説明

少ない副作用しか有さないアジスロマイシン剤形

【課題】同用量の即時放出アジスロマイシンと類似のバイオアベイラビリティーおよびそれより少ない胃腸副作用を有するアジスロマイシン剤形の提供。
【解決手段】有効量のアルカリ化剤とアジスロマイシン多粒子とを含んでなる経口剤形。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アジスロマイシンは、種々の感染症、具体的には、尿路、気管支管、肺、洞および中耳の感染症を治療するために経口または静脈内投与される抗生物質である。
【背景技術】
【0002】
アジスロマイシンの経口投与は、有意数の患者に、悪心、痙攣、下痢および嘔吐などの胃腸(GI)副作用をもたらすことがありうる。このようなGI副作用は、非ヒト哺乳動物、例えば、イヌでも起こりうる。3,995人の患者を含むアジスロマイシン併用臨床
研究において(全て、併用用量レベル
)、9.6%の患者でGI副作用が報告されたが、これら副作用の内で最も頻度が高かっ
たものは、下痢(3.6%)、悪心(2.6%)および腹痛(2.5%)であった。Hopkins, 91 Am. J. Med. 40S (suppl 3A 1991)。
【0003】
これら副作用の頻度は、アジスロマイシンのより高い用量レベルで増加する。成人を治療する場合、経口懸濁液剤で投与される一回1グラム用量について、報告された種々のGI副作用の発生率は、7%の下痢/軟便、5%の悪心、5%の腹痛および2%の嘔吐であった(経口懸濁液剤用アジスロマイシンである U.S. Package Insert for Zithromax(登録商標))。しかしながら、経口懸濁液剤で投与される一回2グラムについては、報告された種々のGI副作用の発生率は、14%の下痢/軟便、7%の腹痛および7%の嘔吐であった(上掲)。
【0004】
同様に、小児を治療する場合、1日目に10mg/kgおよび2〜5日目に5mg/kgを含有する経口懸濁液剤を投与することにより、報告された種々のGI副作用の発生率は、4%の下痢/軟便、2%の腹痛および2%の嘔吐であったが(上掲)、経口懸濁液剤で投与される一回30mg/kg用量については、報告された種々のGI副作用の発生率は、6.4%の下痢/軟便、1.7%の悪心および4%の嘔吐であった(上掲)。
【0005】
制酸薬は、大きい用量で与えられて、胃pHを約1〜3から約4〜7に上昇させるアルカリ化剤であり、患者の下痢、痙攣および胃不調を軽減させることができる。しかしながら、患者は、制酸薬、特に、アルミニウムまたはマグネシウムを含有するものをアジスロマイシンと同時に摂取しないように注意されている。というのは、制酸薬はジスロマイシン最大血清濃度Cmaxを24%減少させることが分かっているからである(上掲)。更に
、制酸薬がアジスロマイシン吸収の妨げとならないように、患者は、アジスロマイシン投与および制酸薬投与を少なくとも2時間だけ離すように助言されてもいる。
【0006】
現在、約132mgまたはそれ未満の少量の無水第三リン酸ナトリウムアルカリ化剤が、飲み込む前のアジスロマイシンの溶解性を減少させることによってアジスロマイシンの苦味を隠すために、アジスロマイシンの市販剤形中に用いられている。更に、非併発性の淋菌感染症を治療する場合、各々88mgの無水第三リン酸ナトリウムを含有する2個の一回用量パケットのアジスロマイシンがそれを必要としている患者に一回用量で同時投与されている。
【0007】
より最近では、米国特許第6,068,859号に記載のように、アジスロマイシンの投与量によって生じる胃腸副作用を同用量の市販即時放出アジスロマイシンカプセル剤と比較して減少させるアジスロマイシン制御放出剤形が製造されている。しかしながら、そこに具体的に示された多数の制御放出剤形のバイオアベイラビリティーは、その後、それら即時放出同等物より小さいことが判明した。
【特許文献1】米国特許第6,068,859号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、同用量の即時放出アジスロマイシンと類似のバイオアベイラビリティーおよびそれより少ない胃腸副作用を有するアジスロマイシン剤形が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アジスロマイシンおよび有効量のアルカリ化剤を含んでなるアジスロマイシンの経口剤形に関する。好ましくは、この経口剤形は、有効量のアルカリ化剤と、アジスロマイシン多粒子であって、アジスロマイシン;グリセリルモノ−、ジ−およびトリベヘネートの混合物;およびポロキサマーを含んでなる多粒子を含んでなる。
【0010】
本発明は、更に、アジスロマイシン、有効量のアルカリ化剤およびビヒクルを含んでなる経口懸濁液剤に関する。好ましくは、このアジスロマイシンは多粒子形態である。より好ましくは、これら多粒子は、アジスロマイシン;グリセリルモノ−、ジ−およびトリベヘネートの混合物;およびポロキサマーを含んでなる。
【0011】
なおより好ましくは、アジスロマイシン経口剤形および経口懸濁液剤は、更に、300mg〜400mgの第三リン酸ナトリウム、200mg〜300mgの水酸化マグネシウム、および多粒子であって、(i)アジスロマイシン、(ii)グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物、および(iii)ポ
ロキサマー407を含んでなる多粒子を含んでなり、そして、この剤形は、約1.5gA
〜約4gAのアジスロマイシンを含有する。
【0012】
更に、本発明は、哺乳動物にアジスロマイシンを投与することに関連した胃腸副作用を減少させる方法であって、アジスロマイシンおよび有効量のアルカリ化剤をその哺乳動物にほぼ同時に投与することを含んでなり、胃腸副作用の頻度が、アルカリ化剤不含の等用量のアジスロマイシンを投与することによって経験される頻度より低くなる方法に関する。この方法において、これら多粒子は、(i)アジスロマイシン、(ii)グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物、および(iii)ポロキサマーを含んでなることが好ましい。
【0013】
本発明は、更に、細菌または原生動物の感染症を治療することを必要としている哺乳動物の細菌または原生動物の感染症を治療する方法であって、その哺乳動物に、経口剤形であって、アジスロマイシンおよび有効量のアルカリ化剤を含んでなる経口剤形をほぼ同時に投与することを含んでなる方法に関する。
【0014】
好ましくは、これら方法では、250mgA〜7gAのアジスロマイシンをヒトに投与する。より好ましくは、約1.5gA〜約4gAのアジスロマイシンをヒトに、より好ま
しくは、1.5gA〜3gAのアジスロマイシンをヒトに、なおより好ましくは、一回用
量で投与する。更に好ましくは、1.8gA〜2.2gAのアジスロマイシンをヒトに一回用量で投与する。更により好ましくは、30kgまたはそれ未満の体重の小児について、30mgA/kg〜90mgA/kgのアジスロマイシンを、好ましくは、45mgA/kg〜75mgA/kgのアジスロマイシンを、なおより好ましくは、一回用量で投与する。
【0015】
これら方法でアジスロマイシン多粒子が用いられる場合、溶解促進剤を更に含んでもよく、その溶解促進剤は、ポロキサマー、ドキュセート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エス
テル、ソルビタンエステル、アルキル硫酸塩、ポリソルベートおよびポリオキシエチレンアルキルエステルから成る群より選択される界面活性剤を含んでなることができる。これら方法で用いられるアルカリ化剤は、第三リン酸ナトリウムを含んでなることができ、更に水酸化マグネシウムを含んでもよい。
【0016】
アジスロマイシン多粒子は、約1.5gA〜約4gAのアジスロマイシンを含んでなる
ことができ、また、30kgまたはそれ未満の体重の小児に投与するときは、30mgA/kg〜90mgA/kgのアジスロマイシンを含んでなることができる。その際、(a)アルカリ化剤が、少なくとも約200mgの第三リン酸ナトリウムおよび少なくとも約100mgの水酸化マグネシウムを含んでなり;そして(b)アジスロマイシン多粒子が、(i)アジスロマイシン、(ii)グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物、および(iii)ポロキサマー407を含んで
なることができる。そして、ヒトに一回用量の経口剤形を投与する場合、その経口剤形は、(a)300mg〜400mgの第三リン酸ナトリウム;(b)200mg〜300mgの水酸化マグネシウム;および(c)多粒子であって、(i)アジスロマイシン、(ii)グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物、および(iii)ポロキサマー407、を含んでなる多粒子を含んでなり、そし
て、その剤形は、1.5gA〜4gAのアジスロマイシンを含有することができる。好ましくは、アジスロマイシンは、アジスロマイシン二水和物を含んでなる。
【0017】
本発明は、ヒトにアジスロマイシンを投与することに関連した胃腸副作用の頻度を減少させるためのアジスロマイシン製剤および有効量のアルカリ化剤の併用剤であって、前記アジスロマイシン製剤および前記有効量のアルカリ化剤を該ヒトにほぼ同時に投与するための併用剤、および細菌感染または原生動物感染を治療することを必要としているヒトの細菌感染または原生動物感染を治療するためのアジスロマイシン製剤および有効量のアルカリ化剤の併用剤であって、前記アジスロマイシン製剤および前記有効量のアルカリ化剤を該ヒトにほぼ同時に投与するための併用剤にも関する。
【0018】
この併用剤は、約250mgA〜約7gAのアジスロマイシンを前記ヒトに投与するための併用剤であることができる。好ましくは、アジスロマイシン製剤を一回用量で投与する。より好ましくは、アジスロマイシン製剤は、約1.5gA〜約4gAのアジスロマイ
シンを投与するためのもの、好ましくは、1.8gA〜2.2gAのアジスロマイシンを
投与するためのものである。また、このアジスロマイシン製剤は、ヒトが30kgまたはそれ未満の体重の小児であるときは、30mgA/kg〜90mgA/kg、好ましくは、45mgA/kg〜75mgA/kgのアジスロマイシンを投与するためのものである。好ましくは、アジスロマイシン製剤を一回用量で投与する。
【0019】
これら併用剤に使用されるアジスロマイシン製剤は、(a)アジスロマイシン;および(b)薬学的に許容しうる担体、を含んでなるアジスロマイシン多粒子を含んでなることができる。担体は、グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物を含んでなることができる。アジスロマイシン多粒子は、溶解促進剤を更に含んでもよく、その溶解促進剤は、ポロキサマー、ドキュセート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、アルキル硫酸塩、ポリソルベートおよびポリオキシエチレンアルキルエステルから成る群より選択される界面活性剤を含んでなることができる。これら併用剤で用いられるアルカリ化剤は、第三リン酸ナトリウムを含んでなることができ、更に水酸化マグネシウムを含んでもよい。
【0020】
これら併用剤で用いられるアジスロマイシン多粒子は、約1.5gA〜約4gAのアジ
スロマイシンを含んでなることができ、また、30kgまたはそれ未満の体重の小児に投
与するときは、30mgA/kg〜90mgA/kgのアジスロマイシンを含んでなることができる。その際、(a)アルカリ化剤が、少なくとも約200mgの第三リン酸ナトリウムおよび少なくとも約100mgの水酸化マグネシウムを含んでなり;そして(b)アジスロマイシン多粒子が、(i)アジスロマイシン、(ii)グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物、および(iii)ポ
ロキサマー407を含んでなることができる。そして、ヒトに一回用量でほぼ同時に経口投与する場合、アルカリ化剤は、300mg〜400mgの第三リン酸ナトリウムおよび200mg〜300mgの水酸化マグネシウムを含んでなり、アジスロマイシン多粒子は、(i)アジスロマイシン、(ii)グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物、および(iii)ポロキサマー407、を含ん
でなり、そして、その多粒子は、1.5gA〜4gAのアジスロマイシンを含有することができる。好ましくは、アジスロマイシンは、アジスロマイシン二水和物を含んでなる。
【0021】
本発明は、更に、アジスロマイシン、界面活性剤;および薬学的に許容しうる担体を含んでなるアジスロマイシン多粒子に関する。
【発明の詳細な説明】
【0022】
本発明中で用いられる「約」という用語は、規定値±規定値の10%を意味する。
本発明における単数表記は、一つまたはそれを超える意味である。例えば、「アルカリ化剤」という用語は、一つまたはそれを超えるアルカリ化剤を意味し、「担体」という用語は、一つまたはそれを超える担体を意味し、「溶解促進剤」という用語は、一つまたはそれを超える溶解促進剤を意味する。
【0023】
本明細書中で用いられる「アルカリ化剤」という用語は、構成済み懸濁液剤中の、または経口投与後のその患者の胃内のpHを上昇させるで薬学的に許容しうる賦形剤を意味する。
【0024】
本明細書中で用いられる「薬学的に許容しうる」という用語は、その組成物の他の成分と適合性であり、しかもその受容者に害がないことを意味する。
「構成済み懸濁液剤」という用語は、粉末剤がビヒクルと混合されて「経口懸濁液剤」を形成していることを意味する。この経口懸濁液剤において、アジスロマイシンおよび賦形剤は、(a)ビヒクル中に完全に懸濁されていても(b)一部分はビヒクル中に懸濁して一部分はビヒクル中に溶解していてもよい。本発明の経口懸濁液剤には、ビヒクル内に懸濁されているアジスロマイシン、またはそのアジスロマイシンが、振とう、撹拌または混合後に一時的にビヒクル中に懸濁されているアジスロマイシンを含有するビヒクルが含まれる。
【0025】
本発明のビヒクルは、未着香水、着香水、または飲料などの天然若しくは人工の果実またはそれ以外のやり方で着香された水溶液を含んでなる。
本発明において、アルカリ化剤、賦形剤およびビヒクルは、薬学的に許容しうる。
【0026】
本明細書中で用いられる「有効量のアルカリ化剤」は、アジスロマイシンと組み合わせて投与された場合に、同量の活性アジスロマイシンを含有するコントロール剤形に比較して、GI副作用を伴うことなくアジスロマイシン投与を許容する受容者百分率によって許容性の相対的改善度を与えるだけの量の一つまたはそれを超えるアルカリ化剤を意味する。
【0027】
「許容性の相対的改善度」は、(1)即時放出コントロール剤形の投与からの副作用百分率の(2)本発明の制御放出多粒子剤形の投与からの副作用百分率に対する比率として定義され、その即時放出コントロール剤形およびその制御放出多粒子剤形は、同量のアジ
スロマイシンを含有する。この即時放出コントロール剤形は、Zithromax(登録商標)錠
剤、カプセル剤、または経口懸濁液剤用の一回用量パケットなどの、いずれの慣用的な即時放出剤形であってもよい。例えば、ある即時放出コントロール剤形が、20%の投与から起こる副作用百分率を与える一方、本発明の多粒子剤形が、10%の投与からの副作用百分率を与える場合、許容性の相対的改善度は、20%÷10%、または2である。
【0028】
「経口剤形」という用語には、経口摂取によって所望の量のアジスロマイシンを集合的に送達して、所望の用量のアジスロマイシンに到達させる複数のデバイスが含まれる。典型的には、この経口剤形は、経口懸濁液剤用の粉末剤、単位用量パケットまたはサシェ剤、錠剤またはカプセル剤である。
【0029】
「投与」は、概して、in vitro 溶解用基剤中にその剤形を入れることによってかまた
は、GI管の in vivo 環境に入れるための動物による摂取によって、その剤形を使用環
境に導入することを意味する。
【0030】
本明細書中で定義される「使用環境」という用語は、哺乳動物、具体的には、ヒトなどの動物のGI管の in vivo 環境かまたは、実施例5に記載のようなpH6.0Na2HP
4緩衝試験液の in vitro 環境でありうる。
【0031】
「哺乳動物」という用語は、分類学的クラス Mammalia のメンバーである個々の動物である。この Mammalia というクラスには、例えば、ヒト、サル、チンパンジー、ゴリラ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットが含まれる。
【0032】
本発明において、好ましい哺乳動物はヒトである。
本発明の剤形は、胃内のアジスロマイシンの放出速度または溶解速度を実質的に低下させることによって、胃内および十二指腸内に溶解したアジスロマイシンの濃度を減少させるのに充分なレベルへと胃内pHを上昇させることにより、投与されたアジスロマイシンのより良い許容性を与える。胃内、好ましくは、十二指腸内で溶解したアジスロマイシンの濃度のこの低下は、アジスロマイシンが投与された場合のGI副作用の発生率または頻度の低下をもたらす。具体的には、アジスロマイシンおよび有効量のアルカリ化剤を含んでなる本発明の剤形について、実施例5のpH6.0Na2HPO4緩衝試験液の in vitro
環境における1.5gA〜7gAの用量のアジスロマイシンの放出速度または溶解速度は、その緩衝試験液への投与後、(i)0.25時間でその剤形中のアジスロマイシンの
15〜55wt%であるが1.1gA以下;(ii)0.5時間でその剤形中のアジスロマイシンの30〜75wt%であるが1.5gA以下、好ましくは1.3gA以下;そして(iii)1時間でその剤形中のアジスロマイシンの50wt%より多くあるべきである。小児
用量のような1.5gA未満の用量については、その用量を2gAまで多くしてからその in vitro 試験を用いて評価すべきである。
【0033】
「gA」という用語は、749g/molの分子量を有する塩ではなく水和物でもないアジスロマイシンマクロライド分子を意味する活性アジスロマイシンのグラム数を意味する。
【0034】
本剤形は、等価の即時放出剤形と比較して少なくとも1.1の投与されたアジスロマイ
シンの許容性の相対的改善度を与える。好ましくは、許容性の相対的改善度は、少なくとも約1.25である。より好ましくは、許容性の相対的改善度は、少なくとも約1.5である。なおより好ましくは、許容性の相対的改善度は、少なくとも約2.0である。最も好
ましくは、許容性の相対的改善度は、少なくとも約3.0である。
【0035】
好ましい態様において、本剤形は、更に、投与されたアジスロマイシンの十二指腸内ま
たは十二指腸に遠位でのアジスロマイシン放出速度および/または溶解速度を有意に低下させないことによって、適切なレベルのバイオアベイラビリティーを維持する。典型的には、本剤形は、コントロール組成物に比較して少なくとも60%、より好ましくは、少なくとも70%、なおより好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも90%のバイオアベイラビリティーを与える。
【0036】
本発明のアルカリ化剤は、酸性水溶液のpHを上昇させ、そしてそれには、例えば、制酸薬、並びに、他の薬学的に許容しうる(1)有機塩基および無機塩基、(2)有機および無機の強酸の塩、(3)有機および無機の弱酸の塩、および(4)緩衝剤が含まれる。
【0037】
このようなアルカリ化剤の例には、ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどのアルミニウム塩;炭酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ステアリン酸マグネシウムなどのマグネシウム塩;炭酸カルシウムなどのカルシウム塩;重炭酸カルシウムおよび重炭酸ナトリウムなどの重炭酸塩;第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム(TSP)、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウムなどのリン酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;酸化マグネシウムなどの金属酸化物;N−メチルグルカミン;アルギニンおよびその塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)などのアミン;およびそれらの組合せが含まれるが、これに限定されるわけではない。
【0038】
好ましくは、アルカリ化剤は、TRIS、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、第二リン酸ナトリウム、TSP、第二リン酸カリウム、第三リン酸カリウムまたはそれらの組合せである。より好ましくは、アルカリ化剤は、TSPおよび水酸化マグネシウムの組合せである。
【0039】
アルカリ化剤がTSPを含んでなる場合、TSPは無水であることが好ましい。
「有効量」を構成するのに適したアルカリ化剤の最小量は、少なくとも1.1の許容性
の相対的改善度を与えると考えられる量である。
【0040】
アルカリ化剤のこの適する量は、実施例1に記載のように、固定された用量のアジスロマイシンの溶液を0.1NHClで滴定し、そしてアルカリ化剤またはアルカリ化剤の組
合せの量を増加させることによって、アジスロマイシン溶解速度の in vitro はしご検討を実施することにより、容易に決定することができる。
【0041】
アジスロマイシン多粒子を含有する剤形について、アルカリ化剤の有効量は、実施例1に記載のように、摂取された状態の胃液を模擬する0.1NHClに対する in vitro 滴
定試験を用いて滴定された場合に、約5またはそれを超えるpHを少なくとも約10分間、より好ましくは、約6またはそれを超えるpHを約10分間維持する量である。なおより好ましくは、このアルカリ化剤は、約6またはそれを超えるpHを約20分間またはそれを超えて維持すべきである。
【0042】
アジスロマイシン即時放出剤形について、アルカリ化剤の有効量は、実施例1に記載の0.1NHClに対する in vitro 滴定試験を用いて滴定された場合に、約6.4またはそれを超えるpHを少なくとも約10分間、より好ましくは、少なくとも約30分間維持する量である。
【0043】
或いは、アルカリ化剤の有効量は、次の in vitro 試験で決定することができる。最初に、20mLの0.1NHCl試料を、適する容器に入れる。次に、候補アルカリ化剤を
