説明

少なくとも一層のポリエチレン層と、少なくとも一層のバリヤーのポリマー層とを含む構造

【課題】自動車で流体の貯蔵または輸送に用いられる装置の製造に用いられる少なくとも一種のポリエチレン層と、少なくとも一種のバリヤーのポリマーの層とを含む構造。バリヤーのポリマーの層が貯蔵または輸送される流体と接するパイプ、タンク、ボトル、容器にすることができる。
【解決方法】 下記の層を下記の順番で有し、各層が各接触部分で接着している構造:バリヤーのポリマーの層、エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン1〜80%とエポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー99〜20%(全体で100重量%)とからなる結合材料の層、ポリエチレン層。エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリエチレンのブレンドがバリヤーのポリマーと共押出しするのに十分な機械的強度を有する場合には結合材料の層に隣接するポリエチレン層を省略できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一層のポリエチレン層と、少なくとも一層のバリヤーのポリマー層とを含む構造に関するものである。
本発明のこの構造は例えばバリヤのポリマー層が貯蔵または輸送される流体と接するパイプ、タンク、ボトルおよび容器の製造で用いられる。これらの物品は熱可塑性高分子材料の通常の工業的方法、例えば共押出し、共押出し/ブロー成形で製造できる。
「バリヤー」とは、例えばこの層によって自動車で用いられるガソリンが通過できないか、ほとんど通過しないということを意味する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンはガソリンに対したバリヤー性を有するが、そのバリヤー特性は多くの用途で不充分である。また、上記構造ではバリヤーのポリマー層を含む必要があるが、バリヤーのポリマー層の大部分はポリエチレンと非相溶である。そのためポリエチレン層とバリヤーのポリマー層との間に結合材料の層を入れる必要がある。
エポキシ官能基を有するポリエチレン、例えばグリシジル(メタ)アクリレート基を有するポリエチレンは,ポリエチレンとPPSまたはポリエステルのようなバリヤー材料との間の結合材料になり得る。「PPS」とはポリ(フェニレンスルフィド)を意味する。
しかし、これらの材料は共押出しが難しく、しかも、剥離強度が極端に低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、エポキシ官能基を有するポリエチレンと、これと相溶性のある粘性ポリマーとのブレンドが優れた結合材料であるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は下記の層を下記の順番で有し、各層が各接触部分で互いに接着している構造を提供する:
(1) バリヤーのポリマーの層、
(2) 下記からなる結合材料の層(全体で100重量%):
エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン 1〜80%、
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー 99〜20%、
(3) ポリエチレン層
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の変形例は下記の層を下記の順番で有し、各層は各接触部分で互いに接着している構造を提供する:
(1) バリヤーのポリマーの層、
(2) 下記からなる結合材料の層(全体で100重量%):
エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン 1〜80%、
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー 99〜20%、
(3) ポリエチレンの層、
(4)下記からなる結合材料の層(全体で100重量%):
エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン 1〜80%、
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー 99〜20%、
(5)バリヤーのポリマーの層
【0006】
本発明の好ましい一実施例では、エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマーはポリエチレンである。
本発明の一変形例では、下記の場合に結合材料の層と隣接するポリエチレン層を省略することができる:
(1) エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマーがポリエチレンである場合
(2) エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリエチレンのブレンドがバリヤーのポリマーと共押出しするのに十分な機械的強度を有する場合
【0007】
すなわち、この変形例では構造が下記の層のいずれかを下記の順番で有し、各層はそれぞれの接触部分で接着している:
(1) バリヤーのポリマーの層、
(2) 下記からなる結合材料の層(全体で100重量%):
エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン 1〜80%、
