説明

局所医薬組成物

本発明は、治療剤を含有する医薬組成物を皮膚に正確かつ限局的に投与するための組成物およびアプリケーターデバイスに関する。特定的には、本発明は、約25℃以下の温度で固体でありかつ患者の皮膚との連続的接触時に軟化する組成物に関する。本発明を用いれば、周囲の皮膚領域または使用者の手に接触することなく所望の皮膚領域にきわめて限局的に組成物が適用されるので、使用者は、正確な用量の治療剤を投与することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所治療効果を提供すべく患者の皮膚に局所投与するための医薬組成物に関する。本発明はまた、そのような医薬組成物の正確かつ限局的な投与を提供するためのアプリケーターデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
局所治療効果を提供する局所適用治療剤を用いて、多種多様な病状および障害を治療することが可能である。いくつかの場合には、治療を必要とする皮膚領域に排他的に治療活性剤を適用することを保証することがきわめて重要である。一般的には、所望の治療効果を引き起こすのに必要な最少量で治療活性剤を投与することが望ましい。もちろん、このことがとくにあてはまるのは、薬剤が望ましくない副作用を引き起こす場合であり、局所適用治療剤の中には、健常皮膚に潜在的に有害なものもある。そのほかに、正確な用量の治療活性剤が必要とされる場合、健常皮膚に薬剤が適用されることにより、治療を必要とする皮膚領域が必要用量を摂取できなくなる可能性がある。
【0003】
たとえば、患者または介護者が自分の素手を使用して罹患領域に治療組成物を適用した場合、治療活性剤への健常皮膚の不要な接触が起こる可能性がある。治療対象の皮膚領域がとくに小さいかまたは限局される場合にも、不要な接触が起こる可能性があり、治療活性剤が周囲の健常皮膚に不注意に適用される可能性が増大する。たとえば、座瘡のような皮膚障害は、独立したにきび、吹き出物などよりなることがあり、これらは局所医薬で個別に治療することが理想である。しかしながら、治療対象の表面積が小さいことが原因で、これが困難なこともあり、結果として、周囲の健常皮膚領域が医薬に接触する傾向がある。
【0004】
イソトレチノインやトレチノインのようなレチノイドは、座瘡の治療に使用される。レチノイドは、治療皮膚領域の細胞代謝回転を増大させて、皮膚の最上層を剥落させる。局所レチノイドを定期的に使用して目立った効果を得るのに最大7週間かかる可能性があり、実際には、レチノイドを使用すると、その剥離作用の結果として、健常皮膚および罹患皮膚の両方で初期に状態の悪化を生じる可能性がある。レチノイドはまた、紅斑、浮腫、および疱疹のような副作用を引き起こすことも知られている。局所トレチノインの反復適用を行うと一時的な色素沈着過剰または色素沈着減少が起こる可能性があり、太陽光に対する感受性が増大することが報告されている。レチノイドのような毒性薬剤に接触する皮膚領域を制限すれば、薬剤の使用に伴う症状の悪化が回避されうるかまたは明らかに治療の必要な罹患領域に限局されるので、望ましくない副作用は低減されるであろう。また、患者のコンプライアンスを改善することが可能である。
【0005】
また、副作用がただちに現れることはないかもしれないが長期間にわたり影響を及ぼす薬剤への接触を制限することも重要である。たとえば、ステロイドはコラーゲン生成を妨害するので、長期間にわたる局所使用により皮膚が薄くかつ脆くなる可能性がある。血管もまた長期間にわたる局所ステロイドの使用により影響を受ける可能性があるので、患者が容易に挫傷を起こすこともある。コルチコステロイドを使用するとカルシウム/リン酸代謝が妨害され、結果として骨粗鬆症になる危険性が増大する。
【0006】
多くの局所適用治療剤を正確な用量で投与することもまた重要である。正確な用量で投与すれば、望ましくない副作用を最小限に抑えて、患者および/または臨床医が薬剤使用量およびその量の効果をモニターすることが可能になる。そのようなモニタリングの結果として、最適治療レベルがより良好に達成されるように、投与される治療剤の用量およびタイプを効果的に調整することが可能になる。
【0007】
しかしながら、現在、局所投与に供される治療剤は、典型的には、皮膚上に展延したり皮膚中に擦り込んだりするのが容易なクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤などとして提供される。そのようなクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤などは、典型的には、チューブまたはサシェに入れて提供される。しかしながら、そのような組成物を正確な用量で計り取るのは困難である可能性があり、この結果、患者が各適用時に過剰量または過少量の治療剤を適用する可能性がある。過剰量の治療剤を適用すると、薬剤が有意に浪費されて出費がかさむ可能性があり、しかも望ましくない副作用が増大する可能性もある。過少量の治療剤を適用すると、病状が適切に治療されない可能性がある。さらに、不適切な用量の抗生物質の投与は、抗生物質耐性細菌という広く認知されている問題の一因になると考えられる。
【0008】
公知の局所投与組成物に伴うことの多いさらなる問題は、一部の被験者でアレルギー反応を引き起こす可能性のある賦形剤が多くの組成物に含まれていることである。たとえば、第四級アンモニウム化合物のような界面活性剤は、アレルギー反応を引き起こすと報告されている。また、典型的には、局所組成物で治療される病状は、多くの場合、痛みおよび/もしくは痒みのある皮膚上の斑点としてまたは皮膚の損傷として現れる。そのような皮膚罹患領域に適用される組成物は、刺激物質などを含有していないことが非常に重要である。理想的には、組成物は罹患領域を鎮静化することが望ましい。
【0009】
手で適用した結果として生じる不要な接触の問題に対する解決策としては、適用時に患者または介護者がラテックス手袋を着用すること挙げられる。しかしながら、多くの人々は、ラテックス手袋の触感を許容できずに不快であると感じたり、またはラテックスに対してアレルギーを起こしたりする。ラテックス手袋はまた、薬物療法に追加の出費がかさむので、すべての患者が容易に利用しうるものではないであろう。これに加えて、手袋を使用しても、限局された罹患皮膚領域に組成物を正確に適用する手段にはならないので、非罹患皮膚領域による吸収を介した薬剤の不要な接触は回避されないであろう。
【0010】
治療対象の罹患領域を取り囲む健常皮膚領域への治療剤の不要な接触の問題に対する解決策は、たとえばアプリケーターを用いて治療剤を局所適用する手段に重点がおかれる傾向にある。米国特許第5,681,574号明細書には、座瘡に罹患した比較的広範な組織領域の治療に好適な液体医薬の組み込まれたアプリケーターが記載されている。しかしながら、そのようなアプリケーターの欠点は、非固体形態の医薬を含むことが多い点である。したがって、医薬は、過剰適用されやすいうえに流動し易いので、適用予定の罹患領域を取り囲む非罹患領域に接触することになる。
【0011】
正確な用量のクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤などの提供に伴う問題に関しては、解決策の1つは、患者が指先から第一関節まで人差し指に沿ってチューブのようなディスペンサーからそのような局所組成物を絞り出すことであった。このように分配される治療剤の量は、フィンガーチップユニット(FTU)として知られる。1FTUは、一般的には、局所組成物換算で近似的に約500mgであり、一般的には、成人の平らな手の領域の2倍の領域を覆うのに十分である。FTUが近似計量値であるにすぎず、その大きさが患者ごとに異なるという点で、そのような投与には問題がある。したがって、FTUを使用しても、正確な投与は達成されない。
【発明の開示】
【0012】
したがって、周囲の皮膚領域または使用者の手に接触することなく所望の皮膚領域にきわめて限局的に組成物を適用することにより使用者が正確な用量の治療剤を投与しうる医薬組成物の局所投与手段が必要とされている。そのほかに、アレルゲン、刺激物質などがそのような組成物に含まれないようにすることが有益であろう。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、治療剤と製薬上許容される担体とを含む組成物を哺乳動物患者に局所適用するための医薬組成物が提供される。ただし、この組成物は、約25℃以下の温度で固体であり、かつ患者の皮膚との連続的接触時、10分間未満の時間内で、哺乳動物患者の所望の皮膚領域への治療剤の実質的な適用を行える粘稠度まで軟化する。
【0014】
本発明に係る組成物は、ほとんどの医薬組成物および組成物の貯蔵条件に従って約25℃以下の温度で貯蔵されることが望ましい。
【0015】
本発明に係る組成物を用いれば、投与用量の大きさおよび治療剤の適用される皮膚領域の両方に関して治療剤のきわめて正確な投与が可能になる。
【0016】
好ましくは、本発明に係る固体組成物は、所望の皮膚領域との連続的接触下に置いたときに、約10、5、または2分間未満の時間内で、所望の皮膚領域への適用を行える粘稠度まで軟化する。治療剤の投与を行うのに十分な程度まで組成物が軟化する温度は、その「軟化点」として定義される。
