説明

屋外配管用二重構造電線管

【課題】配管敷設後長期にわたって割れなどが発生せず、耐光性及び耐久性に富み施工性にも優れる屋外配管用二重構造電線管を提供すること。
【解決手段】押出成形されたポリエチレン,ポリプロピレン又はポリスチレンの波付可とう管からなる内管の外面に、押出により軟質ポリ塩化ビニルを被せて外管を形成した二重構造の電線管であって、当該電線管の少なくとも外管の材料には太陽光を遮蔽するカーボンブラックが添加されており、前記外管の曲げ剛性は前記内管の曲げ剛性よりも小さく施工性にも優れることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムにおける配線その他屋外配線されるケーブル等の電線を保護するための屋外配管用二重構造電線管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電線管は、経時的に太陽光の照射を繰返し受けるほか変化の激しい外気に晒されるため、長期にわたってそれらに耐えうる特性を備えたものであることが望ましいが、そのような特性をもつ屋外配管用の電線管は提案されていない。
前記事状により、太陽光発電システムにおける屋外配線のための電線管においても、屋内配管用電線管の中の特に耐候性や難燃性を有する電線管が一般に使用されている。
【0003】
そのような電線管は多種類市販されているが、それらの一つとして、管の平均肉厚の67〜90%であって、0.1重量%以上のカーボンブラックが添加されたポリオレフィン系樹脂組成物からなる内層と、厚さが管の平均肉厚の10〜33%であって、0.1重量%未満のカーボンブラックが添加され酸素指数が22以上の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物からなる外層とを、押出しにより一体成形した二層構造の電線管がある(後記特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、前記電線管は内外層の材料にカーボンブラックが添加されてはいるが、太陽光遮蔽以外の目的で添加したものであって添加量が十分でないため耐光性に乏しい。
曲げ配管部において、曲げ部の内周側では長さ方向に対して圧縮方向の、外周側では伸び方向の応力が加わるが、内層と外層が一体化されているためこれらの応力が内外層へ均一に加わり易く、外層がより肉薄で内層が管を主体であることと内外層の柔らかさ(曲げ剛性)に差がないととも相まって、外層の脆弱化が著しく先行する。
そのために、配管敷設後13年前後経過すると曲げ配管部の外周側においては径方向に沿って(波の形成方向に沿って)割れが発生する。JIS A 1415:1999による暴露試験の結果によってもそれは証明される。
【特許文献1】特開平07−137214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は屋外配管用二重構造電線管における寿命の一層の改善にあり、その目的は、配管敷設後長期にわたって割れなどが発生せず、耐光性及び耐久性に富む屋外配管用二重電線管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る屋内配管用二重構造電線管は、前記の課題を解決するため、押出成形されたポリエチレン,ポリプロピレン又はポリスチレンの波付可とう管からなる内管の外面に、押出により軟質ポリ塩化ビニルを被せて外管を形成した二重構造の電線管であって、当該電線管の少なくとも外管の材料には太陽光を遮蔽するカーボンブラックが添加されており、前記外管の曲げ剛性は前記内管の曲げ剛性よりも小さいことを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る屋外配管用二重構造電線管は、内管の外面に外管の内面が部分的に接触しており、内管の外面に両者者の管断面の一部に隙間を有する状態で軟質塩化ビニルを被せて外管を形成した二重構造管であり、内外の管は完全一体ではないので曲げ配管部における応力は内外の管に対して一体には加わらず、また内管に対して外管の曲げ剛性が小さい。従って、現場施工時に、壁から屋根への立ち上がり部や直交する壁等をまたいで配管する場合等、曲がり部を施工する際の曲げ力が従来の二層管に比べて少なく配管施工性が優れる。
