説明

導電膜表面用粘着剤および導電膜表面用粘着シート

【課題】高温高湿の環境下で貼付対象である導電膜の抵抗値増加率を大幅に抑制し、高温高湿の環境下においても情報端末機器の故障の原因となる導電膜の劣化を生じさせない導電膜表面用粘着剤、および、これを用いた導電膜表面用粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の導電膜表面用粘着剤は、導電膜が表面に設けられた導電性シートの導電膜面に貼付するための粘着シートに用いられる粘着剤であって、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキルアクリレートモノマー由来の構成単位(a1)を50〜85質量%、複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)を10〜30質量%、水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)を0.1〜10質量%含むアクリル系共重合体(A)および架橋剤(B)を含有してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜に対して貼付する粘着剤、特に、静電容量方式タッチパネルや液晶ディスプレイ、電子ペーパーなどの部材の一部として用いられる導電膜に対して貼付する導電膜表面用粘着剤、および、これを用いた導電膜表面用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
透明な高分子基板やガラス上に、スズ添加酸化インジウム(ITO)や酸化亜鉛、酸化スズなどの導電性材料からなる透明導電膜が形成された積層体は、タッチパネル、液晶ディスプレイ、電子ペーパーなどの情報端末機器における透明電極として広く用いられている。
このような透明電極が用いられる情報端末機器は、近年、小型化、薄型化が進んでおり、製品内部は複雑かつ緻密な構造をなしている。情報端末機器では、例えば、表示装置や基板などの部材と、透明電極を有する積層体とが、粘着シートを介して直接固定されることによって、無駄な空間を省略する工夫がなされている。このような構造の情報端末機器では、透明電極と粘着剤が直接接触している。
【0003】
また、情報端末機器において、透明電極と粘着剤が直接接触する構造を採用したものの他の例としては、静電容量方式タッチパネルが挙げられる。
例えば、図4の断面図に示すように、静電容量方式タッチパネル100は、ハードコート層101、樹脂フィルム層102、加飾印刷層103、埋め込み用粘着剤層104、ガラス層105および透明導電膜106が、この順に積層された構成をなしている。そして、この静電容量方式タッチパネル100は、透明導電膜106において、粘着剤層107を介して、表示装置108の表示面108aに直接固定されている。
このような静電容量方式タッチパネル100では、透明導電膜106に微弱な電圧が印加され、その表面に電荷が蓄えられることにより、透明導電膜106に電界が形成された状態が維持されている。そのため、ハードコート層101の表面101aに指やタッチペンなどの導体を接触させると、透明導電膜106の電界が変化して、透明導電膜106が放電する。そして、この時に透明導電膜106の四隅に流れる微弱な電流の変化を表示装置108が計算処理することにより、静電容量方式タッチパネル100における接触位置が検出される。
【0004】
上述の情報端末機器のように、内部部材において粘着剤が導電膜に直接接触する場合、従来の粘着剤は、高温環境下では、その主成分であるアクリル系共重合体を形成するアクリル酸のカルボキシル基(−COOH)に起因する酸性により、貼付対象である導電膜を腐食する傾向にある。この腐食により、導電膜の電気抵抗値が増加すると、情報端末機器の故障の原因となる。
特に、静電容量方式タッチパネル100の場合、接触位置の検出を高精度化するためには、表示装置108の表示面108aに透明導電膜106を固定する粘着剤層107には、透明導電膜106の電気容量(静電容量)を変化させない性能が要求される。このような要求に対応して、金属層の腐食を有効に防止することができる粘着剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−045315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている粘着剤組成物は、金属の腐食を防止する効果を目的として、アクリル系共重合体と、ベンゾトリアゾールやその誘導体とを必須成分としている。しかしながら、この粘着剤組成物では、アクリル系共重合体に、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体が重合しているのではなくて、アクリル系共重合体を架橋してなる基体に、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体が分散しているに過ぎないため、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体のブリードによって粘着力が変動する問題や、これらの成分の経時変化による変色が懸念される。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高温高湿の環境下で貼付対象である導電膜の抵抗値増加率を大幅に抑制し、高温高湿の環境下においても情報端末機器の故障の原因となる導電膜の劣化を生じさせない導電膜表面用粘着剤、および、これを用いた導電膜表面用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の導電膜表面用粘着剤は、導電膜が表面に設けられた導電性シートの導電膜面に貼付するための粘着シートに用いられる粘着剤であって、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキルアクリレートモノマー由来の構成単位(a1)を50〜85質量%、複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)を10〜30質量%、水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)を0.1〜10質量%含むアクリル系共重合体(A)および架橋剤(B)を含有してなることを特徴とする。
