説明

展示装置

【課題】液晶ガラス等を用いて、物品の動作や機能を視覚的にわかりやすく表現できる展示装置を提供することである。
【解決手段】液晶ガラス20は不透明状態では、透明ガラススクリーン14のエッジガラス22上に描かれた自動車の絵が肉眼上把握される。液晶ガラス20が透明状態に移行すると、隠れていた自動車40が透明ガラススクリーン14を通して見える状態になる。次に、発光ダイオード30を点灯させる。この発光ダイオード30から発せられた光は、エッジガラス22を伝播し、エッジング22aにおいて乱反射し、エッジング22aが光っているように見える。エッジング22aは、エンジンルームから、自動車の居住空間に至る領域に設けられている。応力の大きさに応じて発光ダイオード30の発光する光の色彩が選択されているので、応力の伝播の様子を視覚的に明瞭に示すことができたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を展示する展示装置に関する。特に、物品の機能・動作・性質を見る者に対し視覚的に訴えることが可能な展示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の販売店において、販売の対象となる物品の展示は、売り上げに大きな影響を及ぼすため、極めて重要である。また。販売の場面だけでなく、各種博覧会や展覧会などに於いて、商品の機能や動作などを効果的に展示する手法は、極めて重要な検討事項である。
【0003】
そのため、従来から種々の展示手法が提案されてきた。
【0004】
従来の展示技術の例
例えば、下記特許文献1には、調光ガラスを用いたショーケースが示されている。調光ガラスは、よく知られているように、電圧を加える/加えないことによって透明/不透明状態を切り換えることができるガラスである。この調光ガラスを用いてショールームの小間をそれぞれ独立してその明るさを調整することができる。従って、通行者の関心を強く引きつけることが可能なショーケースが実現できると特許文献1には記載されている。
【0005】
なお、調光ガラスは、一般に液晶シートとガラス板とから構成されており、液晶ガラスとも呼ばれている。
【0006】
また、下記特許文献2には、立体空間と映像表現とスクリーンモニタとしても利用可能な映像ディスプレイ装置が開示されている。この特許文献2には、スクリーンが液晶ガラスで構成し、不透明状態でスクリーンとして使用可能であると共に、透明状態にして背面の映像も表示されるようにした構成が開示されている。
【0007】
このように、液晶ガラス(調光ガラス)は、従来にない新しい視覚的効果を演出することができるので、様々な物品・商品の展示・表示に利用することができると考えられている。液晶ガラスとしては、日本板硝子株式会社の「UMU」(登録商標)が知られている。このUMUの応用例が日本板硝子株式会社のWebサイトに種々記載されている。
【0008】
液晶ガラスの従来の応用例
このように液晶ガラスは透明/不透明状態を制御できるので、種々の視覚的効果を意図した応用が知られている。
【0009】
例えば、下記特許文献3には、エレベータのゴンドラに液晶ガラスを使用し、階によって透明/不透明状態を制御したシースルー型エレベータが開示されている。
【0010】
また、下記特許文献4には、展望用エレベータに液晶ガラスを用いて温度上昇を防止する仕組みが開示されている。
【0011】
また、下記特許文献5には、車両の天井に設けられる透明ルーフに液晶ガラスを用いる構成が開示されている。
【0012】
【特許文献1】特開平05−137633号公報
【特許文献2】特開平07−36108号公報
【特許文献3】特開平08−177341号公報
【特許文献4】特開平05−70060号公報
【特許文献5】特表2004−521812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
さて、このように液晶ガラスを用いて、見る者の視覚に訴える仕組みは種々知られている。
【0014】
しかし、近年、商品の機能の高度化とともに、その動作や機能をよりわかりやすく表現できる装置が望まれている。
【0015】
