説明

少なくとも1つの燃料電池を備えた燃料電池システム

燃料電池システム(1)は、カソード領域(3)とアノード領域(4)とを有する少なくとも1つの燃料電池(2)を含んでいる。その他に、この燃料電池システム(1)は交換装置(12)を有しており、この交換装置内を、一方でカソード領域(3)へ流れる供給エアフローが通過し、他方ではカソード領域(3)からくる排出エアフローが通過する。この交換装置(12)の中では、熱が供給エアフローから排出エアフローに伝達され、同時に水蒸気が排出エアフローから供給エアフローに伝達される。この燃料電池システム(1)は、さらに、タービン(16)によって少なくとも補助的に駆動可能なコンプレッサ(6)を有している。このタービン(16)は、この場合、交換装置(12)の下流に配置され、排出エアが通過している。その他に、タービン(16)の上流に触媒作用のある材料が配置され、この材料には燃料含有ガスが供給可能である。本発明に基づき、この触媒作用のある材料(13)は、排出エア側の交換装置(12)の中に組み込まれており、交換装置(12)の排出エア側には、アノード領域(4)からの排出ガスが供給可能である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に詳しく定義されている種類の、少なくとも1つの燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
業界標準の燃料電池システムは、特許文献1によって説明されている。特許文献1の燃料電池システムは、「冷却」と「加湿」の両方の機能を組み合わせた交換装置を含んでいる。特許文献1で機能ユニットと呼ばれているこの交換装置は、燃料電池の排出エアから燃料電池の供給エアへの物質の流れを可能にし、同様に、一方では、圧縮装置によって加熱された供給エアから比較的冷たい排出エアへの熱交換が行われる。特許文献1では、その他に、燃料電池システムのエア供給が、一方ではタービンによって、及び/又は他方では電気モータによって駆動可能なコンプレッサによって実現される構造を示している。燃料電池システムで一般的に知られているこの構造は、エレクトリックターボチャージャとも呼ばれており、タービンによって、少なくともコンプレッサの駆動と、余剰出力がある場合はジェネレータである電気機械の駆動とを補助することができる。
【0003】
その他に、特許文献2から、アノード再循環回路を備える燃料電池システムが公知である。このシステムの場合、アノード回路から排出される排出ガスが、時々、カソード領域からの排出ガス、一般的には排出エアと混合され、触媒作用のあるバーナーで燃焼される。除湿された排出エアとアノード領域の排出ガスとの触媒作用のある燃焼では、燃料電池システムの冷却回路を加熱するために利用できる相応の熱量が生じる。
【0004】
この作動方法は、この種の燃料電池システムのコールドスタートには相応の利点となるのは確かだが、ノーマルモードにとっては、この廃熱を冷却水に供給することは非常に危険である。というのも、例えば、車両で使用する場合に利用可能な放熱面積では、燃料電池を十分に冷却することができないか、もしくは不十分にしか冷却できないからである。その他に、特許文献2の構造では、触媒作用のあるバーナー部分において発生する廃熱は、コールドスタート以外では積極的に利用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第 102007003144A1明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0019633A1明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、周辺への水素排出がなく、使用可能なエネルギーを最大限活用して燃料電池システムが稼働するように、燃料電池システムを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づき、この課題は、請求項1の表示された部分に記載された特徴によって解決される。
【0008】
触媒作用のある材料を交換装置の排出エア側に組み込むことにより、追加の構成部品が節約され、アノード側からの排出ガス用の導管が短縮される。つまり、この構造により、この排出ガスを直接カソード領域への排出エアの中に送り込むことが可能となる。というのも、このガスの混合気が一緒に交換装置の中に達して、この交換装置内の触媒作用のある材料部分において、排出ガス内にある残留水素と、カソード領域の排出エア内にある残留酸素とが反応できるからである。この反応では、熱及び水蒸気が発生する。この熱は、ここでは特に歓迎される。なぜなら、この熱は、交換装置におけるコンプレッサ後の非常に熱い供給エアによる熱入力に加えて、交換装置からタービン方向に流れる排出エアに追加の熱をもたらすからである。
