説明

層状触媒組成物を使用する選択的水素化法および前記触媒の調製

【課題】C8−C19ジオレフィンとC8−C19モノオレフィンとを含む炭化水素混合物中においてC8−C19ジオレフィンをC8−C19モノオレフィンへと選択的に水素化する方法の提供。
【解決手段】第一耐火性無機成分(例えばコージライト)を含む内部コアに第二耐火性無機成分(例えばアルミナ)が結合された外層を持つものの上にIUPAC周期表10族の金属(例えばPd)と同周期表11族の金属(例えばCu)を分散した層状触媒組成物を使用することにより8〜19個の炭素原子を有するジオレフィンをモノオレフィンへと選択的に水素化する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
【発明の開示】
【0002】
[0001]本発明は、炭化水素の選択的水素化に関する。更に詳しくは、本発明は、C−C19ジオレフィンをC−C19モノオレフィンへと選択的に水素化する触媒の使用および調製に関する。
【0003】
発明の背景
[0002]本発明は、C−C19ジオレフィンをC−C19モノオレフィンへと選択的に水素化する層状触媒の使用および調製に関する。C−C19モノオレフィンは、アルキルベンゼン洗剤前駆体の製造における有用な中間体である。層状触媒組成物は、層状組成物担体上にIUPAC周期表10族の金属および11族の金属を含む。担体は、コージライトのような耐火性無機成分の内部コアと、ガンマアルミナのような耐火性無機成分の外層とを含む。
[0003]今日の世界市場で市販されている大部分の洗剤は、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LABS)から作られている。直鎖アルキルベンゼンスルホネートは、分岐したものよりも迅速に生分解するので、好ましい。LABSは、直鎖アルキルベンゼン(LAB)から製造される。石油化学工業では、触媒の存在下で、直鎖パラフィンを直鎖オレフィンへと接触脱水素し、次いで、直鎖オレフィンでベンゼンをアルキル化することによって、LABが製造されている。この直鎖パラフィン脱水素工程は、その主生成物として直鎖モノオレフィンを生成する。しかしながら、直鎖パラフィンの接触脱水素工程は、ある量の直鎖ジオレフィンを生成させることも公知である。これらのジオレフィンは、モノオレフィンと同じようにベンゼンをアルキル化しないので、所望の洗剤前駆体を生成しない。選択的ジオレフィン水素化により、ジオレフィンをモノオレフィンへと転化させ、次いで、それを使用してLABを生成させることができる。LAB法の詳細な概要は、米国特許第5,276,231号に示されており、また、前記特許の内容は本明細書に完全に引用したものとする。
【0004】
[0004]ジオレフィン留分または不飽和炭化水素留分を選択的に水素化するための現在の工業的実行は、185℃(365°F)の適度に高い温度で運転する硫化ニッケル触媒の使用に基づく。触媒から生成物への硫黄の損失が起こるので、硫黄を補充して触媒活性と触媒の運転を最適に保たなければならない。更に、硫黄が生成物へと失われたら、場合によっては、生成物から硫黄を除去しなければならないので、別のレベルの処理が増える。米国特許第4,992,157号では、アルミナ/粘土担体上に硫化ニッケルとIUPAC周期表10族の金属とを含む選択的水素化触媒が記載されている。
[0005]特開昭54−157507に記載されているような他のタイプの選択的水素化法も公知である。特開昭54−157507は、アルミニウム担体上パラジウム触媒を使用して、石油化学プロセスで得られるオレフィン留分中に存在するアセチレンとメチルアセチレン(アルキン)を選択的に水素化することを記載している。特開昭54−157507に記載されている触媒は、球状または円筒形の形状であって、サイズ、長さおよび直径が約1−20mmであるアルファアルミナ担体上に薄いアルミナコーティングを含む。硝酸アルミナ、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウムなどであることができるアルミナ前駆体を、アルファアルミナ担体上に被覆し、次いで、その被覆されたアルファアルミナ担体とアルミナ前駆体を400℃(752°F)〜700℃(1292°F)で熱処理してアルファアルミナ担体上に薄いアルミナコーティングを作る。塩化パラジウム、硝酸パラジウムなどのようなパラジウム化合物を適当な溶媒に溶かし、次いで、アルミナコーティングに施用してパラジウムを含む富化表面コーティングを効率的に付与する。特開昭54−157507には、エチレンを含む組成物に存在するアセチレンを選択的に水素化する場合に、得られた触媒を使用することが記載されている。
