小型減速機、およびそれを利用した小径高トルクモータ
【課題】 クラウンギヤ同士のバックラッシを解消し、高精度に回転、制動制御可能であり、構造が簡素で製造し易く、しかも耐久強度に秀れ、小型、軽量化、大減速比、高トルク化を達成可能とする新たな減速機技術を提供する。
【解決手段】 歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤ2に対し、歯数(N+1)枚か、または(N−1)枚かの何れか一方としたクラウンギヤであるステータギヤ4を有し、該ロータギヤ2の環状背面20に傾斜回転状押圧機構5を設け、当該ステータギヤ4に対してロータギヤ2が、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯丈係数hrを0.5ないし1.0、望ましくは0.92に設定し、同クラウンギヤ同士2,4の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせた小型減速機1である。
【解決手段】 歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤ2に対し、歯数(N+1)枚か、または(N−1)枚かの何れか一方としたクラウンギヤであるステータギヤ4を有し、該ロータギヤ2の環状背面20に傾斜回転状押圧機構5を設け、当該ステータギヤ4に対してロータギヤ2が、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯丈係数hrを0.5ないし1.0、望ましくは0.92に設定し、同クラウンギヤ同士2,4の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせた小型減速機1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、減速機に関連するものであり、特にバックラッシの発生を抑制し、高トルクで回転可能な小型減速機、およびそれを利用した小径の高トルクモータを製造、提供する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
一般的にロボットハンドの指の関節を構成する上で必要となる性能は、安定した把握をするため高トルクであること、指関節に埋めこむため小型であること、安全性などのため軽量であること、正確な制御を行うためバックラッシが少ないことの4点であると考えられ、エンドエフェクタとしての汎用性を重視して、ロボットハンド内部にアクチュエータを含め、全ての部品を組み込むのが主流となっていて、これらハンドの指関節のアクチュエータには直流モータが使用されており、一方で、軽量で大きなトルクを発する超音波モータもバックラッシか発生しないことから、ロボットハンドの関節に採用されているが、寿命か短いことや、駆動回路が複雑といった問題がある。
【0003】
よって、指関節のアクチュエータとして、現時点では直流モータなどにバックラッシの少ない減速機構を取り付けることに妥当性があると考えられる上、一般的にロボットハンドに組み込む小径モータの回転数は大きい傾向があり、大きな減速比が必須であって、これら低バックラッシと大減速比とを実現化している減速機構は既に幾つか開発されており、この中、ハーモニックドライプに代表される波動減速機構が多く用いられているが、他の伝動装置と比較して大きな起動トルクがモータに求められる上、これを構成するウェーブジェネレータ、フレクスプライン、サーキュラスプラインを入れ子のように組み合わせているので小径化には適していない。
【0004】
(従来の技術)
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)および(2)などに提案されているものに代表されるように、クラウンギヤからなるステータギヤに対して、クラウンギヤであるローターギヤを傾斜姿勢で噛合させ、周回りに沿って均衡するよう複数個のシリンダーを配し、周回り方向に順次各シリンダーを突没制御するようにしてローターギヤを回転駆動するようにしたものや、同特許文献1(3)に見られるような、クラウンギヤからなるステータギヤに対して、クラウンギヤであるローターギヤを傾斜姿勢で噛合させ、該ローターギヤの軸周囲に均衡するよう弾性膜部材で形成した流体室を配し、各流体室に周回り方向に順次、流体を供給、排出するようにしてローターギヤを回転駆動するようにしたものなどが散見される。
【0005】
しかし、前者特許文献1(1)および(2)などに示されているような複数のシリンダーを組み込んでなる圧力モータや、後者特許文献1(3)に代表するように、流体の圧力を利用してローターギヤを回転駆動するようにして細径化したものなどは何れも、歯数差の少ないクラウンギヤ同士を噛合して動作するから、大減速比を確保できるが、ステータギヤとローターギヤとの噛合状態で、バックラッシの発生を抑制することができず、ロボットハンドの指関節などに遊びが生じて、握持動作を円滑化および安定化することができない上、複数のシリンダーを円滑に高速で制御しなければならないから、流体回路およびその自動制御装置などの構造が複雑で高価なものとなってしまい、耐久性の面でも課題が残るという致命的な欠点があった。
【特許文献1】(1)特開2002−147331号公報 (2)特開2002−317858号公報 (3)特開2006−112618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のあるクラウンギヤを用いた各種減速機や圧力モータなどは、何れもロボットハンドなどに搭載するには、クラウンギヤ同士の噛合範囲におけるバックラッシの発生を抑制できないという欠点が残るものであり、しかも構造が複雑で製造コストが嵩む上、耐久性に難があり、その分野の研究、開発に関わる者の一人としては、特に、減速機やモータの周囲をセンサや柔かい皮膚状皮膜などで覆って人の指の太さと成す義指などを実現化するために、より一層小径化した減速機が必要であることを痛感していた。
【0007】
(発明の目的)
そこで、この発明は、クラウンギヤ同士のバックラッシを解消し、高精度に回転、制動制御可能であり、構造が簡素で製造し易く、しかも耐久強度に秀れ、小型、軽量化、大減速比、高トルク化を達成可能とする新たな減速機技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の小型減速機、およびそれを利用した新規な構造の小径高トルクモータを実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の小型減速機は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤに対し、歯数(N+1)枚か、または(N−1)枚かの何れか一方としたクラウンギヤであって減速機ハウジングなどに固定したステータギヤを、互いに噛合する向きに対峙し、該ロータギヤの中心には、軸心の傾動変形を許容可能な可撓スポークを介して出力軸を連結し、同ロータギヤの歯がわとは反対がわの環状背面には、周回りに均衡する少なくとも3点に押圧点を有する傾斜回転状押圧機構を設け、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.5ないし1.0、望ましくは0.92に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとした構成を要旨とする小型減速機である。
【0009】
この基本的な構成からなる小型減速機は、その表現を変えて示すならば、歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤに対し、歯数(N−1)枚としたクラウンギヤであって減速機ハウジングなどに固定したステータギヤを、互いに噛合する向きに対峙し、該ロータギヤの中心には、軸心の傾動変形を許容可能な可撓スポークを介して出力軸を連結し、同ロータギヤの歯がわとは反対がわの環状背面には、周回りに均衡する少なくとも3点に押圧点を有する傾斜回転状押圧機構を設け、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.82ないし0.84に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとした構成からなる小型減速機となる。
【0010】
(関連する発明)
上記した小型減速機に関連し、この発明には、その小型減速機を利用した小径高トルクモータも包含している。
即ち、傾斜回転状押圧機構が、ロータギヤ環状背面の周回りの均衡する少なくとも3点の押圧点を有し、各押圧点に夫々個別の直動アクチュエータを配し、傾斜回転状となる周回り方向の順に、各直動アクチュエータを突没動作するよう制御可能な自動制御装置、および、各直動アクチュエータ用の駆動源を設けてなるものとした、この発明の基本である、上記したとおりの小型減速機を利用した小径高トルクモータである。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、この発明の小型減速機によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、当該ステータギヤおよびロータギヤの夫々の歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.5ないし1.0、望ましくは0.92に設定したものとしてあり、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとしたから、バックラッシの発生を低減化できると共に、常時、歯間距離が0.01mm未満の噛合状態の歯の枚数Ncが最も多くなり、歯1枚毎に加わる応力を分散、軽減すると共に、バックラッシの発生を大幅に抑制し、高出力、高速回転の入力を大幅に低回転化して大トルクの発生を達成可能とする上、格段に円滑な回転と高い耐久性、耐摩耗性能とを実現化することができるという秀れた効果を発揮するものとなる。
【0012】
また、当該小型減速機は、ステータギヤおよびロータギヤの夫々の各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.82ないし0.84に設定したものとすることにより、同ステータギヤに対するロータギヤの傾斜角度ωを最も小さく設定することが可能となり、回転駆動中に発生する振動を大幅に低減化できる上、傾斜回転状押圧機構の作動範囲を小さくして耐久性や耐摩耗性を高めることができ、しかも傾斜回転状押圧機構に直動アクチュエータを用いてモータを形成した場合の、直動アクチュエータの動作ストローク範囲を短くして駆動源からの入力エネルギーを大幅に低減し、作動効率や応答速度を格段に向上できるという秀れた特徴が得られるものである。
【0013】
ロータギヤおよびステータギヤが、各歯形を同一寸法、形状の二等辺三角形の先端を切除した台形状としてなる小型減速機は、高精度の歯形加工が容易で、各歯同士の噛合状態の解析や摩耗状態の計測などが容易且つ正確に行えるから、生産管理や使用開始後の保守、点検などに要する経費を削減して格段に経済的なものとすることができ、また、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形としてなる小型減速機は、歯先が滑らかな曲面となっているから、一段と円滑な回転動作を得ることができ、しかも耐摩耗性に秀れており、小径のクラウンギヤでも歯先の摩耗が少なく、小型減速機の一層の小径化に適しているという特長が得られる。
【0014】
さらにまた、ロータギヤおよびステータギヤが、双方の外径を3mm以上、6ないし12mm以下に設定し、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形とした上、互いの噛合範囲におけるバックラッシを0.24ないし0.13deg以下に規制してなる小型減速機は、ロボットハンドなどの手指の関節などに内蔵可能で、しかも把持動作に必要な高トルク性能を達成し、軽量で正確な制御ができるものとなるという秀れた効果を発揮するものとなる。