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー 99〜20%、
または、
(1) バリヤーのポリマーの層、
(2) 下記からなる結合材料の層(全体で100重量%):
エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン 1〜80%、
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー 99〜20%、
(3) バリヤーのポリマーの層、
【0008】
この構造は特に自動車で流体の貯蔵または輸送に用いられる装置の製造で用いられる。
本発明はさらに、この装置に関するものである。この装置はバリヤーのポリマーの層が貯蔵または輸送される流体と接するパイプ、タンク、ボトルまたは容器にすることができる。これらの構造は他の材料からなる他の層を含むことができる。
【0009】
バリヤーのポリマーの例としてはPVDFが挙げられる。PVDFとはフッ化ビニリデン(VDF)のホモポリマーと、少なくとも50重量%のVDFとVDFと共重合可能な少なくとも一種の他のモノマーとを含むフッ化ビニリデン(VDF)コポリマーとを意味する。コモノマーはフッ素化されたモノマーが好ましく、例えばフッ化ビニル;トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2−ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP);ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)およびペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)等のペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル;ペルフルオロ(1,3−ジオキソール);ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(PDD)の中から選択することができる。コモノマーはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロエチレン(VF3)およびテトラフルオロエチレン(TFE)の中から選択するのが好ましい。
【0010】
PVDFは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、さらに好ましくは少なくとも85重量%のVDFを含むのが好ましい。コモノマーはHFPであるのが有利である。
さらに、PBT〔ポリ(ブチレンテレフタレート〕、PEN〔ポリ(エチレンナフタレート〕およびPBN〔ポリ(ブチレンナフタレート)〕等のポリエステルを挙げることができる。
さらに、ポリケトン、ポリ(ジメチルケテン)およびPPSが挙げられる。ポリ(ジメチルケテン)は下記文献に開示されている。
【特許文献1】欧州特許第1,388,553号公報
【特許文献2】欧州特許第1,002,819号公報
【特許文献3】国際特許第WO 04/044030号公報
【0011】
バリヤーのポリマーはPVCでもポリプロピレンでもない。
バリヤーのポリマーは一部または全部が官能化されていてもよい。すなわち、バリヤーのポリマーの層(全体で100重量%)は1〜100%の官能化されたバリヤーのポリマーと、99〜0%のバリヤーのポリマーとからなる。バリヤーのポリマーの層(全体で100重量%)は1〜40%の官能化されたバリヤーのポリマーと、99〜60%のバリヤーのポリマーとからなるのが有利である。このバリヤーのポリマーの層(全体で100重量%)は15〜40%の官能化されたバリヤーのポリマーと、85〜60%のバリヤーのポリマーとからなるのが好ましい。
【0012】
本発明の別の実施例ではバリヤーのポリマーの層を2つの層で構成することができ、その一方の層(この層は結合材料の層と接する)を1〜100%の官能化されたバリヤーのポリマーと、99〜0%のバリヤーのポリマーとのブレンド(全体で100重量%)とで構成し、その他方の層をバリヤーのポリマーにする。
本発明の有利な一実施例では、バリヤーのポリマーの層を2つの層で構成することができ、その一方の層(この層は結合材料の層と接する)を1〜40%の官能化されたバリヤーのポリマーと、99〜60%のバリヤーのポリマーとのブレンド(全体で100重量%)で構成し、他方の層をバリヤーのポリマーにする。
本発明の好ましい一実施例では、バリヤーのポリマーの層が2つの層からなり、その一方の層(この層は結合材料の層と接する)を15〜40%の官能化されたバリヤーのポリマーと、85〜60%のバリヤーのポリマーとのブレンド(全体で100重量%)で構成し、他方の層をバリヤーのポリマーにする。
【0013】
官能化されたバリヤーのポリマーは、バリヤーのポリマー鎖に結合した少なくとも一種の極性基(エポキシ基、無水物基、酸基、酸の塩等)を有するバリヤーのポリマーである。その例としては不飽和モノマーがグラフトされたPVDF、VDFのコポリマーおよび少なくとも一種の不飽和モノマーが挙げられ、必要に応じてさらに別のコモノマーを含み、その場合ポリマーはターポリマーになる。
【0014】
不飽和モノマーがグラフトされたPVDFは下記(a)〜(d)の工程を含むグラフト化法で製造できる:
(a) フッ素ポリマーを不飽和モノマーと溶融混合し、
(b) (a)で得られたブレンドをフィルム、シート、顆粒または粉末の形にし、
