小型電動車両
【課題】雨水等への対策を図った上でシートの下方の格納スペースを有効に利用できるようにする。
【解決手段】リアカバー7を構成する左右の側面カバー18及び後面カバー19はシートクッション15の側面の下部及びシートバック16の背面の下部を外側から覆うかたちとなっている。左右の側面カバー18には、上縁部18a付近から内側に垂下する垂下面22が設けられており、その垂下面22の下縁部には車幅方向内側に延出する樋部23が形成され、また、後面カバー19にも同様の樋部23が形成される。シート6の両側面や後面とリアカバー7の上縁部との間から雨水等が浸入したときにも、雨水等は後部の樋部27及び両側部の樋部23を流れ、排水溝24を経て排水穴25から排水される。
【解決手段】リアカバー7を構成する左右の側面カバー18及び後面カバー19はシートクッション15の側面の下部及びシートバック16の背面の下部を外側から覆うかたちとなっている。左右の側面カバー18には、上縁部18a付近から内側に垂下する垂下面22が設けられており、その垂下面22の下縁部には車幅方向内側に延出する樋部23が形成され、また、後面カバー19にも同様の樋部23が形成される。シート6の両側面や後面とリアカバー7の上縁部との間から雨水等が浸入したときにも、雨水等は後部の樋部27及び両側部の樋部23を流れ、排水溝24を経て排水穴25から排水される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員が着座するためのシートの下方を格納スペースとして利用する小型電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者等でも手軽に扱うことのできるセニアカー等と称される三輪或いは四輪の小型電動車両が開発されている。この種の小型電動車両では、例えば特許文献1にあるように、乗員が着座するためのシートの下方を格納スペースとして利用し、コントローラやバッテリが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−247155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に開示されている小型電動車両では、コントローラやバッテリをドーム状或いは箱状のカバーで覆うとともに、該カバーの上面にシートポストを露出させて、そのシートポストでシートを支持する構成となっている。すなわち、シートの下方でカバーが意匠的に閉じた形状となっている。この場合、シートポストの露出部分はカバーの開口部となるが、シートの真下となるので、その開口部からカバー内に雨水等が浸入するのを防ぐことができる。
【0005】
ところで、上記のようにシートの下方でカバーが意匠的に閉じている場合、シートの下面とカバーの上面との間にスペースが形成される。このスペースは、シートの下方を格納スペースとして利用するという観点からいえばデッドスペースとなってしまう。
【0006】
特にシートの下方にコントローラやバッテリだけでなく、燃料電池も格納するような場合には、シートの下方の格納スペースをできるだけ大きく確保することが求められる。その一方で、小型電動車両では乗員の乗降性や足つき性を考慮して、シートの座面を低く抑え、カバーの前方や側方への膨出を極力抑えるように設計される。そこで、例えばシートの両側面及び後面までカバーで覆う構成、換言すればカバーの上縁部をシートの両側面及び後面と対向させる構成が考えられる。これにより、シートの下面近くまでを格納スペースとして利用することが可能になる。
【0007】
しかしながら、シートの両側面及び後面までカバーで覆う構成とする場合、シートの両側面や後面とカバーの上縁部との間から浸入する雨水等への対策が必要となる。
【0008】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、雨水等への対策を図った上でシートの下方の格納スペースを有効に利用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の小型電動車両は、車体フレームと、前記車体フレームに搭載された、乗員が着座するためのシートと、前記シートの下方において側面及び後面を覆うとともに、前記シートの両側面及び後面と対向する上縁部を有するカバーとを備え、前記カバーの内側には樋部が設けられていることを特徴とする。
本発明の小型電動車両の他の特徴とするところは、前記カバーの内側に設けられた樋部のうち両側部の樋部は、後方から前方に向かって下るように傾斜する点にある。
本発明の小型電動車両の他の特徴とするところは、前記カバーの内側に設けられた樋部のうち両側部の樋部の前部には排水穴が形成されており、前記樋部を流れる水が前記排水穴から排水され、前記カバーの内面をつたって流れ落ちる点にある。
本発明の小型電動車両の他の特徴とするところは、前記シートの内側に設けられた樋部は、平面視において後部及び両側部で連続するコの字状の排水経路を構成する点にある。