【0015】
加えて、傾斜回転状押圧機構が、入力軸の先端に、90°の姿勢でT字形をなす一文字状の傾斜軸を結合し、該傾斜軸に対し、ロータギヤ環状背面の全周に摺動自在に当接可能な押圧傾斜板を該傾斜軸回りに揺動自在に連結してなる小型減速機は、ボールベアリングなどの部品を削減して大幅な軽量・小型化、および、構造の簡素化とを達成し、ロボットハンドなどの手指の関節などに内蔵可能な小型減速機を提供可能とすることができるものとなる。
【0016】
傾斜回転状押圧機構が、ロータギヤ環状背面の周回りの均衡する少なくとも3点の押圧点を有し、各押圧点に夫々個別の直動アクチュエータを配し、傾斜回転状となる周回り方向の順に、各直動アクチュエータを突没動作するよう制御可能な自動制御装置、および、各直動アクチュエータ用の駆動源を設けてなるものとした、この発明の基本である小型減速機を利用した小径高トルクモータは、回転型モータの傾斜内蔵が困難なロボットハンドなどの手指の関節などに、無理なく内蔵することができる上、各直動アクチュエータからの入力エネルギーを高効率で出力軸に伝達可能なものとすることができるという大きな効果を奏するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
ロータギヤは、その歯がわとは反対がわとなる背面がわに、傾斜回転状押圧機構によって伝達される周回りに沿って回転する傾斜状の押圧入力を受け、同傾斜状の押圧入力が1周する毎に、傾斜姿勢で噛合するステータギヤに対して歯数1枚分ずつ回転するよう作動し、出力軸を減速、回転駆動可能とする機能を担うものであり、所定直径φ、所定歯数N枚のクラウンギヤからなり、その中心には、軸心の傾動変形を許容可能な可撓スポークを介して出力軸を連結したものとしなければならず、歯がわとは反対がわの環状背面に、周回りに均衡する少なくとも3点に押圧点を有する傾斜回転状押圧機構を組み合わせ可能とするよう、同環状背面を平滑面状に形成したものとすべきであり、傾斜回転状押圧機構の摺動部分を案内可能な環状のレールを形成したものとすることが可能であり、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどの各種合成樹脂製、ガラス繊維や炭素繊維の複合素材製、ステンレス鋼、炭素鋼、チタン合金などの各種金属製、または、それらと同程度の強度および耐摩耗性を有する素材製のものとするのが望ましい。
【0018】
出力軸は、ステータギヤに対して傾斜した姿勢に噛合しているロータギヤの回転力を、該ステータギヤと同心状の中心回りとなる回転出力として取り出し可能とする機能を果たすものであり、ロータギヤの中心に配し、可撓スポークを介して傾斜可能且つ低捩れ角度となるよう連結されたものとすべきであり、その材質は、最大出力に耐えるに充分な強度を有するものとするのが望ましく、可撓スポークは、ロータギヤの回転方向の剛性が高く、軸心の倒れ方向に柔軟な断面形状を有するものとするのが良い。
【0019】
ステータギヤは、減速機ハウジングなどの小型減速機本体部分がわに向けて傾斜姿勢に押し付けられるロータギヤの歯に噛合し、出力軸の減速回転機能を発揮可能とするか、または高トルク回転機能を発揮可能とするかの少なくとも何れかを実現化する機能を担い、所定直径φ、所定歯数(N+1)枚か、または(N−1)枚かの何れか一方としたクラウンギヤからなり、その材質は、ロータギヤの噛合動作に耐え得るに充分な強度を有するものとしなければならず、ロータギヤと同一または同等の素材製のものとすべきであり、後述する実施例に示すように、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.5ないし1.0望ましくは0.92に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとすることができる。
【0020】
また、後述する実施例に示すように、歯数(N−1)枚としたクラウンギヤであるステータギヤとし、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.82ないし0.84に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとすることができる。
【0021】
ロータギヤおよびステータギヤが、各歯形を同一寸法、形状の二等辺三角形の先端を切除した台形状としてなるものとすることができ、また、ロータギヤおよびステータギヤが、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形としてなるものとすることができる外、ロータギヤおよびステータギヤを、ロボットハンドなどの手指の関節内に内蔵可能とするよう、双方の外径を3mm以上、6ないし12mm以下に設定し、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形とした上、円滑且つ正確な回転動作が得られるよう、互いの噛合範囲におけるバックラッシを0.24ないし0.13deg以下に規制してなるものとすることができる。
【0022】
傾斜回転状押圧機構は、ロータギヤをステータギヤに対して所定の角度に傾斜させた姿勢に噛合するよう押し付けると共に、その押圧点をロータギヤの周回りに回転状に移動するよう動作可能で、該押圧点が1周する毎に、ステータギヤに対してロータギヤが、歯数1枚分ずつ回転動作可能とする機能を果たすものであり、後述する実施例に示すように、入力軸の先端に、T字形をなすよう一文字状の押圧杆を結合すると共に、該押圧杆に対して同一平面状で入力軸心回りに90°の角度をなすよう十文字形とするよう揺れ押圧杆を揺動自在に結合してなる押圧枠を設け、合計4本の棒状体(押圧杆および揺れ押圧杆)の各先にボールベアリングを夫々取り付けてなるものとすることができ、さらに小型化する場合には、入力軸の先端に、90°の姿勢でT字形をなす一文字状の傾斜軸を結合し、該傾斜軸に対し、ロータギヤ環状背面の全周に摺動自在に当接可能な押圧傾斜板を該傾斜軸回りに揺動自在に連結してなるものとすることができる外、当該小型減速機を利用した小径高トルクモータを形成する場合には、ロータギヤ環状背面の周回りの均衡する少なくとも3点の押圧点を有し、各押圧点に夫々個別の直動アクチュエータを配し、傾斜回転状となる周回り方向の順に、各直動アクチュエータを突没動作するよう制御可能な自動制御装置、および、各直動アクチュエータ用の駆動源を設けてなるものとすることができる。
【0023】
直動アクチュエータは、電磁石、圧電素子、形状記憶合金、超音波振動子などの電流の供給を受けて往復動制御可能なものを利用した電動型のものとするのが望ましいが、エアシリンダや油圧シリンダなど、流体圧力を利用したものとすることが可能である。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0024】
図1(a)の減速機の斜視図、図1(b)の傾斜回転状押圧機構の斜視図、図2の減速機の幾何学的関係図、図3のNs=N+1の場合の噛合状態の模式図、図4のNs=N−1の場合の噛合状態の模式図、図5の横軸ω縦軸h/htmaxとした接触非接触分布図、図6の台形歯(hr=0.6,0.7,0.8,0.9)を追加したω−hの分布図、図7のhr=0.7,ω=0で噛み合わない歯の展開正面図、図8のhr=1.0(図5中のC)で噛み合う歯の展開正面図、図9のロータギヤとステータギヤとの相互歯間距離図、図10のhr=0.80の噛み合い歯の展開正面図、図11のhr=0.80の噛み合い歯の噛み合い状態と歯間距離図、図12のhr=0.92の噛み合い歯の展開正面図、図13のhr=0.92の噛み合い歯の噛み合い状態と歯間距離図、図14の起動トルクとバックラッシとの関係図、図15の小型減速機の斜視図、図16のバックラッシと起動トルクとの測定値関係図、図17の小径高トルクモータの断面図、図18の自起動周波数とトルクの関係図、図19のhr=0.7で噛み合う歯の展開正面図、図20のhr=0.76で噛み合う歯の展開正面図、および、図21のhr=0.80,0.82,0.84で噛み合う歯の展開正面図に、この発明の小型減速機における代表的な一実施例を示してある。
【0025】
ここに示す事例は、歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤ2に対し、歯数(N+1)枚か、または(N−1)枚かの何れか一方としたクラウンギヤであるステータギヤ4を有し、該ロータギヤ2の環状背面20に傾斜回転状押圧機構5を設け、当該ステータギヤ4に対してロータギヤ2が、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯丈係数hrを0.5ないし1.0望ましくは0.92に設定し、同クラウンギヤ同士2,4の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものの代表的な実施例である。
【0026】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明の小型減速機1は、直径φ12mmおよびφ6mmであり、その開発に先立ち、図1(a)および(b)に示すような、直径φ100mmの減速機10を開発、試作済みであって、それは歯数が1枚異なるクラウンギヤを2つ向かい合わせて噛み合わせたものであり、ロータギヤ2には、N枚の歯を刻み、弾性変形する可撓スポーク3を介して出力軸30と同心配置状に結合し、該可撓スポーク3は、出力軸30のねじり方向の変形が微小であり、かつ同出力軸30に対して傾く方向の剛性は低く設定してあって、当該ステータギヤ4には、Ns枚の歯を刻み、減速機ハウジン(図示せず)に固定したものとしてある。
【0027】
当該歯数Ns枚とN枚との差は1枚であり、傾斜回転状押圧機構5の入力軸50は図示しないモータのロータ軸と結合し、ロータギヤ2環状背面21への押しつけ部分の傾斜角度を自動的に調整するため、回転自由な軸が1つあり、これによりステータギヤ4とロータギヤ2とを全体的に馴染むように押し付けるものとしており、図1(a)に示すように、ステータギヤ4にロータギヤ2を押し付けると片側に傾いて噛み合い、この噛み合い状態で入力軸50を回転させると、噛み合う位置が周回りに変化して出力軸30が回転駆動するものとなる。
【0028】
このφ100減速機10の、ステータギヤ4とロータギヤ2との互いの歯が最も深く沈みこんでいる場所(図1(a)中 Most Sunken Point)では歯は噛み合っておらず、そこから約±90deg前後離れた2箇所で接触しており、この減速機20の出力軸30の回転速度をnout、入力軸の回転速度をninとし、その関係を式(1)に示す。
【数1】
試作した減速機10の各歯の形状は台形、N=49枚、Ns=50枚で減連比は−49、また、パックラッシの計測値は約0.002degである。
【0029】
図1(a),(b)、図2および前記式(1)に示すように、傾斜回転状押圧機構5とロータギヤ2との速度比(減速比)の絶対値は大きいため、これらの間の摩擦を低減する必要があり、入力軸50の先端に、T字形をなすよう一文字状の押圧杆52を結合すると共に、該押圧杆52に対して同一平面状で入力軸50心回りに90°の角度をなすよう十文字形とする如く揺れ押圧杆53を揺動自在に結合してなる押圧枠51を設け、当該入力軸50をステータギヤ4に対して所定傾斜角度ωをなす角度姿勢で、該押圧枠51の押圧杆52および揺れ押圧杆53の各先端がわ合計4つの押圧点54,54,……が、ロータギヤ2環状背面21の周回り90°毎の4点に当接する如く組み合わせてなるものとし、当該傾斜回転状押圧機構(プレスロータ)5押圧枠51の合計4本の棒状体(押圧杆52および揺れ押圧杆53)の各先にボールベアリング54,54,……を合計4個取り付けている。
【0030】