(c) (b)で得られた生成物に空気の非存在下で光子(γ)または電子(β)を線量1〜15Mradで照射し、
(d) 必要な場合にはさらに、(c)で得られた生成物を処理してフッ素ポリマーにグラフトしていない不飽和モノマーの全部または一部を除去する。
【0015】
不飽和グラフトモノマーの例としてはカルボン酸とその誘導体、例えば酸無水物、酸塩化物、イソシアネート、オキサゾリン、エポキシド、アミンまたはヒドロキシドが挙げられる。不飽和モノマーはC=C二重結合を1つしか含まないのが好ましい。そうすることによってPVDFの完全架橋(材料の押出し加工時に粘性増加、その他の問題につながる)を避けることができる。
【0016】
不飽和カルボン酸は2〜20個の炭素原子を含むもので、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸が挙げられる。これらの酸の官能性誘導体には例えば不飽和カルボン酸の無水物、エステル誘導体、アミド誘導体、イミド誘導体および金属塩(アルカリ金属塩等)がある。ウンデシレン酸も挙げられる。
特に好ましいグラフトモノマーは4〜10個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸とその誘導体、特にその無水物である。ほとんどホモ重合をせず、良好な接着値を示す無水マレイン酸が好ましい。VDFと無水マレイン酸との共重合は現在の工業的な分散媒体(乳化剤または懸濁剤)では実施が容易でないため、無水マレイン酸のグラフトが好ましい。
【0017】
段階(a)は熱可塑性樹脂工業で使用される押出機または混練機等の任意の混合装置で実施する。
フッ素ポリマーと不飽和モノマーとの比率は、0.1〜10重量%の不飽和モノマーに対してフッ素ポリマーの重量比率が90〜99.9重量%であるのが有利である。0.1〜5重量%の不飽和モノマーに対してフッ素ポリマーの重量比率が95〜99.9重量%であるのがさらに好ましい。
段階(a)後のフッ素ポリマー/不飽和モノマー混合物では、段階(a)の初めに導入した不飽和モノマーの約10〜50%が失われるということがわかっている。この比率は不飽和モノマーの揮発性および種類に依存する。このモノマーは押出機または混練機中で脱気され、ベント回路で回収される。
【0018】
段階(c)では、段階(b)の後に回収された生成物をポリエチレン袋に包装し、空気を抜き、袋を閉じるのが好ましい。照射方法としては電子照射(一般にβ照射とよばれる)と光子照射(一般にγ照射とよばれる)を用いることができる。線量は2〜6Mrad、好ましくは3〜5Mradであるのが有利である。照射源はコバルト60であるのが好ましい。
【0019】
グラフト法は「低温」、一般に100℃以下、さらには50℃以下の温度で行う。すなわち、従来のグラフト化法とは違ってPVDF/不飽和モノマー化合物を押出機で溶融状態にしない。従って、半結晶性フルオロポリマーの場合(例えばPVDFを用いた場合)、グラフトが非晶相中で起こり、結晶相中で起こらない。これに対して溶融押出機によるグラフト化の場合には均質なグラフト化が起こる。この違いが基本的な違いである。その結果、照射によるグラフトの場合と押出機によるグラフトの場合とでPVDF鎖での不飽和モノマーの分布に違いが生じる。
【0020】
段階(d)ではグラフトされていないモノマーを任意の手段で除去する。段階(c)の初めに存在するモノマーに対するグラフト化されたモノマーの比率は50〜100%である。フッ素ポリマーおよびグラフト化官能基に対して不活性な溶媒で洗浄することができる。例えば、無水マレイン酸を用いてグラフトしたときには洗浄にクロロベンゼンを用いることができる。あるいは、段階(c)で回収された生成物を単に真空脱気することもできる。
【0021】
結合材料の層およびエポキシ官能基を有するポリエチレンは、エポキシ官能基がグラフトされたポリエチレンまたはエチレンと不飽和エポキシドとのコポリマーにすることができる。
エチレンと不飽和エポキシドとのコポリマーの例としてはエチレンと(メタ)アクリレートと不飽和エポキシドとのコポリマーまたはエチレンと飽和カルボン酸ビニルエステルと不飽和エポキシドとのコポリマーが挙げられる。これらのコポリマーは高圧共重合法(1000bar以上のP)で製造できる。エポキシドの量はコポリマーの最大15重量%以下にすることができ、エチレンの量は少なくとも50重量%にすることができる。エポキシドの比率は2〜12重量%であるのが有利である。アルキル(メタ)アクリレートの比率は0〜40重量%、好ましくは5〜35重量%であるのが有利である。
【0022】
エチレンとアルキル(メタ)アクリレートと不飽和エポキシドとのコポリマーが有利である。アルキル(メタ)アクリレートはアルキルが1〜10個の炭素原子を有するのが好ましい。
使用可能なアルキルアクリレートまたはメタクリレートの例としては特にメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
MFI(溶融状態での流動指数)は例えば0.1〜50(g/10分190℃、2.16kg)にすることができる。
【0023】
使用可能な不飽和エポキシドの例としては特に下記のものが挙げられる:
(1)脂肪族グリシジルのエステルおよびエーテル、例えばアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、マレイン酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、グリシジルアクリレートおよびメタクリレート、
