説明

尿管下部兆候の治療のためのキナゾリン誘導体の使用

(同時排尿筋活動過多を伴う又は伴わない)OAB;骨盤底機能不全;又は慢性前立腺炎に関連するLUTSの治療のための、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン又は医薬として許容されるその誘導体の使用を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(国際特許出願公開第WO98/30560中の実施例19として開示された)4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン、及び医薬として許容されるその誘導体の新規用途(使用)に関する。そのメシレート塩は、国際特許出願公開第WO01/64672(例えば、実施例2)中に開示されている。WO98/30560とWO01/64672の両者を、本明細書中に援用する。それは、良性前立腺過形成(BPH)の治療において指示され、そして以下の構造:
【化1】

を有する。
【背景技術】
【0002】
尿管下部兆候(Lower urinary tract symptoms (LUTS))は、3群の兆候、すなわち、刺激性(irritative)、閉塞性(obstructive)、及び頻尿後(post micturition)の兆候を含む。刺激性兆候は、(同時発生排尿筋活動過多を伴う又は伴わない)活動過多膀胱;骨盤底機能不全;又は慢性前立腺炎に関連することができる、切迫し、頻度の高い、かつ、夜間多尿症の兆候を含む。
活動過多膀胱(Over Active Bladder(OAB))は、通常、頻尿及び夜間多尿症を伴う、切迫尿失禁(urge incontinence)を伴う又は伴わない、切迫兆候として、定義される〔Abrams et al., Neurourology and Urodynamics 21 : 167-178 (2002)〕。男性及び女性におけるOABの罹患率は低く、当該症状を患う米国の集団の約16%である〔Stewart et al, Prevalence of Overactive Bladder in the United States: Results from the NOBLE Program; Abstract Presented at the 2nd International Consultation on Incontinence, July 2001, Paris, France〕。
【0003】
骨盤底機能不全(Pelvic floor dysfunction (PFD))は、膀胱は収縮しているが排尿の間、骨盤底の筋肉がもはや正常に弛緩しないときに、生じる。当該筋肉は、刺激されるようになり、そしてしばしば異常に収縮することができる。PFDは、刺激性LUTSを導きうる。
【0004】
慢性前立腺炎(chronic prostatitis)は、標準的な微生物学的方法により検出される尿路疾患性細菌に関連する又はしない、前立腺の炎症性の症状である。それは、しばしば、刺激性LUTSに関連する、尿生殖器の痛み又は不快感の存在を特徴とする。
【0005】
活動過多膀胱は、すべての年齢の個体が患うことができるが、骨盤底機能不全と前立腺炎は、典型的には、中年男性が患う症状である。これらの症状のいずれかを伴う患者は、刺激性尿管下部兆候を経験するようであり、そしてしばしば、その最終的な診断は、経験的なものである。
【発明の開示】
【0006】
驚ろくべきことに、(同時排尿筋活動過多を伴う又は伴わない)OAB;骨盤底機能不全;又は慢性前立腺炎に関連するLUTSの治療において、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリンが有用であることが判明した。
【0007】
したがって、本発明に従って、(同時排尿筋活動過多を伴う又は伴わない)OAB;骨盤底機能不全;又は慢性前立腺炎に関連するLUTSの治療用医薬の製造のための、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン、又は医薬として許容されるその誘導体の使用が提供される。
【0008】
好ましくは、LUTSは、骨盤底機能不全に関連する。あるいは、LUTSは、好ましくは、慢性前立腺炎に関連する。
【0009】
好ましくは、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン、そのメシレート塩の形態にある。
【0010】
上記化合物、又は医薬として許容されるその誘導体は、単独で、又はいずれかの便利な医薬的提示において投与されうる。経口投与が好ましい。本指示においては、上記化合物の、又は医薬として許容されるその誘導体中の活性成分の好適な投与量は、約0.01〜10.0mg/kg体重であり、そして好ましくは、約0.05〜1.0mg/kgが好適である。投与は、日用1〜4回の単一投与であることができ又は好ましくは、それは、国際出願公開第WO03/032956中に開示されたような制御放出配合品中にあることができる(特に、実施例1〜5を参照のこと)。投与は、その患者が、例えば長旅の間に、トイレ施設へのアクセスが制限されるときの理由により、p.r.n(臨機応変)であることができる。
【0011】
本発明は、(同時排尿筋活動過多を伴う又は伴わない)OAB;骨盤底機能不全;又は慢性前立腺炎に関連するLUTSの治療において使用される、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン又は医薬として許容されるその誘導体をさらに提供する。
【0012】
本発明は、(同時排尿筋活動過多を伴う又は伴わない)OAB;骨盤底機能不全;又は慢性前立腺炎に関連するLUTSの治療方法であって、当該治療の必要な患者に、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン又は医薬として許容されるその誘導体を投与することを含む前記治療方法をさらに提供する。
【実施例】
【0013】
実施例1〜5
MethocelTM K4Mを含有する、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン・メシレートの錠剤配合品
以下の表は、国際出願公開第WO03/032956号に従って、遊離塩基として表される、それぞれ、活性成分1,3,6,9、及び12mgを含有する5つの錠剤配合品の調製のための成分を示す。
【0014】
【表1】

