説明

少なくとも2つの元素を含む試料の調査のための分光法における方法

本発明は、第1ステップにおいて、分光器に既知の濃度の既知の元素の試料を配置し、試料に含まれる異なる元素の強度I1、I2...Inを測定し、第2ステップにおいて、試料に含まれる元素の既知の濃度C1、C2...Cnを測定強度I1、I2...Inに対して関係付けるて、含まれるそれぞれの元素について100%純粋な元素に対する仮想強度を計算する段階と、第3ステップにおいて、測定強度I1、I2...Inと、対応する100%純粋な元素の計算強度との間の関係として、それぞれの元素の較正定数K1、K2...Knを計算する段階と、第4ステップにおいて、未知の濃度の前記元素の試料を分光器に配置し、異なる元素の強度を読み取る段階と、第5ステップにおいて、測定強度に、試料中に存在する元素の各較正定数を乗じて、直前に述べた試料中の各元素の濃度を計算する段階とによって特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ただ1つの試料を用いた、X線蛍光分析法における較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、X線分光器は、計器パラメータの較正および測定値の登録を容易にする多くの設備とともに高度に発達している。すべての化学分析のプロセスにおいて、使用する計器の較正は時間がかかる作業であるとともに、そのプロセスの重要な部分でもある。これは例えば、使用する計器のパラメータの較正、行われる較正の監視すなわち換言すると使用する計器の動作信頼性の管理、および、特に、開発された化学分析プロセスの確認およびその文書化に必要とされる作業にあてはまる。提案する方法は、必要とされる作業をかなり単純化することを可能にするものであり、これを達成することのできる方法を、X線蛍光分析法が適用される単純なケースに関連して以下に説明する。
【0003】
すべての化学分析法は、元素のある物理的化学的特性に基づいており、この物理的化学的特性は、これを測定することによって特徴づけられ、あるいは何らかの他の方法によって確立される。加えて多くの場合、バックグラウンドを決定することも必要である。その理由は、バックグラウンドが多くの場合未知だからである。換言すれば、元素を較正するとき、少なくとも2つの特性(2つの点)を確立することが必要である。これは、分析プロセスの確認において使用される標準体(standard)に対するその元素の濃度を決定することにもあてはまる。
【0004】
したがって較正は、通常、1つの元素につき1つまたは複数の試料を用いて行われ、次いで関係する元素のバックグラウンドが決定/測定される。
【0005】
「高純度の」化学物質を含むガラス標準体を用いて、元素の較正がどのように実施可能であるかという方法が、本発明に先行する論文「Application of J.E.Fernandez algorithms in the evaluation of X−ray intensities measured on fused glass discs for a set of international standards and a proposed calibration procedure(一組の国際標準体用の溶融ガラスディスク上で測定されるX線強度の評価におけるJ.E.フェルナンデスのアルゴリズムの応用、および提案される較正方法)」(J.Malmqvist、X−RAY SPECTROMETRY、X−Ray Spectrom 2001、30:83−92)に述べられている。したがって上述の場合、較正されるそれぞれの元素に対して1つの標準体が必要である。この論文は、本出願の一部として含まれる。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、上述の問題を解決するものである。
【0007】
したがって本発明は、少なくとも2つの元素を含む試料を分光法で分析する方法であって、第1ステップにおいて既知の元素の既知の濃度の試料を分光器に配置し、試料に含まれる異なる元素の強度I1、I2...Inを測定し、第2ステップにおいて試料に含まれる元素の既知の濃度C1、C2...Cnを、測定された強度I1、I2...Inに対して関係付け、それによって含有元素のそれぞれについて100%純粋な元素に対する仮想強度を計算する段階と、第3ステップにおいて、測定された強度I1、I2...Inと、それぞれの100%純粋な元素の計算された強度との間の関係として、それぞれの元素の較正定数K1、K2...Knを計算する段階と、第4ステップにおいて前記元素の未知の濃度の試料を分光器に配置し、異なる元素の強度を読み取る段階と、第5ステップにおいて、試料中に存在する元素のそれぞれの較正定数を測定強度に乗じて、直前に述べた試料中のそれぞれの元素の濃度を計算するステップとを特徴とする方法に関する。
【0008】
本発明を、図1に示す表を部分的に参照して、以下にさらに詳細に述べる。
【実施例】
【0009】
本発明は、2つ以上の元素の較正に、較正される元素を含む1つの試料のみを必要とする点において特異である。
【0010】
生成した単一の試料中に存在する元素の濃度を知ることに加えて、本方法はまた、試料のただ1つのみの測定から、すなわち各元素につき1つの測定すなわち1つの点のみから、試料のバックグラウンドを同時に計算する能力に基づく。
