小型電池
【課題】生産性を損なうことなく、重負荷特性を改善することが可能な小型電池を提供する。
【解決手段】容器と、前記容器内に収納され、正極1及び負極2を含む積層物が渦巻き状に捲回された扁平型電極群とを具備する小型電池であって、前記扁平型電極群は、前記正極1及び前記負極2のうち少なくとも一方の電極を捲回軸芯7に固定した状態で前記積層物を渦巻き状に捲回することにより前記捲回軸芯7と一体となっていることを特徴とする小型電池。
【解決手段】容器と、前記容器内に収納され、正極1及び負極2を含む積層物が渦巻き状に捲回された扁平型電極群とを具備する小型電池であって、前記扁平型電極群は、前記正極1及び前記負極2のうち少なくとも一方の電極を捲回軸芯7に固定した状態で前記積層物を渦巻き状に捲回することにより前記捲回軸芯7と一体となっていることを特徴とする小型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は捲回電極群を備えた小型電池(例えば、ボタン型電池、コイン型電池)に関する。
【背景技術】
【0002】
小型ビデオカメラ、携帯電話、PDA、ノートパソコン等の携帯用電子・通信機器の普及はめざましく、これらの電源としてリチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電池等の二次電池が実用化され、小型軽量化、高容量化へ向けた開発が盛んに行われてきた。
【0003】
携帯用機器のさらなる小型化の流れに加え、腕時計といった小型化が必須とされる機器の電源として二次電池が要求され、放電電流が数〜数十μA程度の軽負荷で放電が行われるSRAMやRTCのバックアップ用電源、電池交換不要腕時計の主電源といった用途に、ボタン形、コイン形等の小型二次電池が実用化されてきている。
【0004】
これらボタン形、コイン形等の小型二次電池の構造は、図10に示すものが一般的である。すなわち、密閉容器として、正極端子を兼ねる正極ケース21に負極端子を兼ねる金属製の負極ケース22が絶縁ガスケット23を介してかしめ加工されたものが使用される。この密閉容器の内部に、絶縁ガスケット23の開口径より直径が小さいタブレット状の正極24及び負極25がそれぞれ1枚ずつ収納されている。正極24と負極25の間には、電解液を含浸させたセパレータ26が介在されている。
【0005】
このようなボタン形、コイン形などの小型二次電池は構造が簡単であることから、量産性に優れ、小型化が可能という特徴を持っている。
【0006】
しかしながら、上記に示した構造のボタン形、コイン形等の小型二次電池は小型携帯機器の主電源として要求される大電流にて放電した場合の特性が不十分であり、小型携帯機器の主電源としては適していない。
【0007】
一方、小型ビデオカメラ、携帯電話、PDA、ノートパソコン等の携帯端末の小型化により、主電源として使用されてきたリチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電池等についても小型化が必須となっている(例えば特許文献1,2)。リチウムイオン二次電池やニッケル水素蓄電池の製造方法を簡単に説明する。まず、金属箔または金属ネットからなる集電体に活物質層を塗布または充填し、電極を形成する。形成した電極に集電用タブ端子を溶接後、これら電極を捲回または積層することにより電極群を作製する。さらに電極群から取り出した集電用タブ端子に複雑に曲げ加工を行い、安全素子や電極ピンや電極缶などに溶接し、電池を製作していた。これらの二次電池の製造はこの様に複雑な製造工程を要し、作業が複雑である。また、タブ端子のショート防止のために電池内に空間や部品を設けたり、安全素子など多数の部品を電池内に組み込む必要がある。よって、これら二次電池では、小型化が非常に困難で現状でほぼ限界に達していた。
【特許文献1】特開平11−345626号公報
【特許文献2】特開平11−354150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ボタン形やコイン形などの小型電池の重負荷特性を、生産性を損なうことなく改善させることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る小型電池は、容器と、前記容器内に収納され、正極及び負極を含む積層物が渦巻き状に捲回された扁平型電極群とを具備する小型電池であって、
前記扁平型電極群は、前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方の電極を捲回軸芯に固定した状態で前記積層物を渦巻き状に捲回することにより前記捲回軸芯と一体となっていることを特徴とする。
【0010】
ここで、扁平型電極群とは、電極群の捲回軸方向の高さが捲回軸に垂直な方向の大きさよりも小さい構造を有する電極群を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生産性を損なうことなく、重負荷特性を改善することが可能な小型電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは小型電池の重負荷特性の向上に関して研究を重ねた結果、ボタン形、コイン形などの小型電池のケース内に捲回型電極群を安全かつ生産性よく収納する方法を見出した。これにより、従来の小型電池に比較して重負荷特性が飛躍的に向上した。
【0013】
すなわち、負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと、正極端子を兼ねる金属製の正極ケースが、絶縁ガスケットを介して嵌合され、さらに前記正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有する容器を使用し、その容器内に、正極及び負極を含む積層物を渦巻き状に捲回した電極群を収納することにより、重負荷特性に優れた小型電池を提供することができることを見出した。
【0014】
小型携帯機器の主電源として使用されているリチウムイオン二次電池やニッケル水素蓄電池では、セパレータを介して薄い正極と負極を捲回することで、負極と正極の対向電極面積を大きくすることが可能となり、大電流を取り出すことができる。しかし、前述したようにその製造工程は複雑であり、安全性を確保するなどのために電池内の部品数が非常に多い。このため、ボタン形やコイン形などの小型電池内にその電極群構造を収納することは不可能と考えられてきた。
【0015】
そこで、本発明者らは従来技術からの発想の転換を図り、少なくとも捲回軸芯、必要に応じて絶縁板、電極と外部端子との接続端子を電極群の構造に取り込むことで、安全で生産性に優れているという利点を維持したまま、ボタン形、コイン形などの小型電池のケース内に正極、負極およびセパレータを数層〜数十層捲回した電極群を効率よく収納することを可能とした。
【0016】
