説明

少なくとも一部がポリトリメチレンエーテルグリコールを起源とするポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーの新規な使用

【課題】少なくとも一部がポリトリメチレンエーテルグリコールから得られる、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーの新規な使用。
【解決手段】
下記一般式:(I)−[PA−PE]n−(ここで、PAはポリアミドブロック、PEはポリエーテルブロック、nは−PA−PE−単位の数を表す)のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含み、上記ブロックは全てポリトリメチレンエーテルグリコール(PO3G)から得られるか、PO3Gと他とのコポリマーから得られ、上記コポリマーは(1)通気−防水製品、または、気体の種類に応じた選択的拡散膜を形成する熱可塑性ポリマーへ通気防水特性を付与する添加剤、(2)フィルムに加工されるポリアミド6、ポリアミド6.6または6/6.6ベースのコポリアミドへの、これらポリアミドの機械特性および/または加工性を改良するための添加剤としての使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部がポリトリメチレンエーテルグリコール(以下、PO3G)を起源とする、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーの新規な使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ(エーテル−ブロック−アミド)(PEBA)ブロックのポリアミドブロックはリジッドセグメントであり、ポリエーテルブロックはソフトセグメントであることは知られている。
ポリアミド(PA)ブロックとポリエーテル(PE)ブロックとのコポリマーすなわちPAとPEブロックを有するコポリマー(PEBA)は、反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合で得られ、共重縮合の例としては下記(1)〜(3)がある:
(1)ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックとジカルボキシルまたはジイソシアネート鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとの共重縮合、
(2)ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシル化したα、ω-ポリオキシアルキレンブロックをシアノエチル化および水素添加して得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとの共重縮合、
(3)ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテルジオールとの共重縮合(この場合に得られる生成物を特にポリエーテルエステルアミドという)。
【0003】
ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖制限剤のジカルボン酸の存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖制限剤のジアミン酸の存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。
【0004】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーはランダムに分散する単位を含んでいてもよい。このポリマーはポリエーテルとポリアミドブロック先駆体との同時反応で製造される。例えば、ポリエーテルジオールと、ポリアミド先駆体と、連鎖制限剤の二酸とを反応させるか、ポリエーテルジアミンと、ポリアミド先駆体と、連鎖制限剤の二酸とを反応させることができる。基本的にPAブロックの生成中のどの時点で連鎖制限剤を用いるかによって種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られる。さらに、各成分がランダムに反応し、ポリマー鎖中に分散した成分を含むことがある。
【0005】
本発明のPAブロックとPEブロックとを有するコポリマー中には2つのタイプのポリアミドブロックが存在するのが有利である。ポリアミドブロックは「ホモポリアミド」構造(単一のモノマー、すなわち単一のラクタム、単一の[アミノ酸または単一の(二酸、ジアミン)の対])または上記の3つの型から選択される少なくとも2つのモノマーの混合物の重合による「コポリアミド」の構造にすることができる。
【0006】
酸末端基またはアミン末端基を有するポリアミドブロックを作る場合には、連鎖制限剤の二酸またはジアミンの存在下でポリアミドブロックを作る。先駆体が既に二酸またはジアミンを含む場合は、それらを過剰に用いるだけでよいが、下記で定義のジカルボン酸とジアミンとの群の中から選択される別の二酸またはジアミンを用いることもできる。
【0007】
下記文献にはポリエーテルエステルアミド、特にPA12−ポリテトラメチレングリコール(PTMG)をベースにした通気性防水フィルムが記載示されている。
【特許文献1】フランス国特許出願第8815441号公報
【0008】
この通気性防水フィルム、特にポリエーテルエステルアミドを主成分とするものは透過性が高い場合、高い吸湿性を有し、膨張し、脆くなるという欠点を有する。別の問題は水分吸収性が過剰に低く、水蒸気透過性が低下することにある。
下記文献には揮発性物質の均一な拡散を可能にするポリエーテルエステルアミドタイプのポリマー樹脂から成る芳香族樹脂が記載されている。
【特許文献2】国際特許第WO97/26020号公報
【0009】
この文献には気体の選択的拡散に開する記載はない。下記文献には、ポリアミドと、少なくとも一種のPEBAとを含む、親水性および/または帯電防止挙動を改質する熱可塑性ポリマー組成物が記載されている。
【特許文献3】国際特許第WO02/02696号公報
【0010】
下記文献にはPEGを主成分とするポリエーテルブロックを有するPEBAと、PEGを含まないPTMGまたはPPGをベースにしたポリエーテルブロックを有するPEBAとを含むポリマーブレンドが記載されている。
【特許文献4】欧州特許第0,476,963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、ポリトリメチレンエーテルグリコールから得られる新規な用途を有するポリエーテルブロックを見出した。
本発明のPO3GベースのPEBAポリマーは、絶縁マトリックスの抵抗性を改良する特性の他に、下記(i)〜(iii)の特性:
(i)通気−防水性(impre-respirantes)、
