説明

少なくとも1つのヒンジを備えるモノリシック構造

従来技術から既知の弾性ヒンジは、モノリシック構造(18)を回転構造部分(21)と固定構造部分(22)とに分離し、弾性ヒンジは、固定構造部分に対する回転構造部分の回転を可能にする。弾性ヒンジは、少なくとも1つの第一スロット状素子をモノリシック構造内に形成することによって形成され、そこでは、第一スロット状素子又は各第一スロット状素子は、弾性ヒンジ、よって、弾性ヒンジの少なくとも1つの回転軸を定める。従来技術から既知のそのような弾性ヒンジの主要な欠点は、特に回転軸の周りの傾斜剛性に関して、軸方向剛性に比較して低い横方向剛性である。増大した横方向剛性を備える弾性ヒンジをもたらすために、少なくとも1つの第二スロット状素子をモノリシック構造(18)内に形成することによって、少なくとも1つのロッド状又はプレート状素子(27)がモノリシック構造内に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ヒンジ、並びに、少なくとも1つの弾性ヒンジを含む装置に関する。さらに、本発明は、弾性ヒンジの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンジは、固定構造部分に対して移動又は回転する構造部分の変位又は回転を可能にするために用いられる。転がり軸受又はすべり継手のような広範囲なヒンジが従来技術から既知である。遊び、摩擦、及び、ヒシテリシス効果は、転がり軸受及びすべり継手の位置決め性能を制限する。
【0003】
高精度機構及び固着では、弾性ヒンジがしばしば用いられる。弾性ヒンジは、正確で、再現性があり、且つ、コスト効率の良い、転がり軸受及びすべり継手に関する代替手段を提供する。従来技術によれば、可能であれば穴との組み合わせで、モノリシック構造内に間隙又はスロットを形成することによって、弾性ヒンジはモノリシック構造に形成され、それによって、弾性ヒンジを除き、モノリシック構造を固定構造部分及び回転構造部分に分離する。穿孔プロセスによって或いはワイヤEDM(放電加工)によって、間隙又はスロットを形成し得る。
【0004】
米国特許第6,538,747号は、固定端支持部及び可動端支持部を含む位相シフトアダプタを開示しており、固定端支持部及び可動端支持部は、弾性機構を形成するためにカスケード状に取り付けられた一体形成の屈曲ヒンジによって接続されている。2つの支持部は、ワイヤEDMによって位相シフトアダプタのモノリシック構造に形成されたスロットによって分離されている。
【0005】
従来技術から既知の弾性ヒンジの欠点は、軸方向剛性に比べて低い横方向剛性であり、それはヒンジ部の方向である。従来技術によれば低いダム高さ対穴直径比によって実現される極めて低い傾斜剛性が特に求められるとき、横方向剛性は極めて低い。このために、負荷方向又は力方向が弾性ヒンジの軸方向と一致する用途のために、弾性ヒンジを主として用い得る。負荷方向又は力方向が弾性ヒンジの軸方向と一致しない用途のためには、従来技術に従った弾性ヒンジは機能しない。
【0006】
その問題を解決するために、そのような用途に関しては、所謂横バネ弾性ヒンジを形成するために、第一弾性ヒンジに対して直交する第二弾性ヒンジを加えることが従来技術から既知である。しかしながら、第二弾性ヒンジを加えることは、追加的な組立プロセスを必要とし、その結果、複雑で高価な設計になる。単純性、コンパクト性、及び、再現性のような弾性ヒンジの主要な利点が、そのような横バネ弾性ヒンジを形成することによって失われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
改良された横方向剛性を備えた新規な弾性ヒンジを提供することが本発明の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、モノリシック構造に形成された弾性ヒンジであり、弾性ヒンジは、モノリシック構造を回転構造部分と固定構造部分とに分離し、弾性ヒンジは、固定構造部分に対する回転構造部分の回転を許容し、弾性ヒンジは、少なくとも1つの第一スロット状素子をモノリシック構造内に形成し、第一スロット状素子又は各第一スロット状素子は、弾性ヒンジ、よって、弾性ヒンジの少なくとも1つの回転軸を定める弾性ヒンジであって、少なくとも1つの第二スロット状素子をモノリシック構造内に形成することによって、少なくとも1つのロッド状又はプレート状素子がモノリシック構造内に形成される弾性ヒンジを提供する。
