説明

展示ケース

【課題】複数の扉体が設けられた展示ケースにおいて、各扉体の前後移動の制御を安全に行うことができる展示ケースを提供すること。
【解決手段】少なくとも1枚の扉体6を略面一状態から前方に移動させた状態で、扉体6を左右方向に移動させることにより開口部5を開放させる展示ケース1であって、制御手段は、略面一状態から前方に移動された扉体6が閉塞可能位置に配置されているか否かを検出する扉位置検出手段51を有し、扉位置検出手段51の検出に基づいて、制御手段は、扉体6が閉塞可能位置に配置されていない場合に、扉体6とその扉体6に隣接する扉体6の各電動駆動手段13の駆動を阻止する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、博物館や美術館等に設置される作り付けの展示ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、博物館や美術館等の設置される作り付けの展示ケースでは、ガラス板の扉によりケース本体の開口部を閉塞するようになっており、この開口部を開放する際には、電動駆動手段により扉を前方に移動させた後に、手作業により扉を左右方向に移動させてケース本体の開口部を開放させるようになっている。そして、このような展示ケースには、前方に移動された扉が閉止可能位置にあるか否かを検出する扉位置センサが設けられ、この扉位置センサの検出信号に基づいて、扉がその前後動の途中で左右方向にずらされると、扉の前後動が自動的に停止するようになっており、扉を閉止させる際に、扉がケース本体の開口縁に衝突することを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−321972号公報(第7頁、第2,4〜5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の展示ケースにあっては、複数の扉体が設けられた展示ケースに適用した場合に、1枚の扉が前方に移動され、さらにその扉が左右方向にずれて配置されている状態で、その扉に隣接した扉を前方に移動させようとすると、隣接した扉が前方の扉に衝突してしまう虞がある。また、前方に移動された扉が閉止可能位置(閉塞可能位置)にあっても、その扉に隣接した扉が左右方向にずれて配置されていると、前方の扉を後方に移動させて閉塞させる際に、前方の扉が隣接した扉に衝突してしまう虞もある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、複数の扉体が設けられた展示ケースにおいて、各扉体の前後移動の制御を安全に行うことができる展示ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の展示ケースは、
透明板を有して展示スペースの前方の開口部を左右方向に略面一状態で閉塞する複数枚の扉体と、前記各扉体を前後方向に移動可能に支持する前後移動支持手段と、該各扉体を前後方向に移動させる電動駆動手段と、前記各電動駆動手段の駆動を制御する制御手段と、該各扉体を左右方向に移動可能に支持する左右移動支持手段と、を備え、少なくとも1枚の扉体を前記略面一状態から前方に移動させた状態で、該扉体を左右方向に移動させることにより前記開口部を開放させる展示ケースであって、
前記制御手段は、前記略面一状態から前方に移動された扉体が閉塞可能位置に配置されているか否かを検出する扉位置検出手段を有し、該扉位置検出手段の検出に基づいて、前記制御手段は、前記扉体が閉塞可能位置に配置されていない場合に、該扉体と該扉体に隣接する扉体の各電動駆動手段の駆動を阻止する制御を行うことを特徴としている。
この特徴によれば、略面一状態から前方に移動された扉体が、閉塞可能位置から左右方向に移動している場合には、扉位置検出手段の検出に基づいて、制御手段は、前方に移動された扉体とその扉体に隣接する扉体の各電動駆動手段の駆動を阻止し、各扉体の前後移動ができないようになり、そのため扉体同士の衝突が防止され、各扉体の前後移動の制御を安全に行うことができる。
【0007】
本発明の展示ケースは、
前記制御手段は、前記略面一状態から前方に移動された扉体が閉塞可能位置から左右いずれの方向に移動したかを識別する左右移動識別手段を有することを特徴としている。
この特徴によれば、左右移動識別手段の識別に基づいて、略面一状態から前方に移動された扉体が、左方側に移動されている場合には、制御手段は、前方に移動された扉体とその扉体の左方側に隣接する扉体の各電動駆動手段のみの駆動を阻止すればよく、かつ右方側に移動されている場合には、制御手段は、前方に移動された扉体とその扉体の右方側に隣接する扉体の各電動駆動手段のみの駆動を阻止すればよく、その他の扉体は電動駆動手段を駆動して自在に前後移動させることができる。
【0008】
本発明の展示ケースは、
前記左右移動識別手段は、複数の検出センサを有し、該各検出センサの検出状態の時系列変化により前記扉体が閉塞可能位置から左右いずれの方向に移動したかを識別することを特徴としている。
この特徴によれば、左右移動識別手段は、複数の検出センサの検出状態の時系列変化により、扉体が左右いずれの方向に移動したかを識別でき、低コストの簡素な構成の検出センサを用いて扉体の移動方向を検出できるようになる。
【0009】
本発明の展示ケースは、
前記扉体には、少なくとも2つの前記検出センサにより検出される被検出部が設けられ、前記左右移動識別手段は、いずれか1つの前記検出センサによる前記被検出部の検出状態が最初に変化することで、該扉体が閉塞可能位置から左右いずれの方向に移動したかを識別することを特徴としている。
この特徴によれば、扉体とともに移動される被検出部が、少なくとも2つの検出センサのうち、いずれか1つの検出センサによる検出状態を最初に変化させて、各検出センサの検出状態の時系列変化を生じさせるため、左右移動識別手段の構成を簡素化することができる。
【0010】