本発明は、係る課題に鑑みなされたものであり、その目的は、液晶ガラス等を用いて、物品の動作や機能を視覚的にわかりやすく表現できる展示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明は、上記課題を解決するために、展示物と前記展示物を見る者との間に設けられた透明ガラススクリーン、を備え、前記透明ガラススクリーンを介して前記展示物を展示する展示装置において、前記透明ガラススクリーンは、光の透過の程度を変化させることが可能な調光ガラスと、表面に、凹部又は凸部又は孔部が設けられた高透過ガラス透明板と、前記透明板の縁部の一部又は全部に設けられ、前記縁部から前記透明板に対して光を発する発光手段と、を含むことを特徴とする展示装置である。
【0017】
(2)また、本発明は、上記(1)記載の展示装置において、前記調光ガラスは、液晶シートと、透明ガラスと、から成る液晶ガラスであることを特徴とする展示装置である。
【0018】
(3)また、本発明は、上記(1)記載の展示装置において、前記透明板は、表面に、所定間隔で凹部又は凸部又は孔部が設けられていることを特徴とする展示装置である。
【0019】
(4)また、本発明は、上記(1)記載の展示装置において、前記発光手段は、位置によって、発光する色が異なることを特徴とする展示装置である。
【0020】
(5)また、本発明は、上記(1)記載の展示装置において、前記調光ガラス又は透明板の表面に、前記展示物の形状を示す図形が描かれていることを特徴とする展示装置である。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたように、本発明によれば、調光ガラスと、凹部等を設けた透明板に発光手段を組み合わせたので、よりダイナミックな表示が可能となり、見る者に物品を視覚的にアピールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づき説明する。
【0023】
1.全体構成
本実施の形態における展示装置10の正面図が図1に示されているこの図1に示すように、展示装置10は、台12と、透明ガラススクリーン14とから構成されている。透明ガラススクリーン14の表面には、展示の対象物である自動車の簡単な絵が示されている。そして、図14の状態では、この透明ガラススクリーン14は不透明状態である。透明ガラススクリーン14の裏には、展示対象である自動車が配置されているが、図1の状態では透明ガラススクリーン14に隠れて、見る者からは見えない。
【0024】
なお、この絵は、後述するように、裏に隠れている自動車40を表示した際にはその自動車40と重畳して見えるので、線を主体とする絵(線画)とすることが好ましい。
【0025】
透明ガラススクリーン14の断面図が図2に示されている。この図2は、透明ガラススクリーン14が台12と接する部分を中心とした断面図である。
【0026】
透明ガラススクリーン14は、液晶ガラス20と、エッジガラス22を貼り合わせることによって構成されている。
【0027】
液晶ガラス20は、硬質ガラス20aの表面に液晶シート20bを貼った構造をしている。そして、この液晶シート20bに電圧を加えるための電極(不図示)が引き出されており、外部の制御装置(不図示)にこの電極は接続している。
【0028】
液晶ガラス20は、この液晶シート20bに電圧を加えることによって透明状態になり、また、電圧を加えなければ不透明状態に変化する。このように、透明/不透明状態が電圧を加えることによって切り換えられるので、上述したように液晶ガラス14aは、調光ガラスとも呼ばれる。液晶ガラス20は、6枚程度に分割されている。それぞれの液晶ガラス20はその上辺に電極を有し、その電極から所定の配線が引き出されており、制御装置に接続している。
【0029】
エッジガラス22は、図2に示すように、その表面にエッジング22aを施したガラス板である。エッジング22aとは、図2に示すようにガラス板表面に設けた凹部を言う。この凹部は、このようなエッジング22aを設けることによって、このエッジング22a部分に光を当てることによってエッジング22aを光らせることができる。
【0030】
図2に示すように、透明ガラススクリーン14の基部には、発光ダイオード30が所定間隔で設けられており、エッジガラス22に対してその縁部から光を照射することができる。例えば、20mm間隔でこの発光ダイオード30がエッジガラス22の縁部に設けられているのである。このような構成によって、発光ダイオード30の光を受けてエッジング22aが所定の色の光に光るのである。発光ダイオード30への電力は図示されていない制御装置から供給される。
【0031】
2.動作