[0006]本明細書で開示される方法は、関連の硫黄添加のための硫化ニッケル触媒を使用する必要性(いくつかの場合では、生成物からの硫黄のその後の除去)を排除する層状触媒を使用して、比較的高い空間速度でC−C19ジオレフィンをC−C19モノオレフィンへと選択的に水素化することを可能にするために開発された。
【0005】
情報開示
[0007]米国特許第2003/0036476 A1号には、コアと、コアを囲んでいるシェアを有する被覆された触媒が記載されており、また、コアは不活性の担持材から成っている。シェルは、多孔質担体物質から成っており、また、シェルはコアに物理的に結合している。元素周期表の10族および11族の金属から成る群より選択される触媒活性金属は、シェルにおいて微粉形態で存在する。被覆された触媒は、不飽和炭化水素、特に低級のC−C不飽和炭化水素の選択的還元に適すると記載されている。
[0008]参照によりその内容を完全に引用したものとする米国特許第6,177,381 B1号には、炭化水素を脱水素するための改良された耐久性および選択性を示す層状触媒組成物、触媒を調製する方法および前記組成物を使用する方法が記載されている。
触媒組成物は、アルファアルミナのような内部コアと、ガンマアルミナのような外部耐火性無機酸化物から成る、内部コアに結合された外層とを含む。外層の上には、白金のような白金族金属および錫のような促進剤金属が一様に分散されている。組成物は、リチウムのような変性剤金属(modifier metal)も含む。触媒組成物は、外層と内部コアとの間の結合を増加させる、ポリビニルアルコールのような有機結合剤を使用することによって、調製される。この触媒は、水素化に適しているとも記載されている。
【0006】
発明の概要
[0009]本明細書で開示される方法は、少なくともC−C19ジオレフィンとC−C19モノオレフィンとの混合物を含む炭化水素流を処理するために層状触媒を使用する。本発明の方法および触媒を使用して、比較的高い空間速度で且つ混合物中に元々存在しているC−C19モノオレフィンを実質的に水素化せずに、C−C19ジオレフィンをC−C19モノオレフィンへと選択的に水素化する。層状触媒を調製する方法も本明細書で提供する。
[0010]本発明の一つの実施態様にしたがって、C−C19ジオレフィンとC−C19モノオレフィンとを含む炭化水素混合物中においてC−C19ジオレフィンをC−C19モノオレフィンへと選択的に水素化する方法を提供する。その場合、前記方法は:
(i)選択的な水素化条件下で炭化水素混合物を触媒と接触させてC−C19モノオレフィン生成物を実質的に生成させる工程を含み;
前記触媒は
(a)第一耐火性無機成分を含む内部コア、
(b)少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属とがその上に分散された第二耐火性無機成分を含む、前記内部コアに結合された外層を含む。
【0007】
上で規定した実施態様の一つの面では、本方法は、外層を内部コアに結合させた後に、第二耐火性無機成分の上に少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属を堆積させる工程を含む方法によって触媒を調製することを更なる特徴とすることができる。実施態様の別の面では、本方法は、第二耐火性無機成分の上に少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属を堆積させている間、外層を液相中に存在させることを更なる特徴とすることもできる。
[0011]本発明の別の実施態様にしたがって、第一液相を含む選択的水素化条件下において、C−C19ジオレフィンとC−C19モノオレフィンとを含む炭化水素混合物中においてC−C19ジオレフィンをC−C19モノオレフィンへと選択的に水素化するための層状触媒組成物を調製する方法を提供する。その場合、前記触媒は:
