説明

屋根補修工法

【課題】確実に塵やちりの発生を抑え、かつ作業性良好にクランプ金具の取付けができる屋根補修工法を提供すること。
【解決手段】既設の波形スレート板屋根材5を金属板屋根材1で被覆する屋根補修工法において、断面箱型で底面部21にその一方の端縁に開口する切欠き22を形成した本体金具2Aと、本体金具2A内にその一方の端縁から嵌入可能な板状で、前記切欠き22とは逆向きに開口する切欠き26を設けた補助金具2Bとからなるクランプ金具2を用いる。クランプ金具2は、本体および補助金具2A、2Bの切欠き22,26で、スレート板屋根材5のフックボルト6上端を挟み付けるとともに、フックボルト6のナット座金62とスレート板屋根材5との間に本体金具2Aの底面部21および補助金具2Bを挟み込んでスレート板屋根材5に載置固定し、これに金属板屋根材1の山部12を重ね合わせてネジ締め固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工場等の老朽化した既設の波形スレート板屋根材を取り壊し撤去することなくその上に新しい金属板屋根材を設置して補修する屋根補修工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の代表的な屋根修理工法として、図8に示すように、既設の波形のスレート板屋根材5の上部に、スレート板屋根材5を母屋7に固定するフックボルト6を利用してクランプ金具8を載置固定し、該クランプ金具8にスレート板屋根材5の上面を覆う金属板屋根材9を固定する工法がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
前記従来のクランプ金具8は金属板屋根材9の山部に対応する断面山形の上部と、スレート板屋根材5の山部の上面に対応する底面部81とで断面三角形状としてある。また底面部81にはその前後方向の中心線に沿って切欠き82が形成してある。切欠き82は底面部81の中央の丸穴83と、該丸穴83から底面部81の前後方向の両端縁とを連通するテーパー状のガイド溝84,84とからなる。丸穴83の径はフックボルト6の軸部の径とほぼ同じで、ガイド溝84の丸穴83との連結部の幅は軸径よりも若干小さくしてある。
【0004】
クランプ金具8は、その底面部81を切欠き82の一方のガイド溝84よりスレート板屋根材5とフックボルト6のナット61下部の座金62との間に打ち込み、フックボルト6の軸部はガイド溝84の最狭部を押し広げるように通過して切欠き82中央の丸穴83に嵌入してスレート板屋根材5の上部に載置固定される。そして、金属板屋根材9はその山部をクランプ金具8にその上方から重ねてネジ部材90で締結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2907422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の工法では、スレート板屋根材5に穴あけ等の加工をする必要がない点において有利であるが、フックボルト6がクランプ金具8の丸穴83に嵌入する直前でクランプ金具8を工具を用いて打ち込むようにしてフックボルト6の軸部を嵌入させる。このため衝撃により老朽化したスレート板屋根材5が破損したり、またフックボルト6の軸部には一方の方向から衝撃荷重がかかるので軸部に傾きが生じるおそれがあるので、作業者は細心の注意が必要となって作業性が良好とはいえない。
【0007】
そこで本発明は前記事情に鑑み、スレート板屋根材の破損やフックボルトの変形のおそれなく、クランプ金具を作業性良好に設置することができ、かつ塵、ちり等の落下を確実に防ぐ屋根補修工法を実現することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、既設の波形スレート板屋根材にこれを被覆する金属板屋根材を設置する屋根補修工法において、
断面箱型で、上部を前記金属板屋根材の山部に沿う断面形状に形成するとともに、底面部を前記波形スレート板屋根材の山部に沿う断面形状に形成し、かつ底面部には、一方の端縁に開口する切欠きを形成した本体金具と、