本実施の形態で説明する展示装置10は種々の動作を実行することができるが、以下の説明では、自動車の衝突時における安全性を視覚的にわかりやすく表示する動作を例として説明する。
【0032】
本実施の形態の展示装置10においては、図示されていない制御装置が、以下の事項を制御する。
【0033】
・液晶ガラス20の透明/不透明状態
・発光ダイオード30の点灯/消灯状態
さらに、この制御装置は、予めプログラムされたシーケンスで、上記の状態を、時間と共に変化させる。また、単に発光ダイオード30の点灯/消灯だけでなく、明滅状態(点滅状態)にすることも可能である。以下、制御の一例を説明する。
【0034】
まず、図1の段階では、液晶ガラス20は不透明状態である(液晶シート20bに電圧加えず)。その結果、この展示装置10を見る者は、透明ガラススクリーン14の液晶ガラス20上に描かれた自動車の絵を肉眼上見ることになる(図1)。
【0035】
次に、所定の制御装置からの電圧が液晶ガラス20(液晶シート20b)に加えられ、液晶ガラス20は不透明状態から透明状態に移行する。この様子が図3に描かれている。
【0036】
液晶ガラス20は透明であり、エッジガラス22も透明であるので、透明ガラススクリーン14は透明となり、裏に隠れていた自動車40が透明ガラススクリーン14を通して見える状態になる(図3)。ここで示す例では、この自動車40は正面衝突状態の自動車40である。
【0037】
このように、不透明状態から透明状態に液晶ガラス20を変化させることによって、透明ガラススクリーン14上に描かれた絵から、実際に衝突実験で用いた車両を見ることができ、両者を比較することによってどのようなダメージが車両に与えられたのかを視覚的に把握することができる。
【0038】
次に、発光ダイオード30を点灯させる。すると、この発光ダイオード30から発せられた光は、エッジガラス22を伝播し、エッジング22aにおいて乱反射する。その結果、エッジング22aが光っているように見える。このエッジング22aは所定間隔(例えば20mm等)で設けられている。
【0039】
本実施の形態では、このエッジング22aが自動車40の形状に合わせた領域に設けられている。この様子が図4に示されている。図4は、図3において、エッジング22aが設けられている領域を拡大した拡大図である。図3や図1ではエッジング22aは光っていないので省略して図示されていない。
【0040】
さて、この図4においては、エッジング22aの光によって、衝突時の応力の伝播を表現している。この図4においては、応力がエンジンルームを伝わる間に十分に減衰し、人が搭乗する居住空間には応力の影響が見られないことを表現しようとしている。
【0041】
図4に示すように、エッジング22aは、エンジンルームから、自動車の居住空間に至る領域に設けられている。そして、図4に示すように、その部分に係る応力の大きさに応じて発光ダイオード30の発光する光の色彩が選択されている。図4に示すようにエンジンルーム部分は、強い応力を示すためにその部分の発光ダイオード30は、「赤」の光を発する。また、タイヤハウスの後部はやや弱い応力を表すため「橙」の光を発する。また、居住空間とタイヤハウスの間の空間は、さらに弱い応力を表すため「緑」を光を発する。そして、居住空間の周囲では、応力が非常に弱いことを示すために「青」の光を用いている。
【0042】
このように、本実施の形態において特徴的なことは、エッジガラス22の縁部に設けられいる発光ダイオード30の発する光の色が各領域毎に異なっていることである。このような構成を採用することによって、応力の伝播の様子を視覚的に明瞭に示すことができたのである。
【0043】
特に、本実施の形態では、発光ダイオード30を明滅させて、自動車の前方から公報に向けて、光が流れるように演出を行った。このように発光手段の明滅を制御し光が流れるような演出・表示自体は従来から行われていたことであり、本実施の形態でも従来のそのような表示手法を踏襲すれば良い。
【0044】
以上述べたような手法によって、自動車40が衝突した場合の車体の変形や、衝突の際の応力の伝播の様子を、視覚的に明瞭に示すことができ、より説得力のある展示をすることが可能である。
【0045】
3.応用例・変形例
(1)液晶ガラス20を、透明状態/不透明状態に変化させる例を示したが、部分的にこれらの状態を制御することも好ましい。例えば、上述した動作例では、液晶ガラス20を透明状態にして、隠れていた自動車40を目視可能な状態に置いたが、この際、部分的に隠す、又は部分的に見えるような状態に置くことも演出上効果的である。例えば、居住空間は不透明状態に維持する等の制御も好ましい。