図2に示すように、ロータギヤ2とステータギヤ4との歯の噛み合いは、歯底の外周を参照円と定義し、同図2中の実線円はロータギヤ2の参照円、破線円がステータギヤ4の参照円として、どちらも半径をRに設定しており、ステータギヤ4に固定した座標系をΣs、同様にロータギヤ2に固定した座標系をΣrとし、ロータギヤ2はZs軸方向にステータギヤ4に押し付けるよう組み合わせてあり、ハッチング矢印で「Push」と記している場所で最も深く押されており、この場所はXs-Zs平面とロータギヤ2の参照円が交わるところであって、このとき、ロータギヤ2とステータギヤ4とのなす角度ωで、いずれかの歯が接触していると仮定し、また、ロータギヤ2とステータギヤ4との参照円の中心はZs軸方向にh離れているとし、Xr軸から角度θr回転したロータギヤ2上の点をPとする。
【0031】
PをXs−Ys平面に垂直に写像した点Psの角度をθsとし、この点はステータギヤ4の参照円上からは中心方向にわずかに離れており、Σsから見た座標Pは、下記式(2)に示すとおりである。
【数2】
式(2)のRy(ω)とRs(θr)は、Σr上の点PをΣsへ写像するための回転行列であり、歯形には様々な形状が考えられるが、台形歯とし、台形歯の接触モデルを図3(Ns=N−1)と図4の(Ns=N+1)に示す。
【0032】
図3および図4に示すのは、接触状態を参照円の外側からΣsの原点方向へ見た図であり、実際には円筒状の曲面であるが、平面に展開しており、角度ωは十分に小さいものとし、Zs軸とZr軸が一致するものとして描画してあり、角度ωが十分に小さく、Nが十分に大きい場合、このモデルは妥当なものであって、歯丈をht、歯の圧力角をαとし、ロータギヤ2に隙間無く歯を設置すると、この歯のピッチは2πR/Nとなり、歯丈が取りうる最大値は、式(3)の値となる。
【数3】
台形の歯の形を定めるために係数hrを導入すると歯丈htは、式(4)とする。
【数4】
ロータギヤ2とステータギヤ4とで同形状の歯を用いる場合には、hr<0.5で歯溝の幅より歯先の幅の方が大きくなり、明らかに歯は噛み合わない、また、ht≦hmaxであり、よってhrの取り得る範囲は、0.5〜1.0となり、ステータギヤ4も同じ形状の歯を用いるものとする。
【0033】
ステータギヤ4のピッチは2πR/(N+1)か2πR/(N−1)かの何れかであり、Σsから見た点Pの高さPzは式(2)より、
【数5】
式(5)となり、また、Σsから見た円周方向Psの位置は、
【数6】
式(6)となり、θsも式(2)から求めることができ、
【数7】
式(7)となり、同式(7)のarctan2は、tan−1の定義域を(−π,π)に拡張した関数であり、接触している歯は、図3および図4中のハッチングした歯であって、また、図3のQとTはロータギヤ2側歯の歯先を表し、その位置はPと角度βから求めることができ、ここで角度βは、
【数8】
式(8)より求めることができ、また、ステータギヤ4側歯の歯先および歯元の位置A,Bはピッチと歯数から求めることが可能で、A,B,Q,Tより接触状態を判定し、図3に示す、接触状態(Ns=N+1)では、ロータギヤ2の角がステータギヤ4の斜面に接触している一方、図4に示すように、接触状態(Ns=N−1)はこの関係が逆になり、ステータギヤ4の角がロータギヤ2の斜面に接触するものとなり、図4のステータギヤ4とロータギヤ2との関係を逆にすると、図3に示すのものから1枚歯数を滅らしたものとほぽ同じ噛み合わせとなる。
【0034】
そこで以下では、説明の重複を避けるため、図3に示したモデルについてのみ示すこととし、ロータギヤ2とステータギヤ4との相対位置を決める変数は、図2に示す、hとωであって、これらを変化させて接触状態を探索し、台形歯の形状を決めるパラメータはhrであり、様々なhrに対する噛み合いの状態を調査することとする。
【0035】
傾斜回転状押圧機構5をステータギヤ4がわに押し込むことにより、ω、hは、一意に決定されることが三角歯(hr=1.0)の試作により経験的に判っており、この現象を数値計算結果を用いて示すこととする。
【0036】
例として、N=49,Ns=50,hr=1.0とし、hとωを変化させて接触点を探索した場合について述べると、ωを0.0002rad置きに(0.01,0.19)の範囲で、hを0.00001mm置きに(0,2.5htmax)の範囲で探索し、横軸をωとし、hを定数htmaxで正規化したh/htmaxを縦軸とし、接触と非接触の分布をプロットしたものを図5に示す。実線は接触分布を示し、それより上のハッチングの領域は、非接触分布を示し、実線より下は、歯の干渉によって使用できない領域を示しており、図5のa,b,cは実線上の点、すなわちロータギヤ2のある歯とステータギヤ4のある歯とが接触している点であって、仮にロータギヤ2とステータギヤ4とをa(ha,ωa)の位置に置いた場合、ここで、h=haに固定すると、歯と歯の干渉よりω<ωaは取り得ないが、ωa<ω<ωbの範囲は許容され、この時、何れの歯も接触せず、バックラッシが生じるものとなり、ωの変化は、傾斜回転状押圧機構5とその入力軸50との傾きによって生じ、これに対し、実線の極小値となるc(hc,ωc)にhを固定すると、取り得るωが唯一に決定され、歯の遊びによるバックラッシを生じない。
【0037】
以上より、hr=1.0の場合の低バックラッシを実現するための条件の1つは、ωに対するhが極小値となる位置で接触することであり、台形歯(hr=0.6,0.7,0.8,0.9)を追加したω−hの分布を、図6に示す。
なお、hr=0.5については、歯の噛み合う部分が殆ど無いので除外し、hrが0.6と0.7とでは、hが極小となる場合が存在しない。
【0038】
よって、例えばhr=0.7でロータギヤ2をステータギヤ4に押し付けると、破線矢印のようにロータギヤ2とステータギヤ4とが平行になるω=0まで押し込まれることとなり、このときの歯は、図7に示すように、歯先同士が接触している状態であって、歯は噛み合わず、以上をまとめると、低バックラッシを実現するためには、構成する歯形がω−hの分布でhが極小値を持ち、その極小値となるhとωの位置で接触する必要があり、h=1.0の極小値(図5のc)での歯の噛み合い状態を0<θs<πの範囲で図示したものを図8に示し、この図8によると、ステータギヤ4の12枚目の歯で接触しており、図2に示すように、この機構は、Xs−Zs平面で対称なので反対側も同じように接触しており、即ち、ロータギヤ2とステータギヤ4とはXs−Zs平面で対称な2箇所でお互いを挟み込むように接している。
【0039】
図9に示してあるように、ロータギヤ2とステータギヤ4との歯の距離(以下歯間距離)は、接触している歯の前後の歯間距離が非常に狭く0.01mm未満となっており、このような歯が多くあれば、ロータギヤ2およびステータギヤ4の僅かな弾性変形で複数の歯が接触に関与するので、大きなトルクを伝達することができ、また、傾斜回転状押圧機構5が僅かに回転すると、図8の噛み合いではなくなるが、そもそも前後の歯が極めて接触に近い状態なので、滑らかに噛み合い状態が遷移され、このφ100減速機10の動作のために可撓スポーク3を傾斜角度ωだけ変形させ続ける必要があり、これは動力伝達とは関係がないので、無駄なエネルギー消費となり、よって、できるだけ(条件1)ωを小さくするのが望ましく、また、滑らかに動作させるために(条件2)歯間距離が0.001mm未満の歯の枚数(以下Nc)を増やすべきであり、そこで、(条件1,2)を評価項目として検討するため、hrを0.80から1.00まで変化させ、ω,Nc、そして参考にhの極小値(以下hm)を計算し、これを表1に示す。
【表1】
【0040】
これによると、hrが減少するとωも減少する傾向があり、よって、評価項目(条件1)を優先するなら、極小値をもつhrの中で小さい値が適しており、例えば、hr=0.80の噛み合い状態と歯間距離を、図10および図11に示すように、三角歯と比較してωが半分以下に減少した。しかし、Ncは少なく、図10に示すように、噛み合わせは浅く、さらに、図6に示すように、極小値の谷が浅く、ωは不安定である。
【0041】
一方、評価項目(条件2)を優先するなら、表1に示すように、hr=0.92のときにNcが最多となり、これらの噛み合い状態と歯間距離を、図12および図13に示すと、hr=0.92では、三角歯と比較してNcが2倍以上に増加し、また、図6に示すように、これに近いhr=0.90での極小値の谷は深いので、hr=0.92での噛み合わせも安定していると類推でき、以上を考慮すると、hr=0.92が有利であると判断できる。
【0042】
試作した減速機10は、歯車の直径をφ100mm、歯数は、夫々N=49,Ns=50、形状はhr=0.92であり、歯車の材質はポリアセタール、傾斜回転状押圧機構5押圧枠51の各押圧杆52、揺れ押圧杆53の合計4つの先端には、夫々ボールベアリング54,54,……を取り付けてロータギヤ2環状背面21との摩擦を低減させるようにしている。この減速機10の傾斜回転状押圧機構5押圧枠51をステータギヤ4がわに押し付けて行く(hを減少させる)と、起動トルクとバックラッシが次第に変化し、この関係を図14に示しており、試作した減速機10のバックラッシの計測方法は、以下のとおりである。
1)入力軸50を固定した状態で、機構に内在する摩擦より十分大きいトルクを出力軸30に加える。
2)トルクを除去した後の出力軸30の角度e1を計測する。
3)反対方向に同じトルクを加える。
4)トルクを除去した後の出力軸30の角度e2を計測する。
5)e1とe2との差を図14でのバックラッシと定義している。
なお、角度を計測するために、1回転あたり96×104(96×10000)の分解能を持つロータリーエンコーダを用いている。
【0043】
図14では、16mNm以上の起動トルクを必要とするほどロータギヤ2を押し付けてもバックラッシは改善されず、よって、この減速機10の最小バックラッシは0.002degであり、また、バックラッシを0.01deg程度許容できる用途なら、起動トルクは約4mNmで動作可能で、このように、バックラッシと起動トルクにはトレードオフの関係があり、すなわち、減速機10の組み立ての際に、用途によって起動トルクとバックラッシを図14を基に選択することが可能である。
【0044】
以下には、直径φ12mmまたはφ6mmに設定した小型減速機1について、図15および図16を参照して示すこととする。
当該小型減速機1では、前述の台形歯に変えて、歯先が滑らかな曲面となる三角関数歯を用いることにし、N=50、Ns=49、減速比を50とした三角関数歯の噛み合い状態とし、傾斜角度は1.95degであって、計算上13枚目の歯で接触しており、この前後のロータギヤ2とステータギヤ4との歯の距離も極めて近接していて、僅かな弾性変形で接触し、即ち、出力軸30に負荷があれば、複数の歯で接触しているものと考えられる。
【0045】
試作したφ12mmの小型減速機1は、モータを取り付け、高速で回転できることを確認済みであり、φ6mm小型減速機1は、現在、動作の確認のみで、詳細な計測は未だ行っていない。φ6mmの基本的な構造は、φ12mmのものと略同じであり、ステータギヤ4、ロータギヤ2および傾斜回転状押圧機構5にはNAK材(大同特殊鋼株式会社製)を用い、ステータギヤ4およびロータギヤ2には、ハードクロムコーティングを施している。
【0046】
図15に示すように、傾斜回転状押圧機構5は、入力軸50の先端に、90°の姿勢でT字形をなす一文字状の傾斜軸52を結合し、該傾斜軸52に対し、ロータギヤ2環状背面21の全周に摺動自在に当接可能な押圧傾斜板57を該傾斜軸52回りに揺動自在に連結し、ボールベアリングを廃止してなるものとしてある。
【0047】
前述のとおり、クラウン減速機のバックラッシと起動トルクにはトレードオフの関係があることが判っており、この関係を測定したものを図16に示し、この計測から、最小のパックラッシは0.24degであり、また、出力軸30の剛性の逆数(以下、コンプライアンス)を計測すると、約19deg/Nmとなり、以前作成したφ100の減速機10のコンプライアンスは0.722deg/Nmである。
【0048】