【0009】
本発明の導電膜表面用粘着剤において、前記複素環式基含有モノマー(a2)に含まれるヘテロ原子が窒素原子であることが好ましい。
【0010】
本発明の導電膜表面用粘着剤において、前記複素環式基含有モノマー(a2)がアクリロイルモルホリンであることが好ましい。
【0011】
本発明の導電膜表面用粘着シートは、本発明の粘着剤が、基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の導電膜表面用粘着シートにおいて、前記基材フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記導電性シートを構成する樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0013】
本発明の導電膜表面用粘着シートにおいて、前記導電性シートを構成する導電膜が金属酸化物からなることが好ましい。
【0014】
本発明の導電膜表面用粘着シートにおいて、前記金属酸化物がスズ添加酸化インジウムであることが好ましい。
【0015】
本発明の導電膜表面用粘着シートは、タッチパネルの部材として使用されることが好ましい。
【0016】
本発明の導電膜表面用粘着シートにおいて、前記タッチパネルが静電容量方式であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電膜表面用粘着剤によれば、高温高湿の環境下において、この導電膜表面用粘着剤を用いた導電膜表面用粘着シートが貼付された導電性シートの導電膜の抵抗値の増加率を大幅に抑制できるため、高温高湿の環境下においても、本発明の導電膜表面用粘着シートを用いた情報端末機器を良好な状態で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の導電膜表面用粘着シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の導電膜表面用粘着シートの実施例および比較例において、電気抵抗値測定試験に用いられる抵抗値測定サンプルの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の導電膜表面用粘着シートの実施例および比較例における電気抵抗値測定試験の説明図である。
【図4】静電容量方式タッチパネルの一例およびその適用例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の導電膜表面用粘着剤、および、これを用いた導電膜表面用粘着シートの実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0020】
本明細書および特許請求の範囲において、「構成単位」とは、樹脂成分(重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
【0021】
「導電膜表面用粘着剤」
本発明の導電膜表面用粘着剤は、導電膜が表面に設けられた導電性シートの導電膜面に貼付するための粘着シートに用いられ、アクリル系共重合体(A)および架橋剤(B)を含有してなる粘着剤である。
また、アクリル系共重合体(A)は、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキルアクリレートモノマー由来の構成単位(a1)を50〜85質量%、複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)を10〜30質量%、水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)を0.1〜10質量%含んでなる共重合体である。
【0022】
アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキルアクリレートモノマーとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基含有アクリレートモノマーであって、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、本発明の導電膜表面用粘着剤が適度な粘着力を発現できる観点から、ブチルアクリレートが好ましい。
なお、ここでいうアルキル基とは、IUPAC命名法に則りアルカンの末端から水素を1つ取り除いた置換基であり、一般式−C2n+1で示されるものを指す。
【0023】
アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキルアクリレートモノマー由来の構成単位(a1)の含有量は、モノマー全量を100質量%としたときに、50〜85質量%であり、好ましくは55〜80質量%であり、より好ましくは60〜80質量%である。
アルキルアクリレートモノマー由来の構成単位(a1)の含有量が、この範囲内であれば、本発明の導電膜表面用粘着剤は適度な粘着力を発現するとともに、必須成分である複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)、および、水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)を含有させる余地ができる。
【0024】
すなわち、アルキルアクリレートモノマー由来の構成単位(a1)の含有量が50質量%未満では、本発明の導電膜表面用粘着剤は十分な粘着力を発現しない。一方、アルキルアクリレートモノマー由来の構成単位(a1)の含有量が85質量%を超えると、目的とする機能を発現させるために十分な量の複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)、および、水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)を含有させることができなくなる。
【0025】
複素環式基含有モノマーとしては、ヘテロ原子が窒素原子、酸素原子、硫黄原子などであるものが挙げられる。
これらの複素環式基含有モノマーの中でもヘテロ原子が窒素原子であるものとしては、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルピペリジンなどが挙げられる。
