少なくとも1つの薬剤の注入のための装置
少なくとも2つの薬剤が注入されるようにするための少なくとも2つのアクチュエータ、少なくとも2つのパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサ、アクチュエータ(10,20)を制御するためのコントローラ(60)、を含み、コントローラ(60)が、2つのパラメータの値に従ってアクチュエータを作動させるようにプラグラムされる少なくとも1つの薬剤の注入のための装置(1)であって、コントローラが薬剤の依存性を考慮して設けられる少なくとも1つの薬剤の注入のための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
外科手術を受ける患者の中には、麻酔薬によって血管拡張が誘発され、手術による出血によって血液量減少が誘発されるため、低血圧は、しばしば外科手術中に観察される。持続性低血圧は、臓器血流の低下となり、最終的に臓器不全となる。血圧を正常化するために促進される治療的介入は、それ故期待され、そして、排出量負荷、及び/又は血管作用薬又は/及び強心薬の投与に基づいている。
【背景技術】
【0002】
ある症例では、麻酔専門医は、血圧を維持するだけでなく、1回排出量を最大にすること(又は安定期に到達するまで1回排出量を増加させること)に関心を持ち得る。実際、慢性疾患状態(例えば、慢性心不全を伴う患者における股関節手術)又は、急性疾患状態(例えば、排血性ショックを伴う患者における腹膜炎手術)のいずれか、又は/及び外科手術それ自体の理由で、ハイリスクの外科手術を受ける患者の中には、輸液によって1回排出量を最大化することは、術後合併症の発生率を減少させ、集中治療室及び病院に滞在する長さを短くする(費用節約策)ということが認められた。
【0003】
外科手術を受ける患者においては、排出量負荷の利益を得ることができ、そして、血管作用薬又は/及び強心薬からの利益を得る低血圧患者の識別が非常に難しい。例えば、バソプレジック(vasoplegic)状態(血管作動性薬の投与からの利益を得る)は、心拍出量を除いて(心拍出量の計算に必要なパラメータは、外科手術中には通常測定されない)、全身血管抵抗を評価することによって識別可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液量減少性の状態は、血液量を評価すること、又は、心臓容積によって識別可能であるが、そのような場合も可能性も外科手術中は通常ない。
【0005】
ハイリスクな外科手術を受ける患者において、1回排出量を最大化することは、常に事例又は可能性のない1回排出量を測定することを課し、しかも、特殊で、より高価な心拍出量モニタリング技術を要求する。
【0006】
1回排出量および心拍出量が、外科手術中に測定され、モニタされ得るときでさえ、輸液、及び血液作動薬又は/及び強心薬の投与の自動制御を許容し、全身性低血圧を最小化し、内臓不全の発達を防ぎ、及び外科手術を受ける患者の成果を改善するシステムは存在しない。
【0007】
薬剤が投与されるべきかどうかのよく知られる決定方法は、1つの専用のパラメータのみを通常使用する。このパラメータの値は、薬剤が投与されるべきかどうかを決定する。念のため、薬剤のより多くの種類が患者に注入されるべきときは、これらのタイプの薬剤に専用のパラメータが測定されるべきであることが決定されるべきである。これらの測定に基づいて、これらのタイプの薬剤が投与されるかどうかが決定されるであろう。従来の装置内で、薬剤が投与されるべきかどうかが、他の測定及び他の薬剤から独自に決定される。
【0008】
本発明の目的は、従来の装置の不利な点を回避する、薬剤の投与装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、少なくとも2つの薬剤が注入されることを生じさせる、少なくとも2つのアクチュエータ、少なくとも2つのパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサ、アクチュエータを制御するコントローラであって2つのパラメータの値に従ってアクチュエータを作動させるようにプログラムされ、薬剤の依存性を考慮して設けられるコントローラ、を含む、少なくとも1つの薬剤の注入のための装置によって達成される。この装置は、他の薬剤に依存する薬剤の複雑なシステムを考慮する薬物投与を可能にする。
【0010】
注入のための装置は、薬剤を患者に投与する装置である。望ましくは、それは容器から薬剤を提供する。望ましくは、注入のための装置は、電気的な少用量ポンプ又は電気的な容積測定注入ポンプである。注入のための装置は、少なくとも2つのポートを伴うバルブに基づくこともまた可能である。
【0011】
アクチュエータは、ある動作、特に、薬剤を注入及び/又は注射することを作動させる装置である。望ましくは、アクチュエータは、データを入力するインターフェイスを含む。望ましくは、アクチュエータは、インターフェイスを経由してコントローラに接続される。薬剤が注入されることを生じさせるのに適した各装置がアクチュエータとして採用され得る。望ましくは、電気式のシリンジ、より望ましくは、流体又は赤血球の投与のための注入ポンプが使用される。
【0012】
治療効果を有する各薬物が薬剤として使用され得る。望ましくは、心拍出量に効果を有する薬剤、及び、望ましくは、血圧に効果を有する薬剤が注入される。
【0013】
少なくとも2つの薬剤が注入される。望ましくは、薬剤は、2つ以上の薬剤の混合物である。より望ましくは、薬剤は単独の薬剤である。望ましくは、2以上の薬剤が注入される。
【0014】
薬剤の注入のために、患者に薬剤を投与する各方法が使用され得る。望ましくは、薬剤は、筋肉注射で、経皮的に、皮下注射で、又は、気道への噴霧により投与され、最も望ましくは、薬剤は経皮的に注入される。経口で、又は呼吸器系によって薬剤を投与することもまた可能である。
【0015】
パラメータを測定することが可能な各測定装置がセンサとして使用され得る。望ましくは、パルス酸素濃度測定探査、心電図電極、酸素飽和度センサ、動脈カテーテルに接続される圧力センサ、及び/又は血液テストが、使用される。より望ましくは、動脈圧モニタ、トノメータ、留置ファイバシステム、連続ヘマトクリットモニタ、連続ヘモグロビンモニタ、心電図モニタ、及びパルス酸素濃度測定モニタが使用される。
【0016】
使用されるパラメータは、望ましくは、収縮期動脈圧、平均動脈圧、拡張期動脈圧、中心静脈圧、パルス酸素濃度プレチスモグラフ波形変動POPV、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、心拍、脈圧変動、収縮期血圧変動、前駆出期変動、及び中心静脈酸素飽和度、又は、中心静脈酸素含有量、のような心臓循環系の状態を示すパラメータである。
【0017】
望ましくは、1回の心臓の循環の間の平均動脈圧が、平均動脈圧として使用される。望ましくは、赤血球中の金属タンパク質を移送する酸素を含む金属の濃度がヘモグロビンとして測定される。望ましくは、赤血球が占める血液量の比率がヘマトクリットについて測定される。心臓周期は、望ましくは、心房収縮期、心房収縮、心房拡張期の3つの主要な状態を含む。心臓周期の周波数は、望ましくは、心拍数として使用される。脈圧は、望ましくは、心臓の収縮の間の動脈圧の変化である。脈圧変動は、望ましくは、1回の呼吸サイクルの間の血圧の変化である。中心静脈酸素飽和度は、望ましくは、中心静脈に運ばれる酸素の量の相対的測定である。
【0018】
アクチュエータを制御することが可能な各装置がコントローラとして配置される。望ましくは、チップ又は拡張カード、より望ましくは、計算装置、最も望ましくは、マイクロコントローラ又はプログラマブル論理コントローラが使用される。
【0019】
少なくとも2つのパラメータが測定される。望ましくは、パラメータは、パラメータの数に従って、いくつかのセンサにより測定される。例えば、2つのパラメータが測定された場合、それらは、望ましくは、2以上のセンサによって測定される。より望ましくは、2以上のパラメータは、1つのセンサによって測定される。望ましくは、測定されるパラメータの数は、注入される薬剤の数よりも多い。
【0020】
コントローラは、薬剤の依存性を考慮して設けられる。それ故、異なる薬剤の間の複雑な作用関係が、患者への薬剤の注入において考慮される。望ましくは、コントローラは、第1の薬剤の注入を増加させ、特定の期間を越えて同じ作用を有する第2の薬剤を減少させることを決定するために設けられる。より望ましくは、コントローラは、第1の薬剤の注入の後で、特定の期間が経過するまで、第2の注入を止めることを決定するために設けられる。望ましくは、コントローラは、2以上の薬剤を交互に注入することを決定するために設けられる。望ましくは、コントローラは、何回かの交互にわたる期間において、2以上の薬剤を、交互に注入することを決定するために設けられる。望ましくは、コントローラは、薬剤を注入する前に、残りの期間を決定するために設けられる。望ましくは、コントローラは、第1の薬剤の増加の投与量を注入するため、及び、第2の薬剤の減少の投与量を注入するために設けられ、そして、特定の投与量の第1の薬剤の後で、又は、特定のタイムリミットに達した後で、第2の薬剤の投与量を増加すること、及び第1の薬剤の特定の投与量を減少させることを決定する。望ましくは、コントローラは、第1の薬剤によって誘発されたパラメータ変化を止めるために第2の薬剤を注入することを決定するために設けられる。
【0021】
他の薬剤がその薬剤の治療効果に影響を及ぼすならば、ある薬剤は、もう1つの薬剤に依存する。望ましくは2つの薬剤は、もしそれらが特定のパラメータを互いに増加させ、又は減少させることを増幅しているのであれば、依存していると名付けられる。より望ましくは、特定のパラメータにおいて第1の薬剤が第2の薬剤の効果を減少させる場合に、2つの薬剤は依存していると名付けられる。薬剤は、特定のパラメータの値又は注入される薬剤の投与量についてのみ依存性が存在する場合でも、依存すると名付けられる。
【0022】
流体、望ましくは、晶質の又はコロイド溶液、血管作用薬、及び強心剤は、血圧(SAP及びMAP)を増加させ、HRを減少させる。流体及び血管作用薬は、POPV、SPV、PPV及びPEPVを増加させ得る。変力薬は、POPV、SPV、PEPV、HR及びScVO2を増加させ得る。それ故、変力剤、流体及び血管作用剤は、互いに依存する。ドーパミン、ドブタミン及びエピネフリンは、同時に血管に作用し、変力的である。ドーパミンのような、ある陽性的に変力的に作用する薬剤は、血管拡張を誘発し得る。これらの薬剤は、同時に投与され得る。赤血球は、ヘモグロビン及びScVO2を増加させ、POPV、SPV、PPV及びPEPVを減少させる。
【0023】
もう1つの望ましい実施形態において、パラメータは、以下のグループから選択される:収縮期動脈圧(SAP)、平均動脈圧(MAP)、パルス酸素濃度プレチスモグラフ波形変動(POPV)、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(ht)、心拍数(HR)、脈圧変動(PPV)、収縮期圧変動(SPV)、前駆出期変動(PEPV)及び中心静脈酸素飽和度(ScVO2)。
【0024】
もう1つの望ましい実施形態において、薬剤は、以下のグループから選択される:流体、赤血球、血管作用剤、及び陽性的に変力的な作用剤。
【0025】
望ましくは、赤血球、乳酸リンガル液のような晶質溶液、生理食塩水、又はゼラチンのようなコロイド溶液、ハイドロエチルスターチ、アルブミン、又は新鮮凍結血漿が、流体として使用される。血管系において血管収縮又は血管拡張作用を引き起こすことができる、ホルモン、薬剤又は化学薬品血管作用薬のそれぞれが、血管作用剤として使用され得る。望ましくは、ニトロプルシト、フェニレフリン、エフェドリン、又はエピネフリン、より望ましくは、ドーパミン又はノルエピネフリンが使用される。
【0026】
心筋収縮の力又はエネルギを増加する各薬物が変力剤として使用され得る。望ましくは、カテコールアミン、またはホスホジセステラーゼ、最も望ましくは、カルシウム、又はカルシウム増感剤が変力剤として使用される。望ましくは、ホスホジエステラーゼ抑制剤、またはレボシメンダン(levosimendan)、より望ましくは、ドブタミン、エピネルフィン、又はドーパミンが使用される。
【0027】
もう1つの望ましい実施形態において、コントローラは、薬剤の最大投与量についての値を含む最大メモリを含むマキシマム装置、注入される薬剤の投与量を決定するための投与量決定装置、万が一、注入される薬剤が最大投与量に達した場合に、薬剤の注入を止める最大ストッパ、を含む。それ故、患者への多すぎる薬物の注入を防止することが可能である。
【0028】
薬剤の最大投与量又は薬剤の量が既に注入されたかどうかを決定し、この薬剤の注入を止めることができる各装置がマキシマム装置として使用され得る。望ましくは、マイクロコントローラのような計算装置が使用される。
【0029】
薬剤の最大量のために値を与えることができる全ての装置が最大メモリとして使用され得る。望ましくは、ROM、RAM又はフラッシュメモリのようなコンピュータメモリが使用される。
【0030】
薬物の最大投与量は、患者に注入されることが可能な所定の最大の投与量である。最大投与量は、望ましくは、年齢、血圧、動脈圧及び/又は心拍数、より望ましくは、患者に既に投与された薬物において、重量及び/又は患者の性別に依存する。
【0031】
投与量決定装置は、患者に注入される薬物の投与量を決定することができる装置である。望ましくは、投与量決定装置は、患者に注入される薬剤のそれぞれの投与量を測定するために配置される測定ユニットである。より望ましくは、投与量決定装置は、患者に投与されることが決められた薬剤の投与量を計算するマイクロコントローラのような計算装置である。
【0032】
最大ストッパは、薬剤の注入を止めるために配置される装置である。望ましくは、最大ストッパは、患者に注入されなければならない薬剤の投与量の決定を止めるコンピュータ装置である。
【0033】
もう1つの望ましい実施形態において、コントローラは、薬剤及び対応する期待されるパラメータ変化のリストを保存ための効果メモリ及び薬剤の注入を止めるストッパを含む効果制御装置であって、薬剤が注入され、そして少なくとも1つの対応する期待されたパラメータ変化が生じない場合に、ストッパを作動させるようにプログラムされた効果制御装置をさらに含む。それ故、患者は、効果を示さず、又は個々の患者にかなり高い確率で悪影響を与えるという方法で処置がとられることが防止され得る。
【0034】
望ましくは、それぞれのパラメータ及びその変化を制御するためのさらなる薬剤がない場合に、アラームが与えられる。
【0035】
