説明

層厚測定装置を有する道路舗装機

【課題】新たに敷設された道路舗装の層厚を、出来る限り精確且つ実用的に記録することの出来る道路舗装機を提供する。
【解決手段】センサ2と平面4上の表面のポイント8との間の距離を決定するために、センサ2は、平面4までの距離測定を間隔を置いて行うように構成される。更に、2個のセンサ2のうちの1個により座標系6を規定する。層厚測定装置1は、座標系6を規定するセンサ2によって測定した、ベクトルとしての平面4までの距離と、1個のセンサによって規定される座標系6の、道路舗装機の走行によって生じる平面4に対する移動とを加算するように、構成される。このようにして第1ベクトル9が決定でき、層厚測定装置1によって第1ベクトル9を第2ベクトル7と共に使用して、敷設材料の層厚を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の道路舗装機、及び請求項15の技術的特徴を有する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路建設中に作製される層の厚さは、連続的に、できればリアルタイムで測定されるべきである。実際には精度に関する要求が比較的高いため、スクリードの前の場所で平面が記録され、これを、作製した道路舗装の厚さとしてスクリードの後縁部と直接組合せても、平面の凹凸を考慮に入れていないので、不十分である。
【0003】
実際には、直接測定によって、例えば超音波又はレーダによって道路舗装の厚さを決定するシステムが、知られている。しかしながら、この場合の欠点として、正確に境界層の場所を特定するために、道路舗装の厚さを正確に測定するための反射体をある程度使用しなければならないという点がある。
【0004】
新たに作製した道路舗装の層厚を決定する別の方法では、測定体を新たに敷設した層内に滑り込ませる。しかしながら、これは結果的に、新たに敷設した舗道にかなりの損傷を与えてしまうことがある。
【0005】
更なる既知の方法では、平面について測定した値を保存したり、組合せたりするが、全ての値を互いに関連付けるのに、基準を使用している。
【0006】
また、実際には、層厚は、傾斜センサを使用しても計算される。これについては、例えば、独国公開特許出願第DE10025462A1号に記載されている。同文献では、高さセンサの位置とスクリード後縁部との間の所定距離と、路盤上方の記録された高さと、傾斜センサによって決定される、牽引アーム―スクリード組立体の決定された傾斜とに基づいて、層厚を決定する装置を開示している。
【0007】
しかしながら、傾斜センサを使用することで、あらゆる種類の加速度の影響を受け易くなり、そのために測定結果が不正確になるという技術的な欠点がある。特に、傾斜センサは、測定中に、スクリード組立体に伝達される揺動や振動によって妨害されてしまう。傾斜センサの僅かな誤差のために、層厚の計算において大きな誤差が発生してしまう。
【0008】
同じく、平面の表面を忠実に再生するために多数の距離センサが必要な場合には、適切な基準を作成するために、センサの全ての測定値を相互に関連付けなければならいので、厄介である。この方法は、複雑であり、適切な基準を決定するための高価な設備を更に必要とする。
【0009】
実際には、新たに敷設した道路舗装の層厚を決定するために、外部基準も使用されている。そのために、外部基準は、道路舗装機と並べて位置決めされるか、道路舗装機に取付けられている。しかしながら、層厚を連続的に決定するために、まず対象部分全体にそうした基準を備えるか、基準を所定間隔で移動させるかしなければならないので、実用的ではない。
【0010】
独国特許出願公開第DE10025474A1号では、道路舗装機によって路盤に塗布される敷設材料の層厚を決定する装置について記載されており、道路舗装機は、トラクタと、高さを調節できるようにトラクタに回転可能に取付けられる少なくとも1つの牽引アームと、該牽引アームと共に牽引アーム―スクリード組立体を形成する、少なくとも1つの牽引アームに固定して取着されるフローティングスクリードと、ベースの下側に存在させる下部キャリッジとを有する。同装置は、動かない方法でトラクタに取着された、トラクタの基準位置と牽引アーム―スクリード組立体の基準位置との相対距離を測定する距離センサを更に含み、トラクタの基準位置は、下部キャリッジの下側と所定の位置関係を有し、牽引アーム―スクリード組立体の基準位置は、スクリードの下側後縁部と所定の位置関係を有する。
