説明

局所的加熱装置及び方法

【課題】被加熱材の所要加熱温度が異なる任意形状の加熱部位ごとに、領域設定及び所要加熱温度までの加熱を迅速かつ精度良く行う加熱装置及び加熱方法を提供すること。
【解決手段】電磁波の照射により被加熱材を加熱する加熱装置及び加熱方法であって、該照射線を遮蔽、吸収及び/又は反射するとともに、所定パターンプロフィルを有するプレート材を少なくとも部分的に、該被加熱材に近接して配置可能にした加熱装置及び加熱方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所的加熱装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用部品においては、厚さを薄くしてなおかつ高強度を持つ部材を用いることにより、安全性と経済性の両立を図っている。このような目的のため、高温に加熱した鋼板を低温のプレス金型で冷却して焼入れを行う、いわゆる熱間プレス(ダイクエンチ、ホットフォーミング)が知られている。この工法は、鋼板をオーステナイト化温度以上に加熱し、プレス金型で成形と同時に急速冷却して焼入れを行うものである。
【0003】
熱間プレスを行う場合の加熱方法としては、通常の炉内加熱の他、高速加熱が可能な通電加熱やブロックヒータ等が知られている。また、自動車部品の熱間プレスのための加熱炉に、近赤外線加熱を用いる技術が特許文献1に開示されている。なお、赤外線を電子回路部品のごく微小範囲の補助加熱用に用いた技術が特許文献2、3に開示されている。
【0004】
また、特許文献4には、1つの加熱炉内に仕切りを設け、仕切りで区切られた領域を異なる温度で加熱することができるワーク用加熱炉が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−314874号公報
【特許文献2】特開平5−45607号公報
【特許文献3】特開2001−44618号公報
【特許文献4】特開2002−241835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし一方では、この熱間プレスで得られる鋼板は強度が高いが故に、その後の加工が焼入れ前の鋼板に比べて困難になるという問題もある。そのため、熱間プレスにおいても、製品性能や加工工程の最適化のために、部分的な焼入れや、逆に部分的に焼入れを行わない部位を設けるという部分的な熱処理のニーズが高まってきている。その場合、部分加熱する部位は要求に合わせて任意形状かつ極小範囲とする必要がある。
【0007】
このようなニーズのためには、従来の加熱炉や通電加熱では対応できず、それは特許文献1に記載の加熱炉においても同様である。また、特許文献4に記載の技術のように炉内に仕切りを設けても任意の形状に仕切りをすることは困難で、高温部と低温部との境界の温度徐変部も広くなってしまう。
【0008】
高速加熱法の一つとして近赤外線による加熱法がある。赤外線加熱は赤外線ランプの加熱温度を任意に設定することが可能であり、被加熱材を部分的に加熱でき、加熱温度を部分的に変化させることも可能であると考えられる。
【0009】
しかし発明者らの知見によれば、赤外線を用いて部分加熱を行う場合、加熱源を複数用意し、所要の形状に配置してそれぞれごとに加熱温度を調節する必要がある。さらにその場合でも直線状の部分加熱のみが限界であり、さらに温度境界部の位置を確実に制御することは困難であった。また、高温部と低温部との境界の温度徐変部も非常に広く、実用的な範囲まで狭くすることはできなかった。
【0010】
本発明の課題は、被加熱材の所要加熱温度が異なる任意形状の加熱部位ごとに、領域設定及び所要加熱温度までの加熱を迅速かつ精度良く行うことができ、かつ領域間の温度の徐変部位即ち温度が変化する領域を実用的レベルまで小さくすることができる加熱装置及び加熱方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、電磁波の照射により被加熱材を加熱する加熱装置及び加熱方法であって、該照射線を遮蔽、吸収及び/又は反射するとともに、所定パターンプロフィルを有するプレート材を、少なくとも部分的に、該被加熱材に近接して配置可能にしたことを特徴とする、加熱装置及び加熱方法によって解決される。
【0012】