前記本体金具の底面部に対応する板状をなし、前記本体金具内にその前記一方の端縁から嵌入可能で、嵌入側の端縁に、前記本体金具の切欠きとは逆向きに開口する切欠きを形成した補助金具とからなるクランプ金具を用い、
前記波形スレート板屋根材を貫通してこれを母屋に固定した既設のフックボルト上端のナット座金と前記波形スレート板屋根材の山部との間の隙間から前記フックボルトまわりに前記本体金具および補助金具の各切欠きをそれぞれ互いに反対方向より嵌め込み、両切欠きの奥端で前記フックボルトを挟み付けて前記波形スレート板屋根材の山部に前記クランプ金具を載置固定し、
固定された前記クランプ金具の上部に前記金属板屋根材の山部を重ね合わせて該山部を前記クランプ金具にネジ締め固定する(請求項1)。
【0009】
本発明によれば、本体金具と補助金具をスレート板屋根材の上面のフックボルトの両側位置にセットし、本体金具および補助金具を相対向方向に力を加えて押し込みフックボルトを挟み付けるようにしたから、押し込み力は効率よく本体金具と補助金具に加えられ、打ち込みを必要とせず作業性が良好である。また衝撃も発生しないので、スレート板屋根材の破損やこれに伴う塵やちりの生じるおそれなく、またフックボルトの傾きや変形も生じない。
【0010】
前記本体金具は、前後両端が開放された断面箱型をなし、前記底面部の切欠きが、底面部の前後方向の一方の端縁に開口して、底面部の前後方向に沿って設けられ、かつ切欠きの幅を開口側から切欠きの奥側へ向けて漸次狭くし、奥端に前記フックボルトの軸部とほぼ同じ溝幅で前記軸部を嵌合当接せしめるU字状のフックボルト当接部を設け、
前記補助金具の切欠きは、前記本体金具への嵌入側となる一方の端縁に開口して、補助金具の前後方向に沿って設けられ、かつ切欠きの幅を開口側から切欠きの奥側へ向けて漸次狭くし、奥端に前記フックボルトの軸部とほぼ同じ溝幅で前記軸部を嵌合当接せしめるU字状のフックボルト当接部を設け、
前記本体金具のフックボルト当接部と前記補助金具のフックボルト当接部とで前記フックボルトの前記ナット座金直下の軸部を対向方向に挟み付ける(請求項2)。
【0011】
本体金具および補助金具はそれぞれの切欠きの開口側の幅寸法を広くしたので、両金具の切欠きの開口側をスレート板屋根材の上面のフックボルトのまわりにセットし、奥側へ向けて漸次幅を狭くした切欠き沿って、本体金具および補助金具を相対向方向に押し込むことで容易に両者のフックボルト当接部でフックボルトを挟み付けることができ、クランプ金具の取付け作業性をより向上する。
【0012】
前記本体金具と前記補助金具を、ペンチ型挟み付け工具を用いて対向方向に押し込み、前記本体金具のフックボルト当接部と前記補助金具のフックボルト当接部で前記フックボルトの軸部を挟み付けるようになす(請求項3)。
【0013】
本体金具および補助金具の押し込みは、挟み付け工具により効率よく行うことができる。
【0014】
前記金属板屋根材は、前記波形スレート板屋根材の左右幅方向に所定の間隔をおいて設置した左右のクランプ金具の間に配し、左右の両側縁にそれぞれ左右のクランプ金具の側面に沿って立ち上がる起立部を設けた第1の金属板屋根材と、
前記左右のクランプ金具に跨って配し、左右の両側縁にそれぞれクランプ金具を覆う山部を設けた第2の金属板屋根材とで構成し、
第1および第2の金属板屋根材を波形スレート板屋根材の上に左右に交互に配置せしめ、第2の金属板屋根材の前記山部で、前記クランプ金具と一体にその側面に沿う前記第1の金属板屋根材の起立部を覆い、前記第1の金属板屋根材の山部を前記クランプ金具の上部にネジ締め固定するとともに前記山部で第1の金属板屋根材の側縁を押え付けるようになす(請求項4)。
【0015】
第2の金属板屋根材の側縁の山部で、クランプ金具と第1の金属板屋根材の側縁とを一体に覆い、前記山部をクランプ金具に締結することで、隣り合わせた2枚の金属板屋根材の側縁を効率よくかつ作業性良好に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の工法による補修屋根の一部を分解した説明図である。
【図2】図2(A)はクランプ金具の分解斜視図、図2(B)は前記クランプ金具および金属板屋根材の取付け態様を説明する図である。