複素環式基含有モノマーの中でもヘテロ原子が酸素原子であるものとしては、(メタ)アクリロイルモルホリン、フラニルアクリレートなどが挙げられる。
複素環式基含有モノマーの中でもヘテロ原子が硫黄原子であるものとしては、チオフェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの複素環式基含有モノマーの中でも、高温高湿環境下において、本発明の導電膜表面用粘着剤の貼付対象である導電膜の腐食防止効果が高いという観点から、ヘテロ原子が窒素原子であるものが好ましく、アクリロイルモルホリンがより好ましい。
アクリロイルモルホリンは、アクリル系共重合体(A)を構成する、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキルアクリレートモノマーや水酸基含有モノマーと共重合することができるとともに、その共重合体のガラス転移点(Tg)が比較的高い(145℃)ので、本発明の導電膜表面用粘着剤は、高温高湿の環境下においても、他のアクリルモノマーからなる共重合体を用いたものよりも耐熱性に優れたものとなる。ゆえに、アクリル系共重合体(A)を形成するモノマーとしてアクリロイルモルホリンを用いることにより、高温高湿の環境下においても、アクリル系共重合体(A)が分解して、その分解生成物が本発明の導電膜表面用粘着剤の貼付対象である導電膜を腐食することを防止できると推測される。
【0026】
複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)の含有量は、モノマー全量を100質量%としたときに、10〜30質量%であり、好ましくは14〜26質量%であり、より好ましくは17〜22質量%である。
複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)の含有量が、この範囲内であれば、本発明の導電膜表面用粘着剤は、高温高湿下における変形を抑制できるとともに、適度な粘着力を発現する。
【0027】
すなわち、複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)の含有量が10質量%未満では、本発明の導電膜表面用粘着剤は高温高湿下における変形を抑制できない。一方、複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)の含有量が30質量%を超えると、本発明の導電膜表面用粘着剤は十分な粘着力を発現しない。
【0028】
水酸基含有モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの中でも、粘着力を高める観点から、2−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
【0029】
水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)の含有量は、モノマー全量を100質量%としたときに、0.1〜10質量%であり、好ましくは0.3〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜3質量%である。
水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)の含有量が、この範囲内であれば、本発明の導電膜表面用粘着剤は適度な粘着力を発現するとともに、アクリル系共重合体(A)が架橋剤(B)との架橋起点を確保することができるので、本発明の導電膜表面用粘着剤は適度な凝集力を得ることができる。
【0030】
すなわち、水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)の含有量が0.1質量%未満では、本発明の導電膜表面用粘着剤は凝集力が不足する。一方、水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)の含有量が10質量%を超えると、十分な粘着力を発現しない。
【0031】
なお、アクリル系共重合体(A)は、その構成単位として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、2−カルボキシエチルメタクリレートなどのカルボキシル基含有モノマー由来の構成単位を含まないことが好ましい。アクリル系共重合体(A)が、カルボキシル基含有モノマーを含んでいる場合、本発明の導電膜表面用粘着剤の貼付対象である導電性シートの導電膜を腐食するおそれがある。
【0032】
架橋剤(B)としては、上記の水酸基含有モノマーの水酸基と反応して架橋し、粘着剤として必要な凝集力を発現するものが用いられ、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、入手しやすさなどの観点から、有機多価イソシアネート化合物が好ましい。
【0033】
有機多価イソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4´−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4´−ジイソシアネート、リジンイソシアネートなどが挙げられる。
また、これらの多価イソシアネート化合物の三量体、並びに、これらの多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートレタンプレポリマーなども使用できる。
【0034】
有機多価エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、N,N,N´,N´−テトラグリシジル−4,4−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0035】
有機多価イミン化合物としては、N,N´−ジフェニルメタン−4,4´−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオナート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオナート、N,N´−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミンなどが挙げられる。
【0036】
