説明

小型還元ガス化溶融炉およびその補修方法

【課題】 炉体、特に炉底部の補修を短時間でかつ合理的に行うことができる小型還元ガス化溶融炉及びその補修方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明の小型還元ガス化溶融炉1は、一般廃棄物や産業廃棄物などを処理する小型還元ガス化溶融炉であって、炉体が、炉底部と、それ以外の炉体部分である炉本体部と、これら炉底部を炉本体部から垂直分離可能に連結する連結手段とを有し、炉本体部の外周位置にこれを支持する支持手段を設け、炉体を、支持手段によって炉底部が地上から0.5〜3.0mの範囲の高さだけ上方に位置する状態で支持し、炉底部の分離時に地上に載置した炉底部と炉本体部との間にできた隙間を通じて炉内補修を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物などを処理する小型還元ガス化溶融炉、特にコークスベット式小型還元ガス化溶融炉およびその補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の一般廃棄物や産業廃棄物などを熱分解処理するコークスベット式ガス化溶融炉100は、図4や特許文献1の図2に示されるように、炉底部101が、地上102、例えば地面や床などに載置される形式で設置されるのが一般的である。
【特許文献1】特開2000−130947号公報
【0003】
また、コークスベット式ガス化溶融炉は、炉内温度が炉底部で2000℃程度と炉体で最も高くなる部分であるなどの理由から、炉底部が炉体の部分のうちで最も損傷しやすい。
【0004】
しかしながら、従来のガス化溶融炉の炉内の損傷部分103を補修するには、炉頂104から炉内105に侵入して補修する方法しか手段がなかった。
【0005】
また、かかる溶融炉100は、操業を停止してからある程度冷えるまでには、通常は、最低でも3〜5日間程度の冷却期間が必要であるため、操業を再開するまでにはかなりの日数を要し、これは、結果として、廃棄物処理効率を悪化させることになった。
【0006】
そして、かかる溶融炉100は、上記冷却期間経過後に、作業者が炉頂から炉内105へ侵入して補修されるが、かかる場合であっても、炉内105は完全には冷却されずに余熱が残っていることが多く、このように余熱が残っている状態で長時間の補修作業を行うと、作業者が熱中症にかかる恐れがある。
【0007】
そのため、従来の溶融炉100における補修作業は、作業者を、例えば3組に分け、作業時間を30〜60分単位とし、3組で順次交代して短時間の補修作業を繰返し行っていたが、これは、作業者の工数の増大を招いていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、炉体構成の適正化を図ることにより、炉体、特に炉底部の補修を短時間でかつ合理的に行うことができる小型還元ガス化溶融炉及びその補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の小型還元ガス化溶融炉は、一般廃棄物や産業廃棄物などを処理する小型還元ガス化溶融炉であって、炉体が、炉底部と、それ以外の炉体部分である炉本体部と、これら炉底部を炉本体部から垂直分離可能に連結する連結手段とを有し、炉本体部の外周位置にこれを支持する支持手段を設け、炉体を、支持手段によって炉底部が地上から0.5〜3.0mの範囲の高さだけ上方に位置する状態で支持し、炉底部の分離時に地上に載置した炉底部と炉本体部との間にできた隙間を通じて炉内補修を行うものである。
【0010】
連結手段は、炉底部と炉本体部の双方にリング状のフランジ部を設け、これらフランジ部の円周上に均等間隔で複数個の貫通孔を形成し、これらの貫通孔を介したボルトの締付けによるものであることが好ましい。
【0011】
さらに、両フランジ部の間に、炉内の高温ガスの流出を防止するシール部材を配設してなることが好ましい。
【0012】
また、本発明の小型還元ガス化溶融炉の補修方法は、炉体が、炉底部と、それ以外の炉体部分である炉本体部と、これら炉底部を炉本体部から垂直分離可能に連結する連結手段とを有し、かつ、炉本体部の外周位置に設けた支持手段によって炉底部が地上から0.5〜3.0mの範囲の高さだけ上方に位置する状態で炉体を支持してなる、一般廃棄物や産業廃棄物などを処理する小型還元ガス化溶融炉の炉底部を、連結手段による連結を解除して炉本体部から垂直に分離して地上に載置し、炉本体部と炉底部との間にできた隙間を通じて炉内を補修するか、あるいは、小型還元ガス化溶融炉の炉底部を、連結手段による連結を解除して炉本体部から垂直に分離し、他の場所に移送させた後、別の炉底部を炉本体部の下方位置に移送させ、その後、連結手段を用いて炉本体部に連結することを特徴とする小型還元ガス化溶融炉の補修方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、炉体構成の適正化を図ることにより、炉体、特に炉底部の補修を短時間でかつ合理的に行うことができる。