【図3】クランプ金具をフックボルトに固定せしめる過程を示すもので、図3(A)は固定前段階のクランプ金具の底面図、図3(B)は固定時の底面図である。
【図4】クランプ金具が工具を用いてフックボルトへ固定される時の斜視図である。
【図5】図1のV−V線に沿う位置での断面図である。
【図6】図1のVI−VI線に沿う位置で、金属板屋根材を固定した状態の断面図である。
【図7】図1のVII−VII線に沿う位置で、金属板屋根材を固定した状態の断面図である。
【図8】従来の工法の補修屋根を示すもので、図8(A)は正面図、図8(B)は従来のクランプ金具の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、既設の波形のスレート板屋根材5は、母屋7に載置され、下端が母屋7に係合し上端がスレート屋根材5の山部を貫通して上方へ突出するフックボルト6の上端にナット座金62およびゴムパッキン63(図6)を介してナット61を締め込むことで母屋2に固定されている。
【0018】
新規の金属板屋根材1は、スレート板屋根材5の上にクランプ金具2を固定し、クランプ金具2を介してスレート板屋根材5の上に設置してある。尚、金属板屋根材1は、交互に並設される2種類の屋根材1A,1Bを用い、屋根材1A,1Bは波形の形状が基本的に同一であるが、互いに重ね合わされる側縁が屋根材1Bでは山部12とし、屋根材1Aでは起立部11(図5)のみとし、起立部11に屋根材1Bの側縁の山部12が上から重なる構造としてある。
【0019】
図2に示すように、クランプ金具2は、本体金具2Aと補助金具2Bとからなる。
本体金具2Aは、金属平板を角形筒状に加工成形したもので、箱型断面形状を有し、かつ前後の両端が開放してある。本体金具2Aの上部20は、金属板屋根材1Bの山部12内面に対応する断面山形に形成してある。
【0020】
本体金具2Aの底面部21は、スレート板屋根材5の山部の頂部に対応する緩やかな円弧状の断面形状を有する。底面部21の幅はフックボルト6のナット座金62の径よりも広幅に設定してある。底面部21には前後方向の半部に前記フックボルト6を嵌入せしめる切欠き22が形成してある。
【0021】
切欠き22は、底面部21の一方の端縁、例えば設置状態でスレート板屋根材5の勾配下方側となる端縁(後縁)に開口し、開口から前方へ設けてある。切欠き22の開口側の幅は、前記ナット座金62の径とほぼ同じか又はこれよりも僅かに狭い幅に形成してあり、その左右両側には互いに平行な切り残し部分23,23が設けてあり、これらは本体金具2Aに補助金具2Bを嵌入するときのガイド部となる。
【0022】
切欠き22の奥部には、左右の両側縁を傾斜せしめたテーパー部24が形成してあり、これにより切欠き22の幅が漸次狭くしてある。
そして底面部21の前後方向中央位置よりもやや前方に位置する切欠き22の奥端には、フックボルト6の軸部に対応してこれを嵌入当接可能なほぼU字状のフックボルト当接部25が設けてある。フックボルト当接部25の幅はフックボルト6の軸径とほぼ同じとしてある。
【0023】
クランプ金具2の補助金具2Bは、本体金具2Aの底面部21に沿って本体金具2A内に嵌入可能な板体からなる。補助金具2Bは前記底面部21とほぼ同長で、断面形状は前記底面部21に応じて緩やかな円弧状である。
【0024】
補助金具2Bには設置状態でスレート板屋根材5の勾配下方側となる前半部に、本体金具2Aの切欠き22に対応し、これとは逆向きの切欠き26が設けてある。切欠き26は本体金具2Aの切欠き22と、前後方向に対称形状で、前縁に開口し、本体金具2Aのガイド部23,23に対応するガイド部27,27、テーパー部24に対応するテーパー部28、フックボルト当接部25に対応するフックボルト当接部29が設けてある。但し、両側にガイド部27,27を形成した開口部の長さは本体金具2Aの開口部の長さよりも若干短く、従って、フックボルト当接部29の位置は補助金具2Bの前後方向やや前方寄りとしてある。補助金具2Bの後端には、起立状の後端部201が設けてある。
【0025】