60mLの水に加える。次に、そのように形成されたアルカリ化剤溶液を、20mLの0
.1NHCl試料に加え、得られた溶液のpHを経時的に追跡する。アジスロマイシンが
徐放性多粒子形態である場合、アルカリ化剤の有効量は、その溶液のpHが少なくとも5、好ましくは、少なくとも6、より好ましくは、少なくとも7であるような量である。アジスロマイシンが即時放出製剤である場合、アルカリ化剤の有効量は、その溶液のpHが少なくとも6.4、好ましくは、少なくとも7.5、より好ましくは、少なくとも8であるような量である。
【0044】
本発明のアルカリ化剤は、ある用量のアジスロマイシンの投与とほぼ同時に投与される。本明細書中で用いられる「ほぼ同時に」という用語は、胃内のアジスロマイシンの放出速度を遅くし且つ十二指腸内の溶解したアジスロマイシンの濃度を低下させるのに充分な時間の範囲内で、アルカリ化剤をアジスロマイシンの前、同時または後に投与することを意味する。例えば、アジスロマイシンを多粒子形態で投与する場合、アルカリ化剤は、アジスロマイシンを投与する約20分前と投与後約10分の間に投与されるべきである。アジスロマイシン即時放出剤形については、アルカリ化剤を、アジスロマイシンと同時にまたはアジスロマイシンを投与する約20分前までに投与すべきである。
【0045】
好ましくは、アルカリ化剤は、アジスロマイシンと同時に投与される。
アルカリ化剤は、錠剤またはカプセル剤の一体部分として、または好ましくは、制御放出形が経口懸濁液剤用の粉末剤である場合は粉末混合物に、アジスロマイシン剤形と混合されることができる。
【0046】
アルカリ化剤は、アジスロマイシンと同じ剤形中であってよいし、アルカリ化剤は、アジスロマイシンを投与するのに用いられるビヒクル中に含有されていてよいし、および/または、アルカリ化剤は、アジスロマイシンとは別個に投与されてもよい。
【0047】
アジスロマイシン剤形が、アルカリ化剤の少なくとも一部分を含有する場合は、そのアジスロマイシン剤形は、懸濁液剤、錠剤、カプセル剤またはサシェ剤のようないずれかの経口剤形でありうる。
【0048】
アルカリ化剤が、少なくとも一部分的にビヒクル中に含有されている場合は、アジスロマイシン剤形は、サシェ剤、経口懸濁液剤用の粉末剤、錠剤またはカプセル剤でありうる。
【0049】
アルカリ化剤が、少なくとも一部分的にアジスロマイシンと別個に投与される場合、そのアルカリ化剤は、液剤、懸濁液剤、錠剤、カプセル剤またはサシェ剤のようないずれかの経口剤形中でありうる。
【0050】
本明細書中で用いられる「アジスロマイシン」は、アジスロマイシンの多形、同形、クラスレート、塩、溶媒和物および水和物を含むアジスロマイシンの全ての非晶質形態および結晶形態、並びに、無水アジスロマイシンを意味する。
【0051】
好ましくは、本発明のアジスロマイシンは、米国特許第6,268,489B1号に開示されているアジスロマイシン二水和物である。
本発明の別の態様において、アジスロマイシンは、アジスロマイシン非二水和物、アジスロマイシン非二水和物の混合物、またはアジスロマイシン二水和物とアジスロマイシン非二水和物との混合物を含んでなる。適するアジスロマイシン非二水和物の例には、代わりの結晶形態B、D、E、F、G、H、J、M、N、O、P、QおよびRが含まれるが、これに限定されるわけではない。
【0052】
アジスロマイシンB形は、アジスロマイシンの吸湿性水和物であり、米国特許第4,4
74,768号に開示されている。
アジスロマイシンD、E、F、G、H、J、M、N、O、P、QおよびR形は、2003年8月28日に米国特許出願公開第20030162730A1号として公開された米国特許出願第(USSN)10/152,106号に開示されている。
【0053】
B、F、G、H、J、M、N、OおよびP形は、ファミリーIアジスロマイシンに属し、a=16.3±0.3Å、b=16.2±0.3Å、c=18.4±0.3Åおよびβ=109±2°のセル寸法を有する単斜晶系P21空間群に属する。
【0054】
F形アジスロマイシンは、式C3872212・H2O・0.5C25OHを
有する単結晶構造のアジスロマイシンエタノール溶媒和物であり、詳しくは、アジスロマイシン一水和半エタノール溶媒和物である。F形は、更に、粉末試料中に2〜5重量%の水および1〜4重量%のエタノールを含有するとして特徴付けられる。F形の単結晶は、一水和物/半エタノラートとして、2つのアジスロマイシン、2つの水および1つのエタノールを含有する非対称単位を有する単斜晶系空間群P21で結晶化する。それは、全て
のファミリーIアジスロマイシン結晶形態と同形態である。理論上の水およびエタノール含有率は、それぞれ、2.3wt%および2.9wt%である。
【0055】
G形アジスロマイシンは、式C3872212・1.5H2Oを有する単結晶構
造であって、アジスロマイシンセスキ水和物である。G形は、更に、粉末試料中に2.5
〜6wt%の水および<1wt%の有機溶媒を含有するとして特徴付けられる。G形の単結晶構造は、非対称単位毎に2つのアジスロマイシン分子と3つの水分子から成る。これは、3.5wt%の理論含水率を有するセスキ水和物に相当する。G形の粉末試料の含水
率は、約2.5〜約6wt%である。全残留有機溶媒は、結晶化に使用される対応する溶
媒の1wt%未満である。
【0056】
H形アジスロマイシンは、式C3872212・H2O・0.5C382
有する、アジスロマイシン一水和半1,2プロパンジオール溶媒和物である。H形は、ア
ジスロマイシンフリー塩基の一水和物/半プロピレングリコール溶媒和物である。
【0057】
J形アジスロマイシンは、式C3872212・H2O・0.5C37OHを
有する単結晶構造であり、アジスロマイシン一水和半n−プロパノール溶媒和物である。J形は、更に、粉末試料中に2〜5wt%の水と1〜5wt%のn−プロパノールを含有するとして特徴付けられる。計算された溶媒含有率は、約3.8wt%のn−プロパノー
ルおよび約2.3wt%の水である。
【0058】
M形アジスロマイシンは、式C3872212・H2O・0.5C37OHを
有するアジスロマイシンのイソプロパノール溶媒和物で、具体的には、アジスロマイシン一水和半イソプロパノール溶媒和物である。M形は、更に、粉末試料中に2〜5wt%の水および1〜4wt%の2−プロパノールを含有するとして特徴付けられる。M形の単結晶構造は、一水和物/半イソプロパノラートであると考えられる。
【0059】
N形アジスロマイシンは、ファミリーIの同形混合物である。この混合物は、変動する百分率の同形F、G、H、J、Mおよびその他と、変動する量のエタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、プロピレングリコール、アセトン、アセトニトリル、ブタノール、ペンタノール等のような有機溶媒と水とを含有してよい。水の重量%は、1〜5.
3wt%であり得、有機溶媒の総重量%は、各々の溶媒が0.5〜4wt%までであると
ころの2〜5wt%でありうる。
【0060】
O形アジスロマイシンは、式C3872212・0.5H2O・0.5C49OHを有する
、単結晶構造データによりアジスロマイシンフリー塩基の半水和半n−ブタノール溶媒和物である。
【0061】
P形アジスロマイシンは、式C3872212・H2O・0.5C512Oを
有する、アジスロマイシン一水和半n−ペンタノール溶媒和物である。
Q形アジスロマイシンは、式C3872212・H2O・0.5C48Oを有
する、アジスロマイシン一水和半テトラヒドロフラン溶媒和物である。それは、約4wt%の水および約4.5wt%のTHFを含有する。
【0062】
D、EおよびR形は、ファミリーIIアジスロマイシンに属し、a=8.9±0.4Å、b=12.3±0.5Åおよびc=45.8±0.5Åのセル寸法を有する斜方晶系P2111空間群に属する。Q形は、ファミリーIおよびファミリーIIとは異なる。
【0063】
D形アジスロマイシンは、式C3872212・H2O・C612の単結晶構造であり、
アジスロマイシン一水和一シクロヘキサン溶媒和物である。D形は、更に、粉末試料中に2〜6wt%の水および3〜12wt%のシクロヘキサンを含有するとして特徴付けられる。単結晶データにより、D形の水およびシクロヘキサンの計算された含有率は、それぞれ、2.1wt%および9.9wt%である。
【0064】
E形アジスロマイシンは、式C3872212・H2O・C48Oのアジスロマイシン一水和一テトラヒドロフラン溶媒和物である。E形は、単結晶分析により、一水和物および一THF溶媒和物である。
【0065】
R形アジスロマイシンは、式C3872212・H2O・C512Oを有する、アジスロ
マイシン一水和一メチル tert−ブチルエーテル溶媒和物である。R形は、2.1wt%の理論水分率および10.3wt%の理論メチル tert−ブチルエーテル含有率を有する。
【0066】
ファミリーIおよびファミリーII双方の同形は、アジスロマイシンの水和物および/または溶媒和物である。空洞中の溶媒分子は、特定の条件下において溶媒と水との間で交換される性質を有する。したがって、これら同形の溶媒/水含有率は、ある程度異なることがありうる。
【0067】
アジスロマイシン非二水和物の他の例には、アジスロマイシンのエタノール溶媒和物またはアジスロマイシンのイソプロパノール溶媒和物が含まれるが、これに限定されるわけではない。このようなアジスロマイシンのエタノールおよびイソプロパノール溶媒和物の例は、Singer et al. による「Ethanolate of azithromycin, process for manufacture,
and pharmaceutical compositions thereof」という表題の米国特許第6,365,574号、Karimian et al. による「Azithromycin monohydrate isopropanol clatharate and methods for the manufacture thereof」という表題の米国特許第6,245,903号ま
たはUSSN10/152,106号に開示されている。
【0068】
アジスロマイシン非二水和物の追加の例には、2001年11月29日公開の米国特許出願公開第20010047089号および2002年8月15日公開の同20020111318号、更には、WO01/00640、WO01/49697、WO02/10181およびWO02/42315に開示のアジスロマイシン一水和物が含まれるが、これに限定されるわけではない。
【0069】
アジスロマイシン非二水和物の更に別の例には、2003年7月24日公開の米国特許出願公開第20030139583号および米国特許第6,528,492号に開示の無水アジスロマイシンが含まれるが、これに限定されるわけではない。
【0070】
適するアジスロマイシン塩の例には、米国特許第4,474,768号に開示のアジスロマイシン塩が含まれるが、これに限定されるわけではない。
好ましくは、多粒子中のアジスロマイシンの少なくとも70wt%は結晶性である。より好ましくは、アジスロマイシンの少なくとも80wt%は結晶性である。なおより好ましくは、アジスロマイシンの少なくとも90wt%は結晶性である。最も好ましくは、アジスロマイシンの少なくとも95wt%は結晶性である。結晶性アジスロマイシンは、非晶質形態または溶解したアジスロマイシンよりも化学的および物理的に安定であるので好ましい。
【0071】
アジスロマイシンの結晶化度は、粉末X線回折(PXRD)分析を用いて決定することができる。代表的な手順において、PXRD分析は、Bruker AXS D8 Advance 回折計で行うことができる。この分析では、約500mgの試料を Lucite 試料カップに充填し、そして顕微鏡スライドグラスを用いて試料表面を平滑にして、試料カップの上部と水平である一貫して平滑な試料表面をつくる。試料を、φ面において30rpmの速度で回転させて、結晶配向作用を最小限にする。X線源(S/B KCuα,λ=1.54Å)
を、45kVの電圧および40mAの電流で作動させる。各々の試料のデータを、連続検出器走査モードにおいて約1.8秒/ステップ〜約12秒/ステップの走査速度および0.02°/ステップのステップサイズで約20〜約60分間にわたって集める。回折図は、約4°〜30°の2θ範囲にわたって集められる。
【0072】
試験試料の結晶化度は、結晶性アジスロマイシンおよび担体の物理的混合物から成る二つまたはそれを超える検量標準との比較によって決定される。各々の物理的混合物を、Turbular ミキサーで約15分間互いにブレンドする。計測器ソフトウェアを用いて、回折
曲線下面積を、直線ベースラインを用いて2θ範囲にわたって積分する。この積分範囲には、担体関連ピークが除外される一方で、できるだけ多くの薬剤特異的ピークが含まれる。結晶性薬剤%の回折曲線下面積に対する直線検量線を検量標準から作成する。次に、試験試料の結晶化度を、これら検量結果および試験試料の曲線下面積を用いて決定する。結果は、アジスロマイシン結晶化度の平均%(結晶重量)として示される。
【0073】
本明細書中で用いられるアジスロマイシンは、本発明のアルカリ化剤が存在しないために即時放出かまたは徐放性である剤形中に含有されるアジスロマイシン粒子を含んでなる。本明細書中に定義される「アジスロマイシン粒子」という用語は、アジスロマイシンが、アジスロマイシン粉末とそれに加えられてもよい少なくと別の薬学的に許容しうる賦形剤とから既に形成された粉末または顆粒形態であってよいということを意味する。
【0074】
即時放出剤形は、それらのアジスロマイシンの少なくとも75%が、投与後約1時間半以内に放出されるかまたは溶解する剤形である。このような即時放出剤形には、アジスロマイシンの錠剤、カプセル剤、多粒子、経口懸濁液剤用の粉末剤およびサシェ剤が含まれる。即時放出剤形の例には、商業的に入手可能な Zithromax(登録商標)錠剤、カプセル剤、経口懸濁液剤、または経口懸濁液剤用の一回用量パケット(Pfizer Inc., New York,
NY)または本明細書中の実施例2に記載されている多粒子コントロール剤形が含まれる
が、これに限定されるわけではない。
【0075】
徐放性剤形は、即時放出剤形よりも遅くアジスロマイシンを放出する剤形である。このような徐放性剤形には、アジスロマイシンの錠剤、カプセル剤、多粒子、経口懸濁液剤用の粉末剤およびサシェ剤が含まれるが、これに限定されるわけではない。
【0076】
本発明で用いるのに適しているアジスロマイシン徐放性剤形の例には、米国特許第6,
068,859号に記載の徐放性剤形が含まれるが、これに限定されるわけではない。
好ましくは、本発明で用いられるアジスロマイシンは、アジスロマイシンおよび薬学的に許容しうる担体を含んでなる多粒子中に含有される。
【0077】
多粒子は、その全体が意図する治療的に有用な薬剤の用量に相当する多数の薬剤含有粒子を含んでなる周知の剤形である。経口摂取される場合、多粒子は、概して、胃腸管内で自由に分散し、比較的速やかに且つ再現可能に胃から出て吸収を最大限にする。例えば、Multiparticulate Oral Drug Delivery (Marcel Dekker, 1994) および Pharmaceutical Pelletization Technology (Marcel Dekker, 1989) を参照されたい。
【0078】
多粒子は、しばしば、薬剤を徐放性にするのに用いられる。徐放性多粒子を製剤化する時の一つの問題は、薬剤の放出速度を設定することである。薬剤の放出速度は、多粒子を形成するのに用いられる担体および多粒子中の薬剤の量を含む様々な因子に依存する。異なった割合の同じマトリックス材料を用いて望まれるように遅いかまたは速い薬剤放出を与えることができるように、多粒子からの薬剤の放出速度を広範囲の放出速度にわたって制御することを可能にする多粒子のための担体を与えることが望まれる。この結果に達するために、薬剤の放出速度は、多粒子中のそれぞれの担体の割合の比較的小さい変化に応答して有意に変化すべきである。
【0079】
「多粒子」という用語は、その全体が意図する治療的に有用なアジスロマイシンの用量に相当する多数の粒子を含んでなる剤形を含む意味である。この用語は、広くは、それらの組成またはそれらが形成されるやり方とは無関係の小粒子を意味するものである。これら粒子は充分に小さいので、GI液と一緒に粒子が移動して、消化後短時間にGI管のいたるところに分散する。これら粒子は、概して、約40〜約3000μm、好ましくは、約50〜約1000μm、そして最も好ましくは、約100〜約300μmの平均直径を有する。好ましくは、アジスロマイシンは、多粒子の総重量の約5wt%〜約90wt%を構成する。より好ましくは、アジスロマイシンは、多粒子の約10wt%〜約80wt%、なおより好ましくは、多粒子の少なくとも約30wt%〜約60wt%を構成する。
【0080】
これら多粒子は、あらゆる形状およびテキスチャーも有することができるが、それらは、平滑な表面テキスチャーを有する球形であるのが好ましい。これら物理的特性は、優れた流動性、改善された「口当たり」、飲み込みの容易さ、そして必要ならば、均一コーティングの容易さをもたらす。
【0081】
このようなアジスロマイシン多粒子は、比較的多量の薬剤を制御された速度で比較的長時間にわたって送達することができるので、一回用量の薬剤の投与に特に適している。押出/球状化(spheronization)、ワックス造粒、噴霧乾燥および吹付コーティングによって作られる多粒子を含む、本発明で用いるのに適した多粒子は、米国特許第6,068,859号に開示されている。
【0082】
多粒子の担体は、多粒子のマトリックスとして、または多粒子からのアジスロマイシンの放出速度を制御するために、またはそれら両方に機能する少なくと別の薬学的に許容しうる賦形剤を含んでなる。
【0083】
本明細書中の「酸および/またはエステル置換基」への言及は全て、それぞれ、カルボン酸、スルホン酸およびリン酸の置換基、またはカルボン酸エステル、スルホニルエステルまたはリン酸エステルの置換基を意味させようとするものである。以下に詳細に記載されるように、アジスロマイシンは、賦形剤上の酸置換基またはエステル置換基と反応してアジスロマイシンエステルを形成し得る。
【0084】
アジスロマイシンは、潜在的に、酸またはエステル基を有する担体および任意の賦形剤
と反応してアジスロマイシンのエステルを形成し得る。担体および賦形剤は、アジスロマイシンエステルを形成する「低反応性」、「中位の反応性」および「高反応性」を有するとして特徴付けられることができる。
【0085】
低反応性の担体および任意の賦形剤の例には、ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびポリエチレングリコールなどの長鎖アルコール;ポロキサマー(ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338およびポロキサマー407のような、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー);ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル;微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびエチルセルロースなどのエーテル置換セルロース系誘導体;グルコース、スクロース、キシリトール、ソルビトールおよびマルチトールなどの糖;および塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウムおよびリン酸カリウムなどの塩が含まれる。
【0086】
中位の反応性の担体および任意の賦形剤は、しばしば、酸またはエステル置換基を含有するが、その担体または任意の賦形剤の分子量に比較すると比較的数が少ない。例には、グリセリルモノオレート、グリセリルモノステアレート、グリセリルパルミトステアレート、ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体、水素化植物油、グリセリルジベヘネート、およびモノ−、ジ−およびトリアルキルグリセリドの混合物などの長鎖脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールステアレートおよびポリエチレングリコールジステアレートなどのグリコール化脂肪酸エステル;ポリソルベート;およびカルナバワックスや白色や黄色の蜜蝋などのワックスが含まれる。本明細書中で定義されるグリセリルベヘネートは、グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネート、グリセリルトリベヘネート、またはこのグリセリルモノ−、ジ−およびトリベヘネートのいずれか二つまたは三つ全部の混合物を含んでなる。
【0087】
高反応性の担体および任意の賦形剤は、通常は、いくつかの酸またはエステル置換基、または低分子量を有する。例には、ステアリン酸、安息香酸、クエン酸、フマル酸、乳酸およびマレイン酸などのカルボン酸;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、クエン酸トリエチル、レシチン、トリアセチンおよびセバシン酸ジブチルなどの短鎖〜中鎖脂肪酸エステル;酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸トリメリット酸セルロースおよび酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのエステル置換セルロース系誘導体;および酸またはエステル官能化ポリメタクリレートおよびポリアクリレートが含まれる。概して、高反応性の担体および任意の賦形剤上の酸/エステル濃度は高いので、これら担体および任意の賦形剤が、製剤中のアジスロマイシンと直接接触した場合、許容し得ない高濃度のアジスロマイシンが、組成物の加工または貯蔵中に生じる。したがって、このような高反応性の担体および任意の賦形剤は、多粒子中で用いられる担体および任意の賦形剤上の酸およびエステル基の総量が低くなるように、好ましくは、より低い反応性を有する担体または任意の賦形剤と組み合わせて用いられるに過ぎない。
【0088】
許容しうる量のアジスロマイシンエステル(すなわち、約1wt%未満)を有する多粒子を得るために、担体上の酸およびエステル置換基の濃度とその多粒子中のアジスロマイシンの結晶化度との間にトレードオフ関係が存在する。許容しうる量のアジスロマイシンエステルを有する多粒子を得るためには、多粒子中のアジスロマイシンの結晶化度が大きければ大きいほど、担体の酸/エステル置換度が大きくなる。この関係は、次の数式によって定量化されることができる。
【0089】
【数1】