本発明の小型電動車両の他の特徴とするところは、前記カバーのうち側面を構成する部分は、上部が上方に向かうに従って幅狭となる形状を有する点にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、雨水等への対策を図った上でシートの下方の格納スペースを有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る小型電動車両を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る小型電動車両を示す背面図である。
【図3】実施形態に係る小型電動車両の後部側面図である。
【図4】実施形態に係る小型電動車両のリアカバー内の構成を示す斜視図である。
【図5】実施形態に係る小型電動車両の燃料電池ユニットの構成を示す図である。
【図6】図3のA−A線の断面図である。
【図7】実施形態に係る小型電動車両の左右の側面カバーと後面カバーを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図8】実施形態に係る小型電動車両の左側面カバーの内面を示す図である。
【図9】実施形態に係る小型電動車両の後面カバーを示す斜視図である。
【図10】実施形態に係る小型電動車両の樋部における流路、排水溝及び排水穴の関係を説明するための図である。
【図11】実施形態に係る小型電動車両における排水経路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は第1の実施形態に係る小型電動車両の全体構成を示す斜視図、図2は背面図である。また、図3は小型電動車両の後部側面図、図4はリアカバー7内の構成を示す斜視図である。なお、本明細書において前方、後方、左右は、小型電動車両に乗った乗員から見た方向をいう。
【0013】
プラットフォーム型の車体フレームに、左右一対の前輪1及び左右一対の駆動輪である後輪2が支持される。図4に示すように、車体フレームに含まれる左右のメインフレーム3は、側面視において前方が略水平或いはやや前上がりに、後方が後ろ上がりとなる略V字状に折曲形成される。また、左右のメインフレーム3は、平面視において前部が前方に向かうに従って幅狭となるように形成され、後部が略平行に延伸する。左右のメインフレーム3間には適宜ブリッジ部材等が架設される。
【0014】
車体フレームは合成樹脂製の車体カバーで覆われる。車体カバーは、車両前部から、シート6の前方下部の足載せ部4の両側部を覆い、前輪1のフェンダを構成するフロントカバー5、シート6の下方を覆うリアカバー7等により構成される。
【0015】
前輪1は車体フレームの前部に不図示の前輪懸架装置及びステアリング機構によって左右に操舵可能に支持される。ステアリング機構を構成する不図示のステアリングポストは、フロントカバー5内を上方に向かって延伸し、その上部には電装部を含むハンドルユニット8が設けられる。ハンドルユニット8の適所にはバックミラー9が支持される。また、フロントカバー5の前面部には物入れとして使用される収納籠10が装架される。
【0016】
メインフレーム3の後部には後輪2に動力を伝達する駆動ユニット11が配置される。駆動ユニット11は、後輪2の駆動軸12及び駆動源である電動モータMを含み、アーム部13を介してメインフレーム3に上下方向に揺動可能に支持される。また、車体フレームと駆動ユニット11との間にリアサスペンション14が装架される(図3を参照)。
【0017】
リアカバー7の上部には乗員が着座するためのシート6が搭載される。シート6はシートクッション15及びシートバック(背もたれ)16を含み、シートバック16の両側部にはアームレスト17が設けられる。図3に示すように、車両側面視において、リアカバー7を構成する左右の側面カバー18及び後面カバー19はシートクッション15の側面15bの下部及びシートバック16の背面(シート6の後面)の下部を外側から覆うかたちとなっている。
【0018】
本実施形態に係る小型電動車両では、駆動ユニット11の電動モータMの電力供給源として燃料電池が用いられる。図5は燃料電池ユニットの構成を示す図である。燃料電池ユニット100は、メタノールに基づく水素と空気中の酸素との電気化学反応により電気エネルギーを生成可能な単電池セル(図示せず)を複数個積層して構成される燃料電池スタック101を備える。
【0019】
また、例えば54%程度の高濃度メタノールを収容する燃料タンク102と、この高濃度メタノールを燃料電池スタック101の電気化学反応に適した例えば約3%濃度に希釈してメタノール水溶液を生成するための水を収容する水タンク103と、生成されたメタノール水溶液を収容する循環タンク104とを備える。
【0020】
また、燃料タンク102内の高濃度メタノールを循環タンク104内に供給する燃料ポンプ105と、水タンク103内の水を循環タンク104内に供給する水ポンプ106と、循環タンク104内のメタノール水溶液を燃料電池スタック101に供給する循環ポンプ107とを備える。