本発明の展示ケースは、
前記各検出センサは、前記扉体が閉塞可能位置に配置されている場合に、前記被検出部の左右端部をそれぞれ検出できる位置に配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、扉体が閉塞可能位置から左右いずれかの方向に移動されると、左右いずれかの検出センサの検出状態が即座に変化するようになり、扉体の電動駆動手段の駆動の阻止を即座に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例における展示ケースを示す正面図である。
【図2】展示ケースの上部及び下部の扉駆動装置を示す縦断正面図である。
【図3】上部の扉駆動装置を示す平面図である。
【図4】後方位置にある扉体及び扉駆動装置の状態を示す縦断側面図である。
【図5】前方位置にある扉体及び扉駆動装置の状態を示す縦断側面図である。
【図6】扉位置検出装置を示す平面図である。
【図7】扉位置検出装置を示す側面図である。
【図8】扉体の左右移動に伴う扉位置検出装置の状態変化を示す模式図である。
【図9】制御装置が行う扉駆動装置の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る展示ケースを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0013】
実施例に係る展示ケースにつき、図1から図5を参照して説明する。以下、図1及び図2の紙面手前側を展示ケースの正面側(前方側)とし、図3の紙面下側を展示ケースの正面側(前方側)とし、図4及び図5の紙面左側を正面側(前方側)として説明する。
【0014】
図1の符号1は、主に美術館や博物館等に設置される作り付けの展示ケースである。この展示ケース1は、その内部に大型の展示品2を展示できるようになっており、その後面側が室内の壁面に当接するように設置され、この展示ケース1内の展示スペース3に配置された展示品2を、鑑賞者4が展示ケース1の前方から鑑賞できるようになっている。
【0015】
図1に示すように、展示ケース1は、前方が開口する略箱型形状に形成されている。この展示ケース1は、前方の開口部5を閉塞する3枚の扉体6が左右方向に並設されている。各扉体6は、本発明における透明板としての透明なガラスパネル7と、ガラスパネル7の上下の後面に接着されたガイドレール8と、ガイドレール8を前後移動可能に支持する前後動フレーム9と、を有している。
【0016】
また、扉体6が閉塞しているときには、複数の扉体6が略面一状態に配置されるようになっている。また、各扉体6は、扉体6同士の隙間を塞ぐパッキン10を有しており、扉体6が閉塞しているときには、展示ケース1内部が密閉された状態となっている。
【0017】
尚、後述するように、扉体6が略面一状態から前方に移動されて、前方位置に配置されているときには、左の扉体6は右方に、右の扉体6は左方に、中央の扉体6は左右両方向に使用者の手動作業により移動させることができる。
【0018】
図4に示すように、展示ケース1の開口部5の上部には、左右方向に延設された上部フレーム11が設けられるとともに、開口部5の下部には、左右方向に延設された下部フレーム12が設けられている。特に図示はしないが、上部フレーム11と下部フレーム12とを連結する左右位置に配置された左右フレーム(図示略)が設けられており、これらの開口部5の周囲に配置されるフレーム11,12によって支持枠が構成されている。
【0019】
図2に示すように、上部フレーム11と下部フレーム12のそれぞれには、扉体6を前後方向に移動させるための本発明における電動駆動手段としての扉駆動装置13が取り付けられている。また、扉体6の上下には、幕板14が手前方向に開放可能に取り付けられており、扉駆動装置13が外側から見えないようになっている(図4参照)。
【0020】
扉体6の上下のガイドレール8及び上下の扉駆動装置13は、その構成を上下反転させた上下対称の略同一構成となっているので、上部側のガイドレール8及び扉駆動装置13について説明し、下部側のガイドレール8及び扉駆動装置13の説明を省略する。
【0021】
先ず、図4に示すように、扉体6の上部側のガイドレール8は、側面視で略E字形状をなしており、後方側に開口された上下2つのガイド溝部15,16が形成されている。尚、上下2つのガイド溝部15,16のうち、下方のガイド溝部16はあり溝となっている。ガイドレール8の後方には、本発明における支持フレームとしての前後動フレーム9が設けられている。尚、この前後動フレーム9の後方には照明器具(図示略)等が配置される。
【0022】
図2に示すように、前後動フレーム9の前面には、複数の配置箇所に回転軸が前後方向を向くローラ17(カムフォロア)が枢着されている。このローラ17によってガイドレール8が左右方向に移動可能に支持されるとともに、ローラ17がガイドレール8のガイド溝部16内で転動することにより扉体6が左右方向に移動可能になっている。尚、前後動フレーム9と、この前後動フレーム9の前面のローラ17と、ローラ17により支持されるガイドレール8とにより本発明の左右移動支持手段が構成される。
【0023】
ローラ17は、1つの前後動フレーム9における略所定間隔毎に設けられた4つの配置箇所に配置されている。尚、中央の前後動フレーム9の両端の配置箇所と、右の前後動フレーム9の左端の配置箇所と、左の前後動フレーム9の右端の配置箇所には、それぞれ3個のローラ17が連設された3連ローラ18設けられている。
【0024】
つまり前後動フレーム9における扉体6を開放させる際に、その扉体6が移動する開放方向(移動方向)の端部の配置箇所に3連ローラ18が設けられている。この3連ローラ18により扉体6が開放された際にガイドレール8及び各ローラ17に掛かる力が分散されるようになっている。尚、3連ローラ18は上下に配置された前後動フレーム9のうち、上方側の前後動フレーム9のみに設けられている。