(ii)気体選択拡散特性(すなわち、ポリマー膜をある気体は通ることができるが、ある気体は通ることができない)
(iii)添加した時に、ポリマーまたはポリマー組成物の機械特性を改善する性質、
がPTMGベースのPEBAタイプのポリマーよりも良い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象は、下記一般式:
(I)−[PA−PE]n
(ここで、PAはポリアミドブロックを表し、PEはポリエーテルブロックを表し、nは上記コポリマーの−PA−PE−単位の数を表し、さらに、上記ブロックは、全てポリトリメチレンエーテルグリコール(PO3G)から得られるか、PO3Gと、ポリエチレンエーテルグリコール(PEG)、ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)およびポリヘキサメチレンエーテルグリコールから選択される少なくとも一種とのブレンド物またはコポリマーおよびテトラヒドロフラン(THF)と3−アルキルテトラヒドロフラン(3MeTHF)とのコポリマーから得られる)
のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーの下記使用にある:
(1)通気−防水製品、または、気体の種類に応じた選択的拡散膜を形成する熱可塑性ポリマーへ通気防水特性を付与する添加剤、
(2)フィルムに加工されるポリアミド6、ポリアミド6.6または6/6.6ベースのコポリアミドへの、これらポリアミドの機械特性および/または加工性を改良するための添加剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一実施例では、PEブロックの分子量は<800である。
本発明の一実施例では、PEブロックの分子量は少なくとも250である。
本発明の一実施例では、PEブロックの分子量が250〜650である。
本発明の一実施例では、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、さらに好ましくは少なくとも30重量%、有利には少なくとも50重量%、さらに有利には少なくとも75重量%、さらに好ましくは85〜100重量%(PEブロックの全重量に対する重量%)のPEブロックがポリトリメチレンエーテルグリコールから得られる。
【0014】
上記コポリマーの全重量に対するPAブロックの重量%は、特に少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも15%且つ好ましくは90%以下、さらに好ましくは40〜60%である。
PAブロックの数平均分子量は、特に少なくとも300、好ましくは少なくとも600且つ好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5000以下、さらに好ましくは3000以下である。
nは1以上、特に少なくとも5、さらに好ましくは少なくとも6且つ60の平均値以下、好ましくは30の平均値以下、さらに好ましくは25の平均値以下である。
【0015】
PAブロックは特にカルボキシル末端基を有し、PAブロックとPEブロックとの結合はエステル結合である。
カルボキシル末端基を含むPAブロックはラクタム、特にC4−C14ラクタム、アミノ酸、特にC4−C14アミノ酸、または両者とジカルボン酸、特にC4−C20ジカルボン酸との化合物の縮合生成物にすることができる。
ラクタムの例としてはカプロラクタム、エナントラクタムおよびラウリルラクタムが挙げられる。
アミノ酸の例としては、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸が挙げられる。
【0016】
ジカルボン酸の例としては1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ブタン二酸(acid butane-dioique)、アジピン酸、アゼライン酸、コルク酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸、さらにダイマー化した脂肪酸を挙げることができる。
カルボキシル末端基を含むPAブロックは、ジカルボン酸、例えば(C4−C20アルカン)ジカルボン酸と、ジアミン、特にC2−C20ジアミンとの縮合生成物にすることができる。
ジカルボン酸の例は既に述べたものである。
【0017】
ジアミンの例としてはヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)および2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)およびパラ−アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)の異性体、およびイソホロンジアミン(IPDA)、2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)およびピペラジンが挙げられる。
【0018】
特に、PAブロックはPA6、PA11、PA12、PA6,6、PA6,9、PA6,10、PA6,12、PA6,14、PA6,18、PA Pip,10およびPA9,6ブロックから選択することができる。
【0019】
PEブロックは全てポリトリメチレンエーテルグリコール(PO3G)から得られるか、または、PO3Gと、ポリエチレンエーテルグリコール(PEG)、ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールから選択される少なくとも一種と、および、テトラヒドロフラン(THF)と3−アルキルテトラヒドロフラン(3MeTHF)とのコポリマーから得られるものが有利である。上記タイプのPEブロックのシーケンスを含む「コポリエーテル」タイプのPEブロックを考えることもできる。コポリエーテルの末端鎖はその合成方法に応じてdiOH、diNH2、ジイソシアネートまたは二酸にすることができる。
【0020】
PO3Gに加えてPEブロック中のポリエーテルグリコールは平均分子量を、ポリエーテルグリコールを含むPEブロックの平均分子量が少なくとも約800、さらに好ましくは少なくとも約1000、好ましくは少なくとも約1500となるようにする。さらに、PEブロックを形成するのに用いられるポリエーテルグリコールの好ましくは少なくとも約50重量%、さらに好ましくは少なくとも75重量%、さらに好ましくは約85〜100重量%はPO3Gである。
【0021】
本発明は特に、上記の式(I)のコポリマーの、帯電防止製品としてまたはポリアミドのような熱可塑性ポリマーまたはエラストマーに帯電防止特性を与える添加剤としての使用に関する。
本発明はさらに特に、上記の式(I)のコポリマーの、通気−防水製品としてまたはポリアミドのような熱可塑性ポリマーまたはエラストマーに通気−防水特性を与える添加剤としての使用に関する。
