオン社製);ビニブラン 240、270、277、375、386、609、550、601、602、630、660、671、683、680、680S、681N、685R、277、380、381、410、430、432、860、863、865、867、900、900GT、938、950、SOLBIN C、SOLBIN CL、SOLBIN CH、SOLBIN CN、SOLBIN C5、SOLBIN M、SOLBIN MF、SOLBIN A、SOLBIN AL(以上、日信化学工業社製);エスレックA、エスレックC、エスレックM(以上、積水化学工業社製);デンカビニル1000GKT、デンカビニル1000L、デンカビニル1000CK、デンカビニル1000A、デンカビニル1000LK2、デンカビニル1000AS、デンカビニル1000GS、デンカビニル1000LT3、デンカビニル1000D、デンカビニル1000W(以上、電気化学工業社製)、など(いずれも商品名)が挙げられる。
【0061】
ポリ塩化ビニリデン類としては、例えば、L502、L513(以上、旭化成工業社製);D−5071(大日本インキ化学工業社製)など(いずれも商品名)が挙げられる。
【0062】
ポリオレフィン類としては、例えば、ケミパール S120、SA100、V300(以上、三井石油化学社製);Voncoat 2830、2210、2960(以上、大日本インキ化学工業社製)、ザイクセン、セポルジョンG(以上、住友精化社製)など(いずれも商品名)が挙げられる。
【0063】
共重合ナイロン類としては、例えば、セポルジョンPA(住友精化社製)など(いずれも商品名)が挙げられる。
【0064】
ポリ酢酸ビニル類としては、例えば、ビニブラン 1080、1082、1085W、1108W、1108S、1563M、1566、1570、1588C、A22J7−F2、1128C、1137、1138、A20J2、A23J1、A23J1、A23K1、A23P2E、A68J1N、1086A、1086、1086D、1108S、1187、1241LT、1580N、1083、1571、1572、1581、4465、4466、4468W、4468S、4470、4485LL、4495LL、1023、1042、1060、1060S、1080M、1084W、1084S、1096、1570K、1050、1050S、3290、1017AD、1002、1006、1008、1107L、1225、1245L、GV−6170、GV−6181、4468W、4468S(以上、日信化学工業社製)など(いずれも商品名)が挙げられる。
【0065】
更に、ポリマーラテックスとしては、例えば、ポリアクリル類、ポリ乳酸エステル類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリエステル類、ポリアセタール類、SBR類、ポリ塩化ビニル類などが挙げられる。これらのポリマーラテックスは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリアクリル類、ポリウレタン類、ポリ塩化ビニル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、SBR類が好ましく、ポリアクリル類、ポリウレタン類、ポリ塩化ビニル類、ポリエステル類、SBR類がより好ましく、ポリアクリル類が特に好ましい。
【0066】
前記エチレン性不飽和結合としては、非水溶性ポリマーの主鎖との間に少なくとも1つのエステル基(−COO−)を介して結合し、エチレン性不飽和結合とエステル基のみで非水溶性ポリマーの側鎖を構成していてもよい。また、非水溶性ポリマーの主鎖とエステル基との間、及び/又は、エステル基とエチレン性不飽和結合との間に、更に2価の有機連結基を有してもよく、エチレン性不飽和結合は「エチレン性不飽和結合を有する基」として非水溶性ポリマーの側鎖を構成していてもよい。
前記2価の有機連結基としては、例えば、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、(メタ)アクリレート類が好ましい。
【0067】
前記エチレン性不飽和結合としては、(メタ)アクリロイル基を導入して配されることが好ましい。
前記非水溶性ポリマーの側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、ヒドロキシル基を持つ繰り返し単位にイソシアネート基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、イソシアネート基を持つ繰り返し単位にヒドロキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法などが挙げられる。
これらの中でも、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法が最も製造が容易であり、低コストである点で好ましい。
【0068】
前記エチレン性不飽和結合及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、これらを有すれば特に制限はないが、例えば、下記構造式(1)で表される化合物及び下記構造式(2)で表される化合物が好ましい。
【0069】
【化1】

ただし、前記構造式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、有機基を表す。
【0070】
【化2】

ただし、前記構造式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、有機基を表す。Wは、4〜7員環の脂肪族炭化水素基を表す。
【0071】
前記構造式(1)及び構造式(2)で表される化合物の中でも、光硬化樹脂と組み合わせ、ネガ型、ポジ型のレジストとして使用した場合、良現像性、及び膜強度という点で、前記構造式(1)で表される化合物が好ましい。前記構造式(1)及び(2)においては、L及びLがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましい。
【0072】
前記構造式(1)及び構造式(2)で表される化合物としては、特に制限はないが、例えば、以下の化合物(1)〜(10)が挙げられる。
【化3】

【0073】
前記非水溶性ポリマーとしては、下記一般式(I)で表されるものが含まれる。
【化4】

【0074】
前記一般式(I)において、X、Y及びZは、各々独立して水素原子又はメチル基を表し、Xは、分枝構造又は脂環構造を有する有機基を表し、Zは、単結合又は二価の有機基を表し、Zは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、x、y及びzは、それらの合計を100モルとした場合における各繰り返し単位のモル比を表し、各々0より大きく100より少ない数値を表す。
前記xは10〜75、yは5〜70、及びzは10〜70が好ましい。
【0075】
前記Xに係る分枝構造を有する有機基としては、例えば、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、i−アミル基、t−アミル基、2−オクチル基等の炭素数3〜8の分枝アルキル基などが挙げられる。これらの中でも、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基が特に好ましい。
前記Xに係る脂環構造を有する有機基としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基を示し、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、トリシクロペンタニル基等が挙げられ、これらの基は、−CHCHO−基を介して、前記一般式(I)におけるCOO−と結合していてもよい。これらの中でも、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、トリシクロペンテニル基、トリシクロペンタニル基が好ましく、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロペンテニル基が特に好ましい。
前記Zに係る二価の有機基としては、例えば、2−ヒドロキシ−1,3−プロピレン基等のようなヒドロキシ基を有する炭素数3〜7のアルキレン基、2−ヒドロキシ−1,4−シクロヘキシレン基等のようなヒドロキシ基を有する炭素数6〜9の二価の脂環式炭化水素基などが挙げられる。
【0076】
前記一般式(I)で表される非水溶性ポリマーの具体例としては、例えば、下記構造で表される化合物(例示化合物P−1〜P−35)が挙げられる。これらの例示化合物P−1〜P−35は、いずれも5,000〜300,000の範囲の重量平均分子量を有する。また、例示化合物中のx、y、及びzは、各繰り返し単位の組成比(モル比)を表す。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【0077】
−合成法−
前記非水溶性ポリマーは、モノマーの(共)重合反応の工程とエチレン性不飽和基を導入する工程の二段階の工程から合成することができる。
前記(共)重合反応は種々のモノマーの(共)重合反応によって作られ、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、重合の活性種については、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合などが挙げられる。これらの中でも、合成が容易であり、低コストである点からラジカル重合であることが好ましい。また、重合方法についても特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、バルク重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などが挙げられる。これらの中でも、溶液重合法がより好ましい。
【0078】
前記非水溶性ポリマーは、10,000〜100,000の重量平均分子量を有するものが、製造が容易であり、かつ導電性、耐久性、及び長波長の透過率に優れる導電膜が得られるので好ましい。前記重量平均分子量は、12,000〜60,000がより好ましく、15,000〜45,000が更に好ましい。
【0079】
前記非水溶性ポリマーは、20mgKOH/g以上の酸価を有していることが好ましい。これにより、前記導電性組成物を含むネガ型感光性樹脂組成物を調製し、これを基板上に形成したのちに、所望のパターン露光及び現像して導電性パターンを形成する場合に、良好な現像性が確保されると共に、得られた導電性パターンは、導電性、耐久性、及び長波長の透過率に優れたものとなる。
前記酸価は、50mgKOH/g以上がより好ましく、70mgKOH/g〜130mgKOH/gが特に好ましい。
【0080】
前記導電性繊維の含有量(A)と前記非水溶性ポリマーの含有量(C)との質量比(A/C)は、0.2〜3が好ましく、0.5〜2.5がより好ましい。
前記質量比(A/C)が、0.2未満であると、塗布量変動による抵抗値のバラツキが問題になる場合、本発明における溶解液の作用が低下することがあり、3を超えると、塗布膜に実用上の十分な強度が得られないことがある。
前記導電性繊維の含有量(塗布量)は、0.005g/m〜0.5g/mが好ましく、0.01g/m〜0.45g/mがより好ましく、0.015g/m〜0.4g/mが更に好ましい。