【0009】
従って、本発明に基づく燃料電池システムの構造により、アノード領域からの水素含有排出ガスを、カソード領域からの排出エア中の残留酸素と一緒に変換させ、それによって、燃料電池システムの周辺への水素の排出を防ぐことが可能となる。その他に、この時に発生する廃熱により、交換装置後の排出エアは、触媒作用のある材料が取り付けられていない交換装置の排出エア側よりも、明らかに熱くなる。
【0010】
これにより、タービンは、追加のエネルギーを供給されることができる。従って、水素含有排出ガスの変換から生じるエネルギーにより、燃料電池システムの中でタービンの駆動が支援されるため、このエネルギーを有効に利用することができる。
【0011】
燃料電池システムの特に有利な実施形態によれば、燃料含有ガスとして、追加の燃料、特に水素が供給可能であるように準備されている。
【0012】
この実施形態では、アノード領域からの排出ガスの他に、燃料含有ガスとして、追加の燃料が供給されるようになっている。原則的に、この燃料は、任意の燃料とすることできるだろう。しかし、燃料電池システムが水素で作動し、いずれにせよこの水素がある場合、理想的には、この水素を追加燃料として使用することができる。交換装置への、従って、その交換装置における排出エア側の触媒作用のある材料に、追加燃料を供給することは、排出エア中の残留酸素による燃料の変換を向上させる。このことが追加の熱を発生させ、この熱は、タービンによって生産可能な出力を明らかに高める。次に、この追加エネルギーは、コンプレッサの駆動に利用することができる。
【0013】
本発明の特に有利な実施形態によれば、その他に、コンプレッサが電気機械によって駆動可能であるように準備されており、タービンに余剰出力がある場合、タービンは、この電気機械を、電力を生成するジェネレータとして駆動する。
【0014】
上述した種類の電気機械を備える燃料電池の実施形態では、追加燃料が、交換装置の排出エア側の触媒作用のある材料の部分に運ばれると、追加的に発生した熱により、直接電気エネルギーを生成することができ、次に、この電気エネルギーは、追加的な電気エネルギーとしてコンプレッサの駆動に使用できるばかりでなく、その他の電気消費装置、例えば電気モータなどにも利用することができる。追加的な廃熱の発生により、いわゆる「ブーストモード」を実現することができる。
【0015】
本発明の特に有利な実施形態では、その他に、触媒作用のある材料部分が、交換装置の供給エア側に対して断熱されるように準備することができる。
【0016】
このことは、例えば、両方の部分が、互いに熱的接触を全く持たない、もしくは1箇所だけ間接的に熱的接触を持っていることによって行われ、例えば、この部分には熱伝導性の比較的悪い材料が用いられるか、またはこの部分の交換装置の供給エア側と排出エア側との間にエアギャップが実現されている。このことによって、触媒作用のある材料部分で発生する廃熱と、ここでは特に、作動時に追加の燃料によって発生する熱とが、燃料電池のカソード領域への供給エアを不必要に加熱することを防止することができる。
【0017】
従って、本発明に基づく燃料電池システムの、説明されている全ての変更例は、単純で、コンパクトであり、従って低価格の構造を可能にし、寿命及び達成可能な効率にとって最適な形態となっている。従って、本発明に基づく燃料電池システムは、移動手段における使用、ここでは、移動手段の駆動及び/又は電気的な補助負荷のための電力の生成に特によく適している。この場合、本発明の意味における移動手段とは、陸上、水上、空における各種類の移動手段を意味しており、特に、レールを使わない車両に対するこの種の燃料電池システムの利用が特に注目されるが、本発明に基づく燃料電池の使用は、このことに制限されることはないであろう。
【0018】
本発明に基づく燃料電池システムのその他の有利な実施形態は、残りの従属請求項に示されており、以下に図を用いて詳しく説明される実施例によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に基づく燃料電池システムの第1の可能な実施形態である。
【図2】本発明に基づく燃料電池システムのもう1つの代替の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の図における表示は、それ自体が非常に複雑な燃料電池システムから、本発明の理解に不可欠な構成部品のみを抜き出し、かなり簡略化して図に示したものである。この場合、以下に示された図では考慮されていないが、例えば、冷却回路などのその他のコンポーネントをこの燃料電池システムに設けることも当然あり得るだろう。
【0021】