ところで、本評価では、エンコーダを出力軸30に取り付けてバックラッシは正逆に負荷を加えて取り除いてから計測しており、この方法では、負荷を取り除いてからエンコーダの起動トルクだけ出力軸30の角度が戻らないので、明らかにこの分の誤差が発生する。出力軸30の剛性がφ100の減速機10と比較して小さくなったことにより、この起動トルクが無視できなくなっている。
具体的には、使用したエンコーダの起動トルクがカタログ値で0.003Nmであるから、この起動トルクによる誤差は片側に19×0.003=0.057deg発生する可能性があり、正逆に荷重を加えてバックラッシを計測しているので、この倍、約0.114deg発生し、計測値からこの分を引いて、試作したφ6mm小型減速機1のバックラッシは0.13deg程度と推測できる。
【0049】
以下には、前記減速機1(10)を利用した小径高トルクモータ11について示すこととする。
小径高トルクモータ11は、図17に示すように、前記減速機1(10)の傾斜回転状押圧機構5であるプレスロータの代わりに、直動アクチュエータ55,55,55で押し付ける場所を円周方向に移動させても出力軸30を回転させることができ、これをプッシュ型ソレノイド(55,55,55)3個で構成したものであって、ロータギヤ2およびステータギヤ4は、当該減速機1(10)と同様であるが、鋼球56に支持された押し付け板57でロータギヤ2を押しており、この押し付け板57の位置を適切に調整するようにすると、ソレノイド55,55,55を励磁していない場合でも、ロータギヤ2とステータギヤ4とが噛み合った状態を維持するものとなり、プッシュ型ソレノイド55,55,55を順次励磁すると、押し付け板57が歳差運動するように傾き、ロータギヤ2とステータギヤ4との噛み合い状態が変化し、その結果、ロータギヤ2に結合された出力軸30か回転し、ステッピングモータのような動作となる。
【0050】
当該傾斜回転状押圧機構5の各ソレノイド55,55,55は、タカハ機工株式会社のCB12500190(抵抗値19Ω)を用い、これをDC12Vで駆動し、ステッピングモータを1相励磁で駆動するように各ソレノイド55,55,55を励磁した場合の自起動周波数(静止状態から起動できる周波数)とトルクの関係を図18に示し、また、最大応答周波数(低速動作時から応答できる最大周波数)は24.4Hzとなり、試作で使用したロータギヤ2とステータギヤ4は、前記減速機1(10)として作製したものを流用しており、これに基づいて本原理のモータに適した歯形を考察すると、ストロークの短い方が振動の低減、効率、応答速度などの面から有利であると考えられるから、ストロークは、傾斜角度ωと各クラウンギヤの半径Rとで決まり、半径Rは予め設定されるので、傾斜角ωを小さくする必要があり、歯数が60枚のニューテーションモータとの比較のため、減連比か60となる2種類の噛み合わせNs(=59.61)について、ωを小さくするための歯形を検討する。2種類あるのは、前記式(1)に示される減連比が最大となるよう、Ns=N−1かNs=N+1かの何れか一方が選択されることにより、歯モデルは、前記図3と同じとする。
【0051】
歯の形状を決めるバラメータhrに対し、バックラッシか発生しないかみ合わせの状態が1つ求められ、このときのω、接触する歯番号c、歯間距離が0.01未満の歯数Ncを計算したものを、表2および表3に示す。
【表2】
【表3】
【0052】
表2でのhr=0.7未満、また、表3でのhr=0.8未満では、hの極小値がないので、バックラッシが発生しない噛み合わせを構成できない、表2のhr=0.7の噛み合いを図19に示す。このときω=2.435degとなり、ニューテーションモータの3degと比較して傾斜角度を0.5deg以上小さくすることができる。また、Ncの数が最大となるhr=0.76の噛み合いを図20に示す。この場合でもω=2.518degとなり、表3のhr=0.80〜0.84は、表2のものよりωが小さく、これらをまとめて図21に示す。これによると、hr=0.80での噛み合いは浅く、噛み合う歯の弾性変形による歯跳ぴが発生する可能性がある。
【0053】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の、図1(a),(b)に示す、φ100mm減速機10で、N=49枚、Ns=50枚、hr=0.92に設定すると、歯間距離が0.01mm未満の歯の枚数Ncを大幅に増加させてバックラッシの低減化と高トルク化を達成可能とすることができ、また、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.82ないし0.84に設定したものは、所定傾斜角度ωを最小限に留めて回転効率および耐摩耗性を大幅に高めることができ、しかもロータギヤ2およびステータギヤ4をポリアセタール製とすることにより、加工性に秀れると共に、互いの歯同士が接触圧力によって弾性変形し易く、歯間距離0.01mm未満の歯(枚数Nc)が、より確りと噛み合うものとなって伝達トルクを一段と高める効果が得られるものとなり、図15に示すように、φ6mm(およびφ12mm)小型減速機1の傾斜回転状押圧機構5からボールベアリングを廃止して、押圧傾斜板57を採用したことにより、その構造を大幅に簡素化して小径化、小型化および軽量化を達成すると共に、小径化によって摩擦による発熱を低減し、耐久性の大幅な向上を図ることができる。
【0054】
加えて、小径高トルクモータ11は、傾斜回転状押圧機構5の直動アクチュエータ55,55,55の数を3基に制限し、夫々を電機的に駆動、制御するようにしてあることから、構造が複雑化や大型化を招き易い流体制御回路を必要とせず、部品点数の増大を抑制すると共に、構造の簡素化を図って大幅な小型・軽量化を達成し、メンテナンス性にも秀れ、一段と経済的に製造、利用、維持および管理することができ、耐久寿命を延命化できるものになる。
【0055】
(結 び)
叙述の如く、この発明の小型減速機、およびそれを利用した小径高トルクモータは、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からのクラウンギヤ減速機やそれを利用したモータ技術に比較して大幅に小径化、小型・軽量化すると共に耐久強度を高め、低廉化して遥かに経済的なものとすることができる上、各クラウンギヤの加工および組み立て作業性を大幅に改善し得るものとなることから、従前までは、ロボットハンドの手指などに内蔵可能な程度に充分に小径な減速機やモータが、市場に存在せず、人の手により近いロボットハンドの製造を断念せざるを得なかったロボット研究・開発業界やロボット生産業界においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図面は、この発明の小型減速機、およびそれを利用した小径高トルクモータの技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【図1(a)】φ100mmの減速機を示す斜視図である。
【図1(b)】ベアリングを有する傾斜回転状押圧機構を示す斜視図である。
【図2】減速機の幾何学的関係を示す概念図である。
【図3】Ns=N+1の場合の噛合状態を示す模式図である。
【図4】Ns=N−1の場合の噛合状態を示す模式図である。
【図5】横軸ω縦軸h/htmaxで示す接触非接触分布図である。
【図6】hr=0.6,0.7,0.8,0.9を追加して示す接触非接触分布図である。
【図7】hr=0.7,ω=0で噛み合わない歯を示す展開正面図である。
【図8】hr=1.0で噛み合う歯を示す展開正面図である。
【図9】ロータギヤとステータギヤとの歯間距離を示す相互歯間距離図である。
【図10】hr=0.80の噛み合い歯を示す展開正面図である。
【図11】hr=0.80の噛み合い状態を示す噛み合い状態と歯間距離図である。
【図12】hr=0.92の噛み合い歯を示す展開正面図である。
【図13】hr=0.92の噛み合い状態を示す歯の噛み合い状態と歯間距離図である。
【図14】起動トルクとバックラッシとを示す関係図である。
【図15】小型減速機を示す斜視図である。
【図16】バックラッシと起動トルクとを示す測定値関係図である。
【図17】小径高トルクモータを示す断面図である。
【図18】自起動周波数とトルクとを示す関係図である。
【図19】hr=0.7で噛み合う歯を示す展開正面図である。
【図20】hr=0.76で噛み合う歯を示す展開正面図である。
【図21】hr=0.80,0.82,0.84で噛み合う歯を示す展開正面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 直径φ6(φ12)mm小型減速機
10 同 直径φ100mm減速機
11 同 小径高トルクモータ
2 ロータギヤ
20 同 歯
21 同 環状背面
3 可撓スポーク
30 同 出力軸
4 ステータギヤ
5 傾斜回転状押圧機構
50 同 入力軸
51 同 押圧枠
52 同 押圧杆(傾斜軸)
53 同 揺れ押圧杆
54 同 押圧点(ボールベアリング)
55 同 直動アクチュエータ
56 同 鋼球
57 同 押圧傾斜板(押し付け板)
h 中心間距離
ω 傾斜角度
ht 歯全丈
hmax 最大仮想歯丈
【技術分野】
【0001】
この発明は、減速機に関連するものであり、特にバックラッシの発生を抑制し、高トルクで回転可能な小型減速機、およびそれを利用した小径の高トルクモータを製造、提供する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
一般的にロボットハンドの指の関節を構成する上で必要となる性能は、安定した把握をするため高トルクであること、指関節に埋めこむため小型であること、安全性などのため軽量であること、正確な制御を行うためバックラッシが少ないことの4点であると考えられ、エンドエフェクタとしての汎用性を重視して、ロボットハンド内部にアクチュエータを含め、全ての部品を組み込むのが主流となっていて、これらハンドの指関節のアクチュエータには直流モータが使用されており、一方で、軽量で大きなトルクを発する超音波モータもバックラッシか発生しないことから、ロボットハンドの関節に採用されているが、寿命か短いことや、駆動回路が複雑といった問題がある。
【0003】
よって、指関節のアクチュエータとして、現時点では直流モータなどにバックラッシの少ない減速機構を取り付けることに妥当性があると考えられる上、一般的にロボットハンドに組み込む小径モータの回転数は大きい傾向があり、大きな減速比が必須であって、これら低バックラッシと大減速比とを実現化している減速機構は既に幾つか開発されており、この中、ハーモニックドライプに代表される波動減速機構が多く用いられているが、他の伝動装置と比較して大きな起動トルクがモータに求められる上、これを構成するウェーブジェネレータ、フレクスプライン、サーキュラスプラインを入れ子のように組み合わせているので小径化には適していない。
【0004】
(従来の技術)
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)および(2)などに提案されているものに代表されるように、クラウンギヤからなるステータギヤに対して、クラウンギヤであるローターギヤを傾斜姿勢で噛合させ、周回りに沿って均衡するよう複数個のシリンダーを配し、周回り方向に順次各シリンダーを突没制御するようにしてローターギヤを回転駆動するようにしたものや、同特許文献1(3)に見られるような、クラウンギヤからなるステータギヤに対して、クラウンギヤであるローターギヤを傾斜姿勢で噛合させ、該ローターギヤの軸周囲に均衡するよう弾性膜部材で形成した流体室を配し、各流体室に周回り方向に順次、流体を供給、排出するようにしてローターギヤを回転駆動するようにしたものなどが散見される。
【0005】