以下、本発明者らが本発明をいかにして実現したかを説明する。
【0017】
まず、正極および負極をセパレータを介して渦巻き状に捲回する場合に、捲回軸芯を負極及び/または正極と一体化したまま電極群内に取り入れることで、ボタン形やコイン形などの小型電池のケース内に収納可能な捲回電極群を製作することができた。この捲回軸芯またはその一部の基部はポリエチレンやポリプロピレン樹脂、ガラス、セラミックなどの絶縁性材料から形成されることが望ましい。
【0018】
次に、電極群と外部端子を兼ねる金属ケースとの接続について説明する。円筒形や角形などの比較的大きなリチウムイオン二次電池では、電極群の中心部や捲回部材部にタブ端子を溶接し、それに曲げ加工を施した後、安全素子や封口ピンに溶接し、集電を行なっている。しかしながら、曲げ工程が複雑なため生産性に劣っている。そこで、電極群に内在させる捲回軸芯に、電極と外部端子を兼ねる金属ケースとの接続を目的に端子を設置することで構造を単純にすることができた。この端子に電極を接続する方法は圧着、抵抗溶接や超音波溶接などの溶接、導電性接着剤などによる接着などがあるが特に限定するものではない。さらに、この端子と外部端子を兼ねる金属ケースとの接続方法としては抵抗溶接や超音波溶接などの溶接、導電性接着剤などによる接着、端子と電池ケースの接触などがあるが特に限定するものではない。しかし、接触による集電の場合は金属ネット、金属粉末、炭素フィラ−、導電性塗料などを使用して集電性を向上させることが望ましい。
【0019】
次に、電極群と電池ケースの間にはショートを防止することを目的に絶縁部材を設置することが望ましい。絶縁部材としては絶縁性が保持されれば特に限定はしないが、ポリエチレンやポリプロピレン樹脂製の絶縁板、PETやポリイミド製のフィルムなどが使用できる。絶縁部材は、正極ケースと電極群との間か、負極ケースと電極群との間か、あるいは両方に配置することができる。
【0020】
また、この絶縁部材を捲回軸芯に一体化してもよい。絶縁部材と捲回軸芯を一体化することにより電極群としては構造上の安定性が向上するため、絶縁部材と捲回軸芯は一体化することが望ましい。
【0021】
次に、電極については正負極とも従来の顆粒合剤の成形方式や金属ネットや発泡ニッケルなどの金属基板に合剤を充填する方法を用いてもよいが、肉薄電極の作製が行ない易いと言う点で金属箔にスラリー状の合剤を塗布、乾燥したものがよく、さらにそれを圧延したものも用いることもできる。上記の様な金属箔に作用物質を含む合剤層を塗工した電極を用いる場合は、電極群の内部に用いる電極は金属箔の両面に作用物質層を形成したものを用いるのが、容積効率の上から好ましい。電極群の片側の端子に接続する部分については接続を容易にするために電極構成材の内、特に金属箔を露出させるのが好ましい。これに関してはこの部分に限り片面にのみ作用物質層を形成した電極を用いてもよいし、一旦、両面に作用物質層を形成した後、片面のみ作用物質層を除去してもよい。
【0022】
次に、本電池は電極を含めた電池の構造に主点を置いたものであり、正極作用物質については限定されるものではなく、MnO2、V2O5、Nb2O5、LiTi2O4、Li4Ti5O12、LiFe2O4、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、コバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムなどの金属酸化物、あるいはフッ化黒鉛、FeS2などの無機化合物、あるいはポリアニリンやポリアセン構造体などの有機化合物などあらゆる物が適用可能である。ただし、この中で作動電位が高く、サイクル特性に優れるという点でコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムやそれらの混合物やそれらの元素の一部を他の金属元素で置換したリチウム含有酸化物がより好ましく、長期間に渡り使用されることもある小型二次電池においては高容量で電解液や水分との反応性が低く化学的に安定であるという点でコバルト酸リチウムがさらに好ましい。
【0023】
次に、本電池の負極作用物質については限定されるものではなく、金属リチウム、あるいはLi−Al、Li−In、Li−Sn、Li−Si、Li−Ge、Li−Bi、Li−Pbなどのリチウム合金、あるいはポリアセン構造体などの有機化合物、あるいはリチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料、あるいはNb2O5、LiTi2O4、Li4Ti5O12やLi含有珪素酸化物の様な酸化物、Li含有窒化物などあらゆるものが適用可能である。サイクル特性に優れ、作動電位が低く、高容量であるという点でLiを吸蔵・放出可能な炭素質材料が好ましく、特に放電末期においても電池作動電圧の低下が少ないと言う点で天然黒鉛や人造黒鉛、膨張黒鉛、メソフェーズピッチ焼成体、メソフェーズピッチ繊維焼成体などの黒鉛構造が発達した炭素質材料がより好ましい。
【0024】
[実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
(実施例1)
実施例1の電池の断面図を図1に示す。以下、実施例1の電池の製造方法を説明する。
【0026】
まず、LiCoO2 100重量部に対し、導電剤としてアセチレンブラック5重量部と黒鉛粉末5重量部を加え、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを5重量部加え、N−メチルピロリドンで希釈、混合し、スラリー状の正極合剤を得た。次に、この正極合剤を、正極集電体である厚さ0.02mmのアルミニウム箔の片面にドクターブレード法により塗工、乾燥を行い、アルミニウム箔表面に正極作用物質含有層を形成した。以後、正極作用物質含有層の塗膜厚さが両面で0.13mmとなるまで塗工、乾燥を繰り返し、図2に示すように、正極集電体1aの両面に正極作用物質含有層1bが積層された正極1を作製した。次に、この正極1の両面の端から2mm部分の正極作用物質含有層を除去し、アルミ層を剥き出しにして通電部1cとし、幅3.3mm、長さ150mm、厚さ0.13mmの長さに切り出した正極板を得た。
【0027】
次に、黒鉛化メソフェーズピッチ炭素繊維粉末100重量部に結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ2.5重量部を添加し、イオン交換水で希釈、混合し、スラリー状の負極合剤を得た。得られた負極合剤を負極集電体である厚さ0.02mmの銅箔に負極作用物質含有層の厚さが0.12mmとなるように正極の場合と同様に塗工、乾燥を繰り返し実施し、図3に示すように、負極集電体2aの両面に負極作用物質含有層2bが積層された負極2を作製した。次に、この負極2の両面の端から2mm部分の負極作用物質含有層を除去し、銅層を剥き出しにして通電部2cとし、幅3.3mm、長さ150mm、厚さ0.12mmの長さに切り出した負極板を作製した。