被加熱材としては、典型的には、鉄鋼材及び鋼板(シート状鋼板又は立体成形されたもの)などの鋼材であり、非鉄金属、合金及び複合材なども含まれる。加熱に用いられる電磁波としては、赤外線、マイクロ波、レーザ等が考えられる。特に、近赤外線は多種の金属に対して迅速な加熱が可能である。また、これらの電磁波を遮蔽、吸収及び/又は反射する部材としては、セラミック、アスベスト等の絶縁体や、ゴールド反射ミラー等の反射ミラーや反射材が考えられる。
【0013】
本発明の他の視点は、上記のいずれかの加熱装置に用いる、加熱用電磁波を遮蔽、吸収及び/又は反射するとともに、所定パターンプロフィルを有するプレート材である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、被加熱材の所要加熱温度が異なる任意形状の加熱部位ごとに、領域設定及び所要加熱温度までの加熱を迅速かつ精度良く行うことができ、かつ領域間の温度徐変部位即ち温度が変化する領域を実用的レベルまで小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る加熱装置は、複数の前記照射線の発生装置を配列し、各該発生装置ごとに加熱能力を調節できることが好ましい。これにより、熱遮蔽プレート等のプレート材と組み合わせることにより、任意の範囲の高温加熱部と低温加熱部を設定できる。
【0016】
また、複数の前記発生装置を前記被加熱材の周囲に2次元的又は3次元的に配列し、それに対応して前記プレート材を該発生装置と該被加熱材との間に2次元的又は3次元的に配置することが好ましい。これにより、立体形状の被加熱材をも加熱することができる。
【0017】
前記発生装置は近赤外線発生装置であり、前記プレート材は近赤外線を遮蔽、吸収及び/又は反射する材料から構成することができる。
【0018】
前記プレート材は、セラミック、照射線遮蔽能力を有する繊維状物質若しくはこれらの複合材及び反射ミラーのうちのいずれか1以上から構成することができる。
【0019】
前記プレート材は、被加熱材の所望の加熱形状に合わせて2次元的又は3次元的に形成された1以上の部材から構成されることが好ましい。
【0020】
前記被加熱材は、鋼板又は該鋼板を立体的に成形した加工成形品とすることができる。特に、自動車部材用鋼板を好適に用いることができる。
【0021】
前記発生装置とは異なる前記被加熱材の照射線源をさらに有することができる。
【0022】
前記プレート材は、ステーにより保持され、前記被加熱材の表面に接触しないで配置され、又は前記被加熱材の表面に接触して配置されるようにすることができる。
【0023】
前記照射線発生装置は、中赤外線発生装置、遠赤外線発生装置、マイクロ波発生装置、レーザ発生装置のうちのいずれかであり、前記プレート材はそれぞれの電磁波を遮蔽、吸収及び/又は反射する材料から構成することができる。
【0024】
また、鋼材である被加熱材全体をオーステナイト化温度未満の低温で加熱するとともに、所要の部位のみをオーステナイト化温度より高い温度に加熱することができる。これにより、高温加熱部の加熱時間を短縮できるとともに、形状保持性も高めることができる。
【実施例】
【0025】
以下に図面及び実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、その前に、本発明の特徴を明確化するために発明者らによる知見について述べる。
【0026】
図6は、被加熱材(ここでは平板状鋼板)を部分的に加熱する場合の発明者らによる関連技術の一例である。図6(a)は、図6(b)のA−A断面による断面図、図(b)は平面図である。被加熱材3は、上下に配置された多数の近赤外線ランプ1から照射される赤外線2により加熱される。近赤外線ランプ1は個別に加熱温度の設定が可能で、ランプの設定温度を高温設定部1a、低温設定部1bのように分けることで、被加熱材3を高温加熱部5と低温加熱部6のように異なった温度で部分加熱することが可能である。
【0027】