本発明はさらに特に、上記の式(I)のコポリマーの、気体を種類に応じて選択拡散する膜での使用に関する。
特に、上記の式(I)のコポリマーはポリアミドの機械特性および/または加工性を改良するために、フィルムに加工されるポリアミド6、ポリアミド6,6または6/6.6をベースにしたコポリアミドの添加剤として用いることができる。
【0022】
本発明のコポリマーはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを結合できる任意の手段を用いて製造できる。実際には2段階法と1段階法の2つの方法が用いられる。2段階法では初めにポリアミドブロックを作り、第2段でポリエーテルと結合する。1段階法ではポリアミド先駆体、連鎖制限剤(または化学量論量より過剰のジカルボン酸またはジアミン)およびポリエーテルを同時に混合する。この場合には基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られ、各成分がランダムに反応してポリマー鎖中に分散した成分を含む。1段階法も2段階法も触媒の存在下で行うのが有利である。下記文献に記載の触媒を用いることができる。
【特許文献5】米国特許第4,331,786号明細書
【特許文献6】米国特許第4,115,475号明細書
【特許文献7】米国特許第4,195,015号明細書
【特許文献8】米国特許第4,839,441号明細書
【特許文献9】米国特許第4,864,014号明細書
【特許文献10】米国特許第4,230,838号明細書
【特許文献11】米国特許第4,332,920号明細書
【0023】
ポリエーテルジオールをポリエーテルジアミン、二酸またはジイソシアネートに変換し、PA−二酸またはジアミンブロックと反応させる方法を用いることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式:
(I)−[PA−PE]n
(ここで、PAはポリアミドブロックを表し、PEはポリエーテルブロックを表し、nは−PA−PE−単位の数を表し、上記ブロックは、全てポリトリメチレンエーテルグリコール(PO3G)から得られるか、PO3Gと、ポリエチレンエーテルグリコール(PEG)、ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)およびポリヘキサメチレンエーテルグリコールから選択される少なくとも一種とのブレンド物またはコポリマー、およびテトラヒドロフラン(THF)と3−アルキルテトラヒドロフラン(3MeTHF)とのコポリマーから得られる)
のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを含むコポリマーの、
(1)通気−防水製品、または、気体の種類に応じた選択的拡散膜を形成する熱可塑性ポリマーへ通気防水特性を付与する添加剤、
(2)フィルムに加工されるポリアミド6、ポリアミド6.6または6/6.6ベースのコポリアミドへの、これらポリアミドの機械特性および/または加工性を改良するための添加剤、
としての使用。
【請求項2】
PEブロックの分子量が<800である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
PEブロックの分子量が少なくとも250である請求項2に記載のコポリマーの使用。
【請求項4】
PEブロックの分子量が250〜650である請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマーの使用。
【請求項5】
PEブロックの全重量に対して少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、さらに好ましくは少なくとも30重量%、有利には少なくとも50重量%、さらに有利には少なくとも75重量%、さらに好ましくは85〜100重量%がポリトリメチレンエーテルグリコールからのものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
上記コポリマーの全重量に対するPAブロックの重量%が少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも15%且つ好ましくは90%以下、さらに好ましくは40〜60%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
PAブロックの数平均分子量が少なくとも300、好ましくは少なくとも600且つ好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5000以下、さらに好ましくは3000以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
PEブロックの数平均分子量が少なくとも250、さらに好ましくは少なくとも1000、さらに好ましくは少なくとも1500且つ好ましくは5000以下、さらに好ましくは4000以下、さらに好ましくは2000以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
nが1以上、特に少なくとも5、さらに好ましくは少なくとも6且つ平均60以下、好ましくは平均30以下、さらに好ましくは平均25以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
PAブロックがカルボキシル末端基を有し、PAブロックとPEブロックとの結合がエステル結合である請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
カルボキシル末端基を含むPAブロックがラクタム、特にC4−C14ラクタム、アミノ酸、特にC4−C14アミノ酸、または両者とジカルボン酸、特にC4−C20ジカルボン酸との化合物の縮合生成物である請求項10に記載の使用。
【請求項12】
カルボキシル末端基を含むPAブロックがジカルボン酸、例えば(C4−C20アルカン)ジカルボン酸と、ジアミン、特にC2−C20ジアミンとの縮合生成物である請求項10に記載の使用。
【請求項13】
PAブロックがPA6、PA6,6、PA6,9、PA6,10、PA6,12、PA6,14、PA6,18、PA Pip,10およびPA9,6の中から選択される請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2009−526892(P2009−526892A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554830(P2008−554830)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050817
【国際公開番号】WO2007/093752
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】