【0028】
次に、図4及び図5に示す構造の正負極端子を用意した。図4の(a)は、正極端子をスリット側から見た側面図で、図4の(b)は正極端子の平面図である。正極端子4は、円板状の正極端子板4a(正極端子部)と、正極端子板4aに電気的に接続された棒状の端子接続部4b(正極リード部)と、端子接続部4bに形成されたスリット4cとを有する。この正極端子4は、例えば、アルミニウムから形成される。一方、図5の(a)は、負極端子の平面図で、図5の(b)は負極端子をスリット側から見た側面図である。負極端子5は、円板状の負極端子板5a(負極端子部)と、負極端子板5aに電気的に接続された棒状の端子接続部5b(負極リード部)と、端子接続部5bに形成されたスリット5cとを有する。この負極端子5は、例えば、ステンレスから形成されている。
【0029】
図6に示すように、正極1の通電部1cを正極端子4の端子接続部4bのスリット4cに挿入した後、端子接続部4bに外側から圧力をかけ、端子接続部4bに通電部1cを圧着させた。また、負極2の通電部2cを負極端子5の端子接続部5bのスリット5cに挿入した後、端子接続部5bに外側から圧力をかけ、端子接続部5bに通電部2cを圧着させた。
【0030】
次に、電極を接続した端子を図7に示す捲回部材と一体化した。図7の(a)は、捲回部材6を上方から見た平面図で、(b)は捲回部材6の側面図で、(c)は捲回部材6を下方から見た平面図である。捲回部材6は、図7に示すように、捲回軸芯7と、捲回軸芯7の上端及び下端に一体化された絶縁板8,9(第1,第2の絶縁部材)とを備える。捲回軸芯7は、図7の(a)に示すように、負極端子5の端子接続部5bが嵌め合わされる切欠部7aを有する。また、捲回軸芯7には、図7の(c)に示すように、正極端子4の端子接続部4bが嵌め合わされる切欠部7bが、切欠部7aの反対側の位置に設けられている。第1の絶縁部材としての絶縁板9には、図7の(b),(c)に示すように、正極端子板4aが収納される円形の溝部9aが形成されている。また、絶縁板9には、捲回軸芯7の切欠部7bと連通するようにスリット9bも形成されている。一方、第2の絶縁部材としての絶縁板8には、図7の(a),(b)に示すように、負極端子板5aが収納される円形の溝部8aが形成されている。また、絶縁板8には、捲回軸芯7の切欠部7aと連通するようにスリット8bも形成されている。
【0031】
次いで、この捲回部材6と正負極端子4,5とを一体化させる。すなわち、図8に示すように、正極端子4の端子接続部4bを捲回軸芯7の切欠部7b内に挿入すると共に、正極端子板4aを絶縁板9の溝部9a内に配置した。また、負極端子5の端子接続部5bを捲回軸芯7の切欠部7a内に挿入すると共に、負極端子板5aを絶縁板8の溝部8a内に配置した。捲回軸芯7の切欠部7a,7b内に端子接続部4b,5bが挿入された結果、捲回軸芯7の形状が円柱形状となった。
【0032】
幅3.5m、厚さ22μmのポリエチレン微多孔膜からなるセパレータ3を捲回軸芯7と正極1の間、捲回軸芯7と負極2の間それぞれに1枚ずつはさんで固定し、正極1と負極2をこのセパレータ3を介して渦巻状に捲回し、電極群の捲回軸方向の高さが捲回軸に垂直な方向の大きさよりも小さい扁平型電極群を製作した。電極群の断面図を図9に示す。図9に示す通り、正極1と負極2をセパレータ3を介在させて渦巻き状に捲回した捲回電極群の中心部には、正極端子4の端子接続部4b(正極リード部)と負極端子5の端子接続部5b(負極リード部)が一体化された捲回軸芯7が位置する。捲回電極群の上面には、第2の絶縁部材としての絶縁板8が配置されている。端子接続部5bに一体化されている負極端子板5a(負極端子部)は、絶縁板8上に配置されている。また、捲回電極群の下面には、第1の絶縁部材としての絶縁板9が配置されている。端子接続部4bに一体化されている正極端子板4a(正極端子部)は、絶縁板9に積層されている。
【0033】
有底円筒形状で、開口端が外側に折り返されたリバース部10を有する金属製容器11(例えば、SUS304などのステンレスから形成される)を、負極端子を兼ねる負極ケースとして用意した。この負極ケース11のリバース部10にリング状の絶縁ガスケット12を嵌合した。この負極ケース11内に電極群をその負極端子板5aが負極ケース11の内面と接するように挿入し、負極端子板5aと負極ケース11を抵抗溶接した。
【0034】
有底円筒形状をしたアルミニウム製容器13を、正極端子を兼ねる正極ケースとして用意した。この正極ケース13内に電極群をその正極端子板4aが正極ケース13の内面と接するように挿入し、正極端子板4aと正極ケース13を抵抗溶接した。
【0035】
この電極群と負極ケースおよび正極ケースを溶接したものを85℃で12時間乾燥した後、エチレンカーボネイトとγ−ブチルラクトンを体積比1:2の割合で混合した溶媒に支持塩としてLiBF4を1.5mol/Lの割合で溶解した非水電解液を注液した。負極ケース11に正極ケース13を嵌合した後、上下を反転させ、正極ケース13に加絞め加工を実施することによって封口し、厚さ5.3mm、直径φ12mmの実施例1のボタン形小型二次電池を製作した。
【0036】
(実施例2)
電極群の製作までは実施例1と同様で、電極群の負極端子と負極ケースの溶接と正極端子と正極ケースの溶接を実施しないで、負極ケースと正極ケースの内面で電極群が接触する部分に黒鉛微粒子を分散させた導電性塗料を塗布した。
【0037】
作製した電極群を85℃で12h乾燥した後、絶縁ガスケットを一体化した負極ケースの導電性塗料が塗布してある内底面に電極群の負極端子板が接するように電極群を配置した。エチレンカーボネイトとγ−ブチルラクトンを体積比1:2の割合で混合した溶媒に支持塩としてLiBF4を1.5mol/Lの割合で溶解せしめた非水電解質を注液し、さらに電極群の正極端子板に接するように内底面に導電性塗料が塗布してある正極ケースを嵌合し、上下反転後、正極ケースに加締め加工を実施することにより封口し、厚さ5.3mm、直径φ12mmの実施例2のボタン形小型二次電池を製作した。
【0038】
(比較例)
LiCoO2100重量部に対し導電剤としてアセチレンブラック5重量部と黒鉛粉末5重量部を加え、結着剤として4フッ化エチレンを5重量部加え、混合後、粉砕し、顆粒状の正極合剤を得た。次にこの正極顆粒合剤を、直径8mm、厚さ2.1mmに加圧成形を行ない、正極タブレットとした。
【0039】
次に、黒鉛化メソフェーズピッチ炭素繊維粉末100重量部に結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ2.5重量部添加、混合、乾燥後、さらに粉砕し顆粒状の負極合剤を得た。得られた負極顆粒合剤を、直径8mm、厚さ2.1mmに加圧成形を行ない、負極タブレットとした。