【0021】
また、燃料電池スタック101に酸素を含む空気を供給するエアコンプレッサ108と、燃料電池スタック101内の電気化学反応による電気エネルギー生成時に副産物として生成される高温の水蒸気を含んだ排気ガスを冷却するラジエター109と、気液分離された排ガス中の水分が最終的に貯留される第二水タンクとを備える。
【0022】
燃料電池ユニット100は、メタノール水溶液と空気とを燃料電池スタック101内において電気化学反応させることにより電気エネルギーを生成させる。また、この電気化学反応時に生成される炭酸ガス及び使用されなかった一部のメタノール水溶液は循環タンク104に導かれる。燃料電池スタック101から循環タンク104への戻り流路上には金属イオン吸着フィルタ110が配設される。メタノール水溶液中に金属イオンが存在すると燃料電池の発電効率が低下することから、金属イオン吸着フィルタ110によりメタノール水溶液中の金属イオンを吸着、除去する。また、循環タンク104内においてはメタノール水溶液の濃度が常時モニタされ、必要に応じて高濃度メタノールや水を自動的に加えることによりメタノール水溶液の濃度を一定に維持するように構成される。
【0023】
一方、電気エネルギー生成時に生成される排気ガスはラジエター109によって冷却されて水と空気に分離された後、水タンク103に導かれる。また、循環タンク104に導かれた炭酸ガスも同様に水タンク103に導かれる。そして、水タンク103に導かれた空気及び炭酸ガスは排気フィルタ111を介して外部に排出される。他方、水タンク103に導かれ、さらに水タンク103をオーバーフローした水は排気フィルタ111を介して外部に排水される。
【0024】
次に、図4を参照して、燃料電池ユニット100の各機器のレイアウトを説明する。高濃度メタノールを収容する燃料タンク102は、具体的には図示しないが、車両前部のフロントカバー5内に設けられ、燃料ポンプ105によって車両後部に供給される。
【0025】
また、車両後部のリアカバー7内に形成されたユニットスペース(格納スペース)の前側には、上下左右を区画するセパレートブラケット112が配置され、車体フレームに固定される。セパレートブラケット112で区画された4つの空間のうち、左下には循環タンク104及び金属イオン吸着フィルタ110が配置される。また、右下には燃料電池スタック101が配設される。また、右上には吸気フィルタ113、モータを含むエアコンプレッサ108、エアコンプレッサ108用のコントローラ114及び排気フィルタ(排気触媒)111が配設される。また、左上には水タンク103、水ポンプ106、循環ポンプ107及びラジエター109が配設される。
【0026】
ユニットスペースの後側の右側には、燃料電池スタック101で生成した電気エネルギーを蓄電する二次電池115が配設される。また、ユニットスペースの後側の左側には、電動モータMと燃料電池スタック101と二次電池115の相互間で電気エネルギーの流通を切替制御する燃料電池コントローラ116及びその上部にデータロガー117が配設される。図4には示さないが、二次電池115、燃料電池コントローラ116及びデータロガー117を防水カバーで覆うようにしてもよい。
【0027】
ユニットスペースの前後の中間位置には、車体フレームの一部を構成する門型に立ち上がるシートフレーム118が左右のメインフレーム3間に架設される。そして、シートフレーム118の上部の水平部分に接合されたシートポスト119によりシート6が支持される。
【0028】
リアカバー7は、左右の側面カバー18、側面カバー18の後方を塞ぐ後面カバー19、及び側面カバー18の前方を塞ぐ前面カバー20により構成される。図6は図3のA−A線の断面図である。シートクッション15は底板21の上に載置され、両側部が垂れ下がる形状を有する。左右の側面カバー18の上縁部18aは、シートクッション15の側面15bの下縁部15aよりも高く位置し、シートクッション15の側面15bと対向する。また、左右の側面カバー18の上部は、上方に向かうに従って幅狭となり、上縁部18aはシートクッション15の側面15bに僅かな隙間をもって近接する。
【0029】
図7には左右の側面カバー18と後面カバー19を組み付けた状態を、図8には左側面カバー18の内面を、図9には後面カバー19を示す。左右の側面カバー18には、上縁部18a付近から内側に垂下する垂下面22が設けられており、その垂下面22の下縁部に車幅方向内側に延出する樋部23が形成される。樋部23は、シートクッション15の側面15bの下縁部15aよりも低く配置され、少なくとも下縁部15aよりも車幅方向内側まで延出する。また、樋部23は、図8に示すように、後方から前方に向かって緩やかに下るように傾斜する。樋部23には、図6に示すように、雨水等を流す流路23aが形成されるとともに、流路23aよりも車幅方向内側は高く形成され、流路23aを流れる雨水等が溢れないようになっている。なお、垂下面22及び樋部23は側面カバー18と一体成形されてもよいし、別部品として組み付けられるようにしてもよい。