図2(B)ないし図4に示すように、クランプ金具2をスレート板屋根材5上に取付けるには、本体金具2Aの後端に補助金具2Bの前端を両金具2A,2Bのガイド部23,27を沿わせて浅く嵌入した状態で、クランプ金具2をスレート板屋根材5の山部のフックボルト6上方に配し、重ね合わされた本体金具2Aと補助金具2Bの両側のガイド部23,27を、フックボルト6のナット座金62とスレート板屋根材5の山部との間の隙間に嵌め入れる。尚、ナット座金62とスレート板屋根材5の山部との間にはフェルト座又は合成ゴムパッキン63が介設してあり、これを押し潰すようにして上記隙間に嵌め入れる。尚、嵌め入れが困難であれば、予めフェルト座又は合成ゴムパッキン63を除去しておいてもよい。
【0026】
本体金具2Aおよび補助金具2Bは、それぞれ別々にスレート板屋根材5の山部のフックボルト6の前後に位置に配し、本体金具2Aの後端開口に補助金具2Bの前端を嵌入しつつ両者の切欠き22,26の開口のガイド部23,27をフックボルト6のナット座金62とスレート板屋根材5との間の前記隙間に嵌入させるようにセットしてもよい。
【0027】
以上のように、本体金具2Aおよび補助金具2Bをスレート板屋根材5の山部のフックボルト6の前後位置にセットした後、図4に示すような大型のペンチ型挟み付け工具Tを用いて、本体金具2Aの前端と補助金具2Bの後端部201を前後に挟み付ける。これにより本体金具2Aおよび補助金具2Bを互いに前後方向にスライド移動させて本体金具2A内の奥側へ補助金具2Bを嵌入させる。
【0028】
更に工具Tの挟み付けにより、フックボルト6は、両切欠き22,26のテーパー部24,28により各フックボルト当接部25,29に案内され、両当接部25,29で挟み付けられ、本体金具2Aの底面部21と補助金具2Bとは全面が重ね合わされる。このようにクランプ金具2は、フックボルト当接部25,29で前後方向からフックボルト6の軸部を挟み付けるとともに、本体金具2Aの底面部21および補助金具2Bはフックボルト6のナット座金62とスレート板屋根材5との間に上下から挟み込まれてスレート板屋根材5の上部に載置固定される。
【0029】
そして、図2(B)に示すように、スレート板屋根材5の山部に固定したクランプ金具2にその上方から金属板屋根材1Bの山部12を覆い被せて上方からタッピングスクリュなどのネジ部材3により締結する。
【0030】
本実施形態に用いる第1および第2の金属板屋根材1A,1Bについて説明する。図5に示すように、第1の金属板屋根材1Aは、その横幅が、スレート板屋根材5の幅方向に所定数の山部をおいて設置されたクランプ金具2,2間の間隔に合わせてあり、両クランプ金具2,2間のスレート板屋根材5上面に載置するように構成してある。第1の金属板屋根材1Aの左右の側縁には、クランプ金具2の側面に沿うように、斜め上方へ起立する起立部11,11が形成してある。
【0031】
第2の金属板屋根材1Bは、スレート板屋根材5の幅方向に所定数の山部をおいて設置されたクランプ金具2,2に跨る幅に構成してあり、左右の両側縁にはそれぞれ、左右のクランプ金具2,2を覆う山部12,12を有する。
【0032】
図5、図6に示すに、第1および第2の金属板屋根材1A,1Bはそれぞれ、スレート板屋根材5上面の幅方向に交互に配置する。このとき、第1の金属板屋根材1Aは、左右の両側縁の起立部11をそれぞれ左右のクランプ金具2,2の側面に沿うように配す。第2の金属板屋根材1Bは、両側縁の山部12で左右両側のクランプ金具2,2をその上方から覆うようになし、このとき、横隣りの第1の金属板屋根材1Aの側縁の起立部11もクランプ金具2と一体に覆う。
【0033】
そして、第2の金属板屋根材1Bの山部12を上方よりネジ部材3によりクランプ金具2の上部20に締結して第2の金属板屋根材1Bを固定するとともに、山部12で第1の金属板屋根材1Aの屈曲部11を押さえ込んで、第2の金属板屋根材1Bと一体に第1の金属板屋根材1Aを固定する。
【0034】