【0040】
次に、これらの正負極タブレットを85℃で12h乾燥した後、絶縁ガスケットを一体化した負極ケースに負極タブレット、ポリプロピレンからなる厚さ0.2mmのポリプロピレン不織布、正極タブレットの順に配置した。エチレンカーボネイトとγ−ブチルラクトンを体積比1:2の割合で混合した溶媒に支持塩としてLiBF4を1.5mol/Lの割合で溶解せしめた非水電解質を注液し、さらに正極ケースを嵌合し、上下反転後、正極ケースに加締め加工を実施し、厚さ5.3mm、直径φ12mmの比較例のボタン形小型二次電池を製作した。
【0041】
以上の通り作製した実施例及び比較例の電池について、4.2V、1mAの定電流定電圧で48h初充電を実施した。その後、250μAの定電流で3.0Vまで放電を実施し放電容量を求めた。結果を表1に放電容量1として示す。同様に15mAの定電流で放電を実施したものを放電容量2とする。
【表1】
【0042】
表1より明らかであるが、実施例1,2の電池は、従来の顆粒合剤成形法により作製したタブレット状の電極を用いた比較例の電池に比べ、250μAの軽負荷の場合には同等の容量が得られるが、15mA重負荷放電時の放電においては著しく容量が大きい。また、電極群と外部端子である正負極ケースとの集電方法の違いにおいては、実施例2の接触による集電でも実施例1の溶接による集電でも放電容量には遜色がないことが確認された。
【0043】
なお、本発明の実施例は、非水電解質に非水溶媒を用いた非水溶媒二次電池を用いて説明したが、ポリマー電解質を用いたポリマー二次電池や固体電解質を用いた固体電解質二次電池についても当然、適用可能であり、樹脂製セパレータの変わりにポリマー薄膜や固体電解質膜を用いることも可能である。また、電池形状については正極ケースの加締め加工により封口するボタン形小型二次電池をもとに説明したが、正負極電極を入れ替え、負極ケースの加締め加工により封口することも可能である。さらに、電池形状についてもボタン形である必要はなくコイン形の小型二次電池においても適用可能である。また、円筒形および角形の二次電池においても適用することも可能である。さらに、一次電池に対して本発明を適用しても同等の効果を得ることが可能である。
【0044】
以上説明したとおり、本発明によればボタン形やコイン形電池の持つ電池サイズが小さく、かつ、生産性に優れるという利点を維持したまま、重負荷放電時の放電容量が従来の電池に対し格段に大きな優れた小型電池を提供することができる。よって、その工業的価値は非常に大きなものである。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係るコイン型非水電解質二次電池を模式的に示した断面図。
【図2】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される正極を模式的に示した斜視図。
【図3】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される負極を模式的に示した斜視図。
【図4】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される正極端子を示す側面図と平面図。
【図5】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される負極端子を示す側面図と平面図。
【図6】電極と端子とを一体化させる工程を説明するための模式図。
【図7】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される捲回部材を示す側面図と平面図。
【図8】電極が一体化された端子を図7の捲回部材に挿入する工程を説明するための模式図。
【図9】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される電極群を模式的に示した断面図。
【図10】従来のコイン型電池を示す断面図。
【符号の説明】
【0047】
1…正極、1a…正極集電体、1b…正極作用物質含有層、1c…通電部、2…負極、2a…負極集電体、2b…負極作用物質含有層、2c…通電部、3,26…セパレータ、4…正極端子、4a…正極端子板、4b…端子接続部、4c…スリット、5…負極端子、5a…負極端子板、5b…端子接続部、5c…スリット、6…捲回部材、7…捲回軸芯、7a,7b…切欠部、8,9…絶縁板、8a,9a…溝部、10…リバース部、11,22…負極ケース、12,23…絶縁ガスケット、13,21…正極ケース、24…正極タブレット、25…負極タブレット。
【技術分野】
【0001】
本発明は捲回電極群を備えた小型電池(例えば、ボタン型電池、コイン型電池)に関する。
【背景技術】
【0002】
小型ビデオカメラ、携帯電話、PDA、ノートパソコン等の携帯用電子・通信機器の普及はめざましく、これらの電源としてリチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電池等の二次電池が実用化され、小型軽量化、高容量化へ向けた開発が盛んに行われてきた。
【0003】
携帯用機器のさらなる小型化の流れに加え、腕時計といった小型化が必須とされる機器の電源として二次電池が要求され、放電電流が数〜数十μA程度の軽負荷で放電が行われるSRAMやRTCのバックアップ用電源、電池交換不要腕時計の主電源といった用途に、ボタン形、コイン形等の小型二次電池が実用化されてきている。
【0004】
これらボタン形、コイン形等の小型二次電池の構造は、図10に示すものが一般的である。すなわち、密閉容器として、正極端子を兼ねる正極ケース21に負極端子を兼ねる金属製の負極ケース22が絶縁ガスケット23を介してかしめ加工されたものが使用される。この密閉容器の内部に、絶縁ガスケット23の開口径より直径が小さいタブレット状の正極24及び負極25がそれぞれ1枚ずつ収納されている。正極24と負極25の間には、電解液を含浸させたセパレータ26が介在されている。
【0005】
このようなボタン形、コイン形などの小型二次電池は構造が簡単であることから、量産性に優れ、小型化が可能という特徴を持っている。
【0006】
しかしながら、上記に示した構造のボタン形、コイン形等の小型二次電池は小型携帯機器の主電源として要求される大電流にて放電した場合の特性が不十分であり、小型携帯機器の主電源としては適していない。
【0007】