期待された効果は、望ましくは、パラメータの変化である。効果の結果は、望ましくは、測定された変化である。望ましくは、期待された効果は、薬物を注入してからの、時間間隔内で増大する。より望ましくは、効果は、薬物が注入されてからの、特定のラグタイムの後に現れるように始まる。パラメータをパラメータの変化と比較し、薬剤の注入が停止されなければならないかどうかを決定することが可能な各装置が、効果制御装置として使用され得る。望ましくは、計算装置が使用される。
【0036】
例えば、測定されるパラメータの履歴といった効果を保存することが可能な全ての装置が効果メモリとして使用され得る。望ましくは、RAM、ROM、フラッシュメモリのようなコンピュータメモリが使用される。磁気ディスク又は磁気テープのような磁気記憶装置もまた使用可能である。
【0037】
対応する期待されたパラメータの変化は、経験に従って特定の患者に起こるパラメータ変化である。望ましくは、対応する期待されたパラメータの変化は、薬剤又は治療の治療効果を示すパラメータ変化である。
【0038】
薬剤の注入を止めることが可能な各装置がストッパとして使用され得る。望ましくは、計算装置、特に、患者への薬物の注入の決定を停止するマイクロコントローラが使用される。もう1つの望ましい実施形態は、アクチュエータが薬物を提供することを停止する装置である。望ましくは、この装置は、コンピュータプログラム又はプログラマブル論理回路、特に、EEPROMに保存されるコンピュータプログラムである。アクチュエータによって既に与えられた患者に薬剤が注入されることを防止する、アクチュエータと患者の間のバルブを備えることもまた可能である。
【0039】
もう1つの望ましい実施形態において、コントローラは、閾値、特にハイパーエリア、望ましくは、2つのパラメータに関するラインと、実際に測定されたパラメータとの間の距離を決定する距離分析機、及びその距離を薬剤の投与量に変換する変換ユニットを含み、このコントローラは、この薬剤の投与量に従ってアクチュエータを作動するよいうにプログラムされる。
【0040】
望ましくは、計算装置、特にマイクロコントローラ又はプログラマブル論理コントローラが距離分析機として採用される。
【0041】
閾、特に閾値は、望ましくは、パラメータについての所定の値、又はパラメータの空間内のハイパーエリアである。2つのパラメータのために、ハイパーエリアは、望ましくはラインである。望ましくは、閾は、経験的なデータに基づく。望ましくは、閾は、異なる治療戦略の範囲を分ける。望ましくは、閾は、薬物を投与するというような処置が始められ又は止められるべきであるパラメータポイントによって定義される。望ましくは、閾値は、測定されたデータが生じるまで、薬剤の投与から経過した時間を示すタイムフレームを伴うパラメータの値を結合するデータに基づく。もう1つの望ましい実施形態において、閾は、患者に悪影響を与えるパラメータポイントの範囲を分ける。望ましくは、閾は、望まれるべき範囲を分ける。望ましくは、この範囲は、作用のない領域である。閾は、望ましくは、特定のパラメータの値に従って変化する。多次元方程式によって閾を表示することが可能である。もし、2つのパラメータに関する閾値が視覚化された場合、これは、例えば、各軸においてパラメータの値を低い順に示し、閾値がラインとして図内に示される、2つの軸が直角な図によって為され得る。閾ラインは、望ましくは、曲線状であり、より望ましくは、薬剤が注入されるべきかどうかを示すためのいくつかの閾ラインが存在する。望ましくは、個々の閾ハイパーエリアが、各治療処置に対して与えられる。望ましくは、薬剤を投与するための、全てのアクチュエータを停止し、及び/又はアラームを与えるための閾ハイパーエリアが与えられる。
【0042】
パラメータポジションは、1以上のパラメータの値によって定められる。上記の図において、パラメータポジションは、測定された両方のパラメータの値を示す特定のポイントである。
【0043】
パラメータポジションと閾との間の距離は、望ましくは、最も短い距離、特に、それぞれのパラメータ値の間の二乗平均平方根である。図に示されることで、その距離は、望ましくは、パラメータポジションと最も近い閾ポイントとの間のラインである。もし、閾がライン、エリア、体積等である場合には、その距離は、パラメータポジションと可能な閾ポイントとの間の最も短い距離である。もし、パラメータが、異なる測定ユニットを有する場合、それらは、距離を決定するために任意に加重される。
【0044】
距離の決定は、望ましくは、パラメータ値の距離を計算することによってなされる。それは、グラフでデータを視覚化すること、及び距離を測ることによってもまたなされ得る。より望ましくは、その距離は、閾ハイパーエリアの方程式から計算される。
【0045】
パラメータポジションと閾の間の距離を、薬剤の投与量に変換することができる全ての装置が変換ユニットとして使用され得る。望ましくは、計算装置、特に、マイクロコントローラ又はプログラマブル論理コントローラが変換ユニットとして採用される。
【0046】
薬剤の投与量は、望ましくは、患者に注入されるように決定される薬物の量である。もう1つの望ましい実施形態において、コントローラは、閉ループコントローラである。それ故、既に注入された薬剤の効果は、薬剤が注入されるべきかどうかの決定において考慮される。
【0047】
閉ループコントローラは、望ましくは、薬剤が注入された間又は/及び注入された後、パラメータの値を制御し、その結果を、薬剤が注入されるべきかどうかを決定するために使用する。パラメータの値の変化に従って、閉ループコントローラは、薬剤の注入の停止し、薬剤の投与量を増加すること、及び/又はもう1つの薬剤を注入すること、を決定するために設けられる。コントローラは、望ましくは、パラメータの値に従って1以上の薬剤の注入を停止することを決定するために設けられる。望ましくは、コントローラは、特定の時間間隔の後に、再び、薬剤が注入されるべきかどうかを決定する。望ましくは、コントローラは、注入される特定の薬剤の総量が注入されるべきかどうかを決定において考慮する。望ましくは、コントローラは、分解のための注入される薬剤の時間を考慮する。より望ましくは、コントローラは、総量に達した後に、薬剤の注入の決定を止める。望ましくは、コントローラは、治療の時間の総量を考慮する。より望ましくは、コントローラは、治療の特定の期間の後に、薬剤の決定を止める。
【0048】
望ましくは、装置は、患者の体質を示す信号伝送要素を含む。それ故、患者の体質は、医師又は看護師に簡便に伝えられ得る。より望ましくは、装置は、患者のアラーム状態を定める要素を含む。望ましくは、これらの要素は、モニタ上で、色づけされた領域である。より望ましくは、これらの要素は、光学及び/又は音響信号である。
【0049】
本発明の目的は、少なくとも2つのパラメータを測定すること、少なくとも2つの薬剤を2つのパラメータに従って注入されるようにすること、を含み、薬剤の依存性が考慮される、少なくとも1つの薬剤を注入するための方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明による閉ループコントローラシステムの概略図を示す。
【図2】図2は、本発明による閉ループコントローラのオペレーション図を示す 。
【図3】図3は、本発明による閉ループコントローラのもう1つのオペレーション図を示す。
【図4】図4は、本発明によるもう1つの閉ループコントローラシステムの概略図を示す。
【図5】図5は、本発明による閉ループコントローラのもう1つのオペレーション図を示す。
【図6】図6は、本発明による閉ループコントローラのもう1つのオペレーション図を示す。
【図7】図7は、本発明によるコントローラ/制御のための入力パラメータであるパラメータ、及びコントローラがアクチュエータを作動させる場合に、アクチュエータによって注入される薬剤を示す。
【図8】図8は、薬剤が注入されるべきかどうかを決定するためのコントローラによって使用される図を示す。
【図9】薬剤が注入されるべきかどうかを決定するためのコントローラによって使用されるもう1つの図を示す。
【図10】図10は、薬剤が注入されるべきかどうかを決定するためのコントローラによって使用されるもう1つの図を示す。
【図11】図11は、どの程度の量の薬剤が注入されるべきかを決定するためのコントローラによって使用される図を示す。
【図12】図12は、2つの異なる薬剤の注入のための装置の実施形態における概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の望ましい実施形態は、ここで添付の図面に基づいて説明されるであろう。
【0052】
図1は、閉ループコントローラシステム/動脈圧カフ130及び動脈経路135に接続される動脈圧モニタ50から入力パラメータを取得するコントローラ60、心電図電極133にリンクされる心電図モニタ58、及び、パルス酸素濃度プローブ131にリンクされるパルス酸素濃度モニタ132、を含む装置1を示す。コントローラ1は、注入ポンプ又は、静脈経路141にリンクされる血管作用及び/又は変力剤静脈注入のための電気式シリンジ142、及びもう1つの静脈経路にリンクされ、流体バッグ139に関係する流体投与のための注入ポンプ140に接続される。機械式換気装置134が、患者の気道に接続される。
【0053】
この装置1は、望ましくは、外科手術を受ける多くの患者のために使用され、最も共通の臨床目標は、所定の閾値SAPtv1(又はMAPtv1)よりも上で、所定閾値SAPtv2(又はMAPtv2)よりも下の、収縮期動脈圧(SAP)(又は平均動脈圧(MAP))を維持することである。この装置とともに、多重入力が評価され、多重出力のための閉ループ制御が生成される。
【0054】
装置の機能は、図2のオペレーション図に示され、そして、以下に記述される。
【0055】
図2は、本発明における自動閉ループコントローラ60のオペレーション図を示す。自動コントローラ60は、以下のように作動する。
【0056】
最初にSAP(又はMAP)が、動脈圧モニタによって測定される。
【0057】
もし、SAP(又はMAP)が、SAPtv1及びSAPtv2の間にある場合、何も変化しない。
【0058】
SAP(又はMAP)が所定の閾値SAPtv2(又はMAPtv2)の上にあるとき、血管作用又は/及び変力剤投与が減少させられ(又は止められ)又は/及び流体注入率は減少する。
【0059】
SAP(MAP)が所定の閾値の下にあるとき、機械的人工換気によって誘発されるパルス酸素濃度プレチモグラフィック波形変動(POPV)(又は前駆出期変動PEPV、又は、動脈パルス圧変動PPV、又は動脈収縮期圧変動SPV)が、SAP(又はMAP)を正常化するのに最も適切な治療を選択するために使用される。
【0060】
POPVは、酸素濃度プレチスモグラフ波形の解析から得られ、PEPVは、パルス酸素濃度モニタ54によって与えられるパルス酸素濃度プレチスモグラフ波形(又は動脈圧モニタ50によって与えられる動脈圧曲線)及び心電図モニタ58によって与えられる心電図連続記録の同時解析から得られ、そして、PPV又はSPVは、動脈圧曲線の解析によって得られる。これらの全ての信号(POPV又はPEPV又はSPV)は、自動コントローラ60の入力信号である。自動コントローラ60は、外科手術を受けている患者において、流体及び、血管作用又は/及び変力剤の投与をトリガ−し、駆動することができる。
【0061】
オプションとして、POPV(PEPV又はPPV又はSPV)の計算は、呼吸信号(例えば気道圧又はフロー曲線、又はカプノグラフィック信号、又は胸の電気バイオインピーダンス信号)の付加的及び同時の記録及び解析によって改善される。
【0062】
全ての場合において、SAP(又はMAP)は、所定のタイムフレーム(DT)の経過後、再評価され、そして、閉ループコントローラシステムによって同じ自動処理が続く。
【0063】
もし、POPV(又はPEPV又はPPV又はSPV)が、所定の閾値(POPVtv)の上にある場合、流体投与は、開始され、又は、図1に示される、自動コントローラ60(出力信号)に接続されて制御される注入ポンプ140によって自動的に増加する。
【0064】
オプションとして、ヘモグロビンHbの血液量(又は血液ヘマトクリットHct)はまた、連続的に(又は半連続的に)モニタされ、そして、注入される流体:赤血球又は他のプロダクト(例えば晶質又はコロイド溶液)の種類を決定する自動コントローラ60によって付加的な入力信号として使用される。Hb(又はHct)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の下にあるとき、赤血球が注入される。Hb(又はHct)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の上にあるとき、他のタイプの流体(例えば晶質又はコロイド溶液)が注入される。
【0065】
もし、POPV(又はPEPV又はPPV又はSPV)が、所定の閾値POPVtvの下にある場合、血管作用又は/及び変力剤が、図1に示すように、自動コントローラ(出力信号)に接続され制御される電気シリンジ142によって、自動的に投与される。安全の理由のため、周期変動特性を伴う血管作用又は/及び変力剤(例えばドーパミン)が投与されるとすぐに、心拍数HRもまた、連続的にモニタされる(入力信号)。もし、HRが、所定の閾値HRtvの上にある場合、又は、もし、患者が血管作用剤の投与前に不整脈である場合、血管作用又は/及び変力剤の投与は、自動コントローラシステムによって許可されない。もし、HRがHRtvを越え、又は患者が血管作用又は/及び変力剤の投与中に不整脈になった場合、血管作用又は/及び変力剤の投与は、止められるか、又は、遅くなる。
【0066】
図3は、本発明による閉ループコントローラのもう1つのオペレーション図を示す。
【0067】
最初にPPVが測定される。
【0068】
PPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)が、所定の閾値PPVtv(又はPOPVtv又はPEPVtv)の上にあるとき、流体は、自動コントローラ(出力信号)に接続されて制御される注入ポンプ140によって自動的に投与される。
【0069】
オプションとして、血液中のヘモグロビンHb(又は血液中のヘマトクリットHct)はまた、連続的に(又は半連続的に)モニタされ、そして、注入される流体:赤血球又は他の注入物(例えば晶質又はコロイド溶液)の種類を決定するための自動コントローラによって付加的な入力信号として使用される。Hb(又はHt)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の下にあるとき、赤血球が注入される。Hb(又はHct)が、所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の上にあるとき、他の種類の流体(例えば晶質又はコロイド溶液)が注入される。