架橋剤の含有量は、本発明の導電膜表面用粘着剤の粘着力を高める観点から、アクリル系共重合体(A)の固形分100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.03〜7質量部であることがより好ましく、0.05〜5質量部であることが特に好ましい。
【0037】
本発明の導電膜表面用粘着剤は、シート状に加工された様々な粘着シートの形態をなしうる。例えば、本発明の導電膜表面用粘着剤は、この導電膜表面用粘着剤からなる粘着剤層の両面に剥離シートが設けられた、基材フィルム無し両面粘着シートの形態とすることができる。このような形態とすることにより、本発明の導電膜表面用粘着剤は、ITOやAgナノワイヤーなどからなる導電膜と、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置の固定に用いられる。
【0038】
本発明の導電膜表面用粘着剤は、上記の導電膜に対する粘着力が8N/25mm以上であることが好ましく、より好ましくは9N/25mm以上である。
本発明の導電膜表面用粘着剤の導電膜に対する粘着力が8N/25mm以上であれば、強固に固着するため、加熱などによる導電性シートの伸縮を粘着力による固定で抑制し、導電性シートの伸縮による導電膜の抵抗値変化を抑制できる。
また、導電膜が金属酸化物からなる場合、特に、導電性シートの伸縮により、抵抗値が変化しやすいため、導電性シートに形成される導電膜は金属酸化物であることが好ましい。
【0039】
次に、本発明の導電膜表面用粘着剤の製造方法を説明する。
まず、上述した所定の配合比で、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキルアクリレートモノマー、複素環式基含有モノマー、および、水酸基含有モノマーを、溶媒中で撹拌、混合して反応させ、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキルアクリレートモノマー由来の構成単位(a1)、複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)、および、水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)から構成されるアクリル系共重合体(A)を合成する(工程A)。
得られたアクリル系共重合体(A)は、次の工程において、反応時に使用する溶媒に溶解した溶液の形態、あるいは、反応時に使用する溶媒を除去した形態で用いられる。
【0040】
工程Aでは、反応温度や反応時間は、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキルアクリレートモノマー由来の構成単位(a1)、複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)、水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)などの種類やこれらの配合比などに応じて適宜調整される。
【0041】
工程Aで用いられる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
また、工程Aでは、必要に応じて、触媒を添加してもよい。
【0042】
次いで、アクリル系共重合体(A)の固形分100質量部に対して、架橋剤(B)を0.01〜10質量部添加して、これらを溶媒中で撹拌、混合して反応させ、本発明の導電膜表面用粘着剤を調製する(工程B)。
得られた導電膜表面用粘着剤は、後述する導電膜表面用粘着シートの製造工程において、反応時に使用する溶媒に溶解した溶液の形態、あるいは、反応時に使用する溶媒を除去した固体の形態で用いられる。
【0043】
工程Bでは、反応温度や反応時間は、アクリル系共重合体(A)、架橋剤(B)などの種類やこれらの配合比などに応じて適宜調整される。
また、工程Bでは、工程Aと同様の溶媒が用いられる。
【0044】
「導電膜表面用粘着シート」
図1は、本発明の導電膜表面用粘着シートの一実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の導電膜表面用粘着シート10は、基材フィルム11と、基材フィルム11の一方の面11aに設けられ、本発明の導電膜表面用粘着剤からなる粘着剤層12と、粘着剤層12の基材フィルム11に接している面とは反対側の面(以下、「一方の面」と言う。)12aに貼設された剥離シート13とから概略構成されている。
この導電膜表面用粘着シート10は、基材フィルム11の一方の面11aに粘着剤層12が設けられた基材フィルム付き片面粘着シートである。
【0045】
基材フィルム11としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルフィド、ポリ(4−メチルペンテン−1)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、トリアセチルセルロース、ポリメチルメタクリレートなどからなる樹脂フィルム、および、その樹脂フィルムの表面にハードコート層が設けられたフィルム、並びに、これらの樹脂フィルムに発泡構造が設けられたフィルム、上質紙、コート紙、グラシン紙、ラミネート紙などの紙基材などが挙げられる。
導電性シートの基材としては、一般的に、ポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられることが多い。本発明に用いられる基材フィルム11と導電性シートの材質が同じであれば、温度変化時に同様の伸縮挙動を示すため、基材フィルム11と導電性シートの伸縮度合いの差によって導電膜にかかる応力を抑制できる。よって、導電膜の劣化を防ぐことができ、高温高湿下における透明導電膜の抵抗値変化を抑制することができる。
そのような観点から、本発明に用いられる基材フィルム11はポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0046】
基材フィルム11の厚みは、5μm〜300μmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜100μmである。
【0047】