しかし、前者特許文献1(1)および(2)などに示されているような複数のシリンダーを組み込んでなる圧力モータや、後者特許文献1(3)に代表するように、流体の圧力を利用してローターギヤを回転駆動するようにして細径化したものなどは何れも、歯数差の少ないクラウンギヤ同士を噛合して動作するから、大減速比を確保できるが、ステータギヤとローターギヤとの噛合状態で、バックラッシの発生を抑制することができず、ロボットハンドの指関節などに遊びが生じて、握持動作を円滑化および安定化することができない上、複数のシリンダーを円滑に高速で制御しなければならないから、流体回路およびその自動制御装置などの構造が複雑で高価なものとなってしまい、耐久性の面でも課題が残るという致命的な欠点があった。
【特許文献1】(1)特開2002−147331号公報 (2)特開2002−317858号公報 (3)特開2006−112618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のあるクラウンギヤを用いた各種減速機や圧力モータなどは、何れもロボットハンドなどに搭載するには、クラウンギヤ同士の噛合範囲におけるバックラッシの発生を抑制できないという欠点が残るものであり、しかも構造が複雑で製造コストが嵩む上、耐久性に難があり、その分野の研究、開発に関わる者の一人としては、特に、減速機やモータの周囲をセンサや柔かい皮膚状皮膜などで覆って人の指の太さと成す義指などを実現化するために、より一層小径化した減速機が必要であることを痛感していた。
【0007】
(発明の目的)
そこで、この発明は、クラウンギヤ同士のバックラッシを解消し、高精度に回転、制動制御可能であり、構造が簡素で製造し易く、しかも耐久強度に秀れ、小型、軽量化、大減速比、高トルク化を達成可能とする新たな減速機技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の小型減速機、およびそれを利用した新規な構造の小径高トルクモータを実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の小型減速機は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤに対し、歯数(N+1)枚か、または(N−1)枚かの何れか一方としたクラウンギヤであって減速機ハウジングなどに固定したステータギヤを、互いに噛合する向きに対峙し、該ロータギヤの中心には、軸心の傾動変形を許容可能な可撓スポークを介して出力軸を連結し、同ロータギヤの歯がわとは反対がわの環状背面には、周回りに均衡する少なくとも3点に押圧点を有する傾斜回転状押圧機構を設け、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.5ないし1.0、望ましくは0.92に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとした構成を要旨とする小型減速機である。
【0009】
この基本的な構成からなる小型減速機は、その表現を変えて示すならば、歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤに対し、歯数(N−1)枚としたクラウンギヤであって減速機ハウジングなどに固定したステータギヤを、互いに噛合する向きに対峙し、該ロータギヤの中心には、軸心の傾動変形を許容可能な可撓スポークを介して出力軸を連結し、同ロータギヤの歯がわとは反対がわの環状背面には、周回りに均衡する少なくとも3点に押圧点を有する傾斜回転状押圧機構を設け、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.82ないし0.84に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとした構成からなる小型減速機となる。
【0010】
(関連する発明)
上記した小型減速機に関連し、この発明には、その小型減速機を利用した小径高トルクモータも包含している。
即ち、傾斜回転状押圧機構が、ロータギヤ環状背面の周回りの均衡する少なくとも3点の押圧点を有し、各押圧点に夫々個別の直動アクチュエータを配し、傾斜回転状となる周回り方向の順に、各直動アクチュエータを突没動作するよう制御可能な自動制御装置、および、各直動アクチュエータ用の駆動源を設けてなるものとした、この発明の基本である、上記したとおりの小型減速機を利用した小径高トルクモータである。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、この発明の小型減速機によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、当該ステータギヤおよびロータギヤの夫々の歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.5ないし1.0、望ましくは0.92に設定したものとしてあり、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとしたから、バックラッシの発生を低減化できると共に、常時、歯間距離が0.01mm未満の噛合状態の歯の枚数Ncが最も多くなり、歯1枚毎に加わる応力を分散、軽減すると共に、バックラッシの発生を大幅に抑制し、高出力、高速回転の入力を大幅に低回転化して大トルクの発生を達成可能とする上、格段に円滑な回転と高い耐久性、耐摩耗性能とを実現化することができるという秀れた効果を発揮するものとなる。
【0012】
また、当該小型減速機は、ステータギヤおよびロータギヤの夫々の各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.82ないし0.84に設定したものとすることにより、同ステータギヤに対するロータギヤの傾斜角度ωを最も小さく設定することが可能となり、回転駆動中に発生する振動を大幅に低減化できる上、傾斜回転状押圧機構の作動範囲を小さくして耐久性や耐摩耗性を高めることができ、しかも傾斜回転状押圧機構に直動アクチュエータを用いてモータを形成した場合の、直動アクチュエータの動作ストローク範囲を短くして駆動源からの入力エネルギーを大幅に低減し、作動効率や応答速度を格段に向上できるという秀れた特徴が得られるものである。
【0013】
ロータギヤおよびステータギヤが、各歯形を同一寸法、形状の二等辺三角形の先端を切除した台形状としてなる小型減速機は、高精度の歯形加工が容易で、各歯同士の噛合状態の解析や摩耗状態の計測などが容易且つ正確に行えるから、生産管理や使用開始後の保守、点検などに要する経費を削減して格段に経済的なものとすることができ、また、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形としてなる小型減速機は、歯先が滑らかな曲面となっているから、一段と円滑な回転動作を得ることができ、しかも耐摩耗性に秀れており、小径のクラウンギヤでも歯先の摩耗が少なく、小型減速機の一層の小径化に適しているという特長が得られる。
【0014】
さらにまた、ロータギヤおよびステータギヤが、双方の外径を3mm以上、6ないし12mm以下に設定し、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形とした上、互いの噛合範囲におけるバックラッシを0.24ないし0.13deg以下に規制してなる小型減速機は、ロボットハンドなどの手指の関節などに内蔵可能で、しかも把持動作に必要な高トルク性能を達成し、軽量で正確な制御ができるものとなるという秀れた効果を発揮するものとなる。
【0015】
加えて、傾斜回転状押圧機構が、入力軸の先端に、90°の姿勢でT字形をなす一文字状の傾斜軸を結合し、該傾斜軸に対し、ロータギヤ環状背面の全周に摺動自在に当接可能な押圧傾斜板を該傾斜軸回りに揺動自在に連結してなる小型減速機は、ボールベアリングなどの部品を削減して大幅な軽量・小型化、および、構造の簡素化とを達成し、ロボットハンドなどの手指の関節などに内蔵可能な小型減速機を提供可能とすることができるものとなる。
【0016】
傾斜回転状押圧機構が、ロータギヤ環状背面の周回りの均衡する少なくとも3点の押圧点を有し、各押圧点に夫々個別の直動アクチュエータを配し、傾斜回転状となる周回り方向の順に、各直動アクチュエータを突没動作するよう制御可能な自動制御装置、および、各直動アクチュエータ用の駆動源を設けてなるものとした、この発明の基本である小型減速機を利用した小径高トルクモータは、回転型モータの傾斜内蔵が困難なロボットハンドなどの手指の関節などに、無理なく内蔵することができる上、各直動アクチュエータからの入力エネルギーを高効率で出力軸に伝達可能なものとすることができるという大きな効果を奏するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
ロータギヤは、その歯がわとは反対がわとなる背面がわに、傾斜回転状押圧機構によって伝達される周回りに沿って回転する傾斜状の押圧入力を受け、同傾斜状の押圧入力が1周する毎に、傾斜姿勢で噛合するステータギヤに対して歯数1枚分ずつ回転するよう作動し、出力軸を減速、回転駆動可能とする機能を担うものであり、所定直径φ、所定歯数N枚のクラウンギヤからなり、その中心には、軸心の傾動変形を許容可能な可撓スポークを介して出力軸を連結したものとしなければならず、歯がわとは反対がわの環状背面に、周回りに均衡する少なくとも3点に押圧点を有する傾斜回転状押圧機構を組み合わせ可能とするよう、同環状背面を平滑面状に形成したものとすべきであり、傾斜回転状押圧機構の摺動部分を案内可能な環状のレールを形成したものとすることが可能であり、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどの各種合成樹脂製、ガラス繊維や炭素繊維の複合素材製、ステンレス鋼、炭素鋼、チタン合金などの各種金属製、または、それらと同程度の強度および耐摩耗性を有する素材製のものとするのが望ましい。
【0018】
出力軸は、ステータギヤに対して傾斜した姿勢に噛合しているロータギヤの回転力を、該ステータギヤと同心状の中心回りとなる回転出力として取り出し可能とする機能を果たすものであり、ロータギヤの中心に配し、可撓スポークを介して傾斜可能且つ低捩れ角度となるよう連結されたものとすべきであり、その材質は、最大出力に耐えるに充分な強度を有するものとするのが望ましく、可撓スポークは、ロータギヤの回転方向の剛性が高く、軸心の倒れ方向に柔軟な断面形状を有するものとするのが良い。
【0019】
ステータギヤは、減速機ハウジングなどの小型減速機本体部分がわに向けて傾斜姿勢に押し付けられるロータギヤの歯に噛合し、出力軸の減速回転機能を発揮可能とするか、または高トルク回転機能を発揮可能とするかの少なくとも何れかを実現化する機能を担い、所定直径φ、所定歯数(N+1)枚か、または(N−1)枚かの何れか一方としたクラウンギヤからなり、その材質は、ロータギヤの噛合動作に耐え得るに充分な強度を有するものとしなければならず、ロータギヤと同一または同等の素材製のものとすべきであり、後述する実施例に示すように、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.5ないし1.0望ましくは0.92に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとすることができる。
【0020】
また、後述する実施例に示すように、歯数(N−1)枚としたクラウンギヤであるステータギヤとし、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.82ないし0.84に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとすることができる。
【0021】