【0014】
特に、従来の溶融炉(図4)では、炉内の補修作業をする場合には、作業者は炉頂から進入する必要があり、操業を停止してからある程度冷えるまでには、通常は、最低でも3〜5日間程度の冷却期間が必要であったのに対して、本発明の溶融炉では、炉底部が分離することができ、冷却時間も0.5時間程度と大幅に短縮することができる結果、廃棄物処理効率を飛躍的に向上させることができる。
【0015】
また、作業者はわざわざ炉頂から進入することなく、炉本体部と炉底部との間にできた外界に通じた隙間から炉内を補修できるので、安全性も向上する。
【0016】
さらに、炉底部の補修をする場合には、炉底部を炉本体部から分離して補修できるので、作業性が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に従う小型還元ガス化溶融炉の概略正面図を示したものである。
【0018】
図1に示す小型還元ガス化溶融炉1は、一般廃棄物や産業廃棄物などを処理するためのものであり、炉体2が、炉底部3と、それ以外の炉体部分である炉本体部4と、これら炉底部3と炉本体部4を分離可能に連結する連結手段5とで主に構成されている。図2は、図1に示す小型還元ガス化溶融炉1の炉体2を、炉底部3と炉本体部4とに分離した状態を示したものである。
【0019】
なお、本発明でいう「小型還元ガス化溶融炉」とは、炉底部を炉本体部から分離可能に構成するため、炉の重量が比較的軽いことが好ましく、具体的には、炉容積が300m以下である小型炉であることが好適であり、より好適には、炉容積が100m以下である小型炉である。また、ここでいう「炉底部」とは、具体的には、溶融スラグや溶融金属の排出口を含む炉体下部を意味する。
【0020】
また、炉本体部4の外周位置に、炉本体部4を支持する支持手段6を設け、炉体2を、支持手段6によって炉底部3が地上7から所定の高さH、具体的には、0.5〜3.0mの範囲だけ上方に位置する状態で支持する。前記所定高さが0.5m未満だと、炉底部3を炉本体部4から分離したときにこれらの間にできる隙間Sが狭く、炉内での作業性が悪化するからであり、また、3.0m超えだと、炉本体部4が、従来の溶融炉に比べて極端に高い位置に設置されることになって、炉本体部の補修がより高所での作業となる結果、作業性が悪化するからである。
【0021】
支持手段6としては、炉底部3が地上7から上方に位置する状態で炉体2を支持できる構成であればよく、特に限定はしないが、例えば、ブラケットや台車によって炉本体部の鉄皮を支持する方法や、チェーンブロックや油圧によって炉体を吊るす方法を採用することができる。
【0022】
連結手段5としては、炉底部3と炉本体部4とを分離可能に連結できる構成であればよく、特に限定はしない。連結手段5の一例を挙げておくと、図3に示すように、炉底部3と炉本体部4の双方にリング状のフランジ部8、9を設け、これらフランジ部8、9の円周上に均等間隔で複数個の貫通孔10、11を形成し、これらの貫通孔10、11を介したボルト12の締付けによって連結すればよい。なお、フランジ部8、9を締め付けるボルト12の配設数は、フランジ部8、9の周長、より具体的には配設ピッチによって適正に設定すればよく、具体的には、例えば炉容積が0.1〜20mである溶融炉1の場合で8〜25本、炉容積が50〜300mである溶融炉1の場合で150〜650本である。
【0023】
また、本発明のガス化溶融炉1では、炉底部3と炉本体部4との間で分離可能に連結する構成を採用しているので、炉底部3と炉本体部4の連結は、炉内の高温ガスが流出しないように行うことが必要であり、このため、両フランジ部8、9の間にシール部材(図示せず)を配設することが好ましい。
【0024】
シール部材としては、耐熱性のパッキンやOリングを用いることが好ましい。
【0025】
次に、本発明の小型還元ガス化溶融炉1の補修方法を説明する。
上記した構成を有する小型還元ガス化溶融炉1の炉底部3を、連結手段5による連結を解除して炉本体部4から分離して地上7に載置する(図2参照)。
【0026】
そして、作業者が炉内で補修作業をする場合には、わざわざ炉頂13から進入することなく、炉本体部4と炉底部3との間にできた隙間Sから炉内に容易に進入することができるので、炉内の補修、特に炉底部3の補修を、従来法に比べて簡便に行うことができる。また、炉体2を、炉本体部4と炉底部3とに分離した上で補修するため、炉内温度を短時間で冷却することができる。
【0027】
一方、炉底部3に損傷箇所がある場合であって、かつその損傷を補修するのに長時間を要するとき、または、炉底部3の補修が不可能であるときには、炉底部3を、連結手段5による連結を解除して炉本体部4から分離して他の場所に移送するとともに、損傷箇所のない別の炉底部を炉本体部4の下方位置に移送した後、かかる炉底部を連結手段5を用いて炉本体部4に連結することによって炉底部のみを簡便に交換することができ、これによって、短時間で操業を開始することができる。