図1には、燃料電池2を備える燃料電池システム1が示されている。燃料電池2は、この場合、通常の方法で構成された燃料電池2として、個別セルのスタックからなるべきである。燃料電池2には、カソード領域3とアノード領域4とが形成されており、これらの領域はここで示されている実施例において、PE膜5によって互いに分離されていなければならない。図1に示されている実施例では、カソード領域3に、コンプレッサ6から供給エアフローが供給される。この場合、コンプレッサ6は、燃料電池システムで通常用いられるような、例えばスクリュコンプレッサ又はフローコンプレッサとして実施することができる。しかしながら、基本的に、供給されるエアフローを圧縮するための他の方法、例えば、往復機器などによる方法も考えられる。カソード領域3に送られる供給エアフローは、燃料電池2の中でアノード領域4に送られる水素と反応して水になり、電力が発生する。燃料電池2のこの周知の原理は、本発明にとっては下位の役割でしかないため、詳しい説明は省略する。
【0022】
ここに示されている実施例では、水素貯蔵装置7、例えば圧縮ガスタンク及び/又は水素化物タンクから水素がアノード領域4に送られる。原則的に、例えば、燃料電池システム2の範囲において、炭化水素含有の基本材料から生成される水素含有ガスを燃料電池2に供給することも考えられる。
【0023】
図1の実施例において、水素貯蔵装置7の水素は、ここでは略式的にのみ示されている計量投与装置8を介してアノード領域4に送られる。通常、常に比較的大量の水素を含んでいる、アノード領域4から流出する排出ガスは、再循環ライン9及び再循環フィード装置10を介してアノード領域4に戻される。この再循環部分には、この場合、水素貯蔵装置7からくる新鮮な水素が送られるため、アノード領域4では、常に十分な量の水素を使用することができる。再循環ライン9と再循環フィード装置10とを備える燃料電池2のアノード領域4の構造は公知であり、一般的である。再循環フィード装置10として、この場合は、ガス噴射ポンプを使用することができ、これは、水素貯蔵装置7からくる新鮮な水素によって駆動される。代替の方法では、再循環フィード装置10として再循環ブロワも考えられる。もちろん、これらの異なるフィード装置を組み合わせることも可能であり、これらの組合せも、同様に、本明細書に基づく再循環フィード装置10の定義に該当していなければならない。その他に、アノード排出ガスの再循環の使用では、再循環ライン9の部分に、例えば窒素などの不活性ガスが徐々に集まり、この不活性ガスが、PE膜5を通ってカソード領域3からアノード領域4に達することが知られている。アノード領域4において、さらに十分な濃度の水素を使用可能にするためには、アノード領域4の排出ガスを、再循環ライン9において時々排出することが必要である。このために、図1による実施例においては、ドレンバルブ11が設けられており、アノード領域4の排出ガスは、このドレンバルブを介して、時々排出することができる。このプロセスは、しばしば「パージ」とも呼ばれる。排出ガスは、この場合、不活性ガスの他に、該当する量の残留水素も含んでいる。
【0024】
コンプレッサ6からカソード領域3に流れる供給エアは、図1による燃料電池システム1の構造において、供給エアの状態調整を行う交換装置12を通過する。通常、コンプレッサ6後の供給エアは、比較的高い温度を有している。燃料電池2と、ここでは特に燃料電池2のPE膜5とは、高温かつ乾燥したガスに対して非常に敏感に反応するため、供給エアは、交換装置12の中で相応に冷却され、加湿される。冷却と加湿には、この場合、カソード領域3からくる排出エアフローを用いる。この排出エアフローは、同様に、交換装置12を通過する。この交換装置12は、基本的に、供給エアと排出エアの両方の流れが互いに分離される構造になっている。このことは、例えば、一方の流れが中空繊維を通り、他方の流れは、この中空繊維の周囲を流れることによって行うことができる。その他に、この交換装置12を、プレート反応器のような種類の構造にすることも考えられ、その場合、両方の流れは、例えば膜などの平坦なプレートによって互いに分離されている。
【0025】
交換装置12を、例えば自動車の排気ガス触媒コンバータなどで一般的に用いられているハニカムボディの形にすることは、特に有利であることが示された。該当するハニカムボディの実施形態によって、供給エアフローと排出エアフローとは、ハニカムボディの隣接する異なったチャンネルを流れることができるようになる。この場合、基本的に、両方の流れを併流チャンネル又は交差チャンネルなどによって通過させる方法がそれぞれ考えられる。しかし、2つの流れを向流によって、又は向流割合の高いフローチャンネルによって、交換装置12を通過させるのが特に適していることが判明した。交換装置12では、熱い供給エアフローからカソード領域3の冷たい排出エアフローへの熱交換が行われる。