式中、[A]は、担体および任意の賦形剤上の酸/エステル置換基のmeq/gアジスロマイシンで表した総濃度であり、2meq/gに等しいかまたはそれ未満であり、xは、結晶性であるその組成物中のアジスロマイシンの重量分率である。担体および任意の賦形剤が一を超える賦形剤を含んでなる場合、[A]の値は、担体および任意の賦形剤を構成する全ての賦形剤上の酸/エステル置換基のmeq/gアジスロマイシンの単位で表した総濃度を意味する。
【0090】
約0.5wt%未満のアジスロマイシンエステルを有するより好ましい多粒子では、ア
ジスロマイシン、担体および任意の賦形剤は、次の数式を満たすことになる。
【0091】
【数2】

約0.2wt%未満のアジスロマイシンエステルを有するより好ましい多粒子では、ア
ジスロマイシン、担体および任意の賦形剤は、次の数式を満たすことになる。
【0092】
【数3】

約0.1wt%未満のアジスロマイシンエステルを有する最も好ましい多粒子では、ア
ジスロマイシン、担体および任意の賦形剤は、次の数式を満たすことになる。
【0093】
【数4】

前述の数式(I)〜(IV)から、組成物中の担体および任意の賦形剤の酸/エステル置換度とアジスロマイシンの結晶化度との間のトレードオフを決定することができる。
【0094】
本発明の多粒子中で用いられる担体は、一般に、多粒子の総重量を基準として、多粒子の約10wt%〜約95wt%、好ましくは、約20wt%〜約90wt%、より好ましくは、約40wt%〜約70wt%を構成するであろう。
【0095】
多粒子の物理的特性の経時変化の可能性を最小限にするためには、特に、高温で貯蔵される場合、担体は、少なくとも約40℃の温度で固体であるのが好ましい。より好ましくは、担体は、少なくとも約50℃の温度で、なおより好ましくは、少なくとも約60℃の温度で固体であるべきである。
【0096】
一つの態様において、担体は、一つまたはそれを超える任意の賦形剤と一緒に固溶体を形成し、これは、担体および一つまたはそれを超える任意の賦形剤が、熱力学的に安定な
単一の相を形成することを意味する。このような場合、担体/賦形剤混合物が少なくとも約40℃の温度で固体であるなら、少なくとも約40℃の温度で固体でない賦形剤を用いてもよい。これは、用いられる賦形剤の融点および組成物中に含まれる担体の相対量に依存する。
【0097】
別の態様において、担体および一つまたはそれを超える任意の賦形剤は、固溶体を形成せず、これは、担体および一つまたはそれを超える任意の賦形剤が、二つまたはそれを超える熱力学的に安定な相を形成することを意味する。このような場合、担体/賦形剤混合物は、多粒子を形成するのに用いられる加工温度で全て溶融してよいし、または一つの材料は固体であるが、他の一つまたは複数のものが溶融し、一つの材料がその溶融混合物中に懸濁することになってもよい。
【0098】
担体および一つまたはそれを超える任意の賦形剤が固溶体を形成しないが、例えば、具体的な制御放出プロフィールを得るのに固溶体が望まれる場合、組成物中に追加の賦形剤を含めて、担体、一つまたはそれを超える任意の賦形剤および追加の賦形剤を含んでなる固溶体を生じさせてもよい。例えば、マイクロクリスタリンワックスおよびポロキサマーを含んでなる担体を用いて所望の放出プロフィールを有する多粒子を得ることが望まれることがありうる。このような場合、マイクロクリスタリンワックスの疎水性およびポロキサマーの親水性に部分的に起因して固溶体は形成されない。ステアリルアルコールのような少量の第三の賦形剤を製剤中に含めることにより、固溶体が得られ、所望の放出プロフィールを有する多粒子をもたらすことができる。
【0099】
本発明の多粒子中で用いるのに適した担体の例には、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックスおよび蜜蝋などのワックス;グリセリルモノオレート、グリセリルモノステアレート、グリセリルパルミトステアレート、ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体、水素化植物油、グリセリルベヘネート、グリセリルトリステアレート、グリセリルトリパルミテートなどのグリセリド;ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびポリエチレングリコールなどの長鎖アルコール;およびそれらの混合物が含まれる。
【0100】
好ましくは、この担体は、16個またはそれを超える炭素原子を有する少なくと別のアルキレート置換基を有するグリセリドを含んでなる。より好ましくは、担体は、グリセリルベヘネートを含んでなる。
【0101】
別の態様において、多粒子は、非崩壊性マトリックス形態である。「非崩壊性マトリックス」により、担体の少なくとも一部分が、水性の使用環境への多粒子の導入後に溶解しないかまたは崩壊しないことを意味する。このような場合、アジスロマイシンと、存在してもよい一つまたはそれを超える担体の一部分、例えば、溶解促進剤は、溶解によって多粒子から除去される。この担体の少なくとも一部分は溶解しないかまたは崩壊しないので、使用環境が in vivo である場合は排泄され、使用環境が in vitro である場合は試験
溶液中に懸濁したままである。この側面において、担体の少なくとも一部分は、水性の使用環境で低い溶解性しか有さないのが好ましい。好ましくは、担体の少なくとも一部分の水性の使用環境中への溶解性は、約1mg/mL未満、より好ましくは、約0.1mg/
mL未満、最も好ましくは、約0.01mg/ml未満である。適する低溶解性担体の例
には、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックスおよび蜜蝋などのワックス;グリセリルモノオレート、グリセリルモノステアレート、グリセリルパルミトステアレート、グリセリルベヘネート、グリセリルトリステアレート、グリセリルトリパルミテートなどのグリセリド;およびそれらの混合物が含まれる。
【0102】
本発明の好ましい態様において、本発明のアジスロマイシン多粒子は、アジスロマイシン、担体および溶解促進剤を含んでなる。この担体および溶解促進剤は、多粒子のためのマトリックスとして、または多粒子からのアジスロマイシン放出速度を制御するために、または両方に機能する。「溶解促進剤」という用語は、多粒子中に含まれた場合に、溶解促進剤を含むことなく同量のアジスロマイシンを含有するコントロール多粒子によって得られるよりも速いアジスロマイシン放出速度をもたらす賦形剤を意味する。概して、多粒子からのアジスロマイシン放出速度は、溶解促進剤の量の増加とともに増加する。このような物質は、概して、高い水溶性を有し、しばしば、組成物中の他の賦形剤の可溶化を促進しうる界面活性剤または湿潤剤である。典型的には、多粒子中に存在する溶解促進剤の重量百分率は、多粒子中に存在する担体の重量百分率より小さい。
【0103】
本発明の多粒子は、多粒子の総重量の基づき、約20〜約75wt%のアジスロマイシン、約25〜約80wt%の担体、および約0.1〜約30wt%の溶解促進剤を含んで
なる。好ましい態様において、多粒子は、35〜55wt%のアジスロマイシン、40〜65wt%の担体、および1〜15wt%の溶解促進剤を含んでなる。
【0104】
適する溶解促進剤の例には、ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびポリエチレングリコールなどのアルコール;ポロキサマー(ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338およびポロキサマー407を含む、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー)、ドキュセート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、ポリソルベートおよびポリオキシエチレンアルキルエステルなどの界面活性剤;ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのエーテル置換セルロース系誘導体;グルコース、スクロース、キシリトール、ソルビトールおよびマルチトールなどの糖;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウムおよびリン酸カリウムなどの塩;アラニンおよびグリシンなどのアミノ酸;およびそれらの混合物が含まれるが、これに限定されるわけではない。好ましくは、溶解促進剤は界面活性剤を含んでなる。
【0105】
より好ましくは、溶解促進剤はポロキサマーを含んでなる。ポロキサマーは、酸置換基またはエステル置換基を有さないエチレンオキシドとプロピレンオキシドの一連の密接に関連したブロックコポリマーである。こういうことであるから、30wt%もの多量のポロキサマーが多粒子製剤に使用されることができ、それでも、アジスロマイシンの約0.
13meq/g未満という目標値を満たすことができる。なおより好ましくは、ポロキサマーは、本明細書中の具体例に記載されている Poloxamer 407である。
【0106】
多粒子が溶解促進剤を更に含んでなるこの態様において、担体が、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックスおよび蜜蝋などのワックス;グリセリルモノオレート、グリセリルモノステアレート、グリセリルパルミトステアレート、ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体、水素化植物油、グリセリルモノ−、ジ−またはトリベヘネート、グリセリルトリステアレート、グリセリルトリパルミテートなどのグリセリド;およびそれらの混合物から成る群より選択されるのが更に好ましい。
【0107】
多粒子中に存在するアジスロマイシンは、溶解促進剤と特に反応性であることが判明した。結果として、溶解促進剤上の酸およびエステル置換基の濃度は、アジスロマイシンエステル形成を許容しうる低レベルに保つように低く保たなければならない。
【0108】
アジスロマイシンエステルを形成する反応性の観点から、溶解促進剤は、好ましくは、組成物中に存在するアジスロマイシンの約0.13meq/g未満の濃度の酸/エステル
置換基を有する。好ましくは、溶解促進剤は、約0.10meq/gアジスロマイシン未
満、より好ましくは、約0.02meq/gアジスロマイシン未満、なおより好ましくは
、約0.01meq/g未満、そして最も好ましくは、約0.002meq/g未満の濃度の酸/エステル置換基を有する。
【0109】
低濃度の酸置換基およびエステル置換基を有することに加えて、溶解促進剤は、概して親水性であるべきである。その結果、多粒子からのアジスロマイシン放出速度は、多粒子中の溶解促進剤の濃度が増加するにつれて増加する。
【0110】
適する溶解促進剤の更なる説明およびアジスロマイシン多粒子に適切な賦形剤の選択は、本願と同時出願の米国特許出願第60/527,319号("Controlled Release Multiparticulates Formed with Dissolution Enhancers," 代理人整理番号PC25016)
に開示されている。
【0111】
より好ましい態様において、本発明の多粒子は、(a)アジスロマイシン;(b)16またはそれを超える炭素原子を有する少なくと別のアルキレート置換基を有するグリセリド担体;および(c)ポロキサマー溶解促進剤を含んでなる。これら特定の担体賦形剤の選択は、広範囲の放出速度にわたるアジスロマイシン放出速度の正確な制御を可能にする。グリセリド担体およびポロキサマーの相対量の僅かな変化は、薬剤放出速度の大きい変化をもたらす。このことは、薬剤、グリセリド担体およびポロキサマーの妥当な比率を選択することにより、多粒子からの薬剤の放出速度を正確に制御することを可能にする。これら材料は、多粒子からほとんど全部の薬剤を放出するという追加の利点を有する。このような多粒子は、本願と同時出願の米国特許出願第60/527,329号("Multiparticulate Crystalline Drug Compositions Having Controlled Release Profiles," 代理人整理番号PC25020号)に更に充分に開示されている。
【0112】
更に別の任意の賦形剤が、アジスロマイシン多粒子中に含められてもよい。例えば、多粒子からのアジスロマイシンの放出を阻害するかまたは遅らせる薬剤を担体中に含めることもできる。このような溶解阻害剤は、概して疎水性である。溶解阻害剤の例には、マイクロクリスタリンおよびパラフィンワックスなどの炭化水素ワックスが含まれる。
【0113】
賦形剤の別の有用なクラスは、多粒子を形成するのに用いられる溶融送入物の粘度を、例えば、溶融−凝結法によって調整するのに用いられる材料である。このような粘度調整用賦形剤は、概して、多粒子の総重量を基準として、多粒子の0〜25wt%を構成する。この溶融送入物の粘度は、狭い粒度分布を有する多粒子を得る場合に鍵となる変数である。例えば、スピニングディスクアトマイザーを用いる場合、溶融混合物の粘度は、少なくとも約1センチポアズ(cp)であって約10,000cp未満、より好ましくは、少
なくとも50cpであって約1000cp未満であるのが好ましい。溶融混合物が、これら好ましい範囲外の粘度を有する場合、粘度調整用担体を加えて好ましい粘度範囲内の溶融混合物を得ることができる。粘度減少用賦形剤の例には、ステアリルアルコール、セチルアルコール、低分子量ポリエチレングリコール(例えば、約1000ダルトン未満)、イソプロピルアルコールおよび水が含まれる。粘度増加用賦形剤の例には、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、高分子量ポリエチレングリコール(例えば、約5000ダルトンを超える)、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウム、糖および塩が含まれる。
【0114】
他の賦形剤を加えて、多粒子上の静電荷を減少させることができるが、このような静電防止剤の例には、タルクおよび二酸化ケイ素が含まれる。着香剤、着色剤および他の賦形剤を、それらの通常の目的のために通常の量で加えてもよい。
【0115】
多粒子およびアルカリ化剤に加えて、本発明のアジスロマイシン剤形は、一つまたはそれを超える追加の賦形剤を更に含んでよい。
例えば、界面活性剤は、その剤形中に含まれてよい。適する界面活性剤の例には、脂肪酸およびアルキルスルホネート;塩化ベンズアルコニウム(HYAMINE(登録商標)1622,Lonza, Inc., Fairlawn, New Jersey より入手可能);スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(DOCUSATE SODIUMTM,Mallinckrodt Specialty Chemicals, St. Louis, Missouri より入手可能);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(TWEEN(登録商標),ICI Americas Inc., Wilmington, Delaware より入手可能;LIPOSORB(登録商標)P−20,Lipochem Inc., Patterson New Jersey より入手可能;CAPMUL(登録商標)POE−0,Abitec Corp., Janesville, Wisconsin より入手可能)などの市販の界面活性剤;およびタウロコール酸ナトリウム、1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、レシチン、および他のリン脂質およびモノ−およびジグリセリドなどの天然界面活性剤が含まれる。このような材料は、好都合には、使用環境に投与された場合に多粒子が分散する速度を増加させるのに用いることができる。
【0116】
慣用的なマトリックス材料、充填剤、希釈剤、滑沢剤、保存剤、増粘剤、凝結防止剤、崩壊剤または結合剤も、この剤形中に含まれてよい。
マトリックス材料、充填剤または希釈剤の例には、ラクトース、マンニトール、キシリトール、微結晶性セルロース、第二リン酸カルシウムおよびデンプンが含まれる。
【0117】
崩壊剤の例には、ナトリウムデンプングリコラート、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、およびクロスポビドンとしても知られる架橋型ポリビニルピロリドンが含まれる。
【0118】
結合剤の例には、メチルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、およびグアーガムおよびトラガカントなどのガムが含まれる。
滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸が含まれる。
【0119】
保存剤の例には、亜硫酸塩(酸化防止剤)、塩化ベンズアルコニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコールおよび安息香酸ナトリウムが含まれる。
懸濁化剤または増粘剤の例には、キサンタンガム、デンプン、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよび二酸化チタンが含まれる。
【0120】
凝結防止剤または充填剤の例には、コロイド酸化ケイ素およびラクトースが含まれる。
当該技術分野において周知の賦形剤を含む他の慣用的な賦形剤を、本発明の組成物中で用いることができる。概して、顔料、滑沢剤、着香剤等のような賦形剤は、それら組成物の性状に悪影響を与えることなく、通例の目的に且つ典型的な量で用いることができる。
【0121】
一つの態様において、剤形は錠剤形態である。「錠剤」という用語は、圧縮錠、コーティング錠および当該技術分野において知られている他の形態を含む意味である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (18th Ed. 1990) を参照されたい。使用環境への投与で、錠剤は速やかに崩壊して、多粒子を使用環境中に分散させる。
【0122】
一つの態様において、錠剤は、結合剤、崩壊剤または当該技術分野において知られている他の賦形剤と混合後、圧縮力を用いて錠剤に成形された多粒子を含む。結合剤の例には
、微結晶性セルロース、デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびスクロース、グルコース、デキストロースおよびラクトースなどの糖が含まれる。崩壊剤の例には、ナトリウムデンプングリコラート、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムが含まれる。この錠剤には、使用環境中に置かれた時に二酸化炭素を発生する発泡剤(酸塩基組合せ)も含まれてよい。発生した二酸化炭素は、錠剤の崩壊を助ける。上に論じられたものなどの他の賦形剤も、錠剤中に含まれてよい。
【0123】
錠剤中に用いられる多粒子、結合剤および他の賦形剤は、錠剤の成形前に造粒されてよい。当該技術分野において周知の湿式または乾式造粒法が、その造粒法が多粒子の放出プロフィールを変化させない限り用いることができる。或いは、これら材料を、直接圧縮によって錠剤に成形してよい。
【0124】
錠剤を成形するのに用いられる圧縮力は、高い強度を有する錠剤を与えるように充分に高くあるべきであるが、錠剤中に含有される多粒子を損なうほど高すぎてはならない。概して、約3〜約10kpの硬度を有する錠剤を生じる圧縮力が望まれる。
【0125】
或いは、多層および浸透圧性のコーティング錠のような錠剤を、非圧縮法を用いて製造することもできる。一つの態様において、錠剤は、凍結乾燥法によって形成される。この方法では、多粒子を、水溶性賦形剤の水溶液または水性ペーストと混合し、型に入れる。次に、凍結乾燥によって水を除去して、多粒子を含有するきわめて多孔性の急速溶解性錠剤を生じる。このような錠剤に用いられる水溶性賦形剤の例には、ゼラチン、デキストラン、デキストリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、トレハロース、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールが含まれる。
【0126】
別の態様において、本剤形は、当該技術分野において周知のカプセル剤の形態である。Remington's Pharmaceutical Sciences (18th Ed. 1990) を参照されたい。「カプセル剤」という用語は、多粒子および任意の賦形剤が、硬質かまたは軟質の可溶性容器またはシェル中に密閉されている固体剤形を含む意味である。使用環境への投与で、このシェルが溶解しまたは崩壊して、カプセル剤の内容物を使用環境に放出する。典型的にはゼラチンから作られるゼラチン硬質カプセルは、二つの部分から成り、一方がもう一方に嵌めてある。これらカプセルは、最初に、多粒子と、上に挙げたような任意の賦形剤をブレンドすることによって作られる。これら成分を、湿式または乾式造粒技術を用いて造粒して、充填材料の流動性を改善することができる。この充填材料をカプセルの長い方の端または本体に入れることによってカプセルに充填した後キャップを嵌める。ゼラチン軟質カプセル剤については、最初に、充填材料を油または液体中に懸濁させた後、カプセルに充填することができる。
【0127】
本剤形は、丸剤の形態であってもよい。「丸剤」という用語は、結合剤および上記のような他の賦形剤と混合された多粒子を含む小さくて丸い固体剤形を含む意味である。使用環境への投与で、丸剤は速やかに崩壊して、多粒子をそこに分散させる。
【0128】
別の態様において、多粒子剤形は、多粒子および上記のような他の賦形剤を含む粉末剤または顆粒剤の形態であり、その後、水性投薬用ビヒクルを含む液状投薬用ビヒクル中に懸濁された後に投薬される。このような剤形は、いくつかの方法によって製造することができる。一つの方法では、粉末剤を容器に入れ、一定量の水などの液体をその容器に加える。次に、その容器を混合し、撹拌し、または振とうさせて、その剤形を水中に懸濁させる。別の方法では、多粒子および投薬用ビヒクル賦形剤を、二つまたはそれを超える別々のパッケージで供給する。最初に、投薬用ビヒクル賦形剤を水などの液体中に溶解または懸濁させた後、多粒子をそのビヒクル溶液に加える。或いは、二つまたはそれを超える個
々のパッケージ中の投薬用ビヒクル賦形剤および多粒子を、最初に容器に加え、その容器に水を加え、そして容器を混合または撹拌して懸濁液を形成することができる。
【0129】
水は、本発明の剤形を形成するのに用いることができる液体の一例である。他の液体を用いてもよく、それらは本発明の範囲内にあるものとする。適する液体の例には、コーヒー、茶、牛乳および各種ジュース類などの飲料が含まれる。更に含まれるのは、剤形を形成するのに役立つように、界面活性剤、増粘剤、懸濁化剤等を含む他の賦形剤と混合された水である。
【0130】
多粒子剤形は、投薬用ストローまたは他のデバイスであって、患者がそのデバイスを介して水または他の液体を少量ずつ飲むことを可能にするような、デバイス中に含有された粉末または顆粒剤形と液体を混合するように設計されているデバイスの形態であってもよい。
【0131】
多粒子剤形は、ペースト、スラリーまたは懸濁液形態であってもよい。
一つの態様において、多粒子剤形は、アジスロマイシン多粒子、アルカリ化剤、そして甘味剤、凝結防止剤、増粘剤および着香剤より選択される一つまたはそれを超える任意の賦形剤を含んでなる。好ましくは、多粒子剤形は、甘味剤、凝結防止剤、増粘剤および着香剤を更に含んでなる。
【0132】
本発明のなおより好ましい態様において、アジスロマイシン多粒子は、アルカリ化剤TSPと一緒に投与される。TSPの量は、好ましくは、少なくとも約200mgである。より好ましくは、TSPの量は、約300mg〜約400mgである。本発明の別の態様において、TSPおよび水酸化マグネシウムはどちらも、アルカリ化剤として用いられる。用いられる水酸化マグネシウムの量は、少なくとも約100mg、好ましくは、約200mg〜約300mgである。
【0133】
更に好ましい態様において、アジスロマイシン剤形は、約45〜約55wt%のアジスロマイシン、約43〜約50wt%のグリセリルベヘネートおよび約2〜約5wt%のポロキサマーを含んでなるアジスロマイシン多粒子と、約300〜約400mgのTSPおよび約200〜約300mgの水酸化マグネシウムを含んでなるアルカリ化剤とを含んでなる。
【0134】
なおより好ましい態様において、アジスロマイシン剤形は、約50wt%のアジスロマイシン二水和物、約46〜約48wt%の Compritol(登録商標)888ATOおよび約2〜約4wt%の Poloxamer 407を含んでなるアジスロマイシン多粒子と、約300
〜約400mgのTSPおよび約200〜約300mgの水酸化マグネシウムを含んでなるアルカリ化剤とを含んでなる。より好ましくは、この剤形は、約47wt%の Compritol(登録商標)888ATOおよび約3wt%の Poloxamer 407を含んでなる。Compritol(登録商標)888ATOおよび Poloxamer 407は、以下の実施例で更に説明さ
れる。
【0135】
本発明の多粒子は、アジスロマイシンおよび担体を含有する、そのアジスロマイシンに望まれるサイズおよび放出速度特性を有する粒子を生じるいずれか既知の方法によって製造することができる。このような多粒子を形成するのに好ましい方法には、溶融−凝結および吹付−凝結などの熱をベースとする方法(thermal-based process);押出球状化、
湿式造粒、吹付コーティングおよび噴霧乾燥などの液体をベースとする方法(liquid-based process);および乾式造粒および溶融造粒などの他の造粒法が含まれる。
【0136】
これら多粒子は、概して、約5000μm未満、好ましくは、約3000μm未満、最
も好ましくは、約1000μm未満の平均直径を有する。好ましい態様において、これら多粒子の平均直径は、約40〜約3000μm、好ましくは、約50〜約1000μm、最も好ましくは、約100〜約300μmである。多粒子の直径は、多粒子からのアジスロマイシンの放出速度を調整するのに用いることができるということに注目されたい。概して、多粒子の直径が小さいほど、特定の多粒子製剤からのアジスロマイシンの放出速度は速いであろう。これは、溶解用基剤と接触している全表面積が、多粒子の直径が減少するにつれて増加するためである。したがって、多粒子の平均直径の調整を用いて、アジスロマイシン放出プロフィールを調整することができる。
【0137】
これら多粒子は、(a)アジスロマイシンおよび薬学的に許容しうる担体を含んでなる溶融混合物を形成し;(b)工程(a)の溶融混合物を微粒化手段(atomizing means)
に送って、その溶融混合物から液滴を形成し;そして(c)工程(b)からの液滴を凝結させて多粒子を形成するという工程を含んでなる溶融−凝結法によって製造することができる。
【0138】
この溶融−凝結法のような熱をベースとする方法を用いて本発明の多粒子を製造する場合、アジスロマイシンへの熱伝達を最小限にして、処理中のアジスロマイシンの有意な熱分解を防止する。担体がアジスロマイシンの融点より低い融点を有することも好ましい。例えば、アジスロマイシン二水和物は113℃〜115℃の融点を有する。したがって、アジスロマイシン二水和物を本発明の多粒子中に用いる場合、担体は約113℃未満である融点を有するのが好ましい。本明細書中で用いられる「担体の融点」または「Tm」と
いう用語は、担体が、多粒子中に存在するいずれか任意の賦形剤および薬剤を含有する場合に、その結晶状態から液体状態へと遷移する温度を意味する。担体が結晶性でない場合、「担体の融点」は、担体が、圧力、剪断力および遠心力などの力を受けた場合に、液体状態の結晶性材料と同様にそれが流動するであろうという意味で、流動性になる温度を意味する。
【0139】
溶融混合物中のアジスロマイシンは、溶融混合物中に溶解してよいし、溶融混合物中に分布した結晶性アジスロマイシンの懸濁液であってよいし、またはこのような状態または両者の間にある状態のいずれかの組合せであってよい。好ましくは、この溶融混合物は、溶融担体中に溶融しているかまたは溶解しているアジスロマイシンの部分が比較的低く保持されているところの、溶融担体中の結晶性アジスロマイシンの均一懸濁液を含んでなる。好ましくは、総アジスロマイシンの約30wt%未満が、溶融担体中に溶融または溶解している。このアジスロマイシンは、結晶性二水和物として存在するのが好ましい。
【0140】
したがって、「溶融混合物」により、アジスロマイシンおよび担体の混合物が、その混合物を液滴に形成するかまたは微粒化させることができるように充分にその混合物が流動性になるように充分に加熱されていることが意味される。溶融混合物の微粒化は、下記の微粒化法のいずれかを用いて行うことができる。概して、その混合物は、遠心またはスピニングディスクアトマイザーによって加えられるような、圧力、剪断力および遠心力などの一つまたはそれを超える数の力を受けた場合に、それが流動するという意味で溶融している。したがって、アジスロマイシン/担体混合物は、その担体およびアジスロマイシンの一部分が流動性になった結果、その混合物が微粒化され得るほど充分に全体として流動性である場合に、「溶融している」と考えられることができる。概して、溶融混合物の粘度が、約20,000cp未満、好ましくは、約15,000cp未満、より好ましくは、約10,000cp未満である場合、混合物は微粒化に充分なほど流動性である。担体が
充分に結晶性であるために比較的鋭い融点を有する場合に一つまたはそれを超える担体成分の融点を超えて加熱されたとき、または、担体成分が非晶質である場合に一つまたはそれを超える担体成分の軟化点を超えて混合物が加熱されたとき、しばしば、その混合物は溶融する。したがって、溶融混合物は、流動性マトリックス中における固体粒子の懸濁液
であることが多い。一つの好ましい態様において、溶融混合物は、実質的に流動性である担体中に懸濁した実質的に結晶性のアジスロマイシン粒子の混合物を含んでなる。このような場合、アジスロマイシンの一部分がその流動担体中に溶解しても、担体の一部分が固体のままであってもよい。
【0141】
「溶融」という用語は、具体的には、ある結晶性材料の融点で起こる結晶状態から液体状態への遷移を意味し、そして「溶融している」という用語は、本明細書中で用いられるように、液体状態にあるそのような結晶性材料を意味するが、これら用語は更に広く用いられ、「溶融」の場合、いずれかの材料または材料混合物が、液体状態の結晶性材料と同様にポンプ輸送または微粒化することができるという意味で流動性になるように充分にそれを加熱することを意味する。同様に、「溶融している」は、このような流動状態にあるいずれかの材料または材料混合物を意味する。
【0142】
事実上、あらゆる方法を用いて溶融混合物を形成することができる。一つの方法は、担体をタンク中で溶融させ、アジスロマイシンをその溶融担体に加えた後、混合物を混合して、確実にアジスロマイシンをそこで均一に分散させることを行う。或いは、アジスロマイシンおよび担体を両方ともタンクに加えて、その混合物を加熱および混合して、溶融混合物を形成してもよい。担体が二つ以上の材料を含んでなる場合、溶融混合物は、2個のタンクを用い、第一担体を一つのタンク中で溶融させ第二担体をもう一つで溶融させて製造することができる。アジスロマイシンをこれらタンクの一方に加え、上記のように混合する。別の方法において、連続撹拌されるタンクシステムを用いることができるが、この場合、アジスロマイシンおよび担体を、連続混合用の手段を装備した加熱タンクに加え、同時に、溶融混合物を連続的にタンクから取り出す。
【0143】
溶融混合物は、Dyno(登録商標)Mill などの連続ミルを用いて形成することもできる
。アジスロマイシンおよび担体は、典型的には、固体形態で連続ミルに送入され、0.2
5〜5mm直径のビーズなどの粉砕媒体が入っている粉砕チャンバーに入る。この粉砕チャンバーは、典型的には、ジャケット付きであるので、加熱または冷却液をそのチャンバーの周りに循環させて、その温度を制御することができる。溶融混合物が粉砕チャンバー内で形成され、そして粉砕媒体を除去するための分離器を通ってそのチャンバーを出る。
【0144】
溶融混合物を形成する特に好ましい方法は、押出機による。「押出機」とは、固体および/または液体(例えば、溶融)送入物から、熱および/または剪断力によって溶融押出物を生じるかおよび/または均一混合された押出物をもたらす装置または装置の集合を意味する。このような装置には、一軸スクリュー押出機;同時回転、二重反転、かみ合いおよび非かみ合い押出機を含む二軸スクリュー押出機;多軸スクリュー押出機;加熱シリンダーと、溶融送入物を押出すためのピストンから成るラム押出機;溶融送入物を同時に加熱し且つポンプ輸送する、概して二重反転の加熱ギヤポンプから成るギヤポンプ押出機;およびコンベヤー押出機が含まれるが、これに限定されるわけではない。コンベヤー押出機は、スクリューコンベヤーまたは空気コンベヤーのような、固体および/または粉末の送入物を輸送するコンベヤー手段とポンプを含む。これらコンベヤー手段の少なくとも一部分を、溶融混合物を生じるように充分に高温に加熱する。溶融混合物は、溶融混合物をアトマイザーに向かわせるポンプに向かわせる前に、蓄積タンクに向けられてもよい。場合により、ポンプの前または後に、インラインミキサーを用いて、溶融混合物が実質的に均一になるのを確実にする。これら押出機の各々において、溶融混合物を混合して均一混合押出物を形成する。このような混合は、混合要素、混練要素、および逆流による剪断混合を含む種々の機械的手段および加工手段によって行うことができる。したがって、このような装置では、組成物を押出機に送入し、そこで溶融混合物がつくられ、それはアトマイザーに向けられてもよい。
【0145】