【0081】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、必要に応じて、例えば、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤等の各種添加剤などが挙げられる。
【0082】
−分散剤−
前記分散剤は、前記導電性繊維の凝集を防ぎ、分散させるために用いる。前記分散剤としては、前記導電性繊維を分散させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適否選択することができ、例えば、市販の低分子顔料分散剤、高分子顔料分散剤を利用でき、特に高分子分散剤で導電性繊維に吸着する性質を持つものが好ましく用いられ、ポリビニルピロリドン、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、ソルスパースシリーズ(日本ルーブリゾール社製など)、アジスパーシリーズ(味の素株式会社製)などが挙げられる。
【0083】
前記分散剤の含有量としては、前記ポリマー100質量部に対し、0.1質量部〜50質量部が好ましく、0.5質量部〜40質量部がより好ましく、1質量部〜30質量部が更に好ましい。前記含有量が、0.1質量部未満であると、分散液中で導電性繊維が凝集してしまうことがあり、50質量部を超えると、塗布工程において安定な塗布膜が形成できず、塗布ムラが発生してしまうことがある。
【0084】
<導電体>
前記導電体は、本発明の前記導電膜を支持体上に有してなる。
前記導電体は、支持体と、該支持体上に導電層とを有し、更に必要に応じてその他の部材等を有してなる。
前記導電層としては、本発明の前記導電膜を用いることが必要である。
前記導電体は、可撓性を有し、透明が好ましく、前記透明には、無色透明のほか、有色透明、半透明、有色半透明などが含まれる。
【0085】
前記導電体は、少なくとも一の最表面に、例えばPET等のプラスチックフィルム、紫外線(UV)吸収もしくは反射剤を含有又はコーティングさせたUV吸収又は反射PETフィルム(UV-PET)、酸素、水の透過性を減少させたバリア機能付きPETフィルム(バリアフィルム)、バリアフィルムにUV吸収もしくは反射機能を持たせたUVバリアフィルム、又は、UV−PETとバリアフィルムなどを張り合わせて複合化させたフィルムなどを張り合わせることにより、耐光性を更に向上させることができる。
【0086】
−支持体−
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明ガラス基板、合成樹脂製シート、フィルム、金属基板、セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板などが挙げられる。これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング法、スパッタリング法、気相反応法、真空蒸着法等の前処理を行うことができる。
前記透明ガラス基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラスなどが挙げられる。
前記合成樹脂製シート、フィルムとしては、例えば、PET、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミドなどが挙げられる。
前記金属基板としては、例えば、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板などが挙げられる。
【0087】
前記支持体の全可視光透過率としては、70%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。
前記全可視光透過率が、70%未満であると、透過率が低く実用上問題となることがある。
なお、本発明では、支持体として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0088】
前記支持体の厚みとしては、1μm〜5,000μmが好ましく、3μm〜4,000μmがより好ましく、5μm〜3,000μmが特に好ましい。
前記厚みが、1μm未満であると、塗布工程においてのハンドリングの困難さに起因し、歩留まりが低下することがあり、5,000μmを超えると、ポータブルなアプリケーションにおいてその支持体の厚み及び質量が問題となることがある。
【0089】
<導電体の製造方法>
前記導電体の製造方法は、導電層形成工程と、溶解液付与工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0090】
<導電層形成工程>
前記導電層形成工程は、支持体上に導電性繊維及びポリマーを含有する導電層組成物を塗布して導電層を形成する工程である。
前記支持体、前記導電性繊維、及び前記ポリマーとしては、上述したものの中から適宜選択することができる。
【0091】
前記導電層組成物の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスピンコート、ロールコート、スリットコート等の公知の方法により、基材上に塗布する。
【0092】
前記導電性繊維の塗布量(含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.005g/m〜0.5g/mが好ましく、0.01g/m〜0.45g/mがより好ましく、0.015g/m〜0.4g/mが更に好ましい。
前記塗布量が、0.005g/m未満であると、局所的に抵抗が高くなってしまう箇所ができ、面内の抵抗分布が悪化することがあり、0.5g/mを超えると、塗布後の乾燥中に導電性繊維同士の凝集により、ヘイズが悪化することがある。
【0093】
前記導電層の厚みとしては、20nm〜5,000nmが好ましく、25nm〜4,000nmがより好ましく、30nm〜3,500nmが更に好ましい。
前記厚みが、20nm未満であると、導電性繊維の平均短軸長さと変わらない範囲となってしまい、膜強度が低下することがあり、5,000nmを超えると、導電層のヒビ割れ、透過率及びヘイズが悪化することがある。
【0094】
前記導電層形成工程において、前記ハロゲン元素の含有量を調整することができる。例えば、(1)導電層形成用塗布液を限外濾過する方法、(2)導電層形成用塗布液に純水などを添加して遠心分離後、上澄みを除去する洗浄を繰り返して行う方法、(3)導電膜形成後に該導電膜を洗浄(純水などの洗浄溶媒中に浸漬)する方法、などが挙げられる。
【0095】
<溶解液付与工程>
前記溶解液付与工程は、前記導電層表面に導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液をパターン状に付与する工程である。
前記導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液を、前記導電層にパターン状に付与し、該付与された部分が非導電部となる。
【0096】
−導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液−
前記導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液としては、導電性繊維を溶解し、非導電部を形成することができる液であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば導電性繊維が銀ナノワイヤーの場合には、所謂写真科学業界において、主にハロゲン化銀カラー感光材料の印画紙の漂白、定着工程に使用される漂白定着液、希硝酸等の強酸、酸化剤を含む溶液、過酸化水素水などが挙げられる。これらの中でも、漂白定着液、希硝酸を含む溶液、過酸化水素水が好ましく、漂白定着液が特に好ましい。なお、前記溶解液による導電性繊維(好ましくは銀ナノワイヤー)の溶解乃至切断は、該溶解液を付与した部分の導電性繊維(好ましくは銀ナノワイヤー)を完全に溶解乃至切断しなくてもよく、導電性が消失していれば一部が残存していてもよい。
【0097】
前記希硝酸を含む溶液における希硝酸の濃度は、1質量%〜20質量%が好ましい。
前記過酸化水素水における過酸化水素の濃度は、3質量%〜30質量%が好ましい。
【0098】
前記漂白定着液は、漂白剤、定着剤を含み、漂白促進剤、再ハロゲン化剤、保恒剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記漂白定着液で用いられる漂白剤としては、特に制限はなく、いかなる漂白剤も用いることができ、例えば、鉄(III)の有機錯塩(例えばエチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸等のアミノポリカルボン酸類;アミノポリホスホン酸、ホスホノカルボン酸、有機ホスホン酸等の錯塩)、又はクエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸;過硫酸塩;過酸化水素などが挙げられる。
これらの中でも、鉄(III)の有機錯塩が迅速なパターニング処理と環境汚染防止の観点から特に好ましい。1L当りの鉄(III)の有機錯塩の含有量は、0.05モル〜3モルが好ましく、0.1モル〜1.5モルがより好ましい。
前記鉄(III)の有機錯塩を形成するために有用なアミノポリカルボン酸、アミノポリホスホン酸、もしくは有機ホスホン酸又はそれらの塩としては、例えばエチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、メチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、などが挙げられる。これらの化合物はナトリウム、カリウム、チリウム又はアンモニウム塩のいずれでもよい。これらの中でも、エチレンジアミン四酢酸、アエチレントリアミン五酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、メチルイミノ二酢酸の鉄(III)錯塩が漂白力が高い点から好ましい。
これらの第2鉄イオン錯塩は錯塩の形で使用してもよいし、第2鉄塩、例えば硫酸第2鉄、塩化第2鉄、硝酸第2鉄、硫酸第2鉄アンモニウム、燐酸第2鉄などとアミノポリカルボン酸、アミノポリホスホン酸、ホスホノカルボン酸などのキレート剤とを用いて溶液中で第2鉄イオン錯塩を形成させてもよい。また、キレート剤を第2鉄イオン錯塩を形成する以上に過剰に用いてもよい。鉄錯体のなかでもアミノポリカルボン酸鉄錯体が好ましく、その添加量は0.01モル/L〜1.0モル/Lが好ましく、0.005モル/L〜0.50モル/Lがより好ましい。
【0099】
前記漂白定着液に使用される定着剤としては、特に制限はなく、公知の定着剤の中から適宜選択することができ、例えばチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩;チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム等のチオシアン酸塩;エチレンビスチオグリコール酸、3.6−ジチア−1,8−オクタンジオール等のチオエーテル化合物及びチオ尿素類などの水溶性のハロゲン化銀溶解剤などが挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。また、特開昭55−155354号公報に記載された定着剤と多量の沃化カリウム等のハロゲン化物などの組み合わせからなる特殊な漂白定着液なども用いることができる。これらの中でも、チオ硫酸塩が好ましく、チオ硫酸アンモニウム塩が特に好ましい。1L当りの定着剤の量は、0.3モル〜2モルが好ましく、0.5モル〜1.0モルがより好ましい。