【0009】
本発明の好適実施態様によれば、第一スロット状素子又は各第一スロット状素子は、平面を定める少なくとも2つのセグメントを含み、それによって、第二スロット状素子及び各第二スロット状素子は、対応する第一スロット状素子の1つのセグメントとほぼ平行に走り、それによって、ロッド状又はプレート状素子を定める。弾性ヒンジの回転軸は、第一スロット状素子又は各第一スロット状素子のセグメントによって定められる平面に対してほぼ直交して走る。
【0010】
第一スロット状素子及び第二スロット状素子又は各第一スロット状素子及び各第二スロット状素子は、ワイヤ放電加工(EDM)プロセスによって前記モノリシック構造内に形成されるのが好ましい。他の製造プロセス、例えば、マイクロEDMプロセス、電界加工(ECM)プロセス、レーザ加工(LBM)プロセス、銅蒸気レーザ(CVL)加工プロセス、又は、所謂LIGAプロセスも用い得る。
【0011】
第二スロット状素子又は各スロット状素子を、第一スロット状素子又は各第一スロット状素子をモノリシック構造内に形成するために用いられるものと同一のワイヤ放電加工プロセスによってモノリシック構造内に形成するのが最も好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、少なくとも1つの弾性ヒンジを含む装置を提供する。加えて、本発明は、弾性ヒンジを製造するための方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、プレート状素子10の形態のモノリシック構造を2つの異なる図面で示している。図1の左手側には、プレート状素子10の正面図が示され、右手側には、プレート状素子10の側面図が示されている。図1の左手側に示される座標系はプレート状素子10の正面図に関し、図1の右手側に示される座標系はプレート状素子10の側面図に関する。図1に示されるように、プレート状素子10は厚さtによって特徴付けられる。
【0014】
図1に従ったプレート状素子10において、弾性ヒンジ11は2つのスロット状素子12によって形成されている。従来技術によれば、スロット状素子12は、モノリシックプレート状素子10を、固定構造部分13と回転構造部分14とに分割している。2つのスロット状素子12は、プレート状素子10の材料を、プレート状素子10の中央に形成された弾性ヒンジ11を除き、水平X軸方向にプレート状素子の厚さ全体に亘って除去している。弾性ヒンジ11は、2つのスロット状素子12の間に残存する材料によって定められ、よって、水平方向における2つのスロット状素子12の間の距離は、図1において、参照符号hによって特徴付けられている。
【0015】
図1に従った弾性ヒンジ11の双方のスロット状素子12は、従来技術に従って形成され、2つのセグメントを含む。2つのスロット状素子12の第一セグメント15は、プレート状素子10の隣接する外部側壁16で開始し、弾性ヒンジ11が形成されたプレート状素子10の中央又は中心部分に向けられている。スロット状素子12のこれらの第一セグメント15は、水平X軸方向に走っている。各スロット状素子12の第一セグメント15は、プレート状素子10の中心又は中央部分で横断して、スロット状素子12の第二セグメント17になっている。第一セグメント15は主としてプレート状素子10を下方の固定構造部分13と上方の回転構造部分14に分離し、第二セグメント17は主として弾性ヒンジ11を定めることを図1から理解し得る。図1において、第二セグメント17は、円弧の形態に設計され、よって、この円弧が指す或いは走る方向は、主として水平X軸に対して直交する垂直Z軸方向である。スロット状素子12の各第二セグメント17によって定められる円弧の直径は、図1において、参照符号Dによって特徴付けられている。スロット状素子12の2つのセグメント15,17は平面X−Zを定める。
【0016】
2つのスロット状素子12によって形成される弾性ヒンジ11は、スロット状素子12によって定められる平面X−Zに対してほぼ直交して走る回転軸を含む。図1において、弾性ヒンジ11の回転軸は、水平Y軸の方向に走り、この水平Y軸は、X軸及びZ軸に対して直交している。モノリシックプレート状素子10に形成された上述の弾性ヒンジ11は、Y軸の周りでの、下方の構造部分13に対する上方の構造部分14の回転を許容している。図1を参照して記載された従来技術に従った弾性ヒンジ11の主な欠点は、Z軸方向における軸方向剛性に比べて比較的低いX軸方向における横方向剛性である。このために、従来技術に従った弾性ヒンジ11は、力方向がZ軸と一致する用途のために主に有用である。しかしながら、力方向がこの方向と一致しないとき、及び、X軸方向における力が発生する場合、本発明に従った弾性ヒンジ11は、その低い横方向剛性の故に、機能しない。