【0046】
(2)液晶ガラス20を不透明状態のまま、発光ダイオード30を発光させ、エッジガラス22のエッジング22aを光らせることも好ましい。例えば、不透明状態の場合と、透明状態の場合とで、発光させるダイオード30を変えることによって、衝突前後の様子をわかりやすく説明することが可能である。
【0047】
(3)透明ガラススクリーン14の構成要素として液晶ガラス20を用いたが、液晶シート20bを貼り付けた透明部材であれば他の材質を用いることも好ましい。
【0048】
(4)自動車40の絵を液晶ガラス20に描いたが、エッジガラス22に絵を描くことも好ましい。
【0049】
(5)エッジガラス22上に設けたエッジング22aは、円筒状の穴であるが、四角(正方形・長方形)や三角など、他の形状でも良い。また、円錐や三角錐等の形状でも好ましい。また、エッジング22aは、半球状の穴でも良い。要するに、何らかの凹部であれば良い。さらに、エッジング22aは、加工上の都合がつけば、凸状の形態を採用してもかまわない。さらに、エッジング22aは、貫通した孔の形状を採用してもかまわないし、溝状の形状を採用することも好ましい。
【0050】
(6)発光ダイオード30としては、種々の色の光を採用することが可能である。また、いわゆるフルカラー発光ダイオードを用いて、色彩を切り換えたり、色彩を時間と共に滑らかに(又は急峻に)変化するように構成することも好ましい。
【0051】
(7)また、発光ダイオード30は、エッジガラス22の周辺の縁近傍であれば何処に取り付けても良い。エッジガラス22の一辺だけでなく、二辺以上に取り付けてもかまわない。また、もちろん、エッジング22aが存在する部分にだけ取り付ければ十分である。
【0052】
(8)また、発光ダイオード30の代わりに他の発光手段を採用することも好ましい。例えば、各種電球、蛍光灯、小型の冷陰極線管等が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】展示装置の正面図である。
【図2】透明ガラススクリーンの断面図である。
【図3】液晶ガラスが不透明状態から透明状態に移行した後の様子を示す説明図である。
【図4】エッジングが自動車の形状に合わせた領域に設けられている様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 展示装置
12 台
14 透明ガラススクリーン
16 ボルト
20 液晶ガラス
20a 硬質ガラス
20b 液晶シート
22 エッジガラス
22a エッジング
30 発光ダイオード
40 自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
展示物と前記展示物を見る者との間に設けられた透明ガラススクリーン、を備え、前記透明ガラススクリーンを介して前記展示物を展示する展示装置において、
前記透明ガラススクリーンは、
光の透過の程度を変化させることが可能な調光ガラスと、
表面に、凹部又は凸部又は孔部が設けられた透明板と、
前記高透過ガラス透明板の縁部の一部又は全部に設けられ、前記縁部から前記高透過ガラス透明板に対して光を発する発光手段と、
を含むことを特徴とする展示装置。
【請求項2】
請求項1記載の展示装置において、
前記調光ガラスは、液晶シートと、透明ガラスと、から成る液晶ガラスであることを特徴とする展示装置。
【請求項3】
請求項1記載の展示装置において、
前記透明板は、表面に、所定間隔で凹部又は凸部又は孔部が設けられていることを特徴とする展示装置。
【請求項4】
請求項1記載の展示装置において、
前記発光手段は、位置によって、発光する色が異なることを特徴とする展示装置。
【請求項5】
請求項1記載の展示装置において、
前記調光ガラス又は透明板の表面に、前記展示物の形状を示す図形が描かれていることを特徴とする展示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−219154(P2007−219154A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39632(P2006−39632)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(503005320)株式会社 エス・ディー・エル (3)
【Fターム(参考)】