【0070】
もし、PPV(又はSPV又はPEPV又はPPV)が所定の閾値PPVtvの下にある場合、SAPが測定され、そして、最も適切な処置がSAP(またはMAP)に従う。もし、SAP(又はMAP)が所定の閾値SAPtv1(又はMAPtv1)の下にある場合、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤が、自動コントローラ(出力信号)に接続され制御される電気シリンジ142によって自動的に投与される。安全の理由のために、周期変動特性を伴う血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤(例えばドーパミン)が投与されるとすぐに、心拍数HRもまた、連続的にモニタされる(入力信号)。もし、HRが所定の閾値HRtvの上にある場合、又は、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤の投与前に患者が不整脈である場合、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラシステムによって許可されない。もし、HRがHRtvを越えた場合、又は、患者が、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤の投与中に不整脈になった場合、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラシステムによって停止され、又は遅くなる。
【0071】
もし、SAP(又はMAP)が所定の閾値SAPtv2(又はMAPtv2)の上にある場合、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤の投与は、減少し(又は停止し)、又は/及び流体注入率は減少する。
【0072】
もし、SAP(MAP)が、SAPtv1とSAPtv2の間にある場合、何も変化しない。全ての場合において、PPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)は、所定のタイムフレーム(DT)の後に、再評価され、閉ループコントローラシステムによって同じ自動処理が続く。
【0073】
外科手術(主にハイリスクの外科手術)を受ける患者において、臨床目標は、血圧を所定の範囲(例えば上記のようにSAPtv1とSAPtv2の間)内に維持するだけでなく、流体負荷手段によって、1回排出量を最大化する(又は1回排出量が安定期の値に達するまで増加させる)ことであり得る。
【0074】
心拍出量及び1回排出量が測定されず、又はモニタされないとき、臨床目的「1回排出量を最大化すること」を、臨床目的「PPVを最小化すること」(又は入力信号としてSPV又はPOPV又はPEPV(図1))に置き換えることが可能である。PPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)が低いとき、機械式の吸気誘導変化は、心前負荷において、1回排出量における重大な変動を誘導せず、それは患者が心前負荷における変化に敏感にならないということである。
【0075】
一方、もし、PPV(又はSPV又はPOV又はPEPV)が高いとき、心前負荷において、機械式の吸気誘導変化が1回排出量における重大な変動を誘導し、患者が心前負荷における変化に敏感になり、そしてそれ故、さらなる流体の投与に応じて1回排出量をより多く増加することになる。それ故、PPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)は、流体投与が、1回排出量をさらに増加することができるか否かを知るためのツールとして使用され得る。もしそうでなければ、患者は、自分が流体を受けることによって到達可能な最大排出量に到達している。
それ故、「PPVを最大化すること」(「1回排出量を最大化すること」のための代理として)が、外科手術処理の間に、臨床目的として選ばれたとき、図3に示されるアルゴリズムが、閉ループコントローラシステムによって適用され得る。
【0076】
図4は、閉ループコントローラシステム60を伴う装置1のもう1つの実施形態を示す。この装置1は、図1に示される装置1と比較して、4つの付加的な特徴を含む。ここで、閉ループコントローラシステム60は、中心静脈経路136にリンクされる中心静脈酸素飽和度モニタ137からの入力を取得する。閉ループコントローラシステム60は、血管作用剤静脈注入10のための電気シリンジ、及び陽性的に変力な作用剤静脈注入138に接続される。
【0077】
前のアルゴリズムに記載されるように、流体投与(1回排出量が安定期の値に達したこと、又は流体注入によって「最大化」したことを意味する)の使用によって、PPVが最小化されたときに、この実施形態が適用される。この場合において、麻酔専門医は、陽性的に変力な作用剤の使用によって、1回排出量が増加することに興味をもつ。この場合において、臨床目的は、酸素運搬又は中心静脈酸素飽和度(ScvO2)又は中心静脈酸素含有量(CvO2)の所定の閾値に到達することである。それ故、ScVO2又はCvO2は、連続的又は半連続的にモニタされる。ScVO2又はCvO2は、閉ループ自動コントローラシステムのための付加的な信号入力として使用される。
【0078】
このシステムの機能は、図5に示される図によって記載される。
【0079】
図5は、本発明による閉ループコントローラのオペレーション図を示す。このオペレーション図は、図3におけるループの制御と同様に、装置1のループの制御を示す。図3と比較して、図5は、図3において示されるアルゴリズムにおいて実行される付加的なループを示す。このアルゴリズムは、図4に示すシステムとともに使用される。
【0080】
目標とされるPPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)及びSAP(又はMAP)に到達するとすぐに、図3に示される前のアルゴリズムにより、ScvO2又はCvO2の測定が、図5におけるアルゴリズムに加えられた閉ループコントローラシステムによって解析される。
【0081】
ScvO2又はCvO2が、所定の閾値(ScvO2tv又はCvO2tv)の下にある場合、陽性的に変力な作用剤の注入が、始まり、又は増加する(出力信号)。安全の理由のために、周期変動特性を伴う陽性的に変力な作用剤(例えばドーパミン又はエピネフリン)が投与され、心拍数HRもまた連続的にモニタされる(入力信号)。もし、HRが、所定の閾値HRtvの上にある場合、又は、患者が変力な作用剤の投与の前に不整脈である場合、陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラシステムによって許可されない(出力信号)。もし、HRがHRtvを越え、又は、患者が陽性的に変力な作用剤の投与中に不整脈になった場合、陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラによって停止し又は遅くなる(出力信号)。
【0082】
もし、ScvO2又はCvO2が、所定の閾値ScvO2tv又はCvO2tvの上にある場合、何も変化しない。
【0083】
全ての場合において、PPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)が、所定のタイムフレーム(DT)の後に、再評価され、そして、閉ループコントローラシステムによって同じ処理が続く。
【0084】
図6は、本発明による閉ループコントローラのもう1つのオペレーション図を示す。
【0085】
最初にSAP(又はMAP)が測定される。
【0086】
SAP(又はMAP)が、所定の閾値SAPtv1(又はMAPtv1)の下にあるとき、全身血管抵抗SVRが、SAP(又はMAP)を正常化するのに最も適切な治療を選択するために使用される。SVRは、以下のように、MAPとCOの同時測定から得られる:SVR=f(MAP、CO)。オプションとして、SVRの計算は、以下のように、中心静脈圧CVPの付加的で同時の記録及び解析によって改善される:SVR=f(MAP、CVP、CO)。
【0087】
この場合において、自動コントローラは、以下のように動作する。もし、SVRが、所定の閾値(SVRtv)の上にある場合、流体注入は、自動コントローラに接続されて制御される注入ポンプ140によって自動的に増加する。オプションとして、血液中のヘモグロビンHbの量(又は血液中のヘマトクリットHtの量)もまた、連続的(又は半連続的)にモニタされ、注入される流体:赤血球または他の種類の流体(たとえば晶質又はコロイド溶液)の種類を決定するための自動コントローラによって、入力信号として使用される。Hb(又はHct)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の下にあるとき、赤血球が注入される。Hb(又はHct)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の上にあるとき、他のタイプの流体(例えば晶質又はコロイド溶液)が注入される。
【0088】
SVRが所定の閾値SVRtvの下にある場合、血管作用剤が、自動コントローラ(出力信号)に接続され制御される電気シリンジ142によって自動的に投与される。安全の理由のため、周期変動特性を伴う血管作用剤(例えばドーパミン)が投与されるとすぐに、心拍数HRもまた、連続的にモニタされる(入力信号)。もし、HRが所定の閾値HRtvの上にある場合、又は、患者が、血管作用剤の投与前に、不整脈である場合、血管作用剤の投与は、自動コントローラシステムによって許可されない。もし、HRがHRtvを越え、又は、患者が血管作用剤の投与中に不整脈になった場合には、血管作用剤の投与は停止され、または遅くなる。
【0089】
SAP(又はMAP)が、所定の閾値SAPtv2(又はMAPtv2)の上にある場合、血管作用剤の投与は、減少(又は停止)し、又は/及び流体注入率が減少する。
【0090】
SAP(又はMAP)が、SAPtv1とSAPtv2の間にある場合、何も変化しない。SAP(又はMAP)が、所定のタイムフレーム(DT)の後に再評価され、閉ループコントローラシステムによって、同じ処理が続く。
【0091】
外科的な処置(例えば、パルス輪郭分析又は食道ドップラー又は二酸化炭素CO2分圧再呼吸法又は電気バイオインピーダンス法)の間、1回排出量SV又は心拍出量COが測定されモニタされるこのアルゴリズムは、流体及び血管作用剤の投与を開始し、駆動するための自動コントローラシステムによって使用される。
【0092】
このアルゴリズムは、所定の閾値SAPtv1(又はMAPtv1)の上で、かつ、所定の閾値SAPtv2(又はMAPtv2)の下にある、収縮期動脈圧(SAP)(又は平均動脈圧MAP)を維持することが臨床目的である場合に使用される。
【0093】
流体及び血管作用剤の投与を開始し、駆動する入力信号としてのSVRの使用の代わりは、図2の記載において記述されるように、POPV又はPEPV又はPPV又はSPVを使用することである。もし、外科的処理の間に、心拍ごとに、SVが測定され、モニタされた場合、1回排出量の変動SVVはまた、図2の記載で記述されるアルゴリズムによる、POPV又はPEPV又はPPV又はSPVの代わりに使用され得る。
【0094】
代わりに、連続的に測定されるSV(又はCO)は、コントローラの入力信号として使用され、そして、コントローラは、例えば、SVが、外科的な処置の間にSVが大きく落ちる(例えば少なくとも10%で)のと同様に、流体投与中(2分の期間を越える、250mlのコロイド溶液の注入中)に、大きく増加しない(例えば10%以上で)というように、SVが安定期に到達するまで、自動的に流体を搬送することができる。オプションとして、COモニタ(COを正確に測定すること)の代わりに、COの変化を追跡できる(例えばCOにおける減少又は増加を検出できる)モニタが使用され得る。もう1つのオプションとして、血液中のヘモグロビンHb(又は血液中のヘマトクリットHct)の量は、また、連続的に(又は半連続的に)モニタされ、注入される流体:赤血球又は他のプロダクト(例えば晶質又はコロイド溶液)の種類を決定するための自動コントローラによって付加的な入力信号として使用される。Hb(又はHt)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の下にあるとき、赤血球が注入される。Hb(又はHt)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の上にあるとき、他の種類の流体(例えば晶質又はコロイド溶液)が注入される。
【0095】
SVの入力信号としての用法の代替は、図3の記載に記述されるように、POPV、PEPV、PPV又はSPVを使用することである。もし、SVが外科的な処置の間に、心拍ごとに測定され、モニタされた場合、1回排出量変動SVVはまた、図3の記載に記述されるアルゴリズムによる、POPV、PEPV、PPV又はSPVの代わりに、使用され得る。
【0096】
このアルゴリズムは、特にハイリスクな外科手術を受ける患者において、「1回排出量を最大化すること」のために使用され得る。
【0097】
動脈酸素濃度飽和度SaO2及びHbは、測定及びモニタされ、DO2が計算され得る:DO2=f(CO、SaO2、Hb)。もし、患者が中心静脈経路につながれている場合、ScvO2が計算され得る。この状況において、DO2又は、ScvO2又はCvO2は、以下の閉ループコントローラシステムのための付加的な信号入力として使用され得る。
【0098】
SVが流体とともに安定期に達するとすぐに、DO2(またはScvO2又はCvO2)の値は、閉ループコントローラシステムによって分析される。
【0099】
もし、DO2が、所定の閾値(DO2tv)の下にある場合、変力剤注入が開示され、又は増加される(出力信号)。安全の理由のため、周期変動特性を伴う変力剤(例えばドブタミン又はエピネフリン)が投与されるとすぐに、心拍数HRもまた、連続的にモニタされる(入力信号)。もし、HRが、所定の閾値HRtvの上にある場合、又は、患者が、変力剤の投与前に不整脈である場合、陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラシステムによって許可されない(出力信号)。もし、HRがHRtvを越えた場合、又は、患者が、陽性的に変力な作用剤の投与中に不整脈になった場合、陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラによって中止され、又は遅くなる(出力信号)。
【0100】