【0015】
方法
アジピン酸を、まず、好適なスクリーン(例えば、500ミクロン)を通して篩分けする。ラクトース・モノヒドレート、ヒドロキシプロピルメチル・セルロース、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン・メシレート、上記篩分けされたアジピン酸、及びリン酸水素カルシウム無水物を、その後、好適なブレンダー(例えば、タンブル・ミキサー)に添加し、そしてブレンドする。当該ブレンドを、好適なスクリーン(例えば、500ミクロン)を通して篩分けし、そして再ブレンドする。上記潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム)の約50%を、篩を通し、上記ブレンドに添加し、そして短時間ブレンドする。
【0016】
上記ブレンドを、好適なローラー圧縮機を通してローラー圧縮する。次いで、リボン・ブレンドを、好適なスクリーン(約500ミクロン)を通して、篩分けすることにより顆粒化し、そして再ブレンドする。残りの潤滑剤を篩分けし、上記ブレンドに添加し、そして短時間ブレンドする。
【0017】
次いで、上記顆粒を、約6mmの型押しを用いて錠剤化して、彫刻のない標準的な6mmの丸い凹んだ白色錠剤を得、これをその後、粉塵除去した。
【0018】
実施例6:インビボ試験
尿管下部兆候をもつ男性における12週間にわたる試験を計画し、当該試験において、IPSS(国際前立腺兆候等級)を、2重盲目処理の間、及び終わりに、ベースラインにおいて記録した。IPSSは、7つの質問から構成され、その各々は、Likert等級上0〜5の潜在的な応答を伴う。上記質問を、2つのバリデートされたドメインに群分けする:刺激性ドメイン(切迫尿、頻尿、及び夜尿症)、及び閉塞性ドメイン(不完全排尿、断続(間欠)性、弱い流れ、及び排尿開始時の力み)。さらに、膀胱日記を、各患者により完成させて、個々の兆候のベースライン発生率(incidence)を提供し、そしてその後、2重盲目処置に従って上記兆候の発生率の変化を表示する。各患者についての切迫、昼間頻尿、及び夜尿症(刺激性兆候)の平均1日当り発生率を、上記日記から誘いだ。上記試験においては、5つの処置群が存在した:4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン6mg固定投与量、上記化合物の6mgから12mgまで4週間で増加するもの、及びプラセボ。各ケースにおいて、国際出願公開第WO03/032956号に従う制御された放出配合品を使用した。
【0019】
ベースラインにある刺激性LUTSをもつ患者に関して、上記化合物6mg固定投与量群、及び12mg投与量増加群において、プラシボ処置群に比較して、上記兆候の改善が、確認された。ベースラインにおいてベースラインIPSS刺激性ドメイン等級≧8をもつ患者において、上記化合物6mg固定投与量群、及び上記12mg投与量増加群において、IPSSの当該ドメインにおける改善も、同様に確認された。
【0020】
上記試験の結果を、図1〜4に示す。図1〜4は、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリンが、刺激性LUTSの臨床的に有意な弱化を作り出したことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】1日当りの切迫エピソード−12週目のベースラインからの変化(ベースラインにおける1日当りの≧1エピソード)
【図2】1日当りの頻尿の頻度−12週目のベースラインからの変化(ベースラインにおける1日当りの≧8頻尿)
【図3】1夜当りの夜尿症エピソード−12週目のベースラインからの変化(ベースラインにおける1夜当りの≧2エピソード)
【図4】IPSS刺激性ドメイン−12週目のベースラインからの変化(ベースラインにおける等級≧8)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(同時排尿筋活動過多を伴う又は伴わない)OAB;骨盤底機能不全;又は慢性前立腺炎に関連するLUTSの治療用医薬の製造のための、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン、又は医薬として許容されるその誘導体の使用。
【請求項2】
(同時排尿筋活動過多を伴う又は伴わない)OAB;骨盤底機能不全;又は慢性前立腺炎に関連するLUTSの治療において使用される、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン、又は医薬として許容されるその誘導体。
【請求項3】
(同時排尿筋活動過多を伴う又は伴わない)OAB;骨盤底機能不全;又は慢性前立腺炎に関連するLUTSの治療方法であって、当該治療の必要な患者に、4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン、又は医薬として許容されるその誘導体を、投与することを含む前記方法。
【請求項4】
前記4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノール−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリンが、そのメシレート塩の形態にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項5】
前記LUTSが、骨盤底機能不全に関連する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項6】
前記LUTSが、慢性前立腺炎に関連する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用又は方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−501276(P2006−501276A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537394(P2004−537394)
【出願日】平成15年9月4日(2003.9.4)
【国際出願番号】PCT/IB2003/003905
【国際公開番号】WO2004/026312
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】