図6(c)は、被加熱材の温度分布図である。図6(d)はこの被加熱材を熱間プレスしたホットフォーミング製品である。高温加熱部5はホットフォーミング工程でオーステナイト化温度以上(約800℃以上が好ましい)に加熱して焼入れされることで高強度部5に、低温加熱部6はオーステナイト化温度未満(約700℃以下が好ましい)で加熱して焼入れされないことで低強度部6になる。製品の低強度部、高強度部は衝突時のエネルギー吸収性能を最適化するために、温度境界線即ち強度境界線の位置を高精度で設定すること、温度徐変部即ち強度徐変部を出来るだけ狭い範囲とすることが必要である。しかしながら、高温赤外線2aの低温部への干渉が発生し、温度徐変部7が広範囲で発生し、低温−高温の温度境界線の位置を高精度で設定することが出来なかった。また、温度境界線は赤外線ランプ1の形状に沿って直線状にしか設定することが出来なかった。
【0028】
図7は、本発明の関連技術による、局部的に高温部を設ける加熱装置及び方法を示す。被加熱材3は上下に配置した高温設定赤外線ランプ1a、低温設定赤外線ランプ1bにより加熱される。部分的に高温に加熱したい部位5に沿って高温加熱設定の赤外線ランプ1aを配置することで局部的に高温加熱部5を設定することが可能である。しかしながら、局部加熱部位は赤外線ランプの形状に沿った形状にしか設定できず、図6に示す部分加熱と同様に、温度徐変部7が広範囲となり、温度境界はあまりはっきりしなかった。
【0029】
図8は、本発明の関連技術による、局部的に低温部を設ける局部加熱方法を示す。被加熱材3は上下に配置した赤外線ランプ1a,1bにより加熱される。部分的に低温に加熱したい部位6に沿って低温加熱設定の赤外線ランプ1bを配置することで局部的に低温加熱部6を設定することが可能である。しかしながら、局部加熱部位は赤外線ランプの形状に沿った形状にしか設定できず、図6に示す部分加熱と同様に、温度徐変部7が広範囲になり、温度境界はあまりはっきりしなかった。
【0030】
(実施例1)
図1は、本発明に係る加熱装置の一実施例を示す断面図及び平面図である。図1(a)は、図1(b)のA−A断面における断面図であり、図1(b)は、図1(a)のB−B方向から見た平面図である。従って図1(b)には、上側近赤外線ランプ1は図示されていない。被加熱材3は上下に配置された複数の近赤外線ランプ1から照射される近赤外線2により加熱される。これらの近赤外線ランプは、加熱温度を調節設定することができる。図1(a)に示すように、上側近赤外線ランプ1を高温設定部1a、低温設定部1bに分け、下側近赤外線ランプ1を高温設定部1c、低温設定部1dに分ける。そして被加熱材3と上側近赤外線ランプ1との間に、図1(b)に示すように、所用の温度境界形状に合わせて形成された熱遮蔽プレート10を設置して加熱を行う。
【0031】
図1(a)に示すように、温度境界範囲22では、上側近赤外線ランプは高温設定部1a、下側近赤外線ランプは低温設定部1dとなっており、被加熱材3の下面は全体が低温赤外線(強度の弱い赤外線)2bで加熱される。被加熱材3の上面は、熱遮蔽プレート10の無い部分は高温赤外線(強度が大きい赤外線)2aにより加熱される。熱遮蔽プレート10がある部分では、高温赤外線2a’は熱遮蔽プレート10に遮られて、被加熱材3には到達せず、高温には加熟されない。しかしながら、この部位は下側から低温赤外線2bで加熱される。このため、被加熱材3は図1(c)に示すように熱遮蔽プレート10に沿った形状の温度境界22aを境界として、高温加熱部21は高温で、低温加熱部23は低温で加熱される。
【0032】
温度境界22a近辺では上側からの高温赤外線2a’は熱遮蔽プレート10に遮られるため、低温加熱部23に干渉することが無い。このため、温度境界22aは位置精度良く設定でき、かつ温度境界22a周辺の温度徐変部も十分小さくすることが可能である。温度境界22aを任意形状に設定できることは、ホットフォーミング製品の要求性能に応じて自由に高強度部、低強度部を設定できることになり、製品性能の最適化、製品設計の自由度向上に有利である。
【0033】
本実施例においては、熱間プレスにより強度を持たせたい部位は、オーステナイト化温度以上(約800℃以上が好ましい)の高温に加熱し、それ以外の部分全体をオーステナイト化温度より低い温度で下側からも含めて加熱している。これにより、高温加熱部の加熱時間を短縮化できるとともに、被加熱材の成形後のスプリングバックが少ない、即ち形状保持性が高まるという効果がある。
【0034】