向流チャンネルによって、最も冷たい排出エアフローは、すでに最も強く冷却された供給エアフローの部分と熱伝導的に接触し、一方、すでに比較的強く加熱された排出エアフローは、まだ非常に熱い供給エアフローを、交換装置12に流れ込む際に冷却することが可能となる。このことによって、供給エアフローの非常に有利な冷却が達成される。その他に、例えば、温度耐性膜、多孔質セラミック、ゼオライトなどの交換装置の材料により、燃料電池2で発生する生産水と一緒に流れるカソード領域3の多湿な排出エアフローからでる水蒸気を、カソード領域3へ向かう非常に乾燥した供給エアフロー部分に通すことができる。これによって、供給エアフローが相応に加湿されるため、燃料電池2の部分のPE膜5の機能と寿命に有利に作用する。ここまでは、冒頭ですでに名前を挙げた特許文献1からも知られている交換装置12の構造及び機能である。
【0026】
ここに示す実施例では、交換装置12が、従来の技術による構造に加え、さらに、触媒作用のある材料を有している。この触媒作用のある材料は、図の中で部分13によって示されているが、水素と供給エア内の酸素との反応に用いられる。水素は、この場合、燃料電池2のアノード領域4周辺の再循環ライン9からきている。この水素は、すでに言及したように、ドレンバルブ11から時々排出される。この水素含有の排出ガスはパージガスとも呼ばれ、交換装置12の排出エア側に達する。この排出ガス又は排出ガス中に含まれる水素は、触媒作用のある材料13の部分において、排出エア中の残留酸素の一部と反応する。このとき、熱と、水蒸気の形で水とが発生する。
【0027】
さらに、交換装置12の排出エア側に、もう1つの燃料が供給されるように準備することもできる。いずれにせよ燃料電池システム1の中に水素がある場合、この燃料は水素とすることができるであろう。しかし、燃料電池システム1で使用可能な場合は、炭化水素などを供給することも考えられる。ここに示されている燃料電池システム1の実施例においては、追加の水素供給が、水素貯蔵装置7の部分から計量投与装置14及び該当するライン要素15を介して行われる。オプションの水素は、アノード領域4からの排出ガスのように、交換装置12前の排出エアの供給ラインに運ばれることができ、このことは、図1によって原則的に示されている。代替の方法として、排出ガス及び/又は水素を交換装置12に、ここでは特に触媒作用のある材料13の部分に直接運び込むことも当然考えられる。追加の水素は、触媒作用のある材料13の部分において、追加の熱を発生させるのに利用することができる。触媒作用のある材料13の部分から発生した熱が、カソード領域3へ向かう供給エアに入力されるのを制限するため、触媒作用のある材料の部分において、交換装置12の排出エア部分と供給エア部分との間に、熱接続分離手段を配置することができる。このような熱接続分離手段は、例えば、エアギャップ又は熱伝導性の悪い材料によって実現することができる。供給エア部分に対して、触媒作用のある材料13を備える部分が交換装置12から突き出していることも考えられ、従って、交換装置12の中に流れ込む供給エアは、排出エア側の触媒作用のある材料13の部分と直接接触することはない。
【0028】
燃料電池システム1は、その他に、排出エア中の廃熱と、その廃熱に含まれる圧力エネルギーとを利用する方法を備えている。このために、交換装置12後の排出エアはタービン16を通り、タービンの中で、特に、排出エア中に含まれる廃熱が機械的エネルギーに転換される。タービン16は、この場合、直接又は間接的にコンプレッサ6と連結されているため、タービン16で発生したエネルギーを、コンプレッサ6の駆動に利用することができる。ほとんどの作動状態では、タービン16によって供給されるエネルギーは、コンプレッサ6を駆動するには十分ではないため、このコンプレッサはさらに電気機械17と連結されている。この電気機械17によって、コンプレッサ6の駆動エネルギーを補助的に供給することができる。特定の作動状態において、タービン16の出力に余剰が生じた場合、タービン16は、コンプレッサ6を駆動するだけではなく、この場合はジェネレータとしての電気機械17も駆動する。電気機械17によって作られた電力は、燃料電池システム1の中でその他の用途に使用するか、もしくは貯蔵することができる。いわゆるエレクトリックターボチャージャのこの構造も、燃料電池システムにおける従来技術から周知である。
【0029】