a.第一耐火性無機成分を含む内部コア、
b.少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属とがその上に分散された第二耐火性無機成分を含む、前記内部コアに結合された外層を含み、
前記方法は:
i)内部コアを第二耐火性無機成分を含むスラリーで被覆し、その被覆されたコアの上に、第二液相の存在下において、少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属を堆積させ、その被覆コアを乾燥させ、そして、外層を内部コアに結合させ且つ層状担体を提供するのに充分な時間、400〜900℃(752〜1652°F)の温度で焼成する工程;および
ii)還元条件下で工程i)の生成物を還元して層状触媒組成物を提供する工程
を含む。
【0008】
一つの面において、この実施態様は、少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属を、含浸工程によって第二耐火性無機成分上に分散させることを更なる特徴とすることができる。
[0012]本明細書で開示される選択的な水素化法は、従来法に比べて、ジ不飽和化合物(diunsaturates)の所定の反応温度および平衡転化率のために比較的より高い空間速度で運転することができると考えられる。本発明をいかなる特定の理論にも限定しないならば、本明細書で開示される選択的水素化法で使用される層状触媒は、従来の触媒と比較して、反応体および生成物の拡散をあまり制限しないと考えられる。その結果として、特定の平衡転化率を達成するのに要する温度はより低くいだろうこと、また、所定の転化率において、より高い空間速度が、反応器温度が極端に高くなくても達成され得るだろうことも予期される。而して、必要とされる触媒も少なく且つ反応器も小さいので、結果として本方法の資本コストは低いと考えられる。
[0014]本発明の実施態様および目的は、以下の詳細な説明により、更に明らかになるだろう。
【0009】
発明の詳細な説明
【0010】
[0015]上記したように、選択的水素化法と、選択的水素化法で使用するための層状触媒組成物を、本明細書で開示する。
【0011】
[0016]詳しくは、本明細書で開示する方法は、C−C19モノオレフィンの混合物におけるC−C19ジオレフィンの選択的水素化に関する。C−C19ジオレフィンは、対応するC−C19モノオレフィンへと選択的に水素化され、その場合、元のC−C19モノオレフィンは殆どまたは全く水素化されない。所望のC−C19モノオレフィン生成物は、典型的には灯油沸点範囲であり、アルキルベンゼン洗剤前駆体の製造における中間体である。選択的水素化は、C−C19ジオレフィンとC−C19 モノオレフィンとを含む炭化水素混合物を、選択的水素化条件下で、本発明の層状触媒と接触させるときに起こる。好ましい選択的水素化条件としては、例えば、圧力0kPa(g)(0psi(g))〜13,789kPa(g)(2000psi(g))、温度30℃(86°F)〜180℃(356°F)、H対ジオレフィンのモル比1:1〜2:1、好ましくは1.1:1〜1.5:1、そして液空間速度(LHSV)0.1〜20hr−1が挙げられるが、それらに限定されない。
【0012】
[0017]層状触媒組成物は、外層に比べて、触媒金属前駆体に関して実質的に低い吸着容量を有する、耐火性無機成分から成る内部コアを含む。内部コアに適する耐火性無機成分としては、アルファアルミナ、シータアルミナ、炭化ケイ素、金属、コージライト、ジルコニア、チタニアおよびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。内部コアにとって好ましい無機成分は、コージライトである。
【0013】