【0017】
本明細書中で使用される「軟化点」という用語は、組成物中に存在する治療剤の経皮吸収を可能にするように患者の皮膚により吸収可能な粘稠度まで実質的に固体の製剤が軟化し始める温度を意味する。
【0018】
本発明の第1の態様に係る医薬組成物の実質的に固体の製剤の軟化点は、患者の皮膚により吸収可能な(有利には、それ自体が患者の皮膚上に望ましくない残留物をほとんどもしくはまったく残さないように実質的に完全に患者の皮膚により吸収可能な)粘稠度まで実質的に固体の製剤が軟化し始める温度として目視測定可能である。
【0019】
他の選択肢として、本発明の第1の態様に係る医薬組成物の実質的に固体の製剤の軟化点は、TA−XT2テクスチャーアナライザー(Stable MicroSystems Ltd., UK)(好適には5kgロードセルを備える)を用いて測定可能である。装置は、温度制御チャンバー(60℃〜200℃の範囲内で動作可能)で包囲される。本発明に係る錠剤または他の実質的に固体の製剤は、少なくとも10分間にわたり指定温度のチャンバーで包囲可能である。3mmのフラットフェイスプローブが、0.1mm/秒の速度で1mmの距離だけ本発明に係る錠剤または他の実質的に固体の製剤に押し込まれる。測定は、1℃の温度増分で反復可能であり、記録されたピーク抵抗力(Texture Exceedソフトウェアにより測定される)が本発明に係る「固体」錠剤または他の実質的に固体の製剤のピーク抵抗力の50%未満まで低下する温度で、錠剤または他の製剤が「軟化」したとみなされる。好ましくは、組成物の軟化点は、組成物の加熱時にその粘度が100,000、好ましくは50,000センチポアズ以下まで低下する温度である。
【0020】
本明細書中で使用される「展延点」という用語は、組成物が展延粘稠度を有する温度を意味する。たとえば、組成物は、自重下で流動可能であるか、またはたとえば指圧を用いて哺乳動物患者の皮膚上に少なくとも展延可能である。
【0021】
展延性組成物の可動性により、たとえば拡散による皮膚への治療剤の移動が可能になるので、皮膚中への治療剤の吸収を促進することが可能である。製剤の展延点は、軟化点の測定に関連して以上で述べたTA−XT2テクスチャーアナライザーを用いて測定可能であり、このアナライザーを用いた場合、組成物の展延点は、製剤中へのフラットフェイスプローブの進入時に組成物の流出が最初に観測される温度である。
【0022】
本発明に係る組成物は、組成物が投与される患者、好ましくは、ヒトのような生存動物の皮膚温度以下の軟化点を有しうる。本発明に係る固体ユニット製剤は、1:1未満のアスペクト比(壁:面)を有しうる。
【0023】
「治療剤」、「活性剤」、または「医薬活性剤」という用語は、本明細書中では、治療効果または予防効果を有しかつ患者、好ましくは哺乳動物患者、最も好ましくはヒト患者への局所投与に好適である任意の活性物質を表すべく使用される。治療剤は皮膚への局所適用に好適でありかつ局所効果を有することが好ましい。いくつかの実施形態では、治療剤は、局所適用時に局所効果のみを発揮する。他の実施形態では、治療剤は、局所適用後に全身効果を追加的に有する。そのような薬剤は、以下の節で参照される薬剤および薬剤クラスならびに製薬上許容されるそれらの等価体または誘導体、たとえば、製薬上許容されるそれらの塩、エステル、プロドラッグ、および活性代謝物をすべて包含する。すべての開示された薬剤の異性体もまた、本開示に包含される。
【0024】
本明細書中で使用される「局所効果」という用語は、患者の皮膚に適用するための1種以上の治療剤を含有する組成物の提供の結果として得られる治療効果を表す。ただし、治療剤は、適用される皮膚領域、皮膚中のレセプター、および/または組成物の適用部位のごく近傍内の皮膚層中のレセプターに対して効果を有し、かつ治療剤は、血流に投与されない。
【0025】
本明細書中で使用される「全身効果」という用語は、血流への治療剤の投与の結果として得られる治療効果を表す。
【0026】
他の選択肢として、本発明に係る組成物は、正確な所定量の組成物を分配可能な特注デバイスを用いて分配可能である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、治療剤は、座瘡、湿疹、乾癬、蕁麻疹、接触皮膚炎などのような皮膚障害の治療に好適な薬剤である。他の選択肢として、治療剤は、局所適用老化防止治療剤で使用されることが公知の薬剤でありうる。
【0028】
組成物が座瘡の治療に供される場合、好ましい活性剤としては、レチノイド、たとえば、トレチノイン、イソトレチノイン、もしくはレチノイド関連化合物(たとえばアダパレン);角質溶解剤(keratolyic agents)、たとえば、ベンゾイルペルオキシド、硫黄、ならびにいくつかのフルーツ酸およびα−ヒドロキシ酸のいずれか;ホルモン調節剤;亜鉛;または抗生物質、たとえば、テトラサイクリン、4−エピテトラサイクリン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、およびスルホンアミドが挙げられる。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、疼痛、炎症の治療またはホルモン補充療法もしくは避妊または局部麻酔剤の投与に使用される薬剤を含まない。
【0030】
本発明に係る医薬組成物は、座瘡の治療に好適な2種以上の治療剤を含みうる。ただし、それらは、貯蔵および使用の条件下で互いに適合性でなければならない。そのような組合せの1つは、たとえば、クリンダマイシンとベンゾイルペルオキシドとの組合せである。
【0031】
組成物は、座瘡の治療に好適な1種以上の治療剤と、局所適用に好適な1種以上の他の薬剤と、の組合せを含みうる。他の薬剤としては、次のものが挙げられる:抗微生物剤、たとえば、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ムピロシン、硫酸ネオマイシン、ポリミキシン、スルファジアジン銀、アゼライン酸、フシジン酸、または次亜塩素酸ナトリウム;抗炎症剤、たとえば、イブプロフェン、アセクロフェナク、アセメタシン、アザプロパゾン、セレコキシブ、デキスケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、エトリコキシブ、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、インドメタシン、メフェナム酸(medenamic acid)、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、スリンダク、テノキシカム、チアプロフェン酸、バルデコキシブ、サリチル酸および他のサリチレート;抗ウイルス剤、たとえば、アシクロビル、ペンシクロビル、またはイドクスウリジン;防腐剤、たとえば、トリクロサン(イルガサンDP300(Irgasan DP 300))、クロルヘキシジン、セトリミド、馬尿酸ヘキサミン、セチルピリジニウムクロリド、デカリニウム、フェノール類、たとえば、トリクロロフェノール、クロロキシレノール、ポビドン+ヨウ素、フェノキシイソプロパノール、レゾルシノール、ヘキサクロロフェン、ベンザルコニウムクロリド;免疫抑制剤、たとえば、シクロスポリン、メトトレキセート、ピメクロリムス、またはタクロリムス;抗菌剤、たとえば、イミダゾールおよびその関連化合物、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、硝酸スルコナゾール、アモロルフィン、安息香酸、ナイスタチン、テルビナフィン、チオコナゾール、またはウンデセノエート、たとえば、メチルウンデセノエートもしくはプロピルウンデセノエート;他の座瘡治療化合物、たとえば、ウレア、アラントイン、ニコチンアミド、またはヒドロキシキノリン化合物;あるいは皮膚清浄剤、たとえば、陽イオン界面活性剤および石鹸、塩素、収斂剤、酸化剤、染料、過酸化水素、または過マンガン酸カリウム。
【0032】
医薬組成物はまた、鎮痒剤、たとえば、クロタミトン、カラミン、塩酸ドキセピン、または抗刺激剤、たとえば、α−ビサボロール、ファルネソール、カモミール抽出物、およびグリチルレチン酸、ならびに/または可溶化剤、たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリアルコール、ソルビトールおよびソルビトール誘導体、好ましくはソルビタンモノオレエート、溶媒、抗酸化剤、もしくは保湿剤をも含みうる。
【0033】
本発明に係る組成物が湿疹の治療に供される場合、それは、公知の湿疹治療剤よりなる群から選択可能な薬剤を含みうる。こうした薬剤としては、ステロイド、たとえば、ヒドロコルチゾン、酪酸クロベタゾン、ベタメタゾンおよびベタメタゾンエステル、ヒドロコルチゾンおよび酪酸ヒドロコルチゾン、クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾールおよび酪酸クロベタゾール、デソニド、フルドロキシコルチド、ハルシノニド、吉草酸ジフルコルトロン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、デスオキシメタゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルドロキシコルチド、フルオシノロンおよびフルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、プレドニカルベート、デスオキシメタゾン、吉草酸ベタメタゾン(bethasone valerate)、アセポン酸メチルプレドニゾロンが挙げられる。