本発明に係る屋外配管用二重構造電線管によれば、内管と外管の材料が相対的に紫外線吸収率の大きい合成樹脂であることと、少なくとも外管の材料には太陽光を遮蔽するためカーボンブラックが添加されているので、十分な耐光性を有する。
管に引張応力がほとんど働かない直線部に比べで、曲げ部に引張り応力が発生して紫外線による脆弱化が激しい外管に曲げ剛性の小さい材料を使用し、さらに外管と内管の断面の一部が離れて変形することができるようにし、曲げ部に発生する応力を、材料と管の断面形状との両者の観点で緩和することができることから、外管の脆弱化を弱め、むしろ外管の劣化は抑制されるので耐久性が一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明に係る屋外配管用二重構造電線管の最良実施形態を説明する。
図1は電線管の部分半裁断面図である。
電線管1は、押出成形されたポリエチレン,ポリプロピレン又はポリスチレン製の波付可とう管からなる内管10の外面に、押出により軟質ポリ塩化ビニルを被せて外管11を形成した二重構造である。
電線管1の少なくとも外管11の材料には、太陽光を遮蔽するためにカーボンブラックが添加されており、外管11の曲げ剛性は前記内管10の曲げ剛性よりも小さい。
【0009】
内管10の材料であるポリエチレン,ポリプロピレン又はポリスチレンは耐燃性(炎がなくなると消える性質)を有するほか、太陽光の中でプラスチック材料を光劣化させる力が最も強い波長である紫外線を吸収し易い。
また外管11の材料である軟質ポリ塩化ビニルは、紫外線を吸収し易く耐光性に優れかつ難燃性を有する。
【0010】
前記のように、外管11の曲げ剛性は内管10の曲げ剛性よりも小さくしてあるが、これは屋外の曲げ配管部において内管10よりも外管11の伸びを大きくし、外気に晒される外管11の劣化(脆弱化)が経時的に先行するのを抑制するためである。
両者の曲げ剛性の差は特に限定されないが、外管11の曲げ剛性は内管10の曲げ剛性の80パーセント以下であるのが好ましい。
【0011】
外管11の経時的劣化をより十分に抑制するためには、内管10の山部中央の位置において、外管11の平均肉厚t2は内管10の平均肉厚よりも大きくしてあるのが好ましく、前記位置における内管10の平均肉厚は外管の平均肉厚の35〜65パーセントであるのがさらに好ましい。
【0012】
外管11の材料である軟質ポリ塩化ビニルに添加するカーボンブラックの添加量は、太陽光を遮蔽するのに必要十分な量であり、その添加量が0.3wt%未満であると太陽光を遮蔽するのに不十分である。
その添加量の上限は、添加量が2wt%を超えると効果がほぼ安定する。カーボンブラックは、電線管内の分散状態のばらつきを考慮しても、添加量の上限は3wt%で、それ以上の添加は効果がない。
【0013】
この実施形態の電線管1において、内管10の内径(電線の呼込み有効直径である「呼び径」)D=22φ、内管10の山部の高さ(谷部の深さ)=2.5mm、内管10の山部の平均肉厚t1=0.8mm、当該部分の外管11の平均肉厚t2=1mm、内管10山部ピッチ(隣接する山部相互の中心間の間隔)=3.8mmである。
また、内管10の曲げ剛性=0.18N・m,外管11の曲げ剛性=0.13N・mであり、外管11及び内管10の材料にはそれぞれ0.6wt%のカーボンブラックが添加してある。
【0014】
前記実施形態の電線管によれば、前記のように構成されていることにより、耐光性を含む耐候性に優れているとともに、外管11の劣化の進行が抑制されるので、著しく耐久性に富んだものとなる。
電線管1はカーボンブラックの添加により黒になるので、通常の屋根の暗色とよりマッチングして目立ち難いという視覚的な効果を奏する。
また、図2で示す電線管1の曲げ配管部における曲率半径R=6D(D:内管10の内径)以上とすることにより、外管11の曲げ配管部の外周側に作用する応力が相対的に小さくなり、外管11の経時的劣化もさらに抑制される。
【0015】
性能試験1
前記実施形態の実施例電線管と実施例電線管と同形態でカーボンブラックを添加しない比較例電線管を試作した。
両種電線管について、外管材料である軟質塩化ビニルでJIS K 7113 2号試験片を作成した(サンプルから外管を剥がし、練り直してプレートにしたものから2号試験片を方抜きした。)。それらについて、JIS A 1415:1999「高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法」WS−A法に準じ、促進暴露試験を実施した。