【0017】
本発明は、弾性ヒンジ18が、改良された横方向剛性を有するモノリシック構造内に形成された新規な種類の弾性ヒンジ11を提供する。図2乃至6は、本発明に従った弾性ヒンジの異なる実施態様を示している。
【0018】
図2は本発明の第一実施態様を示している。弾性ヒンジ18がモノリシック構造内に形成され、それによって、モノリシック構造はプレート状素子19として設計されている。図1と同様に、図2は、プレート状素子19を2つの異なる図面で示しており、正面図が図2の左手部分に示され、側面図が図2の右手部分に示されている。図2の左手部分に示された座標系はプレート状素子19の正面図に関係し、図2の右手部分に示された座標系はプレート状素子19の側面図に関係している。
【0019】
弾性ヒンジ18は、プレート状素子19を、下方の固定構造部分20と上方の回転構造部分21とに分離している。弾性ヒンジ18はスロット状素子によって形成され、それは以下により詳細に記載される。弾性ヒンジ18の回転軸は、図2中のY軸方向に走っている。
【0020】
図2に示されるような本発明に従った弾性ヒンジ18は、合計4つのスロット状素子、即ち、一組の第一スロット状素子22及び一組の第二スロット状素子23によって形成されている。第一スロット状素子22は、2つのセグメントを含み、前記第一スロット状素子22の第一セグメント24は水平X軸方向に走り、第一スロット状素子22の第二セグメント25は主として垂直Z軸方向に走り、それは水平X軸に対して直交している。第一セグメント24は、長さlによって特徴付けられ、図2の左手部分状の正面図において直線形状を有している。第二セグメント25は、直径Dを有する円弧として設計され、円弧は主として垂直Z軸方向に向けられている。プレート状素子12の中心部分における2つの第一スロット状素子22の2つの第二セグメント25の間の距離は、図2において参照符号hによって特徴付けられ、プレート状素子19の中心部分において弾性ヒンジを定めている。第一スロット状素子22がX軸及びZ軸方向においてモノリシック構造によって完全に取り囲まれるよう、各第一スロット状素子22がプレート状素子19のモノリシック構造内に形成されていることを図2から理解し得る。これは、第一スロット状素子22の第一セグメント24が、プレート状素子19の外部側壁26を通じて延在しないことを意味する。回転軸(Y軸)方向においてのみ、第一スロット状素子22がプレート状素子19の外部に延びている。
【0021】
本発明によれば、第二スロット状素子23が、第一スロット状素子22の各第一セグメント24に隣接して、プレート状素子19内に形成されている。第二スロット状素子23は、図2の左手部分にある正面図において直線形状を有している。第二スロット状素子23は、第一スロット状素子22の第一セグメント24とほぼ平行に延び、第二スロット状素子23と、対応する第一スロット状素子22の対応する第一セグメント24との間の距離は、図2において参照符号bによって特徴付けられている。第二スロット状素子23をプレート状素子19内に形成することによって、ロッド状素子27が形成される。第二スロット状素子23が、水平X軸方向にのみ延びること、並びに、第二スロット状素子23が側壁26を貫通してプレート状素子19の外部にX軸方向に延びていることを図2から理解し得よう。側壁26における第二スロット状素子23の開口28が、図2の右手部分に示されている。
【0022】
本発明によれば、プレート状素子19の中心又は中央部分における弾性ヒンジ18のヒンジ部分に加えて、ロッド状素子27がX軸方向に加えられている。これらのロッド状素子27は、X軸方向における弾性ヒンジ18の横方向剛性を増大する。従って、本発明に従った弾性ヒンジ18は、Z軸方向及びX軸方向における十分な剛性をもたらす。
【0023】
図3は、本発明の第二実施態様を示している。図3の実施態様は、図2の実施態様と類似して設計されている。このために、繰り返しを避けるために、同一の構造的及び機能的素子のために、同一の参照番号が用いられている。
【0024】