【0100】
前記漂白定着液には、漂白促進剤として種々の化合物を用いることができる。例えば、米国特許第3.893,858号明細書、ドイツ特許第1,290,812号明細書、特開昭53−95630号公報、リサーチディスクロージャー第17129号(1978年7月号)に記載のメルカプト基又はジスルフィド結合を有する化合物、特公昭45−8506号公報、特開昭52−20832号公報、特開昭53−32735号公報、米国特許第3,706,561号明細書等に記載のチオ尿素化合物、あるいは沃素、臭素イオンのハロゲン化物などが挙げられる。
前記漂白定着液には、必要に応じて臭化物(例えば、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化アンモニウム)、又は塩化物、(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム)、又は沃化物(例えば、沃化アンモニウム)等の再ハロゲン化剤を含むことができる。
【0101】
前記漂白定着液には、保恒剤として亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウムなど)、重亜硫酸塩(例えば、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムなど)、メタ重亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸アンモニウムなど)等の亜硫酸イオン放出化合物を含有することができる。これらの化合物は亜硫酸イオン換算して約0.02モル/L〜0.50モル/L含有することが好ましく、0.04モル/L〜0.40モル/L含有することがより好ましい。これらの中でも、亜硫酸アンモニウムの添加が特に好ましい。
前記保恒剤としては、亜硫酸塩の添加が一般的であるが、アスコルビン酸、カルボニル重亜硫酸付加物、スルフィン酸類、カルボニル化合物、スルフィン酸類等を添加してもよい。
【0102】
前記漂白定着液のpHは、8以下が好ましく、3〜8がより好ましく、4〜7が更に好ましく、5.7〜6.5が特に好ましい。前記pHがこれより低いと、導電性繊維の溶解性は向上するが、溶解液の劣化促進されることがある。一方、pHがこれより高いと、溶解時間が長くなり、パターニング時の解像度が悪化する場合がある。
pHを調整するため、必要に応じて塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、重炭酸塩、アンモニア、苛性カリ、苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を添加することができる。
【0103】
前記漂白定着液には、更に必要に応じて、硼酸、硼砂、メタ硼酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、亜燐酸、燐酸、燐酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸等のpH緩衝能を有する1種類以上の無機酸、有機酸及びこれらのアルカリ金属又はアンモニウム塩、硝酸アンモニウム、グアニジン等の腐食防止剤、緩衝剤、蛍光増白剤、キレート剤、防カビ剤、各種の蛍光増白剤、消泡剤、界面活性剤、ポリビニルピロリドン、メタノール等の有機溶媒などのその他の成分を含有することができる。
【0104】
前記漂白定着液としては、適宜調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、富士フイルム株式会社製CP−48S、CP−49E(カラーペーパー用漂白定着剤)、コダック社製エクタカラーRA漂白定着液、大日本印刷株式会社製漂白定着液D−J2P−02−P2、D−30P2R−01、D−22P2R−01などが挙げられる。これらの中でも、CP−48S、CP−49Eが特に好ましい。
漂白定着時間は、180秒間以下が好ましく、120秒間以下1秒間以上がより好ましく、90秒間以下5秒間以上が更に好ましい。また、水洗又は安定化時間は、180秒間以下が好ましく、120秒間以下1秒間以上がより好ましい。
このとき、水洗又は安定化処理は水又は安定化液に浸漬する方法でもよいが、導電性繊維を含有する層が非常に薄く、膜強度が比較的弱いものであることを考慮すると、水又は安定化液をシャワーする方法が洗浄効率がよいので、より好ましい。
【0105】
前記導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液の粘度は、後述するパターニング方法に応じて異なるが、25℃で、5mPa・s〜300,000mPa・sが好ましく、10mPa・s〜150,000mPa・sがより好ましい。前記粘度が、5mPa・s未満であると、印刷法によっては、不必要なところにまで溶解液が拡散してしまい、明瞭なパターニングが困難になる場合があり、300,000mPa・sを超えると、印刷法によっては、工程に負荷がかかり、長時間のプロセスタイムを要する場合がある。
前記粘度は、例えば、ブルックフィールド粘度計などにより測定することができる。
前記溶解液に増粘剤を添加することにより上記粘度範囲に調整することができる。前記増粘剤としては、例えばアロンA−20L(東亞合成株式会社製)、ゼラチン、水溶性セルロース、グリセリンなどが挙げられる。
【0106】
前記導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液のパターン状の付与(パターニング方法)としては、前記溶解液をパターン状に付与できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷、予めレジスト剤などによりエッチングマスクを形成しておきその上に溶解液をコーター塗布、ローラー塗布、ディッピング塗布、スプレー塗布する方法、などが挙げられる。これらの中でも、スクリーン印刷、インクジェット印刷、コーター塗布、ディップ(浸漬)塗布が好ましく、スクリーン印刷、インクジェット印刷が特に好ましい。
【0107】
前記スクリーン印刷は、所望形状に多数の細孔が形成されたスクリーン版を介して被印刷物としての導電膜上にパターンを形成する方法であり、導電膜上にスクリーン版をクリアランスを空けてセットし、スクリーン版上に導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液を供給し、スクリーン版と導電膜とが接触するようにスキージでスクリーン版を押さえて変形させながらスキージを移動させる。それにつれてスクリーン版開口部に充填された溶解液は、導電膜と接触して、導電膜へ転写される。
前記スクリーン印刷では、前記溶解液の粘度は、25℃で、10,000mPa・s〜300,000mPa・sが好ましく、15,000mPa・s〜150,000mPa・sがより好ましく、20,000mPa・s〜70,000mPa・sが更に好ましい。
前記溶解液の粘度が、10,000mPa・s未満であると、溶解液を載せたくない箇所にも溶解液が広がってしまい、パターンが不明瞭になることがあり、300,000mPa・sを超えると、水洗又は安定化処理時に溶解液が残ってしまうことがある。
【0108】
前記インクジェット印刷は、導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液を導電膜上にパターン状に吐出させるものであり、ピエゾ方式及びサーマル方式のいずれも使用可能である。
前記インクジェット印刷では、前記溶解液の粘度は、25℃で、1mPa・s〜200mPa・sが好ましく、5mPa・s〜100mPa・sがより好ましく、10mPa・s〜50mPa・sが更に好ましい。
前記溶解液の粘度が、1mPa・s未満であると、インク着弾後に導電膜上で濡れ広がってしまいパターンが不明瞭となることがあり、200mPa・sを超えると、インク吐出に必要なエネルギーが高くなること、また、インクジェットヘッドの汚れにより、吐出が安定しなくなることがある。
【0109】
前記パターンの種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、文字、記号、模様、図形、配線パターン、などが挙げられる。
前記パターンの大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することがで
きるが、ナノサイズからミリサイズのいずれの大きさであっても構わない。
【0110】
前記導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液が付与された非導電部の表面抵抗は、5kΩ/□以上が好ましく、100kΩ/□以上がより好ましく、1MΩ/□以上が更に好ましい。上限値は、10Ω/□以下が好ましい。
前記導電性繊維を溶解乃至切断する溶解液が付与されていない部分である導電部(導電膜)の表面抵抗は、5kΩ/□未満が好ましく、500Ω/□以下がより好ましい。下限値は、1Ω/□以上が好ましい。
ここで、前記表面抵抗は、例えば、表面抵抗計(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)を用いて、測定することができる。
本発明の導電膜の全光線透過率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
ここで、前記全光線透過率は、例えば、ガードナー社製ヘイズガードプラスにより測定することができる。
【0111】
本発明の導電膜は、絶縁性が著しく改善でき、高透過性、低抵抗であり、耐久性及び可撓性が向上し、簡易にパターニングが可能であるので、例えばタッチパネル、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー用電極、フレキシブルディスプレイ用電極、太陽電池用電極、表示素子用電極、その他の各種デバイスなどに幅広く適用される。これらの中でも、タッチパネル、表示素子用電極、太陽電池用電極が特に好ましい。
【0112】
<表示素子>
本発明で用いられる表示素子としての液晶表示素子は、上記のようにして基板上にパターニングされた前記導電体が設けられた素子基板と、対向基板であるカラーフィルター基板とを、位置を合わせて圧着後、熱処理して組み合わせ、液晶を注入し、注入口を封止することによって製作される。このとき、カラーフィルター上に形成される導電体も、前記導電体を用いることが好ましい。
また、前記素子基板上に液晶を散布した後、基板を重ね合わせ、液晶が漏れないように密封して液晶表示素子が製作されてもよい。
なお、前記液晶表示素子に用いられる液晶、即ち液晶化合物及び液晶組成物については特に制限はなく、いずれの液晶化合物及び液晶組成物をも使用することができる。
【0113】
(タッチパネル)
本発明のタッチパネルは、本発明の前記導電膜からなる導電体を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面型静電容量方式タッチパネル、投影型静電容量方式タッチパネル、抵抗膜式タッチパネルなどが挙げられる。なお、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサ及びタッチパッドを含むものとする。