【0011】
このような2つの標準体(FE1001およびSI1001)がどのように較正可能であるかについて、上述した内容からの出発点を有する実施例が下記に与えられる。図1の第1行から分かるように、FE1001は100%のFeを含む。SI1001は100%のSiOを含む(図1の第2行を参照)。
【0012】
これが、2つの元素を含む試料FESIの組成を判定するのに使用される(図1の第4行を参照)。
【0013】
これまで使用されてきた、上述のJ.E.フェルナンデスのアルゴリズムに基づいたMultiScatプログラムでは、関係する元素、すなわちFeおよびSiの較正定数を計算する方法が発展されてきた。このプロセスは、FESI試料の推定される濃度および測定された強度を用いて実行され、その後、新しい較正定数が計算された。次に、2つの100%の試料の濃度が、これらの定数を用いて計算された。
【0014】
図1から明らかなように、これらの濃度は100%からはわずかに相違するが、関係する測定の実行に関して期待できる正確さの範囲内にある。
【0015】
ある好ましい実施例によると、上述した第2ステップに従った計算は、元素の濃度と、使用する分光器でのこの濃度が生じる強度との間の関係式を用いることにより実行される。
【0016】
直前に述べたこの実施例のある好ましい1つの実施例によると、この計算は、上述の第2ステップにおいて実行され、ここでは、論文「Application of J.E.Fernandez algorithms in the evaluation of X−ray intensities measured on fused glass discs for a set of international standards and a proposed calibration procedure」(J.Malmqvist、X−RAY SPECTROMETRY、X−Ray Spectrom 2001、30:83−92)で説明されたアルゴリズムを用いて、それぞれの元素について100%純粋な元素に対する仮想強度が確立されるように、存在する元素の既知の濃度C1、C2...Cnが、測定された強度I1、I2...Inに関係付けられる。
【0017】
上述の第1ステップでは、既知の濃度の既知の元素の試料が適切な分光器に配置され、試料の強度I1、I2...Inが、試料中に存在する様々な元素に関して測定される。
【0018】
上記実施例は、純粋な化学物質を用いて作られた、それぞれ100%のSiOおよび100%のFeを含む2つの標準体であるFE1001およびSI1001のFeおよびSiの較正に関する。FESI試料は、この2つの酸化物の混合物を含んでいた。
【0019】
本発明の方法は、言及した元素に決して限定されず、本発明は、様々な元素の分析に適用可能であることが指摘される。
【0020】
上述の第2ステップでは、存在する各元素について100%純粋な元素に対する仮想強度を計算するように、試料中に存在する元素の既知の濃度C1、C2...Cnが、測定された強度I1、12...Inに関係付けられる。
【0021】
試料中の元素の濃度は、一般的に以下の関係式によって決定される。
=k・I・M (1)
ここで、C=元素iの濃度、k=較正定数、I=測定された強度、また、Mは本発明に従って使用される数学的補正値である。
【0022】
元素E1について100%の濃度の場合に予期される理論上の強度値は、IE1100%Teorと表される。これは、分光器において使用されるX線管で生成されたすべての光子のうちの、この元素について記録される一部の光子量を示すと考えられる。ステップ1では、調整、較正が行われ、試料の濃度が100%になるように元素FeおよびSiのIE1100%Teor値が調整される。
【0023】
上述の第3ステップにおいては、較正定数K1、K2...Knが、測定された強度I1、I2...Inと、対応する100%純粋な元素について計算された強度との間の関係として、それぞれの元素に対して計算される。
【0024】
E1=IE1100%Teor/IE1Mattとして定義される較正定数を用いて、ステップ1のアルゴリズムを使用することにより、100%の濃度における元素E1に対するE1の濃度が得られる。
【0025】
E1100%=kE1・IE1Matt・M
【0026】
E1が挿入されると、CE1100%=IE1100%Teor・Mが得られ、このときIE1100%Teorは、新たに変換された較正定数を表す。
【0027】
新たに変換された較正定数が(1)に挿入されると、ここで、一般的な関係式
E11=IE1100%Teor・I・M (2)
が得られる。
【0028】
上述の第4ステップでは、未知の濃度の前記元素を含む試料が分光器に配置され、様々な元素の強度が読み取られる。
【0029】
得られた2つの較正定数IFeA100%TeorおよびISiA100%Teorを用いて、FeおよびSiの濃度が、FESI試料に関して計算される(図1の第4行を参照)。
【0030】
第5ステップでは、測定された強度に、試料中に存在する元素に関する各較正定数を乗じるものとして、直前に述べられた試料中の各元素の濃度が計算される。
【0031】
この較正定数を用いて、2つの試料FE1001およびSI1001に関する濃度が計算され、この計算の結果は、図1の第6および7行から明らかである。
【0032】