【0034】
医薬組成物は、湿疹の治療に好適な2種以上の治療剤を含みうる。ただし、それらは、貯蔵および使用の条件下で互いに適合性でなければならない。
【0035】
医薬組成物は、湿疹の治療に好適な1種以上の治療剤と、1種以上の次の薬剤:抗微生物剤、抗菌剤、防腐剤、鎮痒剤、抗刺激剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症剤、または皮膚清浄剤と、の組合せを含みうる。そのような薬剤の例は、以上に提示される。
【0036】
他の選択肢として、本発明に係る組成物に有利に含まれうる治療剤としては、乾癬を治療するために通常は局所投与される薬剤、たとえば、デルタノイドのようなビタミンD類似体;メトトレキセート;またはステロイドが挙げられる。
【0037】
医薬組成物は、貯蔵の治療に好適な2種以上の治療剤を含みうる。ただし、それらは、貯蔵および使用の条件下で互いに適合性でなければならない。
【0038】
医薬組成物は、乾癬の治療に好適な1種以上の治療剤と、1種以上の次の薬剤:抗微生物剤、抗菌剤、防腐剤、鎮痒剤、抗刺激剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、たとえば、アザチオプリンもしくはシクロスポリン、または皮膚清浄剤(以上で述べたとおり)と、の組合せを含みうる。
【0039】
本発明に係る組成物はまた、蕁麻疹および接触皮膚炎の治療にも好適である。したがって、治療剤は、抗ヒスタミン剤、たとえば、ドキセピン、セチリジン、ロラチジン、およびフェキソフェナジン、シメチジン、ラニチジン、またはロイコトリエンレセプターアンタゴニスト、たとえば、モンテルカストもしくはザフィルルカスト、またはコルチコステロイド、たとえば、ヒドロコルチゾンもしくはデソニド、フロ酸モメタゾン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、プレドニカルベート、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノニド、デスオキシメタゾン、吉草酸ベタメタゾン(bethasone valerate)、アセポン酸メチルプレドニゾロン、およびフロ酸モメタゾンよりなる群から選択可能である。
【0040】
医薬組成物は、蕁麻疹および接触皮膚炎の治療に好適な2種以上の治療剤を含みうる。ただし、それらは、貯蔵および使用の条件下で互いに適合性でなければならない。
【0041】
医薬組成物は、蕁麻疹または接触皮膚炎の治療に好適な1種以上の治療剤と、1種以上の次の薬剤:抗微生物剤、抗菌剤、防腐剤、鎮痒剤、抗刺激剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、たとえば、アザチオプリンもしくはシクロスポリン、または皮膚清浄剤(以上で述べたとおり)と、の組合せを含みうる。
【0042】
湿疹、乾癬、蕁麻疹、および接触皮膚炎の治療におけるステロイドの使用については、広く知られている。しかしながら、長期ステロイド治療の副作用についても十分に認識されており、その例は、以上で述べたように、骨密度および皮膚厚さに及ぼす有害作用である。したがって、こうした病状の患者は、ステロイド使用に対して「ラダー法」または「ステップアップ−ステップダウン法」を使用することが推奨される。その場合、症状が最も重篤なときに、プロピオン酸クロベタゾールのようなより効力の高い治療剤を罹患皮膚領域に適用し、続いて、病状の改善がみられたときに、ヒドロコルチゾンのようなより効力の低い治療剤に置き換える。そのような方法の目的は、公知の有害な副作用を有する薬剤への患者の接触を最小限に抑えることである。計量用量のきわめて限局的な適用手段を提供することにより、本発明は、治療剤の制御適用を提供し、したがって、この目的の達成に役立つ。
【0043】
本発明はまた、基底細胞癌および扁平上皮細胞癌をはじめとする皮膚癌の治療にも適している。したがって、治療剤は、皮膚癌の治療に使用される治療剤(たとえば5−フルオロウラシル)よりなる群から選択可能である。
【0044】
本発明に係る医薬組成物は、皮膚癌の治療に好適な1種以上の治療剤と、1種以上の次の薬剤:抗微生物剤、抗菌剤、防腐剤、鎮痒剤、抗刺激剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、または皮膚清浄剤と、の組合せを含みうる。
【0045】
本発明は、抗感染剤の局所適用に使用可能である。そのような薬剤は、たとえば、足白癬、単純ヘルペス感染、膿痂疹、濾胞炎、または白癬のような皮膚感染の治療において、多種多様な使用の可能性を有する。そのような感染を治療するための本発明に係る医薬組成物に有利に含まれうる治療剤としては、1種以上の次の薬剤:抗微生物剤、抗菌剤、防腐剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症剤、皮膚清浄剤、または疣贅治療剤、たとえばサリチル酸、アルキル化剤(alkaylating agents)のホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、硝酸銀、イミキモド、またはポドフィルムが挙げられる。
【0046】
医薬組成物は、2種以上の抗感染剤を含みうる。ただし、それらは、貯蔵および使用の条件下で互いに適合性でなければならない。組成物はまた、1種以上の他の治療剤をも含みうる。
【0047】
疣贅やヘルペスのようないくつかの感染の治療において、時々、治療剤の適用時または適用前に治療対象の皮膚領域を穏やかに剥脱することが推奨される。したがって、本発明に係る抗感染剤含有医薬組成物は、エクスフォリエーションクリームに一般に使用されるような剥脱剤をさらに含みうる。たとえば、剥脱剤は、マイクロビーズや殻片のような機械的剥脱剤またはタンパク質分解酵素のような酵素的剥脱剤を包含しうる。
【0048】
医薬組成物は、局所適用老化防止治療剤に使用されることが公知である1種以上の薬剤、たとえば、湿潤剤、サンクリーム剤、αもしくはβヒドロキシ酸、コエンザイムQ10、コラーゲン、セラミド、ヒアルロン酸、ラノリン、パラベン、スクアレン、ビタミンC、またはビタミンEを含みうる。
【0049】
好ましくは、1種もしくは複数種の治療剤は、治療上有効濃度で本発明に係る医薬組成物中に存在する。好ましくは、組成物は、全医薬組成物の重量を基準にして少なくとも0.01重量%の活性剤を含む。
【0050】
本発明に係る医薬組成物は、皮膚への適用後に治療剤を実質的に密封して空気の進入を防ぐ手段を含みうる。密封手段は、組成物の担体材料に含まれる適正量のワックス、油、または脂肪を用いることにより提供される。
【0051】
密封手段を含む医薬組成物の提供は、治療剤の経皮投与に有利である。皮膚を介する治療剤の吸収の速度の重要な因子は、皮膚の水和レベルである。皮膚に密封層を適用すれば、密封層下の皮膚の温度が上昇して、皮膚の毛穴の膨張および発汗が起こるので、皮膚が水和され、密封層下の皮膚に適用された薬剤の吸収が促進される。
【0052】
本発明に係る組成物に含まれる製薬上許容される担体は、好ましくは、治療剤が安定な形で担持されるように選択される。担体は、有利な官能特性を有しうる。たとえば、好ましくは、皮膚への適用時に非油性触感を有しうる。
【0053】
本発明に係る組成物に含まれる担体は、好ましくは、約25℃以下の温度で実質的に固体であり、かつ皮膚領域への適用後、約10分間未満、好ましくは約5分間未満、より好ましくは約3分間未満、最も好ましくは約1分間未満の時間内で患者への治療剤の投与が行われるように(好ましくは実質的に終了するように)、患者の皮膚による1種以上の治療剤の実質的に完全な吸収を可能にする粘稠度まで軟化する。
【0054】
典型的には、本発明に係る実質的に固体の製剤に含まれる担体媒体は、30〜37℃の範囲内の温度で軟化可能であり、有利には展延粘稠度まで変化可能であることが好ましい。
【0055】
実質的に固体の形態では、本発明に係る組成物は、好ましくは、皮膚の選択領域への適用に好適なサイズおよび形状を有する。
【0056】
より特定的には、実質的に固体の製剤の形状および形態は、組成物および/または担体媒体の軟化点により決定されることが好ましい。本発明に係る実質的に固体の製剤は、実質的に単体の形態を構成することが好ましいこともあれば、他の選択肢として、哺乳動物患者の皮膚により吸収可能な複数の個別粒子(たとえば複数の顆粒など)を構成することも可能である。好ましくは、複数の実質的に個別の粒子は、密閉部材(たとえば、カプセル、サシェ、ブリスターパッケージなど)に入れて提供され、密閉部材から患者の皮膚に分配され適用される。
【0057】