【0025】
前後動フレーム9には、ローラ17が配置された位置よりも若干上方側にストッパー19が取り付けられている。このストッパー19は、ガイドレール8における上のガイド溝部15に遊嵌されており、このガイド溝部15の内部には、扉体6が開放される際にストッパー19に当たる突出部20が形成されている。このストッパー19の取り付け位置により扉体6の開口率が規定される。尚、本実施例では、扉体6の開口率が50%以上となっている。
【0026】
図2に示すように、前後動フレーム9の上面には、正面視で略L字形状をなす複数のローラ固定部材21が取り付けられている。尚、前後動フレーム9の左端には、一対のローラ固定部材21が対向するように配置されている。ローラ固定部材21には、回転軸が左右方向を向くローラ22(カムフォロア)が枢着されている。
【0027】
上部フレーム11には、ローラ22を前後方向に摺動可能に支持する固定レール23が固着されている。ローラ22とともに、ローラ固定部材21及び前後動フレーム9は、前後方向に自在に移動可能となっている。尚、固定レール23に前後移動可能に支持されるローラ22と、このローラ22を固定するローラ固定部材21と、前後動フレーム9とにより本発明における前後移動支持手段を構成している。
【0028】
図2に示すように、前後動フレーム9の上面には、左右に2枚の摺動プレート24が固定されている。左右の摺動プレート24の上方には、ネジ軸25がそれぞれ1本ずつ左右方向に延設されており、このネジ軸25は、その両端に取り付けられた2つのネジ軸支持部材26を介して上部フレーム11に固定されている。
【0029】
また、それぞれのネジ軸25には、2つのネジ軸支持部材26の間を移動する移動部材27が取り付けられている。尚、移動部材27の内側には、ネジ軸25と螺合するネジ溝が形成されており、ネジ軸25の回転とともに移動部材27が左右方向に移動されるようになっている。移動部材27には、その下方にピン28が取り付けられており、このピン28の先端部は、摺動プレート24に設けられた摺動溝29に係合されている。
【0030】
図3に示すように、摺動プレート24の摺動溝29は、平面視において後方から前方に向かって斜め方向に延びるように穿設されている。尚、左右の摺動プレート24の摺動溝29は、それぞれ左右対称に形成されている。
【0031】
また、ネジ軸25の後方には、ネジ軸25と平行してシャフト30が延設されており、このシャフト30には、移動部材27と接続され、かつ移動部材27を案内するリニアブッシュ32が取り付けられている。
【0032】
左右の摺動プレート24にそれぞれ対応したネジ軸25のネジ溝は、互いに逆向きに螺設されている。左右のネジ軸25は、シャフト31を介して連結している。更に、右側のネジ軸25の右端部には、ネジ軸25を駆動回転させる電動モータ33が連結されており、左側のネジ軸25の左端部には、ネジ軸25を手動で回転させることができる手動駆動ボックス34(手動駆動手段)が連結されている。尚、電動モータ33は、本発明における制御手段としての制御装置(図示略)によって制御される。
【0033】
図2及び図3に示すように、上部フレーム11には、扉体6の前後位置を検出するためのリミットスイッチ35が設けられている。このリミットスイッチ35は、左右2つで1組のスイッチとなっており、右側のネジ軸25の近傍に配置され、制御装置(図示略)に接続されている。
【0034】
この左右に配置されたリミットスイッチ35のうち、どちらかのリミットスイッチ35が移動部材27を検出するようになっており、一方のリミットスイッチ35が移動部材27を検出した場合には、扉体6が後方位置にあることを示し、他方のリミットスイッチ35が移動部材27を検出した場合には、扉体6が前方位置にあることを示している。制御装置(図示略)は、リミットスイッチ35による移動部材27の検出に基づいて、扉体6の前後位置を把握し、電動モータ33の駆動を制御している。
【0035】
展示ケース1の側部には、扉駆動装置13の電動モータ33を制御する制御装置(図示略)を有する扉駆動装置制御ボックス36が取り付けられている。使用者は、扉駆動装置制御ボックス36に設けられた各扉体6に対応した開ボタン及び閉ボタン(図示略)を操作することによって各扉体6の前後移動を行うことができるようになっている。
【0036】
尚、開ボタンと閉ボタンは電動モータ33を駆動させるボタンであり、開ボタンが押されたときにネジ軸25が正回転され、閉ボタンが押されたときにネジ軸25が逆回転されるようになっている。
【0037】
以下、中央の扉体6の開閉動作について説明する。左右の扉体6の開閉については、中央の扉体6の開閉動作と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0038】
先ず、図4及び図5に示すように、扉体6が開放される際には、扉体6を電動モータ33により前方に所定距離移動した後に、手動作業により左右方向に移動させることにより扉体6は開放される。尚、ここで所定距離とは、扉体6の厚みを超える程度の距離である。また、扉体6が後方に移動された位置を後方位置とし、扉体6が前方に移動された位置を前方位置とし、扉体6が後方位置にあり閉塞しているときと、その中心を同じくする扉体6の配置位置を閉塞可能位置として説明する。
【0039】
扉体6が後方位置にあるときには、右側のネジ軸25に設けられた移動部材27が右端位置に配置され、左側のネジ軸25に設けられた移動部材27が左端位置に配置されている(図2、図3参照)。また、前後動フレーム9の上方に設けられたローラ22は、固定レール23の後方位置に配置している(図4参照)。
【0040】
使用者が扉駆動装置制御ボックス36内の開ボタンを押すと、上下の電動モータ33が駆動してネジ軸25が回転する。左右のネジ軸25は、それぞれ逆向きのネジ溝が形成されているため、ネジ軸25は同じ方向に回転するが、左右のネジ軸25の回転とともに、右の移動部材27は左方に移動し、左の移動部材27は右方に移動する。