【0030】
そして、図10に示すように、樋部23の前部では、流路23aの前端に連通し、車幅方向外側に向かう排水溝24が形成されている。そして、排水溝24の端部には排水穴25が形成されている。
【0031】
また、後面カバー19にも、上縁部19a付近から内側に垂下する垂下面26が設けられており、その垂下面26の下縁部に内側(前方向)に延出する樋部27が形成される。樋部27は、樋部23と同様、雨水等を流す流路が形成されるとともに、流路よりも内側(前方向)は高く形成され、流路を流れる雨水等が溢れないようになっている。樋部27は、雨水等が左右に流れるように、中央部が最も高く、左右に向かって緩やかに下るように傾斜させるのが好適である。なお、垂下面26及び樋部27は後面カバー19と一体成形されてもよいし、別部品として組み付けられるようにしてもよい。
【0032】
このようにした側面カバー18と後面カバー19を組み付けると、左右の側面カバー18の樋部23と後面カバー19の樋部27とが連接し、図7、11に示すように、平面視において後部及び両側部で連続するコの字状の排水経路を構成する。
【0033】
以上述べた小型電動車両では、シート6の両側面及び後面までリアカバー7で覆う構成としたので、格納スペースをシート6の下面近くまで拡充することが可能となり、シート6の下方の格納スペースを有効に利用することができる。したがって、より大容量の二次電池等を搭載したり、燃料電池ユニット100の各機器を離間して配置して、熱の発散の効率性を高めたりする等が可能になる。
【0034】
また、図6に示すように、側面カバー18の上縁部18aとシートクッション15の側面15bとの間には隙間があるが、乗員が着座すると、乗員の体重によってシートクッション15が押圧されて左右に広がるように変形するので、シートクッション15の側面15bが側面カバー18の上縁部18aに当接し、防水効果を発揮する。特に上述したように左右の側面カバー18の上部を上方に向かうに従って幅狭としてシートクッション15に近づけるようにしているので、シートクッション15の側面15bと側面カバー18の上縁部18aの接触面積が小さくなり、十分な接触圧力が得られ、より高い防水効果を得ることができる。
【0035】
また、シート6の両側面や後面とリアカバー7(左右の側面カバー18、後面カバー19)との間から雨水等が浸入したときにも、雨水等は後部の樋部27及び両側部の樋部23を流れ、排水溝24を経て排水穴25から排水される(図11の矢印Wを参照)。排水穴25から排水された雨水等は、側面カバー18の内面をつたって地面に流れ落ちる。したがって、雨水等が燃料電池ユニット100にかかるのを未然に防ぐことができる。
【0036】
また、図3に示すように、シートクッション15の前端面15cは上部が前方に突出し、下部が内側に入り込むように傾斜する。そして、前面カバー20はシートクッション15の前端面15cの上部の最前部よりも後方に配置されるので、前面カバー20側からの雨水等の浸水はない。
【0037】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。例えばリアカバー7を構成する側面カバー18、後面カバー19の形状等は上記実施形態のものに限定されるものではない。また、燃料電池ユニット100を搭載したタイプを説明したが、限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
1:前輪、2:後輪、3:メインフレーム、4:足載せ部、5:フロントカバー、6:シート、7:リアカバー、8:ハンドルユニット、9:バックミラー、10:収納籠、11:駆動ユニット、12:駆動軸、13:アーム部、14:リアサスペンション、15:シートクッション、16:シートバック、17:アームレスト、18:側面カバー、19:後面カバー、20:前面カバー、21:底板、22:垂下面、23:樋部、24:排水溝、25:排水穴、26:垂下面、27:樋部
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員が着座するためのシートの下方を格納スペースとして利用する小型電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者等でも手軽に扱うことのできるセニアカー等と称される三輪或いは四輪の小型電動車両が開発されている。この種の小型電動車両では、例えば特許文献1にあるように、乗員が着座するためのシートの下方を格納スペースとして利用し、コントローラやバッテリが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−247155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に開示されている小型電動車両では、コントローラやバッテリをドーム状或いは箱状のカバーで覆うとともに、該カバーの上面にシートポストを露出させて、そのシートポストでシートを支持する構成となっている。すなわち、シートの下方でカバーが意匠的に閉じた形状となっている。この場合、シートポストの露出部分はカバーの開口部となるが、シートの真下となるので、その開口部からカバー内に雨水等が浸入するのを防ぐことができる。