坐剤に一般に使用される成分はいずれも、皮膚への適用時に軟化する本発明に係る組成物中の担体として使用可能である。こうした成分としては、哺乳動物起源、植物起源、または鉱物起源に由来するもの、および部分合成または全合成の材料が挙げられる。そのような担体の特定例としては、哺乳動物起源または植物起源の油および脂肪、たとえば、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、メンジツ油、コムギ胚芽油、カカオ脂、水素化油など;炭化水素、たとえば、スクアラン、ワセリン、固形パラフィン、流動パラフィンなど;およびワックス、たとえば、ホホバ油、カルナウバワックス、ビーズワックス、ラノリンなどが挙げられる。部分合成または全合成の脂肪酸エステルの例としては、飽和線状脂肪酸(たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸など)や不飽和線状脂肪酸(たとえば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸など)のような中級脂肪酸または高級脂肪酸のグリセロールエステル(モノ、ジ、またはトリグリセリド)が挙げられる。好適な市販の担体としては、ウィテップゾール(Witepsol)(Dynamit Nobel製)、ファーマゾール(Pharmasol)(Nippon Oil and Fats Co.製)、イソカカオ(Isocacao)(Kao Corp.製)、SB(Taiyo Oil and Fats Co.製)、ノバタ(Novata)(Henkel製)、シュポシール(Suppocire)(Gattefosse Co.製)などが挙げられる。他の合成製品の例としては、ポリエチレングリコール、たとえば、マクロゴール、セトマクロゴールなど、ならびにその誘導体、たとえば、セトマクロゴールが挙げられる。
【0058】
本発明に係る組成物の所望の軟化点を得るために、必要であれば、軟化点を上昇または低下させて好適な生成物が得られるように異なる担体を組み合わせることが可能である。たとえば、軟化点を低下させるために、可塑剤、たとえば、グリセリルモノステアレート、ミリスチルアルコール、ポリソルベート80、プロピレングリコール、またはそれらの組合せを添加することが可能である。軟化点を上昇させるために、硬化剤、たとえば、ビーズワックス、セチルアルコール、ステアリン酸、ステアリルアルコール、アルミニウムモノステアレート、アルミニウムジステアレート、アルミニウムトリステアレート、ベントナイト、マグネシウムステアレート、コロイド二酸化ケイ素、またはそれらの組合せを添加することが可能である。
【0059】
本発明に係る使用に供される担体は、医薬組成物に使用するのに好適でありかつ一定用量の少なくとも1種の治療剤の局所投与を可能にする所望の性質を有する任意の成分を含みうるが、ただし、この成分は、局所適用および経皮投与に好適なものでなければならない。たとえば、担体は、セルロースまたは坐剤に使用するのに好適なタイプの成分よりなる群から選択される1種以上の成分、たとえば、1種以上のグリセリド(たとえば、飽和脂肪酸の1種以上のグリセロールエステルまたは1種以上のポリグリコール化グリセリド、ココア脂、カカオなど)、1種以上の高分子量ポリエチレングリコール、1種以上のポリオキシエチレン、ラノリンおよびその誘導体、ならびに1種以上の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル(たとえば、カプリル酸、カプリル酸トリグリセリドなど)を含みうる。また場合により、前述の成分のいずれかを1種以上の有機油(たとえば水素化植物油など)などと混合することが可能である。
【0060】
本発明に係る医薬組成物に利用される担体は、1種以上のグリセリド、特定的にはC8〜C18脂肪酸の1種以上のグリセロールエステルまたは1種以上のポリグリコール化グリセリドなどを含み、より好ましくは本質的にそれらよりなることが好ましい場合が多い。
【0061】
好適には、本発明に係る医薬組成物の担体は、グリセリドの混合物を含むかまたは本質的にそれらよりなる。ただし、グリセリドは、1種以上のモノ、ジ、またはトリグリセリドでありうる。場合により、グリセリドは、C12〜C18脂肪酸のグリセロールエステルを含む。一実施形態では、グリセリド混合物は、ウィテップゾール(Witepsol)グレードの製品である。より特定的には、担体は、ウィテップゾールH5(Witepsol H5)、ウィテップゾールH15(Witepsol H15)、ウィテップゾールH32(Witepsol H32)、ウィテップゾールS51(Witepsol S51)、ウィテップゾールS55(Witepsol S55)、ウィテップゾールS58(Witepsol S58)、ウィテップゾールW25(Witepsol W25)、およびウィテップゾールW32(Witepsol W32)という商標名のいずれかで入手可能なウィテップゾール(Witepsol)グレードの製品を含みうるかまたは本質的にそれらよりなりうる。とくに好ましい実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、次のウィテップゾールH5(Witepsol H5)、ウィテップゾールH15(Witepsol H15)、ウィテップゾールS51(Witepsol S51)、およびウィテップゾールS55(Witepsol S55)という商標名のいずれかで入手可能なウィテップゾール(Witepsol)グレードの製品である担体を含む。ウィテップゾールH15(Witepsol H15)という商標名で入手可能なウィテップゾール(Witepsol)グレードの製品は、とくに好適である。
【0062】
本発明の特定の実施形態では、組成物に利用される担体は、以上に記載されるウィテップゾール(Witepsol)グレードの製品より実質的に本質的になる。
【0063】
他の選択肢として、担体は、グリセリドの混合物を含むかまたは本質的にそれらよりなる。ただし、グリセリドは、モノ、ジ、およびトリグリセリドよりなる群から選択可能であり、グリセリドは、Cg−Cie脂肪酸のグリセロールエステルまたは1種以上のポリグリコール化グリセリドを含む。一実施形態では、ジェルシール(Gelucire)またはシュポシール(Suppocire)という商標名で入手可能なグリセリド混合物、たとえば、次の製品:ジェルシール33/01(Gelucire 33/01)、ジェルシール39/01(Gelucire 39/01)、ジェルシール43/01(Gelucire 43/01)、ジェルシール44/14(Gelucire 44/14)のいずれか、またはシュポシール(Suppocire)標準タイプ、シュポシール(Suppocire)Nタイプ、もしくはシュポシール(Suppocire)Pタイプの製品のいずれかが使用される。
【0064】
他の選択肢として、本発明に係る医薬組成物に使用される担体は、ココア脂を含むかまたは本質的にそれよりなる。
【0065】
本発明に係る医薬組成物は、適切であれば、1種以上の浸透促進剤(これは、界面活性剤、アルコール、エステル、グリコールなど、または任意の他の好適な浸透促進剤でありうる)、湿潤剤、界面活性剤(これは、陽イオン、非イオン、陰イオン、または高分子でありうる)、乳化剤、抗酸化剤、保存剤、クレー、消泡剤、展延剤、皮膚軟化剤、バリヤー、治療剤用の可溶化剤などのような追加の成分をさらに含みうる。
【0066】
本発明に係る医薬組成物はまた、エタノール、メントール、チモール、ユーカリプトール、ユーカリ油、ベンジルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メタノール変性アルコール、フェノール、シクロデキストリン、エチルオレエート、オイゲノール、グリセロール、レボメノール、モノエタノールアミンオレエート、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、メチルアルコール、ココナツ油、またはシリコーン油のような溶媒をも含みうる。
【0067】
本発明に係る組成物中の溶媒の存在は、治療剤の投与に役立つ。局所適用組成物から治療剤の投与が行われる度合および速度は、皮膚に進入し貫通する治療剤の浸透の深さおよび速度に関連する。本発明に係る組成物中の溶媒の存在は、組成物中の薬剤の可溶化に役立つ。本発明に使用するための溶媒はまた、皮膚層を通過または橋絡するその能力、特定的には、角質層内に位置する角化細胞間の密着帯を通過または橋絡するその能力に基づいて選択される。したがって、本発明における溶媒の存在は、薬剤を可溶化させて皮膚を介する薬剤の拡散を引き起こすことにより、経皮吸収の速度および治療剤の浸透深さを増大させる。
【0068】
本発明に係る医薬組成物は、組成物の官能特性を改良する感覚刺激剤をさらに含みうる。そのような薬剤としては、アーモンド油、グリセロール、アマニ油、モノエタノールアミンオレエート、ブドウ油、メース油、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、パーム核油、カカオ油、およびウールアルコールが挙げられる。感覚刺激剤の組込みは、たとえば、組成物の触感を向上させるために利用可能であり、これにより患者のコンプライアンスを改善しうる。そのほかに、とくに、組成物が炎症皮膚上または発赤皮膚上で使用される場合、そのような薬剤は、プラスの心理的効果を提供可能な知覚冷却効果を有しうる。
【0069】