(2)脂環式グリシジルのエステルおよびエーテル、例えば2−シクロヘキセン−1−イルグリシジルエーテル、カルボン酸シクロヘキセン−4,5−ジグリシジル、カルボン酸シクロヘキセン−4−グリシジル、カルボン酸5−ノルボルネン−2−メチル−2−グリシジルおよびジカルボン酸エンドシスビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジグリシジル。
エチレンと共重合が容易で且つ化学反応性が良いグリシジルメタクリレートが好ましい。
【0024】
結合材料(ここではエポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマー)の層の例としては、水素化SBSブロックコポリマー、例えばSEBS、EPR、EPDMおよびポリエチレンが挙げられる。このポリエチレンはLDPE、LLDPE、HDPEおよび気相、塊状または溶液中でチーグラー触媒、ラジカル開始剤またはメタロセン触媒(モノサイト触媒作用)を用いた任意の方法で製造した任意のポリエチレンにすることができる。この相溶性のある粘性ポリマーのMFI(溶融状態での流動指数)は0.1〜1、好ましくは0.15〜0.5(g/10分190℃、2.16kg)である。HDPEであるのが好ましい。
【0025】
結合材料の層の成分の比率は、
エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン 1〜80%、
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー 99〜20%
であり、
エポキシ官能基を有するポリエチレン 10〜50%、
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマー 90〜50%
であるのが有利であり、
エポキシ官能基を有するポリエチレン 10〜40%、
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマー 90〜60%
であるのが好ましい。
結合材料のMFIは0.15〜1g/10分(190℃、2.16kgで測定)であるのが有利である。
【0026】
ポリエチレン層のポリエチレンはLDPE、LLDPE、HDPEおよび気相、塊状または溶液中でチーグラー触媒、ラジカル開始剤またはメタロセン触媒(モノサイト触媒)を用いた任意の方法で製造した任意のポリエチレンにすることができる。−50℃の低温で優れた引張特性および耐衝撃性を有するHDPEが有利である。
【0027】
本発明の構造は他の層を含むことができる。
構造の厚さは任意であり、厚さは例えば100μm〜25mmである。
変形例では、エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマーがポリエチレンであり、エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のあるこの粘性ポリエチレンのブレンドはバリヤーのポリマーと共押出しするのに十分な機械的強度を有する。結合材料の層に隣接するポリエチレン層は省略できる。この変形例では上記の全ての条件、特に結合材料の組成、バリヤー層(一層または複数層)の組成および材料の種類が適用でき、この変形例に特有のものではない。すなわち、この変形例ではエポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマーはHDPEであるのが有利である。
【実施例】
【0028】
実施例では下記ポリマーを使用した:
Kynar(登録商標)720
アトフィナ社から市販のPVDFのホモポリマー。MVI(メルトボリュームインデックス:10cm3/10分(230℃/5kg)
PVDF−1
9000ppmの無水マレイン酸がグラフトされたPVDFホモポリマー(Kynar(登録商標)720)。MVI(メルトボリュームインデックス:7cm3/10分(230℃/5kgで測定)。グラフトは二軸スクリュー押出機を用いて230℃、150回転/分、押出量10kg/時で調製した無水マレイン酸とKynar(登録商標)720)との混合物をコバルト60で照射して行った。照射は3Mrad下で17時間行った。照射後、製品を真空下に130℃で一晩置き、グラフトされなかった無水マレイン酸を除去する。グラフトされた無水マレイン酸の含有率(9000ppm)は赤外分光法で測定した。
【0029】
Lotader(登録商標)8840
アトフィナ社のエチレンとグリシジルメタクリレートとのコポリマーで、MVI(メルトボリュームインデックス):5cm3/10分(190℃/2.16kg)で、92重量%のエチレンと8重量%のグリシジルメタクリレートとからなる。
Finathen(登録商標)3802HDPE
アトフィナ社の高密度ポリエチレンで、MFIが0.2g/10分(190℃/2.16kg)で、密度が0.938。
Fortron(登録商標)0214
Ticona社のポリ(フェニレンスルフィド)で、MFIが57(315℃、5kg)、密度が1.35。
【0030】
実施例1(本発明)
McNeil型押出機で、厚さ2.6mmのFinanthene(登録商標)3802の層上に、押出機下部でドライブレンディングして得られた50重量%のLotader(登録商標)8840と50%のFinathen(登録商標)3802HDPEとの厚さ100μmのブレンドの層を共押出し、この層の上に30%のPVDF−1と70%のKynar(登録商標)720との厚さ300μmのブレンドの層を内側から外側に有する3層構造を共押出しした。最終構造は外径が32mmで、厚さが3mmである。この共押出しは使用した各押出機および共押出ヘッドの温度を240℃にして行った。ダイは250℃の温度に維持する。t+24時間(すなわち、押出から24時間後)の剥離接着強度は60N/cmである。得られた構造には共押出し欠陥は全く見られず、内側表面は極めて滑らかで、共押出しの波打ちは全くなかった。