【0005】
ところで、上記のようにシートの下方でカバーが意匠的に閉じている場合、シートの下面とカバーの上面との間にスペースが形成される。このスペースは、シートの下方を格納スペースとして利用するという観点からいえばデッドスペースとなってしまう。
【0006】
特にシートの下方にコントローラやバッテリだけでなく、燃料電池も格納するような場合には、シートの下方の格納スペースをできるだけ大きく確保することが求められる。その一方で、小型電動車両では乗員の乗降性や足つき性を考慮して、シートの座面を低く抑え、カバーの前方や側方への膨出を極力抑えるように設計される。そこで、例えばシートの両側面及び後面までカバーで覆う構成、換言すればカバーの上縁部をシートの両側面及び後面と対向させる構成が考えられる。これにより、シートの下面近くまでを格納スペースとして利用することが可能になる。
【0007】
しかしながら、シートの両側面及び後面までカバーで覆う構成とする場合、シートの両側面や後面とカバーの上縁部との間から浸入する雨水等への対策が必要となる。
【0008】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、雨水等への対策を図った上でシートの下方の格納スペースを有効に利用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の小型電動車両は、車体フレームと、前記車体フレームに搭載された、乗員が着座するためのシートと、前記シートの下方において側面及び後面を覆うとともに、前記シートの両側面及び後面と対向する上縁部を有するカバーとを備え、前記カバーの内側には樋部が設けられていることを特徴とする。
本発明の小型電動車両の他の特徴とするところは、前記カバーの内側に設けられた樋部のうち両側部の樋部は、後方から前方に向かって下るように傾斜する点にある。
本発明の小型電動車両の他の特徴とするところは、前記カバーの内側に設けられた樋部のうち両側部の樋部の前部には排水穴が形成されており、前記樋部を流れる水が前記排水穴から排水され、前記カバーの内面をつたって流れ落ちる点にある。
本発明の小型電動車両の他の特徴とするところは、前記シートの内側に設けられた樋部は、平面視において後部及び両側部で連続するコの字状の排水経路を構成する点にある。
本発明の小型電動車両の他の特徴とするところは、前記カバーのうち側面を構成する部分は、上部が上方に向かうに従って幅狭となる形状を有する点にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、雨水等への対策を図った上でシートの下方の格納スペースを有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る小型電動車両を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る小型電動車両を示す背面図である。
【図3】実施形態に係る小型電動車両の後部側面図である。
【図4】実施形態に係る小型電動車両のリアカバー内の構成を示す斜視図である。
【図5】実施形態に係る小型電動車両の燃料電池ユニットの構成を示す図である。
【図6】図3のA−A線の断面図である。
【図7】実施形態に係る小型電動車両の左右の側面カバーと後面カバーを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図8】実施形態に係る小型電動車両の左側面カバーの内面を示す図である。
【図9】実施形態に係る小型電動車両の後面カバーを示す斜視図である。
【図10】実施形態に係る小型電動車両の樋部における流路、排水溝及び排水穴の関係を説明するための図である。
【図11】実施形態に係る小型電動車両における排水経路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は第1の実施形態に係る小型電動車両の全体構成を示す斜視図、図2は背面図である。また、図3は小型電動車両の後部側面図、図4はリアカバー7内の構成を示す斜視図である。なお、本明細書において前方、後方、左右は、小型電動車両に乗った乗員から見た方向をいう。
【0013】
プラットフォーム型の車体フレームに、左右一対の前輪1及び左右一対の駆動輪である後輪2が支持される。図4に示すように、車体フレームに含まれる左右のメインフレーム3は、側面視において前方が略水平或いはやや前上がりに、後方が後ろ上がりとなる略V字状に折曲形成される。また、左右のメインフレーム3は、平面視において前部が前方に向かうに従って幅狭となるように形成され、後部が略平行に延伸する。左右のメインフレーム3間には適宜ブリッジ部材等が架設される。