ロータギヤおよびステータギヤが、各歯形を同一寸法、形状の二等辺三角形の先端を切除した台形状としてなるものとすることができ、また、ロータギヤおよびステータギヤが、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形としてなるものとすることができる外、ロータギヤおよびステータギヤを、ロボットハンドなどの手指の関節内に内蔵可能とするよう、双方の外径を3mm以上、6ないし12mm以下に設定し、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形とした上、円滑且つ正確な回転動作が得られるよう、互いの噛合範囲におけるバックラッシを0.24ないし0.13deg以下に規制してなるものとすることができる。
【0022】
傾斜回転状押圧機構は、ロータギヤをステータギヤに対して所定の角度に傾斜させた姿勢に噛合するよう押し付けると共に、その押圧点をロータギヤの周回りに回転状に移動するよう動作可能で、該押圧点が1周する毎に、ステータギヤに対してロータギヤが、歯数1枚分ずつ回転動作可能とする機能を果たすものであり、後述する実施例に示すように、入力軸の先端に、T字形をなすよう一文字状の押圧杆を結合すると共に、該押圧杆に対して同一平面状で入力軸心回りに90°の角度をなすよう十文字形とするよう揺れ押圧杆を揺動自在に結合してなる押圧枠を設け、合計4本の棒状体(押圧杆および揺れ押圧杆)の各先にボールベアリングを夫々取り付けてなるものとすることができ、さらに小型化する場合には、入力軸の先端に、90°の姿勢でT字形をなす一文字状の傾斜軸を結合し、該傾斜軸に対し、ロータギヤ環状背面の全周に摺動自在に当接可能な押圧傾斜板を該傾斜軸回りに揺動自在に連結してなるものとすることができる外、当該小型減速機を利用した小径高トルクモータを形成する場合には、ロータギヤ環状背面の周回りの均衡する少なくとも3点の押圧点を有し、各押圧点に夫々個別の直動アクチュエータを配し、傾斜回転状となる周回り方向の順に、各直動アクチュエータを突没動作するよう制御可能な自動制御装置、および、各直動アクチュエータ用の駆動源を設けてなるものとすることができる。
【0023】
直動アクチュエータは、電磁石、圧電素子、形状記憶合金、超音波振動子などの電流の供給を受けて往復動制御可能なものを利用した電動型のものとするのが望ましいが、エアシリンダや油圧シリンダなど、流体圧力を利用したものとすることが可能である。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0024】
図1(a)の減速機の斜視図、図1(b)の傾斜回転状押圧機構の斜視図、図2の減速機の幾何学的関係図、図3のNs=N+1の場合の噛合状態の模式図、図4のNs=N−1の場合の噛合状態の模式図、図5の横軸ω縦軸h/htmaxとした接触非接触分布図、図6の台形歯(hr=0.6,0.7,0.8,0.9)を追加したω−hの分布図、図7のhr=0.7,ω=0で噛み合わない歯の展開正面図、図8のhr=1.0(図5中のC)で噛み合う歯の展開正面図、図9のロータギヤとステータギヤとの相互歯間距離図、図10のhr=0.80の噛み合い歯の展開正面図、図11のhr=0.80の噛み合い歯の噛み合い状態と歯間距離図、図12のhr=0.92の噛み合い歯の展開正面図、図13のhr=0.92の噛み合い歯の噛み合い状態と歯間距離図、図14の起動トルクとバックラッシとの関係図、図15の小型減速機の斜視図、図16のバックラッシと起動トルクとの測定値関係図、図17の小径高トルクモータの断面図、図18の自起動周波数とトルクの関係図、図19のhr=0.7で噛み合う歯の展開正面図、図20のhr=0.76で噛み合う歯の展開正面図、および、図21のhr=0.80,0.82,0.84で噛み合う歯の展開正面図に、この発明の小型減速機における代表的な一実施例を示してある。
【0025】
ここに示す事例は、歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤ2に対し、歯数(N+1)枚か、または(N−1)枚かの何れか一方としたクラウンギヤであるステータギヤ4を有し、該ロータギヤ2の環状背面20に傾斜回転状押圧機構5を設け、当該ステータギヤ4に対してロータギヤ2が、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯丈係数hrを0.5ないし1.0望ましくは0.92に設定し、同クラウンギヤ同士2,4の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものの代表的な実施例である。
【0026】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明の小型減速機1は、直径φ12mmおよびφ6mmであり、その開発に先立ち、図1(a)および(b)に示すような、直径φ100mmの減速機10を開発、試作済みであって、それは歯数が1枚異なるクラウンギヤを2つ向かい合わせて噛み合わせたものであり、ロータギヤ2には、N枚の歯を刻み、弾性変形する可撓スポーク3を介して出力軸30と同心配置状に結合し、該可撓スポーク3は、出力軸30のねじり方向の変形が微小であり、かつ同出力軸30に対して傾く方向の剛性は低く設定してあって、当該ステータギヤ4には、Ns枚の歯を刻み、減速機ハウジン(図示せず)に固定したものとしてある。
【0027】
当該歯数Ns枚とN枚との差は1枚であり、傾斜回転状押圧機構5の入力軸50は図示しないモータのロータ軸と結合し、ロータギヤ2環状背面21への押しつけ部分の傾斜角度を自動的に調整するため、回転自由な軸が1つあり、これによりステータギヤ4とロータギヤ2とを全体的に馴染むように押し付けるものとしており、図1(a)に示すように、ステータギヤ4にロータギヤ2を押し付けると片側に傾いて噛み合い、この噛み合い状態で入力軸50を回転させると、噛み合う位置が周回りに変化して出力軸30が回転駆動するものとなる。
【0028】
このφ100減速機10の、ステータギヤ4とロータギヤ2との互いの歯が最も深く沈みこんでいる場所(図1(a)中 Most Sunken Point)では歯は噛み合っておらず、そこから約±90deg前後離れた2箇所で接触しており、この減速機20の出力軸30の回転速度をnout、入力軸の回転速度をninとし、その関係を式(1)に示す。
【数1】
試作した減速機10の各歯の形状は台形、N=49枚、Ns=50枚で減連比は−49、また、パックラッシの計測値は約0.002degである。
【0029】
図1(a),(b)、図2および前記式(1)に示すように、傾斜回転状押圧機構5とロータギヤ2との速度比(減速比)の絶対値は大きいため、これらの間の摩擦を低減する必要があり、入力軸50の先端に、T字形をなすよう一文字状の押圧杆52を結合すると共に、該押圧杆52に対して同一平面状で入力軸50心回りに90°の角度をなすよう十文字形とする如く揺れ押圧杆53を揺動自在に結合してなる押圧枠51を設け、当該入力軸50をステータギヤ4に対して所定傾斜角度ωをなす角度姿勢で、該押圧枠51の押圧杆52および揺れ押圧杆53の各先端がわ合計4つの押圧点54,54,……が、ロータギヤ2環状背面21の周回り90°毎の4点に当接する如く組み合わせてなるものとし、当該傾斜回転状押圧機構(プレスロータ)5押圧枠51の合計4本の棒状体(押圧杆52および揺れ押圧杆53)の各先にボールベアリング54,54,……を合計4個取り付けている。
【0030】
図2に示すように、ロータギヤ2とステータギヤ4との歯の噛み合いは、歯底の外周を参照円と定義し、同図2中の実線円はロータギヤ2の参照円、破線円がステータギヤ4の参照円として、どちらも半径をRに設定しており、ステータギヤ4に固定した座標系をΣs、同様にロータギヤ2に固定した座標系をΣrとし、ロータギヤ2はZs軸方向にステータギヤ4に押し付けるよう組み合わせてあり、ハッチング矢印で「Push」と記している場所で最も深く押されており、この場所はXs-Zs平面とロータギヤ2の参照円が交わるところであって、このとき、ロータギヤ2とステータギヤ4とのなす角度ωで、いずれかの歯が接触していると仮定し、また、ロータギヤ2とステータギヤ4との参照円の中心はZs軸方向にh離れているとし、Xr軸から角度θr回転したロータギヤ2上の点をPとする。
【0031】
PをXs−Ys平面に垂直に写像した点Psの角度をθsとし、この点はステータギヤ4の参照円上からは中心方向にわずかに離れており、Σsから見た座標Pは、下記式(2)に示すとおりである。
【数2】
式(2)のRy(ω)とRs(θr)は、Σr上の点PをΣsへ写像するための回転行列であり、歯形には様々な形状が考えられるが、台形歯とし、台形歯の接触モデルを図3(Ns=N−1)と図4の(Ns=N+1)に示す。
【0032】
図3および図4に示すのは、接触状態を参照円の外側からΣsの原点方向へ見た図であり、実際には円筒状の曲面であるが、平面に展開しており、角度ωは十分に小さいものとし、Zs軸とZr軸が一致するものとして描画してあり、角度ωが十分に小さく、Nが十分に大きい場合、このモデルは妥当なものであって、歯丈をht、歯の圧力角をαとし、ロータギヤ2に隙間無く歯を設置すると、この歯のピッチは2πR/Nとなり、歯丈が取りうる最大値は、式(3)の値となる。
【数3】
台形の歯の形を定めるために係数hrを導入すると歯丈htは、式(4)とする。
【数4】
ロータギヤ2とステータギヤ4とで同形状の歯を用いる場合には、hr<0.5で歯溝の幅より歯先の幅の方が大きくなり、明らかに歯は噛み合わない、また、ht≦hmaxであり、よってhrの取り得る範囲は、0.5〜1.0となり、ステータギヤ4も同じ形状の歯を用いるものとする。
【0033】
ステータギヤ4のピッチは2πR/(N+1)か2πR/(N−1)かの何れかであり、Σsから見た点Pの高さPzは式(2)より、
【数5】
式(5)となり、また、Σsから見た円周方向Psの位置は、
【数6】
式(6)となり、θsも式(2)から求めることができ、
【数7】
式(7)となり、同式(7)のarctan2は、tan−1の定義域を(−π,π)に拡張した関数であり、接触している歯は、図3および図4中のハッチングした歯であって、また、図3のQとTはロータギヤ2側歯の歯先を表し、その位置はPと角度βから求めることができ、ここで角度βは、
【数8】
式(8)より求めることができ、また、ステータギヤ4側歯の歯先および歯元の位置A,Bはピッチと歯数から求めることが可能で、A,B,Q,Tより接触状態を判定し、図3に示す、接触状態(Ns=N+1)では、ロータギヤ2の角がステータギヤ4の斜面に接触している一方、図4に示すように、接触状態(Ns=N−1)はこの関係が逆になり、ステータギヤ4の角がロータギヤ2の斜面に接触するものとなり、図4のステータギヤ4とロータギヤ2との関係を逆にすると、図3に示すのものから1枚歯数を滅らしたものとほぽ同じ噛み合わせとなる。
【0034】
そこで以下では、説明の重複を避けるため、図3に示したモデルについてのみ示すこととし、ロータギヤ2とステータギヤ4との相対位置を決める変数は、図2に示す、hとωであって、これらを変化させて接触状態を探索し、台形歯の形状を決めるパラメータはhrであり、様々なhrに対する噛み合いの状態を調査することとする。
【0035】
傾斜回転状押圧機構5をステータギヤ4がわに押し込むことにより、ω、hは、一意に決定されることが三角歯(hr=1.0)の試作により経験的に判っており、この現象を数値計算結果を用いて示すこととする。
【0036】
例として、N=49,Ns=50,hr=1.0とし、hとωを変化させて接触点を探索した場合について述べると、ωを0.0002rad置きに(0.01,0.19)の範囲で、hを0.00001mm置きに(0,2.5htmax)の範囲で探索し、横軸をωとし、hを定数htmaxで正規化したh/htmaxを縦軸とし、接触と非接触の分布をプロットしたものを図5に示す。実線は接触分布を示し、それより上のハッチングの領域は、非接触分布を示し、実線より下は、歯の干渉によって使用できない領域を示しており、図5のa,b,cは実線上の点、すなわちロータギヤ2のある歯とステータギヤ4のある歯とが接触している点であって、仮にロータギヤ2とステータギヤ4とをa(ha,ωa)の位置に置いた場合、ここで、h=haに固定すると、歯と歯の干渉よりω<ωaは取り得ないが、ωa<ω<ωbの範囲は許容され、この時、何れの歯も接触せず、バックラッシが生じるものとなり、ωの変化は、傾斜回転状押圧機構5とその入力軸50との傾きによって生じ、これに対し、実線の極小値となるc(hc,ωc)にhを固定すると、取り得るωが唯一に決定され、歯の遊びによるバックラッシを生じない。