[0018]内部コアは、様々な形状、例えばペレット、押出物、球体または不規則に成形された粒子へと成形できる。しかしながら、すべての材料が任意の形状へと成形できるわけではないと認識される。内部コアの調製は、オイルドロッピング(oil dropping)、加圧成形、金属成形、ペレタイジング、粒状化、押出、ローリング法およびマルメライジング(marumerizing)のような当業において公知の手段によって行うことができる。球状または円柱状内部コアが好ましい。成形内部コアを調製したら、それを、400℃(752℃)〜1500℃(2732°F)の温度で焼成する。
【0014】
[0019]次いで、内部コアを、内部コアとして使用できる無機成分と同じかまたは異なる耐火性無機成分の外層で被覆する。外層に適する耐火性無機成分としては、アルファアルミナ、シータアルミナ、炭化ケイ素、金属、コージライト、ジルコニア、チタニア、ガンマアルミナ、デルタアルミナ、イータアルミナ、シリカ/アルミナ、ゼオライト、非ゼオライトモレキュラーシーブ(NZMS)およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。耐火性成分のこの外層は、外層の重量を基準として50〜200m/gの比較的大きな表面積を有するものである。外層厚は、50〜300ミクロン、好ましくは50〜100ミクロンである。外層は、その表面全体に分散される多くの細孔を有する。触媒の外層中の細孔は、好ましくは65〜75オングストロームの平均細孔半径を有する。しかしながら、細孔半径サイズ分布は、20〜250オングストロームで変化する。細孔容積は、外層の厚さおよび細孔の平均半径に実質的に比例する。外層が厚さ100ミクロンである場合、総細孔容積は0.10〜0.15cc/gである。外層が厚さ200ミクロンである場合、総細孔容積は0.20〜0.30cc/gである。触媒の重量を基準として、厚さ100ミクロンの外層を有する触媒の表面積は35m/gであり、厚さ200ミクロンの外層を有す触媒の表面積は65m/gである。
【0015】
[0020]シリカ/アルミナは、シリカとアルミナの物理的混合物ではないが、共ゲル化または共沈させた酸性で非晶質の材料を意味していることに留意すべきである。この用語は、当業において公知であり、そのすべての内容を参照により本明細書に完全に引用したものとする、例えば米国特許第3,909,450号、米国特許第3,274,124号および米国特許第4,988,659号を参照されたい。ゼオライトとしては、例えばゼオライトY、ゼオライトX、ゼオライトL、ゼオライトベータ、フェリエ沸石、MFI、モルデン沸石およびエリオン沸石が挙げられるが、それらに限定されない。非ゼオライト系モレキュラーシーブ(NZMS)は、アルミニウムおよびケイ素以外の元素を含むモレキュラーシーブであり、その例としては、米国特許第4,440,871号に記載されているシリコアルミノホスフェート(SAPO)、米国特許第4,793,984号に記載されているELAPO、米国特許第4,567,029号に記載されているMeAPOが挙げられる(前記特許のすべての内容は参照により本明細書に完全に引用したものとする)。外層に好ましい無機成分はガンマアルミナである。
【0016】
[0021]ガンマアルミナを調製する好ましい方法は、その内容を参照により本明細書に完全に引用したものとする米国特許第2,620,314号に記載されている公知のオイルドロップ法によるものである。オイルドロップ法は、当業において教示されている技術のうちの任意の技術によって、好ましくは、アルミニウム金属を塩酸と反応させ;ヒドロゾルを適当なゲル化剤、例えばヘキサメチレンテトラアミンと組み合わせ;そして、その得られた混合物を高温(93℃(199°F))に維持した油浴中へと滴下することによって、アルミニウムヒドロゾルを形成させることを含む。混合物の液滴は、それらが固まってヒドロゲル球を形成するまで、油浴中に残留させる。次いで、球を連続して油浴から取り出し、典型的には特異的に熟成させ、そしてオイルおよびアンモニア性溶液中で乾燥処理して、それらの物理的特性を更に向上させる。次いで、得られた熟成されゲル化された球を、洗浄し、80℃(176°F)〜260℃(500°F)の比較的低い温度で乾燥させ、そして455℃(851°F)〜705℃(1301°F)の温度で1〜20時間焼成した。この処理により、ヒドロゲルは、対応する結晶性ガンマアルミナへと転化する。
【0017】