図4(a)にこの方法の自動車用部材への適用例を示す。ホットフォーミング製品(Bピラー)39では、ホットフォーミングの際にオーステナイト化温度以上(約800℃以上が好ましい)の高温に加熱し焼入れを行い高強度とする部位42と、オーステナイト化温度未満(約700℃以下が好ましい)の低温で加熱し焼入れを行わずに高延性をもたせた部位40を設けることが衝突時のエネルギー吸収の向上など、製品性能の向上に有利である。また、温度境界41は本発明では任意の形状に設定でき、製品性能の最適化、製品設計の自由度を向上できる。温度境界41の位置精度、周辺の温度徐変範囲も小さいことから、製品性能も安定する。
【0035】
(実施例2)
図2に、本発明に係る加熱装置の一実施例及びそれを用いた局部低温加熱方法を示す。図2(a)は、図2(b)のA−A断面における断面図であり、図2(b)は、図2(a)のB−B方向から見た平面図である。基本的な考え方は実施例1と同様である。被加熱材3は上下に複数配置した赤外線ランプ1により加熱される。上側近赤外線ランプを高温設定1aに、下側近赤外線ランプを低温設定1bとし、被加熱材3と上側近赤外線ランプ1との間に、図2(b)に示すように熱遮蔽プレート10を配置して加熱する。この場合の熱遮蔽プレート10は、被加熱材よりやや小さい相似形で、高温加熱しない周辺部分を残して内側を切り欠いた形状である。
【0036】
これにより、図2(c)に示すように低温加熱部23は、上面の高温設定の上側近赤外線ランプ1から照射される高温赤外線2a’が局部熱遮蔽プレート10に遮られ高温には加熱されないが、下面は下側近赤外線ランプ1から照射される低温赤外線2bにより加熱されるため、低温設定の温度に加熱される。
【0037】
高温加熱部21(局部熱遮蔽プレート10の無い部分)は、上面は高温設定の上側赤外線ランプ1から照射される高温赤外線2aにより高温設定の温度に加熱される。また。この高温加熱部位21の下面は下側近赤外線ランプ1から照射される低温赤外線2bによっても加熱されるため、加熱時間が短縮される。高温赤外線2a’は局部熱遮蔽プレート10の形状に沿って遮られるため、低温加熱部23への干渉は無く、高温加熱部21との境界を精度位置良く設定でき、その周辺の温度徐変部位も少なくすることが可能となる。また、局部熱遮蔽プレート10を任意の形状とすることで、低温加熱部23を任意の形状に設定することが可能である。
【0038】
図4(b)にこの方法の自動車用部材への適用例を示す。ホットフォーミング製品(Bピラー)43では、ホットフォーミング後に切断線46で最終製品形状に切断が必要となる。切断線46の周辺のみに低温加熱部44を設けることで、この部位のみホットフォーミング後に低硬度となり、刃具による切断が容易となる。本発明によれば、低温加熱部44は必要な切断線46に沿って任意の形状に設定が可能である。さらに、位置精度良く、周辺の高温加熱部(高硬度部)45への影響を少なくして低温加熱部位44を設定することが可能である。
【0039】
(実施例3)
図3は、本発明に係る加熱装置の一実施例及びそれを用いた局部高温加熱方法を示す。図3(a)は、図3(b)のA−A断面における断面図であり、図3(b)は、図3(a)のB−B方向から見た平面図である。基本的な考え方は実施例1と同様である。被加熱材3は上下に複数配置した近赤外線ランプ1により加熱される。上側近赤外線ランプ1を部分的に高温設定部1aと低温設定部1bに、下側近赤外線ランプ1を低温設定部1bとする。図3(b)に示すように、被加熱材3と上側近赤外線ランプ1との間に、高温加熱部21の形状を切り欠いた熱遮蔽プレート10を配置して加熱することにより、図3(c)に示すように高温加熱部21のみ上面から高温赤外線2aにより高温に加熱される。
【0040】
周辺の低温加熱部23は、上面からの高温赤外線2a’が熱遮蔽プレート10で遮られるため高温設定温度には加熱されず、下面から低温設定の下側近赤外線ランプ1から照射される低温赤外線2bにより低温設定温度に加熱される。その他の部位は上側、下側の両側から低温赤外線2bにより低温設定温度に加熱される。
【0041】
高温赤外線2a’は熱遮蔽プレート10の形状に沿って遮られるため、低温加熱部23への干渉は無く、高温加熱部21との境界線を精度位置良く設定でき、その周辺の温度徐変部位も少なくすることが可能である。また、熱遮蔽プレート10の切欠きを任意の形状とすることで、高温加熱部21を任意の形状に設定することが可能である。