【0041】
図3に示すように、移動部材27とリニアブッシュ32とが接続されているため、移動部材27とともにリニアブッシュ32も同方向に移動する。尚、移動部材27にリニアブッシュ32が接続されていることにより、ネジ軸25の回転とともに移動部材27が回転してしまうのを防止することができる。
【0042】
移動部材27に取り付けられているピン28は、摺動プレート24の摺動溝29に嵌合しており、移動部材27及びピン28の移動とともに、摺動プレート24が前方に移動する。摺動プレート24は、扉体6に接着されたガイドレール8の上面に固定されているため、摺動プレート24が前方に移動することにより前後動フレーム9が前方位置まで移動される(図5参照)。
【0043】
また、前後動フレーム9が前方に移動されるに伴い、扉体6が前方位置に移動される。尚、前後動フレーム9が移動される際には、ローラ22は、固定レール23の後方から前方に移動して、前方に移動される扉体6が支持される。
【0044】
ネジ軸25の回転駆動により移動部材27が移動されて、左側のリミットスイッチ35が移動部材27を感知すると、制御装置(図示略)は、扉体6が前方位置まで移動したと判断し、電動モータ33を停止させる。このとき扉体6は、前方位置に配置され、前後移動した扉体6の後面は、隣接する左右の扉体6の前面よりも前方に配置されており、扉体6を左右に移動できる状態になる。
【0045】
そして、扉体6の左右方向の移動は手動作業により行われる。例えば、前方位置にある中央の扉体6が左方向に開放されると、扉体6の移動とともに、前後動フレーム9に取り付けられたローラ17がガイドレール8のガイド溝部16内で転動される。
【0046】
更に、扉体6が移動されると、ガイドレール8の後方に取り付けられた突出部20が、前後動フレーム9の前部に取り付けられたストッパー19に当接したところで扉体6の移動が規制される。そして、扉体6が開放された状態で、展示スペース3に対して展示品2の出し入れを行うことができる。
【0047】
尚、本実施例では、扉体6は、50%以上の開口率で開放された位置で、ガイドレール8の突出部20が前後動フレーム9のストッパー19に当接される。尚、左右の扉体6は左右のいずれか一方向にのみ開放される。そのため左右の扉体6のストッパー19及び突出部20は上部にのみ取り付けられている。
【0048】
また、中央の扉体6は左右両方向に開放されるため、左開放時に当接するストッパー19と突出部20は下部に、右開放時に当接するストッパー19と突出部20は上部に取り付けられ、使い分けされるように設置されている。
【0049】
次に、中央の扉体6が後方位置に移動される動きについて説明する。中央の扉体6が左方向に開放された場合は、使用者が右方向に手動で移動して閉塞可能位置に戻し、使用者が扉駆動装置制御ボックス36の閉ボタン(図示略)を押す。すると、上下の電動モータ33が駆動して、開ボタンを押したときと逆向きにネジ軸25が回転する。左右のネジ軸25の回転とともに、右のネジ軸25に取り付けられた移動部材27は右方に移動し、左のネジ軸25に取り付けられた移動部材27は左方に移動する。
【0050】
移動部材27とともにリニアブッシュ32も同方向に移動し、移動部材27とピン28が移動するとともに、ピン28に摺動溝29が係合された摺動プレート24が後方に移動される。摺動プレート24が後方に移動されることにより、前後動フレーム9が後方に移動される(図4参照)。
【0051】
また、前後動フレーム9が後方に移動されに伴い、扉体6が後方位置に移動される。
尚、前後動フレーム9が移動される際には、ローラ22は、固定レール23の前方から後方に移動して、後方に移動される扉体6が支持される。
【0052】
ネジ軸25の回転駆動により移動部材27が移動されて、右側のリミットスイッチ35が移動部材27を感知すると、制御装置(図示略)は、扉体6が後方位置まで移動したと判断し、電動モータ33を停止させる。
【0053】
図6に示すように、前後動フレーム9の上面部には、左右方向に並設された2つのフォトセンサ50(検出センサ)からなる扉位置検出装置51(扉位置検出手段)が設けられている。また、扉体6のガイドレール8上面部には、2つのフォトセンサ50により検出される1枚の遮光板52(被検出部)が設けられている。
【0054】
図7に示すように、フォトセンサ50には、スリット部53が設けられており、スリット部53の上部には、発光素子54が設けられ、スリット部53の下部には、受光素子55が設けられている。これら発光素子54と受光素子55とは、互いに対向するように配置されており、発光素子54から発される光を受光素子55が受光できるようになっている。
【0055】
遮光板52の後端部は、スリット部53に入るように配置されており、遮光板52は発光素子54からの光が受光素子55に到達しないように遮光することができる。また、遮光板52の左右幅は、2つのフォトセンサ50の各発光素子54の間の距離よりも、左右方向に略10mm程度大きい寸法に形成されている。
【0056】
更に、左右のフォトセンサ50は、扉体6が閉塞可能位置に配置されている場合に、遮光板52の左右端部をそれぞれ検出できる位置に配置されている。尚、2つのフォトセンサ50からなる扉位置検出装置51と遮光板52は、各扉体6に1組ずつ設けられている。
【0057】
扉体6が前後方向に移動する際には、ガイドレール8と前後動フレーム9は同時に前後移動するため、扉体6が前方位置または後方位置にある場合に、遮光板52は2つのフォトセンサ50のスリット部53に位置し、各発光素子54から発される光が各受光素子55に到達しないように遮断されている。
【0058】