本発明に係る医薬組成物は、アニス油、シトロネラ油、チョウジ油、ユーカリプトール、ユーカリ油、オイゲノール、ジュニパー油、レモングラス油、レモン油、テルペンレスレモン油(tepeneless lemon oil)、メラレウカ油、ネロリ油、ニクズク油、オリーブ油、オレンジ油、テルペンレスオレンジ油、ケシ種子油、マツ油、ローズ油、セージ油、スペアミント油、ラベンダー油、サイム油、バニリンのような感覚刺激剤をさらに含みうる。
【0070】
そのような刺激剤を組成物中に組み込めば、使用時に心地よい感覚フィードバックを患者に提供することが可能であり、患者および/または製剤適用者は、投与が行われたこと認識することが可能であり、かつ投与の記憶に役立ちうる。そのような因子は、患者のコンプライアンスを改善し、プラスの心理的効果を提供することが可能である。
【0071】
本発明に係る医薬組成物は、シトロネラやレモングラスのような昆虫忌避剤をさらに含みうる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物は、浸透促進剤を実質的に含まない。そのような実施形態では、組成物は、好ましくは、無菌条件下で行われる方法を用いて調製される。
【0073】
保存剤の使用は、敏感な患者でアレルギー反応を引き起こす可能性があるので望ましくないこともある。また、本発明は、そのようなアレルギー反応を引き起こす危険性を回避または低減させるのに有利でありうる。アレルギー反応に関連している保存剤としては、クロロクレゾール、ヒドロキシベンゾエート(パラベン)、ポリソルベート、ソルビン酸などが挙げられる。また、これらの保存剤は、多数の公知の局所組成物、たとえば、次のドラポレン(Drapolene)、メディケイド(Medicaid)、シオペル(Siopel)、スプリロン(Sprilon)、オイラックス(Eurax)、エフコルテラン(Efcortelan)、ミルディゾン(Mildison)、フシジンH(Fucidin H)、ナイスタフォーム(Nystaform)、キノコート(Quinocort)、テラ−コートリルナイスタチン(Terra−Cortril Nystatin)、チモジン(Timodine)、ロコイド(Locoid)、ロコイドクレロ(Locoid Crelo)、モドラゾン(Modrasone)、プロパデルム(Propaderm)、ベトネベート(Betnovate)、ベトネベートRD(Betnovate RD)、ジプロゾン(Diprosone)、デルモベート(Dermovate)、オイモベート(Eumovate)、トリモベート(Trimovate)、ネリソン(Nerisone)、ヒーラン(Haelan)、シナラー(Synalar)、ウルトララナムプレイン(Ultralanum Plain)、ゾラック(Zorac)、カルボ−ドーム(Carbo−Dome)、エキソレックス(Exorex)、ディフェリン(Differin)、およびエクセルダーム(Exelderm)という商標名のいずれかで入手可能な組成物などに含まれている。
【0074】
本発明のとくに好ましい実施形態では、実質的にはこれ以降に記載されるように、医薬組成物は、皮膚投与もしくは経皮投与を目的とした組成物に一般に含まれるタイプの保存剤を実質的に含まないか、または少なくとも、皮膚投与もしくは経皮投与を目的とした組成物に一般に必要とされる量よりも少ない量でそのような保存剤を含むか、または敏感な患者で実質的なアレルギー反応を一般に引き起こさない量でそのような保存剤を含む。
【0075】
皮膚投与または経皮投与を目的とした組成物に一般に利用される保存剤は、そのような組成物の汚染を防止または低減するために含まれている。組成物が反復して大気に触れるかまたは反復して取り扱われる場合、汚染はとくに問題である。組成物がユニット用量の形態をとる場合、特定的には、こうした用量が個別にパッケージングされる場合、保存剤は、本発明に係る組成物に必要でない可能性もある。
【0076】
しかしながら、本発明に係る医薬組成物は、フェノキシエタノールなどのような1種以上の保存剤を含みうる。ただし、保存剤は、典型的には、製造時に本発明に係る組成物の汚染を実質的に防止するために組み込まれるものであり、一般的には、以上に記載したように手で適用することが原因で生じる感染を防止するために利用されるタイプのものではない。
【0077】
本発明のさらなる実施形態では、組成物は、抗酸化剤を実質的に含まない。そのような場合、組成物は、窒素などのような実質的に不活性な雰囲気中でパッケージ化されることが好ましい。
【0078】
抗酸化剤の使用は、敏感な患者でアレルギー反応を引き起こす可能性があり、本発明は、敏感な患者でそのようなアレルギー反応を引き起こす危険性を回避または低減させるのに有利でありうる。アレルギー反応に関連している抗酸化剤としては、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどが挙げられる。こうした酸化剤は、先行技術の局所組成物、たとえば、イムダーム(Imuderm)、シオペル(Siopel)などの商標名のいずれかで入手可能な組成物の形態で利用可能であることが知られている。
【0079】
本発明のとくに好ましい実施形態では、実質的にはこれ以降に記載されるように、医薬組成物は、皮膚投与もしくは経皮投与に供される組成物に一般に含まれるタイプの抗酸化剤を実質的に含まないか、または少なくとも、皮膚投与もしくは経皮投与を目的とした組成物に一般に必要とされるよりも少ない量でそのような抗酸化剤を含むか、または少なくとも、敏感な患者で実質的なアレルギー反応を一般に引き起こさない量でそのような抗酸化剤を含む。
【0080】
抗酸化剤は、皮膚投与または経皮投与を目的とした組成物において、そのような組成物中に存在する脂肪が酸敗するのを防止したり組成物を保持するパッケージが開封された後で組成物の酸化を防止したりするために一般に利用される。組成物がユニット用量の形態をとる場合、特定的には、こうした用量が個別にパッケージングされる場合、抗酸化剤は、本発明に係る組成物に必要でない可能性もある。
【0081】
以上で参照した軟化性組成物の調製方法は、WO 02/00203 A1(その全開示内容が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に開示されている。
【0082】
本発明の特定の実施形態では、組成物は、ユニット製剤の形態をとる。このことは、正確な用量の治療剤を提供しうることを意味し、結果的に、正確な所定用量の治療剤が実際に患者に投与されることを保障するのに役立つ。そのようなユニット製剤は、たとえば、チューブもしくはサシェまたは従来のブリスターパックのような容器中に個別にパッケージング可能である。
【0083】
本発明に係る医薬組成物をこのようにパッケージングすれば、貯蔵寿命が長くなり、医薬組成物の早期の酸化または分解が回避される。パッケージングを窒素雰囲気中で行うことにより、保存時における耐分解性をさらに提供することが可能である。
【0084】
本発明に係る組成物は、少なくとも1種の個別パッケージ化ユニット製剤として提供可能である。とくに好ましい一実施形態では、ユニット製剤は錠剤である。ユニット製剤は、各ユニット用量を分配するために除去可能または破壊可能な包囲体を有するプラスチック容器中に個別に収容可能である。
【0085】
本発明に係る医薬組成物は、製造時、好ましくは固体である。
【0086】
本発明の特定の実施形態では、局所投与に供される医薬組成物は、一回用量以上の1種以上の治療剤と製薬上許容される担体とを含む圧縮された顆粒であり、該圧縮された顆粒は、哺乳動物患者の皮膚温度以下の軟化点を有する。
【0087】
特定の実施形態では、組成物は、局所適用を容易にする形状を有する。たとえば、組成物は、少なくとも1つのフラット表面、少なくとも1つの凹表面、少なくとも1つの凸表面、2つのフラット表面、2つの凹表面、または2つの凸表面を有しうる。組成物は、球状または半球状の標準的錠剤の形態をとりうる。弾丸形状または円錐形状の組成物は、本発明には好ましくない。
【0088】
好ましくは、組成物は、小さい皮膚領域、たとえば、400、300、250、200、150、100、50、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、または0.5mm以下の皮膚領域に接触させるのに好適な表面積を有するように造形される。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物は、ユニット製剤の形態で提供される。ユニット製剤は、好ましくは、医薬製剤および医薬組成物に対する標準的な条件下で貯蔵されるとき実質的に固体である。
【0090】
好ましい実施形態では、ユニット製剤は、約50mg〜約1g、好ましくは約100mg〜約900mg、より好ましくは約250mg〜約750mgの全重量を有する。そうとはいえ、本発明に係るユニット製剤は、所望により、1グラムを超える重量でありうる。
【0091】
本発明に係る固体ユニット製剤は、錠剤化法により調製可能である。典型的には、錠剤化は、少なくとも1種の治療剤と担体との混合物のような流動性組成物を錠剤プレス中に導入して、実質的に固体の形態、典型的には錠剤が得られるように混合物を圧縮することを含む。