図3の実施態様は、第一スロット状素子22の第二セグメント25の形状によって、図2における実施態様と異なる。図3に従った実施態様において、第二セグメント25は、円弧ではなく直線形態に設計されている。このために、第一スロット状素子22の第一セグメント24と第二スロット状素子23によって形成されるロッド状素子27に加え、追加的なロッド状素子29が、2つの第一スロット状素子22の第二セグメント25の間に形成されている。追加的なロッド状素子29は、垂直Z軸方向に延び、従って、水平X軸方向に延びるロッド状素子27の方向に対してほぼ直交している。ロッド状素子27の長さは参照符号lによって特徴付けられ、幅は参照符号bによって特徴付けられている。追加的なロッド状素子29の長さは参照符号lによって特徴付けられ、幅は参照符号bによって特徴付けられている。図2に従った実施態様と比較すると、Z軸方向における軸方向剛性が均等であるならば、垂直Z軸方向に走る追加的なロッド状素子29は、Y軸周りで弾性ヒンジ18の傾斜剛性を減少する。図3に従った実施態様は、従来技術から既知のモノリシックな解決方法と異なる、従って、コンパクトであり且つヒシテリシスのない新規な種類の弾性ヒンジをもたらす。
【0025】
図2及び図3を参照して記載される本発明の実施態様は、1つの軸の周りでの、固定構造部分に対する回転構造部分の回転のための二次元弾性ヒンジの双方をもたらす。しかしながら、本発明は、2つの軸の周りでの、その結果として、前記2つの軸によって定められる平面内の任意の軸の周りでの、固定構造部分に対する回転構造部分の回転のための三次元弾性ヒンジをもたらす実施態様もカバーする。図4乃至6は、そのような三次元弾性ヒンジの実施態様を例証している。
【0026】
図4は、三次元弾性ヒンジをもたらす本発明の実施態様を示している。図4の実施態様において、弾性ヒンジは、キューブ状素子30の形態のモノリシック構造内に形成され、よって、図4は、キューブ状素子30の3つの異なる図面を示している。図4の下部には、2つの異なる側面図(X−Z図及びY−Z図)が示され、図4の上部には、A−A方向においてキューブ状素子30を通じる断面図(X−Y図)が示されている。それぞれの異なる図面の傍らに、対応する座標系が示されている。
【0027】
図4に従ったキューブ状素子30は、4つの側壁31,32,33,34を含む。それぞれの側壁31,32,33,34内に、2つのスロット状素子、即ち、第一スロット状素子35及び第二スロット状素子36が形成されている。それぞれの第一スロット状素子35は、2つのセグメント、即ち、水平方向、即ち、水平X軸又はY軸の方向に走る第一セグメント37と、垂直Z軸方向に走る第二セグメント38とを含む。第二セグメント38がキューブ状素子30の第一隅部42/44から隣接する第二隅部43/45に延びていることを断面図(X−Y図)から理解し得る。第一セグメント37は、2つの隣接する側壁331及び33又は32及び34の間に延びている。第二スロット状素子36は、前記第一スロット状素子35の第一セグメント37とほぼ平行に走り、よって、ロッド状又はプレート状素子39が、第一スロット状素子35の第一セグメント37と第二スロット状素子36との間に形成されている。ロッド状又はプレート状素子39は、断面図において長方形の形状を有し、弾性ヒンジの回転構造部分及び固定構造部分を水平方向においてのみ接続している。他のロッド状素子40が、隣接する第一スロット状素子35の第二セグメント38の間の中心に形成されている。ロッド状素子40は、断面図において正方形の形状を有し、垂直方向において弾性ヒンジの回転構造部分及び固定構造部分を接続している。
【0028】
水平方向に走るロッド状素子39は、それらの長さl又はl及び幅b又はbによって特徴付けられている。垂直方向に走るロッド状素子40は、その長さl及びl並びにその幅b及びbによって特徴付けられている。
【0029】
図5及び6に示される三次元弾性ヒンジの実施態様は、図4の実施態様と類似して設計されている。このために、繰り返しを避けるために、同一の構造的及び機能的素子のために同一の参照番号が用いられている。
【0030】