【0014】
車体フレームは合成樹脂製の車体カバーで覆われる。車体カバーは、車両前部から、シート6の前方下部の足載せ部4の両側部を覆い、前輪1のフェンダを構成するフロントカバー5、シート6の下方を覆うリアカバー7等により構成される。
【0015】
前輪1は車体フレームの前部に不図示の前輪懸架装置及びステアリング機構によって左右に操舵可能に支持される。ステアリング機構を構成する不図示のステアリングポストは、フロントカバー5内を上方に向かって延伸し、その上部には電装部を含むハンドルユニット8が設けられる。ハンドルユニット8の適所にはバックミラー9が支持される。また、フロントカバー5の前面部には物入れとして使用される収納籠10が装架される。
【0016】
メインフレーム3の後部には後輪2に動力を伝達する駆動ユニット11が配置される。駆動ユニット11は、後輪2の駆動軸12及び駆動源である電動モータMを含み、アーム部13を介してメインフレーム3に上下方向に揺動可能に支持される。また、車体フレームと駆動ユニット11との間にリアサスペンション14が装架される(図3を参照)。
【0017】
リアカバー7の上部には乗員が着座するためのシート6が搭載される。シート6はシートクッション15及びシートバック(背もたれ)16を含み、シートバック16の両側部にはアームレスト17が設けられる。図3に示すように、車両側面視において、リアカバー7を構成する左右の側面カバー18及び後面カバー19はシートクッション15の側面15bの下部及びシートバック16の背面(シート6の後面)の下部を外側から覆うかたちとなっている。
【0018】
本実施形態に係る小型電動車両では、駆動ユニット11の電動モータMの電力供給源として燃料電池が用いられる。図5は燃料電池ユニットの構成を示す図である。燃料電池ユニット100は、メタノールに基づく水素と空気中の酸素との電気化学反応により電気エネルギーを生成可能な単電池セル(図示せず)を複数個積層して構成される燃料電池スタック101を備える。
【0019】
また、例えば54%程度の高濃度メタノールを収容する燃料タンク102と、この高濃度メタノールを燃料電池スタック101の電気化学反応に適した例えば約3%濃度に希釈してメタノール水溶液を生成するための水を収容する水タンク103と、生成されたメタノール水溶液を収容する循環タンク104とを備える。
【0020】
また、燃料タンク102内の高濃度メタノールを循環タンク104内に供給する燃料ポンプ105と、水タンク103内の水を循環タンク104内に供給する水ポンプ106と、循環タンク104内のメタノール水溶液を燃料電池スタック101に供給する循環ポンプ107とを備える。
【0021】
また、燃料電池スタック101に酸素を含む空気を供給するエアコンプレッサ108と、燃料電池スタック101内の電気化学反応による電気エネルギー生成時に副産物として生成される高温の水蒸気を含んだ排気ガスを冷却するラジエター109と、気液分離された排ガス中の水分が最終的に貯留される第二水タンクとを備える。
【0022】
燃料電池ユニット100は、メタノール水溶液と空気とを燃料電池スタック101内において電気化学反応させることにより電気エネルギーを生成させる。また、この電気化学反応時に生成される炭酸ガス及び使用されなかった一部のメタノール水溶液は循環タンク104に導かれる。燃料電池スタック101から循環タンク104への戻り流路上には金属イオン吸着フィルタ110が配設される。メタノール水溶液中に金属イオンが存在すると燃料電池の発電効率が低下することから、金属イオン吸着フィルタ110によりメタノール水溶液中の金属イオンを吸着、除去する。また、循環タンク104内においてはメタノール水溶液の濃度が常時モニタされ、必要に応じて高濃度メタノールや水を自動的に加えることによりメタノール水溶液の濃度を一定に維持するように構成される。
【0023】
一方、電気エネルギー生成時に生成される排気ガスはラジエター109によって冷却されて水と空気に分離された後、水タンク103に導かれる。また、循環タンク104に導かれた炭酸ガスも同様に水タンク103に導かれる。そして、水タンク103に導かれた空気及び炭酸ガスは排気フィルタ111を介して外部に排出される。他方、水タンク103に導かれ、さらに水タンク103をオーバーフローした水は排気フィルタ111を介して外部に排水される。
【0024】
次に、図4を参照して、燃料電池ユニット100の各機器のレイアウトを説明する。高濃度メタノールを収容する燃料タンク102は、具体的には図示しないが、車両前部のフロントカバー5内に設けられ、燃料ポンプ105によって車両後部に供給される。
【0025】