【0042】
図4(c)に自動車用部材への適用例を示す。ホットフォーミング製品(Bピラー)47では、C−C断面図に示すように強度が必要とされる稜線部48のみをオーステナイト化温度以上(約800℃以上が好ましい)に加熱し、焼入れを行い高強度とすることも可能である。このように、製品の要求特性に合わせて、一部分のみを高温に加熱し、ホットフォーミングで焼入れし、高強度とすることが可能となる。
【0043】
上記の実施例では、被加熱材はいずれも平板状のものを用いているが、本発明においては立体形状の被加熱材も用いることができる。即ち、冷間成形又は熱間成形である程度立体的に成形した加工品を、本発明に係る加熱装置によりさらに加熱することができる。この場合、赤外線ランプのような照射線(電磁波)発生装置を被加熱材の周囲に立体的に配置し、被加熱材と電磁波発生装置との間に熱遮蔽プレートを立体的に配置する。
【0044】
熱遮蔽プレートは、赤外線を透過せずに遮断することができ、加熱されにくい材質、例えばセラミックプレートやアスベストプレートなどが好適に使用できる。また、必要に応じて熱遮蔽プレートに冷却装置を設けてもよい。もしくは、プレート表面を、赤外線を反射するようゴールド反射ミラーなどの鏡面構造とした構造でもよい。また、熱遮蔽プレートはいくつかの部材を組み合わせて構成することができる。
【0045】
上記の実施例では、加熱効率を高めること及び成形後の形状保持性を良くするため、高温加熱部以外の部分にも低温で赤外線加熱を行っている。しかし高温加熱部のみを加熱するようにしても良い。また、赤外線加熱に限らず、電磁波発生装置とその電磁波を遮蔽する熱遮蔽プレートを適宜組み合わせて使用することができる。また、電磁波発生装置に加えて、他の加熱手段を組み合わせてもよい。
【0046】
(実施例4)
図5は、本発明に係る加熱装置を自動車部材鋼板のホットプレス用加熱装置に適用した設備構成の一例を示す。図5(a)は断面図、(b)は平面図である。熱遮蔽プレート10は、近赤外線発生装置(ランプ)を用いた加熱装置フレーム53にステー54で固定されている。熱遮蔽プレート10は、被加熱材3と離して配置してもよいし、接触させて配置しても良い。図5(b)に示すように、被加熱材3を55の方向から搬入し、加熱装置により加熱後、56の方向へ搬出する。1枚の熱遮蔽プレート10を用いて鋼板の連続的な加熱処理が可能である。
【0047】
熱遮蔽プレート10は取替え可能な構造となっており、熱遮蔽プレート10を取替えることにより、近赤外線ランプ自体を変更することなく、異なる加熱パターンで加熱することが可能である。また、近赤外線により加熱可能な多種の被加熱材を加熱することが可能であり、汎用性に優れている。また、赤外線ランプは配列を変える必要がないので、従来のような配列段替え作業が不要で作業性にも優れている。
【0048】
以上、本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものではなく、本発明の範囲内で当業者であればなしうるであろう各種変形、修正を含むことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る加熱装置の一実施例の平面図及び断面図である。
【図2】本発明に係る加熱装置の他の実施例の平面図及び断面図である。
【図3】本発明に係る加熱装置のさらに他の実施例の平面図及び断面図である。
【図4】図1〜3の加熱装置により加熱(又は成形)された製品の例である。
【図5】本発明に係る加熱装置の設備構成の一実施例である。
【図6】本発明に関連する加熱技術を示す平面図及び断面図である。
【図7】本発明に関連する加熱技術を示す平面図及び断面図である。
【図8】本発明に関連する加熱技術を示す平面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 近赤外線ランプ
1a、1c 高温設定部の近赤外線ランプ
1b、1d 低温設定部の近赤外線ランプ
2 近赤外線
2a 高温設定部ランプから放射される(遮蔽されない)赤外線(高温赤外線)
2a’ 熱遮蔽プレートに遮蔽される赤外線
2b 低温設定部ランプから放射される赤外線(低温赤外線)
3 被加熱材
5 高温加熱部(高強度部)
6 低温加熱部(低強度部)
7 温度徐変部