【0092】
本発明の実施形態に使用またはそれと併用するのに好適な医薬組成物の調製方法は、少なくとも1種の治療剤と製薬上許容される担体との混合物の少なくとも一部を冷却することを含みうる。ただし、冷却により、混合物の取扱い性を改良することが可能であり、錠剤化の速度を増大させることも可能である。冷却工程は、混合物を製剤の形態に造形する前および/または造形する時に実施可能である。好ましくは、混合物は、造形前および/または造形時、約15℃以下、有利には約10℃以下、たとえば約0℃以下の温度まで冷却される。
【0093】
冷却は、冷却された錠剤プレスを用いることにより少なくとも部分的に実施可能である。追加的または代替的に、錠剤プレス中に導入する前に混合物を冷却することが可能である。
【0094】
担体は、好ましくは、ほぼ周囲温度または室温までの温度(たとえば、20、21、23、24、25、26、27、28、29、または30℃までの温度)で実質的に固体の製剤の形態に混合物を造形することを可能にする。
【0095】
本発明の第2の態様によれば、人体または動物体の皮膚または他の外側領域に本発明の第1の態様に係る医薬組成物を局所適用するためのアプリケーターが提供される。ただし、該アプリケーターは、組成物を皮膚に直接適用できるように医薬組成物を受容および担持する受容手段と、使用者がアプリケーターを保持および操作できるようにするグリップと、を含む。組成物は、ユニット製剤の形態をとりうる。
【0096】
特定の実施形態では、アプリケーターの受容手段は、患者に接触する組成物の露出表面積が400、300、250、200、150、100、50、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、または0.5mm以下になるようにする。
【0097】
好ましくは、そのようなものアプリケーターは、個別密閉パッケージの形態で提供される。
【0098】
特定の実施形態では、受容手段は、医薬組成物をその実質的に固体の形態で、場合によりユニット製剤の形態で収容可能な凹部を規定するように構成される。ただし、凹部の深さは、凹部内に収容される組成物の表面が皮膚に適用するために露出されるように、かつ組成物の該露出面において皮膚との接触により引き起こされる侵食を介して実質的にすべての組成物を適用できるように、自動または手動で調整可能である。これに加えて、特定の実施形態では、アプリケーターは、組成物の露出を制御するために凹部の深さを調整するように作動するアクチュエーターをさらに含む。
【0099】
好ましくは、アプリケーターの凹部内に保持された医薬組成物の露出面は、400、300、250、200、150、100、50、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、または0.5mm以下の表面積を有する。
【0100】
好ましくは、凹部は、組成物の少なくとも非侵食部分を閉じ込めるように、したがって、凹部からの非侵食部分のずれに対する抵抗性を提供するように構成される。より好ましくは、凹部は、組成物の該露出面において皮膚との接触により引き起こされる侵食の結果として生じる変位以外の凹部からの組成物の非侵食部分の変位に抵抗するように構成される。
【0101】
特定の実施形態では、アプリケーターは、受容手段の開口に配設されたバルブを含む。ただし、作動時、バルブは、開口を介して実質的に固体の組成物の接触を可能にする開状態位置と開口を密閉する閉状態位置との間で移動可能である。特定の態様において、アクチュエーターを作動させることにより、閉状態位置から開状態位置にバルブを移動させうる正圧を発生させることが可能である。
【0102】
以上に記載されたアクチュエーターは、好ましくは、使用者が作動させてから片手で組成物を皮膚に適用できるようにアプリケーター上に配置される。好ましい実施形態では、使用者は、作動位置から適用位置まで手の位置を変える必要はなく、手の位置をほとんどまたはまったく変えることなく作動および患者の皮膚への組成物の適用のすべての工程を行うことが可能である。
【0103】
特定の実施形態では、アクチュエーターはボタンを含みうる。また、アクチュエーターは、適用処理時の偶発的作動を最小限に抑えるために、アプリケーターの表面と同一平面をなしうるかまたは凹設可能である。特定の実施形態では、ボタンは、非作動位置と作動位置との間で移動可能である。これに加えて、特定の実施形態は、作動後にボタンを非作動位置に戻るボタンバネ機構を含みうる。
【0104】
作動機構が送りネジを含む場合、送りネジは、好ましくは、容器内の背圧を低下させるように適合化されたラチェットのような機構を含みうる。
【0105】
本発明に記載のアプリケーターに有用なアクチュエーターはまた、受容手段から組成物の面を露出させるための他のタイプの機構をも含みうる。たとえば、アクチュエーターは、ボタンとラックとピニオンと送りネジとを互いに動作連結された状態で含みうる。バネ機構を使用することも可能である。
【0106】
他の実施形態では、アプリケーターの受容手段は、組成物、場合によりユニット製剤を保持するように適合された表面を含み、かつ組成物は、受容手段上に担持可能であるかまたはそれに結合可能である。
【0107】
実質的に固体の組成物は、機械的、物理的、または化学的な手段によりアプリケーターの受容手段に装着可能である。装着は、組成物の特性に依存して、圧力、熱、または接着剤を適用することにより達成可能である。固体組成物、好ましくは固体製剤を所定の位置に固定するのに好適な接着剤としては、ポリジメチルシロキサン、コロジオン、シアノアクリレート、およびアクリル酸ポリマー(たとえばポリアクリルアミドおよびポリメタクリレート)が挙げられる。
【0108】
特定の実施形態では、受容手段の表面は、粗面化可能であるか、または実質的に固体の組成物の少なくとも途中まで進入可能な1つ以上の凸部を含みうる。
【0109】
他の選択肢の実施形態では、組成物の表面を加熱して溶融または軟化させ、その表面を受容手段に接触させ、そして得られた集成体を冷却して組成物の溶融部分または軟化部分を硬化させ、それが受容手段に結合された状態になるようにすることにより、組成物をアプリケーターに結合することが可能である。このことは、受容手段が1つ以上の凸部を含む場合、組成物中へのそのような1つまたは複数の部分の進入が促進されるので、とくに有用である。
【0110】
他の選択肢の実施形態では、アプリケーターは、組成物に装着された媒介部材をも含みうる。またアプリケーターの受容手段は、媒介部材に取外し可能に装着しうるように構成可能である。
【0111】
特定の実施形態では、アプリケーターのグリップは、使用者により保持されるように構成され、ある指と親指との間に保持することにより所望の皮膚領域に組成物を適用すべく使用者がアプリケーターを移動できるようにすることが可能である。本発明におけるアプリケーターは、グリップの少なくとも一部またはグリップの近傍の領域を取り囲むシュラウドをさらに含みうる。ただし、シュラウドは、該領域またはグリップの一部を医薬組成物から遮蔽するように構成され、結果的に、グリップによりアプリケーターを保持する使用者が不注意で組成物に接触することがないようにする。
【0112】
次に、添付の図面を参照しながら単なる例として本発明の実施形態について説明する。
【0113】
図1は、受容手段27とグリップ29とアクチュエーター30とを有するアプリケーター26を示している。ただし、アクチュエーターは、以下の説明に従って部分的に作動されている。受容手段27は凹部32を含む。受容手段は、ユニット用量の面を取り囲んで閉状態になりうる2つのフランジ37をさらに含む。ユニット用量または計量用量の医薬組成物18は、受容手段中の凹部に挿入可能である。バネ35は、グリップのショルダー36とアクチュエーターの末端30との間に配設される。アクチュエーター30を作動させると、バネ35が圧縮され、フランジ37が開放され、受容手段27および開口38を介してユニット用量の移動が可能になり、それにより、皮膚に適用するためのユニット用量の少なくとも1つの面が露出される。アクチュエーター30を解除すると、フランジがユニット用量を取り囲んで閉状態になるので、ユニット用量が所定の位置に保持される。
【0114】
図2は、受容手段2を有するアプリケーター1の他の選択肢の実施形態の外側を示している。グリップ3は、開状態位置でもグリップ3に装着される側面部4を含みうる。これについては、以下でさらに説明する。グリップ3は略円筒形状を有しうる。また、アプリケーター1は手で保持されるようなサイズで作製可能である。ボタン5は、グリップ3の一端に配設可能である。
【0115】
図3に示されるように、1種以上の治療剤と担体とを含みうる医薬組成物6は、円筒状グリップ7内に保持される。ボタン5は、ラック8をその長手方向に変位させてピニオン9を回転させるようにピニオン9と動作連結された状態でラック8に剛連結可能である。ピニオン9は、グリップ7内に長手方向に配設されうる送りネジ10に剛連結可能である。結果的に、送りネジ10は、送りネジ10を回転させてピストン11を送りネジ10の長手方向に変位させるような方法でピストン11に動作連結可能である。
【0116】