2種類の金属板屋根材1A,1Bを用いる工法によれば、第1の金属板屋根材1Aは、クランプ金具5をフックボルトに固定する作業の足場として利用することができる。例えば、最初に、作業員が屋根上面に乗らなくても、クランプ金具2の取付け作業が可能な位置、即ち、屋根の軒先に梯子や組み立て足場を利用して屋根の軒先最前列のクランプ金具2を固定する。次に左右のクランプ金具2、2の間のスレート板屋根材5の屋根面に、第1の金属板屋根材1Aを下から押し上げて載設する。そして第1の金属板屋根材1Aの下端の起立部11をクランプ金具2の側面に小型のタッピングスクリュにより仮止めし、下方への位置ずれを防止する。そして屋根に載置した第1の金属板屋根材1Aを足場として屋根の軒から上方へ向けて順次にクランプ金具2を固定していくことができる。この場合、第1の金属板屋根材1Aの側縁にあるのは起立部11のみであるから、クランプ金具2の取付け作業の障害とはならない。
従来では屋根に大がかりな足場を設けてクランプ金具を固定し、金属板屋根材を載置するときに前記足場を撤去しながらの補修作業をしていたが、これに比べて、第1の金属板屋根材1Aを足場として利用できるので、大がかりな足場の設置、撤去作業が不要で、作業時間を短縮でき、効率よく作業性良好に補修工事ができる。
【0035】
スレート板屋根材5の山部の勾配下側に設けたクランプ金具2と勾配上側に設けたクランプ金具2との間の距離が長い屋根の場合には、これらの中間位置で、第2の金属板屋根材1Bの山部12と第1の金属板屋根材1Aの起立部11と、スレート板屋根材5の山部の相互間の結合が緩くなるおそれがある。かかる場合には前記中間位置に、図1、図7に示すように、シンプルな構造の補助クランプ4を設け、補助クランプ4により第1の金属板屋根材1Aと第2に金属板屋根1Bの側縁の結合を強化することが望ましい。
補助クランプ4は、断面ほぼハット形をなす金属板からなり、左右両側にスレート板屋根材5の山部の両側位置に載置する脚部を有する。そして、補助クランプ4は、スレート板屋根材5の山部の頂部にこれを跨ぐように配置する。そして、第1の金属板屋根材1Aの側縁の起立部11を補助クランプ4の頂面に小型のタッピングスクリュ41により締結するとともに、該起立部11と一体に補助クランプ4を第2の金属板屋根材1B側縁の山部12で覆い、該山部12をネジ部材3により補助クランプ4の頂部に締結固定して、第2の金属板屋根材1Bによる第1の金属板屋根材1Aの押え付けを強化して両者の連結性を向上せしめる。
【0036】
以上説明したように、本発明は、前後方向の一端に開口し、奥端が前後方向中央部に位置する切欠きを設けた本体金具と補助金具とからなるクランプ金具を用い、本体金具と補助金具の両金具をこれらの切欠き開口が対向するように配し、両金具を対向方向に押し込んで、スレート板屋根材の山部から突出するフックボルトの軸部を両金具の切欠きの奥端で挟み付けることによりクランプ金具をフックボルトに固定するようにしたから、従来のようにクランプ金具を打ち込んでフックボルトに固定する方法に比べて衝撃がなく、衝撃によるスレート板屋根材への悪影響を回避することができる。
また両金具の切欠きは奥端に向けて幅を狭くして奥端の幅をフックボルトの軸径とほぼ同じとしたからフックボルトの奥端への嵌入がスムーズに行われ、かつ切欠きの奥端でのフックボルトの固定が安定である。
また、両金具はペンチ型の挟み付け工具を用いて、両金具を両側から挟み込むことで、クランプ金具のフックボルトへの固定は、作業性良好かつ効率よく行ない得る。
更に本発明は、複数の金属板屋根材をスレート板屋根材の上に並設する場合、側縁にクランプ金具の側面に沿う起立部を形成した第1の金属板屋根材と側縁にクランプ金具とともに前記起立部を覆う山部を形成した第2の金属板屋根材の2種類の屋根材を用いたから、先ず第1の金属板屋根材をスレート板屋根材に載置し、これを足場としてクランプ金具の設置をすることができるから、クランプ金具の設置作業性が良好である。
【符号の説明】
【0037】
1 金属板屋根材
1A 第1の金属板屋根材
11 起立部
1B 第2の金属板屋根材
12 山部
2 クランプ金具
2A 本体金具
20 上部
21 底面部
22 切欠き
25 フックボルト当接部
2B 補助金具
26 切欠き
29 フックボルト当接部
5 スレート板屋根材
6 フックボルト
62ナット座金
7 母屋
T ペンチ型挟み付け工具