剥離シート13としては、種々の剥離シートが用いられるが、表面に剥離性を有するシート材が用いられる。このようなシート材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、トリアセチルセルロースなどからなる樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、グラシン紙、ラミネート紙などが挙げられる。
【0048】
剥離シート13に用いられるシート材の表面に剥離性を付与するには、その表面にフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル基含有カルバメートなどの剥離剤を塗布して、その表面にこれらの剥離剤を付着させる。
剥離シート13の厚みは、5μm〜300μmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜200μmである。剥離シート13用のシート材としてポリエチレンテレフタレートを用いた場合、剥離シート13の厚みは10μm〜100μmであることが最も好ましい。
【0049】
次に、導電膜表面用粘着シート10の製造方法を説明する。
まず、剥離シート13の一方の面13aに、本発明の導電膜表面用粘着剤を溶媒に溶解して調製した粘着剤含有組成物を塗工した後、温度80〜150℃で30秒〜5分間加熱して、溶媒や低沸点成分を蒸発させる。これにより、剥離シート13の一方の面13aに、本発明の導電膜表面用粘着剤からなる粘着剤層12を形成する(工程C)。
【0050】
この工程Cでは、剥離シート13の一方の面13aに、粘着剤含有組成物を塗工する方法としては、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法などの公知の塗工方法が用いられる。
また、粘着剤含有組成物の塗工に用いられる塗布装置としては、特に限定されないが、公知の装置が用いられる。
【0051】
さらに、乾燥後の導電膜表面用粘着剤の塗布量は、1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜50μmであり、最も好ましくは10〜30μmである。
乾燥後の導電膜表面用粘着剤の塗布量が、この範囲内であれば、粘着剤層12は十分な粘着力を発現するとともに、被着対象の形状に刃を入れて打ち抜く加工(打ち抜き加工)を行う際に、粘着剤の変形によって、予定した形状から染み出すおそれがない。
すなわち、乾燥後の導電膜表面用粘着剤の塗布量が、1μm未満では、粘着剤層12の粘着力が不十分となることがある。一方、乾燥後の導電膜表面用粘着剤の塗布量が、100μmを超えると、打ち抜き加工適正が低下する。
【0052】
次いで、粘着剤層12の剥離シート13に接している面とは反対側の面(以下、「他方の面」と言う。)12bに、基材フィルム11を貼り合せて、導電膜表面用粘着シート10を得る(工程D)。
【0053】
なお、この実施形態では、基材フィルム11の一方の面(片面)11aに粘着剤層12が設けられた基材フィルム付き片面粘着シートである、導電膜表面用粘着シート10を例示したが、本発明の導電膜表面用粘着シートはこれに限定されない。
本発明の導電膜表面用粘着シートは、上述のように、本発明の導電膜表面用粘着剤からなる粘着剤層の両面に剥離シートが設けられた、基材フィルム無し両面粘着シートとすることもできる。
【0054】
本発明の導電膜表面用粘着シートが、基材フィルム無し両面粘着シートの形態をなす場合、2枚の剥離シートが必要となる。
すなわち、基材フィルム無し両面粘着シートを構成するには、剥離シートの一方の面に塗工された粘着剤層における剥離シートに接していない面に、別の剥離シートを貼り合わせて積層体とする。その際、2枚の剥離シートの剥離力に差をつけておくことが好ましい。2枚の剥離シートの剥離力に差をつけておけば、剥離力が小さい剥離シート(軽剥離シート)側のみを剥がすときに、剥離力が大きい剥離シート(重剥離シート)側から、粘着剤層が浮くおそれや、双方の剥離シートに追従しようとして粘着剤層が引き伸ばされて変形するおそれを防ぐことができる。
あるいは、基材フィルム無し両面粘着シートを構成するには、両面に剥離剤を塗布した剥離シートの一方の面に、粘着剤層を設けた後、それをロール状に巻いてもよい。
【0055】
また、本発明の導電膜表面用粘着シートは、基材フィルムの一方の面および他方の面(両面)に粘着剤層が設けられた基材フィルム付き両面粘着シートとすることもできる。
本発明の導電膜表面用粘着シートが、基材フィルム付き両面粘着シートの形態をなす場合、(a)基材フィルム無し両面粘着シートの剥離シートの一方を剥離して、基材フィルムの両面に、その基材フィルム無し両面粘着シートを貼り合せて積層体を構成する、(b)基材フィルムの両面に、粘着剤含有組成物を直接塗布して粘着剤層を形成し、それぞれの粘着剤層に剥離シートを貼り合せて積層体を構成する、(c)基材フィルム無し両面粘着シートの剥離シートの一方を剥離して、基材フィルムの一方の面に、基材フィルム無し両面粘着シートを貼り合わせるとともに、基材フィルムの他方の面に、粘着剤含有組成物を直接塗布して粘着剤層を形成し、その粘着剤層に剥離シートを貼り合せて積層体を構成するなどの製造方法が採用される。
【0056】
本発明の導電膜貼付用粘着シートにおいて、貼付対象は基材フィルム上に導電膜が設けられた導電性シートである。
導電性シートとしては、特に限定されないが、例えば、上述の基材フィルム11と同様の基材フィルムに金属または金属酸化物などの導電性素材からなる導電膜が設けられたものが挙げられる。
【0057】
導電性素材としては、特に限定されないが、銀、銅、金、白金、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、スズ添加酸化インジウム(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)などが挙げられる。これらの導電性素材の中でも、電気抵抗率の高さの観点から金属酸化物が好ましく、金属酸化物の中でも、透明性の観点からスズ添加酸化インジウム(ITO)が最も好ましい。
なお、スズ添加酸化インジウム(ITO)とは、酸化インジウム(III)の結晶構造において、一部のインジウム原子がスズ原子に置換した金属酸化物のことである。
【0058】
導電性シートの中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にスズ添加酸化インジウム(ITO)がドライコーティングされた透明導電性フィルムは、製造コストの低減や搭載機器の軽薄化という面で、他の導電性シートよりも優れている。