一方、小型ビデオカメラ、携帯電話、PDA、ノートパソコン等の携帯端末の小型化により、主電源として使用されてきたリチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電池等についても小型化が必須となっている(例えば特許文献1,2)。リチウムイオン二次電池やニッケル水素蓄電池の製造方法を簡単に説明する。まず、金属箔または金属ネットからなる集電体に活物質層を塗布または充填し、電極を形成する。形成した電極に集電用タブ端子を溶接後、これら電極を捲回または積層することにより電極群を作製する。さらに電極群から取り出した集電用タブ端子に複雑に曲げ加工を行い、安全素子や電極ピンや電極缶などに溶接し、電池を製作していた。これらの二次電池の製造はこの様に複雑な製造工程を要し、作業が複雑である。また、タブ端子のショート防止のために電池内に空間や部品を設けたり、安全素子など多数の部品を電池内に組み込む必要がある。よって、これら二次電池では、小型化が非常に困難で現状でほぼ限界に達していた。
【特許文献1】特開平11−345626号公報
【特許文献2】特開平11−354150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ボタン形やコイン形などの小型電池の重負荷特性を、生産性を損なうことなく改善させることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る小型電池は、容器と、前記容器内に収納され、正極及び負極を含む積層物が渦巻き状に捲回された扁平型電極群とを具備する小型電池であって、
前記扁平型電極群は、前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方の電極を捲回軸芯に固定した状態で前記積層物を渦巻き状に捲回することにより前記捲回軸芯と一体となっていることを特徴とする。
【0010】
ここで、扁平型電極群とは、電極群の捲回軸方向の高さが捲回軸に垂直な方向の大きさよりも小さい構造を有する電極群を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生産性を損なうことなく、重負荷特性を改善することが可能な小型電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは小型電池の重負荷特性の向上に関して研究を重ねた結果、ボタン形、コイン形などの小型電池のケース内に捲回型電極群を安全かつ生産性よく収納する方法を見出した。これにより、従来の小型電池に比較して重負荷特性が飛躍的に向上した。
【0013】
すなわち、負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと、正極端子を兼ねる金属製の正極ケースが、絶縁ガスケットを介して嵌合され、さらに前記正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有する容器を使用し、その容器内に、正極及び負極を含む積層物を渦巻き状に捲回した電極群を収納することにより、重負荷特性に優れた小型電池を提供することができることを見出した。
【0014】
小型携帯機器の主電源として使用されているリチウムイオン二次電池やニッケル水素蓄電池では、セパレータを介して薄い正極と負極を捲回することで、負極と正極の対向電極面積を大きくすることが可能となり、大電流を取り出すことができる。しかし、前述したようにその製造工程は複雑であり、安全性を確保するなどのために電池内の部品数が非常に多い。このため、ボタン形やコイン形などの小型電池内にその電極群構造を収納することは不可能と考えられてきた。
【0015】
そこで、本発明者らは従来技術からの発想の転換を図り、少なくとも捲回軸芯、必要に応じて絶縁板、電極と外部端子との接続端子を電極群の構造に取り込むことで、安全で生産性に優れているという利点を維持したまま、ボタン形、コイン形などの小型電池のケース内に正極、負極およびセパレータを数層〜数十層捲回した電極群を効率よく収納することを可能とした。
【0016】
以下、本発明者らが本発明をいかにして実現したかを説明する。
【0017】
まず、正極および負極をセパレータを介して渦巻き状に捲回する場合に、捲回軸芯を負極及び/または正極と一体化したまま電極群内に取り入れることで、ボタン形やコイン形などの小型電池のケース内に収納可能な捲回電極群を製作することができた。この捲回軸芯またはその一部の基部はポリエチレンやポリプロピレン樹脂、ガラス、セラミックなどの絶縁性材料から形成されることが望ましい。
【0018】
次に、電極群と外部端子を兼ねる金属ケースとの接続について説明する。円筒形や角形などの比較的大きなリチウムイオン二次電池では、電極群の中心部や捲回部材部にタブ端子を溶接し、それに曲げ加工を施した後、安全素子や封口ピンに溶接し、集電を行なっている。しかしながら、曲げ工程が複雑なため生産性に劣っている。そこで、電極群に内在させる捲回軸芯に、電極と外部端子を兼ねる金属ケースとの接続を目的に端子を設置することで構造を単純にすることができた。この端子に電極を接続する方法は圧着、抵抗溶接や超音波溶接などの溶接、導電性接着剤などによる接着などがあるが特に限定するものではない。さらに、この端子と外部端子を兼ねる金属ケースとの接続方法としては抵抗溶接や超音波溶接などの溶接、導電性接着剤などによる接着、端子と電池ケースの接触などがあるが特に限定するものではない。しかし、接触による集電の場合は金属ネット、金属粉末、炭素フィラ−、導電性塗料などを使用して集電性を向上させることが望ましい。
【0019】
次に、電極群と電池ケースの間にはショートを防止することを目的に絶縁部材を設置することが望ましい。絶縁部材としては絶縁性が保持されれば特に限定はしないが、ポリエチレンやポリプロピレン樹脂製の絶縁板、PETやポリイミド製のフィルムなどが使用できる。絶縁部材は、正極ケースと電極群との間か、負極ケースと電極群との間か、あるいは両方に配置することができる。
【0020】
また、この絶縁部材を捲回軸芯に一体化してもよい。絶縁部材と捲回軸芯を一体化することにより電極群としては構造上の安定性が向上するため、絶縁部材と捲回軸芯は一体化することが望ましい。
【0021】
次に、電極については正負極とも従来の顆粒合剤の成形方式や金属ネットや発泡ニッケルなどの金属基板に合剤を充填する方法を用いてもよいが、肉薄電極の作製が行ない易いと言う点で金属箔にスラリー状の合剤を塗布、乾燥したものがよく、さらにそれを圧延したものも用いることもできる。上記の様な金属箔に作用物質を含む合剤層を塗工した電極を用いる場合は、電極群の内部に用いる電極は金属箔の両面に作用物質層を形成したものを用いるのが、容積効率の上から好ましい。電極群の片側の端子に接続する部分については接続を容易にするために電極構成材の内、特に金属箔を露出させるのが好ましい。これに関してはこの部分に限り片面にのみ作用物質層を形成した電極を用いてもよいし、一旦、両面に作用物質層を形成した後、片面のみ作用物質層を除去してもよい。
【0022】