前方位置にある扉体6を使用者が手動作業にて、閉塞可能位置から左右方向に移動させた際に、遮光板52の位置が左右方向にずれることによって、遮光板52がフォトセンサ50のスリット部53から外れて、発光素子54から発される光が受光素子55に到達されて受光状態となる。このフォトセンサ50の受光と遮光の状態変化を検出することで、制御装置(図示略)は、扉体6の左右方向の移動を把握できるようになっている。
【0059】
次に、図8を参照して、中央の扉体6を例に、扉体6が左方向に移動される際のフォトセンサ50の状態変化と、リレー回路による制御について説明する。
【0060】
図8(a)は、中央の扉体6が閉塞可能位置にあるときのフォトセンサ50と遮光板52の状態を示している。紙面左側のフォトセンサ50をDS1とし、紙面右側のフォトセンサ50をDS2とすると、DS1とDS2は、ともに遮光板52により遮光されており、DS1は遮光板52の左端部を検出でき、DS2は遮光板52の右端部を検出できるように配置されている。
【0061】
また、フォトセンサ50の受光と遮光の状態が伝達されるリレー回路(図示略)が設けられている。DS1の受光と遮光の状態変化はDSRリレーに伝達され、DS2の受光と遮光の状態変化はDSLリレーに伝達される。中央の扉体6が閉塞可能位置にあるときには、すなわちDS1及びDS2が遮光状態のときには、DSLリレー及びDSRリレーはオフになっている。
【0062】
更に、一方のリレーがオンになると他方のリレーはオフのままロックされるように制御される。つまり、最初にDS1が受光状態となるとDSRリレーがオンになるとともに、DSRリレーはロックされ、DS2が受光状態となってもDSLリレーがオンにならないようになっている。
【0063】
また、最初にDS2が受光状態となるとDSLリレーがオンになるとともに、DSLリレーがロックされ、DS1が受光状態となってもDSRリレーがオンにならないようになっている。尚、オンになったリレーが再度オフになった際に、他方のリレーのロックは解除されるようになっている。
【0064】
尚、制御装置(図示略)と、2つのフォトセンサ50(DS1,DS2)と、リレー回路(DSRリレー,DSLリレー)とにより、本発明における左右移動識別手段を構成している。
【0065】
このように各扉体6が左右方向に移動されることにより、DS1とDS2の2つのフォトセンサ50受光状態の時系列変化によって、DSLリレーとDSRリレーのオン/オフが制御される。制御装置(図示略)は、DSLリレーとDSRリレーのオン/オフ状態によって、扉体6が左右いずれの方向に移動したかを識別することができる。そのため、低コストの簡素な構成のフォトセンサ50を用いて扉体6の移動方向を検出できる。
【0066】
尚、制御装置(図示略)は、リレー回路の情報に基づいて扉駆動装置13の駆動可否を制御する。扉体6が閉塞可能位置から左右方向に移動された場合に、左右方向に移動された扉体6及び該扉体6の移動方向にある隣接する扉体6の各扉駆動装置13の電動モータ33が駆動されないようにインターロックが掛けられる。
【0067】
中央の扉体6が閉塞可能位置から左方向に移動されると、遮光板52が左方向に移動し、先ず、この遮光板52がDS2から離間してDS2が受光され、DSLリレーがオンになるとともに、DSRリレーがロックされる(図8(b)参照)。
【0068】
また、このとき後述する制御処理において、中央の扉体6と隣接する左側の扉体6の扉駆動装置13の電動モータ33にインターロックが掛けられるようになり、各電動モータ33の駆動が阻止される。
【0069】
そのため、例えば、この状態で中央の扉体6の左側にある扉体6を前方に移動させるように操作が行われても、左側の扉体6の電動モータ33はインターロックが掛けられているため駆動せず、隣接する扉体6同士の衝突を防止することができる。
【0070】
そして、中央の扉体6がさらに左方向に移動されると、遮光板52がDS1から離間してDS1が受光されるが、DSRリレーはロックされているためオフのまま変化しないようになっている(図8(c)参照)。
【0071】
続いて、中央の扉体6を左方向に開放した状態から右方向に移動して閉鎖可能位置に戻すときには、遮光板52が右方向に移動され、先ず遮光板52によりDS1が遮光される(図8(d)参照)。このときDSRリレーはロックされているためオフのまま変化しないようになっている。
【0072】
そして、中央の扉体6がさらに右方向に移動されて閉塞可能位置まで移動されると、遮光板52によりDS2が遮光され(図8(e)参照)、DSLリレーがオフになるとともに、DSRリレーのロックが解除される。また、中央の扉体6及び左側の扉体6の電動モータ33に掛けられたインターロックが解除される。
【0073】
尚、閉塞可能位置にある中央の扉体6が右方向に移動される場合には、最初にDS1が受光され、DSRリレーがオンになるとともに、DSLリレーがロックされる。そして、中央の扉体6がさらに右方向に移動されると、DS2が受光されるが、DSLリレーはロックされているためオフのまま変化しないようになっている。このとき中央の扉体6及び右側の扉体6の扉駆動装置13の電動モータ33にインターロックが掛けられるようになり、各電動モータ33の駆動が阻止される。
【0074】
また、左側の扉体6を右方向に移動して開放する際や、右側の扉体6を左方向に移動して開放する際の扉位置検出装置51の動作は、中央の扉体6の開放時と略同一となっている。尚、左右の扉体6は、その開放方向が左右のいずれか一方に限られるが、左右の扉体6は、その移動範囲に若干の遊びを持たせており、左側の扉体6が左方向に移動したり、右側の扉体6が右方向に移動したりする場合がある。そのため左右の扉体6にも、中央の扉体6と同様に左右に並設された2つのフォトセンサ50が設けられている。
【0075】
尚、遮光板52の端部からフォトセンサ50までの距離が5mm程度となっており、扉体6が閉塞可能位置から左右いずれかの方向に移動されると、左右いずれかのフォトセンサ50の検出状態が即座に変化するようになり、扉体6の電動モータ33の駆動の阻止を即座に行うことができる。