【0028】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、炉体構成の適正化を図ることにより、炉体、特に炉底部の補修を短時間でかつ合理的に行うことができる。
【0030】
特に、従来の溶融炉(図4)では、炉内の補修作業をする場合には、作業者は炉頂から進入する必要があり、操業を停止してからある程度冷えるまでには、通常は、最低でも3〜5日間程度の冷却期間が必要であったのに対して、本発明の溶融炉では、炉底部が分離することができ、冷却時間も0.5時間程度と大幅に短縮することができる結果、廃棄物処理効率を飛躍的に向上させることができる。
【0031】
また、作業者はわざわざ炉頂から進入することなく、炉本体部と炉底部との間にできた外界に通じた隙間から炉内を補修できるので、安全性も向上する。
【0032】
さらに、炉底部の補修をする場合には、炉底部を炉本体部から分離して補修できるので、作業性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の小型還元ガス化溶融炉の概略正面図である。
【図2】図1に示す小型還元ガス化溶融炉の炉底部を分離したときの状態を示す図である。
【図3】炉本体部と炉底部の連結手段を説明するための図である。
【図4】従来の小型ガス化溶融炉の概略正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 小型還元ガス化溶融炉
2 炉体
3 炉底部
4 炉本体部
5 連結手段
6 支持手段
7 地上
8 炉底部のフランジ部
9 炉本体部のフランジ部
10 炉底部の貫通孔
11 炉本体部の貫通孔
12 ボルト
13 炉頂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般廃棄物や産業廃棄物などを処理する小型還元ガス化溶融炉において、
炉体が、炉底部と、それ以外の炉体部分である炉本体部と、前記炉底部を炉本体部から垂直分離可能に連結する連結手段とを有し、
炉本体部の外周位置にこれを支持する支持手段を設け、炉体を、支持手段によって炉底部が地上から0.5〜3.0mの範囲の高さだけ上方に位置する状態で支持し、炉底部の分離時に地上に載置した炉底部と炉本体部との間にできた隙間を通じて炉内補修を行うことができることを特徴とする小型還元ガス化溶融炉。
【請求項2】
連結手段は、炉底部と炉本体部の双方にリング状のフランジ部を設け、これらフランジ部の円周上に均等間隔で複数個の貫通孔を形成し、これらの貫通孔を介したボルトの締付けによるものである請求項1に記載の小型還元ガス化溶融炉。
【請求項3】
両フランジ部の間に、炉内の高温ガスの流出を防止するシール部材を配設してなる請求項2に記載の小型還元ガス化溶融炉。
【請求項4】
炉体が、炉底部と、それ以外の炉体部分である炉本体部と、前記炉底部を炉本体部から垂直分離可能に連結する連結手段とを有し、かつ、炉本体部の外周位置に設けた支持手段によって炉底部が地上から0.5〜3.0mの範囲の高さだけ上方に位置する状態で炉体を支持してなる、一般廃棄物や産業廃棄物などを処理する小型還元ガス化溶融炉の炉底部を、連結手段による連結を解除して炉本体部から垂直に分離して地上に載置し、炉本体部と炉底部との間にできた隙間を通じて炉内を補修することを特徴とする小型還元ガス化溶融炉の補修方法。
【請求項5】
炉体が、炉底部と、それ以外の炉体部分である炉本体部と、前記炉底部を炉本体部から垂直分離可能に連結する連結手段とを有し、かつ、炉本体部の外周位置に設けた支持手段によって炉底部が地上から0.5〜3.0mの範囲の高さだけ上方に位置する状態で炉体を支持してなる、一般廃棄物や産業廃棄物などを処理する小型還元ガス化溶融炉の炉底部を、連結手段による連結を解除して炉本体部から垂直に分離し、他の場所に移送させた後、別の炉底部を炉本体部の下方位置に移送させ、その後、連結手段を用いて炉本体部に連結することを特徴とする小型還元ガス化溶融炉の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−76045(P2008−76045A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251763(P2007−251763)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【分割の表示】特願2002−293550(P2002−293550)の分割
【原出願日】平成14年10月7日(2002.10.7)
【出願人】(598092166)株式会社還元溶融技術研究所 (22)
【Fターム(参考)】