分析した試料と同じ元素を含むさらなる試料を分析するときに適用される好ましい実施例によると、第1、第2および第3のステップを繰り返すことなく、第5ステップが繰り返される。
【0033】
提案する較正プロセスによってもたらされる利益が以下に述べられる。
【0034】
しかしながら、与えられた実施例は、複数の元素についての較正が、1つの試料のみを用いてどのように達成可能であるかを示している。これは、多元素分析に関して特に意義深く、なかでも1つの分析方法についておそらく10〜50の元素の較正がかかわるX線蛍光分析法が、しばしば一例となる。新規な方法は時間の節約であり、その理由の1つは、1つの測定値のみの使用、すなわち1つの点/元素のみを判定することによってバックグラウンドを計算するプロセスの能力にあることが、容易に理解されるであろう。
【0035】
本発明の方法はまた、分析方法の検認において適用可能である。本発明の方法を用いると、この較正プロセスに使用されるように特に作られた個々の試料が、分析方法の以前の実行された検認にも結びつけ可能であり、これは、この個々の試料に適用可能である検認の更新としてそれ自体有益である。これは、X線管の交換、探知器の欠陥、スキャナの不具合、またはシステムの他の深刻な欠陥などの計器のハードウェアに問題が発生した場合に、特に重要である。
【0036】
本発明は、いくつかの実施例を参照して述べられてきたが、本発明のプロセスは、前述のアルゴリズムに厳密には拘束されず、添付の特許請求の範囲に述べた本発明の範囲から逸脱することなく、他の変更されたアルゴリズムが使用可能であることが理解されるであろう。
【0037】
添付する特許請求の範囲の範囲内での変形および修正が実施可能であり、したがって本発明は、上述の実施例に限定されると考えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】標準体および試料の組成を示す表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの元素を含む試料を分光法により分析する方法であって、
第1ステップにおいて、分光器に既知の元素の既知の濃度の試料を配置し、前記試料に含まれる異なる元素の強度I1、I2...Inを測定し、第2ステップにおいて、前記試料に含まれる前記元素の既知の濃度C1、C2...Cnを前記測定強度I1、I2...Inに対して関係付け、それによって、含まれる前記各元素について純度100%の元素に対する仮想強度を計算する段階と、
第3ステップにおいて、測定強度I1、I2...Inと、それぞれの純度100%の元素の前記計算強度との間の関係として、前記各元素の較正定数K1、K2...Knを計算する段階と、
第4ステップにおいて、前記元素の未知の濃度の試料を前記分光器に配置し、前記異なる元素の強度を読み取る段階と、
第5ステップにおいて、前記試料中に存在する前記元素のそれぞれの較正定数を前記測定強度に乗じて、最後に言及した前記試料中のそれぞれの元素の濃度を計算する段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
元素の濃度と、使用する前記分光器において与えられる前記濃度の強度との間の関係を用いることによって、前記第2ステップによる前記計算を実行する段階を含むこと特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
論文「Application of J.E.Fernandez algorithms in the evaluation of X−ray intensities measured on fused glass discs for a set of international standards and a proposed calibration procedure」(J.Malmqvist、X−RAY SPECTROMETRY、X−Ray Spectrom 2001、30:83−92)に記載されたアルゴリズムによって前記各元素について純度100%の元素に対する仮想強度が確立されるように、前記試料中に存在する前記元素の前記既知の濃度C1、C2...Cnが前記測定強度I1、I2...Inに関係付けられる前記第2ステップの前記計算を特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
分析された試料と同じ元素を含むさらなる試料が分析されるとき、前記第1、第2および第3のステップを繰り返すことなく、前記第5ステップが繰り返されることを特徴とする請求項1、2または3に記載の方法。


【図1】
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【公表番号】特表2009−535619(P2009−535619A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507641(P2009−507641)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050240
【国際公開番号】WO2007/126371
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508321225)エックスアールエフ アナリティカル エービー (1)
【Fターム(参考)】