【0011】
独国特許第DE19851153C1号は、走行面プロファイルを度量衡学的に記録する、走行面を測定する方法に関する。同文献では、走行面を、特に、例えば高速道路工事又は修理作業のフレームワークにおいて多数のコーティング又は層で構築される街路や高速道路といった交通領域としている。また、同発明は、移動式検査装置を用いて該方法を実行するシステムにも関する。
【0012】
欧州特許出願公告第EP0510215B1号では、走行面の被覆厚を調節する装置について記載している。該装置は、高さセンサと傾斜センサを含み、これらのセンサ全てを、スクリードの移動に追従するように、スクリード組立体に配設している。
【0013】
米国特許第7,172,363B2号は、舗装機について言及している。該舗装機は、電源、牽引システム、舗装材料を保持するよう構成されたホッパ、該ホッパから舗装材料を移送するよう構成された1つ又は複数のコンベアを有することができる。該舗装機は、舗装機の前部に取付けられる少なくとも1個の前センサであって、表面から前センサまでの高さを測定するために構成される前センサと、舗装機の後部に取付けられる少なくとも1個の後センサであって、マットの表面から後センサまでの高さを測定するために構成される後センサとを更に備える。また、舗装機は、少なくとも1個の前センサによって記録された1つ又は複数の前部高さ測定値と、少なくとも1個の後センサによって記録された1つ又は複数の後部高さ測定値との間の差を決定することで、マットの厚さを決定するように構成するコントローラも含む。センサは、スクリードに永久的に連結された支持体に取付けられる。
【0014】
冒頭で述べた傾斜センサの使用に問題が無いわけではないが、このような方法で凹凸のある路盤について生成された傾斜基準を無視することは、道路舗装の層厚の正確な測定を行えなくなるため、妥当ではない。
【発明の概要】
【0015】
現在の技術水準で生じる問題や不利な点を考慮すると、本発明の目的は、簡単で、発展的な技術的特徴を使用して、新たに敷設された道路舗装の層厚を、出来る限り精確且つ実用的に記録することである。
【0016】
この目的は、請求項1の技術的特徴、及び請求項15の方法に関する技術的特徴によって達成される。
【0017】
本発明の改良した更なる発展形については、従属請求項の技術的特徴によって与えられる。
【0018】
本発明は、可動スクリードを有し、且つ少なくとも2個のセンサを備えた層厚測定装置を有する道路舗装機に関する。センサと平面上の表面にあるポイントとの間の距離をベクトルによって決定するために、平面までの距離測定を間隔を置いて行うようにセンサを構成し、上記ポイントをセンサで記録する。また、2個のセンサのうちの1個により、座標系を規定する。本発明によれば、座標系を規定するセンサによって測定された、ベクトルによる平面までの距離に、1個のセンサによって規定される平面までの座標系の、道路舗装機の走行によって生じる平面に対する移動を組合せる、例えば加算するように、層厚測定装置はなっている。結果的に、層厚測定装置によって、敷設材料の層厚を決定するために第2ベクトルと共に使用できる第1ベクトルが決定できる。
【0019】
本発明により、道路舗装機の走行中に、敷設した道路舗装の層厚を精度良く測定することができるようになる。本発明による層厚測定装置は、層厚を測定するために傾斜センサ無しで済ませられる点が有利である。更にまた、距離測定に使用するセンサを、道路舗装機の加速度に反応しないものにできる。
【0020】
本発明を使用することで、更なる反射体を備えずに、道路舗装の正確な層厚を決定できる。また同様に、本発明の場合、通常かなりの労力を使って舗装部分に沿って配置する必要がある、又は場合によっては道路舗装機の舗装走行中に移動させる必要がある外部基準が、全く必要なくなる。
【0021】
座標系の変位を記録することによって、簡単かつ斬新なベクトル計算によってそこから層厚を判断するための傾斜基準を、簡単な方法で生成できる。このようにして、凹凸を層厚の計算において考慮することが同様に可能となる。
【0022】