【0076】
尚、各扉体6の側面には、パッキン10が固着されているため、遮光板52の端部からフォトセンサ50までの間に5mm程度の距離があっても、左右の扉体6間に中央の扉体6を収めて閉塞させることができ、かつパッキン10により扉体6の側面同士の間に隙間が生じず、展示ケース1内部が密閉された状態となる。
【0077】
次に、使用者が扉駆動装置制御ボックス36を操作する際に、制御装置(図示略)が行う扉駆動装置13の制御処理について、図9のフローチャートを参照して説明する。尚、各扉体6の扉駆動装置13の制御処理は同一構成となっているため、中央の扉体6が操作対象となっている場合について説明する。
【0078】
図9に示すように、扉駆動装置13の制御処理では、先ず、Sa01のステップにおいて、制御装置は、開ボタンが押されたか否かを判定する。開ボタンが押された場合には、Sa02のステップに進み、開ボタンが押されていない場合には、Sa07のステップに進む。
【0079】
Sa02のステップにおいて、制御装置は、開ボタンが押された操作対象の扉体6が前方位置にあるか否かを判定する。ここで、操作対象の扉体6の前後位置は、リミットスイッチ35により判定できる。
【0080】
操作対象の扉体6が前方位置にある場合には、制御装置は扉駆動装置13の制御処理を終了してSa01のステップに戻り、操作対象の扉体6が前方位置にない場合には、Sa03のステップに進む。
【0081】
Sa03のステップにおいて、制御装置は、操作対象の扉体6が閉塞可能位置にあるか否かを判定する。この判定は、前述したとおり、操作対象の扉体6のDSLリレー及びDSRリレーのオン/オフ状態で判定でき、DSLリレーがオンの場合には、操作対象の扉体6が閉塞可能位置より左方向に移動しており、DSRリレーがオンの場合には、操作対象の扉体6が閉塞可能位置より右方向に移動している状態となっている。
【0082】
操作対象の扉体6が閉塞可能位置にない場合には、Sa06のステップに進み、ブザーを鳴らして使用者に報知するとともに、扉駆動装置13の制御処理を終了してSa01のステップに戻る。操作対象の扉体6が閉塞可能位置にある場合には、Sa04のステップに進む。
【0083】
尚、隣接する左右の扉体6は、中央の扉体6を前方位置に移動させる前に、既に前方位置に移動されている場合があり、その場合に、隣接する扉体6が閉塞可能位置からずれていると、中央の扉体6を前方位置に移動させる際に、隣接する扉体6に衝突してしまう虞があり、左右の扉体6が左右方向に移動しているか否かを判定する必要がある。これを防止するために、Sa04のステップにおいて、制御装置は、操作対象の扉体6に隣接する左右の扉体6が左右方向に移動しているか否かを判定する。
【0084】
Sa04のステップにおいて、制御装置は、左側の扉体6が右方側に移動しているか否かを判定するとともに、右側の扉体6が左方側に移動しているか否かを判定する。すなわち隣接する左右の扉体6が、操作対象の扉体6に対して近づく方向(重なる方向)に移動しているか否かを判定する。
【0085】
Sa04のステップの判定は、前述したとおり、隣接する扉体6のDSLリレー及びDSRリレーのオン/オフ状態で判定でき、左隣の扉体6のDSRリレーがオンであれば操作対象の扉体6の前方に左隣の扉体6が重なっており、右隣の扉体6のDSLリレーがオンであれば操作対象の扉体6の前方に右隣の扉体6が重なっていることを把握できる。
【0086】
すなわち、隣接する左右の扉体6が、操作対象の扉体6に対して近づく方向(重なる方向)に移動している場合には、操作対象の扉体6及び隣接する左右の扉体6の扉駆動装置13にインターロックが掛けられるようになる。
【0087】
この場合に制御装置は、Sa06のステップに進み、ブザーを鳴らして使用者に報知するとともに、扉駆動装置13の制御処理を終了してSa01のステップに戻る。尚、隣接する左右の扉体6が、操作対象の扉体6に対して近づく方向(重なる方向)に移動していない場合には、Sa05のステップに進む。
【0088】
Sa05のステップにおいて、制御装置は電動モータ33を駆動して、操作対象の扉体6が前方に移動される。そして、Sa02のステップに戻る。
【0089】
Sa02からSa05のステップが繰返し行われ、操作対象の扉体6が前方位置に移動されると、制御装置は扉駆動装置13の制御処理を終了し、操作対象の扉体6の移動が停止される。
【0090】
ここで、電動モータ33が駆動されて操作対象の扉体6が前方に移動中に、例えば、使用者が操作対象の扉体6に触れるなどして、閉塞可能位置から左右にずれた場合には、Sa03のステップからSa06のステップに進み、操作対象の扉体6の移動が停止される。
【0091】
また、隣接する扉体6が、操作対象の扉体6に対して近づく方向(重なる方向)にずれた場合も同様に、Sa04のステップからSa06のステップに進み、操作対象の扉体6の移動が停止される。このような場合には、使用者が操作対象の扉体6若しくは隣接する扉体6を閉塞可能位置に戻して、再度開ボタンを押すことにより操作対象の扉体6の駆動が再開される。
【0092】
Sa01のステップからSa07のステップに進んだ場合は、Sa07のステップにおいて、制御装置は、閉ボタンが押されたか否かを判定する。閉ボタンが押された場合には、Sa08のステップに進み、閉ボタンが押されていない場合には、扉駆動装置13の制御処理を終了してSa01に戻る。
【0093】
Sa08のステップにおいて、制御装置は、閉ボタンが押された操作対象の扉体6が後方位置にあるか否かを判定する。ここで、操作対象の扉体6の前後位置は、リミットスイッチ35により判定できる。
【0094】
操作対象の扉体6が後方位置にある場合には、制御装置は扉駆動装置13の制御処理を終了してSa01のステップに戻り、操作対象の扉体6が後方位置にない場合には、Sa09のステップに進む。
【0095】