もし、DO2(又はScvO2又はCvO2)が、所定の閾値DO2tvの上にある場合、何も変化しない。
【0101】
全ての場合において、DO2(又はScvO2又はCvO2)が、閉ループコントローラシステムによって、所定のタイムフレーム(DT)の後に再評価され、同じ自動処理が続く。
【0102】
このアルゴリズムは、流体投与の使用によってSVが最大化されたとき(又は安定期の値に達したとき)に使用され、そして、麻酔専門医は、陽性的に変力な作用剤を使用することによってSVを増加させることに関心を持つ。この場合において、臨床目的は、酸素運搬(DO2)又は中心静脈酸素濃度飽和度(ScVO2)の所定の閾値に達することである。
【0103】
図7は、本発明によるコントローラ/制御のための入力パラメータであるパラメータ、及び、コントローラがアクチュエータを作動させた場合に、アクチュエータによって注入される薬剤、を示す。パラメータは、ScVO2、SAP、PPV、HR、及びヘモグロビンであり、薬剤は、流体、赤血球、血管作用剤、及び陽性的に変力な作用剤である。コントローラは、測定されたパラメータに基づいてどの薬剤が施されるべきかを決定するイベント及びルールを使用する。
【0104】
図8、9、及び10は、薬剤が注入されるべきかどうかを決定するコントローラによって使用される図である。ブール論理を伴う判断ツリーアルゴリズムの他に、特性要因図が使用され得る。それによっていくつかの動作が、測定され又は計算されたパラメータの多次元空間の全てのポイントで割り当てられる。これは、数学的に、n次元(n=パラメータの数)を伴うm方程式(m=動作の数)によって記述される。図8の処置は、図6と同様であり、図9は図5と同様である。
【0105】
図8は、2つの直角な軸を伴う図である。これらの軸は、PPVの値及びSAPの値を示し、ベクトル空間を測る。このベクトル空間において、4つの領域が示される。
【0106】
SAPの低い値、又は、SAPtv1の値の下にあるSAPの値を示す領域において、2つの領域は、PPVの値に従って示される。所定の閾値PPVtvの下にある値について、血管作用剤を増加するように指示する領域が測られる。PPVtvの上にある値について、流体を増加するように指示する領域が測られる。
【0107】
閾値SAPtv1とSAPtv2の間にあるSAPの値を示す領域は、いかなる動作をも行わないように指示する。
【0108】
SAPtv2の上にあるSAPの値を示す領域は、血管作用剤及び/又は流体を減少させるように指示する。これは、PPVの全ての値に適用する。
【0109】
図9は、図8と同様で、PPVtvの下にあるPPVの値のためのものである。PPVtvの上にあるPPVの値について、流体を増加するように指示する領域が示される。これは、SAPの全ての値に適用する。
【0110】
図10は、湾曲した閾ライン122、123、124を伴う図120を示す。この図120は、2つの薬剤の注入を示す領域121を示す。これらの領域121
は、オーバラップする2つの動作領域によって生じ、1以上の薬剤の注入を増加させ、又は減少させるように指示する。判断ツリーで促されることが不可能である処置は、例えば図10における曲線をなす特性要因図で実現される。
【0111】
マップは、動作のない領域とともに定義される。これは、2つの分かれた、投与量のための、オーパラップしていないマップによって実現される。これは、患者の生理的な機能を特定の生理的なポイントに強制することを必要とせずに、特定の範囲を対象とするという事実による。
【0112】
その表示又はもう1つの処置の反対の表示における、様々な処置(介入)の効果の影響が組み込まれる。例えば、血管作用剤の投与量は、PPV、PEPV、POPV、SPV、又はSVVにおける影響を有し得る。それ故、図10において、流体の投与量は、領域121を参照し、血管作用剤が投与された場合に、減少され得る。また、徐々に変化する動作及びオーパラップしている範囲において有利性が存在する。
【0113】
望ましくは、動作は、完全な投与量率の代わりに、薬剤の投与量の増加/減少のような異なるタイプである。それによって、患者の生理的な反応とともに、制御ループが確立される。
【0114】
図11は、注入されるべき薬剤がどの程度かを決定するコントローラによって使用される図を示す。図11において、境界線及びパラメータポジションが示される。パラメータポジションは、測定されたSAP及びPPVによって定められる。境界線と現在のポジションとの間の距離は、投与量を計算するために使用される。その距離は、測定された値と閾値との間の最も小さな違いの可能性である。もし、いくつかの値が測定され、閾値が与えられた場合、離散距離関数又はユークリッド距離関数のような距離の関数が数学的に使用される。もし、2以上のパラメータが使用された場合、n次元空間内のハイパーエリアは、境界線の代わりに使用され得る。さらに、投与量は、最小及び最大投与量の値に対して制限される。
【0115】
この方法はまた、もう1つの体積反応性パラメータ(SPV、PEPV、POPV、SVVのような)又は、もう1つの血圧関係のパラメータ(MAPのような)を使用するとによって適用され得る。
【0116】
記載されるコントローラは、統合コントローラと同様に作動する。ある場合には、この方法と同様に、比例コントローラタイプに適応するように、より適切なものにすることができる。これは、例えば、絶対的な投与量率を特性要因図内に割り当てることによって行われる。
【0117】
望ましくは、いくつかの進歩した制御処理が、記述されたコントローラに加えられる。適用される薬剤のために、許容可能な最大投与量がチェックされる。装置は、薬剤の所定の量を適用し、そして、モニタされるパラメータが期待される目標範囲に移動しない場合には、処理を停止する。これは、パラメータがしばしば間接的に悪影響を受けるという事実による。生理学的知識は、統計的/実験的な観察に基づく。個々の患者は、生理的な異常又は病気のために、異なる方法で、処置に対して反応し得る。
【0118】
図12は、2つの異なる薬剤の注入のための装置の実施形態における概略図を示す。装置1は、コントローラ60に接続される、血管作用剤20を伴う第1の電気シリンジ又は注入ポンプ10及び流体40を伴う第2の電気シリンジ又は注入ポンプ30を含む。コントローラ60は、フラッシュメモリ70、変換ユニット81に接続されるマイクロコントローラ80、クォーツ時計又はマイクロコントローラの内部装置85、フラッシュメモリ91、投与量決定装置92及び最大ストッパ93を含むマキシマム装置90、フラッシュメモリ101及びストッパ102を含む効果制御装置100、リストメモリ/フラッシュメモリ111、検出装置又はインラインフローセンサ112、決定装置又はマイクロコントローラ113及び114を伴うパラメータ装置110、を含む。コントローラ60は、動脈圧モニタ50、パルス酸素濃度モニタ54及び心電図モニタ58に接続される。
【0119】
装置1は、動脈圧モニタ50、パルス酸素濃度モニタ54及び/又は心電図モニタ58によって測定される第1及び第2のパラメータに従う血管作用剤20又は流体40を注入する。血管作用薬20又は流体40を注入するための判断は、薬剤20,40が注入されなければならない第1及び第2のパラメータの全ての組み合わせを示す、フラッシュメモリ70に保存される図120に基づく。図には、血管作用薬と同様に流体を注入することを計画する領域121がある。閾ライン122,123及び124は、閾を要求に適合させるために湾曲している。薬剤20,40を注入しないことを示す「作用なし」の領域もまた存在する。
【0120】
図11に基づいて、距離を値に変換する変換ユニット81に接続されるマイクロコントローラ又は距離分析器80は、注入される薬剤の投与量を計算する。
【0121】
クォーツ時計85は、装置が、上記の薬剤の注入を考慮するそれぞれの計算を達成するように導くタイムスライスを与える。ここで、クォーツ時計はまた、動脈圧モニタ50、パルス酸素濃度モニタ54及び/又は心電図モニタ58が、測定を実行するように導き、それ故、測定は、連続的に行われない。
【0122】
マキシマム装置90は、最大値を決定し、最大値に達した場合に、薬剤の注入を停止するために設けられる。フラッシュメモリ91は、薬剤のリスト及び個々の患者に許容される最大投与量を保存し、投与量決定装置92は、どの程度の量の薬剤が患者に誘導されるのかを決定し、最大ストッパ93は、薬剤を誘導するための第1の電気シリンジ10及び第2の電気シリンジ30を決定するためのコントローラ60を停止することによって患者に対する薬剤の注入を停止させる。
【0123】
効果制御装置100は、期待される効果が生じるかどうかを制御する。フラッシュメモリ101は、特定の患者について期待される効果のリストを含む。ストッパ102は、 薬剤を誘導するための第1の電気シリンジ10及び第2の電気シリンジ30を決定するためのコントローラ60を停止することによって患者に対する薬剤の注入を停止する。
【0124】
パラメータ装置110は、特定のパラメータ、例えば、心拍数が、測定されるべきかどうかを決定し、そして、パルス酸素濃度モニタ54をそのようにトリガーする。リストメモリ111は、薬剤が注入され及び/又はパラメータが測定された場合に、心拍数が測定されるべきかどうかの情報を伴う、薬剤及びパラメータの条件のリストを含む。検出装置112は、心拍数を測定するためのリストによって示される条件が生じたかどうかを検出する。決定装置113は、心拍数が測定されるべきかどうか、及びトリガ114がパルス酸素濃度モニタ54又は心拍数を測定するための心電図モニタ58をトリガ−するかどうかを決定する。
【符号の説明】
【0125】
1…装置、10…血管作用剤静脈注入のための電気シリンジ、20…血管作用剤、30…第2電気シリンジ、40…流体、50…動脈圧モニタ、54…パルス酸素濃度モニタ、58…心電図モニタ、60…コントローラ、70…ダイアグラムメモリ/フラッシュメモリ、80…距離分析器/マイクロコントローラ、81…変換ユニット、85…タイミング装置/クォーツ時計、90…マキシマム装置、91…マキシマメモリ/フラッシュメモリ、92…投与量決定装置、93…最大ストッパ、100…効果制御装置、101…効果メモリ/フラッシュメモリ、102…ストッパ、110…パラメータ装置、111…リストメモリ、112…検出装置、113…決定装置、114…トリガ、120…図、121…領域、122…閾ライン、123…閾ライン、124…閾ライン、125…距離、126…閾値、127…パラメータポジション、130…動脈圧カフ、131…パルス酸素濃度プローブ、132…パルス酸素濃度モニタ、133…心電図電極、134…機械式呼吸器、135…動脈経路、136…中心静脈経路、137…中心静脈酸素濃度飽和度モニタ、138…変力剤静脈注入のための電気シリンジ、139…流体バッグ、140…流体投与のための注入ポンプ、141…静脈経路、142…血管作用及び/又は変力剤静脈注入のための電気シリンジ
【技術分野】
【0001】
外科手術を受ける患者の中には、麻酔薬によって血管拡張が誘発され、手術による出血によって血液量減少が誘発されるため、低血圧は、しばしば外科手術中に観察される。持続性低血圧は、臓器血流の低下となり、最終的に臓器不全となる。血圧を正常化するために促進される治療的介入は、それ故期待され、そして、排出量負荷、及び/又は血管作用薬又は/及び強心薬の投与に基づいている。
【背景技術】
【0002】
ある症例では、麻酔専門医は、血圧を維持するだけでなく、1回排出量を最大にすること(又は安定期に到達するまで1回排出量を増加させること)に関心を持ち得る。実際、慢性疾患状態(例えば、慢性心不全を伴う患者における股関節手術)又は、急性疾患状態(例えば、排血性ショックを伴う患者における腹膜炎手術)のいずれか、又は/及び外科手術それ自体の理由で、ハイリスクの外科手術を受ける患者の中には、輸液によって1回排出量を最大化することは、術後合併症の発生率を減少させ、集中治療室及び病院に滞在する長さを短くする(費用節約策)ということが認められた。
【0003】
外科手術を受ける患者においては、排出量負荷の利益を得ることができ、そして、血管作用薬又は/及び強心薬からの利益を得る低血圧患者の識別が非常に難しい。例えば、バソプレジック(vasoplegic)状態(血管作動性薬の投与からの利益を得る)は、心拍出量を除いて(心拍出量の計算に必要なパラメータは、外科手術中には通常測定されない)、全身血管抵抗を評価することによって識別可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液量減少性の状態は、血液量を評価すること、又は、心臓容積によって識別可能であるが、そのような場合も可能性も外科手術中は通常ない。
【0005】
ハイリスクな外科手術を受ける患者において、1回排出量を最大化することは、常に事例又は可能性のない1回排出量を測定することを課し、しかも、特殊で、より高価な心拍出量モニタリング技術を要求する。
【0006】
1回排出量および心拍出量が、外科手術中に測定され、モニタされ得るときでさえ、輸液、及び血液作動薬又は/及び強心薬の投与の自動制御を許容し、全身性低血圧を最小化し、内臓不全の発達を防ぎ、及び外科手術を受ける患者の成果を改善するシステムは存在しない。
【0007】
薬剤が投与されるべきかどうかのよく知られる決定方法は、1つの専用のパラメータのみを通常使用する。このパラメータの値は、薬剤が投与されるべきかどうかを決定する。念のため、薬剤のより多くの種類が患者に注入されるべきときは、これらのタイプの薬剤に専用のパラメータが測定されるべきであることが決定されるべきである。これらの測定に基づいて、これらのタイプの薬剤が投与されるかどうかが決定されるであろう。従来の装置内で、薬剤が投与されるべきかどうかが、他の測定及び他の薬剤から独自に決定される。
【0008】
本発明の目的は、従来の装置の不利な点を回避する、薬剤の投与装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、少なくとも2つの薬剤が注入されることを生じさせる、少なくとも2つのアクチュエータ、少なくとも2つのパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサ、アクチュエータを制御するコントローラであって2つのパラメータの値に従ってアクチュエータを作動させるようにプログラムされ、薬剤の依存性を考慮して設けられるコントローラ、を含む、少なくとも1つの薬剤の注入のための装置によって達成される。この装置は、他の薬剤に依存する薬剤の複雑なシステムを考慮する薬物投与を可能にする。
【0010】
注入のための装置は、薬剤を患者に投与する装置である。望ましくは、それは容器から薬剤を提供する。望ましくは、注入のための装置は、電気的な少用量ポンプ又は電気的な容積測定注入ポンプである。注入のための装置は、少なくとも2つのポートを伴うバルブに基づくこともまた可能である。