特に有利であるのは、タービン16によって、排出エアの廃熱が利用可能であることである。これまでは、アノード領域4からの排出ガスと酸素との触媒反応における加熱は、これまでむしろ問題視されていたが、この構造によって、排出エアに伝達される熱がタービン16で利用され、機械的エネルギーに転換可能となるため、有効に使用することができる。従って、燃料電池システム1のこの構造により、触媒材料13の部分において発生する廃熱の積極的な利用による有効な使用が可能となる。従って、残留水素の量は、従来技術のように、熱又は劣化の理由から、もしくはシステム技術的な理由から制限されることはない。燃料電池2の中で、できる限り多くの水素を変換することは有利であるが、燃料電池システム1のこの構造により、交換装置12の触媒作用のある材料13の部分において、必要に応じてさらに多くの量の残留水素を変換することも可能となる。このことにより、アノードの再循環を省略することができる。すでに上述した、計量投与装置14とライン要素15によるオプションの燃料追加により、タービン16の適切な作動は、触媒作用のある材料13の部分で発生する廃熱を用いて行うことができる。このようなブーストモードは、特定の作動状況において非常に有利であり得る。この種の状況としては、増加した電力が燃料電池2によって急激に送り出され、その電力が、結果的にコンプレッサ6の出力増加につながるという例があるだろう。この場合、排出ガスフロー内の廃熱量が増加することにより、この状況の中で少なくとも補助的にコンプレッサ6の出力要求を満たすのに用いられるタービン16に、より大きな出力を供給することができるだろう。代替の方法として、オプションの燃料追加と、それに伴うタービン16のブーストによって、電気機械17がジェネレータとして作動し、電気エネルギーを直接作ることもできる。この追加の電力は、例えば、急激な電力要求に対して補足的に用いることができる、及び/又は活性反応のない燃料電池2の代替として用いることができる。
【0030】
図1による燃料電池システム1の構造は、さらに、ここには図示されていない制御又は調整可能なバイパスを、交換装置12の周辺に設けることができるであろう。このバイパスは、この場合、供給エア側にも、排出エア側にも配置することができると考えられる。このバイパスにより、流れの一部を交換装置12の周辺に送り、供給エア又はその他にまだ必要な交換装置12後の排出エアの必要に応じて、この流れをもとの流れに混ぜ合わせることができると思われる。このことにより、加湿度を極めて適切に設定することができるか、もしくは加湿が必要でない状況においては加湿を回避することができるだろう。しかし、このようなバイパスは、加湿器における従来技術からすでに知られているので、ここでさらに述べる必要はない。
【0031】
図2には、燃料電池システム1の代替の実施形態が示されている。この場合、同一構成部品には同じ符号が付けられており、図1の同様の構成部品に匹敵する機能を有している。したがって、以下には、図2による燃料電池システム1について、これまでの説明とは異なる点のみに言及する。図2による燃料電池システム1は、実質的に、図1の燃料電池システム1に対して1つだけ異なる点を有している。この違いは、アノード領域4からの排出ガスが循環するのではなく、この排出ガスを、交換装置12の排出エア側に直接送り込むことにある。すなわち、燃料電池2は、図2の実施例において、アノード循環回路によって作動するのではなく、水素のみが流れるアノードによって作動し、ある程度の水素の余剰は、アノード領域4からの排出ガスとして再び排出される。この構造は、同様に従来技術から周知であり、通常、アノード領域を様々な活性部分範囲に分割することと組み合わされており、水素の流れる方向に連続して並ぶ部分領域は、徐々に少なくなっている活性表面を有しているため、使用されない活性表面を維持することなく、残っている水素の流れをほぼ変換させることができる。このような段階づけられたアノード領域4を使用して、水素貯蔵装置7の純粋な水素が燃料電池2に供給される場合、わずか3〜5%の非常に少ない余剰水素で走行が可能となる。この余剰水素は、排出ガスとしてアノード領域4から排出され、排出エア側の交換装置12、ここでは触媒作用のある材料13の部分に達する。次に、図1による実施例においてすでに説明したように、水素の変換が、すでにそこで示された全てのオプションを用いて同様に行われる。
【0032】
最後に、図2の実施形態による燃料電池システム1もまた、一般的に知られている、通常のその他のコンポーネントを装備することが可能であることに留意されたい。例えば、この場合には、交換装置12の周辺に取り付けるバイパスを挙げることができ、このバイパスは上述した構造と同じ方法で使用することができるであろう。その他に、交換装置12とタービン16との間の排出エアフローの中に水分離器を設けることにより、タービン16の部分に水滴が浸入し、場合によりコンポーネントの損傷に至るのを防止することができる。その他に、当然ながら、説明した燃料電池システムの部品を単純に交換することによって、両方の実施形態を互いに組み合わせることも可能である。例えば、タービン16を備える構造を、再循環ライン9の構造と組み合わせることが考えられるだろう。同様に、図2によって示されている燃料電池システム1において、タービン16を省略することも考えられるであろう。