前記タッチパネルにおけるタッチパネルセンサー電極部の層構成が、2枚の透明電極を貼合する貼合方式、1枚の基材の両面に透明電極を具備する方式、片面ジャンパーあるいはスルーホール方式あるいは片面積層方式のいずれかが好ましい。
【0114】
前記表面型静電容量方式タッチパネルの一例について、図1を参照して説明する。この図1において、タッチパネル10は、透明基板11の表面を一様に覆うように透明導電体12を配してなり、透明基板11の端部の透明導電体12上に、図示しない外部検知回路との電気接続のための電極端子18が形成されている。
なお、図中、13は、シールド電極となる透明導電体を示し、14、17は、保護膜を示し、15は、中間保護膜を示し、16は、グレア防止膜を示す。
透明導電体12上の任意の点を指でタッチ等すると、前記透明導電体12は、タッチされた点で人体を介して接地され、各電極端子18と接地ラインとの間の抵抗値に変化が生じる。この抵抗値の変化を前記外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。
【0115】
前記表面型静電容量方式タッチパネルの他の一例について図2を用いて説明する。該図2においてタッチパネル20は、透明基板21の表面を覆うように配された透明導電体22と透明導電体23と、該透明導電体22と該透明導電体23とを絶縁する絶縁層24と、指等の接触対象と透明導電体22又は透明導電体23の間に静電容量を生じる絶縁カバー層25からなり、指等の接触対象に対して位置検知する。構成によっては、透明導電体22,23を一体として構成することもでき、また、絶縁層24又は絶縁カバー層25を空気層として構成してもよい。
絶縁カバー層25を指等でタッチすると、指等と透明導電体22又は透明導電体23の間の静電容量の値に変化が生じる。この静電容量値の変化を前記外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。
また、図3により、投影型静電容量方式タッチパネルとしてのタッチパネル20を透明導電体22と透明導電体23とを平面から視た配置を通じて模式的に説明する。
タッチパネル20は、X軸方向の位置を検出可能とする複数の透明導電体22と、Y軸方向の複数の透明導電体23とが、外部端子に接続可能に配されている。透明導電体22と透明導電体23とは、指先等の接触対象に対し複数接触して、接触情報が多点で入力されることを可能とされる。
このタッチパネル20上の任意の点を指でタッチ等すると、X軸方向及びY軸方向の座標が位置精度よく特定される。
なお、透明基板、保護層等のその他の構成としては、前記表面型静電容量方式タッチパネルの構成を適宜選択して適用することができる。また、タッチパネル20において、複数の透明導電体22と、複数の透明導電体23とによる透明導電体のパターンの例を示したが、その形状、配置等としては、これらに限られない。
【0116】
前記抵抗膜式タッチパネルの一例について、図4を用いて説明する。該図4において、タッチパネル30は、透明導電体32が配された基板31と、該透明導電体32上に複数配されたスペーサ36と、空気層34を介して、透明導電体32と接触可能な透明導電体33と、該透明導電体33上に配される透明フィルム35とが支持されて構成される。
このタッチパネル30に対して、透明フィルム35側からタッチすると、透明フィルム35が押圧され、押し込まれた透明導電体32と透明導電体33とが接触し、この位置での電位変化を図示しない外部検知回路で検出することで、タッチした点の座標が特定される。
【0117】
(太陽電池)
本発明の太陽電池は、本発明の前記導電膜を用いている。
前記太陽電池(以下、太陽電池デバイスと称することもある)としては、特に制限はなく、太陽電池デバイスとして一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池デバイス、多結晶シリコン系太陽電池デバイス、シングル接合型、又はタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池デバイス、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、色素増感型太陽電池デバイス、有機太陽電池デバイスなどが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、前記太陽電池デバイスが、タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、及び銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイスが好ましい。
【0118】
タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイスの場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン薄膜層、また、これらにゲルマニウムを含んだ薄膜、更に、これらの2層以上のタンデム構造が光電変換層として用いられる。成膜はプラズマCVD等を用いる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0120】
(調製例1)
−非水溶性ポリマー(1)の調製−
反応容器中に、1−メトキシ−2−プロパノール(MMPGAC、ダイセル化学工業株式会社製)8.57質量部を予め加え90℃に昇温し、モノマーとしてシクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸(添加質量比は順に45.5mol%:2mol%:19mol%:33.5mol%となるように、シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸、及び後述のグリシジルメタクリレートを調整した)、アゾ系重合開始剤(和光純薬工業株式会社製、V−601)1質量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール8.57質量部からなる混合溶液を窒素ガス雰囲気下、90℃の反応容器中に2時間かけて滴下した。滴下後4時間反応させて、アクリル樹脂溶液を得た。
次いで、前記アクリル樹脂溶液に、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.025質量部、及びテトラエチルアンモニウムブロマイド0.084質量部を加えた後、グリシジルメタクリレートを2時間かけて滴下した。滴下後、空気を吹き込みながら90℃で4時間反応させた後、固形分濃度が45質量%になるように溶媒を添加することにより調製し、不飽和基を有する非水溶性ポリマー(1)の溶液(重量平均分子量(Mw);30,000、1−メトキシ−2−プロパノールの45質量%溶液)を得た。
なお、前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した。
得られた非水溶性ポリマー(1)のSP値は、沖津法により算出し、22MPa1/2であった。
【0121】
(調製例2)
−銀ナノワイヤー分散物(1)の調製−
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解した硝酸銀溶液を調製した。その後、前記硝酸銀溶液に1Nのアンモニア水を透明になるまで添加し、全量が100mLになるように、純水を添加して、添加液Aを調製した。
グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5
mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
添加液A 20.6mLを三口フラスコ内に入れ室温にて攪拌した。この液に純水41mL、添加液H 20.6mL、及び溶液B 16.5mLの順でロートにて添加し、90℃で5時間、200rpmで攪拌しながら加熱することで、分散物を得た。
得られた分散物を冷却した後、ポリビニルピロリドン(K−30、和光純薬工業株式会社製)を銀の質量1に対し0.05となるように撹拌しながら添加し、その後遠心分離し、伝導度が150μS/cm以下になるまで精製し、プロピレングリコールモノメチルエーテルで更に遠心分離を行い水を除去し、最終的にプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、銀ナノワイヤー分散物(1)を調製した。
得られた銀ナノワイヤー分散物(1)の平均短軸長さ、平均長軸長さ、短軸長さの変動係数、アスペクト比が10以上の導電性繊維(銀ナノワイヤー)の比率は、以下に示すように測定した。結果を表1に示す。
【0122】
<金属ナノワイヤーの平均短軸長さ及び平均長軸長さ>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均短軸長さ及び平均長軸長さを求めた。
【0123】
<金属ナノワイヤー短軸長さの変動係数>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、金属ナノワイヤーの短軸長さを300個観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの短軸長さを計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより変動係数を求めた。
【0124】
<アスペクト比が10以上の導電性繊維の比率>
各銀ナノワイヤー分散物を濾過して銀ナノワイヤーとそれ以外の粒子を分離し、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8000)を用いて濾紙に残っている銀の量と、濾紙を透過した銀の量を各々測定し、短軸長さが50nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤーをアスペクト比が10以上の導電性繊維の比率(%)として求めた。
なお、導電性繊維の比率を求める際の金属ナノワイヤーの分離は、メンブレンフィルター(Millipore社製、FALP 02500、孔径1.0μm)を用いて行った。
【0125】
(調製例3)
−銀ナノワイヤー分散物(2)の調製−
エチレングリコール30mLを三口フラスコに入れ160℃に加熱した。その後、36mMのポリビニルピロリドン(PVP K−55、アルドリッチ社製)、3μMのアセチルアセトナート鉄、60μMの塩化ナトリウムエチレングリコール溶液18mLと、24mMの硝酸銀エチレングリコール溶液18mLを毎分1mLの速度で添加した。160℃で60分間加熱後室温まで冷却した。水を加えて遠心分離し、伝導度が150μS/cm以下になるまで精製し、プロピレングリコールモノメチルエーテルで更に遠心分離を行い水を除去し、最終的にプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、銀ナノワイヤー分散物(2)を調製した。
得られた銀ナノワイヤー分散物(2)中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ、平均長軸長さ、短軸長さの変動係数、アスペクト比が10以上の導電性繊維(銀ナノワイヤー)の比率は、前記銀ナノワイヤー分散物(1)と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0126】
【表1】

*表1中、「導電性繊維の比率」とは、アスペクト比が10以上の導電性繊維(銀ナノワイヤー)の比率を表す。
【0127】
(実施例1)