【0011】
アクチュエータは、ある動作、特に、薬剤を注入及び/又は注射することを作動させる装置である。望ましくは、アクチュエータは、データを入力するインターフェイスを含む。望ましくは、アクチュエータは、インターフェイスを経由してコントローラに接続される。薬剤が注入されることを生じさせるのに適した各装置がアクチュエータとして採用され得る。望ましくは、電気式のシリンジ、より望ましくは、流体又は赤血球の投与のための注入ポンプが使用される。
【0012】
治療効果を有する各薬物が薬剤として使用され得る。望ましくは、心拍出量に効果を有する薬剤、及び、望ましくは、血圧に効果を有する薬剤が注入される。
【0013】
少なくとも2つの薬剤が注入される。望ましくは、薬剤は、2つ以上の薬剤の混合物である。より望ましくは、薬剤は単独の薬剤である。望ましくは、2以上の薬剤が注入される。
【0014】
薬剤の注入のために、患者に薬剤を投与する各方法が使用され得る。望ましくは、薬剤は、筋肉注射で、経皮的に、皮下注射で、又は、気道への噴霧により投与され、最も望ましくは、薬剤は経皮的に注入される。経口で、又は呼吸器系によって薬剤を投与することもまた可能である。
【0015】
パラメータを測定することが可能な各測定装置がセンサとして使用され得る。望ましくは、パルス酸素濃度測定探査、心電図電極、酸素飽和度センサ、動脈カテーテルに接続される圧力センサ、及び/又は血液テストが、使用される。より望ましくは、動脈圧モニタ、トノメータ、留置ファイバシステム、連続ヘマトクリットモニタ、連続ヘモグロビンモニタ、心電図モニタ、及びパルス酸素濃度測定モニタが使用される。
【0016】
使用されるパラメータは、望ましくは、収縮期動脈圧、平均動脈圧、拡張期動脈圧、中心静脈圧、パルス酸素濃度プレチスモグラフ波形変動POPV、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、心拍、脈圧変動、収縮期血圧変動、前駆出期変動、及び中心静脈酸素飽和度、又は、中心静脈酸素含有量、のような心臓循環系の状態を示すパラメータである。
【0017】
望ましくは、1回の心臓の循環の間の平均動脈圧が、平均動脈圧として使用される。望ましくは、赤血球中の金属タンパク質を移送する酸素を含む金属の濃度がヘモグロビンとして測定される。望ましくは、赤血球が占める血液量の比率がヘマトクリットについて測定される。心臓周期は、望ましくは、心房収縮期、心房収縮、心房拡張期の3つの主要な状態を含む。心臓周期の周波数は、望ましくは、心拍数として使用される。脈圧は、望ましくは、心臓の収縮の間の動脈圧の変化である。脈圧変動は、望ましくは、1回の呼吸サイクルの間の血圧の変化である。中心静脈酸素飽和度は、望ましくは、中心静脈に運ばれる酸素の量の相対的測定である。
【0018】
アクチュエータを制御することが可能な各装置がコントローラとして配置される。望ましくは、チップ又は拡張カード、より望ましくは、計算装置、最も望ましくは、マイクロコントローラ又はプログラマブル論理コントローラが使用される。
【0019】
少なくとも2つのパラメータが測定される。望ましくは、パラメータは、パラメータの数に従って、いくつかのセンサにより測定される。例えば、2つのパラメータが測定された場合、それらは、望ましくは、2以上のセンサによって測定される。より望ましくは、2以上のパラメータは、1つのセンサによって測定される。望ましくは、測定されるパラメータの数は、注入される薬剤の数よりも多い。
【0020】
コントローラは、薬剤の依存性を考慮して設けられる。それ故、異なる薬剤の間の複雑な作用関係が、患者への薬剤の注入において考慮される。望ましくは、コントローラは、第1の薬剤の注入を増加させ、特定の期間を越えて同じ作用を有する第2の薬剤を減少させることを決定するために設けられる。より望ましくは、コントローラは、第1の薬剤の注入の後で、特定の期間が経過するまで、第2の注入を止めることを決定するために設けられる。望ましくは、コントローラは、2以上の薬剤を交互に注入することを決定するために設けられる。望ましくは、コントローラは、何回かの交互にわたる期間において、2以上の薬剤を、交互に注入することを決定するために設けられる。望ましくは、コントローラは、薬剤を注入する前に、残りの期間を決定するために設けられる。望ましくは、コントローラは、第1の薬剤の増加の投与量を注入するため、及び、第2の薬剤の減少の投与量を注入するために設けられ、そして、特定の投与量の第1の薬剤の後で、又は、特定のタイムリミットに達した後で、第2の薬剤の投与量を増加すること、及び第1の薬剤の特定の投与量を減少させることを決定する。望ましくは、コントローラは、第1の薬剤によって誘発されたパラメータ変化を止めるために第2の薬剤を注入することを決定するために設けられる。
【0021】
他の薬剤がその薬剤の治療効果に影響を及ぼすならば、ある薬剤は、もう1つの薬剤に依存する。望ましくは2つの薬剤は、もしそれらが特定のパラメータを互いに増加させ、又は減少させることを増幅しているのであれば、依存していると名付けられる。より望ましくは、特定のパラメータにおいて第1の薬剤が第2の薬剤の効果を減少させる場合に、2つの薬剤は依存していると名付けられる。薬剤は、特定のパラメータの値又は注入される薬剤の投与量についてのみ依存性が存在する場合でも、依存すると名付けられる。
【0022】
流体、望ましくは、晶質の又はコロイド溶液、血管作用薬、及び強心剤は、血圧(SAP及びMAP)を増加させ、HRを減少させる。流体及び血管作用薬は、POPV、SPV、PPV及びPEPVを増加させ得る。変力薬は、POPV、SPV、PEPV、HR及びScVO2を増加させ得る。それ故、変力剤、流体及び血管作用剤は、互いに依存する。ドーパミン、ドブタミン及びエピネフリンは、同時に血管に作用し、変力的である。ドーパミンのような、ある陽性的に変力的に作用する薬剤は、血管拡張を誘発し得る。これらの薬剤は、同時に投与され得る。赤血球は、ヘモグロビン及びScVO2を増加させ、POPV、SPV、PPV及びPEPVを減少させる。
【0023】
もう1つの望ましい実施形態において、パラメータは、以下のグループから選択される:収縮期動脈圧(SAP)、平均動脈圧(MAP)、パルス酸素濃度プレチスモグラフ波形変動(POPV)、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(ht)、心拍数(HR)、脈圧変動(PPV)、収縮期圧変動(SPV)、前駆出期変動(PEPV)及び中心静脈酸素飽和度(ScVO2)。
【0024】
もう1つの望ましい実施形態において、薬剤は、以下のグループから選択される:流体、赤血球、血管作用剤、及び陽性的に変力的な作用剤。
【0025】
望ましくは、赤血球、乳酸リンガル液のような晶質溶液、生理食塩水、又はゼラチンのようなコロイド溶液、ハイドロエチルスターチ、アルブミン、又は新鮮凍結血漿が、流体として使用される。血管系において血管収縮又は血管拡張作用を引き起こすことができる、ホルモン、薬剤又は化学薬品血管作用薬のそれぞれが、血管作用剤として使用され得る。望ましくは、ニトロプルシト、フェニレフリン、エフェドリン、又はエピネフリン、より望ましくは、ドーパミン又はノルエピネフリンが使用される。
【0026】
心筋収縮の力又はエネルギを増加する各薬物が変力剤として使用され得る。望ましくは、カテコールアミン、またはホスホジセステラーゼ、最も望ましくは、カルシウム、又はカルシウム増感剤が変力剤として使用される。望ましくは、ホスホジエステラーゼ抑制剤、またはレボシメンダン(levosimendan)、より望ましくは、ドブタミン、エピネルフィン、又はドーパミンが使用される。
【0027】
もう1つの望ましい実施形態において、コントローラは、薬剤の最大投与量についての値を含む最大メモリを含むマキシマム装置、注入される薬剤の投与量を決定するための投与量決定装置、万が一、注入される薬剤が最大投与量に達した場合に、薬剤の注入を止める最大ストッパ、を含む。それ故、患者への多すぎる薬物の注入を防止することが可能である。
【0028】
薬剤の最大投与量又は薬剤の量が既に注入されたかどうかを決定し、この薬剤の注入を止めることができる各装置がマキシマム装置として使用され得る。望ましくは、マイクロコントローラのような計算装置が使用される。
【0029】
薬剤の最大量のために値を与えることができる全ての装置が最大メモリとして使用され得る。望ましくは、ROM、RAM又はフラッシュメモリのようなコンピュータメモリが使用される。
【0030】
薬物の最大投与量は、患者に注入されることが可能な所定の最大の投与量である。最大投与量は、望ましくは、年齢、血圧、動脈圧及び/又は心拍数、より望ましくは、患者に既に投与された薬物において、重量及び/又は患者の性別に依存する。
【0031】
投与量決定装置は、患者に注入される薬物の投与量を決定することができる装置である。望ましくは、投与量決定装置は、患者に注入される薬剤のそれぞれの投与量を測定するために配置される測定ユニットである。より望ましくは、投与量決定装置は、患者に投与されることが決められた薬剤の投与量を計算するマイクロコントローラのような計算装置である。
【0032】
最大ストッパは、薬剤の注入を止めるために配置される装置である。望ましくは、最大ストッパは、患者に注入されなければならない薬剤の投与量の決定を止めるコンピュータ装置である。
【0033】
もう1つの望ましい実施形態において、コントローラは、薬剤及び対応する期待されるパラメータ変化のリストを保存ための効果メモリ及び薬剤の注入を止めるストッパを含む効果制御装置であって、薬剤が注入され、そして少なくとも1つの対応する期待されたパラメータ変化が生じない場合に、ストッパを作動させるようにプログラムされた効果制御装置をさらに含む。それ故、患者は、効果を示さず、又は個々の患者にかなり高い確率で悪影響を与えるという方法で処置がとられることが防止され得る。
【0034】
望ましくは、それぞれのパラメータ及びその変化を制御するためのさらなる薬剤がない場合に、アラームが与えられる。
【0035】
期待された効果は、望ましくは、パラメータの変化である。効果の結果は、望ましくは、測定された変化である。望ましくは、期待された効果は、薬物を注入してからの、時間間隔内で増大する。より望ましくは、効果は、薬物が注入されてからの、特定のラグタイムの後に現れるように始まる。パラメータをパラメータの変化と比較し、薬剤の注入が停止されなければならないかどうかを決定することが可能な各装置が、効果制御装置として使用され得る。望ましくは、計算装置が使用される。
【0036】
例えば、測定されるパラメータの履歴といった効果を保存することが可能な全ての装置が効果メモリとして使用され得る。望ましくは、RAM、ROM、フラッシュメモリのようなコンピュータメモリが使用される。磁気ディスク又は磁気テープのような磁気記憶装置もまた使用可能である。
【0037】
対応する期待されたパラメータの変化は、経験に従って特定の患者に起こるパラメータ変化である。望ましくは、対応する期待されたパラメータの変化は、薬剤又は治療の治療効果を示すパラメータ変化である。
【0038】
薬剤の注入を止めることが可能な各装置がストッパとして使用され得る。望ましくは、計算装置、特に、患者への薬物の注入の決定を停止するマイクロコントローラが使用される。もう1つの望ましい実施形態は、アクチュエータが薬物を提供することを停止する装置である。望ましくは、この装置は、コンピュータプログラム又はプログラマブル論理回路、特に、EEPROMに保存されるコンピュータプログラムである。アクチュエータによって既に与えられた患者に薬剤が注入されることを防止する、アクチュエータと患者の間のバルブを備えることもまた可能である。
【0039】
もう1つの望ましい実施形態において、コントローラは、閾値、特にハイパーエリア、望ましくは、2つのパラメータに関するラインと、実際に測定されたパラメータとの間の距離を決定する距離分析機、及びその距離を薬剤の投与量に変換する変換ユニットを含み、このコントローラは、この薬剤の投与量に従ってアクチュエータを作動するよいうにプログラムされる。
【0040】
望ましくは、計算装置、特にマイクロコントローラ又はプログラマブル論理コントローラが距離分析機として採用される。
【0041】
閾、特に閾値は、望ましくは、パラメータについての所定の値、又はパラメータの空間内のハイパーエリアである。2つのパラメータのために、ハイパーエリアは、望ましくはラインである。望ましくは、閾は、経験的なデータに基づく。望ましくは、閾は、異なる治療戦略の範囲を分ける。望ましくは、閾は、薬物を投与するというような処置が始められ又は止められるべきであるパラメータポイントによって定義される。望ましくは、閾値は、測定されたデータが生じるまで、薬剤の投与から経過した時間を示すタイムフレームを伴うパラメータの値を結合するデータに基づく。もう1つの望ましい実施形態において、閾は、患者に悪影響を与えるパラメータポイントの範囲を分ける。望ましくは、閾は、望まれるべき範囲を分ける。望ましくは、この範囲は、作用のない領域である。閾は、望ましくは、特定のパラメータの値に従って変化する。多次元方程式によって閾を表示することが可能である。もし、2つのパラメータに関する閾値が視覚化された場合、これは、例えば、各軸においてパラメータの値を低い順に示し、閾値がラインとして図内に示される、2つの軸が直角な図によって為され得る。閾ラインは、望ましくは、曲線状であり、より望ましくは、薬剤が注入されるべきかどうかを示すためのいくつかの閾ラインが存在する。望ましくは、個々の閾ハイパーエリアが、各治療処置に対して与えられる。望ましくは、薬剤を投与するための、全てのアクチュエータを停止し、及び/又はアラームを与えるための閾ハイパーエリアが与えられる。
【0042】
パラメータポジションは、1以上のパラメータの値によって定められる。上記の図において、パラメータポジションは、測定された両方のパラメータの値を示す特定のポイントである。
【0043】
パラメータポジションと閾との間の距離は、望ましくは、最も短い距離、特に、それぞれのパラメータ値の間の二乗平均平方根である。図に示されることで、その距離は、望ましくは、パラメータポジションと最も近い閾ポイントとの間のラインである。もし、閾がライン、エリア、体積等である場合には、その距離は、パラメータポジションと可能な閾ポイントとの間の最も短い距離である。もし、パラメータが、異なる測定ユニットを有する場合、それらは、距離を決定するために任意に加重される。
【0044】
距離の決定は、望ましくは、パラメータ値の距離を計算することによってなされる。それは、グラフでデータを視覚化すること、及び距離を測ることによってもまたなされ得る。より望ましくは、その距離は、閾ハイパーエリアの方程式から計算される。