【0059】
導電性シートとしてポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にスズ添加酸化インジウム(ITO)がドライコーティングされた透明導電性フィルムを用いた場合、本発明の導電膜貼付用粘着シートを構成する基材フィルムも、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。基材フィルムと導電性シートの材質が同じであれば、温度変化時に同様の伸縮挙動を示すため、基材フィルムと導電性シートの伸縮度合の差によって導電膜にかかる応力を抑制できる。よって、導電膜の劣化を防ぐことができ、高温高湿下における透明導電膜の抵抗値変化を抑制することができる。
これらの要素が求められる携帯電話・スマートフォン用タッチパネル、特に、投影型静電容量式タッチパネルについては、本発明の導電膜貼付用粘着シートを、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にスズ添加酸化インジウム(ITO)からなる導電膜が設けられた透明導電性フィルムに貼付したものを部材として用いることが好ましい。
【0060】
本発明の導電膜表面用粘着剤は、アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキルアクリレートモノマー由来の構成単位(a1)を50〜85質量%、複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)を10〜30質量%、水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)を0.1〜10質量%含むアクリル系共重合体(A)および架橋剤(B)を含有する。
本発明の導電膜貼付用粘着シートは、本発明の導電膜表面用粘着剤からなる粘着剤層を有しており、高温高湿の環境下においても貼付対象の導電膜の電気抵抗値の増加率を許容範囲内に抑えることができるから、タッチパネルの部材として使用されることが好ましい。具体的には、本発明の導電膜表面用粘着剤からなる粘着剤層は、温度80℃の環境下、あるいは、温度60℃かつ湿度90%RHの環境下において、貼付対象の導電膜の電気抵抗値の増加率を20%以下に抑えることができる。導電膜の電気抵抗値の増加率が20%以下であれば、後述する静電容量方式タッチパネルの接触位置の検出において、不具合を生じることがない。
【0061】
また、タッチパネルには、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式などの方式が挙げられる。これらの中でも、静電容量方式タッチパネルは、画面などに指やタッチペンを接触させた際、透明導電膜の電気容量の変化を検知することによってデバイスを作動させる方式であり、そのタッチパネルが適用された装置が電気容量の変化を計算処理することにより、タッチパネルにおける接触位置が検出される。
このような原理から、静電容量方式タッチパネルは、透明導電膜のわずかな電気抵抗値の変化が精度の低下につながり、結果として故障の原因となる。本発明の導電膜貼付用粘着シートは、高温高湿の環境下においても貼付対象の導電膜の電気抵抗値を増加させないことから、特に、静電容量方式タッチパネルの部材として用いられることが好ましい。
また、静電容量方式タッチパネルは表面型と投影型があるが、本発明の導電膜貼付用粘着シートはどちらの型にも用いることができる。
【0062】
本発明の導電膜表面用粘着剤、および、これを用いた導電膜表面用粘着シートによれば、高温高湿の環境下において、導電膜表面用粘着シートが貼付された導電性シートの導電膜の抵抗値の増加率を大幅に抑制できるため、高温高湿の環境下においても、本発明の導電膜表面用粘着シートを用いた情報端末機器を良好な状態で用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
「実施例1」
ブチルアクリレート(BA)、メチルアクリレート(MA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、および、アクリロイルモルホリン(ACMO)を、酢酸エチル中、質量比で、BA:MA:HEA:ACMO=79:2:2:17で撹拌、混合し、これらのモノマーを共重合させて、アクリル酸エステル共重合体(BA:MA:HEA:ACMO=79:2:2:17、分子量90万)を合成した。
得られたアクリル酸エステル共重合体は、酢酸エチルに溶解した溶液(固形分濃度35.1%)として、次工程に用いた。
次いで、アクリル酸エステル共重合体の溶液100質量部に、イソシアネート系架橋剤(東洋インキ社製、製品名「BHS−8515」、固形分濃度37.5%)0.5質量部を添加し、撹拌、混合して、アクリル系粘着剤溶液を調製した。このとき、アクリル酸エステル共重合体の固形分100質量部に対するイソシアネート系架橋剤の添加量は0.53質量部であった。
次いで、重剥離シート(リンテック社製、製品名「SP−PET38 T103−1」)の一方の面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるようにアクリル系粘着剤溶液を塗工し、温度120℃で2分間加熱して、重剥離シートの一方の面に、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層を形成した。
次いで、粘着剤層の粘着面に、軽剥離シート(リンテック社製、製品名「SP−PET38 1031」)を貼り合せて、基材フィルム無し両面粘着シートを得た。
【0065】
「実施例2」
アクリル酸エステル共重合体(BA:MA:HEA:ACMO=83.5:2:0.5:14、分子量72万)を合成し、それを酢酸エチルに溶解した溶液(固形分濃度35.7%)100質量部に、イソシアネート系架橋剤(東洋インキ社製、製品名「BXX5640」、固形分濃度35%)1.8質量部を添加し、撹拌、混合して、アクリル系粘着剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にして、基材フィルム無し両面粘着シートを得た。