<透明導電体の作製>
以下に示すようにして、表2に示す試料No.101〜111の透明導電体を作製した。
【0128】
<試料No.101の作製>
−下引き層の形成−
市販の二軸延伸熱固定済の厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基板に8W/m・分のコロナ放電処理を施し、下記組成の下引き層用塗布液を塗布して、乾燥厚み0.8μmの下引き層を形成した。
【0129】
−下引き層用塗布液の組成−
・ブチルアクリレート・・・40質量%
・スチレン・・・20質量%
・グリシジルアクリレート・・・・40質量%
上記組成からなる共重合体ラテックスに、ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア)を0.5質量%含有させて、下引き層用塗布液を調製した。
【0130】
次に、下引き層の表面に8W/m・分のコロナ放電処理を施して、ヒドロキシエチルセルロースを親水性ポリマー層として0.12g/mになるように塗設した。
【0131】
次に、ドクターコーターを用いて、前記銀ナノワイヤー分散物(1)を親水性ポリマー層上に塗布し、乾燥した。塗布銀量を蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)にて測定し、0.06g/mとなるように塗布量を調節し、導電層を形成した。得られた塗布膜を25℃の純水に5分間浸漬し、2分間純水中で超音波洗浄器(ASU−2M、アズワン社製)で超音波洗浄を行い、更に純水で2回リンスを行った。以上により、試料No.101の透明導電体を作製した。
【0132】
得られた試料No.101の透明導電体の導電層(導電膜)について、蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)により、ハロゲン元素の含有量を測定したところ、3,000質量ppmであった。このとき、予め、塩化カリウム、臭化カリウム、及びヨウ化カリウムの混合水溶液(0.1質量%)を、前記親水性ポリマー上に塗布膜厚を変えて塗布を行い、塗布量と検出ピークの強度から、ハロゲン含有量測定用の検量線を作成しておき、試料No.101のピーク強度を測定し、検量線から、ハロゲン元素の含有量を求めた。
また、得られた試料No.101の透明導電体について、導電層中の銀ナノワイヤーを構成する銀の含有量Aと、導電層中のハロゲン元素のXとの原子比(X/A)を、塗布銀量、ハロゲン元素の含有量から算出したところ、原子比(X/A)は<0.01であった。
また、試料No.101の透明導電体の導電層を削り取り、その乾固粉末を、自動試料燃焼型イオンクロマトグラフ(ダイアインスツルメンツ社製、AQF−100型)にて原子比(X/A)を測定したところ、原子比(X/A)は<0.01であり、上記と同じ値が得られた。
【0133】
<試料No.102の作製>
試料No.101において、純水の浸漬時間を2分間に変え、超音波洗浄を行わなかった以外は、試料No.101と同様にして、試料No.102の透明導電体を作製した。
得られた試料No.102の透明導電体の導電層について、試料No.101と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、50,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.102の透明導電体について、試料No.101と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.15であった。
【0134】
<試料No.103の作製>
試料No.102において、純水の浸漬時間を30秒間に変えた以外は、試料No.101と同様にして、試料No.103の透明導電体を作製した。
得られた試料No.103の透明導電体の導電層について、試料No.1と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、160,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.103の透明導電体について、試料No.101と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.48であった。
【0135】
<試料No.104の作製>
試料No.102において、純水による浸漬、及び純水での2回リンスを行わなかった以外は、試料No.101と同様にして、試料No.104の透明導電体を作製した。
得られた試料No.104の透明導電体の導電層について、試料No.101と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、260,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.104の透明導電体について、試料No.101と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.78であった。
【0136】
<試料No.105の作製>
試料No.102において、純水による浸漬で、純水を、塩化カリウム、臭化カリウム、及びヨウ化カリウムの混合水溶液(0.1質量%)に代え、浸漬時間を45秒間に変更した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.105の透明導電体を作製した。
得られた試料No.105の透明導電体の導電層について、試料No.101と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、420,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.105の透明導電体について、試料No.101と同様にして、求めた原子比(X/A)は、1.25であった。
【0137】
<試料No.106の作製>
試料No.102において、純水による浸漬中で、純水を、塩化カリウム、臭化カリウム、及びヨウ化カリウムの混合水溶液(1質量%)に代え、浸漬時間を1分間に変え、純水でのリンスを1回に変更した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.106の透明導電体を作製した。
得られた試料No.106の透明導電体の導電層について、試料No.101と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、1,200,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.106の透明導電体について、試料No.101と同様にして、求めた原子比(X/A)は、3.4であった。
【0138】
<試料No.107の作製>
試料No.102において、銀ナノワイヤー分散物(1)の代わりに銀ナノワイヤー分散物(2)を用い、塗布銀量を蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)にて測定し、0.07g/mとなるように塗布量を調節し、純水の浸漬時間を3分間に変更した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.107の透明導電体を作製した。
得られた試料No.107の透明導電体の導電層について、試料No.101と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、60,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.107の透明導電体について、試料No.101と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.18であった。
【0139】
<試料No.108の作製>
試料No.107において、純水による浸漬で、純水を、塩化カリウム、臭化カリウム、及びヨウ化カリウムの混合水溶液(0.1質量%)に代え、浸漬時間を1分30秒間に変更した以外は、試料No.107と同様にして、試料No.108の透明導電体を作製した。
得られた試料No.108の透明導電体の導電層について、試料No.101と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、730,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.108の透明導電体について、試料No.101と同様にして、求めた原子比(X/A)は、2.2であった。
【0140】
<試料No.109の作製>
試料No.104において、乾燥後の塗布膜に、塗布用基板として使用したPETフィルムを、光学粘着剤(パナック社製、PD−S1)により、25℃、湿度55%RH環境下、ハンドローラ(一進産業株式会社製、W−130)を用いて貼り合せた以外は、試料No.104と同様にして、試料No.109の透明導電体を作製した。
得られた試料No.109の透明導電体の導電層は、試料No.104と同等であるため、ハロゲン元素の含有量、及び原子比(X/A)は試料No.104の値を代用した。
【0141】
<試料No.110の作製>
試料No.109において、貼り合せるPETフィルムを、下記のUV剤含有高分子フィルムに代えた以外は、試料No.109と同様にして、試料No.110の透明導電体を作製した。
得られた試料No.110の透明導電体の導電層は試料No.104と同等であるため、ハロゲン元素の含有量、及び原子比(X/A)は試料No.104の値を代用した。
【0142】
<<UV剤含有高分子フィルムの調製>>
ポリエチレンテレフタラート(PET)5gに対し、下記構造式で表される化合物(1)を厚み50μmのフィルム作製時に極大吸収波長における吸光度が1.0となるように15mg添加し、265℃で溶融混練後、冷却することでUV剤含有ポリエチレンテレフタラートを得た。このUV剤含有ポリエチレンテレフタラートを280℃で延伸することによりUV剤含有高分子フィルムを作製した。
【0143】
−化合物(1)の調製−
1−(4,7−ジヒドロキシベンゾ[1,3]ジチオール−2−イリデン)ピペリジニウムアセテート1.64g(0.005モル)にN−メチルピロリドン5mL、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオン0.64g(0.005モル)を加え、これを窒素フロー条件下、100℃で30分間撹拌した後に冷却し、希塩酸50mLに加えて析出した固体1.63gをろ別した。得られた化合物0.310g(0.001モル)をジメチルアセトアミド5mLに溶解させた後、トリエチルアミン0.304g(0.003モル)を加え0℃に冷却した。その後、2−エチルヘキサノイルクロリド0.390g(0.0024モル)を加え、室温に戻して2時間撹拌した。酢酸エチル、希塩酸で処理後、シリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)にて単離することにより、目的生成物である化合物(1)を得た(収量0.30g、収率53%)。
下記構造式で表される化合物(1)の酢酸エチル溶液中における極大吸収波長は371nmであり、長波紫外線吸収能を有することが分かった。
H NMR(重クロロホルム)δ0.95(6H),1.06(6H),1.4〜1.9(16H),2.6(2H),3.25(6H),7.3ppm(2H).