【0045】
パラメータポジションと閾の間の距離を、薬剤の投与量に変換することができる全ての装置が変換ユニットとして使用され得る。望ましくは、計算装置、特に、マイクロコントローラ又はプログラマブル論理コントローラが変換ユニットとして採用される。
【0046】
薬剤の投与量は、望ましくは、患者に注入されるように決定される薬物の量である。もう1つの望ましい実施形態において、コントローラは、閉ループコントローラである。それ故、既に注入された薬剤の効果は、薬剤が注入されるべきかどうかの決定において考慮される。
【0047】
閉ループコントローラは、望ましくは、薬剤が注入された間又は/及び注入された後、パラメータの値を制御し、その結果を、薬剤が注入されるべきかどうかを決定するために使用する。パラメータの値の変化に従って、閉ループコントローラは、薬剤の注入の停止し、薬剤の投与量を増加すること、及び/又はもう1つの薬剤を注入すること、を決定するために設けられる。コントローラは、望ましくは、パラメータの値に従って1以上の薬剤の注入を停止することを決定するために設けられる。望ましくは、コントローラは、特定の時間間隔の後に、再び、薬剤が注入されるべきかどうかを決定する。望ましくは、コントローラは、注入される特定の薬剤の総量が注入されるべきかどうかを決定において考慮する。望ましくは、コントローラは、分解のための注入される薬剤の時間を考慮する。より望ましくは、コントローラは、総量に達した後に、薬剤の注入の決定を止める。望ましくは、コントローラは、治療の時間の総量を考慮する。より望ましくは、コントローラは、治療の特定の期間の後に、薬剤の決定を止める。
【0048】
望ましくは、装置は、患者の体質を示す信号伝送要素を含む。それ故、患者の体質は、医師又は看護師に簡便に伝えられ得る。より望ましくは、装置は、患者のアラーム状態を定める要素を含む。望ましくは、これらの要素は、モニタ上で、色づけされた領域である。より望ましくは、これらの要素は、光学及び/又は音響信号である。
【0049】
本発明の目的は、少なくとも2つのパラメータを測定すること、少なくとも2つの薬剤を2つのパラメータに従って注入されるようにすること、を含み、薬剤の依存性が考慮される、少なくとも1つの薬剤を注入するための方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明による閉ループコントローラシステムの概略図を示す。
【図2】図2は、本発明による閉ループコントローラのオペレーション図を示す 。
【図3】図3は、本発明による閉ループコントローラのもう1つのオペレーション図を示す。
【図4】図4は、本発明によるもう1つの閉ループコントローラシステムの概略図を示す。
【図5】図5は、本発明による閉ループコントローラのもう1つのオペレーション図を示す。
【図6】図6は、本発明による閉ループコントローラのもう1つのオペレーション図を示す。
【図7】図7は、本発明によるコントローラ/制御のための入力パラメータであるパラメータ、及びコントローラがアクチュエータを作動させる場合に、アクチュエータによって注入される薬剤を示す。
【図8】図8は、薬剤が注入されるべきかどうかを決定するためのコントローラによって使用される図を示す。
【図9】薬剤が注入されるべきかどうかを決定するためのコントローラによって使用されるもう1つの図を示す。
【図10】図10は、薬剤が注入されるべきかどうかを決定するためのコントローラによって使用されるもう1つの図を示す。
【図11】図11は、どの程度の量の薬剤が注入されるべきかを決定するためのコントローラによって使用される図を示す。
【図12】図12は、2つの異なる薬剤の注入のための装置の実施形態における概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の望ましい実施形態は、ここで添付の図面に基づいて説明されるであろう。
【0052】
図1は、閉ループコントローラシステム/動脈圧カフ130及び動脈経路135に接続される動脈圧モニタ50から入力パラメータを取得するコントローラ60、心電図電極133にリンクされる心電図モニタ58、及び、パルス酸素濃度プローブ131にリンクされるパルス酸素濃度モニタ132、を含む装置1を示す。コントローラ1は、注入ポンプ又は、静脈経路141にリンクされる血管作用及び/又は変力剤静脈注入のための電気式シリンジ142、及びもう1つの静脈経路にリンクされ、流体バッグ139に関係する流体投与のための注入ポンプ140に接続される。機械式換気装置134が、患者の気道に接続される。
【0053】
この装置1は、望ましくは、外科手術を受ける多くの患者のために使用され、最も共通の臨床目標は、所定の閾値SAPtv1(又はMAPtv1)よりも上で、所定閾値SAPtv2(又はMAPtv2)よりも下の、収縮期動脈圧(SAP)(又は平均動脈圧(MAP))を維持することである。この装置とともに、多重入力が評価され、多重出力のための閉ループ制御が生成される。
【0054】
装置の機能は、図2のオペレーション図に示され、そして、以下に記述される。
【0055】
図2は、本発明における自動閉ループコントローラ60のオペレーション図を示す。自動コントローラ60は、以下のように作動する。
【0056】
最初にSAP(又はMAP)が、動脈圧モニタによって測定される。
【0057】
もし、SAP(又はMAP)が、SAPtv1及びSAPtv2の間にある場合、何も変化しない。
【0058】
SAP(又はMAP)が所定の閾値SAPtv2(又はMAPtv2)の上にあるとき、血管作用又は/及び変力剤投与が減少させられ(又は止められ)又は/及び流体注入率は減少する。
【0059】
SAP(MAP)が所定の閾値の下にあるとき、機械的人工換気によって誘発されるパルス酸素濃度プレチモグラフィック波形変動(POPV)(又は前駆出期変動PEPV、又は、動脈パルス圧変動PPV、又は動脈収縮期圧変動SPV)が、SAP(又はMAP)を正常化するのに最も適切な治療を選択するために使用される。
【0060】
POPVは、酸素濃度プレチスモグラフ波形の解析から得られ、PEPVは、パルス酸素濃度モニタ54によって与えられるパルス酸素濃度プレチスモグラフ波形(又は動脈圧モニタ50によって与えられる動脈圧曲線)及び心電図モニタ58によって与えられる心電図連続記録の同時解析から得られ、そして、PPV又はSPVは、動脈圧曲線の解析によって得られる。これらの全ての信号(POPV又はPEPV又はSPV)は、自動コントローラ60の入力信号である。自動コントローラ60は、外科手術を受けている患者において、流体及び、血管作用又は/及び変力剤の投与をトリガ−し、駆動することができる。
【0061】
オプションとして、POPV(PEPV又はPPV又はSPV)の計算は、呼吸信号(例えば気道圧又はフロー曲線、又はカプノグラフィック信号、又は胸の電気バイオインピーダンス信号)の付加的及び同時の記録及び解析によって改善される。
【0062】
全ての場合において、SAP(又はMAP)は、所定のタイムフレーム(DT)の経過後、再評価され、そして、閉ループコントローラシステムによって同じ自動処理が続く。
【0063】
もし、POPV(又はPEPV又はPPV又はSPV)が、所定の閾値(POPVtv)の上にある場合、流体投与は、開始され、又は、図1に示される、自動コントローラ60(出力信号)に接続されて制御される注入ポンプ140によって自動的に増加する。
【0064】
オプションとして、ヘモグロビンHbの血液量(又は血液ヘマトクリットHct)はまた、連続的に(又は半連続的に)モニタされ、そして、注入される流体:赤血球又は他のプロダクト(例えば晶質又はコロイド溶液)の種類を決定する自動コントローラ60によって付加的な入力信号として使用される。Hb(又はHct)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の下にあるとき、赤血球が注入される。Hb(又はHct)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の上にあるとき、他のタイプの流体(例えば晶質又はコロイド溶液)が注入される。
【0065】
もし、POPV(又はPEPV又はPPV又はSPV)が、所定の閾値POPVtvの下にある場合、血管作用又は/及び変力剤が、図1に示すように、自動コントローラ(出力信号)に接続され制御される電気シリンジ142によって、自動的に投与される。安全の理由のため、周期変動特性を伴う血管作用又は/及び変力剤(例えばドーパミン)が投与されるとすぐに、心拍数HRもまた、連続的にモニタされる(入力信号)。もし、HRが、所定の閾値HRtvの上にある場合、又は、もし、患者が血管作用剤の投与前に不整脈である場合、血管作用又は/及び変力剤の投与は、自動コントローラシステムによって許可されない。もし、HRがHRtvを越え、又は患者が血管作用又は/及び変力剤の投与中に不整脈になった場合、血管作用又は/及び変力剤の投与は、止められるか、又は、遅くなる。
【0066】
図3は、本発明による閉ループコントローラのもう1つのオペレーション図を示す。
【0067】
最初にPPVが測定される。
【0068】
PPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)が、所定の閾値PPVtv(又はPOPVtv又はPEPVtv)の上にあるとき、流体は、自動コントローラ(出力信号)に接続されて制御される注入ポンプ140によって自動的に投与される。
【0069】
オプションとして、血液中のヘモグロビンHb(又は血液中のヘマトクリットHct)はまた、連続的に(又は半連続的に)モニタされ、そして、注入される流体:赤血球又は他の注入物(例えば晶質又はコロイド溶液)の種類を決定するための自動コントローラによって付加的な入力信号として使用される。Hb(又はHt)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の下にあるとき、赤血球が注入される。Hb(又はHct)が、所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の上にあるとき、他の種類の流体(例えば晶質又はコロイド溶液)が注入される。
【0070】
もし、PPV(又はSPV又はPEPV又はPPV)が所定の閾値PPVtvの下にある場合、SAPが測定され、そして、最も適切な処置がSAP(またはMAP)に従う。もし、SAP(又はMAP)が所定の閾値SAPtv1(又はMAPtv1)の下にある場合、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤が、自動コントローラ(出力信号)に接続され制御される電気シリンジ142によって自動的に投与される。安全の理由のために、周期変動特性を伴う血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤(例えばドーパミン)が投与されるとすぐに、心拍数HRもまた、連続的にモニタされる(入力信号)。もし、HRが所定の閾値HRtvの上にある場合、又は、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤の投与前に患者が不整脈である場合、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラシステムによって許可されない。もし、HRがHRtvを越えた場合、又は、患者が、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤の投与中に不整脈になった場合、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラシステムによって停止され、又は遅くなる。
【0071】
もし、SAP(又はMAP)が所定の閾値SAPtv2(又はMAPtv2)の上にある場合、血管作用又は/及び陽性的に変力な作用剤の投与は、減少し(又は停止し)、又は/及び流体注入率は減少する。
【0072】
もし、SAP(MAP)が、SAPtv1とSAPtv2の間にある場合、何も変化しない。全ての場合において、PPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)は、所定のタイムフレーム(DT)の後に、再評価され、閉ループコントローラシステムによって同じ自動処理が続く。
【0073】
外科手術(主にハイリスクの外科手術)を受ける患者において、臨床目標は、血圧を所定の範囲(例えば上記のようにSAPtv1とSAPtv2の間)内に維持するだけでなく、流体負荷手段によって、1回排出量を最大化する(又は1回排出量が安定期の値に達するまで増加させる)ことであり得る。
【0074】
心拍出量及び1回排出量が測定されず、又はモニタされないとき、臨床目的「1回排出量を最大化すること」を、臨床目的「PPVを最小化すること」(又は入力信号としてSPV又はPOPV又はPEPV(図1))に置き換えることが可能である。PPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)が低いとき、機械式の吸気誘導変化は、心前負荷において、1回排出量における重大な変動を誘導せず、それは患者が心前負荷における変化に敏感にならないということである。
【0075】
一方、もし、PPV(又はSPV又はPOV又はPEPV)が高いとき、心前負荷において、機械式の吸気誘導変化が1回排出量における重大な変動を誘導し、患者が心前負荷における変化に敏感になり、そしてそれ故、さらなる流体の投与に応じて1回排出量をより多く増加することになる。それ故、PPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)は、流体投与が、1回排出量をさらに増加することができるか否かを知るためのツールとして使用され得る。もしそうでなければ、患者は、自分が流体を受けることによって到達可能な最大排出量に到達している。
それ故、「PPVを最大化すること」(「1回排出量を最大化すること」のための代理として)が、外科手術処理の間に、臨床目的として選ばれたとき、図3に示されるアルゴリズムが、閉ループコントローラシステムによって適用され得る。
【0076】
図4は、閉ループコントローラシステム60を伴う装置1のもう1つの実施形態を示す。この装置1は、図1に示される装置1と比較して、4つの付加的な特徴を含む。ここで、閉ループコントローラシステム60は、中心静脈経路136にリンクされる中心静脈酸素飽和度モニタ137からの入力を取得する。閉ループコントローラシステム60は、血管作用剤静脈注入10のための電気シリンジ、及び陽性的に変力な作用剤静脈注入138に接続される。