【符号の説明】
【0033】
1 燃料電池システム
2 燃料電池
3 カソード領域
4 アノード領域
5 PE膜
6 コンプレッサ
7 水素貯蔵装置
8 計量投与装置
9 再循環ライン
10 再循環フィード装置
11 ドレンバルブ
12 交換装置
13 触媒作用のある材料
14 計量投与装置
15 ライン要素
16 タービン
17 電気機械

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード領域とカソード領域とを有する少なくとも1つの燃料電池と、
一方では前記カソード領域へ流れる供給エアフローが通過し、他方では前記カソード領域から流れる排出エアフローが通過し、熱が前記供給エアフローから前記排出エアフローに移行し、同時に水蒸気が前記排出エアフローから前記供給エアフローに移行する交換装置と、
前記交換装置の下流で前記排出エアが通過するタービンによって少なくとも補助的に駆動可能なコンプレッサと、
燃料含有ガスが供給可能である、前記タービン上流の触媒作用のある材料と、を備える燃料電池システムであって、
前記触媒作用のある材料(13)が、排出エア側の前記交換装置(12)に配置されており、前記交換装置(12)の前記排出エア側に、前記アノード領域(4)からの排出ガスが供給可能であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
燃料含有ガスとして、追加の燃料、特に水素が供給可能であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記触媒作用のある材料(13)が、層の形で前記交換装置(12)の前記排出エア側に取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記交換装置(12)が、少なくとも部分的にハニカム構造を有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記交換装置(12)が実質的に向流の形で流れを通しており、前記触媒作用のある材料(13)は、好ましくは、前記排出エア側の部分に配置され、前記排出エアが前記交換装置(12)から流れ出し、前記供給エアが前記交換装置(12)に流れ込むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記アノード領域(4)を水素又は水素含有ガスが流れ、前記アノード領域(4)の出口が、前記交換装置(12)の前記排出エア側の入口に接続されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記アノード領域(4)が、連続して並べられた複数の部分からなり、該部分のそれぞれの活性表面は、前記アノード領域(4)において、前記水素又は前記水素含有ガスの流れる方向に従って、1つ前にある前記部分の活性表面よりも小さいことを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記アノード領域(4)を水素が流れ、前記アノード領域(4)の出口が、再循環ライン(9)とフィード装置(10)とによって前記アノード領域(4)の入口に接続されており、前記再循環ライン(9)は、切替え可能なバルブ装置(11)によって、前記交換装置(12)の前記排出エア側の入口に接続されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記触媒作用のある材料(13)を備える部分が、前記交換装置(12)の供給エア側に対して断熱されていることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記コンプレッサ(6)が電気機械(17)によって駆動可能であり、前記タービン(16)で余剰出力がある場合、前記タービン(16)が、電力を生成するジェネレータとしての前記電気機械(17)を駆動することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
移動手段において、該移動手段の駆動及び/又は電気的な補助負荷のための電力を生成するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−518257(P2012−518257A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550443(P2011−550443)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000469
【国際公開番号】WO2010/094388
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】