また、本発明による層厚測定装置は、簡単且つ経済的に製造でき、多大な労力をかけずに、道路舗装機の異なる場所に取付けることができる。
【0023】
本発明の更なる実施形態では、層厚測定装置は、舗装走行中の路盤に対する座標系の変位を記録する評価ユニットを含む。評価ユニットは、長手方向及び高さの変位だけでなく、2時点間の座標系の傾きに関する変化も決定するために、センサによって間隔を置いて行った高さ測定の測定結果を記録するように、構成されている。舗装走行中の特定の時点で、評価ユニットを使用して、高さ測定が既に実行されていて、かつ敷設材料を既に導入している1箇所で層厚を記録することができる。
【0024】
好適には、舗装機の操作担当者が利用可能なオペレータインタフェースによって、評価ユニットから視覚的にリアルタイムで計算した層厚の結果を読出すことができるようにすることができる。
【0025】
好適には、層厚測定装置は3個(又はそれ以上)のセンサを含む。層厚測定装置は、3個のセンサによって、特定の精度で、層厚を計算するための傾斜基準を生成できる。また、測定結果を更に向上させるために、少なくとも2個のセンサをそれぞれ含む少なくとも2つのセンサ群を、層厚測定装置に設けることも考えられる。各センサ群の複数のセンサを、進行方向の、又は進行方向と直交する方向の一列に配設すると、有利である。
【0026】
また、平面までの距離測定が間隔を置いて行えるように全てのセンサを構成すると、有利である。それにより、所定距離を置いて正確な層厚測定値が読出可能になる。更に、各センサ群の測定結果を用いて、各センサ群に対する平均距離を生成し、これを使用して座標系の変位を測定できるように、評価ユニットを構成することができる。それによって、各平均値の決定において極端な高低差を除外するように評価ユニットを構成してもよい。結果的に、舗装部分の隣付近に存在する工事用具が、測定結果に悪影響を及ぼすことがなくなる。
【0027】
本発明の更なる実施形態では、進行方向において最後尾のセンサ又は最後尾のセンサ群によって、座標系を規定する。結果的に、第1ベクトルの計算だけでなく、座標系に関する変位の記録も簡素化できる。
【0028】
改良した実施形態では、全てのセンサ又はセンサ群が、進行方向での距離に関して、互いに等距離に配設されている。この距離によって、簡単な方法で、平面までの距離が間隔を置いて測定される手段を保証することができる。
【0029】
好適には、座標系を規定するセンサから少なくとも特定距離だけ又は特定距離の倍数だけ戻された場所で層厚を測定するように、層厚測定装置が構成されている。これにより、センサ又はセンサ群が離間している距離又はその倍数だけ、瞬間的に高さを測定した場所に対して戻された場所を振り返ることで、層厚を測定できる。
【0030】
本発明の更なる実施形態では、層厚測定装置は、道路舗装機に対して固定して配設された支持体を含む。好適には、層厚測定装置の各センサは、支持体に等距離で配設されている。支持体を道路舗装機に直接取付けることで、支持体自体、特に支持体に取付けた層厚測定装置が、頑丈に支持され、従って距離測定中に悪影響を及ぼす可能性がある振動を、全く又は殆ど取り入れないという技術的な利点がある。
【0031】
それに代わる手段として、層厚測定装置は、スクリードに対して固定して配設されたホルダを有することができる。センサは、このホルダにも等距離で配設されるべきである。スクリードに対して層厚測定装置を固定して取り付けることで、スクリードを上下させる作動シリンダの位置を、層厚を計算する際に考慮に入れずに済むという技術的な利点がある。それにより、層厚の計算が簡素化され、計算時に間違う可能性が減少する。
【0032】
本発明の更なる実施形態では、スクリードを支持する牽引機に直接センサが配設される。この配設によって、センサを支持体又はホルダに配設する場合よりも道路舗装機の総重量を軽くでき、この重量の軽量化により、燃料消費量を減少させることができる。
【0033】
本発明の更なる実施形態では、スクリードは後縁部を含み、層厚測定装置から、特に座標系を規定するセンサから該後縁部までの距離は、第2ベクトルを規定している。スクリードの後縁部によって第2ベクトルを規定するための、信頼でき簡単な基準が形成される。
【0034】