【0077】
前のアルゴリズムに記載されるように、流体投与(1回排出量が安定期の値に達したこと、又は流体注入によって「最大化」したことを意味する)の使用によって、PPVが最小化されたときに、この実施形態が適用される。この場合において、麻酔専門医は、陽性的に変力な作用剤の使用によって、1回排出量が増加することに興味をもつ。この場合において、臨床目的は、酸素運搬又は中心静脈酸素飽和度(ScvO2)又は中心静脈酸素含有量(CvO2)の所定の閾値に到達することである。それ故、ScVO2又はCvO2は、連続的又は半連続的にモニタされる。ScVO2又はCvO2は、閉ループ自動コントローラシステムのための付加的な信号入力として使用される。
【0078】
このシステムの機能は、図5に示される図によって記載される。
【0079】
図5は、本発明による閉ループコントローラのオペレーション図を示す。このオペレーション図は、図3におけるループの制御と同様に、装置1のループの制御を示す。図3と比較して、図5は、図3において示されるアルゴリズムにおいて実行される付加的なループを示す。このアルゴリズムは、図4に示すシステムとともに使用される。
【0080】
目標とされるPPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)及びSAP(又はMAP)に到達するとすぐに、図3に示される前のアルゴリズムにより、ScvO2又はCvO2の測定が、図5におけるアルゴリズムに加えられた閉ループコントローラシステムによって解析される。
【0081】
ScvO2又はCvO2が、所定の閾値(ScvO2tv又はCvO2tv)の下にある場合、陽性的に変力な作用剤の注入が、始まり、又は増加する(出力信号)。安全の理由のために、周期変動特性を伴う陽性的に変力な作用剤(例えばドーパミン又はエピネフリン)が投与され、心拍数HRもまた連続的にモニタされる(入力信号)。もし、HRが、所定の閾値HRtvの上にある場合、又は、患者が変力な作用剤の投与の前に不整脈である場合、陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラシステムによって許可されない(出力信号)。もし、HRがHRtvを越え、又は、患者が陽性的に変力な作用剤の投与中に不整脈になった場合、陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラによって停止し又は遅くなる(出力信号)。
【0082】
もし、ScvO2又はCvO2が、所定の閾値ScvO2tv又はCvO2tvの上にある場合、何も変化しない。
【0083】
全ての場合において、PPV(又はSPV又はPOPV又はPEPV)が、所定のタイムフレーム(DT)の後に、再評価され、そして、閉ループコントローラシステムによって同じ処理が続く。
【0084】
図6は、本発明による閉ループコントローラのもう1つのオペレーション図を示す。
【0085】
最初にSAP(又はMAP)が測定される。
【0086】
SAP(又はMAP)が、所定の閾値SAPtv1(又はMAPtv1)の下にあるとき、全身血管抵抗SVRが、SAP(又はMAP)を正常化するのに最も適切な治療を選択するために使用される。SVRは、以下のように、MAPとCOの同時測定から得られる:SVR=f(MAP、CO)。オプションとして、SVRの計算は、以下のように、中心静脈圧CVPの付加的で同時の記録及び解析によって改善される:SVR=f(MAP、CVP、CO)。
【0087】
この場合において、自動コントローラは、以下のように動作する。もし、SVRが、所定の閾値(SVRtv)の上にある場合、流体注入は、自動コントローラに接続されて制御される注入ポンプ140によって自動的に増加する。オプションとして、血液中のヘモグロビンHbの量(又は血液中のヘマトクリットHtの量)もまた、連続的(又は半連続的)にモニタされ、注入される流体:赤血球または他の種類の流体(たとえば晶質又はコロイド溶液)の種類を決定するための自動コントローラによって、入力信号として使用される。Hb(又はHct)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の下にあるとき、赤血球が注入される。Hb(又はHct)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の上にあるとき、他のタイプの流体(例えば晶質又はコロイド溶液)が注入される。
【0088】
SVRが所定の閾値SVRtvの下にある場合、血管作用剤が、自動コントローラ(出力信号)に接続され制御される電気シリンジ142によって自動的に投与される。安全の理由のため、周期変動特性を伴う血管作用剤(例えばドーパミン)が投与されるとすぐに、心拍数HRもまた、連続的にモニタされる(入力信号)。もし、HRが所定の閾値HRtvの上にある場合、又は、患者が、血管作用剤の投与前に、不整脈である場合、血管作用剤の投与は、自動コントローラシステムによって許可されない。もし、HRがHRtvを越え、又は、患者が血管作用剤の投与中に不整脈になった場合には、血管作用剤の投与は停止され、または遅くなる。
【0089】
SAP(又はMAP)が、所定の閾値SAPtv2(又はMAPtv2)の上にある場合、血管作用剤の投与は、減少(又は停止)し、又は/及び流体注入率が減少する。
【0090】
SAP(又はMAP)が、SAPtv1とSAPtv2の間にある場合、何も変化しない。SAP(又はMAP)が、所定のタイムフレーム(DT)の後に再評価され、閉ループコントローラシステムによって、同じ処理が続く。
【0091】
外科的な処置(例えば、パルス輪郭分析又は食道ドップラー又は二酸化炭素CO2分圧再呼吸法又は電気バイオインピーダンス法)の間、1回排出量SV又は心拍出量COが測定されモニタされるこのアルゴリズムは、流体及び血管作用剤の投与を開始し、駆動するための自動コントローラシステムによって使用される。
【0092】
このアルゴリズムは、所定の閾値SAPtv1(又はMAPtv1)の上で、かつ、所定の閾値SAPtv2(又はMAPtv2)の下にある、収縮期動脈圧(SAP)(又は平均動脈圧MAP)を維持することが臨床目的である場合に使用される。
【0093】
流体及び血管作用剤の投与を開始し、駆動する入力信号としてのSVRの使用の代わりは、図2の記載において記述されるように、POPV又はPEPV又はPPV又はSPVを使用することである。もし、外科的処理の間に、心拍ごとに、SVが測定され、モニタされた場合、1回排出量の変動SVVはまた、図2の記載で記述されるアルゴリズムによる、POPV又はPEPV又はPPV又はSPVの代わりに使用され得る。
【0094】
代わりに、連続的に測定されるSV(又はCO)は、コントローラの入力信号として使用され、そして、コントローラは、例えば、SVが、外科的な処置の間にSVが大きく落ちる(例えば少なくとも10%で)のと同様に、流体投与中(2分の期間を越える、250mlのコロイド溶液の注入中)に、大きく増加しない(例えば10%以上で)というように、SVが安定期に到達するまで、自動的に流体を搬送することができる。オプションとして、COモニタ(COを正確に測定すること)の代わりに、COの変化を追跡できる(例えばCOにおける減少又は増加を検出できる)モニタが使用され得る。もう1つのオプションとして、血液中のヘモグロビンHb(又は血液中のヘマトクリットHct)の量は、また、連続的に(又は半連続的に)モニタされ、注入される流体:赤血球又は他のプロダクト(例えば晶質又はコロイド溶液)の種類を決定するための自動コントローラによって付加的な入力信号として使用される。Hb(又はHt)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の下にあるとき、赤血球が注入される。Hb(又はHt)が所定の閾値Hbtv(又はHcttv)の上にあるとき、他の種類の流体(例えば晶質又はコロイド溶液)が注入される。
【0095】
SVの入力信号としての用法の代替は、図3の記載に記述されるように、POPV、PEPV、PPV又はSPVを使用することである。もし、SVが外科的な処置の間に、心拍ごとに測定され、モニタされた場合、1回排出量変動SVVはまた、図3の記載に記述されるアルゴリズムによる、POPV、PEPV、PPV又はSPVの代わりに、使用され得る。
【0096】
このアルゴリズムは、特にハイリスクな外科手術を受ける患者において、「1回排出量を最大化すること」のために使用され得る。
【0097】
動脈酸素濃度飽和度SaO2及びHbは、測定及びモニタされ、DO2が計算され得る:DO2=f(CO、SaO2、Hb)。もし、患者が中心静脈経路につながれている場合、ScvO2が計算され得る。この状況において、DO2又は、ScvO2又はCvO2は、以下の閉ループコントローラシステムのための付加的な信号入力として使用され得る。
【0098】
SVが流体とともに安定期に達するとすぐに、DO2(またはScvO2又はCvO2)の値は、閉ループコントローラシステムによって分析される。
【0099】
もし、DO2が、所定の閾値(DO2tv)の下にある場合、変力剤注入が開示され、又は増加される(出力信号)。安全の理由のため、周期変動特性を伴う変力剤(例えばドブタミン又はエピネフリン)が投与されるとすぐに、心拍数HRもまた、連続的にモニタされる(入力信号)。もし、HRが、所定の閾値HRtvの上にある場合、又は、患者が、変力剤の投与前に不整脈である場合、陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラシステムによって許可されない(出力信号)。もし、HRがHRtvを越えた場合、又は、患者が、陽性的に変力な作用剤の投与中に不整脈になった場合、陽性的に変力な作用剤の投与は、自動コントローラによって中止され、又は遅くなる(出力信号)。
【0100】
もし、DO2(又はScvO2又はCvO2)が、所定の閾値DO2tvの上にある場合、何も変化しない。
【0101】
全ての場合において、DO2(又はScvO2又はCvO2)が、閉ループコントローラシステムによって、所定のタイムフレーム(DT)の後に再評価され、同じ自動処理が続く。
【0102】
このアルゴリズムは、流体投与の使用によってSVが最大化されたとき(又は安定期の値に達したとき)に使用され、そして、麻酔専門医は、陽性的に変力な作用剤を使用することによってSVを増加させることに関心を持つ。この場合において、臨床目的は、酸素運搬(DO2)又は中心静脈酸素濃度飽和度(ScVO2)の所定の閾値に達することである。
【0103】
図7は、本発明によるコントローラ/制御のための入力パラメータであるパラメータ、及び、コントローラがアクチュエータを作動させた場合に、アクチュエータによって注入される薬剤、を示す。パラメータは、ScVO2、SAP、PPV、HR、及びヘモグロビンであり、薬剤は、流体、赤血球、血管作用剤、及び陽性的に変力な作用剤である。コントローラは、測定されたパラメータに基づいてどの薬剤が施されるべきかを決定するイベント及びルールを使用する。
【0104】
図8、9、及び10は、薬剤が注入されるべきかどうかを決定するコントローラによって使用される図である。ブール論理を伴う判断ツリーアルゴリズムの他に、特性要因図が使用され得る。それによっていくつかの動作が、測定され又は計算されたパラメータの多次元空間の全てのポイントで割り当てられる。これは、数学的に、n次元(n=パラメータの数)を伴うm方程式(m=動作の数)によって記述される。図8の処置は、図6と同様であり、図9は図5と同様である。
【0105】
図8は、2つの直角な軸を伴う図である。これらの軸は、PPVの値及びSAPの値を示し、ベクトル空間を測る。このベクトル空間において、4つの領域が示される。
【0106】
SAPの低い値、又は、SAPtv1の値の下にあるSAPの値を示す領域において、2つの領域は、PPVの値に従って示される。所定の閾値PPVtvの下にある値について、血管作用剤を増加するように指示する領域が測られる。PPVtvの上にある値について、流体を増加するように指示する領域が測られる。
【0107】
閾値SAPtv1とSAPtv2の間にあるSAPの値を示す領域は、いかなる動作をも行わないように指示する。
【0108】
SAPtv2の上にあるSAPの値を示す領域は、血管作用剤及び/又は流体を減少させるように指示する。これは、PPVの全ての値に適用する。
【0109】
図9は、図8と同様で、PPVtvの下にあるPPVの値のためのものである。PPVtvの上にあるPPVの値について、流体を増加するように指示する領域が示される。これは、SAPの全ての値に適用する。
【0110】
図10は、湾曲した閾ライン122、123、124を伴う図120を示す。この図120は、2つの薬剤の注入を示す領域121を示す。これらの領域121
は、オーバラップする2つの動作領域によって生じ、1以上の薬剤の注入を増加させ、又は減少させるように指示する。判断ツリーで促されることが不可能である処置は、例えば図10における曲線をなす特性要因図で実現される。
【0111】
マップは、動作のない領域とともに定義される。これは、2つの分かれた、投与量のための、オーパラップしていないマップによって実現される。これは、患者の生理的な機能を特定の生理的なポイントに強制することを必要とせずに、特定の範囲を対象とするという事実による。
【0112】
その表示又はもう1つの処置の反対の表示における、様々な処置(介入)の効果の影響が組み込まれる。例えば、血管作用剤の投与量は、PPV、PEPV、POPV、SPV、又はSVVにおける影響を有し得る。それ故、図10において、流体の投与量は、領域121を参照し、血管作用剤が投与された場合に、減少され得る。また、徐々に変化する動作及びオーパラップしている範囲において有利性が存在する。
【0113】
望ましくは、動作は、完全な投与量率の代わりに、薬剤の投与量の増加/減少のような異なるタイプである。それによって、患者の生理的な反応とともに、制御ループが確立される。
【0114】
図11は、注入されるべき薬剤がどの程度かを決定するコントローラによって使用される図を示す。図11において、境界線及びパラメータポジションが示される。パラメータポジションは、測定されたSAP及びPPVによって定められる。境界線と現在のポジションとの間の距離は、投与量を計算するために使用される。その距離は、測定された値と閾値との間の最も小さな違いの可能性である。もし、いくつかの値が測定され、閾値が与えられた場合、離散距離関数又はユークリッド距離関数のような距離の関数が数学的に使用される。もし、2以上のパラメータが使用された場合、n次元空間内のハイパーエリアは、境界線の代わりに使用され得る。さらに、投与量は、最小及び最大投与量の値に対して制限される。