また、車両後部のリアカバー7内に形成されたユニットスペース(格納スペース)の前側には、上下左右を区画するセパレートブラケット112が配置され、車体フレームに固定される。セパレートブラケット112で区画された4つの空間のうち、左下には循環タンク104及び金属イオン吸着フィルタ110が配置される。また、右下には燃料電池スタック101が配設される。また、右上には吸気フィルタ113、モータを含むエアコンプレッサ108、エアコンプレッサ108用のコントローラ114及び排気フィルタ(排気触媒)111が配設される。また、左上には水タンク103、水ポンプ106、循環ポンプ107及びラジエター109が配設される。
【0026】
ユニットスペースの後側の右側には、燃料電池スタック101で生成した電気エネルギーを蓄電する二次電池115が配設される。また、ユニットスペースの後側の左側には、電動モータMと燃料電池スタック101と二次電池115の相互間で電気エネルギーの流通を切替制御する燃料電池コントローラ116及びその上部にデータロガー117が配設される。図4には示さないが、二次電池115、燃料電池コントローラ116及びデータロガー117を防水カバーで覆うようにしてもよい。
【0027】
ユニットスペースの前後の中間位置には、車体フレームの一部を構成する門型に立ち上がるシートフレーム118が左右のメインフレーム3間に架設される。そして、シートフレーム118の上部の水平部分に接合されたシートポスト119によりシート6が支持される。
【0028】
リアカバー7は、左右の側面カバー18、側面カバー18の後方を塞ぐ後面カバー19、及び側面カバー18の前方を塞ぐ前面カバー20により構成される。図6は図3のA−A線の断面図である。シートクッション15は底板21の上に載置され、両側部が垂れ下がる形状を有する。左右の側面カバー18の上縁部18aは、シートクッション15の側面15bの下縁部15aよりも高く位置し、シートクッション15の側面15bと対向する。また、左右の側面カバー18の上部は、上方に向かうに従って幅狭となり、上縁部18aはシートクッション15の側面15bに僅かな隙間をもって近接する。
【0029】
図7には左右の側面カバー18と後面カバー19を組み付けた状態を、図8には左側面カバー18の内面を、図9には後面カバー19を示す。左右の側面カバー18には、上縁部18a付近から内側に垂下する垂下面22が設けられており、その垂下面22の下縁部に車幅方向内側に延出する樋部23が形成される。樋部23は、シートクッション15の側面15bの下縁部15aよりも低く配置され、少なくとも下縁部15aよりも車幅方向内側まで延出する。また、樋部23は、図8に示すように、後方から前方に向かって緩やかに下るように傾斜する。樋部23には、図6に示すように、雨水等を流す流路23aが形成されるとともに、流路23aよりも車幅方向内側は高く形成され、流路23aを流れる雨水等が溢れないようになっている。なお、垂下面22及び樋部23は側面カバー18と一体成形されてもよいし、別部品として組み付けられるようにしてもよい。
【0030】
そして、図10に示すように、樋部23の前部では、流路23aの前端に連通し、車幅方向外側に向かう排水溝24が形成されている。そして、排水溝24の端部には排水穴25が形成されている。
【0031】
また、後面カバー19にも、上縁部19a付近から内側に垂下する垂下面26が設けられており、その垂下面26の下縁部に内側(前方向)に延出する樋部27が形成される。樋部27は、樋部23と同様、雨水等を流す流路が形成されるとともに、流路よりも内側(前方向)は高く形成され、流路を流れる雨水等が溢れないようになっている。樋部27は、雨水等が左右に流れるように、中央部が最も高く、左右に向かって緩やかに下るように傾斜させるのが好適である。なお、垂下面26及び樋部27は後面カバー19と一体成形されてもよいし、別部品として組み付けられるようにしてもよい。
【0032】
このようにした側面カバー18と後面カバー19を組み付けると、左右の側面カバー18の樋部23と後面カバー19の樋部27とが連接し、図7、11に示すように、平面視において後部及び両側部で連続するコの字状の排水経路を構成する。
【0033】
以上述べた小型電動車両では、シート6の両側面及び後面までリアカバー7で覆う構成としたので、格納スペースをシート6の下面近くまで拡充することが可能となり、シート6の下方の格納スペースを有効に利用することができる。したがって、より大容量の二次電池等を搭載したり、燃料電池ユニット100の各機器を離間して配置して、熱の発散の効率性を高めたりする等が可能になる。
【0034】
また、図6に示すように、側面カバー18の上縁部18aとシートクッション15の側面15bとの間には隙間があるが、乗員が着座すると、乗員の体重によってシートクッション15が押圧されて左右に広がるように変形するので、シートクッション15の側面15bが側面カバー18の上縁部18aに当接し、防水効果を発揮する。特に上述したように左右の側面カバー18の上部を上方に向かうに従って幅狭としてシートクッション15に近づけるようにしているので、シートクッション15の側面15bと側面カバー18の上縁部18aの接触面積が小さくなり、十分な接触圧力が得られ、より高い防水効果を得ることができる。