本発明の更に有利な実施形態では、層厚測定装置は、道路舗装機の進行方向に見たときに、スクリードの後ろに一定距離に配設された、つまり後縁部の後ろに配設されたセンサ(例えば第4の)を有する。好適には、このセンサは、スクリードの後ろに敷設したばかりの材料までの距離を測定するように構成される。この下流センサは、舗装材料がもう変形しない、後縁部から十分に離隔した距離に配置されるので、特に正確に層厚を決定できる。
【0035】
前述したセンサ又はセンサ群と同様に、スクリードの後ろに配設されたセンサを、好適には同じ支持体又は同じホルダに取付け、支持体又はホルダをスクリードより後方に突出させる。結果的に、該センサと座標系を規定するセンサとの間の距離を一定に保てる。(第4)センサに代わる手段として、進行方向に直交して、第4センサと列を成して配設された更なるセンサでこれを補うこともできる。このように、この場合もまた、センサに関して先に記述したように、評価ユニットによって新たに敷設した舗道に対する平均距離を計算することができる。
【0036】
平面、又は新たに敷設した道路舗装の表面までの距離を測定するセンサは、好適には、音声及び/又は光学センサ、特に超音波又はレーザセンサである。このように、非接触による距離測定も可能である。
【0037】
本発明による道路舗装機に加えて、本発明は、道路舗装機によって平面に敷設される敷設材料の層厚を測定する方法にも関する。道路舗装機は、可動スクリードと、少なくとも2個のセンサを含む層厚測定装置とを支持し、各センサと、平面の表面にあるポイントとの間の距離を決定するために、センサにより、距離測定を間隔を置いて行い、上記ポイントをセンサによって記録する。更にまた、センサのうちの1つで座標系を規定する。本発明によると、層厚測定装置は、座標系を規定するセンサによってベクトルとして以前に決定した距離を、道路舗装機の走行によって生じる、1個のセンサによって規定された座標系の平面に対する移動に加算して、第1ベクトルを決定する。更に、層厚測定装置は、層厚を決定するために、第1ベクトルが、少なくとも第2ベクトルに加算されるようにする。
【0038】
本発明による道路舗装機に関して上述した本発明による方法により、同じ利点が結果的に得られる。
【0039】
本発明の目的を達する実施形態を、図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】層厚を測定する本発明の道路舗装機で使用される、層厚測定装置の実施形態を示している。
【図2】図1の本発明の層厚測定装置の、時点T−1と時点Tでの平面に対する位置を示している。
【図3】時点T−3、T−2、T−1、Tの順で、層厚測定装置が間隔を置いて移転したところを示している。
【図4】層厚を決定するのに使用される第1ベクトルを決定する概略図を示している。
【図5】本発明の道路舗装機に取付けられる支持体を備えた層厚測定装置を示している。
【図6】スクリードに取付けられるホルダを備えた層厚測定装置を示している。
【図7】スクリードを支持する牽引部にセンサが直接取付けられた本発明の実施形態を示している。
【図8】スクリードの後ろに配置された第4センサを有する層厚測定装置の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1では、層厚測定装置1の有利な実施形態を示している。層厚測定装置1は、互いに等距離である、距離L1ずつ離間して配設された3個のセンサ2a、2b、2cを含む。センサ2a、2b、2cは、図1で平面4に実質的に水平に示したホルダ3に配設されている。進行方向Vに見て最後尾のセンサ2cが座標系6を規定している。座標系6は、ホルダ3に実質的に平行に配置されたX軸と、ホルダ3に実質的に直交して配置されたY軸とを含む。
【0042】
同じく、図1は、平面4に敷設した表面5を有する道路舗装を示している。第1ベクトル9は、座標系6の原点から、平面4にあるポイント8へと指向している。第2ベクトル7は同じく、座標系6の原点から、新たに敷設した層の表面5にあるポイント10を指向している。道路舗装の層厚11は、ポイント8とポイント10との間で示される。
【0043】