図5の実施態様は、スロット状素子35及び36の向きによって、図4に従った実施態様と異なる。図5に従った実施態様では、図4に従った実施態様と比較すると、スロット状素子35及び36は、(X−Z図ではなく図Y−Z図において)Y軸方向に鏡映されている。図4の実施態様において、4つのロッド状素子39及びロッド状素子40のみが上方の回転構造部分を下方の固定構造部分に相互接続しているという事実の故に、下方の固定構造部分に対する上方の回転構造部分のZ軸周りでのねじれ剛性は比較的低い。図5の実施態様において、4つの三角形のプレート状素子41も、上方の回転構造部分を下方の固定構造部分に接続し、それによって、より高いねじれ剛性をZ軸周りにもたらしている。図5の実施態様において、4つのロッド状素子39及び4つの三角形状のプレート状素子41が、水平方向において、上方の回転構造部分を下方の固定構造部分に接続している。中心にあるロッド状素子40は、垂直方向において、上方の回転構造部分を下方の固定構造部分に接続している。
【0031】
図4及び5に示される三次元ヒンジの実施態様は、(スロット素子の形状の観点において)図3に示される三次元ヒンジに対応している。図6に従った三次元弾性ヒンジは、(スロット状素子の形状の観点において)図2に示される二次元弾性ヒンジに対応している。図6に従った実施態様の第一スロット状素子35の形状は、図2における実施態様の第一スロット状素子22の形状に対応し、よって、これらの第一スロット状素子35の第二セグメント38は、直線形状ではなく円弧形状を有する。機能の観点からすると、図6の実施態様は、図5の実施態様に類似し、水平方向において上方の回転構造部分を下方の固定構造部分に接続する4つのロッド状素子39及び4つの三角形状のプレート状素子41、及び、垂直方向において上方の回転構造部分を下方の固定構造部分に接続する中心部の1つのロッド状素子40を有する。
【0032】
図4乃至6に従った実施態様によってもたらされる三次元弾性ヒンジは、2つの水平軸、即ち、X軸及びY軸の周りでの、下方の固定構造部分に対する上方の回転構造部分の全ての回転をもたらす。
【0033】
本発明によれば、全てのスロット状素子は、ワイヤ放電加工(EDM)プロセスによって、プレート状素子19又はキューブ状素子30によってもたらされるモノリシック構造に形成される。これは、本発明に従った弾性ヒンジを含む装置の極めてコンパクトな設計を可能にする。同一のEDMプロセス期間中に全てのスロット状素子を形成し得る。このために、製造は簡単であり、本発明に従った弾性ヒンジを含む装置を低コストで提供し得る。他の製造プロセス、例えば、マイクロEDMプロセス、電界加工(ECM)プロセス、レーザ加工(LBM)プロセス、銅蒸気レーザ(CVL)加工プロセス、又は、所謂LIGAプロセスも用い得る。
【0034】
横方向剛性の向上又は増大が必要とされる如何なる種類の弾性機構又は弾性固着に本発明に従った弾性ヒンジを用い得る。弾性ヒンジを高精度光学構成部品のための運動学的固着に用い得ることが一例である。本発明のための他の分野の用途は、小型製品を測定するための高精度座標測定器、すべり継手又は転がり継手と比較してより正確な代替手段としての無ヒステリシス弾性継手、及び、自動調心支持体、例えば、空気静力学的軸受システムである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来技術に従ってモノリシック構造内に形成された弾性ヒンジを示す正面図及び側面図であり、モノリシック構造は固定構造部分及び回転構造部分に分離している。
【図2】本発明の第一実施態様に従ってモノリシック構造内に形成された弾性ヒンジを示す正面図及び側面図であり、1つの軸の周りでの固定構造部分に対する回転構造部分の回転のための二次元弾性ヒンジを提供している。
【図3】本発明の第二実施態様に従ってモノリシック構造内に形成された弾性ヒンジを示す正面図及び側面図であり、1つの軸の周りでの固定構造部分に対する回転構造部分の回転のための二次元弾性ヒンジを提供している。
【図4】本発明の第三実施態様に従ってモノリシック構造内に形成された弾性ヒンジを示す断面図及び2つの側面図であり、2つの軸の周りでの固定構造部分に対する回転構造部分の回転のための二次元弾性ヒンジを提供している。
【図5】本発明の他の実施態様に従ってモノリシック構造内に形成された弾性ヒンジを示す断面図及び2つの側面図であり、2つの軸の周りでの固定構造部分に対する回転構造部分の回転のための二次元弾性ヒンジを提供している。
【図6】本発明の他の実施態様に従ってモノリシック構造内に形成された弾性ヒンジを示す断面図及び2つの側面図であり、2つの軸の周りでの固定構造部分に対する回転構造部分の回転のための二次元弾性ヒンジを提供している。
【符号の説明】
【0036】
10 プレート状素子
11 弾性ヒンジ