次に、本電池は電極を含めた電池の構造に主点を置いたものであり、正極作用物質については限定されるものではなく、MnO2、V2O5、Nb2O5、LiTi2O4、Li4Ti5O12、LiFe2O4、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、コバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムなどの金属酸化物、あるいはフッ化黒鉛、FeS2などの無機化合物、あるいはポリアニリンやポリアセン構造体などの有機化合物などあらゆる物が適用可能である。ただし、この中で作動電位が高く、サイクル特性に優れるという点でコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムやそれらの混合物やそれらの元素の一部を他の金属元素で置換したリチウム含有酸化物がより好ましく、長期間に渡り使用されることもある小型二次電池においては高容量で電解液や水分との反応性が低く化学的に安定であるという点でコバルト酸リチウムがさらに好ましい。
【0023】
次に、本電池の負極作用物質については限定されるものではなく、金属リチウム、あるいはLi−Al、Li−In、Li−Sn、Li−Si、Li−Ge、Li−Bi、Li−Pbなどのリチウム合金、あるいはポリアセン構造体などの有機化合物、あるいはリチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料、あるいはNb2O5、LiTi2O4、Li4Ti5O12やLi含有珪素酸化物の様な酸化物、Li含有窒化物などあらゆるものが適用可能である。サイクル特性に優れ、作動電位が低く、高容量であるという点でLiを吸蔵・放出可能な炭素質材料が好ましく、特に放電末期においても電池作動電圧の低下が少ないと言う点で天然黒鉛や人造黒鉛、膨張黒鉛、メソフェーズピッチ焼成体、メソフェーズピッチ繊維焼成体などの黒鉛構造が発達した炭素質材料がより好ましい。
【0024】
[実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
(実施例1)
実施例1の電池の断面図を図1に示す。以下、実施例1の電池の製造方法を説明する。
【0026】
まず、LiCoO2 100重量部に対し、導電剤としてアセチレンブラック5重量部と黒鉛粉末5重量部を加え、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを5重量部加え、N−メチルピロリドンで希釈、混合し、スラリー状の正極合剤を得た。次に、この正極合剤を、正極集電体である厚さ0.02mmのアルミニウム箔の片面にドクターブレード法により塗工、乾燥を行い、アルミニウム箔表面に正極作用物質含有層を形成した。以後、正極作用物質含有層の塗膜厚さが両面で0.13mmとなるまで塗工、乾燥を繰り返し、図2に示すように、正極集電体1aの両面に正極作用物質含有層1bが積層された正極1を作製した。次に、この正極1の両面の端から2mm部分の正極作用物質含有層を除去し、アルミ層を剥き出しにして通電部1cとし、幅3.3mm、長さ150mm、厚さ0.13mmの長さに切り出した正極板を得た。
【0027】
次に、黒鉛化メソフェーズピッチ炭素繊維粉末100重量部に結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ2.5重量部を添加し、イオン交換水で希釈、混合し、スラリー状の負極合剤を得た。得られた負極合剤を負極集電体である厚さ0.02mmの銅箔に負極作用物質含有層の厚さが0.12mmとなるように正極の場合と同様に塗工、乾燥を繰り返し実施し、図3に示すように、負極集電体2aの両面に負極作用物質含有層2bが積層された負極2を作製した。次に、この負極2の両面の端から2mm部分の負極作用物質含有層を除去し、銅層を剥き出しにして通電部2cとし、幅3.3mm、長さ150mm、厚さ0.12mmの長さに切り出した負極板を作製した。
【0028】
次に、図4及び図5に示す構造の正負極端子を用意した。図4の(a)は、正極端子をスリット側から見た側面図で、図4の(b)は正極端子の平面図である。正極端子4は、円板状の正極端子板4a(正極端子部)と、正極端子板4aに電気的に接続された棒状の端子接続部4b(正極リード部)と、端子接続部4bに形成されたスリット4cとを有する。この正極端子4は、例えば、アルミニウムから形成される。一方、図5の(a)は、負極端子の平面図で、図5の(b)は負極端子をスリット側から見た側面図である。負極端子5は、円板状の負極端子板5a(負極端子部)と、負極端子板5aに電気的に接続された棒状の端子接続部5b(負極リード部)と、端子接続部5bに形成されたスリット5cとを有する。この負極端子5は、例えば、ステンレスから形成されている。
【0029】
図6に示すように、正極1の通電部1cを正極端子4の端子接続部4bのスリット4cに挿入した後、端子接続部4bに外側から圧力をかけ、端子接続部4bに通電部1cを圧着させた。また、負極2の通電部2cを負極端子5の端子接続部5bのスリット5cに挿入した後、端子接続部5bに外側から圧力をかけ、端子接続部5bに通電部2cを圧着させた。
【0030】
次に、電極を接続した端子を図7に示す捲回部材と一体化した。図7の(a)は、捲回部材6を上方から見た平面図で、(b)は捲回部材6の側面図で、(c)は捲回部材6を下方から見た平面図である。捲回部材6は、図7に示すように、捲回軸芯7と、捲回軸芯7の上端及び下端に一体化された絶縁板8,9(第1,第2の絶縁部材)とを備える。捲回軸芯7は、図7の(a)に示すように、負極端子5の端子接続部5bが嵌め合わされる切欠部7aを有する。また、捲回軸芯7には、図7の(c)に示すように、正極端子4の端子接続部4bが嵌め合わされる切欠部7bが、切欠部7aの反対側の位置に設けられている。第1の絶縁部材としての絶縁板9には、図7の(b),(c)に示すように、正極端子板4aが収納される円形の溝部9aが形成されている。また、絶縁板9には、捲回軸芯7の切欠部7bと連通するようにスリット9bも形成されている。一方、第2の絶縁部材としての絶縁板8には、図7の(a),(b)に示すように、負極端子板5aが収納される円形の溝部8aが形成されている。また、絶縁板8には、捲回軸芯7の切欠部7aと連通するようにスリット8bも形成されている。
【0031】
次いで、この捲回部材6と正負極端子4,5とを一体化させる。すなわち、図8に示すように、正極端子4の端子接続部4bを捲回軸芯7の切欠部7b内に挿入すると共に、正極端子板4aを絶縁板9の溝部9a内に配置した。また、負極端子5の端子接続部5bを捲回軸芯7の切欠部7a内に挿入すると共に、負極端子板5aを絶縁板8の溝部8a内に配置した。捲回軸芯7の切欠部7a,7b内に端子接続部4b,5bが挿入された結果、捲回軸芯7の形状が円柱形状となった。
【0032】