溶融混合物がいったん形成されたら、それを破壊して小さい液滴にするアトマイザーに送る。事実上、加圧容器またはピストンポットなどの種々のタイプの空気圧装置とポンプの使用を含むあらゆる方法を用いて、溶融混合物をアトマイザーに送ることができる。押出機を用いて溶融混合物を形成する場合、その押出機自体を用いて溶融混合物をアトマイザーに送ることができる。典型的には、溶融混合物をアトマイザーに送りつつ、その混合物を高温に維持して凝固を妨げ且つ流動性を保持する。
【0146】
一般に、微粒化は、(1)「圧力」または一流体ノズルによる;(2)二流体ノズルによる;(3)遠心またはスピニングディスクアトマイザーによる;(4)超音波ノズルによる;および(5)力学的振動ノズルによることを含むいくつかの方法の一つで行われる。具体的な粒度を得るためのスピニングディスクアトマイザーの使用方法を含む微粒化法の詳細な説明は、Lefebvre, Atomization and Sprays (1989) または Perry's Chemical Engineers' Handbook (7th Ed. 1997) に見出されうる。
【0147】
溶融混合物がいったん微粒化されたら、それら液滴を、典型的には、それら液滴の凝固温度より低い温度でガスまたは液体と接触させることによって凝結させる。典型的には、液滴を約60秒未満で、好ましくは、約10秒未満で、より好ましくは、約1秒未満で凝結させることが望まれる。しばしば、周囲温度での凝結が、過剰のアジスロマイシンエステル形成を免れるのに充分に速い液滴の凝固をもたらす。しかしながら、凝結工程は、しばしば、多粒子を簡単に捕集できるように密閉空間で行われる。このような場合、凝結用基剤(ガスまたは液体)の温度が、液滴が密閉空間中に導入される時間とともに増加してアジスロマイシンエステル形成をもたらすであろう。したがって、冷却用ガスまたは液体を密閉空間に循環させて一定の凝結用温度を維持することが多い。用いられる担体が、アジスロマイシンときわめて反応性であるために、アジスロマイシンを溶融担体に暴露する時間を制限すべきである場合は、冷却用ガスまたは液体を周囲温度より低く冷却して、急速凝結を促し、それによってアジスロマイシンエステルの形成を許容しうるレベルに保持することができる。
【0148】
適する熱をベースとする方法は、本願と同時出願の"Improved Azithromycin Multiparticulate Dosage Forms by Melt-Congeal Processes" という表題の代理人整理番号PC25015の米国特許出願および "Extrusion Process for Forming Chemically Stable Multiparticulates" という表題の代理人整理番号PC25122の米国特許出願に詳細に
開示されている。
【0149】
本多粒子は、(a)アジスロマイシン、薬学的に許容しうる担体および液体を含んでなる混合物を形成し;(b)工程(a)の混合物から粒子を形成し;そして(c)工程(b)の粒子から液体の実質的な部分を除去して多粒子を形成する工程を含む液体をベースとする方法によって製造することもできる。好ましくは、工程(b)は、(i)混合物を微粒化する、(ii)シードコアを混合物でコーティングする、(iii)混合物を湿式造粒す
る、および(iv)混合物を押出して固体塊にした後にその塊を球状化または微粉砕する、ことから選択される方法である。
【0150】
好ましくは、液体は、約150℃未満の沸点を有する。液体をベースとする方法を用いた多粒子の形成に適した液体の例には、水;メタノール、エタノール、各種プロパノール異性体および各種ブタノール異性体などのアルコール;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタンおよび鉱油などの炭化水素;メチル tert−ブチ
ルエーテル、エチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル;クロロホルム、二塩化メチレンおよび二塩化エチレンなどのクロロカーボン;テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;N−メチルピロリジノン;N,N−ジメチルアセ
トアミド;アセトニトリル;およびそれらの混合物が含まれる。
【0151】
一つの態様において、粒子は、混合物の小さい液滴を形成する適当なノズルを用いた微粒化によって形成され、これらは、液体の蒸発のための強い駆動力が存在する乾燥チャンバー中に噴霧されて、固体で概して球状の粒子をもたらす。液体の蒸発のための強い駆動力は、概して、乾燥チャンバー内の液体の分圧を、それら粒子の温度において液体の蒸気圧より充分に低く維持することによって与えられる。これは、(1)乾燥チャンバー内の圧力を部分真空(例えば、0.01〜0.5atm)に維持すること;または(2)温乾燥用ガスと液滴を混合すること;または(3)(1)と(2)の双方によって達せられる。噴霧乾燥法および噴霧乾燥装置は、Perry's Chemical Engineers' Handbook, pages 20-54 to 20-57 (6th Ed. 1984) に概略的に記載されている。
【0152】
別の態様において、粒子は、シードコア上に液体混合物をコーティングすることによって形成される。これらシードコアは、デンプン、微結晶性セルロース、糖またはワックスなどのあらゆる適する材料から、溶融−または吹付−凝結、押出/球状化、造粒、噴霧乾燥等のようないずれか既知の方法によって製造することができる。
【0153】
液体混合物は、パンコーター(例えば、 Freund Corp. of Tokyo, Japan より入手可能な Hi-Coater、Manesty of Liverpool, U.K. より入手可能な Accela-Cota)、流動層コ
ーター(例えば、Glatt Air Technologies, Inc. of Ramsey, New Jersey および Niro Pharma Systems of Bubendorf, Switzerland より入手可能な Wurster コーターまたはト
ップスプレーコーター)およびロータリーグラニュレーター(例えば、Freund Corp より入手可能なCF−Granulator)のような、薬学技術分野において知られているコーティング装置を用いて、このようなシードコア上に噴霧することができる。
【0154】
別の態様において、液体混合物を湿式造粒して、粒子を形成することができる。造粒は、比較的小さい粒子を、しばしば、薬学分野において結合剤としても知られる担体の助けによって、より大きい顆粒状粒子にする方法である。湿式造粒では、ある液体を用いて、粒子間の分子間力を増加させて、顆粒の「強度」と称される顆粒保全性の増強をもたらす。しばしば、顆粒の強度は、造粒工程中の粒子間の間隙空間中に存在する液体の量によって決定される。これの場合、理想的には0の接触角で、液体が粒子を湿潤させることが重要である。造粒されている粒子の大部分は、きわめて親水性のアジスロマイシン結晶であるので、この液体は、この判定基準を満たすようにかなり親水性である必要がある。したがって、有効な湿式造粒用液体は、親水性である傾向もある。有効な湿式造粒用液体であることが判明した液体の例には、水、エタノール、イソプロピルアルコールおよびアセトンが含まれる。好ましくは、湿式造粒用液体は、pH7またはそれを超える水である。
【0155】
いくつかのタイプの湿式造粒法を用いて、アジスロマイシン含有多粒子を形成することができる。例には、流動層造粒、回転造粒および高剪断ミキサーが含まれる。流動層造粒では、空気を用いて、流動化チャンバー中でアジスロマイシンおよび/または担体の粒子を撹拌するまたは「流動化」する。次に、この流動層中に液体を噴霧して、顆粒を形成する。回転造粒では、水平ディスクが高速で回転して、造粒容器の壁にアジスロマイシンおよび/または担体の粒子の回転「ロープ」を形成する。このロープ中に液体を噴霧して、顆粒を形成する。高剪断ミキサーは、アジスロマイシンおよび/または担体の粒子を混合する撹拌機または羽根車を含有する。粒子の移動層中に液体を噴霧して、顆粒を形成する。これらの方法において、担体の全部または一部分を液体中に溶解させた後、液体を粒子上に噴霧することができる。したがって、これら方法では、液体混合物を形成する工程および液体混合物から粒子を形成する工程が同時に行われる。
【0156】
別の態様において、粒子は、液体混合物を押出すことにより固体塊に形成した後、その
塊を球状化または微粉砕する。この方法では、ペースト様プラスチック懸濁液形態である液体混合物を、多孔板またはダイを通して押出して、長い固体棒の形態であることが多い固体塊を形成する。次に、この固体塊を微粉砕して多粒子を形成する。一つの態様において、乾燥工程を介在させ又は介在させることなく、この固体塊を、それを破壊して多粒子の球、長球または丸い棒にするところの、突起を有する回転ディスク上に置く。次に、そのように形成された多粒子を乾燥させて残留する液体を除去する。この方法は、時々、薬学技術分野において、押出/球状化法と称される。
【0157】
粒子がいったん形成されたら、液体の一部分を、典型的には、乾燥工程で除去し、かくして、多粒子を形成する。好ましくは、少なくとも80%の液体を、より好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも95%の液体を、乾燥工程中に粒子から除去する。
【0158】
適する液体をベースとする方法は、本願と同時出願の、"Improved Azithromycin Multiparticulate Dosage Forms by Liquid-Based Processes" という表題の米国特許出願第60/527,405号、代理人整理番号PC25018号に更に充分に開示されている。
【0159】
多粒子は、(a)アジスロマイシンおよび薬学的に許容しうる担体を含んでなる固体混合物を形成し;そして(b)その固体混合物を造粒して多粒子を形成する工程を含んでなる造粒法によって製造することもできる。このような造粒法の例には、双方とも当該技術分野において周知の乾式造粒および溶融造粒が含まれる。Remington's Pharmaceutical Sciences (18th Ed. 1990) を参照されたい。
【0160】
乾式造粒法の一例は、ローラー圧縮である。ローラー圧縮法では、固体混合物をローラーの間で圧縮する。ローラーは、得られた圧縮材料が所望の直径の小さいビーズまたはペレット形態であるように設計することができる。或いは、圧縮材料は、当該技術分野において周知の方法を用いて多粒子へと微粉砕することができるリボン形態である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (18th Ed. 1990) を参照されたい。
【0161】
溶融造粒法の場合、担体を加熱するかまたは溶融する性能を有するグラニュレーターに固体混合物を送り込む。この方法で用いるのに適した装置には、溶融−凝結法について上に記載されたもののような、高剪断グラニュレーターおよび一軸または多軸スクリュー押出機が含まれる。溶融造粒法では、固体混合物をグラニュレーター中に入れ、固体混合物が凝集するまで加熱する。次に、固体混合物を、所望の粒度に達するまで混練または混合する。次に、そのように形成された顆粒を冷却し、グラニュレーターから取り出し、所望のサイズ画分に篩い分け、それによって多粒子を形成する。
【0162】
多粒子中のアジスロマイシンは、非晶質または結晶質でありうるが、実質的な部分のアジスロマイシンは、結晶性、好ましくは、結晶性二水和物であるのが好ましい。「実質的な部分」とは、アジスロマイシンの少なくとも80%が結晶性であることを意味する。結晶形態は、向上した化学的および物理的安定性を有する多粒子を生じる傾向があるので好ましい。多粒子中のアジスロマイシンの結晶化度は、粉末X線回折(PXRD)分析を用いて決定される。例示的な手順において、PXRD分析は、Bruker AXS D8 Advance 回折計で行うことができる。この分析では、約500mgの試料を Lucite 試料カップに充填し、そして顕微鏡スライドグラスを用いて試料表面を平滑にして、試料カップの頂部のレベルであるところの一貫して平滑な試料表面を与える。試料を、φ面において30rpmの速度で回転させて、結晶配向作用を最小限にする。X線源(S/B KCuα,λ=1.54Å)を、45kVの電圧および40mAの電流で作動させる。各々の試料の
データを、連続検出器走査モードにおいて約12秒/ステップの走査速度および0.02
°/ステップのステップサイズで約20〜約60分間にわたって集める。回折図は、10
°〜16°の2θ範囲にわたって集める。
【0163】
試験試料の結晶化度は、次のような検量標準との比較によって決定する。検量標準は、20wt%/80wt%のアジスロマイシン/担体と80wt%/20wt%のアジスロマイシン/担体の物理的混合物から成る。各々の物理的混合物を、Turbular ミキサーで
約15分間一緒にブレンドする。計測器ソフトウェアを用いて、回折曲線下面積を、直線ベースラインを用いて10°〜16°の2θ範囲にわたって積分する。この積分範囲には、担体関連ピークを除外する一方で、できるだけ多くのアジスロマイシン特異的ピークが含まれる。更に、約10°2θでの大きいアジスロマイシン特異的ピークは、その積分面積における走査から走査への大きいバラツキに起因して省かれる。結晶性アジスロマイシン%の回折曲線下面積に対する直線検量線を、検量標準から作成する。次に、試験試料の結晶化度を、これら検量結果およびその試験試料の曲線下面積を用いて決定する。結果はアジスロマイシン結晶化度(/結晶重量)の平均%として出される。
【0164】
熱をベースとする方法および液体をベースとする方法による多粒子の形成中にアジスロマイシンの結晶形態を維持する一つの鍵は、組成物が接触する担体、雰囲気またはガス中の水またはいずれかの溶媒和物溶媒の高活性を維持することである。水または溶媒の活性は、結晶状態にある場合と同等であるまたはそれを超えるべきである。これは、アジスロマイシンの結晶形態中に存在する水または溶媒が、確実にその雰囲気と平衡した状態のままであるようにし、したがって、水和水または溶媒和溶媒の損失を阻止することになる。例えば、多粒子を形成する方法が、結晶性アジスロマイシン、例えば、結晶性二水和物を(例えば、溶融−または吹付−凝結法の際に)高温に暴露することを必要とする場合、そのアジスロマイシンの近くの雰囲気は、アジスロマイシン結晶からの水和水の損失を制限するために、かくして、アジスロマイシンの結晶形態の変化を制限するために、高湿度で維持されるべきである。
【0165】
必要な湿度レベルは、結晶状態にある水の活性と同等のまたはそれを超えるものである。これは、実験的に、例えば、動的蒸気収着装置を用いて決定することができる。この試験では、結晶性アジスロマイシンの試料をチャンバー中に入れ、一定の温度および相対湿度に平衡させる。次に、その試料の重量を記録する。次に、チャンバー中の雰囲気の相対湿度を減少させながら、その試料の重量を追跡する。チャンバー中の相対湿度が、結晶状態にある水の活性と同等のレベルより下に減少した時、その試料は、水和の水が失われるにつれて、重量を失い始める。したがって、アジスロマイシンの結晶状態を維持するには、アジスロマイシンが重量を失い始めるときの相対湿度またはそれを超える相対湿度を維持すべきである。類似の試験を用いて、アジスロマイシンの結晶性溶媒和物形態を維持するのに必要な溶媒蒸気の適切な量を決定することができる。
【0166】
二水和物形のような結晶性アジスロマイシンを、ある溶融担体に加える場合、そのプロセス温度での溶融担体中への水の溶解度の30〜100wt%のオーダーの少量の水をその担体に加えて、アジスロマイシン二水和物結晶形態の損失を阻止する充分な水が確実に存在ようにしてもよい。
【0167】
同様に、液体をベースとする方法を用いて組成物を形成する場合、その液体は、水和結晶性アジスロマイシンからの水の損失を阻止する充分な水(例えば、液体中の水の溶解度の30〜100wt%)を含有すべきである。更に、その液体を除去するための乾燥工程中のアジスロマイシン近辺の雰囲気は、水の損失を阻止することによって結晶性二水和物形態が維持されるように充分に湿潤しているべきである。概して、処理温度が高いほど、アジスロマイシンの水和形態または溶媒和形態を維持するためにアジスロマイシンが暴露される担体、雰囲気またはガス中の水蒸気または溶媒の必要濃度は高くなる。
【0168】
多粒子を形成しながらアジスロマイシンの結晶形態を維持する方法は、本願と同時出願の米国特許出願第60/527,316号("Method for Making Pharmaceutical Multiparticulates," 代理人整理番号PC25021号)に更に充分に開示されている。
【0169】
本発明の多粒子は、多粒子の薬剤結晶化度および/または安定性を向上させるために後処理されてもよい。一つの態様において、多粒子が、アジスロマイシンおよび担体を含んでなり、その担体が、多粒子中にあり且つアジスロマイシンおよび任意の賦形剤を含有する場合、℃で表されるTmの融点を有する。これら多粒子は、形成後、(i)多粒子を、少なくとも35℃であるが(Tm℃−10℃)未満の温度に加熱すること、および(ii)多粒子を易動性増強剤に暴露することの少なくとも一つによって処理される。このような後処理工程は、多粒子中の薬剤結晶化度の増加と、典型的には、多粒子の化学的安定性、物理的安定性および溶解安定性の少なくと別の改善をもたらす。後処理法は、本願と同時出願の米国特許出願第60/527,245号("Multiparticulate Compositions with Improved Stability," 代理人整理番号PC11900号)に更に充分に開示されている。
【0170】
好ましくは、アジスロマイシン剤形が、約45〜約55wt%のアジスロマイシン、約43〜約50wt%のグリセリルベヘネートおよび約2〜約5wt%のポロキサマーを含んでなるアジスロマイシン多粒子と、約300〜約400mgのTSPを含んでなるアルカリ化剤とを含んでいる場合、そのアジスロマイシン多粒子は、それらを約40℃の温度で約75%の相対湿度で維持することによって後処理されても、40℃に維持された容器中において水と一緒に2日間またはそれを超えて密封されてもよい。この剤形は、約200〜約300mgの水酸化マグネシウムを更に含んでなるのがより好ましい。
【0171】
より好ましくは、アジスロマイシン剤形が、約50wt%のアジスロマイシン二水和物、約46〜約48wt%の Compritol(登録商標)888ATOおよび約2〜約4wt%の Lutrol(登録商標)F127NFを含んでなるアジスロマイシン多粒子と、約300
〜約400mgのTSPを含んでなるアルカリ化剤とを含んでなる場合、そのアジスロマイシン多粒子は、約40℃の温度で約75%の相対湿度でそれらを維持することによって後処理されるか、または40℃に維持された容器中において水と一緒に約5日間〜約3週間密封される。この剤形は、約200〜約300mgの水酸化マグネシウムを更に含んでなるのがより好ましい。
【0172】
最も好ましくは、アジスロマイシン剤形が、約50wt%のアジスロマイシン二水和物、約47wt%の Compritol(登録商標)888ATOおよび約3wt%の Lutrol(登
録商標)F127NFを含んでなるアジスロマイシン多粒子を含んでいる場合、そのアジスロマイシン多粒子は、約40℃の温度で約75%の相対湿度でそれらを維持することによって後処理されるか、または、40℃に維持された容器中で水と一緒に約10日間またはそれを超えて密封される。
【0173】
好ましくは、多粒子中のアジスロマイシンエステルの濃度は、多粒子中に存在するアジスロマイシンの総量を基準として、約1wt%未満、より好ましくは、約0.5wt%未
満、より好ましくは、約0.2wt%未満、最も好ましくは、約0.1wt%未満である。
【0174】
アジスロマイシンエステルは、多粒子形成工程中に、仕上がり剤形の製造に必要な他の処理工程中に、または製造後であるが投薬前の貯蔵中に形成されることがありうる。アジスロマイシン剤形は、投薬前に2年間までまたはなお一層長く貯蔵されることがありうるので、貯蔵剤形中のアジスロマイシンエステルの量は、投薬前に上の値を超えないのが好ましい。
【0175】
エステル形成を減少させる方法は、本願と同時出願の、共通に譲渡された米国特許出願
第60/527,244号("Improved Azithromycin Multiparticulate Dosage Forms by
Melt-Congeal Processes," 代理人整理番号PC25015号)、同第60/527,3
19号("Controlled Release Multiparticulates Formed with Dissolution Enhancers," 代理人整理番号PC25016号)および同第60/527,405号("Improved Azithromycin Multiparticulate Dosage Forms by Liquid-Based Processes," 代理人整理番号PC25018号)に、より詳細に記載されている。
【0176】
本発明は、更に、アジスロマイシンでの治療に応答する疾患または状態を治療する方法であって、このような治療を必要としている哺乳動物、好ましくは、ヒトに、治療的有効量のアジスロマイシンおよび有効量のアルカリ化剤を投与することを含んでなる方法を提供する。このアジスロマイシンは、やはり多粒子形態であるのが好ましい。
【0177】
「有効量のアジスロマイシン」という用語は、本発明によって投与された場合に、哺乳動物における細菌または原生動物感染の始まりを阻止するか、その症状を軽減するか、その進行を止めるか、またはそれを排除する量のアジスロマイシンを意味する。
【0178】
好ましい態様において、本発明の医薬剤形は、一つまたは複数の細菌感染症または原生動物感染症を治療するのに用いられる。細菌感染症または原生動物感染症に関する場合、「治療する」という用語は、細菌感染症または原生動物感染症を治癒させること、その症状を減少させること、またはその進行を遅らせることを含む、その感染症を治療または予防することを意味する。
【0179】
本明細書中で用いられる「細菌感染症または原生動物感染症」という用語には、特に断らない限り、哺乳動物で認められる細菌感染症および原生動物感染症、更には、本発明の化合物などの抗生物質を投与することによって治療または予防することができる細菌感染症および原生動物感染症に関連した障害が含まれる。このような細菌感染症および原生動物感染症、およびこのような感染に関連した障害には、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、モラクセラ・カタラリス(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)またはペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)種による感染に関連した肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、扁桃炎および乳様突起炎;化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、C群およびG群連鎖球菌、クロストリジウム・ジフテリア(Clostridium diptheriae)またはアクチノバチルス・ヘモリティクム(Actinobacillus haemolyticum)による感染に関
連した咽頭炎、リウマチ熱および糸球体腎炎;肺炎マイコプラスマ(Mycoplasma pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae またはクラミジア・ニユーモニエ(Chlamydia pneumoniae)による感染に関連した気道感染症;Staphylococcus aureus、コアグラーゼ陽性ブ
ドウ球菌(すなわち、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、S.ヘモリティクス(hemolyticus)等)、Streptococcus pyogenes、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、連鎖球菌C群〜F群(マイニュートコロニー連鎖球菌)、ビリダ
ンス連鎖球菌、コリネバクテリウム・ミヌティシマム(Corynebacterium minutissimum)、クロストリジウム属(Clostridium)種またはバルトネラ・ヘンセレ(Bartonella henselae)による感染に関連した未併発性の皮膚および軟組織感染症、膿瘍および骨髄炎、および産褥熱;スタフィロコッカス・サプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)またはエンテロコッカス属(Enterococcus)種による感染に関連した未併発性の急性尿路感染症;尿道炎および子宮頸管炎;およびトラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、デュクレー菌(Haemophilus ducreyi)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ウレアプラスマ・ウレアリティクム(Ureaplasma urealyticum)または淋菌(Neisseria gonorroeae)による感染に関連した性感染病;S.aureus(食中毒およびトキシックショック症候群)またはA群、B群およびC群連鎖球菌による感染に関連した毒素疾患;
ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)による感染に関連した潰瘍;回帰熱ボレ
リア(Borrelia recurrentis)による感染に関連した全身熱性症候群;ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)による感染に関連したライム病;Chlamydia trachomatis、Neisseria gonorrhoeae、S.aureus、S.pneumoniae、S.pyogenes、H.influenzae またはリステリア属(Listeria)種による感染に関連した結膜炎、角膜炎および
涙嚢炎;鳥型結核菌(Mycobacterium avium)またはミコバクテリウム・イントラセルレ
ア(Mycobacterium intracellulare)による感染に関連した播種性鳥型結核菌複合体(MAC)病;カンピロバクター・ジジュニ(Campylobacter jejuni)による感染に関連した胃腸炎;クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)種による感染に関連した腸内原生
動物;ビリダンス連鎖球菌による感染に関連した歯原性感染症;百日咳菌(Bordetella pertussis)による感染に関連した持続性咳;ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)
またはバクテロイデス属(Bacteroides)種による感染に関連したガス壊疽;および Helicobacter pylori または Chlamydia pneumoniae による感染に関連したアテローム性動脈硬化症、が含まれるが、これに限定されるわけではない。動物において治療するまたは予防することができる細菌感染症および原生動物感染症、およびこのような感染に関連した障害には、P.ヘム(P. haem.)、P.マルトシダ(P. multocida)、マイコプラスマ・ボビス(Mycoplasma bovis)またはボルデテラ属(Bordetella)種による感染に関連したウシ呼吸病;大腸菌(E. coli)または原生動物(すなわち、コクシジウム、クリプトス
ポリジウム等)による感染に関連したウシ腸疾患;Staph. aureus、ストレプトコッカス
・ウベリス(Strep. uberis)、Strep. agalactiae、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Strep. dysgalactiae)、クレブシエラ属(Klebsiella)種、コリネバクテリウ
ム属(Corynebacterium)または Enterococcus 種による感染に関連した乳牛乳房炎;A
.プレウロ(A. pleuro)、P.multocida またはマイコプラスマ属(Mycoplasma)種に
よる感染に関連したブタ呼吸病;E.coli、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia
intracellularis)、サルモネラ属(Salmonella)またはセルプリナ・ヒオジイスインテリエ(Serpulina hyodyisinteriae)による感染に関連したブタ腸疾患;フゾバクテリウ
ム属(Fusobacterium)種による感染に関連したウシ趾間腐爛;E.coli による感染に関連したウシ子宮炎;壊死桿菌(Fusobacterium necrophorum)またはバクテロイデス・ノ
ドスス(Bacteroides nodosus)による感染に関連したウシ毛様いぼ;モラクセラ・ボビ
ス(Moraxella bovis)による感染に関連したウシピンクアイ;原生動物(すなわち、ネ
オスポリウム(neosporium))による感染に関連したウシ早発流産;E.coli による感
染に関連したイヌおよびネコの尿路感染症;Staph. epidermidis、スタフィロコッカス・インターメディウス(Staph. intermedius)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌属またはP.multocida による感染に関連したイヌおよびネコの皮膚および軟組織感染症;およびアルカリゲネス属(Alcaligenes)種、Bacteroides 種、Clostridium 種、エンテロバクター
属(Enterobacter)種、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、Peptostreptococcus、ポ
ルフィロモナス属(Porphyromonas)またはプレボテラ属(Prevotella)による感染に関
連したイヌおよびネコの歯または口感染症、が含まれるが、これに限定されるわけではない。本発明の化合物および製剤によって治療することができる他の状態には、マラリアおよびアテローム性動脈硬化症が含まれる。本発明の方法および組成物によって治療または予防することができる他の細菌感染症および原生動物感染症、およびこのような感染に関連した障害は、J.P.Sanford et al., "The Sanford Guide To Antimicrobial Therapy," 26th Edition, (Antimicrobial Therapy, Inc., 1996) に挙げられている。
【0180】
投与されるアジスロマイシンの量は、当該技術分野において周知の原則にしたがって、治療される疾患または状態の重症度、および患者の大きさおよび年齢などの因子を考慮して、必然的に変動するであろう。概して、本薬剤は、有効量が与えられるように投与されるべきであるが、この有効量は、アジスロマイシンについて既に知られている安全で且つ効力のある投与範囲から決定される。
【0181】
成人および30kgを超える体重の小児については、一定用量で投与されるアジスロマイシンの量は、典型的には、約250mgA〜約7gAである。好ましくは、成人および30kgを超える体重の小児について、この剤形は、約1.5〜約4gA、より好ましく
は、約1.5〜約3gA、最も好ましくは、約1.8〜約2.2gAを含有する。30kg
またはそれ未満の体重の小児についてのアジスロマイシン用量は、典型的には、患者の体重による基準で決められ、約30〜約90mgA/kg(患者の体重)、好ましくは、約45〜約75mgA/kg、より好ましくは、約60mgA/kgを含有する。
【0182】
本発明は、治療において投与される総用量が約1.5gA〜約4.0gAのアジスロマイシンを含む一回用量療法において、少ないGI副作用で、比較的多量のアジスロマイシンを患者に投与するのに特に有用である。なおより好ましくは、この一回用量は、約1.5
gA〜約3.0gAのアジスロマイシン、最も好ましくは、1.8〜2.2gAのアジスロ
マイシンを含んでなる。
【0183】
動物/獣医学用途については、当然ながら、この量を、例えば、治療される動物対象の大きさに依存して、これら限度外であるように調整することができる。
本発明の方法において、アジスロマイシンは、一回用量療法を用いてまたは多数回用量療法(例えば、1日で1用量を超える投与、または1またはそれを超える用量を2〜5日間またはそれを超える期間投与)で投与することができる。1日量は、等用量で毎日1〜4回投与することができる。好ましくは、アジスロマイシンは、1日1用量投与される。
【0184】
最も好ましくは、本発明の方法において、アジスロマイシンは、一回用量1日療法を用いて投与される。
本明細書中で用いられる「一回用量」は、療法の全過程において1用量だけのアジスロマイシンを投与することを意味する。
【実施例】
【0185】
本発明は、次の実施例によって更に詳しく説明されるであろう。しかしながら、本発明が、そこに記載されている詳細に限定されるものではないということは理解されるべきである。
【0186】
次の実施例では、次の定義および試験を用いた。
パーセント(%)での量の表記は、特に断らない限り、総重量を基準とする重量パーセントを意味する。
【0187】
Lutrol(登録商標)F127NF(以下、「Lutrol(登録商標)」と称される)および
Pluronic(登録商標)F127(以下、「Pluronic(登録商標)」と称される)は、Poloxamer 407NFとしても知られるが、OH価について計算された9,840〜14,6
00g/molの分子量を有し、一般構造:
【0188】
【化1】