【0037】
以上より、hr=1.0の場合の低バックラッシを実現するための条件の1つは、ωに対するhが極小値となる位置で接触することであり、台形歯(hr=0.6,0.7,0.8,0.9)を追加したω−hの分布を、図6に示す。
なお、hr=0.5については、歯の噛み合う部分が殆ど無いので除外し、hrが0.6と0.7とでは、hが極小となる場合が存在しない。
【0038】
よって、例えばhr=0.7でロータギヤ2をステータギヤ4に押し付けると、破線矢印のようにロータギヤ2とステータギヤ4とが平行になるω=0まで押し込まれることとなり、このときの歯は、図7に示すように、歯先同士が接触している状態であって、歯は噛み合わず、以上をまとめると、低バックラッシを実現するためには、構成する歯形がω−hの分布でhが極小値を持ち、その極小値となるhとωの位置で接触する必要があり、h=1.0の極小値(図5のc)での歯の噛み合い状態を0<θs<πの範囲で図示したものを図8に示し、この図8によると、ステータギヤ4の12枚目の歯で接触しており、図2に示すように、この機構は、Xs−Zs平面で対称なので反対側も同じように接触しており、即ち、ロータギヤ2とステータギヤ4とはXs−Zs平面で対称な2箇所でお互いを挟み込むように接している。
【0039】
図9に示してあるように、ロータギヤ2とステータギヤ4との歯の距離(以下歯間距離)は、接触している歯の前後の歯間距離が非常に狭く0.01mm未満となっており、このような歯が多くあれば、ロータギヤ2およびステータギヤ4の僅かな弾性変形で複数の歯が接触に関与するので、大きなトルクを伝達することができ、また、傾斜回転状押圧機構5が僅かに回転すると、図8の噛み合いではなくなるが、そもそも前後の歯が極めて接触に近い状態なので、滑らかに噛み合い状態が遷移され、このφ100減速機10の動作のために可撓スポーク3を傾斜角度ωだけ変形させ続ける必要があり、これは動力伝達とは関係がないので、無駄なエネルギー消費となり、よって、できるだけ(条件1)ωを小さくするのが望ましく、また、滑らかに動作させるために(条件2)歯間距離が0.001mm未満の歯の枚数(以下Nc)を増やすべきであり、そこで、(条件1,2)を評価項目として検討するため、hrを0.80から1.00まで変化させ、ω,Nc、そして参考にhの極小値(以下hm)を計算し、これを表1に示す。
【表1】
【0040】
これによると、hrが減少するとωも減少する傾向があり、よって、評価項目(条件1)を優先するなら、極小値をもつhrの中で小さい値が適しており、例えば、hr=0.80の噛み合い状態と歯間距離を、図10および図11に示すように、三角歯と比較してωが半分以下に減少した。しかし、Ncは少なく、図10に示すように、噛み合わせは浅く、さらに、図6に示すように、極小値の谷が浅く、ωは不安定である。
【0041】
一方、評価項目(条件2)を優先するなら、表1に示すように、hr=0.92のときにNcが最多となり、これらの噛み合い状態と歯間距離を、図12および図13に示すと、hr=0.92では、三角歯と比較してNcが2倍以上に増加し、また、図6に示すように、これに近いhr=0.90での極小値の谷は深いので、hr=0.92での噛み合わせも安定していると類推でき、以上を考慮すると、hr=0.92が有利であると判断できる。
【0042】
試作した減速機10は、歯車の直径をφ100mm、歯数は、夫々N=49,Ns=50、形状はhr=0.92であり、歯車の材質はポリアセタール、傾斜回転状押圧機構5押圧枠51の各押圧杆52、揺れ押圧杆53の合計4つの先端には、夫々ボールベアリング54,54,……を取り付けてロータギヤ2環状背面21との摩擦を低減させるようにしている。この減速機10の傾斜回転状押圧機構5押圧枠51をステータギヤ4がわに押し付けて行く(hを減少させる)と、起動トルクとバックラッシが次第に変化し、この関係を図14に示しており、試作した減速機10のバックラッシの計測方法は、以下のとおりである。
1)入力軸50を固定した状態で、機構に内在する摩擦より十分大きいトルクを出力軸30に加える。
2)トルクを除去した後の出力軸30の角度e1を計測する。
3)反対方向に同じトルクを加える。
4)トルクを除去した後の出力軸30の角度e2を計測する。
5)e1とe2との差を図14でのバックラッシと定義している。
なお、角度を計測するために、1回転あたり96×104(96×10000)の分解能を持つロータリーエンコーダを用いている。
【0043】
図14では、16mNm以上の起動トルクを必要とするほどロータギヤ2を押し付けてもバックラッシは改善されず、よって、この減速機10の最小バックラッシは0.002degであり、また、バックラッシを0.01deg程度許容できる用途なら、起動トルクは約4mNmで動作可能で、このように、バックラッシと起動トルクにはトレードオフの関係があり、すなわち、減速機10の組み立ての際に、用途によって起動トルクとバックラッシを図14を基に選択することが可能である。
【0044】
以下には、直径φ12mmまたはφ6mmに設定した小型減速機1について、図15および図16を参照して示すこととする。
当該小型減速機1では、前述の台形歯に変えて、歯先が滑らかな曲面となる三角関数歯を用いることにし、N=50、Ns=49、減速比を50とした三角関数歯の噛み合い状態とし、傾斜角度は1.95degであって、計算上13枚目の歯で接触しており、この前後のロータギヤ2とステータギヤ4との歯の距離も極めて近接していて、僅かな弾性変形で接触し、即ち、出力軸30に負荷があれば、複数の歯で接触しているものと考えられる。
【0045】
試作したφ12mmの小型減速機1は、モータを取り付け、高速で回転できることを確認済みであり、φ6mm小型減速機1は、現在、動作の確認のみで、詳細な計測は未だ行っていない。φ6mmの基本的な構造は、φ12mmのものと略同じであり、ステータギヤ4、ロータギヤ2および傾斜回転状押圧機構5にはNAK材(大同特殊鋼株式会社製)を用い、ステータギヤ4およびロータギヤ2には、ハードクロムコーティングを施している。
【0046】
図15に示すように、傾斜回転状押圧機構5は、入力軸50の先端に、90°の姿勢でT字形をなす一文字状の傾斜軸52を結合し、該傾斜軸52に対し、ロータギヤ2環状背面21の全周に摺動自在に当接可能な押圧傾斜板57を該傾斜軸52回りに揺動自在に連結し、ボールベアリングを廃止してなるものとしてある。
【0047】
前述のとおり、クラウン減速機のバックラッシと起動トルクにはトレードオフの関係があることが判っており、この関係を測定したものを図16に示し、この計測から、最小のパックラッシは0.24degであり、また、出力軸30の剛性の逆数(以下、コンプライアンス)を計測すると、約19deg/Nmとなり、以前作成したφ100の減速機10のコンプライアンスは0.722deg/Nmである。
【0048】
ところで、本評価では、エンコーダを出力軸30に取り付けてバックラッシは正逆に負荷を加えて取り除いてから計測しており、この方法では、負荷を取り除いてからエンコーダの起動トルクだけ出力軸30の角度が戻らないので、明らかにこの分の誤差が発生する。出力軸30の剛性がφ100の減速機10と比較して小さくなったことにより、この起動トルクが無視できなくなっている。
具体的には、使用したエンコーダの起動トルクがカタログ値で0.003Nmであるから、この起動トルクによる誤差は片側に19×0.003=0.057deg発生する可能性があり、正逆に荷重を加えてバックラッシを計測しているので、この倍、約0.114deg発生し、計測値からこの分を引いて、試作したφ6mm小型減速機1のバックラッシは0.13deg程度と推測できる。
【0049】
以下には、前記減速機1(10)を利用した小径高トルクモータ11について示すこととする。
小径高トルクモータ11は、図17に示すように、前記減速機1(10)の傾斜回転状押圧機構5であるプレスロータの代わりに、直動アクチュエータ55,55,55で押し付ける場所を円周方向に移動させても出力軸30を回転させることができ、これをプッシュ型ソレノイド(55,55,55)3個で構成したものであって、ロータギヤ2およびステータギヤ4は、当該減速機1(10)と同様であるが、鋼球56に支持された押し付け板57でロータギヤ2を押しており、この押し付け板57の位置を適切に調整するようにすると、ソレノイド55,55,55を励磁していない場合でも、ロータギヤ2とステータギヤ4とが噛み合った状態を維持するものとなり、プッシュ型ソレノイド55,55,55を順次励磁すると、押し付け板57が歳差運動するように傾き、ロータギヤ2とステータギヤ4との噛み合い状態が変化し、その結果、ロータギヤ2に結合された出力軸30か回転し、ステッピングモータのような動作となる。
【0050】
当該傾斜回転状押圧機構5の各ソレノイド55,55,55は、タカハ機工株式会社のCB12500190(抵抗値19Ω)を用い、これをDC12Vで駆動し、ステッピングモータを1相励磁で駆動するように各ソレノイド55,55,55を励磁した場合の自起動周波数(静止状態から起動できる周波数)とトルクの関係を図18に示し、また、最大応答周波数(低速動作時から応答できる最大周波数)は24.4Hzとなり、試作で使用したロータギヤ2とステータギヤ4は、前記減速機1(10)として作製したものを流用しており、これに基づいて本原理のモータに適した歯形を考察すると、ストロークの短い方が振動の低減、効率、応答速度などの面から有利であると考えられるから、ストロークは、傾斜角度ωと各クラウンギヤの半径Rとで決まり、半径Rは予め設定されるので、傾斜角ωを小さくする必要があり、歯数が60枚のニューテーションモータとの比較のため、減連比か60となる2種類の噛み合わせNs(=59.61)について、ωを小さくするための歯形を検討する。2種類あるのは、前記式(1)に示される減連比が最大となるよう、Ns=N−1かNs=N+1かの何れか一方が選択されることにより、歯モデルは、前記図3と同じとする。
【0051】
歯の形状を決めるバラメータhrに対し、バックラッシか発生しないかみ合わせの状態が1つ求められ、このときのω、接触する歯番号c、歯間距離が0.01未満の歯数Ncを計算したものを、表2および表3に示す。
【表2】
【表3】
【0052】
表2でのhr=0.7未満、また、表3でのhr=0.8未満では、hの極小値がないので、バックラッシが発生しない噛み合わせを構成できない、表2のhr=0.7の噛み合いを図19に示す。このときω=2.435degとなり、ニューテーションモータの3degと比較して傾斜角度を0.5deg以上小さくすることができる。また、Ncの数が最大となるhr=0.76の噛み合いを図20に示す。この場合でもω=2.518degとなり、表3のhr=0.80〜0.84は、表2のものよりωが小さく、これらをまとめて図21に示す。これによると、hr=0.80での噛み合いは浅く、噛み合う歯の弾性変形による歯跳ぴが発生する可能性がある。
【0053】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の、図1(a),(b)に示す、φ100mm減速機10で、N=49枚、Ns=50枚、hr=0.92に設定すると、歯間距離が0.01mm未満の歯の枚数Ncを大幅に増加させてバックラッシの低減化と高トルク化を達成可能とすることができ、また、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.82ないし0.84に設定したものは、所定傾斜角度ωを最小限に留めて回転効率および耐摩耗性を大幅に高めることができ、しかもロータギヤ2およびステータギヤ4をポリアセタール製とすることにより、加工性に秀れると共に、互いの歯同士が接触圧力によって弾性変形し易く、歯間距離0.01mm未満の歯(枚数Nc)が、より確りと噛み合うものとなって伝達トルクを一段と高める効果が得られるものとなり、図15に示すように、φ6mm(およびφ12mm)小型減速機1の傾斜回転状押圧機構5からボールベアリングを廃止して、押圧傾斜板57を採用したことにより、その構造を大幅に簡素化して小径化、小型化および軽量化を達成すると共に、小径化によって摩擦による発熱を低減し、耐久性の大幅な向上を図ることができる。