図1から更に続けると、座標系6を規定するセンサ2cと層厚決定用に提供された場所との間には、センサ2cから水平方向に突出して又はセンサ2cの測定方向と直交して、距離L2があり、上記場所での層厚は、離間するポイント8と10に反映されている。距離L2は、座標系6の原点と、層厚測定を実行すべき場所との距離を定めている。好適には、距離L2を、距離L1と等しくする、又は図1で示したように、距離L1の倍数に対応させる。
【0044】
3センサ2a、2b、2cは、基準座標系6に対して幾何学的に規定された位置を有する。3センサ2a、2b、2cを使用して、カバーされた経路及び高さ変位に加えて基準座標系6の傾きの変化を記録するために、異なる時点T−3、T−2、T−1、Tでの平面4までの距離測定を間隔を置いて実行することができる(図3参照)。
【0045】
図2は、層厚測定装置の基準座標系6の、進行方向における異なる時点T1とTでの変位を示している。図2では、高さ変位vy、進行方向Vに沿った、長手方向変位vxの他、傾きα1の変化によって、基準座標系6の変位を示している。時点T−1では、センサ2a、2b、2cはそれぞれ、ポイントP2、P3、P4まで延びる平面4までの距離を記録する。道路舗装機が進行方向Vに移動することで、時間がオフセットされ、最後尾のセンサ2cで規定される基準座標系6は、高さ変位vyだけ移転するだけでなく、長手方向変位vx移動し、傾斜角α1だけ回転し、その結果、時点Tでの層厚測定装置の位置となる。時点Tで、センサ2a、2b、2cは、それぞれポイントP1、P2、P3まで延びる平面4までの距離を決定する。それによって、距離測定が、センサ2a、2b、2c間の距離、つまり距離L1に対応する間隔で行われたことになる。
【0046】
図3では、進行方向Vに沿った時点T−3、T−2、T−1、Tでの、層厚測定装置1の移転について示しており、センサ2a、2b、2cは、距離L1の間隔で平面4までの距離測定を行っている。層厚測定装置1、特に基準座標系6は、間隔から間隔、つまり距離L1をカバーする間に様々に移動することが分かるが、この移動は、平面4の凹凸によって説明できる。即ち、凹凸をオフセットするために、スクリードが異なる高さに設定される。平面4までの距離は、センサ2a、2b、2cによって所定間隔毎に記録される。
【0047】
図3では、例えば、センサ2bが時点Tで指向したポイントP2と同じポイントP2をセンサ2aは、時点T−1で指向することを示している。この計算では、舗装走行中は、傾きは僅かな変化のみ発生するものと仮定している。
【0048】
図4では、時点T−3からTまでの基準座標系6の変位をベクトルによって示している。ベクトル9は、時点Tで、基準座標系6から、図1に示した場所8を指すポイントP6に向かっている。ベクトル9は、時点Tでの基準座標系6の位置をカバーするために、時点T−3における過去の位置での、センサ2cによって記録された距離12の変化から生じている。これは、時点T−3でセンサ2cによって記録される距離12と、vy3、vx3、vy2、vx2、vy1、vx1を介したベクトル経路との合計によって得られる。結果的に、走行中に発生する基準座標系6の傾きα1、α2、α3の変化は、層厚11を計算する際に考慮される。ベクトル9は、場所8、即ち、層厚が測定されるポイントP6を決めることになる。
【0049】
図5は、支持体13によって道路舗装機20、特に道路舗装機20のシャーシに取付けられている好都合な層厚測定装置1を示している。支持体13はホルダ3に垂直に取付けられ、該ホルダは、センサ2a、2b、2cを支えている。支持体13は、平面4に対し実質的に垂直に調節されている。また、図5は、道路舗装機20の可動牽引アーム17を示しており、スクリード16が牽引アーム17に取付けられている。スクリード16は後縁部18を備え、該後縁部は、層厚11を決定するのに好適な場所10に沿って走行する。場所10については、図1に表わされている。牽引アーム17は、高さを調節できるように、作動シリンダ14、15によって支持されている。作動シリンダ14、15が作動することによって、対応する高さが調節され、平面4の凹凸をオフセットして、平坦な道路舗装がスクリード16で敷設できるようになる。
【0050】
