説明

屋上支持構造

【課題】ソーラパネルや太陽光温水パネルなどの様々な種類の屋上設置物を容易かつ的確に屋根瓦上に支持することができる屋上支持構造を提供する。
【解決手段】屋上支持構造10は、瓦11を貫通して野地板12上に立設された支持ポスト13と、ソーラパネルP1を支持ポスト13に係止するため、屋根勾配方向R及び水平方向に係止位置変更な状態で支持ポスト13に取り付けられた設置物係止手段14と、を備えている。設置物支持手段14は、支持ポスト13で支持されたスライドガイド19に装着されたスライドブラケット20と、これにソーラパネルP1を係止するためスライドブラケット20に装着された取付ブラケット21と、を備えている。スライドブラケット20はスライドガイド19に沿って屋根勾配方向Rに位置変更可能であり、取付ブラケット21はスライドブラケット20に沿って水平方向に位置変更可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓦葺き屋根上に、ソーラパネル、太陽光温水パネルあるいは物干し台などを設置する際に使用される屋上支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
瓦葺き屋根の上に、ソーラパネルや太陽光温水パネルなどの屋上設置物を設置する際の支持構造については、従来、様々な方式が提案されているが、本願発明に関連するものとして、瓦を貫通して屋根下地材上に立設された支持ボルトを利用した屋根上載置物用ラック取付構造がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1記載の屋根上載置物用ラック取付構造においては、ラックと支持ボルトとの間にラック取付プレート介在させることにより、積雪などの大きな鉛直荷重がラックに作用したとき支持ボルトに作用する曲げモーメントが軽減されるので、ラック取付金具を固定するくぎやねじなどの締着具や瓦の破損を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−315018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ソーラパネルや太陽光温水パネルなどの屋上設置物のサイズや形状はメーカーや年式によって異なり、瓦葺き屋根を形成する瓦のサイズや形状も一定ではないので、実際にソーラパネルや太陽光温水パネルなどを設置する工事においては、屋上設置物及び施工現場に対応した屋上支持構造を構築しなければならない。
【0006】
このため、個々の屋上設置物や施工現場に合わせて設置部材を調達したり、屋根上での位置合わせなどの高所作業を行ったりする必要があり、多くの労力と資材が費やされている。このような問題は、特許文献1記載の屋根上載置物用ラック取付構造などを採用しても完全に解決することはできない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、様々な種類の屋上設置物を容易かつ的確に屋根瓦上に支持することができる屋上支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の屋上支持構造は、ソーラパネル、太陽光温水パネルなどの屋上設置物を建物の屋根瓦上に支持するための屋上支持構造であって、
瓦を貫通して建物の野地板上に立設された支持ポストと、屋上設置物を前記支持ポストに係止するため、少なくとも屋根勾配方向及びこれと直交する水平方向に係止位置変更な状態で前記支持ポストに取り付けられた設置物係止手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記設置物支持手段が、前記支持ポストで支持されたスライドガイドと、前記スライドガイドに装着されたスライドブラケットと、屋上設置物を前記スライドブラケットに係止するため前記スライドブラケットに装着された取付ブラケットと、を備え、前記スライドブラケットが前記スライドガイドに沿って前記屋根勾配方向に位置変更可能であり、前記取付ブラケットが前記スライドブラケットに沿って前記水平方向に位置変更可能であることが望ましい。
【0010】
また、前記スライドガイド部材が、前記屋根勾配方向に間隔をおいて配置された複数の前記支持ポストで支持されることが望ましい。
【0011】
一方、前述した屋上支持構造を使用して複数の屋上設置物を並設するとき、隣り合う屋上設置物同士の相対的に拘束する位置決め機構を設けることもできる。
【0012】
この場合、前記位置決め機構は、一方の屋上設置物側の前記スライドブラケットに突設されたテーパ部を有するガイド部材と、前記ガイド部材を挿入させるため他方の屋上設置物側の前記取付ブラケットに開設された孔部と、で構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、様々な種類の屋上設置物を容易かつ的確に屋根瓦上に支持することができる屋上支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施形態である屋上支持構造を示す側面図である。
