説明

小割システム及び小割方法

【課題】 給糸パッケージ3の糸を引き出して巻取装置6で複数のボビン8に所定長ごとに分割して巻き取る小割システム1において、給糸パッケージ3の解舒初期・終期を問わず、均質な品質の小割パッケージ9を形成できるようにする。
【解決手段】 給糸パッケージ3から解舒された糸Yを前記巻取装置6で巻き取られる前に測長及び貯溜する測長貯溜装置5を備える。また、この測長貯溜装置5から下流側へ送られる糸の張力を調整するテンサ7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1本の糸を複数の糸に分割しながらボビンに巻き取る小割システム及び小割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の小割システムは、サンプル試織や多品種小ロット生産の準備工程に好適な準備機として従来から用いられている。例えば特許文献1では連続小割装置が開示されており、この特許文献1の構成では、給糸側原糸から繰り出された糸は、綾振ドラムを通って、巻芯ホルダーが支持する巻芯(ボビン)に巻き取られるように構成されている。所望の長さの糸が巻き取られた巻芯(小割パッケージ)は、巻芯収納箱に収納される。
【特許文献1】特開平10−25060号公報(図11、0003等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1の構成は、給糸側原糸のパッケージは大径とされる場合が多く、給糸パッケージの解舒し始めと、径が小さくなる解舒終期とでは、巻取張力が大きく異なってくる。従って、給糸パッケージの解舒し始めに形成された小割パッケージと、解舒終期に形成された小割パッケージとの間で品質が異なってくる場合があり、織物の品質の維持・向上の観点からは改善の余地が残されていた。
【0004】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、給糸パッケージの解舒初期・終期を問わず、均質な品質の小割パッケージを形成できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0006】
本発明の第1の観点によれば、給糸パッケージの糸を引き出して巻取装置で複数のボビンに所定長ごとに分割して巻き取る小割システムであって、前記給糸パッケージから解舒された糸を前記巻取装置で巻き取られる前に測長及び貯溜する測長貯溜装置を備える、小割システムが提供される。
【0007】
これにより、給糸パッケージから解舒される糸が直接巻き取られるのではなく、いったん測長貯溜装置に貯溜し、この測長貯溜装置から解舒される糸が巻取装置で巻き取られる構成になるので、給糸パッケージの解舒の初期・終期を問わず糸の巻取張力の均一化を実現でき、均質な品質の小割パッケージを得ることができる。
【0008】
前記の小割システムにおいては、前記測長貯溜装置から下流側へ送られる糸の張力を調整するテンサを備えることが好ましい。
【0009】
これにより、ボビンに巻き取られる糸の張力の変動が一層抑制されるから、高品質な小割パッケージをより確実に形成することができる。
【0010】
前記の小割システムにおいては、それぞれの前記ボビンに巻き取られる糸の長さを前記測長貯溜装置で測長するように構成されていることが好ましい。
【0011】
これにより、特別な測長装置が必要なくなり、構成の簡素化に寄与することができる。
【0012】
本発明の第2の観点によれば、給糸パッケージから糸を引き出して複数のボビンに分割して巻き取る小割方法であって、前記給糸パッケージから解舒された糸を測長貯溜装置によって測長及び貯溜し、その後、巻取装置で前記ボビンに巻き取る、小割方法が提供される。
【0013】
この方法により、給糸パッケージからの糸が巻取装置に直接的に供給されずに、測長貯溜装置から解舒される糸が巻取装置で巻き取られることになるので、給糸パッケージの解舒の初期・終期を問わず糸の巻取張力の均一化を実現でき、均質な品質の小割パッケージを得ることができる。
【0014】
前記の小割方法においては、前記測長貯溜装置から下流側へ送られる糸の張力をテンサにより調整してから前記ボビンに巻き取ることが好ましい。
【0015】
これにより、ボビンに巻き取られる糸の張力の変動が一層抑制されるから、高品質な小割パッケージをより確実に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る小割システムの全体斜視図である。