FAB MS(マトリクス:3−ニトロベンジルアルコール)m/z 563([M+H]+),562([M]+,100%).
Anal.calcd.for C2838:C59.76%,H6.81%,N4.98%.
Found:C59.55%,H7.10%,N4.90%.
【化12】

ただし、前記式中、R及びRはメチル基、R及びRは2−エチルヘキサノイルオキシ、R及びRは水素原子をそれぞれ表す。
【0144】
<試料No.111の作製>
試料No.109において、貼り合せるPETフィルムを、下記のガスバリアフィルムに代えた以外は、試料No.109と同様にして、試料No.111の透明導電体を作製した。
得られた試料No.111の透明導電体の導電層は試料No.104と同等であるため、ハロゲン元素の含有量、及び原子比(X/A)は試料No.104の値を代用した。
【0145】
−ガスバリアフィルムの作製−
プラスチックフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、PENフィルム、ガラス転移温度(Tg):120℃)上に、無機層と有機層を下記の手順にしたがって作製した。
[1]有機層製膜工程
下記のポリスチレンA1を22.5g秤量し、メチルエチルケトン(MEK)277.5gに溶解して、塗布液を作製した。この塗布液を、プラスチックフィルム上にバー塗布により塗布し、乾燥することにより成膜した。有機層の厚みは500nmであった。
・ポリスチレンA1:重量平均分子量(Mw)230,000、分子量分布2.1、ガラス転移温度(Tg)94℃、Sigma Aldrich社製
【0146】
[2]加熱処理工程
製膜した有機層に対して、大気圧又は100Paの減圧下、110℃で2時間加熱処理を行った。
【0147】
[3]無機層製膜工程
加熱処理工程後、以下の手順にしたがって、リアクティブスパッタリング装置を用いて、スパッタ法により酸化アルミニウム(AlO)の無機層を形成した。
リアクティブスパッタリング装置の真空チャンバーを、油回転ポンプとターボ分子ポンプとで到達圧力5×10−4Paまで減圧した。次に、プラズマガスとしてアルゴンを導入し、プラズマ電源から電力2,000Wを印加した。チャンバー内に高純度の酸素ガスを導入し、成膜圧力を0.3Paになるように調整して一定時間成膜し、膜厚40nmの酸化アルミニウム(AlO)の無機層を形成した。
【0148】
次に、作製した試料No.101〜No.111の透明導電体について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表2に示す。
【0149】
<透過率、及びヘイズの測定>
得られた各透明導電体の導電層について、ガードナー社製ヘイズガードプラスを用い、全光線透過率、及びヘイズを測定した。
【0150】
<表面抵抗の測定>
得られた各透明導電体の導電層について、表面抵抗計(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)を用い、表面抵抗を測定した。
また、張り合わせを行ったサンプルにおいては、非接触表面抵抗計(DELCOM社製、717B(H))を用いて、表面抵抗を測定した。
【0151】
<耐光性の評価>
得られた各透明導電体について、耐光性加速試験前後の表面抵抗(導電性)を、上記表面抵抗の測定に従い測定し、その比(試験後表面抵抗/試験前表面抵抗=M1/M0)で耐光性の評価を行った。耐光性加速試験はキセノンウェザメーター(スガ試験機株式会社製)で180W/m、バックプレート温度60℃、25%RHに設定し、72時間行った。評価基準は、以下の通りである。なお、耐光性は数字が大きいほど優れていることを示す。
〔評価基準〕
「1」:M1/M0が、0.5未満、又は、5以上で、導電性の変化が著しく、実用上問題あるレベルである
「2」:M1/M0が、0.5以上0.65未満、又は、1.3以上5未満で、導電性が変化し、実用上問題あるレベルである
「3」:M1/M0が、0.65以上0.75未満、又は、1.2以上1.3未満で、導電性の変化が確認できるが、実用上問題ないレベルである
「4」:M1/M0が、0.75以上0.9未満、又は、1.1以上1.2未満で、導電性の変化が確認できるが、実用上問題ないレベルである
「5」:M1/M0が、0.9以上1.1未満で、導電性の変化がほぼ確認できず、実用上問題ないレベルである
【0152】
【表2−1】

*試料No.101では、超音波洗浄によりハロゲン含有量が少なくなるが、銀ナノワイヤーが劣化して導電膜の表面抵抗が上がってしまった。
【表2−2】

*試料No.101は、超音波処理により銀ナノワイヤーが切断されてしまい、接点数が減少しているため、耐久性が低下した。
【0153】
(実施例2)
−パターン状透明導電体の作製−
以下に示すようにして、表3に示す試料No.201〜No.215のパターン状透明導電体を作製した。また、各々表面抵抗、光透過率、ヘイズ評価用に、同じ処理工程を通るが、パターンを施さない箇所を作製した。
【0154】
<試料No.201の作製>
前記銀ナノワイヤー分散物(1)と、下記のネガ型フォトレジストとの含有質量比(銀ナノワイヤー/ネガ型フォトレジストの固形分)が1/1となるように混合させて、導電性組成物(1)を調製した。
【0155】
<<ネガ型フォトレジストの調製>>
−バインダー(A−1)の合成−
共重合体を構成するモノマー成分として、メタクリル酸(MAA)7.79g、ベンジルメタクリレート(BzMA)37.21gを使用し、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5gを使用し、これらを溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)55.00g中において重合反応させることにより、下記式で表されるバインダー(A−1)のPGMEA溶液(固形分濃度:45質量%)を得た。なお、重合温度は、温度60℃乃至100℃に調整した。
分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)を用いて測定した結果、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は30,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.21であった。
【化13】

−ネガ型フォトレジストの調製−
前記バインダー(A−1)3.80質量部(固形分40.0質量%、PGMEA溶液)、KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)1.59質量部、IRGACURE379(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.159質量部、EHPE−3150(ダイセル化学株式会社製)0.150質量部、メガファックF781F(DIC株式会社製)0.002質量部、及びPGMEA 19.3質量部を加え、攪拌し、最終銀濃度が1.0質量%となるように、前記銀ナノワイヤー分散物(1)と混合し、ネガ型フォトレジスト組成物を調製した。
【0156】
次に、市販の二軸延伸熱固定済の厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の表面にドクターコーターを用いて、前記ネガ型フォトレジスト組成物を塗布し、乾燥させることで、導電層を形成した。銀ナノワイヤー塗布量を蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)にて測定したところ、0.06g/mであった。
【0157】
−パターニング処理−
作製した導電層について、以下の方法により、ラインアンドスペース(以下、L/Sという)=100μm/20μmのストライプ状パターニング処理を行った。以上により、試料No.201のパターン状透明導電体を作製した。
−パターニング条件−
マスク上から、高圧水銀灯i線(365nm)を100mJ/cm(照度20mW/cm)露光を行った。露光後の基板を、純水5,000gに炭酸水素ナトリウム5gと炭酸ナトリウム2.5gを溶解した現像液でシャワー現像30秒間を行った。シャワー圧は0.04MPa、ストライプパターンが出現するまでの時間は15秒間であった。
次に、作製したパターン状透明導電体を、25℃の純水のシャワーで1分間リンスした後、25℃の純水中に5分間浸漬し、更に試料No.101と同様にして超音波処理を2分間行い、純水にて2回のリンスを行った。
【0158】
作製した試料No.201のパターン状透明導電体の導電層(導電膜)について、実施例1と同様の測定法により、ハロゲン元素の含有量を測定したところ、2,900質量ppmであった。
また、得られた試料No.201のパターン状透明導電体について、導電層中の銀ナノワイヤーを構成する銀の含有量Aと、導電層中のハロゲン元素のXとの原子比(X/A)を、実施例1と同様の方法により求めたところ、原子比(X/A)が<0.01であった。
【0159】
<試料No.202の作製>
試料No.201において、純水での浸漬時間を2分間に変更した以外は、試料No.201と同様にして、試料No.202のパターン状透明導電体を作製した。
得られた試料No.202のパターン状透明導電体の導電層について、試料No.201と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、47,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.202のパターン状透明導電体について、試料No.201と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.14であった。
【0160】
<試料No.203の作製>