【図2】図1に示す屋上支持構造の正面図である。
【図3】本発明の第二実施形態である屋上支持構造を示す側面図である。
【図4】本発明の第三実施形態である屋上支持構造を示す側面図である。
【図5】図4に示す屋上支持構造の正面図である。
【図6】(a)は図4に示す屋上支持構造を構成する取付プレートを示す平面図であり、(b)は前記(a)に示す取付プレートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1,図2に示すように、屋上支持構造10は、屋上設置物の一つであるソーラパネルP1,P2を瓦葺き屋根27の瓦11上に設置するためのものであり、瓦11を貫通して建物の野地板12上に立設された複数の支持ポスト13と、ソーラパネルP1を支持ポスト13に係止するため、少なくとも屋根勾配方向R及びこれと直交する水平方向Hに係止位置変更な状態で支持ポスト13上に取り付けられた設置物係止手段14と、を備えている。
【0016】
支持ポスト13は、瓦11に開設された孔11aを貫通し、取付プレート15を介して野地板12上に立設された支柱部13aと、支柱部13a外周に形成された雄ネジ部13bに螺着されたナット13cと、支柱部13b上に連設された把持部13dとを備え、把持部13dには把持溝13eが設けられている。取付プレート15は複数のネジ28によって野地板12上に固定され、複数の支持ポスト13は、それぞれの支柱部13aの下端面を1枚の取付プレート15の上面に当接させた状態で立設されている。
【0017】
支持ポスト13の把持溝13eの底部と支柱部13aの下端面との間には、支柱部13aの軸心と同軸をなす貫通孔13fが開設されている。把持溝13eの底部側から貫通孔13fに挿入したボルト16の先端部を、取付プレート15を貫通して野地板12に螺着することによって支持ポスト13が起立姿勢で固定されている。支持ポスト13の支柱部13aにおける瓦11の表面11bとナット13cとの間にはワッシャ17及びパッキン18が介在されている。パッキン18はEPDM発泡材で形成され、パッキン18が約70%(厚さ比)以上収縮する程度まで、ナット13cを瓦11の表面11bに向かって締め付ければ、瓦11の孔11aへの雨水浸入を防止することができる。
【0018】
設置物支持手段14は、屋根勾配方向Rに間隔をおいて配置された2本の支持ポスト13で支持されたスライドガイド19と、スライドガイド19に装着されたスライドブラケット20と、ソーラパネルP1をスライドブラケット20に係止するためスライドブラケット20に着脱可能に装着された取付ブラケット21と、を備えている。
【0019】
スライドガイド19は略長方形状の平板状部材であり、その下縁側に形成された膨出部19aを2本の支持ポスト13の把持溝13e内に挟み込み、把持部13及び膨出部19aを貫通するボルト23によって締め付けられている。その長手方向に沿って長孔19bが開設され、長孔19bの長径方向が屋根勾配方向Rと略平行をなすように配置されている。スライドガイド19の上縁側の最下部分には、上方に突出したストッパ部19cが形成されている。
【0020】
スライドブラケット20は、正面視形状が略Π字状をなす平板状の部材であり、スライドガイド19を跨ぐように形成された一対の脚部20a,20bと、その上方に連設された係止部20cと、を備えている。スライドブラケット20は、その係止部20cの平面方向が水平方向Hと平行をなすように配置され、スライドガイド19を跨ぐ一対の脚部20a,20bの一方から他方に向かって長孔19bを貫通して螺着されたボルト22によって締め付けられている。スライドガイド20の係止部20cには、ソーラパネルP1,P2を係止するための取付ブラケット21が複数のボルト24で固定されている。取付ブラケット21は、複数の長孔21aを有する断面L字状のアングル材で形成されている。
【0021】
取付ブラケット21上に載置されたソーラパネルP1は、取付ブラケット21に立設されたボルト26と、ソーラパネル21の周縁部に係合した状態でボルト26に取り付けられたクランプ材25と、クランプ材25を取付ブラケット21に向かって締め付けるナット29と、によって固定されている。
【0022】
図1に示すように、ソーラパネルP1,P2を取付ブラケット21上に載置する前段階の設置物支持手段14においては、ボルト22を緩めれば、スライドブラケット20はスライドガイド19の長孔19bに沿って屋根勾配方向Rに位置変更可能であり、取付ブラケット20は、ボルト24を緩めれば、図2に示すように、スライドブラケット20に沿って水平方向Hに位置変更可能である。
【0023】