Sa09のステップにおいて、操作対象の扉体6が閉塞可能位置にあるか否かを判定する。Sa03のステップと同様に、操作対象の扉体6のDSLリレー及びDSRリレーのオン/オフ状態で判定できる。操作対象の扉体6が閉塞可能位置にない場合には、Sa06のステップに進み、ブザーを鳴らして使用者に報知するとともに、扉駆動装置13の制御処理を終了してSa01のステップに戻る。操作対象の扉体6が閉塞可能位置にある場合には、Sa10のステップに進む。
【0096】
尚、隣接する左右の扉体6は、中央の扉体6を後方位置に移動させる前に、既に後方位置に移動されている場合があり、その場合に、隣接する扉体6が閉塞可能位置からずれていると、中央の扉体6を後方位置に移動させる際に、隣接する扉体6に衝突してしまう虞があり、左右の扉体6が左右方向に移動しているか否かを判定する必要がある。これを防止するために、Sa10のステップにおいて、操作対象の扉体6に隣接する左右の扉体6が左右方向に移動しているか否かを判定する。
【0097】
Sa10のステップにおいて、左側の扉体6が右方側に移動しているか否かを判定するとともに、右側の扉体6が左方側に移動しているか否かを判定する。すなわち隣接する左右の扉体6が、操作対象の扉体6に対して近づく方向(重なる方向)に移動しているか否かを判定する。
【0098】
Sa10のステップの判定は、前述したとおり、隣接する扉体6のDSLリレー及びDSRリレーのオン/オフ状態で判定でき、左隣の扉体6のDSRリレーがオンであれば操作対象の扉体6の後方に左隣の扉体6が重なっており、右隣の扉体6のDSLリレーがオンであれば操作対象の扉体6の後方に右隣の扉体6が重なっていることを把握できる。
【0099】
すなわち、隣接する左右の扉体6が、操作対象の扉体6に対して近づく方向(重なる方向)に移動している場合には、操作対象の扉体6及び隣接する左右の扉体6の扉駆動装置13にインターロックが掛けられるようになる。
【0100】
この場合に制御装置は、Sa06のステップに進み、ブザーを鳴らして使用者に報知するとともに、扉駆動装置13の制御処理を終了してSa01のステップに戻る。尚、隣接する左右の扉体6が、操作対象の扉体6に対して近づく方向(重なる方向)に移動していない場合には、Sa11のステップに進む。
【0101】
Sa11のステップにおいて、制御装置は電動モータ33を駆動して、操作対象の扉体6が後方に移動される。そして、Sa08のステップに進む。
【0102】
Sa08からSa11のステップが繰返し行われ、操作対象の扉体6が後方位置に移動されると、制御装置は扉駆動装置13の制御処理を終了し、操作対象の扉体6の移動が停止される。
【0103】
ここで、電動モータ33が駆動されて操作対象の扉体6が後方に移動中に、例えば、使用者が操作対象の扉体6に触れるなどして、閉塞可能位置から左右にずれた場合には、Sa09のステップからSa06のステップに進み、操作対象の扉体6の移動が停止される。
【0104】
また、隣接する扉体6が、操作対象の扉体6に対して近づく方向(重なる方向)にずれた場合も同様に、Sa10のステップからSa06のステップに進み、操作対象の扉体6の移動が停止される。このような場合には、使用者が操作対象の扉体6若しくは隣接する扉体6を閉塞可能位置に戻して、再度閉ボタンを押すことにより操作対象の扉体6の駆動が再開される。
【0105】
以上、本実施例における展示ケース1では、制御装置は、略面一状態から前方に移動された扉体6が閉塞可能位置に配置されているか否かを検出する扉位置検出装置51を有し、扉位置検出装置51の検出に基づいて、制御装置は、扉体6が閉塞可能位置に配置されていない場合に、扉体6とその扉体6に隣接する扉体6の各電動モータ33の駆動を阻止する制御を行うことで、略面一状態から前方に移動された扉体6が、閉塞可能位置から左右方向に移動している場合には、扉位置検出装置51の検出に基づいて、制御装置は、前方に移動された扉体6とその扉体に隣接する扉体6の各電動モータ33の駆動を阻止し、各扉体6の前後移動ができないようになり、そのため扉体6同士の衝突が防止され、各扉体6の前後移動の制御を安全に行うことができる。
【0106】
また、制御装置は、略面一状態から前方に移動された扉体6が閉塞可能位置から左右いずれの方向に移動したかを識別するリレー回路を有することで、リレー回路の識別に基づいて、略面一状態から前方に移動された扉体6が、左方側に移動されている場合には、制御装置は、前方に移動された扉体6とその扉体6の左方側に隣接する扉体6の各電動モータ33のみの駆動を阻止すればよく、かつ右方側に移動されている場合には、制御装置は、前方に移動された扉体6とその扉体6の右方側に隣接する扉体6の各電動モータ33のみの駆動を阻止すればよく、その他の扉体6は扉駆動装置13を駆動して自在に前後移動させることができる。
【0107】
また、リレー回路は、複数のフォトセンサ50を有し、各フォトセンサ50の検出状態の時系列変化により扉体6が閉塞可能位置から左右いずれの方向に移動したかを識別することで、リレー回路は、複数のフォトセンサ50の検出状態の時系列変化により、扉体6が左右いずれの方向に移動したかを識別でき、低コストの簡素な構成のフォトセンサ50を用いて扉体6の移動方向を検出できるようになる。
【0108】
また、扉体6には、少なくとも2つのフォトセンサ50により検出される遮光板52が設けられ、リレー回路は、いずれか1つのフォトセンサ50による遮光板52の検出状態が最初に変化することで、扉体6が閉塞可能位置から左右いずれの方向に移動したかを識別することにより、扉体6とともに移動される遮光板52が、少なくとも2つの検出センサのうち、いずれか1つのフォトセンサ50による検出状態を最初に変化させて、各フォトセンサ50の検出状態の時系列変化を生じさせるため、リレー回路の構成を簡素化することができる。
【0109】