試料No.201において、純水での浸漬時間を30秒に変更した以外は、試料No.201と同様にして、試料No.203のパターン状透明導電体を作製した。
得られた試料No.203のパターン状透明導電体の導電層について、試料No.201と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、160,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.203のパターン状透明導電体について、試料No.201と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.46であった。
【0161】
<試料No.204の作製>
試料No.201において、純水による浸漬、及び純水による2回リンスを行わなかった以外は、試料No.201と同様にして、試料No.204のパターン状透明導電体を作製した。
得られた試料No.204のパターン状透明導電体の導電層について、試料No.201と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、280,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.204のパターン状透明導電体について、試料No.201と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.85であった。
【0162】
<試料No.205の作製>
試料No.201において、純水による浸漬で、純水を、塩化カリウム、臭化カリウム、及びヨウ化カリウムの混合水溶液(0.1質量%)に代え、浸漬時間を45秒に変更した以外は、試料No.201と同様にして、試料No.205のパターン状透明導電体を作製した。
得られた試料No.205のパターン状透明導電体の導電層について、試料No.201と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、420,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.205のパターン状透明導電体について、試料No.201と同様にして、求めた原子比(X/A)は、1.27であった。
【0163】
<試料No.206の作製>
試料No.201において、純水による浸漬で、純水を、塩化カリウム、臭化カリウム、及びヨウ化カリウムの混合水溶液(0.1質量%)に代え、浸漬時間を1分30秒に変更し、リンスを1回に変更した以外は、試料No.201と同様にして、試料No.206のパターン状透明導電体を作製した。
得られた試料No.206のパターン状透明導電体の導電層について、試料No.201と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、1,020,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.206のパターン状透明導電体について、試料No.201と同様にして、求めた原子比(X/A)は、3.1であった。
【0164】
<試料No.207の作製>
試料No.201において、銀ナノワイヤー分散物(1)の代わりに銀ナノワイヤー分散物(2)を用い、塗布銀量を蛍光X線分析装置(SII社製、SEA1100)にて測定し、0.07g/mとなるように塗布量を調節し、純水の浸漬時間を8分に変更した以外は、試料No.201と同様にして、試料No.207のパターン状透明導電体を作製した。
得られた試料No.207のパターン状透明導電体の導電層について、試料No.201と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、53,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.207のパターン状透明導電体について、試料No.201と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.16であった。
【0165】
<試料No.208の作製>
試料No.207において、純水による浸漬で、純水を、塩化カリウム、臭化カリウム、及びヨウ化カリウムの混合水溶液(0.1質量%)に代え、浸漬時間を2分30秒に変更し、純水でのリンスを1回に変更した以外は、試料No.207と同様にして、試料No.208のパターン状透明導電体を作製した。
得られた試料No.208のパターン状透明導電体の導電層について、試料No.201と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、630,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.208のパターン状透明導電体について、試料No.201と同様にして、求めた原子比(X/A)は、1.9であった。
【0166】
<試料No.209の作製>
試料No.204において、パターン形成後の膜に、塗布用基板として使用したPETを、光学粘着剤(パナック社製、PD−S1)により、25℃、湿度55%RH環境下、ハンドローラ(一進産業株式会社製、W−130)を用いて貼り合わせた以外は、試料No.204と同様にして、試料No.209のパターン状透明導電体を作製した。
得られた試料No.209の透明導電体の導電層は試料No.204と同等であるため、ハロゲン元素の含有量、及び原子比(X/A)は試料No.204の値を代用した。
【0167】
<試料No.210の作製>
試料No.209において、貼り合せるPETフィルムを、試料No.110で作製したUV剤含有高分子フィルムに代えた以外は、試料No.209と同様にして、試料No.210のパターン状透明導電体を作製した。
得られた試料No.210の透明導電体の導電層は試料No.204と同等であるため、ハロゲン元素の含有量、及び原子比(X/A)は試料No.204の値を代用した。
【0168】
<試料No.211の作製>
試料No.209において、貼り合せるPETフィルムを、試料No.111で作製したガスバリアフィルムに代えた以外は、試料No.209と同様にして、試料No.211のパターン状透明導電体を作製した。
得られた試料No.211の透明導電体の導電層は試料No.204と同等であるため、ハロゲン元素の含有量、及び原子比(X/A)は試料No.204の値を代用した。
【0169】
<試料No.212の作製>
試料No.104で作製した導電膜を用いて、以下のスクリーン印刷法により、パターニング処理を行い、試料No.212のパターン状透明導電体を作製した。
−スクリーン印刷法−
スクリーン印刷は、ミノグループ社製WHT−3型とスキージNo.4イエローを使用した。溶解液は、CP−48S−A液と、CP−48S−B液と(いずれも、富士フイルム株式会社製)、純水とを、質量比で1:1:1となるように混合し、アロンA−20L(東亞合成株式会社製)により増粘させ、溶解液とした。
銀ナノワイヤーを溶解する溶解液の粘度は、25℃で、31,000mPa・sであった。なお、粘度の測定は、ブルックフィールド粘度計により行った。
【0170】
得られた試料No.212のパターン状透明導電体の導電層について、試料No.201と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、195,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.212のパターン状透明導電体について、試料No.201と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.58であった。
【0171】
<試料No.213の作製>
試料No.104で作製した導電膜を用いて、以下のインクジェット法により、パターニング処理を行い、試料No.213のパターン状透明導電体を作製した。
−インクジェット法−
インクジェット法は、富士フイルム株式会社製マテリアルプリンターDMP−2831を用いて行った。溶解液は、CP−48S−A液と、CP−48S−B液(いずれも、富士フイルム株式会社製)と、純水とを質量比で1:1:6となるように混合し、アロンA−20L(東亞合成株式会社製)により増粘させ、溶解液を作製した。
銀ナノワイヤーを溶解する溶解液の粘度は、25℃で、10mPa・sであった。なお、粘度の測定は、ブルックフィールド粘度計により行った。
【0172】
得られた試料No.213のパターン状透明導電体の導電層について、試料No.201と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、210,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.213のパターン状透明導電体について、試料No.201と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.62であった。
【0173】
<試料No.214の作製>
試料No.104で作製した導電膜を用いて、以下のレジストエッチング法により、パターニング処理を行い、試料No.214のパターン状透明導電体を作製した。
−レジストエッチング法−
試料No.104と同様にして作製した導電膜上に、No.201で作製したネガ型フォトレジスト液を用いた以外は、同様にして、フォトレジストパターン膜を形成した。
溶解液は、CP−48S−A液と、CP−48S−B液(いずれも、富士フイルム株式会社製)と、純水とを、質量比で1:1:6となるように混合し、アロンA−20L(東亞合成株式会社製)により増粘させて、作製した。
銀ナノワイヤーを溶解する溶解液の粘度は、25℃で、10mPa・sであった。なお、粘度の測定は、ブルックフィールド粘度計により行った。