【0031】
実施例2(比較例)
McNeil型の押出機で、厚さ2.6mmのFinanthene(登録商標)3802の層の上に、厚さ100μmのLotader(登録商標)8840を共押出し、この層の上に30%のPVDF−1と70%のKynar(登録商標)720との厚さ300μmのブレンドの層を共押出して3層構造を製造した。最終構造は外径が32mmで、厚さが3mmである。この共押出は使用した各押出機および共押出ヘッドの温度を240℃にして行った。ダイは250℃の温度に維持する。t+24時間での剥離接着強度は50N/cmである。内側表面にはわずかに共押出しの波打ちが見られる。
【0032】
実施例3(比較例)
McNeil型の押出機で厚さ2.6mmのFinanthene(登録商標)3802の層の上に、厚さ100μmのLotader(登録商標)8840を共押出し、この層の上に厚さ300μmのFortron(登録商標)0214の層を共押出して3層構造を製造した。最終構造は外径が32mmで、厚さが3mmである。この共押出しはPPS押出機の温度を315℃にし、他の材料および共押出ヘッドの温度を240℃にして行った。ダイは315℃の温度に維持する。t+24時間での剥離接着強度は40N/cmである。内側表面にはわずかに共押出しの波打ちが見られる。
【0033】
実施例4(本発明)
McNeil型の押出機で、厚さ2.6mmのFinanthene(登録商標)3802の層の上に、押出機下部でドライブレンディングによって得られた50重量%のLotader(登録商標)8840と50%のFinathen(登録商標)3802HDPEとの厚さ100μmのブレンドの層を共押出し、この層の上に厚さ300μmのFortron(登録商標)0214の層を共押出して3層構造を製造した。最終構造は外径が32mmで、厚さが3mmである。この共押出しはPPS押出機の温度を315℃にし、他の材料および共押出ヘッドの温度を240℃にして行った。ダイは315℃の温度に維持する。t+24時間での剥離接着強度は45N/cmである。得られた構造には少量のゲル粒子が見られるが、共押出欠陥は全く見られず、内側表面は極めて滑らかで、波打ちは全くない。
【0034】
実施例5(本発明)
McNeil型の押出機によって、厚さ2.6mmのFinanthene(登録商標)3802の層の上に、押出機の下部でドライブレンディングによって得られた30重量%のLotader(登録商標)8840と70%のFinathen(登録商標)3802HDPEとの厚さ100μmのブレンドの層を共押出し、この層の上に30%のPVDF−1と70%のKynar(登録商標)720との厚さ300μmのブレンドの層を共押出して3層構造を製造した。最終構造は外径が32mmで、厚さが3mmである。この共押出しは使用した各押出機および共押出ヘッドの温度を240℃にして行った。ダイは250℃の温度に維持した。t+24時間(すなわち、押出から24時間後)の剥離接着強度は65N/cmである。得られた構造には共押出欠陥が全く見られず、内側表面は極めて滑らかで、共押出の波打ちは全くない。
【0035】
実施例6(本発明)
McNeil型の押出機によって、厚さ2.6mmのFinanthene(登録商標)3802の層の上に、押出機の下部でドライブレンディングによって得られた15重量%のLotader(登録商標)8840と85%のFinathen(登録商標)3802HDPEとの厚さ100μmのブレンドの層を共押出し、この層の上に30%のPVDF−1と70%のKynar(登録商標)720との厚さ300μmのブレンドの層を共押出して3層構造を製造した。最終構造は外径が32mmで、厚さが3mmである。この共押出しは使用した各押出機および共押出ヘッドの温度を240℃にして行った。ダイは250℃の温度に維持した。t+24時間(すなわち押出から24時間後)の剥離接着強度は70N/cmである。得られた構造には共押出欠陥が全く見られず、内側表面は極めて滑らかで、共押出の波打ちは全くない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の層を下記の順番で有し、各層は各接触部で接着している構造:
(1) バリヤーのポリマーの層、
(2) エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン 1〜80%と、このエポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー 99〜20%とからなる(全体で100重量%)結合材料の層:
(3) ポリエチレンの層
【請求項2】
下記の層を下記の順番で有し、各層は各接触部で接着している構造:
(1) バリヤーのポリマーの層、
(2) エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン 1〜80%と、このエポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー 99〜20%とからなる(全体で100重量%)結合材料の層、
(3) ポリエチレンの層、