また、図5は、各センサの測定結果を記録するために、センサ2a、2b、2cに点線で概略的に示したように電気的に接続される評価ユニット30を示している。評価ユニット30は更にセンサ31、32に接続され、作動シリンダ14、15の位置を記録して、これを評価ユニット30に渡して層厚11を決定する。道路舗装機20と牽引アーム17の幾何学的形状によってだけでなく、評価ユニット30が記録した作動シリンダ14、15の位置によって、基準座標系6に対する、後縁部18の位置が決定できる。その結果、評価ユニット30は、第1ベクトル9と組合せて層厚11とするために、座標系6と後縁部18の所定位置との間の第2ベクトル7を決定できる。
【0051】
図6は、図5とは異なり、道路舗装機に層厚測定装置1を直接取付けたところを示してはおらず、その代わりにスクリード16に取付けたところを示している。層厚測定装置1は、ホルダ3を延伸させたホルダ19によってスクリード16に取付けられている。3個のセンサ2a、2b、2cをホルダ19によってスクリード16に固定して直接連結しているので、場所10で、又はスクリード16の後縁部18の下で層厚11を決定するために、作動シリンダ14、15の位置を計算する必要がない。それによって、基準座標系6に対するスクリード16の後縁部18の距離は一定となる。同様に、センサ2a、2b、2cを直接牽引アーム17に取付けた場合、ホルダ19無しで済ますことができる。これについては、図7に示している。それによって、センサ2a、2b、2cは、進行方向Vと反対方向に高くなるように牽引アーム17に配設され、距離L1だけ互いに離隔している。最後尾のセンサ2cと後縁部18との間の水平距離は、距離L1の倍数に相当するL2である。
【0052】
図8の更なる実施形態では、層厚測定装置1は、進行方向Vに見てスクリード16の後ろに配設された第4センサ2dを更に含むことを示している。層厚測定装置1は、層厚を計算する際にスクリード16や道路舗装機20の幾何学形状とは無関係にさせるために、センサ2dを含む。図8によると、層厚11を、スクリード16の後縁部18の下で決定せず、その代わりに、座標系6に対する既知の位置に配置されるセンサ2dの下で決定する。センサ2dにより、構築する層の表面5までの距離21を測定する。距離21とセンサ2c、2dの相対位置によって、評価ユニット30は第2ベクトル7を決定できる。その結果、層厚11は第1ベクトル9で計算できる。
【0053】
本発明により、測定する2ポイント間の傾斜の変化が僅かである場合に傾斜センサなしで傾斜基準を記録でき、その結果、センサ費用を軽減できる。加速度や振動に対する全ての傾斜センサの感度、及びそうした感度によってもたらされる不正確さのため、層厚測定で得られる精度は更に有利なものとなる。
【符号の説明】
【0054】
1 層厚測定装置
2 センサ
4 平面
6 座標系
7 第2ベクトル
9 第1ベクトル
11 層厚
16 可動スクリード
20 道路舗装機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動スクリード(16)と、少なくとも2個のセンサ(2)を備えている層厚測定装置(1)とを有する道路舗装機(20)であって、
前記センサ(2)のうちの1個は座標系(6)を規定し、前記少なくとも2個のセンサ(2)と平面(4)上の表面にあるポイント(P)との間の距離を決定するために、前記少なくとも2個のセンサ(2)は、平面(4)までの距離測定を間隔を置いて行うように構成され、前記ポイント(P)は前記センサ(2)によって記録され、
前記層厚測定装置(1)は、前記座標系(6)を規定する前記センサ(2)によって測定された、前記平面(4)までの距離と、前記1個のセンサ(2)によって規定される前記座標系(6)の前記平面(4)に対する移動とをベクトルとして組合せるように構成され、前記移動は第1ベクトル(9)を決定するために道路舗装機(20)の走行によって生じ、前記第1ベクトルは、前記敷設材料の前記層厚(11)を決定するために、第2ベクトル(7)と一緒に使用されることを特徴とする道路舗装機。
【請求項2】
前記層厚測定装置(1)は、前記座標系(6)の変位を記録するように構成された評価ユニット(30)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の道路舗装機。
【請求項3】
前記層厚測定装置(1)は、少なくとも3個のセンサ(2a、2b、2c)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の道路舗装機。