【0035】
また、シート6の両側面や後面とリアカバー7(左右の側面カバー18、後面カバー19)との間から雨水等が浸入したときにも、雨水等は後部の樋部27及び両側部の樋部23を流れ、排水溝24を経て排水穴25から排水される(図11の矢印Wを参照)。排水穴25から排水された雨水等は、側面カバー18の内面をつたって地面に流れ落ちる。したがって、雨水等が燃料電池ユニット100にかかるのを未然に防ぐことができる。
【0036】
また、図3に示すように、シートクッション15の前端面15cは上部が前方に突出し、下部が内側に入り込むように傾斜する。そして、前面カバー20はシートクッション15の前端面15cの上部の最前部よりも後方に配置されるので、前面カバー20側からの雨水等の浸水はない。
【0037】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。例えばリアカバー7を構成する側面カバー18、後面カバー19の形状等は上記実施形態のものに限定されるものではない。また、燃料電池ユニット100を搭載したタイプを説明したが、限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
1:前輪、2:後輪、3:メインフレーム、4:足載せ部、5:フロントカバー、6:シート、7:リアカバー、8:ハンドルユニット、9:バックミラー、10:収納籠、11:駆動ユニット、12:駆動軸、13:アーム部、14:リアサスペンション、15:シートクッション、16:シートバック、17:アームレスト、18:側面カバー、19:後面カバー、20:前面カバー、21:底板、22:垂下面、23:樋部、24:排水溝、25:排水穴、26:垂下面、27:樋部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載された、乗員が着座するためのシートと、
前記シートの下方において側面及び後面を覆うとともに、前記シートの両側面及び後面と対向する上縁部を有するカバーとを備え、
前記カバーの内側には樋部が設けられていることを特徴とする小型電動車両。
【請求項2】
前記カバーの内側に設けられた樋部のうち両側部の樋部は、後方から前方に向かって下るように傾斜することを特徴とする請求項1に記載の小型電動車両。
【請求項3】
前記カバーの内側に設けられた樋部のうち両側部の樋部の前部には排水穴が形成されており、前記樋部を流れる水が前記排水穴から排水され、前記カバーの内面をつたって流れ落ちることを特徴とする請求項1又は2に記載の小型電動車両。
【請求項4】
前記シートの内側に設けられた樋部は、平面視において後部及び両側部で連続するコの字状の排水経路を構成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の小型電動車両。
【請求項5】
前記カバーのうち側面を構成する部分は、上部が上方に向かうに従って幅狭となる形状を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の小型電動車両。
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載された、乗員が着座するためのシートと、
前記シートの下方において側面及び後面を覆うとともに、前記シートの両側面及び後面と対向する上縁部を有するカバーとを備え、
前記カバーの内側には樋部が設けられていることを特徴とする小型電動車両。
【請求項2】
前記カバーの内側に設けられた樋部のうち両側部の樋部は、後方から前方に向かって下るように傾斜することを特徴とする請求項1に記載の小型電動車両。
【請求項3】
前記カバーの内側に設けられた樋部のうち両側部の樋部の前部には排水穴が形成されており、前記樋部を流れる水が前記排水穴から排水され、前記カバーの内面をつたって流れ落ちることを特徴とする請求項1又は2に記載の小型電動車両。
【請求項4】
前記シートの内側に設けられた樋部は、平面視において後部及び両側部で連続するコの字状の排水経路を構成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の小型電動車両。
【請求項5】
前記カバーのうち側面を構成する部分は、上部が上方に向かうに従って幅狭となる形状を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の小型電動車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−110383(P2011−110383A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272477(P2009−272477)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]