ピストン11は、その中心位置の送りネジ10からその外周位置のグリップ7の内壁まで延在可能である。好ましくは、ボタン5の作動時、ラック8を用いてピニオン9および送りネジ10を回転させることにより、ピストン11を上方向に漸進移動させ、医薬組成物6を上方に押進し、それが受容手段2に進入貫通しかつ開口13を貫通するように、ピストン11と送りネジ10およびグリップ7の両方との間にシールを形成する。出口バルブ14は、その閉状態位置で出口開口13を覆う。
【0117】
送りネジ10は、受容手段から遠位にあるその末端で機構16に動作連結可能である。ボタン5が押下されたときに送りネジ10が長手方向上向きに変位し、ボタン5がその完全押下位置に達したときまたはボタン5が逆方向に移動してその元の(作動されていない)位置に戻るときに送りネジ10が下降して再び元の長手方向位置に戻るように、機構16を構成することが可能である。
【0118】
図4a、b、c、およびdに示されるように、アプリケーター17はペン形状でありうる。アプリケーターは、受容手段28を介して取外し可能にユニット用量18に直接装着しうるようにまたはユニット用量18に直接装着された媒介部材19に装着しうるように構成される。受容手段が媒介部材に装着される場合、受容手段は、たとえば、媒介部材19の嵌合穴25中に挿入されるピンを含みうる。使用者は、所望の皮膚領域20上にユニット用量18を適用するためにアプリケーター器具17を用いて媒介部材19を保持しなければならない。ユニット用量18を所望の皮膚領域に適用した後、使用者は、たとえば、アプリケーター17上のレバーを作動させることにより、アプリケーター17から媒介部材19(およびユニット用量18の任意の未使用部分)を廃棄処分することが可能である。
【0119】
図5a、b、および6に示されるように、アプリケーター17は、ワンピース器具を形成するようにアプリケーターに連結された媒介部材21を含みうる。使用者は、ユニット用量の組成物を含有するブリスターパック23から保護層22を引き剥がす。アプリケーター17は使用者により保持され、媒介部材21はブリスターパック内のユニット用量18上に押圧される。媒介部材21はユニット用量18に接着し、使用者は、図5bに示されるように所望の皮膚領域20上にユニット用量18を適用する。ユニット用量を所望の皮膚領域20に適用した後、使用者は、たとえば、流水状態の蛇口24下に保持することにより、媒介部材21およびアプリケーター器具17から過剰の医薬組成物をすべて洗い流す。
【0120】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様に係る医薬組成物とアプリケーターとを含むキットが提供される。好ましくは、アプリケーターは、本発明の第2の態様に基づくものである。
【0121】
一実施形態では、キットは、少なくとも一回用量の医薬組成物と本発明の第2の態様に係る少なくとも1つのアプリケーターとを含む。本発明に係るキットは、使用に供すべく組成物をアプリケーターに結合するための使用説明書を含みうる。
【0122】
本発明の第4の態様において、本発明の第1の態様に係る医薬組成物を局所適用することを含む動物体または人体の治療方法が提供される。
【0123】
特定の実施形態では、本方法は、本発明の第2の態様に係るアプリケーターの使用を含み、アプリケーターのグリップを保持して組成物の面を治療対象の皮膚領域に接触させることを含み、該組成物が該皮膚領域に適用されるようにする。
【0124】
本発明の第5の態様によれば、組成物を局所適用することにより、座瘡、湿疹、乾癬、蕁麻疹、接触皮膚炎、疣贅、もしくはヘルペス、または患者の他の皮膚障害を治療するための本発明の第1の態様に係る医薬組成物が提供される。
【0125】
座瘡、湿疹、乾癬、蕁麻疹、接触皮膚炎、疣贅、もしくはヘルペス、または他の皮膚障害を治療すべく患者の皮膚に局所適用するための医薬の製造における本発明の第1の態様に係る組成物の使用もまた提供される。好ましくは、患者は哺乳動物である。
【0126】
本発明に係る組成物はまた、経口療法と組み合わせて使用することも可能である。一定用量の治療剤の一部をきわめて限局的に局所適用することにより、通常の経口用量よりもかなり少ない用量で効果を発揮することが可能である。二重投与または逐次投与のそのようなシステムは、後続用量の適用の容易さおよび投与される治療剤の量と所与の量の効果との両方の正確なモニタリングをはじめとする多くの利点を有する。このようにすれば、治療効果の改善が達成されるとともに、生じる毒性および副作用が低減されるであろう。
【実施例】
【0127】
次に、以下の実施例により本発明について説明するが、実施例はなんら本発明を限定するものではない。
【0128】
実施例1
成分: %w/w
ソフチザン133(Softisan 133) 83
ドライフロAFヒュア(Dry Flo AF Pure) 9
ミギュロール812N(Migylol 812N) 5
フィトダーム(Fitoderm)(植物スクアレン) 1
ムピロシンカルシウム 2
実施例1の調製方法
ムピロシンカルシウム以外のすべての成分を融解するまで溶落させ、次に、バルクの温度を60℃に保持した。シルバーソン(Silverson)ミキサーを用いてムピロシンカルシウムを注意深く剪断してバルク中に導入した。低温(たとえば4℃)に暴露することによりバルクを固化させた。固化バルクを摩砕して同様に低温(たとえば4℃)で顆粒化した。
【0129】
実施例2
成分: %w/w
ソフチザン133(Softisan 133) 82
ドライフロAFヒュア(Dry Flo AF Pure) 8
ミギュロール812N(Migylol 812N) 5
イソプロピルミリステート 2.5
フィトダーム(Fitoderm)(植物スクアレン) 1.5
ジプロピオン酸ベクロメタゾン(Beclomethsone Dipropionate) 1
実施例2の調製方法
ジプロピオン酸ベクロメタゾンおよびドライフロ以外のすべての成分を融解するまで溶落させ、次に、バルクの温度を60℃に保持した。シルバーソン(Silverson)ミキサーを用いてジプロピオン酸ベクロメタゾンおよびドライフロを注意深く剪断してバルク中に導入した。低温(たとえば4℃)に暴露することによりバルクを固化させた。固化バルクを摩砕して同様に低温(たとえば4℃)で顆粒化した。
【0130】
実施例3
成分: %w/w
ソフチザン133(Softisan 133) 83
ドライフロAFヒュア(Dry Flo AF Pure) 5
ミギュロール812N(Migylol 812N) 2
サリチル酸 10
実施例3の調製方法
サリチル酸およびドライフロ以外のすべての成分を融解するまで溶落させ、次に、バルクの温度を60℃に保持した。シルバーソン(Silverson)ミキサーを用いてサリチル酸およびドライフロを注意深く剪断してバルク中に導入した。低温(たとえば4℃)に暴露することによりバルクを固化させた。固化バルクを摩砕して同様に低温(たとえば4℃)で顆粒化した。
【0131】
実施例4
成分: %w/w
ソフチザン133(Softisan 133) 82.5
ドライフロAFヒュア(Dry Flo AF Pure) 8
ミギュロール812N(Migylol 812N) 5
イソプロピルミリステート 2.5
フィトダーム(Fitoderm)(植物スクアレン) 1.5
ポドフィルム 0.5
実施例4の調製方法
ポドフィルムおよびドライフロ以外のすべての成分を融解するまで溶落させ、次に、バルクの温度を60℃に保持した。シルバーソン(Silverson)ミキサーを用いてポドフィルムおよびドライフロを注意深く剪断してバルク中に導入した。低温(たとえば4℃)に暴露することによりバルクを固化させた。固化バルクを摩砕して同様に低温(たとえば4℃)で顆粒化した。
【0132】
実施例5
成分: %w/w
ソフチザン133(Softisan 133) 82.9〜82.5
ドライフロAFヒュア(Dry Flo AF Pure) 8
ミギュロール812N(Migylol 812N) 5
イソプロピルミリステート 2.5
フィトダーム(Fitoderm)(植物スクアレン) 1.5
カルシピトリオール 0.1〜0.5
実施例5の調製方法
カルシピトリオールおよびドライフロ以外のすべての成分を融解するまで溶落させ、次に、バルクの温度を60℃に保持した。シルバーソン(Silverson)ミキサーを用いてカルシピトリオールおよびドライフロを注意深く剪断してバルク中に導入した。低温(たとえば4℃)に暴露することによりバルクを固化させた。固化バルクを摩砕して同様に低温(たとえば4℃)で顆粒化した。
【0133】
実施例6
成分: %w/w
ソフチザン133(Softisan 133) 83
ドライフロAFヒュア(Dry Flo AF Pure) 10
ミギュロール812N(Migylol 812N) 3.5
フィトダーム(Fitoderm)(植物スクアレン) 1.5
イソトレチノイン 1
ヒドロコルチゾン 1
実施例6の調製方法
イソトレチノイン、ヒドロコルチゾン(ヒドロコルチゾン)、およびドライフロ以外のすべての成分を融解するまで溶落させ、次に、バルクの温度を60℃に保持した。シルバーソン(Silverson)ミキサーを用いてイソトレチノイン、ヒドロコルチゾン(ヒドロコルチゾン)、およびドライフロを注意深く剪断してバルク中に導入した。低温(たとえば4℃)に暴露することによりバルクを固化させた。固化バルクを摩砕して同様に低温(たとえば4℃)で顆粒化した。