12 スロット状素子
13 固定構造部分
14 回転構造部分
15 第一セグメント
16 第二セグメント
17 側壁
18 弾性ヒンジ
19 プレート状素子
20 固定構造部分
21 回転構造部分
22 第一スロット状素子
23 第二スロット状素子
24 第一セグメント
25 第二セグメント
26 側壁
27 ロッド状素子
28 開口
29 ロッド状素子
30 キューブ状素子
31 側壁
32 側壁
33 側壁
34 側壁
35 第一スロット状素子
36 第二スロット状素子
37 第一セグメント
38 第二セグメント
39 ロッド状素子
40 ロッド状素子
41 三角形のプレート状素子
42 隅部
43 隅部
44 隅部
45 隅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノリシック構造に形成された弾性ヒンジであり、当該弾性ヒンジは、前記モノリシック構造を回転構造部分と固定構造部分とに分離し、当該弾性ヒンジは、前記固定構造部分に対する前記回転構造部分の回転を許容し、当該弾性ヒンジは、少なくとも1つの第一スロット状素子を前記モノリシック構造内に形成し、前記第一スロット状素子又は各第一スロット状素子は、当該弾性ヒンジ、よって、当該弾性ヒンジの少なくとも1つの回転軸を定める弾性ヒンジであって、
少なくとも1つの第二スロット状素子を前記モノリシック構造内に形成することによって、少なくとも1つのロッド状又はプレート状素子が前記モノリシック構造内に形成されていることを特徴とする、
弾性ヒンジ。
【請求項2】
前記第一スロット状素子又は各第一スロット状素子は、平面を定める少なくとも2つのセグメントを含み、よって、前記第二スロット状素子及び各第二スロット状素子は、対応する前記第一スロット状素子の1つのセグメントとほぼ平行に走り、よって、ロッド状又はプレート状素子を定めることを特徴とする、請求項1に記載の弾性ヒンジ。
【請求項3】
当該弾性ヒンジの変位又は回転軸が前記平面に対してほぼ直交して走ることを特徴とする、請求項2に記載の弾性ヒンジ。
【請求項4】
前記第一スロット状素子又は各第一スロット状素子は、少なくとも2つのセグメントを含み、第一セグメントは、第一軸の方向に走り、第二セグメントは、前記第一軸に対して直交する第二軸の方向に主として走り、よって、当該弾性ヒンジの前記回転軸は、前記第一軸及び前記第二軸によって定められる前記平面に対して直交する方向に走ることを特徴とする、請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の弾性ヒンジ。
【請求項5】
前記第一スロット状素子及び各第一スロット状素子が、当該弾性ヒンジの前記回転軸方向において前記モノリシック構造の外部にのみ延びるよう、前記第一スロット状素子及び各第一スロット状素子は、前記モノリシック構造に形成され、よって、前記第一スロット状素子は、前記平面を定める前記軸の方向において前記モノリシック構造によって完全に取り囲まれていることを特徴とする、請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の弾性ヒンジ。
【請求項6】
前記第二スロット状素子又は各第二スロット状素子が、当該弾性ヒンジの前記回転軸において並びに前記平面を定める1つの軸の方向において前記モノリシック構造の外部に延びるよう、前記第二スロット状素子又は各スロット状素子は、前記モノリシック構造に形成されることを特徴とする、請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の弾性ヒンジ。
【請求項7】
前記第一スロット状素子及び第二スロット状素子又は各第一スロット状素子又は各第二スロット状素子が、ワイヤ放電加工プロセスによって前記モノリシック構造に形成されることを特徴とする、請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の弾性ヒンジ。
【請求項8】
前記第二スロット状素子又は各第二スロット状素子が、前記第一スロット状素子又は各第一スロット状素子を前記モノリシック構造に形成するために用いられるのと同一のワイヤ放電加工プロセスによって前記モノリシック構造に形成されることを特徴とする、請求項7に記載の弾性ヒンジ。
【請求項9】