【0017】
図1に斜視図を示す小割システム1は基台2を備えており、この基台2に、給糸パッケージ3を支持するスタンド4や、糸の測長貯溜装置5や、糸の巻取装置6等を設けている。
【0018】
前記スタンド4は基台2の端部に付設されており、コーン状の給糸パッケージ3を仕掛けることができるように構成されている。この給糸パッケージ3から解舒された糸Yは、測長貯溜装置5に導入されて、適宜貯溜される。
【0019】
この測長貯溜装置5から下流へ供給された糸Yは、張力を調整するためのテンサ7を通過後、巻取装置6によってボビン8に所定長巻き取られて、小割パッケージ9を形成する。完成した小割パッケージ9は、糸の切断機構10等からなる図略の玉揚機構によって玉揚げされて、基台2に隣接して設けられた収納箱11へ投入される。
【0020】
測長貯溜装置5は、モータ12を内蔵するハウジング13に、糸Yを巻き付けて貯溜する貯溜部15を備えて構成されている。前記ハウジング13には導入口14が設けられて、この導入口14は、ハウジング13内に回転自在に支持される巻付管16に連通される。この巻付管16にはモータ12からの動力が伝達されて駆動される。
【0021】
以上の構成で、給糸パッケージ3からの糸Yは導入口14から巻付管16を挿通させてセットされ、この状態でモータ12が回転することで、巻付管16の回転によって糸Yが貯溜部15の外周に巻き付けられ、貯溜される。
【0022】
前記モータ12は角度制御が可能なサーボモータやパルスモータとして構成されており、巻付管16の回転角度を調整することで、高精度(例えば、センチメートル単位)の測長が可能に構成されている。また、測長貯溜装置5は糸監視センサ21を備えており、糸Yを貯溜部15に巻き過ぎたり、貯溜部15から糸Yがなくなってしまわないように、糸監視センサ21の信号に基づいて貯溜部15への貯溜量を適量に保持すべくモータ12の回転を制御するように構成されている。
【0023】
巻取装置6は、前記ボビン8を支持するためのクレードル17と、ボビン8に糸Yを巻き取って形成される糸層の外周面に接触して回転する接触ドラム18と、を備えている。
【0024】
前記接触ドラム18の外周面には綾振溝19が形成されており、糸Yがこの綾振溝19に係合することにより、接触ドラム18の回転に伴って綾振りされるように構成されている。なお、符号20は、前記の玉揚げ作業の際に使用される空のボビン8を収納するストッカである。
【0025】
以上の構成の小割システム1において、スタンド4にセットされた給糸パッケージ3から解舒され供給された糸Yは、測長貯溜装置5によって、貯溜部15の部分に適宜の長さ巻かれて貯溜される。そして、貯溜部15から解舒された糸Yは、テンサ7によってその張力を調整されて、巻取装置6によってボビン8に巻き取られていく。
【0026】
ボビン8に巻き取られる糸Yの長さは、測長貯溜装置5によって測長されている。この測長された長さが所定長さになると、測長貯溜装置5から図示しないコントローラ(制御装置)へ信号が送られる。この信号を受信したコントローラは巻取装置6へ玉揚指令信号を送り、巻取装置6はこの玉揚指令信号に基づいて、所定長巻かれた小割パッケージ9をクレードル17から玉揚げして収納箱11へ回収し、また、ストッカ20から新しいボビン8を取り出してクレードル17に装着する。こうして、次のボビン8に給糸パッケージ3からの糸Yが巻き取られる。
【0027】
以上に説明したように、本実施形態では、給糸パッケージ3から解舒された糸Yが巻取装置6へ直接供給されるのではなく、いったん測長貯溜装置5へ貯溜し、この測長貯溜装置5から解舒された糸Yが供給されることになる。従って、巻取装置6で巻き取られるときの糸Yの張力が給糸パッケージ3の解舒初期・終期(径の大小)を問わず殆ど変動しないので、均一な張力で糸Yをボビン8に巻くことができ、均質な小割パッケージ9・9・・・を得ることができる。また、巻き取られる前にテンサ7で張力の調整が行われるので、張力が一層均一化され、小割パッケージ9・9・・・の品質を向上させることができる。
【0028】
以上に示すように、本実施形態の小割システム1では、前記給糸パッケージ3から解舒された糸Yを前記巻取装置6で巻き取られる前に測長及び貯溜する測長貯溜装置5を備えている。従って、給糸パッケージ3からではなく測長貯溜装置5から解舒される糸Yが巻取装置6で巻き取られる構成であるので、給糸パッケージ3の解舒の初期・終期を問わずに巻取装置6での糸Yの巻取張力の均一化を実現でき、均質な品質の小割パッケージ9・9・・・を得ることができる。