【0134】
実施例7
成分: %w/w
ソフチザン133(Softisan 133) 83
ドライフロAFヒュア(Dry Flo AF Pure) 10
ミギュロール812N(Migylol 812N) 4
フィトダーム(Fitoderm)(植物スクアレン) 1
ヒドロコルチゾン 1
フシジン酸 1
実施例7の調製方法
ヒドロコルチゾン、フシジン酸、およびドライフロ以外のすべての成分を融解するまで溶落させ、次に、バルクの温度を60℃に保持した。シルバーソン(Silverson)ミキサーを用いて活性成分およびドライフロを注意深く剪断してバルク中に導入した。低温(たとえば4℃)に暴露することによりバルクを固化させた。固化バルクを摩砕して同様に低温(たとえば4℃)で顆粒化した。
【0135】
パーセントは、合わせた成分の全重量を基準にした重量パーセントである。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、本発明の第2の態様の実施形態に係るアプリケーターの断面図を示している。
【図2】図2は、本発明の第2の態様の他の選択肢の実施形態に係るアプリケーターの図である。
【図3】図3は、図2に示される実施形態の断面図を示している。
【図4】図4a、b、c、およびdは、本発明の第2の態様の他の選択肢の実施形態に係るアプリケーターの図を示している。
【図5】図5aおよびbは、本発明の第2の態様の他の選択肢の実施形態に係るアプリケーターの図を示している。
【図6】図6は、本発明の第2の態様の他の選択肢の実施形態に係るアプリケーターの図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤と製薬上許容される担体とを含む、哺乳動物患者に局所適用するための医薬組成物であって、約25℃以下の温度で固体であり、かつ患者の皮膚との連続的接触時、10分間未満の時間内で、哺乳動物患者の所望の皮膚領域への治療剤の実質的な適用を行える粘稠度まで軟化する、上記組成物。
【請求項2】
前記組成物が固体ユニット製剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物が、皮膚領域に接触する表面領域を有し、該表面領域が、400、300、250、200、150、100、50、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、または0.5mm以下である、先行請求項のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記治療剤が、角質溶解剤、ホルモン調節剤、ステロイド、抗ヒスタミン剤、抗生物質、抗菌剤、抗感染剤、抗微生物剤、抗ウイルス剤、防腐剤、免疫抑制剤、または老化防止剤である、先行請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記治療剤が、ベンゾイルペルオキシド、亜鉛、ビタミンD類似体、5−フルオロウラシル、サリチル酸、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、硝酸銀、イミキモド、またはポドフィルムである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
抗微生物剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、防腐剤、抗菌剤、皮膚清浄剤、免疫抑制剤、および/または抗生物質をさらに含む、請求項4または5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
1種以上の溶媒をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記溶媒が、エタノール、メントール、チモール、ユーカリプトール、ユーカリ油、ベンジルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メタノール変性アルコール、フェノール、シクロデキストリン、エチルオレエート、オイゲノール、グリセロール、レボメノール、モノエタノールアミンオレエート、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、メチルアルコール、ココナツ油、および/またはシリコーン油である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記治療剤が、皮膚への適用後、約10分間未満、約5分間未満、約3分間未満、または約1分間未満の時間内で吸収される、先行請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、治療剤と製薬上許容される担体媒体との圧縮された顆粒を含み、かつ該圧縮された顆粒が、哺乳動物患者の皮膚温度以下の軟化点を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、製薬上許容される担体媒体と混合された治療剤を含む複数の実質的に固体の粒子を含み、該粒子が、哺乳動物患者の皮膚温度以下の軟化点を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記担体が、1種以上のグリセリド、ココア脂、カカオ、1種以上の高分子量ポリエチレングリコール、1種以上のポリオキシエチレン、ラノリンおよびその誘導体、ならびに1種以上の脂肪酸、脂肪アルコール、および脂肪酸エステル、1種以上の有機油、または1種以上のグリセリドである、先行請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が保存剤を実質的に含まない、先行請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
調製時に組成物の汚染を防止または低減する1種以上の保存剤をさらに含む、請求項1〜12に記載のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
抗酸化剤を実質的に含まない、先行請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物が、前記医薬組成物の重量を基準にして約60重量%以上、約80重量%以上、または約90重量%以上の担体を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物が剥脱剤をさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
先行請求項のいずれか1項に記載の医薬組成物を適用するためのアプリケーター。
【請求項19】
前記組成物を皮膚に直接適用しうるように前記医薬組成物を受容および担持する受容手段と、使用者が前記アプリケーターを保持および操作できるようにするためのグリップと、を含む、請求項18に記載のアプリケーター。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の少なくとも一回用量の医薬組成物と、請求項18または19に記載のアプリケーターと、を含むキット。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物を局所適用することを含む、動物体または人体の治療方法。
【請求項22】
座瘡、湿疹、乾癬、蕁麻疹、接触皮膚炎、皮膚癌、感染、または他の皮膚病状を治療するための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
座瘡、湿疹、乾癬、蕁麻疹、接触皮膚炎、皮膚癌、感染、または他の皮膚病状を治療するための、請求項18または19に記載のアプリケーター。
【請求項24】
前記組成物が、経口療法と組み合わせて哺乳動物患者への投与に供される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記経口療法が、1種以上の角質溶解剤、ホルモン調節剤、ステロイド、抗ヒスタミン剤、抗生物質、抗菌剤、抗感染剤、抗微生物剤、抗ウイルス剤、防腐剤、または免疫抑制剤を含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
実質的に実施例のいずれか1つにおいて本明細書に記載の医薬組成物または医薬製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2009−518375(P2009−518375A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543916(P2008−543916)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050435
【国際公開番号】WO2007/066149
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508170508)ファーマコデックス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】