当該装置のモノリシック構造内に形成される少なくとも1つの弾性ヒンジを含む装置であり、前記弾性ヒンジ又は各弾性ヒンジは、前記モノリシック構造を回転構造部分と固定構造部分とに分離し、前記弾性ヒンジは、前記固定構造部分に対する前記回転構造部分の回転を可能にし、前記弾性ヒンジは、少なくとも1つの第一スロット状素子を前記モノリシック構造内に形成することによって形成され、前記第一スロット状素子又は各第一スロット状素子は、前記弾性ヒンジ、よって、前記弾性ヒンジの少なくとも1つの回転軸を定める装置であって、
少なくとも1つの第二スロット状素子を前記モノリシック構造内に形成することによって、少なくとも1つのロッド状又はプレート状素子が前記モノリシック構造内に形成されることを特徴とする、
装置。
【請求項10】
前記弾性ヒンジ又は各弾性ヒンジが、請求項2乃至8のうちいずれか1項に従って形成されることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
弾性ヒンジをモノリシック構造内に形成する製造する方法であって、
a) モノリシック構造を提供するステップと、
b) 少なくとも1つの第一スロット状素子を前記モノリシック構造内に形成することによって弾性ヒンジを形成し、それによって、前記弾性ヒンジは、前記弾性ヒンジの少なくとも1つの回転軸を定めるステップと、
c) 少なくとも1つの第二スロット状素子を前記モノリシック構造内に形成することによって、少なくとも1つのロッド状又はプレート状素子を前記モノリシック構造内に形成するステップとを遂行することによって、
前記弾性ヒンジは、前記モノリシック構造を回転構造部分と固定構造部分とに分離し、前記弾性ヒンジは、前記固定構造部分に対する前記回転構造部分の回転を可能にする、
方法。
【請求項12】
前記第一スロット状素子又は各第一スロット状素子は、前記第一スロット状素子又は各スロット状素子が、少なくとも2つのセグメントを含み、第一セグメントが、第一軸の方向に走り、第二セグメントが、前記第一軸に対して直交する第二軸の方向に主として走り、前記弾性ヒンジの前記回転軸が、前記第一軸及び前記第二軸によって定められる前記平面に対して直交する方向に走るよう形成されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第二スロット状素子又は各第二スロット状素子は、前記第二スロット状素子又は各第二スロット状素子が、対応する第一スロット状素子の1つのセグメントとほぼ平行に走ることによって、ロッド状又はプレート状素子を定めるよう形成されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第一スロット状素子又は各第一スロット状素子は、前記第一スロット状素子又は各第一スロット状素子が、前記弾性ヒンジの前記回転軸の方向において前記モノリシック構造の外部にのみ延び、それによって、前記第一スロット状素子又は各第一スロット状素子が、前記平面を定める前記軸の方向において、前記モノリシック構造によって完全に取り囲まれるよう前記モノリシック構造内に形成されることを特徴とする、請求項11乃至13のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第二スロット状素子又は各第二スロット状素子は、前記第二スロット状素子又は各第二スロット状素子が、前記弾性ヒンジの前記回転軸の方向において並びに前記平面を定める1つの軸の方向において、前記モノリシック構造の外部に延びるよう前記モノリシック構造内に形成されることを特徴とする、請求項11乃至14のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第一スロット状素子及び前記第二スロット状素子又は各第一スロット状素子及び各第二スロット状素子は、ワイヤ放電加工プロセスによって前記モノリシック構造内に形成されることを特徴とする、請求項11乃至15のうちいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−523295(P2007−523295A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536242(P2006−536242)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052126
【国際公開番号】WO2005/038397
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】