【0054】
加えて、小径高トルクモータ11は、傾斜回転状押圧機構5の直動アクチュエータ55,55,55の数を3基に制限し、夫々を電機的に駆動、制御するようにしてあることから、構造が複雑化や大型化を招き易い流体制御回路を必要とせず、部品点数の増大を抑制すると共に、構造の簡素化を図って大幅な小型・軽量化を達成し、メンテナンス性にも秀れ、一段と経済的に製造、利用、維持および管理することができ、耐久寿命を延命化できるものになる。
【0055】
(結 び)
叙述の如く、この発明の小型減速機、およびそれを利用した小径高トルクモータは、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からのクラウンギヤ減速機やそれを利用したモータ技術に比較して大幅に小径化、小型・軽量化すると共に耐久強度を高め、低廉化して遥かに経済的なものとすることができる上、各クラウンギヤの加工および組み立て作業性を大幅に改善し得るものとなることから、従前までは、ロボットハンドの手指などに内蔵可能な程度に充分に小径な減速機やモータが、市場に存在せず、人の手により近いロボットハンドの製造を断念せざるを得なかったロボット研究・開発業界やロボット生産業界においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図面は、この発明の小型減速機、およびそれを利用した小径高トルクモータの技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【図1(a)】φ100mmの減速機を示す斜視図である。
【図1(b)】ベアリングを有する傾斜回転状押圧機構を示す斜視図である。
【図2】減速機の幾何学的関係を示す概念図である。
【図3】Ns=N+1の場合の噛合状態を示す模式図である。
【図4】Ns=N−1の場合の噛合状態を示す模式図である。
【図5】横軸ω縦軸h/htmaxで示す接触非接触分布図である。
【図6】hr=0.6,0.7,0.8,0.9を追加して示す接触非接触分布図である。
【図7】hr=0.7,ω=0で噛み合わない歯を示す展開正面図である。
【図8】hr=1.0で噛み合う歯を示す展開正面図である。
【図9】ロータギヤとステータギヤとの歯間距離を示す相互歯間距離図である。
【図10】hr=0.80の噛み合い歯を示す展開正面図である。
【図11】hr=0.80の噛み合い状態を示す噛み合い状態と歯間距離図である。
【図12】hr=0.92の噛み合い歯を示す展開正面図である。
【図13】hr=0.92の噛み合い状態を示す歯の噛み合い状態と歯間距離図である。
【図14】起動トルクとバックラッシとを示す関係図である。
【図15】小型減速機を示す斜視図である。
【図16】バックラッシと起動トルクとを示す測定値関係図である。
【図17】小径高トルクモータを示す断面図である。
【図18】自起動周波数とトルクとを示す関係図である。
【図19】hr=0.7で噛み合う歯を示す展開正面図である。
【図20】hr=0.76で噛み合う歯を示す展開正面図である。
【図21】hr=0.80,0.82,0.84で噛み合う歯を示す展開正面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 直径φ6(φ12)mm小型減速機
10 同 直径φ100mm減速機
11 同 小径高トルクモータ
2 ロータギヤ
20 同 歯
21 同 環状背面
3 可撓スポーク
30 同 出力軸
4 ステータギヤ
5 傾斜回転状押圧機構
50 同 入力軸
51 同 押圧枠
52 同 押圧杆(傾斜軸)
53 同 揺れ押圧杆
54 同 押圧点(ボールベアリング)
55 同 直動アクチュエータ
56 同 鋼球
57 同 押圧傾斜板(押し付け板)
h 中心間距離
ω 傾斜角度
ht 歯全丈
hmax 最大仮想歯丈
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤに対し、歯数(N+1)枚か、または(N−1)枚かの何れか一方としたクラウンギヤであって減速機ハウジングなどに固定したステータギヤを、互いに噛合する向きに対峙し、該ロータギヤの中心には、軸心の傾動変形を許容可能な可撓スポークを介して出力軸を連結し、同ロータギヤの歯がわとは反対がわの環状背面には、周回りに均衡する少なくとも3点に押圧点を有する傾斜回転状押圧機構を設け、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.5ないし1.0、望ましくは0.92に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとしたことを特長とする小型減速機。
【請求項2】
歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤに対し、歯数(N−1)枚としたクラウンギヤであって減速機ハウジングなどに固定したステータギヤを、互いに噛合する向きに対峙し、該ロータギヤの中心には、軸心の傾動変形を許容可能な可撓スポークを介して出力軸を連結し、同ロータギヤの歯がわとは反対がわの環状背面には、周回りに均衡する少なくとも3点に押圧点を有する傾斜回転状押圧機構を設け、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.82ないし0.84に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとしたことを特長とする小型減速機。
【請求項3】
ロータギヤおよびステータギヤが、各歯形を同一寸法、形状の二等辺三角形の先端を切除した台形状としてなるものとした、請求項1または2何れか一記載の小型減速機。
【請求項4】
ロータギヤおよびステータギヤが、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形としてなるものとした、請求項1または2何れか一記載の小型減速機。
【請求項5】
ロータギヤおよびステータギヤが、双方の外径を3mm以上、6ないし12mm以下に設定し、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形とした上、互いの噛合範囲におけるバックラッシを0.24ないし0.13deg以下に規制してなるものとした、請求項1または2何れか一記載の小型減速機。
【請求項6】
傾斜回転状押圧機構が、入力軸の先端に、90°の姿勢でT字形をなす一文字状の傾斜軸を結合し、該傾斜軸に対し、ロータギヤ環状背面の全周に摺動自在に当接可能な押圧傾斜板を該傾斜軸回りに揺動自在に連結してなるものとした、請求項1ないし5何れか一記載の小型減速機。
【請求項7】
傾斜回転状押圧機構が、ロータギヤ環状背面の周回りの均衡する少なくとも3点の押圧点を有し、各押圧点に夫々個別の直動アクチュエータを配し、傾斜回転状となる周回り方向の順に、各直動アクチュエータを突没動作するよう制御可能な自動制御装置、および、各直動アクチュエータ用の駆動源を設けてなるものとした、請求項1ないし6何れか一記載の小型減速機を利用した小径高トルクモータ。
【請求項1】
歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤに対し、歯数(N+1)枚か、または(N−1)枚かの何れか一方としたクラウンギヤであって減速機ハウジングなどに固定したステータギヤを、互いに噛合する向きに対峙し、該ロータギヤの中心には、軸心の傾動変形を許容可能な可撓スポークを介して出力軸を連結し、同ロータギヤの歯がわとは反対がわの環状背面には、周回りに均衡する少なくとも3点に押圧点を有する傾斜回転状押圧機構を設け、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.5ないし1.0、望ましくは0.92に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとしたことを特長とする小型減速機。
【請求項2】
歯数N枚のクラウンギヤであるロータギヤに対し、歯数(N−1)枚としたクラウンギヤであって減速機ハウジングなどに固定したステータギヤを、互いに噛合する向きに対峙し、該ロータギヤの中心には、軸心の傾動変形を許容可能な可撓スポークを介して出力軸を連結し、同ロータギヤの歯がわとは反対がわの環状背面には、周回りに均衡する少なくとも3点に押圧点を有する傾斜回転状押圧機構を設け、当該ステータギヤに対してロータギヤが、互いに所定中心間距離h、所定傾斜角度ωをなし、各ギヤの歯全丈ht/最大仮想歯丈hmax=歯丈係数hrを0.82ないし0.84に設定し、同クラウンギヤ同士の最深噛合位置を挟む、周回り双方向に1枚目または複数枚目となる両がわの少なくとも2枚の歯が夫々常時噛合するよう組み合わせてなるものとしたことを特長とする小型減速機。
【請求項3】
ロータギヤおよびステータギヤが、各歯形を同一寸法、形状の二等辺三角形の先端を切除した台形状としてなるものとした、請求項1または2何れか一記載の小型減速機。
【請求項4】
ロータギヤおよびステータギヤが、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形としてなるものとした、請求項1または2何れか一記載の小型減速機。
【請求項5】
ロータギヤおよびステータギヤが、双方の外径を3mm以上、6ないし12mm以下に設定し、各歯形を同一寸法、形状の三角関数歯形とした上、互いの噛合範囲におけるバックラッシを0.24ないし0.13deg以下に規制してなるものとした、請求項1または2何れか一記載の小型減速機。
【請求項6】
傾斜回転状押圧機構が、入力軸の先端に、90°の姿勢でT字形をなす一文字状の傾斜軸を結合し、該傾斜軸に対し、ロータギヤ環状背面の全周に摺動自在に当接可能な押圧傾斜板を該傾斜軸回りに揺動自在に連結してなるものとした、請求項1ないし5何れか一記載の小型減速機。
【請求項7】
傾斜回転状押圧機構が、ロータギヤ環状背面の周回りの均衡する少なくとも3点の押圧点を有し、各押圧点に夫々個別の直動アクチュエータを配し、傾斜回転状となる周回り方向の順に、各直動アクチュエータを突没動作するよう制御可能な自動制御装置、および、各直動アクチュエータ用の駆動源を設けてなるものとした、請求項1ないし6何れか一記載の小型減速機を利用した小径高トルクモータ。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図1(b)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−2237(P2012−2237A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134611(P2010−134611)
【出願日】平成22年6月13日(2010.6.13)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(505089614)国立大学法人福島大学 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月13日(2010.6.13)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(505089614)国立大学法人福島大学 (34)
【Fターム(参考)】
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