10 熱遮蔽プレート(プレート材)
21 高温加熱部
22 温度境界範囲
22a 温度境界
23 低温加熱部
39、43、47 ホットフォーミング製品
42、45、48 高温加熱部(高硬度部)
40、44 低温加熱部(低硬度部)
46 切断線
53 装置フレーム
54 ステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の照射により被加熱材を加熱する加熱装置であって、該照射線を遮蔽、吸収及び/又は反射するとともに、所定パターンプロフィルを有するプレート材を、少なくとも部分的に、該被加熱材に近接して配置可能にしたことを特徴とする、加熱装置。
【請求項2】
複数の前記照射線の発生装置を配列し、各該発生装置ごとに加熱能力を調節できることを特徴とする、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
複数の前記発生装置を前記被加熱材の周囲に2次元的又は3次元的に配列し、それに対応して前記プレート材を該発生装置と該被加熱材との間に2次元的又は3次元的に配置したことを特徴とする、請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記発生装置は近赤外線発生装置であり、前記プレート材は近赤外線を遮蔽、吸収及び/又は反射する材料からなることを特徴とする、請求項2又は3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記プレート材は、セラミック、照射線遮蔽能力を有する繊維状物質若しくはこれらの複合材及び反射ミラーのうちのいずれか1以上からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記プレート材は、被加熱材の所望の加熱形状に合わせて2次元的又は3次元的に形成された1以上の部材からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記被加熱材は、鋼板又は該鋼板を立体的に成形した加工成形品であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記発生装置とは異なる前記被加熱材の照射線源をさらに有することを特徴とする、請求項2〜7のいずれか一に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記プレート材は、ステーにより保持され、前記被加熱材の表面に接触しないで配置されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記プレート材は、前記被加熱材の表面に接触して配置されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記発生装置は、中赤外線発生装置、遠赤外線発生装置、マイクロ波発生装置、レーザ発生装置のうちのいずれかであり、前記プレート材はそれぞれの電磁波を遮蔽、吸収及び/又は反射する材料からなることを特徴とする、請求項2又は3に記載の加熱装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一に記載の加熱装置に用いる、加熱用電磁波を遮蔽、吸収及び/又は反射するとともに、所定パターンプロフィルを有するプレート材。
【請求項13】
電磁波の照射により被加熱材を加熱する加熱方法であって、該被加熱材と該照射線の発生装置との間に該照射線を遮蔽、吸収及び/又は反射するとともに、所定パターンプロフィルを有するプレート材を少なくとも部分的に配置することを特徴とする、加熱方法。
【請求項14】
鋼材である被加熱材全体をオーステナイト化温度未満の低温で加熱するとともに、所要の部位のみをオーステナイト化温度より高い温度に加熱することを特徴とする、請求項13に記載の加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−44875(P2010−44875A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206261(P2008−206261)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】