【請求項4】
前記少なくとも3個のセンサ(2a、2b、2c)全ては、間隔を置いて前記平面(4)までの距離測定を行うように構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の道路舗装機。
【請求項5】
前記少なくとも3個のセンサ(2a、2b、2c)全ては、進行方向に互いに等距離である所定距離(L1)で配設されていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の道路舗装機。
【請求項6】
前記進行方向で最後尾のセンサ(2c)によって、前記座標系(6)を規定することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の道路舗装機。
【請求項7】
前記層厚測定装置(1)は、前記座標系(6)を規定する前記センサ(2c)から少なくとも前記距離(L1)の距離にある場所、又は前記距離(L1)の倍数の距離にある場所で、層厚(11)を測定するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の道路舗装機。
【請求項8】
前記層厚測定装置(1)は、前記道路舗装機(20)に対して固定して配設された支持体(13)を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の道路舗装機。
【請求項9】
前記層厚測定装置(1)は、スクリード(16)に対して固定して配設されたホルダ(19)を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の道路舗装機。
【請求項10】
前記支持体(13)又はホルダ(19)は、前記センサ(2a、2b、2c)を前記距離(L1)ずつ離間して支持していることを特徴とする、請求項8又は9に記載の道路舗装機。
【請求項11】
前記センサ(2a、2b、2c)は、前記スクリード(16)を支持する牽引アーム(17)に直接配設されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の道路舗装機。
【請求項12】
前記道路舗装機(20)のスクリード(16)は、前記層厚測定装置(1)と共に、前記第2ベクトル(7)を規定する後縁部(18)を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の道路舗装機。
【請求項13】
前記層厚測定装置(1)は、前記進行方向(V)に見て前記スクリード(16)の後ろに配設されるセンサ(2d)を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の道路舗装機。
【請求項14】
前記層厚測定装置(1)と共に、前記センサ(2d)によって、前記第2ベクトル(7)を規定することを特徴とする、請求項13に記載の道路舗装機。
【請求項15】
道路舗装機(20)によって平面(4)に敷設された敷設材料の層厚(11)を決定する方法であって、
前記道路舗装機(20)は、可動スクリード(16)と、少なくとも2個のセンサ(2)を備えた層厚測定装置(1)とを有し、
前記センサ(2)のうちの1個により、座標系(6)が規定され、前記各センサ(2)と前記平面(4)上の表面にあるポイント(P)との間の距離を決定するために、前記センサ(2)は、間隔を置いて距離測定を行い、前記ポイント(P)は前記センサ(2)によって記録され、
前記層厚測定装置(1)は、前記層厚を決定するために第1ベクトルを決定し、前記座標系(6)を規定する前記センサ(2)によって以前に決定された距離と、前記1個のセンサ(2)によって規定される前記座標系(6)の前記平面(4)に対する移動がベクトルとして加えられ、前記移動は前記道路舗装機(20)の走行によって生じ、
前記層厚測定装置(1)は、前記層厚(11)を決定するために、前記第1ベクトル(9)を、少なくとも第2ベクトル(7)に加算することを特徴とする、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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