【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の波形スレート板屋根材にこれを被覆する金属板屋根材を設置する屋根補修工法において、
断面箱型で、上部を前記金属板屋根材の山部に沿う断面形状に形成するとともに、底面部を前記波形スレート板屋根材の山部に沿う断面形状に形成し、かつ底面部には、一方の端縁に開口する切欠きを形成した本体金具と、
前記本体金具の底面部に対応する板状をなし、前記本体金具内にその前記一方の端縁から嵌入可能で、嵌入側の端縁に、前記本体金具の切欠きとは逆向きに開口する切欠きを形成した補助金具とからなるクランプ金具を用い、
前記波形スレート板屋根材を貫通してこれを母屋に固定した既設のフックボルト上端のナット座金と前記波形スレート板屋根材の山部との間の隙間から前記フックボルトまわりに前記本体金具および補助金具の各切欠きをそれぞれ互いに反対方向より嵌め込み、両切欠きの奥端で前記フックボルトを挟み付けて前記波形スレート板屋根材の山部に前記クランプ金具を載置固定し、
固定された前記クランプ金具の上部に前記金属板屋根材の山部を重ね合わせて該山部を前記クランプ金具にネジ締め固定することを特徴とする屋根補修工法。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根補修工法において、
前記本体金具は、前後両端が開放された断面箱型をなし、前記底面部の切欠きが、底面部の前後方向の一方の端縁に開口して、底面部の前後方向に沿って設けられ、かつ切欠きの幅を開口側から切欠きの奥側へ向けて漸次狭くし、奥端に前記フックボルトの軸部とほぼ同じ溝幅で前記軸部を嵌合当接せしめるU字状のフックボルト当接部を設け、
前記補助金具の切欠きは、前記本体金具への嵌入側となる一方の端縁に開口して、補助金具の前後方向に沿って設けられ、かつ切欠きの幅を開口側から切欠きの奥側へ向けて漸次狭くし、奥端に前記フックボルトの軸部とほぼ同じ溝幅で前記軸部を嵌合当接せしめるU字状のフックボルト当接部を設け、
前記本体金具のフックボルト当接部と前記補助金具のフックボルト当接部とで前記フックボルトの前記ナット座金直下の軸部を対向方向に挟み付けるようになした屋根補修工法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の屋根補修工法において、
前記本体金具と前記補助金具を、ペンチ型挟み付け工具を用いて対向方向に押し込み、前記本体金具のフックボルト当接部と前記補助金具のフックボルト当接部で前記フックボルトの軸部を挟み付けるようになした屋根補修工法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の屋根補修工法において、
前記金属板屋根材は、前記波形スレート板屋根材の左右幅方向に所定の間隔をおいて設置した左右のクランプ金具の間に配し、左右の両側縁にそれぞれ左右のクランプ金具の側面に沿って立ち上がる起立部を設けた第1の金属板屋根材と、
前記左右のクランプ金具に跨って配し、左右の両側縁にそれぞれクランプ金具を覆う山部を設けた第2の金属板屋根材とで構成し、
第1および第2の金属板屋根材を波形スレート板屋根材の上に左右に交互に配置せしめ、第2の金属板屋根材の前記山部で、前記クランプ金具と一体にその側面に沿う前記第1の金属板屋根材の起立部を覆い、前記第1の金属板屋根材の山部を前記クランプ金具の上部にネジ締め固定するとともに前記山部で第1の金属板屋根材の側縁を押え付けるようになした屋根補修工法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−91890(P2013−91890A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232547(P2011−232547)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(592018582)綿半鋼機株式会社 (10)
【出願人】(000241474)トヨタT&S建設株式会社 (52)
【Fターム(参考)】