(式中、aは約101であり、bは約56である)
を有する、BASF Corporation, Mount Olive, NJ より入手されるポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックコポリマーである。Lutrol(登録商標)は、Pluronic(
登録商標)の薬学的同等物である。
【0189】
Compritol(登録商標)888ATO(以下、「Compritol(登録商標)」と称される)は、グリセリルモノ−、ジ−およびトリベヘネートの混合物から構成され、それらジエステル部分が優先的であり、ベヘン酸(C22脂肪酸)によるグリセロールのエステル化によって合成されてから、噴霧冷却によって微粒化されるものであり、GATTEFOSSE Corporation, Saint Priest, Cedex, France から入手した。
【0190】
「gA」は、「活性アジスロマイシンのグラム数」の略語である。例えば、「2gA」は、2グラムの活性アジスロマイシンを意味する。
実施例1
胃pHへの各種アルカリ化剤の効果
アルカリ化剤を含有する6種類の異なった製剤を投薬した後の胃のpHを(pHプローブを用いて)追跡するため、臨床研究を行った。臨床研究を実施する前に、アルカリ化剤配合物で、0.1NHCl(pH1.2)をアルカリ化剤に加えることによって生じるpH変化を測定するための滴定研究を行った。
【0191】
試験された製剤には、次のアルカリ化剤が含まれた。
配合物1−176mgの無水TSP
配合物2−352mgの無水TSP
配合物3−352mgの無水TSPおよび500mgの炭酸カルシウム
配合物4−352mgの無水TSPおよび250mgの水酸化マグネシウム
配合物5−352mgの無水TSPおよび500mgのトロメタミン(TRIS)
配合物6−352mgの無水TSPおよび1000mgのトロメタミン(TRIS)
更に、これら具体的なアルカリ化剤を、19.36gのスクロース、0.067gのヒドロキシプロピルセルロース、0.067gのキサンタンガム、0.2gのコロイド二酸化ケイ素、0.14gの人工チェリーフレーバー、0.23gの人工バナナフレーバーおよび0.4gの二酸化チタンとブレンドすることによって、各々の製剤が調製された。
【0192】
ステップA−アルカリ化剤の in vitro 滴定
6種類の配合物各々の in vitro 滴定曲線を作成した。60mL容量の水を用いて、各々の配合物およびプラシーボの懸濁液を構築した。次に、各々の懸濁液について、0.2
mL〜5mLで漸増する量の0.1NHClでその懸濁液を滴定することによって in vitro 滴定曲線を作成した。後行する増加分は、先行する増加分でのpH変化に依存した。
水酸化マグネシウムまたは炭酸カルシウムを含有する懸濁液の滴定曲線は、各々の酸添加後約5分間平衡させた後、pH値を読み取った。各々の製剤の in vitro 試験結果を、図1に示す。
【0193】
図1のデータを、アルカリ化剤摂取後の時間の経過に伴う胃pHの変化を見積もる方法で用いる。これを計算するためには、胃内に存在する酸の量、そして更に、生産される酸の速度を仮定しなければならない。参考文献(C. Lentner. Basle, CIBA-GEIGY, Units of measurement, Body Fluids, Composition of the Body, Nutrition, Geigy Scientific
Tables (1981) 1:123-133; Yamada, Tadataka (ed.), "Textbook of Gastroenterology", Volume 1, Lippincott Williams & Wilkens, 1999, pp. 284-285)から、基底空腹時胃酸含有量は、40mLの0.04MHCl、または0.96mEqのH+または9.6mL
の0.1NHCl(0.1mmol/mL)である。基底酸分泌速度は、3mEq/時(または3/60=0.05mEq/分)である。H+についてのミリ当量(mEq)の数値
は、mmolの数値と同じである。計算手順は、更に、平衡条件が適用されること(すなわち、充分な混合)、配合物も胃酸も空になっている胃が存在しないことを仮定する。上記の仮定のもとでのアルカリ化剤摂取後の時間の経過に伴う胃pHの変化の理論的な見積
りが、(1)時点0で総基底量の酸(0.96mmol)を配合物に加え、そして(2)
同時に、酸を0.05mmol/分の速度でその配合物に時点0を超える時点で加えた、
後の時間の経過に伴うアルカリ化剤配合物のpHの見積もりと数学的に同一であることは、酸塩基平衡の当業者に理解されるであろう。所与の時点tにおいて、これら条件に相当する0.1NHClの容量Vが次のように計算される。
【0194】
【数5】