このとき、アクリル酸エステル共重合体の固形分100質量部に対するイソシアネート系架橋剤の添加量は1.76質量部であった。
【0066】
「実施例3」
アクリル酸エステル共重合体(BA:MA:HEA:ACMO=79:1:20、分子量80万)を合成し、それを酢酸エチルに溶解した溶液(固形分濃度30%)100質量部に、イソシアネート系架橋剤(綜研化学社製、製品名「TD−75」、固形分濃度75%)0.45質量部を添加し、撹拌、混合して、アクリル系粘着剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にして、基材フィルム無し両面粘着シートを得た。
このとき、アクリル酸エステル共重合体の固形分100質量部に対するイソシアネート系架橋剤の添加量は1.13質量部であった。
【0067】
「比較例1」
ブチルアクリレート(BA)、メチルアクリレート(MA)、および、アクリル酸(AAc)を、酢酸エチル中、質量比で、BA:MA:AAc=77:20:3で撹拌、混合し、これらのモノマーを共重合させた、アクリル酸エステル共重合体(BA:MA:AAc=77:20:3、分子量80万)を合成し、それを酢酸エチルに溶解した溶液(固形分濃度28%)100質量部に、イソシアネート系架橋剤(東洋インキ社製、製品名「BHS−8515」、固形分濃度37.5%)1.75質量部およびアルミキレート系架橋剤(綜研化学社製、製品名「M−5A」、固形分濃度4.95%)1.75質量部を添加し、撹拌、混合して、アクリル系粘着剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にして、基材フィルム無し両面粘着シートを得た。
このとき、アクリル酸エステル共重合体の固形分100質量部に対するイソシアネート系架橋剤の添加量は2.34質量部であり、アルミキレート系架橋剤の添加量は0.31質量部であった。
【0068】
「比較例2」
ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)、および、アクリル酸(AAc)を、酢酸エチル中、質量比で、BA:EA:AAc=77:20:3で撹拌、混合し、これらのモノマーを共重合させた、アクリル酸エステル共重合体(BA:EA:AAc=77:20:3、分子量90万)を合成し、それを酢酸エチルに溶解した溶液(固形分濃度30%)100質量部に、アルミキレート系架橋剤(綜研化学社製、製品名「M−5A」、固形分濃度4.95%)4質量部を添加し、撹拌、混合して、アクリル系粘着剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にして、基材フィルム無し両面粘着シートを得た。
このとき、アクリル酸エステル共重合体の固形分100質量部に対するアルミキレート系架橋剤の添加量は0.66質量部であった。
【0069】
「比較例3」
ブチルアクリレート(BA)、トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)、および、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を、酢酸エチル中、質量比で、BA:TFEMA:HEA=87:10:3で撹拌、混合し、これらのモノマーを共重合させた、アクリル酸エステル共重合体(BA:TFEMA:HEA=87:10:3、分子量70万)を合成し、それを酢酸エチルに溶解した溶液(固形分濃度26.7%)100質量部に、イソシアネート系架橋剤(東洋インキ社製、製品名「BHS−8515」、固形分濃度37.5%)2質量部を添加し、撹拌、混合して、アクリル系粘着剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にして、基材フィルム無し両面粘着シートを得た。
このとき、アクリル酸エステル共重合体の固形分100質量部に対するイソシアネート系架橋剤の添加量は2.81質量部であった。
【0070】
「比較例4」
ブチルアクリレート(BA)、メチルアクリレート(MA)、アクリルアミド(AAm)、および、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を、酢酸エチル中、質量比で、BA:MA:AAm:HEA=68.5:30:1:0.5で撹拌、混合し、これらのモノマーを共重合させた、アクリル酸エステル共重合体(BA:MA:AAm:HEA=68.5:30:1:0.5、分子量90万)を合成し、それを酢酸エチルに溶解した溶液(固形分濃度29%)100質量部に、イソシアネート系架橋剤(綜研化学社製、製品名「TD−75」、固形分濃度75%)0.45質量部を添加し、撹拌、混合して、アクリル系粘着剤溶液を調製したこと以外は実施例1と同様にして、基材フィルム無し両面粘着シートを得た。
このとき、アクリル酸エステル共重合体の固形分100質量部に対するイソシアネート系架橋剤の添加量は1.16質量部であった。
【0071】
「比較例5」
シリコーン系粘着剤(東レダウコーニング社製、SD−4580)の100質量部に、白金触媒(東レダウコーニング社製、SRX−212)0.9質量部を添加し、撹拌、混合して、シリコーン系粘着剤溶液を調製した。
次いで、重剥離シートとしてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、PET50−A4100)の易接着面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるようにシリコーン系粘着剤溶液を直接塗工し、温度120℃で2分間加熱して、ポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着面に、シリコーン系粘着剤からなる粘着剤層を形成した。
次いで、粘着剤層の粘着面に、軽剥離シート(リンテック社製、SP−PET50D)を貼り合せて、基材フィルム無し両面粘着シートを得た。
【0072】
「評価」
実施例1〜3および比較例1〜5で得られた基材無し両面粘着シートについて、以下の試験方法により、電気抵抗値の測定、および、電気抵抗値の増加率の計算を行った。
図2を用いて、電気抵抗値測定試験に用いられる抵抗値測定サンプルを説明する。