幅3.5m、厚さ22μmのポリエチレン微多孔膜からなるセパレータ3を捲回軸芯7と正極1の間、捲回軸芯7と負極2の間それぞれに1枚ずつはさんで固定し、正極1と負極2をこのセパレータ3を介して渦巻状に捲回し、電極群の捲回軸方向の高さが捲回軸に垂直な方向の大きさよりも小さい扁平型電極群を製作した。電極群の断面図を図9に示す。図9に示す通り、正極1と負極2をセパレータ3を介在させて渦巻き状に捲回した捲回電極群の中心部には、正極端子4の端子接続部4b(正極リード部)と負極端子5の端子接続部5b(負極リード部)が一体化された捲回軸芯7が位置する。捲回電極群の上面には、第2の絶縁部材としての絶縁板8が配置されている。端子接続部5bに一体化されている負極端子板5a(負極端子部)は、絶縁板8上に配置されている。また、捲回電極群の下面には、第1の絶縁部材としての絶縁板9が配置されている。端子接続部4bに一体化されている正極端子板4a(正極端子部)は、絶縁板9に積層されている。
【0033】
有底円筒形状で、開口端が外側に折り返されたリバース部10を有する金属製容器11(例えば、SUS304などのステンレスから形成される)を、負極端子を兼ねる負極ケースとして用意した。この負極ケース11のリバース部10にリング状の絶縁ガスケット12を嵌合した。この負極ケース11内に電極群をその負極端子板5aが負極ケース11の内面と接するように挿入し、負極端子板5aと負極ケース11を抵抗溶接した。
【0034】
有底円筒形状をしたアルミニウム製容器13を、正極端子を兼ねる正極ケースとして用意した。この正極ケース13内に電極群をその正極端子板4aが正極ケース13の内面と接するように挿入し、正極端子板4aと正極ケース13を抵抗溶接した。
【0035】
この電極群と負極ケースおよび正極ケースを溶接したものを85℃で12時間乾燥した後、エチレンカーボネイトとγ−ブチルラクトンを体積比1:2の割合で混合した溶媒に支持塩としてLiBF4を1.5mol/Lの割合で溶解した非水電解液を注液した。負極ケース11に正極ケース13を嵌合した後、上下を反転させ、正極ケース13に加絞め加工を実施することによって封口し、厚さ5.3mm、直径φ12mmの実施例1のボタン形小型二次電池を製作した。
【0036】
(実施例2)
電極群の製作までは実施例1と同様で、電極群の負極端子と負極ケースの溶接と正極端子と正極ケースの溶接を実施しないで、負極ケースと正極ケースの内面で電極群が接触する部分に黒鉛微粒子を分散させた導電性塗料を塗布した。
【0037】
作製した電極群を85℃で12h乾燥した後、絶縁ガスケットを一体化した負極ケースの導電性塗料が塗布してある内底面に電極群の負極端子板が接するように電極群を配置した。エチレンカーボネイトとγ−ブチルラクトンを体積比1:2の割合で混合した溶媒に支持塩としてLiBF4を1.5mol/Lの割合で溶解せしめた非水電解質を注液し、さらに電極群の正極端子板に接するように内底面に導電性塗料が塗布してある正極ケースを嵌合し、上下反転後、正極ケースに加締め加工を実施することにより封口し、厚さ5.3mm、直径φ12mmの実施例2のボタン形小型二次電池を製作した。
【0038】
(比較例)
LiCoO2100重量部に対し導電剤としてアセチレンブラック5重量部と黒鉛粉末5重量部を加え、結着剤として4フッ化エチレンを5重量部加え、混合後、粉砕し、顆粒状の正極合剤を得た。次にこの正極顆粒合剤を、直径8mm、厚さ2.1mmに加圧成形を行ない、正極タブレットとした。
【0039】
次に、黒鉛化メソフェーズピッチ炭素繊維粉末100重量部に結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ2.5重量部添加、混合、乾燥後、さらに粉砕し顆粒状の負極合剤を得た。得られた負極顆粒合剤を、直径8mm、厚さ2.1mmに加圧成形を行ない、負極タブレットとした。
【0040】
次に、これらの正負極タブレットを85℃で12h乾燥した後、絶縁ガスケットを一体化した負極ケースに負極タブレット、ポリプロピレンからなる厚さ0.2mmのポリプロピレン不織布、正極タブレットの順に配置した。エチレンカーボネイトとγ−ブチルラクトンを体積比1:2の割合で混合した溶媒に支持塩としてLiBF4を1.5mol/Lの割合で溶解せしめた非水電解質を注液し、さらに正極ケースを嵌合し、上下反転後、正極ケースに加締め加工を実施し、厚さ5.3mm、直径φ12mmの比較例のボタン形小型二次電池を製作した。
【0041】
以上の通り作製した実施例及び比較例の電池について、4.2V、1mAの定電流定電圧で48h初充電を実施した。その後、250μAの定電流で3.0Vまで放電を実施し放電容量を求めた。結果を表1に放電容量1として示す。同様に15mAの定電流で放電を実施したものを放電容量2とする。
【表1】
【0042】
表1より明らかであるが、実施例1,2の電池は、従来の顆粒合剤成形法により作製したタブレット状の電極を用いた比較例の電池に比べ、250μAの軽負荷の場合には同等の容量が得られるが、15mA重負荷放電時の放電においては著しく容量が大きい。また、電極群と外部端子である正負極ケースとの集電方法の違いにおいては、実施例2の接触による集電でも実施例1の溶接による集電でも放電容量には遜色がないことが確認された。
【0043】
なお、本発明の実施例は、非水電解質に非水溶媒を用いた非水溶媒二次電池を用いて説明したが、ポリマー電解質を用いたポリマー二次電池や固体電解質を用いた固体電解質二次電池についても当然、適用可能であり、樹脂製セパレータの変わりにポリマー薄膜や固体電解質膜を用いることも可能である。また、電池形状については正極ケースの加締め加工により封口するボタン形小型二次電池をもとに説明したが、正負極電極を入れ替え、負極ケースの加締め加工により封口することも可能である。さらに、電池形状についてもボタン形である必要はなくコイン形の小型二次電池においても適用可能である。また、円筒形および角形の二次電池においても適用することも可能である。さらに、一次電池に対して本発明を適用しても同等の効果を得ることが可能である。
【0044】
以上説明したとおり、本発明によればボタン形やコイン形電池の持つ電池サイズが小さく、かつ、生産性に優れるという利点を維持したまま、重負荷放電時の放電容量が従来の電池に対し格段に大きな優れた小型電池を提供することができる。よって、その工業的価値は非常に大きなものである。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係るコイン型非水電解質二次電池を模式的に示した断面図。
【図2】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される正極を模式的に示した斜視図。
【図3】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される負極を模式的に示した斜視図。
【図4】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される正極端子を示す側面図と平面図。