したがって、t=(V−9.6)/0.5(式中、tは、分で表した時間であり、そしてVは、図1の0.1NHCIの容量である)。
【0195】
各種アルカリ化剤配合物について、(理論的に計算された)pHの時間に対するプロットを図2に示す。
ステップB−臨床研究
この研究は、健康成人志願者、具体的には、18〜55才で、しかも性別、身長および体重枠に基づく15%〜30%の推奨体重範囲内の18人(18)の健康な成人志願者(1グループにつき6人の被験者)の胃pHについてのオープンランダム化プラシーボコントロール研究(open, randomized, placebo-controlled study)であった。
【0196】
被験者を、異なった3グループに割り当てた。各々のグループに、次の三方交差設計(3-way cross over design)で2種類の試験配合物およびプラシーボ治療を与えた。
グループ1:配合物1、配合物2およびプラシーボ
グループ2:配合物3、配合物4およびプラシーボ
グループ3:配合物5、配合物6およびプラシーボ
被験者は、各々のグループ内で治療配列にランダム化された。試験配合物は、一回用量経口溶液として投与した。水をプラシーボとして用いた。各々の被験者に、1日に1回だけの治療(配合物)を与えた。治療日と治療日の間には最低限の1日洗浄期間があった。
【0197】
投薬前に、次の手順を行った。
各々の被験者に、アルカリ化剤配合物またはプラシーボの投与前約30分に、Synectics Digitrapper pHプローブ(Synectics Medical Ltd, Middlesex, UK)を挿管して、ベースラインpHを得た。継続的pH記録が用量投与の30分前から坐位で行われた。<2.0のベースラインpHが示されなかった被験者は、この研究から除外される。しかしな
がら、除外された被験者はいなかった。
【0198】
次に、配合物(1、2、3、4、5または6)またはプラシーボの試験用量を、割り当てられたグループおよび治療配列に依って経口投与した。その用量は、Digitrapper の周りに容易に飲み込まれた。条件を標準化するために、全ての被験者は、横になること、食べることおよび(水を含む)飲料を飲むことを、投薬後の最初の2時間控える必要があった。継続的pH記録は、投薬後2時間まで坐位で行った。
【0199】
全ての配合物について若干の被験者間変動があるとして、次の結論を得た。
TRIS含有配合物は、概して、全ての配合物のうちで最長のpH上昇期間を示した。
炭酸カルシウム含有配合物への被験者による応答は、水酸化マグネシウム含有配合物の場合と等しいかまたはそれを超えた。配合物1を除く他の全ての配合物が、平均して、pHを6またはそれを超えて、少なくとも20分間上昇させた。
【0200】
実施例2
異なった量の同じアルカリ化剤を有する剤形からの in vitro 放出速度の比較
2gAの同じアジスロマイシン多粒子(MP1)とアルカリ化剤として種々の量のTSPとを各々含有する種々のアジスロマイシン徐放性剤形について、アジスロマイシンの in vitro 放出速度を、MP1多粒子含有でTSP不含のアジスロマイシン剤形、およびTSPを含有したアジスロマイシン即時放出剤形とに比較しながら測定した。この徐放性剤形は、以下のステップAに記載のように製造され、その in vitro 放出速度研究およびその結果は、以下のステップBに記載されている。
【0201】
ステップA−アジスロマイシン徐放性剤形の製造
5種類のアジスロマイシン徐放性剤形(以下、SR1、SR2、SR3、SR4、SR5)が、下記のように製造された2000mgAのアジスロマイシン多粒子MP1を、この実施例に記載された6種類の賦形剤ブレンドの内の1種と混合することによって、製造された。
【0202】
SR1には、38.7gのスクロースおよび50mgのTSPが含まれ、
SR2には、38.7gのスクロースおよび100mgのTSPが含まれ、
SR3には、38.7gのスクロースおよび264mgのTSPが含まれ、
SR4には、38.7gのスクロースおよび356mgのTSPが含まれ、そして
SR5には、38.7gのスクロースおよび500mgのTSPが含まれた。
【0203】
更に、多粒子コントロール剤形を、この実施例に記載の2000mgAのアジスロマイシン多粒子と、38.7gのスクロースを混合することによって製造した。
アジスロマイシン多粒子「MP1」
50wt%のアジスロマイシン二水和物、46wt%のCompritol(登録商標)および
4wt%の「Lutrol(登録商標)」を含んでなるアジスロマイシン多粒子MP1を製造した。具体的には、アジスロマイシン二水和物(5000g)、Compritol(登録商標)(
4600g)および Lutrol(登録商標)(400g)を、V形ブレンダー(Patterson Kelly, East Stroudsberg, PA より購入される Blend Master C419145)中で20
分間ブレンドした。次に、このブレンドを、FitzMill(登録商標)Comminutor L1Aミ
ル(The Fitzpatrick Company, E1mhurst, IL)を用いて、0.065インチスクリーンを用いた3000rpmのナイフ前進で脱塊した(de-lumped)。その混合物を、V形ブレ
ンダー中で再度20分間ブレンドして、プレブレンド送入物を形成した。このプレブレンド送入物を、B&P19mm二軸スクリュー押出機(B&P Process Equipment and Systems, LLC, Saginaw, MI より購入される25L/D比を有するMP19−TC)に12
0g/分の速度で送入して、溶融混合物を約90℃の温度で形成した。押出機には水を加えなかった。この押出機は、Compritol(登録商標)/Lutrol(登録商標)中のアジスロ
マイシン二水和物の懸濁液から成る溶融混合物を生じた。次に、その溶融混合物を、スピニングディスクアトマイザーの中央に送って、アジスロマイシン多粒子を形成した。
【0204】
注文製作されたスピニングディスクアトマイザーは、10.1cm(4インチ)直径の
腸形状(bowel-shaped)のステンレス鋼製ディスクから成る。ディスクの表面を、そのディスクの下の薄膜ヒーターで約90℃に加熱する。そのディスクを、約10,000RP
Mまでで動かすモーター上に取り付ける。その装置全体を、約8フィート直径のプラスチックバッグ中に密閉して、凝結させ、そしてアトマイザーによって形成される多粒子を捕獲する。ディスク下方の口から空気を導入して、凝結したばかりの多粒子を冷却させ、そしてバッグをその伸びきったサイズおよび形状に膨張させる。
【0205】
このスピニングディスクアトマイザーの適する市販同等物は、Niro A/S(Soeborg,
Denmark)により製造されたFX1100mmロータリーアトマイザーである。
スピニングディスクアトマイザーの表面を、90℃で維持し、そのディスクを5500rpmで回転させ、同時に、アジスロマイシン多粒子を形成した。押出機中のアジスロマイシン二水和物の平均滞留時間は約60秒であり、アジスロマイシンが溶融懸濁液中である総時間は、約3分未満であった。スピニングディスクアトマイザーによって形成された粒子を、周囲空気中で凝結させ、収集した。この方法によって製造されたアジスロマイシン多粒子は、約200μmの直径を有した。
【0206】
溶融−凝結された多粒子の粒度などの性状は、溶融物の粘度および加工条件によって調節することができる。本発明の好ましい態様における材料の組合せが与えられると、溶融物の粘度は、加熱システムの温度が90℃で保持されている間は未変化である。アジスロマイシン多粒子のサイズは、送入速度(スピニングディスクアトマイザー上に装填する溶融材料の量)およびディスク速度(4インチ直径)によって調節することができる。例えば、約200μm粒子は、(1)8.4kg/時の送入速度および5500RPMのディ
スク速度、または(2)20kg/時の送入速度および5800RPMのディスク速度、または(3)25kg/時の送入速度および7100RPMのディスク速度の組合せによって形成することができる。
【0207】
その後、アジスロマイシン多粒子を、浅いトレー中に約2cmの深さで入れた後、そのトレーを40℃のオーブン中に入れ、75%相対湿度を5日間維持することによって後処理した。
【0208】
各々のアジスロマイシン多粒子剤形は、2gA相当量のアジスロマイシンを提供するために、4.2グラムのアジスロマイシン多粒子を用いて製造された。
ステップB−in vitro アジスロマイシン放出速度研究
摂取状態にあるときの胃液を模擬しかつアジスロマイシンの酸分解を避けるために0.
1NHClの代わりに用いられた0.01NHCl中におけるアジスロマイシンの in vitro 放出速度が、種々の量のTSPをアルカリ化剤として含有する徐放性剤形(各2gA
)SR1、SR2、SR3、SR4およびSR5について、測定された。TSPを含有しない多粒子(2gA)の in vitro 放出速度も測定された。更に、経口懸濁液剤用のアジスロマイシン二水和物の2個の市販の一回用量パケット(Zithromax(登録商標),Pfizer Inc., New York, NY)の即時放出(IR)コントロールの in vitro 放出速度を測定した。各々の一回用量パケットは、1048mgのアジスロマイシン二水和物(1gA)、88mgのTSPおよび他の賦形剤を含有した。
【0209】
以下に示す表1のデータは、これら多粒子からのアジスロマイシンの放出速度が、増加する量のTSPとほぼ同時に投与された場合にますます遅くなることを示している。
表1に反映されたこの in vitro アジスロマイシン放出速度研究は、次のように実施した。多粒子中に約2gAのアジスロマイシンを各々含有する徐放性剤形と、多粒子コントロールおよび即時放出コントロールを、個別に125mLボトル中に入れた。次に、60mLの精製水を加え、それらボトルを30秒間振とうした。それら内容物を、テフロンコーティング櫂を装備したUSP2型 dissoette フラスコに加えて50rpmで回転させ
た。そのフラスコには、37.0±0.5℃で保持された750mLの容量の0.01NH
Clが入っていた。そのフラスコからの20mLのHClでボトルを2回すすぎ洗浄し、その洗液をフラスコに戻して750mLの最終容量にした。次に、フラスコ中の液体の3mL試料を、多粒子のフラスコへの添加後15分、30分、60分、120分および180分の時点で集めた。それら試料を、0.45μmシリンジフィルターを用いて濾過後、
高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Packard 1100,Waters Symmetry C8カラム
、1.0mL/分で45:30:25のアセトニトリル:メタノール:25mMKH2PO4緩衝液、210nmにおいてダイオードアレイ分光光度計で測定される吸光度)によっ
て分析した。
【0210】
【表1】

実施例3
異なったアルカリ化剤を有する剤形の in vitro 放出速度の比較
0.01NHCl中のアジスロマイシンの in vitro 放出速度を、種々のアジスロマイ
シン徐放性剤形について測定した。2gAのアジスロマイシン多粒子MP1を各々含有し
た剤形は、下記のような3種類の賦形剤ブレンドの一つと一緒に製造されたものであった。
【0211】
「SR6」には、38.7gのスクロースおよび100mgの弱塩基炭酸ナトリウムが
含まれ、
「SR7」には、38.7gのスクロースおよび50mgの水酸化マグネシウムが含ま
れ、そして
「SR8」には、38.7gのスクロースと、37.1mgの水酸化アルミニウム、37.1mgの水酸化マグネシウムおよび3.7mgのシメチコンを含有する1.0gの Liquid
Maalox(R)(スムースチェリー、正規強度、Novartis 製)が含まれた。
【0212】
これら徐放性剤形からのアジスロマイシンの放出速度を、実施例2に記載のように in vitro で測定した。以下の表2に示されたこれら溶解試験の結果は、種々のアルカリ化剤の添加が、表1に示したアルカリ化剤不含のこれら多粒子からの放出と比較して、MP1多粒子からのアジスロマイシンの放出を遅らせたことを示した。
【0213】
【表2】