(4) エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン 1〜80%と、このエポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー 99〜20%とからなる(全体で100重量%)結合材料の層、
(5)バリヤーのポリマーの層
【請求項3】
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマーが水素化SBSブロックコポリマー、EPR、EPDMおよびポリエチレンの中から選択される請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマーがポリエチレンである請求項3に記載の構造。
【請求項5】
各層が各接触部分で互いに接着した下記の層:
(1) バリヤーのポリマーの層、
(2) エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン 1〜80%と、このエポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー 99〜20%とからなる(全体で100重量%)結合材料の層、
または、各層が各接触部分で互いに接着した下記の層:
(1) バリヤーのポリマーの層、
(2) エポキシ官能基を有する少なくとも一種のポリエチレン 1〜80%とこのエポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある少なくとも一種の粘性ポリマー 99〜20%とからなる(全体で100重量%)結合材料の層、
(3) バリヤーのポリマーの層、
のいずれかを上記の順番で有する構造。
【請求項6】
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマーがHDPEである請求項1〜5のいずれか一項に記載の構造。
【請求項7】
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマーのMFIが0.1〜1g/10分(190℃、2.16kg)である請求項1〜6のいずれか一項に記載の構造。
【請求項8】
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマーのMFIが0.15〜0.5g/10分(190℃、2.16kg)である請求項7に記載の構造。
【請求項9】
結合材料の層のエポキシ官能基を有するポリエチレンがエチレンと不飽和エポキシドとのコポリマーである請求項1〜8のいずれか一項に記載の構造。
【請求項10】
結合材料の比率が下記である請求項1〜9のいずれか一項に記載の構造:
エポキシ官能基を有するポリエチレン 10〜50%、
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマー 90〜50%。
【請求項11】
結合材料の比率が下記である請求項10に記載の構造:
エポキシ官能基を有するポリエチレン 10〜40%、
エポキシ官能基を有するポリエチレンと相溶性のある粘性ポリマー 90〜60%。
【請求項12】
結合材料のMFIが0.15〜1g/10分(190℃、2.16kgで測定)である請求項1〜11のいずれか一項に記載の構造。
【請求項13】
バリヤーのポリマーの層が1〜100%の官能化されたバリヤーのポリマーと、99〜0%のバリヤーのポリマーとからなる(全体で100重量%)請求項1〜12のいずれか一項に記載の構造。
【請求項14】
バリヤーのポリマーの層が1〜40%の官能化されたバリヤーのポリマーと、99〜60%のバリヤーのポリマーとからなる(全体で100重量%)請求項13に記載の構造。
【請求項15】
バリヤーのポリマーの層が15〜40%の官能化されたバリヤーのポリマーと、85〜60%のバリヤーのポリマーとからなる(全体で100重量%)請求項13に記載の構造。
【請求項16】
バリヤーのポリマーの層が2つの層からなり、その一つの層が1〜100%の官能化されたバリヤーのポリマーと、99〜0%のバリヤーのポリマーとのブレンド(全体で100重量%)からなり、他方の層がバリヤーのポリマーからなり、この層が結合材料の層と接している請求項1〜15のいずれか一項に記載の構造。
【請求項17】
バリヤーのポリマーの層が2つの層からなり、その一つの層が1〜40%の官能化されたバリヤーのポリマーと、99〜60%のバリヤーのポリマーとのブレンド(全体で100重量%)からなり、他方の層がバリヤーのポリマーからなり、この層が結合材料の層と接している請求項16に記載の構造。
【請求項18】
バリヤーのポリマーの層が2つの層からなり、その一つの層が15〜40%の官能化されたバリヤーのポリマーと、85〜60%のバリヤーのポリマーとのブレンド(全体で100重量%)からなり、他方の層がバリヤーのポリマーからなり、この層が結合材料の層と接している請求項16に記載の構造。
【請求項19】
バリヤーのポリマーがPVDFである請求項1〜18のいずれか一項に記載の構造。
【請求項20】
バリヤーのポリマーの層が貯蔵または輸送される流体と接する請求項1〜19のいずれか一項に記載の構造からなる流体の貯蔵または輸送用装置。

【公開番号】特開2006−82554(P2006−82554A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267945(P2005−267945)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(591004685)アルケマ (112)
【Fターム(参考)】