【0115】
この方法はまた、もう1つの体積反応性パラメータ(SPV、PEPV、POPV、SVVのような)又は、もう1つの血圧関係のパラメータ(MAPのような)を使用するとによって適用され得る。
【0116】
記載されるコントローラは、統合コントローラと同様に作動する。ある場合には、この方法と同様に、比例コントローラタイプに適応するように、より適切なものにすることができる。これは、例えば、絶対的な投与量率を特性要因図内に割り当てることによって行われる。
【0117】
望ましくは、いくつかの進歩した制御処理が、記述されたコントローラに加えられる。適用される薬剤のために、許容可能な最大投与量がチェックされる。装置は、薬剤の所定の量を適用し、そして、モニタされるパラメータが期待される目標範囲に移動しない場合には、処理を停止する。これは、パラメータがしばしば間接的に悪影響を受けるという事実による。生理学的知識は、統計的/実験的な観察に基づく。個々の患者は、生理的な異常又は病気のために、異なる方法で、処置に対して反応し得る。
【0118】
図12は、2つの異なる薬剤の注入のための装置の実施形態における概略図を示す。装置1は、コントローラ60に接続される、血管作用剤20を伴う第1の電気シリンジ又は注入ポンプ10及び流体40を伴う第2の電気シリンジ又は注入ポンプ30を含む。コントローラ60は、フラッシュメモリ70、変換ユニット81に接続されるマイクロコントローラ80、クォーツ時計又はマイクロコントローラの内部装置85、フラッシュメモリ91、投与量決定装置92及び最大ストッパ93を含むマキシマム装置90、フラッシュメモリ101及びストッパ102を含む効果制御装置100、リストメモリ/フラッシュメモリ111、検出装置又はインラインフローセンサ112、決定装置又はマイクロコントローラ113及び114を伴うパラメータ装置110、を含む。コントローラ60は、動脈圧モニタ50、パルス酸素濃度モニタ54及び心電図モニタ58に接続される。
【0119】
装置1は、動脈圧モニタ50、パルス酸素濃度モニタ54及び/又は心電図モニタ58によって測定される第1及び第2のパラメータに従う血管作用剤20又は流体40を注入する。血管作用薬20又は流体40を注入するための判断は、薬剤20,40が注入されなければならない第1及び第2のパラメータの全ての組み合わせを示す、フラッシュメモリ70に保存される図120に基づく。図には、血管作用薬と同様に流体を注入することを計画する領域121がある。閾ライン122,123及び124は、閾を要求に適合させるために湾曲している。薬剤20,40を注入しないことを示す「作用なし」の領域もまた存在する。
【0120】
図11に基づいて、距離を値に変換する変換ユニット81に接続されるマイクロコントローラ又は距離分析器80は、注入される薬剤の投与量を計算する。
【0121】
クォーツ時計85は、装置が、上記の薬剤の注入を考慮するそれぞれの計算を達成するように導くタイムスライスを与える。ここで、クォーツ時計はまた、動脈圧モニタ50、パルス酸素濃度モニタ54及び/又は心電図モニタ58が、測定を実行するように導き、それ故、測定は、連続的に行われない。
【0122】
マキシマム装置90は、最大値を決定し、最大値に達した場合に、薬剤の注入を停止するために設けられる。フラッシュメモリ91は、薬剤のリスト及び個々の患者に許容される最大投与量を保存し、投与量決定装置92は、どの程度の量の薬剤が患者に誘導されるのかを決定し、最大ストッパ93は、薬剤を誘導するための第1の電気シリンジ10及び第2の電気シリンジ30を決定するためのコントローラ60を停止することによって患者に対する薬剤の注入を停止させる。
【0123】
効果制御装置100は、期待される効果が生じるかどうかを制御する。フラッシュメモリ101は、特定の患者について期待される効果のリストを含む。ストッパ102は、 薬剤を誘導するための第1の電気シリンジ10及び第2の電気シリンジ30を決定するためのコントローラ60を停止することによって患者に対する薬剤の注入を停止する。
【0124】
パラメータ装置110は、特定のパラメータ、例えば、心拍数が、測定されるべきかどうかを決定し、そして、パルス酸素濃度モニタ54をそのようにトリガーする。リストメモリ111は、薬剤が注入され及び/又はパラメータが測定された場合に、心拍数が測定されるべきかどうかの情報を伴う、薬剤及びパラメータの条件のリストを含む。検出装置112は、心拍数を測定するためのリストによって示される条件が生じたかどうかを検出する。決定装置113は、心拍数が測定されるべきかどうか、及びトリガ114がパルス酸素濃度モニタ54又は心拍数を測定するための心電図モニタ58をトリガ−するかどうかを決定する。
【符号の説明】
【0125】
1…装置、10…血管作用剤静脈注入のための電気シリンジ、20…血管作用剤、30…第2電気シリンジ、40…流体、50…動脈圧モニタ、54…パルス酸素濃度モニタ、58…心電図モニタ、60…コントローラ、70…ダイアグラムメモリ/フラッシュメモリ、80…距離分析器/マイクロコントローラ、81…変換ユニット、85…タイミング装置/クォーツ時計、90…マキシマム装置、91…マキシマメモリ/フラッシュメモリ、92…投与量決定装置、93…最大ストッパ、100…効果制御装置、101…効果メモリ/フラッシュメモリ、102…ストッパ、110…パラメータ装置、111…リストメモリ、112…検出装置、113…決定装置、114…トリガ、120…図、121…領域、122…閾ライン、123…閾ライン、124…閾ライン、125…距離、126…閾値、127…パラメータポジション、130…動脈圧カフ、131…パルス酸素濃度プローブ、132…パルス酸素濃度モニタ、133…心電図電極、134…機械式呼吸器、135…動脈経路、136…中心静脈経路、137…中心静脈酸素濃度飽和度モニタ、138…変力剤静脈注入のための電気シリンジ、139…流体バッグ、140…流体投与のための注入ポンプ、141…静脈経路、142…血管作用及び/又は変力剤静脈注入のための電気シリンジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの薬剤(20,40)が注入されるようにするための少なくとも2つのアクチュエータ(10,20)、
少なくとも2つのパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサ(50,54)、
アクチュエータ(10,20)を制御するためのコントローラ(60)、を含み、
コントローラ(60)が、2つのパラメータの値に従ってアクチュエータを作動させるようにプラグラムされる少なくとも1つの薬剤の注入のための装置(1)であって、
コントローラが薬剤の依存性を考慮して設けられる少なくとも1つの薬剤の注入のための装置。
【請求項2】
パラメータは、収縮期動脈圧(SAP)、平均動脈圧(MAP)、パルス酸素濃度プレチスモグラフ波形変動(POPV)、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(hct)、心拍数(HR)、脈圧変動(PPV)、収縮期圧変動(SPV)、前駆出期変動(PEPV)及び中心静脈酸素飽和度(ScVO2)のグループから選択される請求項1に記載の装置。
【請求項3】
薬剤は、流体、赤血球、血管作用剤、及び陽性的に変力的な作用剤、のグループから選択される請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
コントローラ(60)は、
薬剤(20,40)の最大投与量についての値を含む最大メモリ(91)、
注入される薬剤(20,40)の投与量を決定するための投与量決定装置(92)、及び
注入された薬剤が最大投与量に達した場合に、薬剤(20,40)の注入を停止するための最大ストッパ(93)、
を含むマキシマム装置(90)をさらに含む請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
コントローラ(60)は、
薬剤(20,40)のリスト及び対応する期待されるパラメータ変化を保存するための効果メモリ(101)、
及び、薬剤(20,40)の注入を停止するためのストッパ(102)、
を含む効果制御装置(100)をさらに含み、
効果制御装置(100)は、薬剤(20,40)が注入され、そして、少なくとも1つの対応する期待されるパラメータ変化が生じない場合に、ストッパ(102)を作動するようにプログラムされる請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
コントローラ(60)は、
閾値(126)と、実際に測定されるパラメータによって定められるパラメータポジション(127)との間の距離を決定する距離分析器(80)、
及び、距離を薬剤(20,40)の投与量に変換するための変換ユニット(81)、
を備え、かつ、コントローラ(60)が薬剤(20,40)のこの投与量によりアクチュエータ(10,30)を作動させるようにプログラムされる請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
コントローラ(60)が閉ループコントローラである請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも2つのパラメータを測定すること、
少なくとも2つの薬剤(20,40)を2つのパラメータの値に従って注入されるようにすること、を含む少なくとも1つの薬剤の注入のための方法であって、
薬剤の依存性が考慮される少なくとも1つ薬剤の注入のための方法。
【請求項1】
少なくとも2つの薬剤(20,40)が注入されるようにするための少なくとも2つのアクチュエータ(10,20)、
少なくとも2つのパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサ(50,54)、
アクチュエータ(10,20)を制御するためのコントローラ(60)、を含み、
コントローラ(60)が、2つのパラメータの値に従ってアクチュエータを作動させるようにプラグラムされる少なくとも1つの薬剤の注入のための装置(1)であって、
コントローラが薬剤の依存性を考慮して設けられる少なくとも1つの薬剤の注入のための装置。
【請求項2】
パラメータは、収縮期動脈圧(SAP)、平均動脈圧(MAP)、パルス酸素濃度プレチスモグラフ波形変動(POPV)、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(hct)、心拍数(HR)、脈圧変動(PPV)、収縮期圧変動(SPV)、前駆出期変動(PEPV)及び中心静脈酸素飽和度(ScVO2)のグループから選択される請求項1に記載の装置。
【請求項3】
薬剤は、流体、赤血球、血管作用剤、及び陽性的に変力的な作用剤、のグループから選択される請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
コントローラ(60)は、
薬剤(20,40)の最大投与量についての値を含む最大メモリ(91)、
注入される薬剤(20,40)の投与量を決定するための投与量決定装置(92)、及び
注入された薬剤が最大投与量に達した場合に、薬剤(20,40)の注入を停止するための最大ストッパ(93)、
を含むマキシマム装置(90)をさらに含む請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
コントローラ(60)は、
薬剤(20,40)のリスト及び対応する期待されるパラメータ変化を保存するための効果メモリ(101)、
及び、薬剤(20,40)の注入を停止するためのストッパ(102)、
を含む効果制御装置(100)をさらに含み、
効果制御装置(100)は、薬剤(20,40)が注入され、そして、少なくとも1つの対応する期待されるパラメータ変化が生じない場合に、ストッパ(102)を作動するようにプログラムされる請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
コントローラ(60)は、
閾値(126)と、実際に測定されるパラメータによって定められるパラメータポジション(127)との間の距離を決定する距離分析器(80)、
及び、距離を薬剤(20,40)の投与量に変換するための変換ユニット(81)、
を備え、かつ、コントローラ(60)が薬剤(20,40)のこの投与量によりアクチュエータ(10,30)を作動させるようにプログラムされる請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
コントローラ(60)が閉ループコントローラである請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも2つのパラメータを測定すること、
少なくとも2つの薬剤(20,40)を2つのパラメータの値に従って注入されるようにすること、を含む少なくとも1つの薬剤の注入のための方法であって、
薬剤の依存性が考慮される少なくとも1つ薬剤の注入のための方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−519939(P2010−519939A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551140(P2009−551140)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001624
【国際公開番号】WO2008/107127
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509245821)ユーピー マネジメント ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】UP MANAGEMENT GMBH
【住所又は居所原語表記】Neumarkter Str. 41 81673 Munchen (DE)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001624
【国際公開番号】WO2008/107127
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509245821)ユーピー マネジメント ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】UP MANAGEMENT GMBH
【住所又は居所原語表記】Neumarkter Str. 41 81673 Munchen (DE)
【Fターム(参考)】
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