【0029】
また、本実施形態では、前記測長貯溜装置5から下流側へ送られる糸Yの張力を調整するテンサ7を備えているので、ボビン8に巻き取られる糸Yの張力の変動が一層抑制され、高品質な小割パッケージ9・9・・・を形成することができる。
【0030】
また、本実施形態では、前記ボビン8に巻き取られる糸Yの長さを前記測長貯溜装置5で測長するように構成されているので、特別な測長装置が必要なくなり、構成の簡素化に寄与することができる。
【0031】
また、上記の実施形態では、前記給糸パッケージ3から解舒された糸を測長貯溜装置5によって測長及び貯溜し、その後、巻取装置6で前記ボビン8に巻き取るという方法によって、給糸パッケージ3の小割が実現されている。従って、上記と同様に、給糸パッケージ3の解舒の初期・終期を問わず糸Yの巻取張力の均一化を実現でき、均質な品質の小割パッケージ9・9・・・を得ることができる。
【0032】
また、本実施形態の小割方法では、前記測長貯溜装置5から下流側へ送られる糸Yの張力をテンサ7により調整してから前記ボビン8に巻き取っている。従って、ボビン8に巻き取られる糸Yの張力の変動が一層抑制されるから、高品質な小割パッケージ9・9・・・をより確実に形成することができる。
【0033】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0034】
給糸パッケージ3、測長貯溜装置5、テンサ7及び巻取装置6の配置は、図1に示したものから他の任意のレイアウトに変更することができる。
【0035】
巻取装置6は、接触ドラム18によるフリクション式の構成に代えて、例えばボビン8を電動モータで直接駆動する構成に変更することができる。
【0036】
測長貯溜装置5は、測長機能を有しない、単に糸Yを適宜の長さだけ貯溜する貯溜装置へ変更することができる。この場合、測長機能は、例えば巻取装置6の接触ドラム18に回転センサを備えたり、あるいは回転センサ付きの測長ローラを糸Yに接触させて設けたりすることで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る小割システムの全体的な構成を示した斜視図。
【符号の説明】
【0038】
1 小割システム
2 基台
3 給糸パッケージ
4 スタンド
5 測長貯溜装置
6 巻取装置
7 テンサ
8 ボビン
9 小割パッケージ
10 切断機構
11 収納箱
12 モータ
13 ハウジング
14 導入口
15 貯溜部
16 巻付管
17 クレードル
18 接触ドラム
19 綾振溝
20 ストッカ
21 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸パッケージの糸を引き出して巻取装置で複数のボビンに所定長ごとに分割して巻き取る小割システムであって、前記給糸パッケージから解舒された糸を前記巻取装置で巻き取られる前に測長及び貯溜する測長貯溜装置を備えることを特徴とする、小割システム。
【請求項2】
請求項1に記載の小割システムであって、前記測長貯溜装置から下流側へ送られる糸の張力を調整するテンサを備えることを特徴とする小割システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の小割システムであって、それぞれの前記ボビンに巻き取られる糸の長さを前記測長貯溜装置で測長するように構成されていることを特徴とする小割システム。
【請求項4】
給糸パッケージから糸を引き出して複数のボビンに分割して巻き取る小割方法であって、前記給糸パッケージから解舒された糸を測長貯溜装置によって測長及び貯溜し、その後、巻取装置で前記ボビンに巻き取ることを特徴とする小割方法。
【請求項5】
請求項4に記載の小割方法であって、前記測長貯溜装置から下流側へ送られる糸の張力をテンサにより調整してから前記ボビンに巻き取ることを特徴とする小割方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−55779(P2007−55779A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244663(P2005−244663)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】