【0016】
試験条件の概要は以下のとおりである。
光源:オープンフレームカーボンアークランプ
カーボンアーク電圧・電流
交流電圧:許容範囲48〜52V、中心値50±1V
交流電流:許容範囲58〜62A、中心値60±1.2A
フィルタ:I型
波長:255nm、透過率:≦1%
波長:302nm、透過率:71〜86%
波長:≧360nm、透過率:>91%
試験片面の放射照度:255±(10%)W/m2(波長域300〜700nm)
バックパネル温度:63±3℃
相対湿度:(50±5)%
試験片面への水噴射サイクル:102分放射後、18分放射及び水噴射
放射方向:連続放射
暴露時間(単位:時間):0,2000,3000,4000,5000,6500
ただし、比較例電線管の試験片については、後記のとおり2000時間暴露で引張強度残率が著しく低下したので、それ以上の暴露試験は行なわなかった。
【0017】
前記促進暴露後の2号試験片各5個について、JIS K 6723:1995 軟質ポリ塩化ビニルコンパウンド 6.3項 引張試験を実施(引張速度:200mm/min)し、各5個の試験片について引張強度残率平均を求めた。
その結果は図3のとおりであった。
図3で示されているように、実施例電線管は引張強度残率が92.9%(2000時間暴露)〜97.5%(4000時間暴露)の範囲内にあり、6500時間暴露(30年相当)の試験片でも95%であって、優れた耐久性を示した。
【0018】
性能試験2
前記実施例電線管について長さ200mmに切断した試験片を準備し、前記と同様にJIS A 1415:1999「高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法」WS−A法に準じ、6500時間の促進暴露試験を実施した。
当該試験片についてJIS C 8411:1999 圧縮復元性・耐衝撃性試験を実施し、目視により外観を調べてその割れ・亀裂の有無を確認した。
【0019】
圧縮復元性試験では(性能:目視で認められるひび又は割れが生じず、かつ、試験前後の外径差が10%を超えてはならない。)、試験片にひびや割れはなく、試験前後の外径差は2.6%であった。
また、耐衝撃性試験でも(12個中9個以上のサンプルにひび又は割れが生じてはならない。)試験片にひびや割れは認められなかった。
これらの結果により、実施例電線管は耐久性が優れていることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る屋外配管用二重電線管の一実施形態を示す部分半裁断面図である。
【図2】図1の屋外配管用二重電線管の曲げ配管部における当該電線管の曲率半径と当該電線管の内管の内径との関係を示す模式図である。
【図3】実施例電線管及び比較例電線管の促進暴露試験後の引張強度残率を示す線図である。
【符号の説明】
【0021】
1 電線管
10 内管
11 外管
D 内管の内径(呼び径)
R 曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形されたポリエチレン,ポリプロピレン又はポリスチレンの波付可とう管からなる内管の外面に、押出により軟質ポリ塩化ビニルを被せて外管を形成した二重構造の電線管であって、当該電線管の少なくとも外管の材料には太陽光を遮蔽するカーボンブラックが添加されており、前記外管の曲げ剛性は前記内管の曲げ剛性よりも小さいことを特徴とする屋外配管用二重構造電線管。
【請求項2】
前記外管の曲げ剛性は前記内管の曲げ剛性の80%以下である、請求項1に記載の屋外配管用二重構造電線管。
【請求項3】
前記内管の山部中央の位置において、内管の平均肉厚は外管の平均肉厚の35〜65%である、請求項2に記載の屋外配管用二重構造電線管。
【請求項4】
前記カーボンブラックの添加量は0.3〜3wt%である、請求項1〜3のいずれかに記載の屋外配管用二重構造電線管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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