実施例4
即時放出剤形の放出速度へのアルカリ化剤添加の効果のin vitro 評価
0.01NHCl中の in vitro 放出速度へのアルカリ化剤の添加の比較効果を、アジ
スロマイシン即時放出剤形である Zithromax(登録商標)錠剤について測定した。Zithromax(登録商標)錠剤は、250mgAアジスロマイシンと等価のアジスロマイシン二水
和物、アルカリ化剤である第二リン酸カルシウム(138.84mg)およびいくつかの
他の賦形剤を含有する。
【0214】
追加のアルカリ化剤、具体的には、176mgのTSPを含むZithromax(登録商標)
錠剤および含まない同錠剤からのアジスロマイシンの放出速度を、実施例2に記載のように in vitro で測定した。これら溶解試験の結果は、下の表3に与えられている。
【0215】
【表3】

これら結果は、アルカリ化剤と組み合わされた場合、即時放出アジスロマイシン剤形からの放出速度が遅れることを確認するものである。
【0216】
実施例5
異なったアジスロマイシン多粒子を有する剤形におけるin vitro 放出速度の比較
0.1MNa2HPO4中のアジスロマイシンの in vitro 放出速度を、2gAの異な
ったアジスロマイシン多粒子および同量の共通のアルカリ化剤を各々含有する種々のアジスロマイシン徐放性剤形について測定した。これら徐放性剤形は、以下のステップAに記載のように製造し、その in vitro 放出速度研究およびその結果は、次のステップBに記載されている。
【0217】
ステップA−アジスロマイシン徐放性剤形の製造
6種類のアジスロマイシン徐放性剤形、具体的には、SR9、SR10、SR11、SR12、SR13およびSR14を、それぞれ、アジスロマイシン多粒子MP2、MP3、MP4、MP5、MP6またはMP7各々と、2種類のアルカリ化剤の同じブレンド(すなわち、352mgのTSPおよび250mgの水酸化マグネシウム)および賦形剤(すなわち、19.36gのスクロース、67mgのヒドロキシプロピルセルロース、67
mgのキサンタンガム、110mgのコロイド二酸化ケイ素、400mgの二酸化チタン、140mgのチェリーフレーバーおよび230mgのバナナフレーバー)を混合することによって製造した。
【0218】
アジスロマイシン多粒子
50wt%のアジスロマイシン二水和物、47wt%のCompritol(登録商標)および
3wt%の「Lutrol(登録商標)」から構成されるアジスロマイシン多粒子「MP2」が、ブレンドをB&P19mm二軸スクリュー押出機に131g/分の速度で送入して溶融混合物を形成したことを除いて、実施例2のMP1多粒子と同じやり方で製造された。水が同時に2wt%の溶融混合物含水率を与える速度でその押出機に加えられ、そしてその多粒子は、約188ミクロンの平均直径を有するアジスロマイシン多粒子を形成するために21日間後処理された。
【0219】
50wt%のアジスロマイシン二水和物、47wt%のCompritol(登録商標)および
3wt%の「Lutrol(登録商標)」から構成されるアジスロマイシン多粒子「MP3」が、そのディスクを4800rpmで回転させて、約204ミクロンの平均直径を有するアジスロマイシン多粒子を形成したことを除いて、この実施例のMP2多粒子と同じやり方で製造された。
【0220】
50wt%のアジスロマイシン二水和物、47wt%のCompritol(登録商標)および
3wt%の「Lutrol(登録商標)」から構成されるアジスロマイシン多粒子「MP4」が、そのディスクを4100rpmで回転させて、約227ミクロンの平均直径を有するアジスロマイシン多粒子を形成したことを除いて、この実施例のMP2多粒子と同じやり方で製造された。
【0221】
50wt%のアジスロマイシン多粒子、48wt%のCompritol(登録商標)および2
wt%の Lutrol(登録商標)から構成されるアジスロマイシン多粒子「MP5」が、ブ
レンドを Liestritz 27mm二軸スクリュー押出機に140g/分の速度で送入して溶
融混合物を形成させたことを除いて、実施例1のMP1多粒子と同じやり方で製造された。
【0222】
50wt%のアジスロマイシン二水和物、47wt%のCompritol(登録商標)および
3wt%の Lutrol(登録商標)F127から構成されるアジスロマイシン多粒子「MP
6」が、次の手順を用いて製造された。最初に、15kgのアジスロマイシン二水和物、14.1kgの Compritol(登録商標)および0.9kgの Lutrol(登録商標)を秤量し
、その順序で、Quadro 194S Comil ミルを通過させた。ミル速度は600rpmで設定した。そのミルには、No.2C−075−H050/60スクリーン(特別回転)、No.2C−1607−049フラットブレード羽根車、および羽根車とスクリーンとの間の0.225インチスペーサーを装備した。脱塊された混合物を、20rpmで回転す
る Servo-Lift 100Lステンレス鋼製ビンブレンダーを用いて合計500回転ブレンドして、プレブレンド送入物を形成した。
【0223】
そのプレブレンド送入物を、Leistritz 50mm二軸スクリュー押出機(Model ZSE50,American Leistritz Extruder Corporation, Somerville, NJ)に25kg/時の
速度で送入した。押出機は、同時回転モードにおいて約300rpmで作動し、溶融/吹付−凝結装置とインターフェースで連結していた。押出機は、9個のセグメントバレル区画と36スクリュー直径(1.8m)の押出機全長を有した。水を4番バレルに8.3g/分の速度で注入した(2wt%)。押出機の押出速度は、約90℃の温度で Compritol(登録商標)/Pluronic(登録商標)中のアジスロマイシン二水和物の溶融送入物懸濁物を生じるように調整した。
【0224】
その溶融送入物懸濁物を、7600rpmで回転するスピニングディスクアトマイザーに送達し、その表面は90℃で維持されていた。アジスロマイシン二水和物をその溶融懸濁物に暴露した最大合計時間は、約10分未満であった。スピニングディスクアトマイザーによって形成された粒子を、生成物収集チャンバーを介して循環する冷却用空気の存在下で冷却し且つ凝結させた。平均粒度は、Horiba LA−910粒度分析器を用いて、1
88μmであると測定された。これら多粒子の試料は、PXRDによっても評価したが、これは、多粒子中のアジスロマイシンの約99%が結晶性二水和物形態であることを示した。
【0225】
そのように形成された多粒子は、密封バレル中に試料を入れた後、それを、制御された雰囲気のチャンバー中に40℃で3週間入れることによって後処理された。
50wt%のアジスロマイシン二水和物、47wt%のCompritol(登録商標)および
3wt%の Lutrol(登録商標)F127から構成されるアジスロマイシン多粒子「MP
7」は、次のように製造された。
【0226】
アジスロマイシン二水和物(140kg)を秤量し、そしてQuadro Comil 196Sを
900rpmのミル速度で通過させた。そのミルには、No.2C−075−H050/60スクリーン(特別回転、0.075”)、No.2F−1607−254羽根車、お
よび羽根車とスクリーンとの間の0.225インチスペーサーを装備した。次に、8.4kgの Lutrol(登録商標)、そして次に、131.6kgの Compritol(登録商標)を秤量し、Quadro 194S Comil ミルを通過させた。ミル速度は650rpmで設定した。そのミルには、No.2C−075−R03751スクリーン(0.075”)、No.2
C−1601−001羽根車、および羽根車とスクリーンとの間の0.225インチスペ
ーサーを装備した。微粉砕された混合物を、10rpmで40分間回転する Gallay 38立方フィートステンレス鋼製ビンブレンダーを用いて合計400回転ブレンドして、プレブレンド送入物を形成した。
【0227】
そのプレブレンド送入物を、Leistritz 50mm二軸スクリュー押出機に約20kg/時の速度で送り込んだ。押出機は、同時回転モードにおいて約100rpmで作動し、溶融/吹付−凝結装置とインターフェースで連結されていた。押出機は、5個のセグメントバレル区画および20スクリュー直径(1.0m)の押出機全長を有した。水を2番バレ
ルに6.7g/分の速度で注入した(2wt%)。押出機の押出量は、約90℃の温度で Compritol(登録商標)/Lutrol(登録商標)中のアジスロマイシン二水和物の溶融送入
物懸濁物を生じるように調整された。
【0228】
その送入物懸濁物を、6400rpmで回転し且つ90℃のディスク表面温度を維持している上記の実施例2に記載の10.1cm直径スピニングディスクアトマイザーに送り
込んだ。アジスロマイシンを溶融懸濁物に暴露した最大合計時間は、10分未満であった。スピニングディスクアトマイザーによって形成された粒子を、生成物収集チャンバーを介して循環する冷却用空気の存在下で冷却し且つ凝結させた。平均粒度は、Malvern 粒度分析器を用いて、約200μmであると測定された。
【0229】
そのように形成された多粒子は、密封バレル中に試料を入れた後、制御された雰囲気のチャンバー中に40℃で10日間入れることによって後処理された。後処理された多粒子の試料は、PXRDによって評価したが、これは、多粒子中のアジスロマイシンの約99%が結晶性二水和物形態であることを示した。
【0230】
ステップB−in vitro アジスロマイシン放出速度研究
アジスロマイシンの in vitro 放出速度を、徐放性剤形(各2gA)SR9、SR10、SR11、SR12、SR13およびSR14について、次の溶解試験法によって測定した。
【0231】
水(60mL)を剤形が入っているボトルに加えた。そのボトルに蓋をした後、数回逆さにして懸濁液を混合した。懸濁液形態の各々の徐放性製剤を、United States Pharmcopeia (USP 26), Dissolution Test, Chapter 711, Apparatus 2 に開示されたような標準
的なUSP回転櫂形装置中の溶解緩衝液に加えることによって調べた。櫂を50rpmで回転させ、そして溶解試験を、840mLの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0(±0.05)中において37±0.5℃で行った。試験開始(すなわち、装置中への剤形の挿入)後の指定された時点に、試験基剤からの濾過されたアリコート(典型的には、10mL)を、アジスロマイシンについて、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびUV検出によって次のように分析した。試験溶液のアリコートを濾過して、微粒子を除去した。10μLの一定容量を、35±3℃で保持されたカラム(15cm長さx3
.9mmID)上に注入した。移動相は、45%アセトニトリル、30%メタノールおよ
び25%緩衝液の容量比から成った。この緩衝液は、25mMKH2PO4、pH6.5
から成った。流量は1mL/分で設定した。溶解試験基剤中において、アジスロマイシンの実際の定量は、アジスロマイシン標準クロマトグラムピーク面積に対する試料クロマトグラムピーク面積の比較によって決定した。
【0232】
【表4】

上の表4に与えられたこれら溶解試験の結果は、多粒子およびアルカリ化剤のこれら各種製剤が、pH6.0緩衝液 in vitro 試験について、その緩衝試験基剤への投与後に、
(i)0.25時間でこの剤形中のアジスロマイシンの15〜55wt%;(ii)0.5時間でこの剤形中のアジスロマイシンの30〜75wt%;そして(iii)1時間でこの剤
形中のアジスロマイシンの50wt%、を超えるという放出速度判定基準を満たすことを示している。
【0233】
実施例6
アジスロマイシン徐放性剤形と即時放出アジスロマイシン剤形との in vivo 比較
各々が352mgの無水TSPをアルカリ化剤として含有し、場合により250mgの水酸化マグネシウムを含有する本発明の3種のアジスロマイシン徐放性剤形を、半分のTSP(176mg)を含有し且つ水酸化マグネシウムを含まないアジスロマイシン即時放出剤形と比較して、薬物動態学および胃腸許容性それぞれを評価するために、二つの臨床研究を行った。徐放性剤形は、以下のステップAに記載の通りに製造され、薬物動態学および副作用の臨床研究並びにそれらの結果は、それぞれ、以下のステップBおよびCに記載されている。
【0234】
ステップA−アジスロマイシン徐放性剤形の製造
これら徐放性剤形を次のように製造した:2種類の異なったアジスロマイシン徐放性剤形(以下、SR15およびSR16)を、下記のように製造される4.2g(2gA)の
アジスロマイシン多粒子を種々の賦形剤と混合することによって製造した。SR15剤形は、そのアジスロマイシン多粒子と下記の賦形剤ブレンドの混合物から構成された。SR16剤形は、そのアジスロマイシン多粒子、同じ賦形剤ブレンドおよび水酸化マグネシウムの混合物から構成された。SR16を製造するために、SR15を含有するボトルに水酸化マグネシウムを加えた。これら内容物は、ボトルを回すことによって混合された。
【0235】
SR12は、実施例5に記載の通りに製造した。
アジスロマイシン多粒子
50wt%のアジスロマイシン二水和物、47wt%のCompritol(登録商標)および
3wt%の Lutrol(登録商標)から構成されるアジスロマイシン多粒子「MP8」が、
そのブレンドを Leistritz 27mm二軸スクリュー押出機(Model ZSE27,American Leistritz Extruder Corporation, Somerville, NJ)に140g/分の速度で送入して溶融混合物を形成したことを除いて、実施例2のMP1多粒子と同じやり方で製造された。
【0236】
アルカリ化剤および賦形剤
アジスロマイシン多粒子と組み合わせて用いるための賦形剤ブレンドを調製した。この賦形剤ブレンドは、アルカリ化剤としての352mgの無水TSP、19.36gのスク
ロース(NF)、67mgのヒドロキシプロピルセルロース(NF)、67mgのキサンタンガム(NF)、200mgのコロイド二酸化ケイ素(NF)、400mgの二酸化チタン(USP)、140mgのチェリーフレーバーおよび230mgのバナナフレーバーの混合物から成った。
【0237】
存在してもよい250mgのアルカリ化剤である水酸化マグネシウム(USP)が入っている別のボトルも調製した。
ステップB−薬物動態学臨床研究
「SR15」および「SR16」のアジスロマイシン多粒子剤形のin vivo 薬物動態学を、32人の絶食している健康なヒト被験者におけるランダム化オープンラベル・パラレルグループ二方交差研究(randomized, open-label, parallel group, two way cross-over study)で評価した。1日目に8人の被験者にSR15アジスロマイシン多粒子剤形を与え、8人の被験者にSR16アジスロマイシン多粒子剤形を与えた。コントロールとして、二つのグループ(AおよびB)の各8人の被験者に、1000mgAのアジスロマイシンと等価である1048mgのアジスロマイシン二水和物、88mgのTSPおよび先に記載した不活性成分を含有する、アジスロマイシン二水和物の経口懸濁液剤用の一回用量パケット(Zithromax(登録商標),Pfizer Inc., New York, NY)2個を与えた。
【0238】
具体的には、2gAのアジスロマイシン製剤(水酸化マグネシウムを含まないSR15
または水酸化マグネシウムを含むSR16)または商業的に入手可能なアジスロマイシンサシェ剤いずれかを、コンピューターでランダム化された治療2グループ各々に投薬した。
【0239】
SR15およびSR16製剤を投薬するために、SR15が入っているボトルに60mLの水を加えて30秒間振とうした。ボトルの全内容物を被験者の口に直接投与した。更に60mLの水を加えてボトルをすすぎ、その洗液を被験者の口に投与した。更に120mLの水を、投薬用カップを用いて投与した。
【0240】
市販の2個の1gサシェ剤アジスロマイシンを投薬するために、1gの Zithromax(登録商標)一回用量パケットの内容物を60mLの水が入っているカップ中に向けて空けた。その混合物を撹拌し、被験者の口に投与した。更に60mLの水を用いてカップをすすぎ、その洗液を投与した。この手順を、別の Zithromax(登録商標)一回用量パケットについて繰り返した。
【0241】
全ての被験者に一晩絶食後に経口投薬した。次に、全ての被験者は、横になること、食べることおよび水以外の飲料を飲むことを、投薬後の最初の4時間控えることを要求された。
【0242】
血液試料(各5mL)を、投薬前、および投薬後0.5、1、2、3、4、6、8、1
2、16、24、36、48、72および96時間に被験者の静脈から採取した。血清アジスロマイシン濃度を、Shepard el al., J Chromatography. 565:321-337 (1991) に記
載の高速液体クロマトグラフィーアッセイを用いて測定した。グループ内の各々の被験者の曲線下面積(AUC)を測定してから、そのグループの平均AUCを計算することにより、アジスロマイシンへの総全身接触率を出した。Cmaxは、被験者で達せられる最高血清アジスロマイシン濃度である。Tmaxは、Cmaxに達する時間である。%CVは分散係数であり、SDは標準偏差である。
【0243】
15日目に、コントロール剤形を1日目に与えられた二つの8被験者グループが、次いでSR15またはSR16のアジスロマイシン多粒子剤形を投薬されたことを除いて、この手順を繰り返した。同様に、アジスロマイシン多粒子剤形を1日目に与えられた二つの8被験者グループは、次いでコントロール剤形を投薬された。
【0244】
SR12アジスロマイシン多粒子剤形の in vivo 薬物動態学も、16人の絶食してい
る健康なヒト被験者において、ランダム化二方交差研究で評価した。コントロールは、各用量が、1000mgAのアジスロマイシンと等価である1048mgのアジスロマイシン二水和物、88mgのTSPおよび先に記載された不活性成分を含有する、経口懸濁液剤用のアジスロマイシン二水和物の一回用量パケット(Zithromax(登録商標),Pfizer Inc., New York, NY)2個であった。
【0245】
この研究の結果は、表5に与えられる。
【0246】
【表5】

表5の結果に基づき、SR15、SR16およびSR12のバイオアベイラビリティーは、即時放出コントロール剤形に比較して、それぞれ、73%、83%および89%であった。このデータは、多粒子剤形SR15、SR16およびSR12によって与えられた最大血清アジスロマイシン濃度の、コントロール剤形によって与えられた最大血清アジスロマイシン濃度に対する比率が、それぞれ、0.44、0.43および0.41であったこ
とも示した。更に、最大血清濃度に達する時間は、即時放出コントロール剤形よりもアジスロマイシン多粒子剤形の方が長かった。
【0247】
ステップC−胃腸許容性臨床研究
SR15およびSR16のアジスロマイシン多粒子剤形の in vivo 許容性を、ランダ
ム化パラレルグループ研究によって評価した。具体的には、106人の健康なヒト被験者に、SR15徐放性アジスロマイシン多粒子製剤を経口投与し、106人の健康なヒト被験者に、SR16徐放性アジスロマイシン多粒子製剤を経口投与し、そして108人の健康なヒト被験者各々に、次の手順によって、経口懸濁液剤用のアジスロマイシン二水和物の一回用量1gAパケット2個を投与した。1個のパケットの全内容物を、カップ中の約60mLの水と混合後、直ぐに飲ませた。投薬量を完全に消費させるのを確実にするために、更に60mLの水をカップに加え、混合後に飲ませた。次に、これらステップを第2のパケットについて繰り返した。
【0248】
下痢、悪心および嘔吐などのGI副作用を各々の剤形の投与後48時間追跡した。被験者には、投薬後少なくともほぼ次の時点、すなわち、1、2、4、6、8、12および24時間に、非誘導的に質問することによって口頭で尋ねた。
【0249】
試験された被験者が経験した胃腸副作用の発生率は、表6に与えられている。
同様の in vivo 許容性研究を、SR12製剤について、16人の健康なヒト被験者の
集団を用いて実施した。この研究に用いられたコントロールは、経口懸濁液剤用のアジスロマイシン二水和物の一回用量1gAパケット2個であった。この研究の結果も表6に与えられている。
【0250】
【表6】