また、各フォトセンサ50は、扉体6が閉塞可能位置に配置されている場合に、遮光板52の左右端部をそれぞれ検出できる位置に配置されることで、扉体6が閉塞可能位置から左右いずれかの方向に移動されると、左右いずれかのフォトセンサ50の検出状態が即座に変化するようになり、扉体6の電動モータ33の駆動の阻止を即座に行うことができる。
【0110】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0111】
例えば、前記実施例では、3枚の扉体6を左右方向に並設して展示ケース1の開口部5を閉塞しているが、4枚以上の枚数の扉体6を左右方向に並設して開口部5を閉塞するようにしてもよい。更に、扉体6を4枚以上で構成した場合には、その中央の2枚の扉体6をそれぞれ逆方向に開放させることで、より大きな開口とすることができる。
【0112】
より詳述すると、4枚以上の扉体6が並設される展示ケース1において、両端の扉体6以外の左右に隣接する中央の2枚の扉体6に関して、左側の扉体6が前方に移動されて左方向に開放された際に、右側の扉体6の扉駆動装置13を駆動させて前方に移動可能になり、右側の扉体6を右方向に開放することにより、開口部5を広く開放して展示品2を出し入れし易くすることができる。
【0113】
また、前記実施例では、中央の扉体6が左方向に移動された場合には、中央の扉体6と左側の扉体6の電動モータ33にインターロックを掛け、かつ中央の扉体6が右方向に移動された場合には、中央の扉体6と右側の扉体6の電動モータ33にインターロックを掛けるようにしているが、中央の扉体6が、左右どちらに移動された場合にも、左右両隣の扉体6の電動モータ33が駆動されないようにインターロックを掛けるようにしてもよい。
【0114】
また、扉位置検出装置51は、フォトセンサ50に限らず、展示ケース1の側部等に扉体6との距離を計測できるセンサを設置することで扉体6の左右方向の移動を検出するようにしてもよいし、その他これらに代わるセンサを用いて扉体6の左右方向の移動を検出するようにしてもよい。
【0115】
また、扉位置検出装置51は、左右に並設された2つのフォトセンサ50を用いて扉体6の左右移動を検出するようにしているが、フォトセンサ50は2つに限らず、それ以上の個数のフォトセンサ50を左右方向に並設して、各フォトセンサ50の検出状態の時系列変化により、扉体6の左右移動を検出するようにしてもよい。
【0116】
また、前記実施例では、扉体6を前方に移動させる際に、使用者が開ボタンを押下すると、電動モータ33が駆動されて扉体6が前方に移動され、扉体6の移動中に、使用者が開ボタンから手を離しても、扉体6が前方位置に移動されるまで電動モータ33が駆動され続けて、扉体6が前方位置まで移動されると自動的に電動モータ33が停止して扉体6が停止されるようになっているが、扉体9の制御はこれに限ることなく、例えば、使用者が開ボタンを押下し続けていることを条件に電動モータ33が駆動され続け、使用者が開ボタンから手を離した場合には、その時点で電動モータ33が停止されるようにして、使用者が扉体6を前後方向の任意の位置で停止できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 展示ケース
6 扉体
9 前後動フレーム(支持フレーム)
13 扉駆動装置(電動駆動手段)
33 電動モータ
34 手動駆動ボックス(手動駆動手段)
50 フォトセンサ(検出センサ)
51 扉位置検出装置(扉位置検出手段)
52 遮光板(被検出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明板を有して展示スペースの前方の開口部を左右方向に略面一状態で閉塞する複数枚の扉体と、前記各扉体を前後方向に移動可能に支持する前後移動支持手段と、該各扉体を前後方向に移動させる電動駆動手段と、前記各電動駆動手段の駆動を制御する制御手段と、該各扉体を左右方向に移動可能に支持する左右移動支持手段と、を備え、少なくとも1枚の扉体を前記略面一状態から前方に移動させた状態で、該扉体を左右方向に移動させることにより前記開口部を開放させる展示ケースであって、
前記制御手段は、前記略面一状態から前方に移動された扉体が閉塞可能位置に配置されているか否かを検出する扉位置検出手段を有し、該扉位置検出手段の検出に基づいて、前記制御手段は、前記扉体が閉塞可能位置に配置されていない場合に、該扉体と該扉体に隣接する扉体の各電動駆動手段の駆動を阻止する制御を行うことを特徴とする展示ケース。
【請求項2】
前記制御手段は、前記略面一状態から前方に移動された扉体が閉塞可能位置から左右いずれの方向に移動したかを識別する左右移動識別手段を有することを特徴とする請求項1に記載の展示ケース。
【請求項3】
前記左右移動識別手段は、複数の検出センサを有し、該各検出センサの検出状態の時系列変化により前記扉体が閉塞可能位置から左右いずれの方向に移動したかを識別することを特徴とする請求項2に記載の展示ケース。
【請求項4】
前記扉体には、少なくとも2つの前記検出センサにより検出される被検出部が設けられ、前記左右移動識別手段は、いずれか1つの前記検出センサによる前記被検出部の検出状態が最初に変化することで、該扉体が閉塞可能位置から左右いずれの方向に移動したかを識別することを特徴とする請求項3に記載の展示ケース。
【請求項5】
前記各検出センサは、前記扉体が閉塞可能位置に配置されている場合に、前記被検出部の左右端部をそれぞれ検出できる位置に配置されることを特徴とする請求項4に記載の展示ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−63954(P2011−63954A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213760(P2009−213760)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】