このように、取付ブラケット20の位置を屋根勾配方向R及び水平方向Hに変更可能としたことにより、ソーラパネルP1,P2及び瓦11のサイズ、形状に合わせて取付ブラケット20の位置を設定することができるため、ソーラパネルP1,P2を容易かつ的確に瓦屋根上に設置することができる。
【0024】
屋根勾配方向Rに間隔をおいて配置された複数の支持ポスト13によってスライドガイド19を支持したことにより、それぞれの支持ポスト13に加わる曲げモーメントが緩和されるため、瓦11や野地材12などへの負担軽減を図ることができる。
【0025】
図2に示すように、屋上支持構造14においては、1枚の瓦11の範囲内で最も低い部分である谷底部11cから水平方向Hに変位した位置に孔11aを開設しているが、この位置に限定するものではないので、施工条件に応じて、谷底部11cに孔11aを開設して支持ポスト13を立設することもできる。
【0026】
次に、図3に基づいて、本発明の第二実施形態について説明する。なお、図3において図1,図2と同符号を付している部分は屋上支持構造10の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0027】
図3に示す屋上支持構造30においては、瓦11上に複数のソーラパネルP1,P2を並設するとき、隣り合うソーラパネルP1,2同士の位置を相対的に拘束する位置決め機構31が設けられている。
【0028】
位置決め機構31は、一方のソーラパネルP1側のスライドブラケット20の係止部20cから屋根勾配方向Hに沿って突設された略円柱状のガイド部材32と、ガイド部材32を挿入させるため他方のソーラパネルP2側の取付ブラケット33に開設された孔部33aと、で構成されている。ガイド部材32には、先細り形状のテーパ部32aが設けられている。取付ブラケット33は、取付ブラケット21と同様のアングル材で形成されている。
【0029】
設置物係止手段14を用いて先に設置されたソーラパネルP1にソーラパネルP2を並べて設置するとき、概略の位置決めをしたソーラパネルP2の取付ブラケット33の下縁部をスライドガイド19の上縁部に載せ、ソーラパネルP2をソーラパネルP1に向かって移動させれば、取付ブラケット33の孔部33aにガイド部材32が挿入され、孔部33aの内周がテーパ部32aに沿ってスライドしていき、最終的には、孔部33aとガイド部材32とが同軸状態で嵌合される。
【0030】
位置決め機構31を設けたことにより、隣り合うソーラパネルP1,2同士の位置決め作業を容易かつ正確に行うことができるので、作業性が向上する。また、図1,図2に示すクランプ材25やボルト26なども不要となる。
【0031】
次に、図4,図5,図6に基づいて、本発明の第三実施形態について説明する。なお、図4〜図6において図1,図2と同符号を付している部分は屋上支持構造10の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0032】
図4,図5に示すように、屋上支持構造50は、ソーラパネルP1,P2を瓦葺き屋根27の瓦11上に設置するためのものであり、瓦11を貫通して建物の野地板12上に立設された複数の支持ポスト53と、ソーラパネルP1を支持ポスト53に係止するため、屋根勾配方向R及びこれと直交する水平方向Hに係止位置変更な状態で支持ポスト53上に取り付けられた設置物係止手段14と、を備えている。
【0033】
各支持ポスト53は、瓦11に開設された孔11aを貫通し、取付プレート55を介して野地板12上に立設された支柱部53aと、支柱部53a外周の雄ネジ部53bに螺着されたナット53cと、支柱部53b上に連設された把持部53dとを備え、把持部53dには把持溝53eが設けられている。各支持ポスト53において、支柱部53aと把持部53dとは一体構造をなしている。
【0034】
図6に示すように、取付プレート55は、矩形平板状のプレート本体55aと、プレート本体55aの中央に溶接にて固着されたナット56と、で形成され、プレート本体55aの両端寄りにそれぞれネジ孔55bが開設されている。また、ナット56の下面側のプレート本体55aには、ナット56と同軸をなす貫通孔55cが開設されている。図5に示すように、各取付プレート55は、その長手方向が水平方向Hと平行をなすように野地板12上に配置され、複数のネジ58によって野地板12に固定されている。支持ポスト53は、その支柱部53aの下端部を取付プレート55上面のナット56に螺着することによって起立状態に固定されている。支持ポスト53の支柱部53aにおける瓦11の表面11bとナット53cとの間にはワッシャ17及びパッキン18が介在されている。
【0035】
設置物支持手段14は、屋根勾配方向Rに間隔をおいて配置された2本の支持ポスト53で支持されたスライドガイド19と、スライドガイド19に装着されたスライドブラケット20と、ソーラパネルP1をスライドブラケット20に係止するためスライドブラケット20に着脱可能に装着された取付ブラケット21と、を備えている。