スパッタにより、一方の面21aにITO膜22が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム21を用意し、ポリエチレンテレフタレートフィルム21のITO膜22が設けられていない面21bと、ガラス板23の一方の面23aとを、接合テープ24(リンテック社製、製品名「タックライナーTL−70」)を介して接合した。
次に、ITO膜22のポリエチレンテレフタレートフィルム21と接している面とは反対側の面(以下、「一方の面」と言う。)22aに、銀を含有した導電性樹脂材料(藤倉化成社製、製品名「FA−301CA」ドータイトタッチパネル回路タイプ)を20mm×5mmの長方形の電極形状になるように塗布した後、温度80℃で20分間加熱し、乾燥させて、抵抗値の測定点となる電極25を、距離をおいて2点作製した。その際、2点の電極25,25間の距離が2cmとなるように、その位置を調整した。
次に、実施例1〜3および比較例1〜5で得られた基材無し両面粘着シートの軽剥離シートを剥離して、露出した基材無し両面粘着シートの粘着剤層の一方の面に、基材フィルム26として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、「PET50−A4100」、厚み50μm)を貼付し、基材フィルム26と、その一方の面26aに設けられた、基材無し両面粘着シートの粘着剤層27とを有する基材フィルム付き片面粘着シートを作製した。
次に、得られた基材フィルム付き片面粘着シートを、20mm×250mmの大きさに裁断し、基材フィルム付き片面粘着シートの重剥離シートを剥離し、粘着剤層27が電極25の2点の際に沿うように(ギリギリ接しないように)、ITO22膜の一方の面22aに、基材フィルム付き片面粘着シートを貼付し、図2の抵抗値測定用サンプルを作製した。
次に、図3に示すように、デジタルハイテスタ(日置電機社製、「3802−50」)30を用いて、電極25,25間の初期抵抗値Rを測定した。
さらに、抵抗値測定用サンプルを、温度80℃の環境下に500時間放置した後、熱促進後抵抗値Rを測定した。
また、抵抗値測定用サンプルを、温度60℃、湿度90%RHの環境下に500時間放置した後、湿熱促進後抵抗値Rを測定した。
それぞれの場合における抵抗値測定用サンプルの抵抗値増加率を、以下のように算出した。
抵抗値増加率(%)=(R−R)/R×100
結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1の結果から、実施例1〜3の基材無し両面粘着シートの粘着剤層は、アクリル酸エステル共重合体中にアクリロイルモルホリンを10〜30質量%含んでいるので、熱促進および湿熱促進による抵抗値増加率が20%以下であるから、静電容量方式タッチパネルの部材として、好適に用いられることが分かった。
一方、比較例1〜4の基材無し両面粘着シートの粘着剤層は、アクリル酸エステル共重合体中にアクリロイルモルホリンを含んでいないため、熱促進または湿熱促進による抵抗値増加率が20%を超えるから、静電容量方式タッチパネルの部材としては好ましくないことが分かった。
また、シリコーン系粘着剤からなる比較例5の基剤無し両面粘着シートの粘着剤層についても、熱促進または湿熱促進による抵抗値増加率が20%を超えるから、静電容量方式タッチパネルの部材としては好ましくないことが分かった。
【符号の説明】
【0075】
10 導電膜表面用粘着シート
11 基材フィルム
12 粘着剤層
13 剥離シート
21 ポリエチレンテレフタレートフィルム
22 ITO膜
23 ガラス板
24 接合テープ
25 電極
26 基材フィルム
27 粘着剤層
30 デジタルハイテスタ
100 静電容量方式タッチパネル
101 ハードコート層
102 樹脂フィルム層
103 化粧印刷層
104 埋め込み用粘着剤層
105 ガラス層
106 透明導電膜
107 粘着剤
108 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電膜が表面に設けられた導電性シートの導電膜面に貼付するための粘着シートに用いられる粘着剤であって、
アルキル基の炭素数が4〜20であるアルキルアクリレートモノマー由来の構成単位(a1)を50〜85質量%、複素環式基含有モノマー由来の構成単位(a2)を10〜30質量%、水酸基含有モノマー由来の構成単位(a3)を0.1〜10質量%含むアクリル系共重合体(A)および架橋剤(B)を含有してなることを特徴とする導電膜表面用粘着剤。
【請求項2】
前記複素環式基含有モノマー(a2)に含まれるヘテロ原子が窒素原子であることを特徴とする請求項1に記載の導電膜表面用粘着剤。
【請求項3】
前記複素環式基含有モノマー(a2)がアクリロイルモルホリンであることを特徴とする請求項1または2に記載の導電膜表面用粘着剤。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粘着剤が、基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられてなることを特徴とする導電膜表面用粘着シート。
【請求項5】
前記基材フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記導電性シートを構成する樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項4に記載の導電膜表面用粘着シート。
【請求項6】
前記導電性シートを構成する導電膜が金属酸化物からなることを特徴とする請求項4または5に記載の導電膜表面用粘着シート。
【請求項7】
前記金属酸化物がスズ添加酸化インジウムであることを特徴とする請求項6に記載の導電膜表面用粘着シート。
【請求項8】
タッチパネルの部材として使用されることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項に記載の導電膜表面用粘着シート。
【請求項9】
前記タッチパネルが静電容量方式であることを特徴とする請求項8に記載の導電膜表面用粘着シート。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−201942(P2011−201942A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67996(P2010−67996)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】