次に、作製した導電膜上にフォトレジストパターン膜がある状態で、25℃の溶解液槽へ1分間浸漬した。その後、2分間純水にて溶解液成分を洗浄した。更に、10質量%水酸化カリウム溶液に浸漬させて、フォトレジストを除去し、試料No.214のパターン状導電膜を得た。
【0174】
得られた試料No.214のパターン状透明導電体の導電層について、試料No.201と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、186,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.214のパターン状透明導電体について、試料No.201と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.56であった。
【0175】
<試料No.215の作製>
試料No.214において、ネガ型フォトレジストの代わりに、富士フイルム株式会社製トランサーフイルム黒(ブラックマトリックス用)を用いた以外は、試料No.214同様にして、試料No.215のパターン状透明導電体を得た。
得られた試料No.215のパターン状透明導電体の導電層について、試料No.201と同様にして、測定したハロゲン元素の含有量は、200,000質量ppmであった。
また、得られた試料No.215のパターン状透明導電体について、試料No.201と同様にして、求めた原子比(X/A)は、0.59であった。
【0176】
次に、作製した試料No.201〜No.215のパターン状透明導電体について、試料No.101〜No.111と同様にして、諸特性を評価した。更に、以下のようにして、絶縁性、及び解像度の評価を行った。結果を表3に示す。
【0177】
<絶縁性(耐マイグレーション性)>
得られた各透明導電体について、パターニング箇所における非導電部の表面抵抗を、抵抗器(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)を用いて測定した。実際の測定は、プローブ先端部に銅線を付け、パターン細部においても表面抵抗が測定可能となるよう装置を改造して測定を行った。評価基準は、以下の通りである。なお、解像度は数字が大きいほど優れていることを示す。
〔評価基準〕
「1」:表面抵抗が10未満で、非導電部として作製した箇所の導電性が高く、実用上問題あるレベルである
「2」:表面抵抗が10Ω/□以上、10Ω/□未満で、非導電部として作製した箇所の導電性が高く、実用上問題あるレベルである
「3」:表面抵抗が10Ω/□以上、10Ω/□未満で、非導電部として作製した箇所の導電性が確認できるが、実用上問題ないレベルである
「4」:表面抵抗が10Ω/□以上、10Ω/□未満で、非導電部として作製した箇所の導電性が確認できるが、実用上問題ないレベルである
「5」:表面抵抗が10Ω/□以上(装置上O.L.と表示)で、非導電部として作製した箇所の導電性がほぼ確認できず、実用上問題ないレベルである
【0178】
<解像度の評価>
得られた各透明導電体と同様の方法により、L(ライン)/S(スペース)=100μm/30μmのパターンを作製し、パターニング箇所における導電部の太さを、光学顕微鏡にて観察した。評価基準は、以下の通りである。なお、解像度は、数字が大きいほど優れていることを示す。
〔評価基準〕
「1」:導電部が60μm未満、又は115μm以上(実質隣接ラインと区別がつかない)で、実用上問題あるレベルである
「2」:導電部が70μm未満、又は112μm以上で、実用上問題あるレベルである
「3」:導電部が80μm未満、又は110μm以上で、実用上問題ないレベルである
「4」:導電部が90μm未満、又は108μm以上で、実用上問題ないレベルである
「5」:導電部が94μm未満、又は106μm以上で、実用上問題ないレベルである
【0179】
【表3−1】

【表3−2】

*試料No.201は、超音波処理により銀ナノワイヤーが切断されてしまい、接点数が減少しているため、表面抵抗が上がり、耐久性が低下した。
【0180】
(実施例3)
−タッチパネルの作製−
試料No.202のパターン状透明導電体を用いて、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行、株式会社テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004年12月発行)、FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292等に記載の方法により、タッチパネルを作製した。
作製したタッチパネルを使用した場合、透過率の向上により視認性に優れ、かつ導電性の向上により素手、手袋を嵌めた手、指示具のうち少なくとも一つによる文字等の入力又は画面操作に対し応答性に優れるタッチパネルを製作できることが分かった。なお、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサ及びタッチパッドを含むものとする。
【0181】
(実施例4)
<集積型太陽電池の作製>
−アモルファス太陽電池(スーパーストレート型)の作製−
ガラス基板上に、試料No.102の透明導電体を形成した。該透明導電体の上部にプラズマCVD法により厚みが15nmのp型、前記p型の上部に厚みが350nmのi型、前記i型の上部に厚みが30nmのn型アモルファスシリコンを形成した。前記n型アモルファスシリコンの上部に裏面反射電極として厚み20nmのガリウム添加酸化亜鉛層、該ガリウム添加酸化亜鉛層の上部に厚み200nmの銀層を形成し、光電変換素子を作製した。
【0182】
(実施例5)
<集積型太陽電池の作製>
−CIGS太陽電池(サブストレート型)の作製−
ガラス基板上に、直流マグネトロンスパッタ法により厚みが500nm程度のモリブデン電極、前記電極の上部に真空蒸着法により厚みが2.5μmのカルコパイライト系半導体材料であるCu(In0.6Ga0.4)Se薄膜、前記Cu(In0.6Ga0.4)Se薄膜の上部に溶液析出法により厚みが50nmの硫化カドミニウム薄膜を形成した。前記硫化カドミニウム薄膜の上部に、試料No.102の透明導電体を形成し、光電変換素子を作製した。
【0183】
<太陽電池特性(変換効率)の評価>
作製した実施例4及び5の太陽電池について、AM1.5、100mW/cmの疑似太陽光を照射することで太陽電池特性(変換効率)を測定した。結果を表4に示す。
【0184】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明の導電膜は、長波長領域まで高透過率であり、かつ高導電性を有し、耐光性及び耐マイグレーション性が向上しているので、例えば、タッチパネル、ディスプレイ用帯電防止膜、電磁波シールド、有機EL又は無機ELディスプレイ用電極、電子ペーパー用電極、フレキシブルディスプレイ用電極、フレキシブルディスプレイ用帯電防止膜、太陽電池用電極、その他の各種デバイスなどに幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0186】
10、20、30 タッチパネル
11、21、31 透明基板
12、13、22、23、32、33 透明導電体
24 絶縁層
25 絶縁カバー層
14、17 保護膜
15 中間保護膜
16 グレア防止膜
18 電極端子
34 空気層
35 透明フィルム
36 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性繊維を含有する導電膜であって、
前記導電膜中の前記導電性繊維を構成する元素の含有量Aと、前記導電膜中のハロゲン元素の含有量Xとの原子比(X/A)が、次式、0.01<X/A<0.9を満たすことを特徴とする導電膜。
【請求項2】
0.1≦X/A<0.9を満たす請求項1に記載の導電膜。
【請求項3】
0.4≦X/A<0.9を満たす請求項1から2のいずれかに記載の導電膜。
【請求項4】
導電膜中のハロゲン元素の含有量が400,000質量ppm以下である請求項1から3のいずれかに記載の導電膜。
【請求項5】
導電膜中のハロゲン元素の含有量が4,000質量ppm〜300,000質量ppmである請求項4に記載の導電膜。
【請求項6】
表面抵抗が500Ω/□以下である請求項1から5のいずれかに記載の導電膜。
【請求項7】
導電性繊維が、金属ナノワイヤーである請求項1から6のいずれかに記載の導電膜。
【請求項8】
金属ナノワイヤーが、銀、及び銀と銀以外の金属との合金のいずれかからなる請求項7に記載の導電膜。
【請求項9】
導電性繊維の平均短軸長さが50nm以下であり、かつ平均長軸長さが1μm以上である請求項1から8のいずれかに記載の導電膜。
【請求項10】
導電性繊維の含有量が、0.005g/m〜0.5g/mである請求項1から9のいずれかに記載の導電膜。
【請求項11】
更にポリマーを含有し、導電性繊維の含有量(A)と、前記ポリマーの含有量(B)との質量比(A/B)が、0.2〜3である請求項1から10のいずれかに記載の導電膜。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の導電膜を用いたタッチパネル。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載の導電膜を用いた太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−230881(P2012−230881A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137454(P2011−137454)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】