【図5】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される負極端子を示す側面図と平面図。
【図6】電極と端子とを一体化させる工程を説明するための模式図。
【図7】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される捲回部材を示す側面図と平面図。
【図8】電極が一体化された端子を図7の捲回部材に挿入する工程を説明するための模式図。
【図9】図1のコイン型非水電解質二次電池で使用される電極群を模式的に示した断面図。
【図10】従来のコイン型電池を示す断面図。
【符号の説明】
【0047】
1…正極、1a…正極集電体、1b…正極作用物質含有層、1c…通電部、2…負極、2a…負極集電体、2b…負極作用物質含有層、2c…通電部、3,26…セパレータ、4…正極端子、4a…正極端子板、4b…端子接続部、4c…スリット、5…負極端子、5a…負極端子板、5b…端子接続部、5c…スリット、6…捲回部材、7…捲回軸芯、7a,7b…切欠部、8,9…絶縁板、8a,9a…溝部、10…リバース部、11,22…負極ケース、12,23…絶縁ガスケット、13,21…正極ケース、24…正極タブレット、25…負極タブレット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、前記容器内に収納され、正極及び負極を含む積層物が渦巻き状に捲回された扁平型電極群とを具備する小型電池であって、
前記扁平型電極群は、前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方の電極を捲回軸芯に固定した状態で前記積層物を渦巻き状に捲回することにより前記捲回軸芯と一体となっていることを特徴とする小型電池。
【請求項2】
前記容器は、正極端子を兼ねる正極ケースと、負極端子を兼ねる負極ケースと、前記正極ケースと前記負極ケースの間に介在された絶縁ガスケットとを具備し、前記正極ケースまたは前記負極ケースに施されたカシメ加工により前記容器の封口がなされていることを特徴とする請求項1記載の小型電池。
【請求項3】
前記正極ケースと前記電極群の一方の端面との間に配置された正極端子部と、
前記負極ケースと前記電極群の他方の端面との間に配置された負極端子部と、
前記捲回軸芯に一体化されており、前記正極端子部と前記正極間の導通を確保するための正極リード部と、
前記捲回軸芯に一体化されており、前記負極端子部と前記負極間の導通を確保するための負極リード部と
をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の小型電池。
【請求項4】
前記正極ケースと前記電極群の一方の端面との間か、前記負極ケースと前記電極群の他方の端面との間か、あるいは両方に絶縁部材を配置したことを特徴とする請求項3記載の小型電池。
【請求項5】
前記電極群の一方の端面を覆うように前記捲回軸芯の一端に固定された第1の絶縁部材と、
前記電極群の他方の端面を覆うように前記捲回軸芯の他端に固定された第2の絶縁部材と、
前記正極ケースの内面と前記第1の絶縁部材との間に配置された正極端子部と、
前記負極ケースの内面と前記第2の絶縁部材との間に配置された負極端子部と、
前記捲回軸芯に一体化されており、前記正極端子部と前記正極間の導通を確保するための正極リード部と、
前記捲回軸芯に一体化されており、前記負極端子部と前記負極間の導通を確保するための負極リード部と
をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の小型電池。
【請求項6】
コイン型もしくはボタン型電池であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の小型電池。
【請求項1】
容器と、前記容器内に収納され、正極及び負極を含む積層物が渦巻き状に捲回された扁平型電極群とを具備する小型電池であって、
前記扁平型電極群は、前記正極及び前記負極のうち少なくとも一方の電極を捲回軸芯に固定した状態で前記積層物を渦巻き状に捲回することにより前記捲回軸芯と一体となっていることを特徴とする小型電池。
【請求項2】
前記容器は、正極端子を兼ねる正極ケースと、負極端子を兼ねる負極ケースと、前記正極ケースと前記負極ケースの間に介在された絶縁ガスケットとを具備し、前記正極ケースまたは前記負極ケースに施されたカシメ加工により前記容器の封口がなされていることを特徴とする請求項1記載の小型電池。
【請求項3】
前記正極ケースと前記電極群の一方の端面との間に配置された正極端子部と、
前記負極ケースと前記電極群の他方の端面との間に配置された負極端子部と、
前記捲回軸芯に一体化されており、前記正極端子部と前記正極間の導通を確保するための正極リード部と、
前記捲回軸芯に一体化されており、前記負極端子部と前記負極間の導通を確保するための負極リード部と
をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の小型電池。
【請求項4】
前記正極ケースと前記電極群の一方の端面との間か、前記負極ケースと前記電極群の他方の端面との間か、あるいは両方に絶縁部材を配置したことを特徴とする請求項3記載の小型電池。
【請求項5】
前記電極群の一方の端面を覆うように前記捲回軸芯の一端に固定された第1の絶縁部材と、
前記電極群の他方の端面を覆うように前記捲回軸芯の他端に固定された第2の絶縁部材と、
前記正極ケースの内面と前記第1の絶縁部材との間に配置された正極端子部と、
前記負極ケースの内面と前記第2の絶縁部材との間に配置された負極端子部と、
前記捲回軸芯に一体化されており、前記正極端子部と前記正極間の導通を確保するための正極リード部と、
前記捲回軸芯に一体化されており、前記負極端子部と前記負極間の導通を確保するための負極リード部と
をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の小型電池。
【請求項6】
コイン型もしくはボタン型電池であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の小型電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−294111(P2007−294111A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116981(P2006−116981)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)
【Fターム(参考)】
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