【0036】
取付ブラケット21上に載置されたソーラパネルP1は、取付ブラケット21に立設されたボルト26と、ソーラパネル21の周縁部に係合した状態でボルト26に取り付けられたクランプ材25と、クランプ材25を取付ブラケット21に向かって締め付けるナット29と、によって固定されている。
【0037】
屋上支持構造50においては、屋根勾配方向Rに間隔をおいて配置された2本の支持ポスト53の支柱部53aがそれぞれ個別の取付プレート55を介して野地板12上に固定されているため、支持ポスト53に対して水平方向Hの外力が加わったときの強度に優れている。また、各支持ポスト53を構成する支柱部53aと把持部53dとを一体化させたことにより、部品点数の削減及び取付作業の簡易化を図ることができる。その他の部分の構造、機能及びそれによって得られる作用効果は屋上支持構造10と同様である。
【0038】
前述した屋上支持構造10,30,50は、瓦11上にソーラパネルP1,P2を設置する際の支持手段として使用されているが、本発明はこれらの用途に限定されるものではないので、他の屋上設置物の支持手段として使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の屋上支持構造は、ソーラパネル、太陽光温水パネルなどの屋上設置物を建物の屋根瓦上に設置する際の支持手段として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10,30,50 屋上支持構造
11 瓦
11a 孔
11b 表面
11c 谷底部
12 野地板
13,53 支持ポスト
13a,53a 支柱部
13b,53b 雄ネジ部
13c,27,29,53c,56 ナット
13d,53d 把持部
13e,53e 把持溝
13f,55c 貫通孔
14 設置物係止手段
15,55 取付プレート
16,22,23,24,26 ボルト
17 ワッシャ
18 パッキン
19 スライドガイド
19a 膨出部
19b 長孔
19c ストッパ
20 スライドブラケット
20a,20b 脚部
20c 係止部
21,33 取付ブラケット
25 クランプ材
27 瓦葺き屋根
28,58 ネジ
31 位置決め機構
32 ガイド部材
32a テーパ部
33a 孔部
55a プレート本体
55b ネジ孔
H 水平方向
P1,P2 ソーラパネル
R 屋根勾配方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラパネル、太陽光温水パネルなどの屋上設置物を建物の屋根瓦上で支持するための屋上支持構造であって、
瓦を貫通して建物の野地板上に立設された支持ポストと、屋上設置物を前記支持ポストに係止するため、少なくとも屋根勾配方向及びこれと直交する水平方向に係止位置変更な状態で前記支持ポストに取り付けられた設置物係止手段と、を備えたことを特徴とする屋上支持構造。
【請求項2】
前記設置物支持手段が、前記支持ポストで支持されたスライドガイドと、前記スライドガイドに装着されたスライドブラケットと、屋上設置物を前記スライドブラケットに係止するため前記スライドブラケットに装着された取付ブラケットと、を備え、前記スライドブラケットが前記スライドガイドに沿って前記屋根勾配方向に位置変更可能であり、前記取付ブラケットが前記スライドブラケットに沿って前記水平方向に位置変更可能であることを特徴とする請求項1記載の屋上支持構造。
【請求項3】
前記スライドガイドが、前記屋根勾配方向に間隔をおいて配置された複数の前記支持ポストで支持されたことを特徴とする請求項2記載の屋上支持構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の屋上支持構造を使用して複数の屋上設置物を並設するとき、隣り合う屋上設置物同士の相対的に拘束する位置決め機構を設けたことを特徴とする屋上支持構造。
【請求項5】
前記位置決め機構が、一方の屋上設置物側の前記スライドブラケットに突設されたテーパ部を有するガイド部材と、前記ガイド部材を挿入させるため他方の屋上設置物側の前記取付ブラケットに開設された孔部と、で構成されたことを特徴とする請求項4記載の屋上支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−77493(P2012−77493A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222415(P2010−222415)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(309013358)株式会社ミヤムラ (7)
【Fターム(参考)】