表5および表6の結果は、2〜3wt%の Lutrol(登録商標)を含み、水酸化マグネ
シウムも含むかまたは含まない両方のアジスロマイシン多粒子剤形が、即時放出コントロール剤形と比較して、これら剤形から放出されるアジスロマイシンの投与即時の濃度が低く、そして、即時放出コントロール剤形に比較して実質的に向上した胃腸許容性を与えつつ、同時に、即時放出コントロールと実質的に等価のバイオアベイラビリティーを維持したことを示している。更に、SR15は、そのコントロールと比較して、下痢について1.6、悪心について3.2および嘔吐について9.3の相対的改善度を与え、SR16は、
下痢について1.2、悪心について3.2および嘔吐について6.8の相対的改善度を与え
た。同様に、SR12は、コントロールで起こった6事象に比較して、コントロールにまさる下痢の改善はなかったが、悪心については50の相対改的善度を与え、嘔吐はなかった。SR12についてのこれら結果は、SR12研究の集団サイズが小さいために、SR15およびSR16についての結果と正確に比較することができないことに留意のこと。
【0251】
実施例7
アジスロマイシン多粒子形と即時放出アジスロマイシン剤形との in vivo 比較
2gAまたは3gAのアジスロマイシンをそれぞれ含有し、そして352mgの無水TSPをアルカリ化剤として各々含有する2種類のアジスロマイシン多粒子剤形の薬物動態学および胃腸許容性を、半分のTSP(176mg)を含有するが水酸化マグネシウムを含まないアジスロマイシン即時放出剤形と比較して評価するために臨床研究を行った。徐放性剤形は、以下のステップAに記載の通りに製造し、2gA剤形の in vitro 放出速度研究は、ステップBに記載の通りに行い、薬物動態学および副作用の臨床研究並びにそれらの結果は、それぞれ、次のステップCおよびDに記載されている。
【0252】
ステップA−アジスロマイシン多粒子剤形の製造
アジスロマイシン多粒子剤形(以下、SR17およびSR18)を、下記のように製造された、それぞれ4.2g(2gA)または6.3g(3gA)のアジスロマイシン多粒子MP9を賦形剤と混合することによって製造した。SR17剤形は、アジスロマイシン多粒子(MP9)および下記の賦形剤ブレンドの混合物から構成された。
【0253】
アジスロマイシン多粒子
50wt%のアジスロマイシン二水和物、46wt%のCompritol(登録商標)および
4wt%の Lutrol(登録商標)から構成されるアジスロマイシン多粒子「MP9」は、
そのブレンドを Liestritz 27mm二軸スクリュー押出機に140g/分の速度で送入
して溶融混合物を形成したことを除いて、実施例2のMP9多粒子と同じやり方で製造された。スピニングディスクアトマイザーを5500rpmで回転させて、多粒子を形成した。得られた多粒子を、環境チャンバー中において40℃で75%の相対湿度に5日間曝した。
【0254】
アルカリ化剤および賦形剤
アジスロマイシン多粒子と組み合わせて用いるための賦形剤ブレンドを調製した。この賦形剤ブレンドは、アルカリ化剤としての352mgの無水TSP、38.7gのスクロ
ース(NF)、67mgのヒドロキシプロピルセルロース(NF)、67mgのキサンタンガム(NF)、200mgのコロイド二酸化ケイ素(NF)、400mgの二酸化チタン(USP)、140mgのチェリーフレーバー、330mgのバニラフレーバーおよび230mgのバナナフレーバーの混合物から成った。
【0255】
ステップB−in vitro アジスロマイシン放出速度研究
多粒子剤形SR17の in vitro 放出速度研究を、実施例5に記載の通りに行った。
【0256】
【表7】

ステップC−薬物動態学臨床研究
SR17およびSR18のアジスロマイシン多粒子剤形の in vivo 薬物動態学を、3
00人の絶食している健康なヒト被験者(治療グループにつき100人の被験者)におけるランダム化パラレルグループ研究で評価した。被験者を次の三つの治療グループ:SR17(2gA)、SR18(3gA)、および、2gAのアジスロマイシン、1.1gの
第二リン酸ナトリウムおよび他の不活性成分を組み合わせて含有する8x250mgAの
Zithromax(登録商標)錠剤(コントロール)のうちの一つにランダムに割り当てた。
【0257】
全ての用量について、240mLの総容量の水を消費した。SR17およびSR18製剤を投薬するために、SR17またはSR18を賦形剤ブレンドが入っているボトルに加えた。水(60mL)をSR17またはSR18および賦形剤ブレンドが入っているこのボトルに加えた。ボトルを30秒間振とうしてそれら懸濁液を混合した。ボトルの全内容物を被験者の口に直接的に投与した。更に60mLの水を加えてボトルをすすぎ、その洗液を被験者の口に投与した。更に120mLの水を投薬用カップを用いて投与した。
【0258】
8個の市販の Zithromax(登録商標)250mg錠剤を投薬するために、被験者に240mLの水を与えて8個の錠剤を一つずつ経口投与させた。
全ての被験者は、一晩絶食後に経口投薬された。次いで、全ての被験者は、横になること、食べることおよび水以外の飲料を飲むことを、投薬後の最初の4時間控えるよう要求された。
【0259】
充分な血液を各々の被験者から採取して、アジスロマイシン薬物動態学のために最低3mlの血清を得た。血液は、保存剤も抗凝固剤も血清分離剤も入っていない試験管中に:0時間(投薬直前)、薬剤投与後2時間および3時間(突出したTmax周辺)に集めた。血清アジスロマイシン濃度を、Shepard el al., J Chromatography. 565:321-337 (1991) に記載の高速液体クロマトグラフィーアッセイを用いて測定した。
【0260】
この研究の結果は、表8に与えられている。
【0261】
【表8】

表8の結果に基づき、投薬後2時間および3時間におけるSR17およびSR18についての血清アジスロマイシン濃度は、8個の Zithromax(登録商標)錠剤についての血清濃度以上であった。このデータは、投与された量のアルカリ化剤があったので、SR17またはSR18からの薬剤放出の遅れがなかったことを示した。
【0262】
ステップD−胃腸許容性臨床研究
ステップBで試験されたSR17およびSR18のアジスロマイシン多粒子剤形の許容性を評価した。被験者は、1日目の少なくともほぼ次の時点:0、2、4、8、12および24時間に、副作用について口頭で尋ねられた。試験された被験者が経験した胃腸副作用の発生率は、表9に与えられている。
【0263】
【表9】

表7および表8の結果は、4wt%の Lutrol(登録商標)と、TSPを352mgの
量で有する賦形剤ブレンドとを含む試験された2gAまたは3gAのアジスロマイシン多粒子剤形が、即時放出錠剤形と比較して、血清濃度を低下させるかまたはGI許容性を改善するという利点を与えなかったことを示している。
【0264】
かくして、表8および表9の結果によって示されるように、所望の放出プロフィールおよびGI副作用プロフィールを与えるための有効量のアルカリ化剤が、これら具体的な多粒子では用いられなかったのである。
【0265】
実施例8
即時放出アジスロマイシンと一緒に用いられるアルカリ化剤を決定する方法
胃内のアジスロマイシンの溶解を抑制し、それによって即時放出(IR)製剤の許容性の改善をもたらすであろうアルカリ化剤の有効量を次のように計算した。アルカリ化剤を含まないIR製剤は、実施例5に記載のように、pH6.0において約92%の薬剤を3
0分で、すなわち、pH6.0で1分あたり3.07%を放出する。許容性を改善するためには、アジスロマイシン溶解速度を、好ましくは、最初の30分間に約1.5gAまたは
それ未満を放出する速度または2.5%/分まで減少させなければならない。IR製剤か
らの薬剤溶解の速度は、表10に示すように、pHに依存するアジスロマイシンの溶解性に直接比例しているという仮定を行った。
【0266】
【表10】

アジスロマイシン放出速度がその溶解性に直接比例すると仮定したので、pH6.0で
の3.07%の速度のアジスロマイシンの溶解性は、表10からの内挿によって得られる
ところの390mg/mLである。改善された許容性を与えるであろう対応する溶解性は次のように計算される:
【0267】
【数6】

溶解性T は、アジスロマイシンの溶解が過剰なGI副作用をもたらさない溶解性として定義される。この式からの溶解性T は、318mg/mLlであることが分かった。やはり表10からの内挿により、溶解性Tに対応するpHは6.4である。
【0268】
好ましくは、IR製剤と一緒に配合されるかまたはIR製剤と同時投与されるアルカリ化剤の量は、投与されたときに胃内のpHを少なくとも30分間6.63に上げる量であ
る。この量を計算するために、胃内の酸の基底量が約0.96mmolH+であることお
よび平均酸分泌速度が約3mmol/時であることが仮定される。
【0269】
製剤中に含まれるべき一種または複数種のアルカリ化剤の量を計算するために、本発明者は、種々のアルカリ化剤およびアルカリ化剤の組合せについて行われた滴定データを必要とする。したがって、いくつかのアルカリ化剤およびアルカリ化剤の組合せの溶液を作って、0.1NHClで滴定し、そして得られたpH値を測定した。胃内の酸の基底量が
約0.96mmolH+であることおよび平均酸分泌速度が約3mmol/時であること
を仮定すれば、これらデータから、実施例1のステップAに記載の通りにpHの時間に対するプロフィールを計算することができる。これらデータは、図2および図3に示されている。
【0270】
図3から、176mgTSPまたは176mgTSP+500mgCaCO3を含有す
る製剤は、胃pHを6.8に30〜40分間増加させるとは期待できないが、176mg
TSP+500mgTRIS、176mgTSP+1000mgTRIS、または176mgTSP+250mgMg(OH)2を含有する製剤は、高いpHを少なくともそのだけ
の時間与えると期待できることが分かる。352mgTSPを有する製剤は、pH6.4
8を30分間を僅かに超えて与えるように見えるので、アジスロマイシンの高用量IR製剤の投与後のGI副作用を減少させるのに必要な最小量のアルカリ化剤を含有していると考えられる。胃酸分泌速度の個人差を考慮しかつ剤形の強い性能を考慮すると、この最小量より多い量のアルカリ化剤が好ましい。
【0271】
図2のデータの類似の分析により、352mgTSPおよび352mgTSP+500mg炭酸カルシウムは、かろうじて、適度に増加した胃pHを所望の時間与えると予期されるが、試験された残りの組合せは、胃pHの適度な増加を所望の時間与えると予期される。アルカリ化剤の有効量を決定するための上記の一般的な手順は、胃内の基底酸条件および酸分泌速度についての仮定に依存するということが留意されるべきである。選択された値は、概ね健康な個体についての平均であり、かなりの個体間および個体内バラツキが存在しうる。異なる仮定の下でのアルカリ化剤の有効量が、上に概略を示した手順に従うことによって計算されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0272】
【図1】図1は、異なるアルカリ化剤を増加容量の0.1NHClで滴定することのpHへの効果を示し、実施例1で更に論じられている。
【図2】図2は、0.1NHClで滴定されたときの異なるアルカリ化剤の計算されたpHを時間との関係で示しており、実施例1および8で更に論じられている。
【図3】図3は、0.1NHClで滴定されたときの異なるアルカリ化剤の計算されたpHを時間との関係で示しており、実施例8で更に論じられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジスロマイシンの経口剤形であって、
(a)アジスロマイシン;および
(b)有効量のアルカリ化剤
を含んでなる経口剤形。
【請求項2】
アルカリ化剤が、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、重炭酸塩、リン酸塩、金属水酸化物、金属酸化物、N−メチルグルカミン、アルギニン、アルギニン塩、アミンまたはそれらの組合せを含んでなる請求項1に記載の経口剤形。
【請求項3】
前記アジスロマイシンが、即時放出型のアジスロマイシンを含んでなる請求項1または2に記載の経口剤形。
【請求項4】
前記アジスロマイシンが、徐放型のアジスロマイシンを含んでなる請求項1または2に記載の経口剤形。
【請求項5】
約250mgA〜約7gAのアジスロマイシンを含んでなる請求項1または2に記載の経口剤形。
【請求項6】
1.8gA〜2.2gAのアジスロマイシンを含んでなる請求項5に記載の経口剤形。
【請求項7】
前記アジスロマイシンが、アジスロマイシン二水和物である請求項1または2に記載の経口剤形。
【請求項8】
前記アジスロマイシンが、少なくとも70wt%結晶性である請求項1または2に記載の経口剤形。
【請求項9】
経口剤形であって、
(a)有効量のアルカリ化剤;および
(b)アジスロマイシン多粒子であって、
(i)アジスロマイシン、および
(ii)薬学的に許容しうる担体
を含んでなるアジスロマイシン多粒子
を含んでなる経口剤形。
【請求項10】
前記担体が、ワックス、グリセリドまたはそれらの混合物である請求項9に記載の経口剤形。
【請求項11】
前記グリセリドが、グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物を含んでなる請求項10に記載の経口剤形。
【請求項12】
溶解促進剤を更に含んでなる請求項10に記載の経口剤形。
【請求項13】
前記溶解促進剤が、ポロキサマー、ドキュセート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、アルキル硫酸塩、ポリソルベートおよびポリオキシエチレンアルキルエステルから成る群より選択される界面活性剤を含んでなる請求項12に記載の経口剤形。
【請求項14】
経口剤形であって、
(a)有効量のアルカリ化剤;および
(b)多粒子であって、
(i)アジスロマイシン、
(ii)グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物、および
(iii)ポロキサマー
を含んでなる多粒子
を含んでなる経口剤形。
【請求項15】
ポロキサマーが、ポロキサマー407を含んでなる請求項14に記載の経口剤形。
【請求項16】
アルカリ化剤が、第三リン酸ナトリウムを含んでなる請求項14または15に記載の経口剤形。
【請求項17】
アルカリ化剤が、水酸化マグネシウムを更に含んでなる請求項16に記載の経口剤形。
【請求項18】
約250mgA〜約7gAのアジスロマイシンを含んでなる請求項14〜17のいずれか1項に記載の経口剤形。
【請求項19】
1.8gA〜2.2gAのアジスロマイシンを含んでなる請求項18に記載の経口剤形。
【請求項20】
前記アジスロマイシンが、アジスロマイシン二水和物である請求項14〜17のいずれか1項に記載の経口剤形。
【請求項21】
前記アジスロマイシンが、少なくとも70wt%結晶性である請求項14〜17のいずれか1項に記載の経口剤形。
【請求項22】
アジスロマイシン経口剤形であって、
(a)少なくとも約200mgの第三リン酸ナトリウム;
(b)少なくとも約100mgの水酸化マグネシウム、および
(c)多粒子であって、
(i)アジスロマイシン、
(ii)グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物、および
(iii)ポロキサマー407
を含んでなる多粒子
を含んでなり、約1.5gA〜約4gAのアジスロマイシンを含有する経口剤形。
【請求項23】
請求項22に記載の経口剤形であって、
(a)300mg〜400mgの第三リン酸ナトリウム;および
(b)200mg〜300mgの水酸化マグネシウム
を含んでなる経口剤形。
【請求項24】
1.8gA〜2.2gAのアジスロマイシンを含んでなる請求項22または23に記載の経口剤形。
【請求項25】
前記アジスロマイシンが、アジスロマイシン二水和物である請求項22〜24のいずれか1項に記載の経口剤形。
【請求項26】
前記アジスロマイシンが、少なくとも70wt%結晶性である請求項22〜24のいずれか1項に記載の経口剤形。
【請求項27】
ヒトにアジスロマイシンを投与することに関連した胃腸副作用の頻度を減少させるためのアジスロマイシン製剤と有効量のアルカリ化剤との併用剤であって、前記アジスロマイシン製剤および前記有効量のアルカリ化剤を該ヒトにほぼ同時に投与するための併用剤。
【請求項28】
細菌感染または原生動物感染を治療することを必要としているヒトの細菌感染または原生動物感染を治療するためのアジスロマイシン製剤と有効量のアルカリ化剤との併用剤であって、前記アジスロマイシン製剤および前記有効量のアルカリ化剤を該ヒトにほぼ同時に投与するための併用剤。
【請求項29】
約250mgA〜約7gAのアジスロマイシンを前記ヒトに投与するための請求項27又は28に記載の併用剤。
【請求項30】
該アジスロマイシン製剤を一回用量で投与するための請求項29に記載の併用剤。
【請求項31】
約1.5gA〜約4gAのアジスロマイシンを投与するための請求項30に記載の併用
剤。
【請求項32】
1.8gA〜2.2gAのアジスロマイシンを投与するための請求項30に記載の併用
剤。
【請求項33】
請求項27又は28に記載の併用剤であって、30mgA/kg〜90mgA/kgのアジスロマイシンをヒトに投与するための併用剤であり、該ヒトが30kgまたはそれ未満の体重の小児である併用剤。
【請求項34】
該アジスロマイシン製剤を一回用量で投与するための請求項33に記載の併用剤。
【請求項35】
45mgA/kg〜75mgA/kgのアジスロマイシンを、30kgまたはそれ未満の体重の小児に投与するための請求項34に記載の併用剤。
【請求項36】
請求項27または28に記載の併用剤であって、前記アジスロマイシン製剤が、
(a)アジスロマイシン;および
(b)薬学的に許容しうる担体
を含んでなるアジスロマイシン多粒子を含んでなる併用剤。
【請求項37】
前記担体が、グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物を含んでなる請求項36に記載の併用剤。
【請求項38】
前記アジスロマイシン多粒子が、溶解促進剤を更に含んでなる請求項36に記載の併用剤。
【請求項39】
前記溶解促進剤が、ポロキサマー、ドキュセート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、アルキル硫酸塩、ポリソルベートおよびポリオキシエチレンアルキルエステルから成る群より選択される界面活性剤を含んでなる請求項38に記載の併用剤。
【請求項40】
該アルカリ化剤が、第三リン酸ナトリウムを含んでなる請求項39に記載の併用剤。
【請求項41】
該アルカリ化剤が、水酸化マグネシウムを更に含んでなる請求項40に記載の併用剤。
【請求項42】
請求項31または請求項35に記載の併用剤であって、
(a)該アルカリ化剤が、少なくとも約200mgの第三リン酸ナトリウムおよび少なくとも約100mgの水酸化マグネシウムを含んでなり;そして
(b)該アジスロマイシン製剤が、アジスロマイシン多粒子であって、
(i)アジスロマイシン、
(ii)グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物、および
(iii)ポロキサマー407
を含んでなる多粒子
を含んでなる併用剤。
【請求項43】
請求項42に記載の併用剤であって、前記ヒトに一回用量で経口投与するためのものであり、
(a)該アルカリ化剤が、300mg〜400mgの第三リン酸ナトリウムおよび200mg〜300mgの水酸化マグネシウムを含んでなり;そして
(b)該アジスロマイシン多粒子が、
(i)アジスロマイシン、
(ii)グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物、および
(iii)ポロキサマー407
を含んでなり、そして前記多粒子が、1.5gA〜4gAのアジスロマイシンを含有する
併用剤。
【請求項44】
アジスロマイシンが、アジスロマイシン二水和物を含んでなる請求項43に記載の併用剤。
【請求項45】
アジスロマイシン多粒子であって、
(a)アジスロマイシン;
(b)界面活性剤;および
(c)薬学的に許容しうる担体
を含んでなり、該アジスロマイシンの少なくとも70wt%が結晶性であるアジスロマイシン多粒子。
【請求項46】
前記界面活性剤がポロキサマーを含んでなり、そして、前記担体が、グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネートおよびグリセリルトリベヘネートの混合物を含んでなる請求項45記載のアジスロマイシン多粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−132700(P2010−132700A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44743(P2010−44743)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2004−228455(P2004−228455)の分割
【原出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】