[0022]外部耐火性成分のスラリーを形成し、次いで、当業において公知の手段によってそのスラリーで内部コアを被覆することによって層を生成させる。無機成分のスラリーは、通常はペプタイザーの使用を含む当業において公知の手段によって調製できる。例えば、遷移アルミナのうちの任意のものを、水および酸と、例えば硝酸、塩酸、または硫酸と混合してスラリーを生成させる。あるいは、アルミニウムゾルは、例えば、塩酸中にアルミニウム金属を溶かし、次いで、アルミニウムゾルとアルミナ粉末とを混合することによって、作ることができる。
【0018】
[0023]スラリーは、内部コアに層材料を接着させるのに役立つ有機結合剤も含むことができる。この有機結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、それらに限定されない。スラリーに加えられる有機結合剤の量は、スラリーの重量を基準として0.1重量%〜3重量%とかなり変化する。外層が内部コアにどのくらい強く結合されるかは、摩耗試験中に失われる層材料の量(すなわち磨損)で測定できる。磨耗による第二耐火性成分の損失は、米国特許第6,177,381 B1号の実施例11に記載されている方法で、触媒を撹拌し、微粉を集め、そして摩損を計算することによって測定される。上記の有機結合剤を使用することにより、摩損は、外層の10重量%未満であることを見出した。
【0019】
[0024]外部耐火性無機成分の粒径にしたがって、粒径を小さくし且つ同時により狭い粒径分布を得るために、スラリーを粉砕する必要があるかもしれない。これは、30分〜5時間、好ましくは1.5〜3時間、ボールミル粉砕のような当業において公知の手段によって行うことができる。狭い粒径分布を有するスラリーを使用すると、内部コアに対する外層の結合が向上することを見出した。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、PVAのような結合剤は、外層材料と内部コアとの間に連結を作るのに役立つと考えられる。それが、PVAがコアの表面張力を低下させることによって、または、いくつかの他のメカニズムによって、起こるかどうかは明確ではない。明確なのは、磨耗による外層の損失がかなり減少するということである。
【0020】
[0025]スラリーは、アルミナ結合剤、シリカ結合剤またはそれらの混合物から選択される無機結合剤も含むことができる。シリカ結合剤としては、例えばシリカゾルおよびシリカゲルが挙げられ、アルミナ結合剤としては、例えばアルミナゾル、ベーマイトおよび硝酸アルミニウムが挙げられる。無機結合剤は、完成組成物ではアルミナまたはシリカへと転化される。無機結合剤の量は、成分として、スラリーの重量を基準として2〜15重量%で変化する。
【0021】
[0026]スラリーは、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびそれらの混合物から成る群より選択される変性剤金属を含むこともできる。本発明の実行における変性剤金属として使用できるアルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが挙げられる。好ましい変性剤金属は、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびセシウムであり、特に好ましくはリチウムおよびナトリウムである。一つの方法は、変性剤金属または変性剤金属前駆体の分解可能な化合物の溶液(好ましくは水溶液)でスラリーを調製することを含む。分解可能とは、加熱時に、金属化合物が、副生物を放出すると共に、金属または金属酸化物へと転化することを意味している。アルカリ金属およびアルカリ土類金属の分解可能な化合物の例は、ハライド、ニトレート、カーボネートまたは水酸化化合物、例えば水酸化カリウム、硝酸リチウムである。
【0022】
[0027]スラリーによる内部コアのコーティングは、ロール塗、浸し塗り、吹付け塗りなどのような手段によって達成できる。一つの好ましい技術は、内部コア粒子の固定流動床を使用すること、および、その床中にスラリーを吹付けて粒子を均一に被覆することを含む。層の厚さは、かなり変えることができるが、通常は50〜300ミクロンであり、好ましくは50〜100ミクロンである。最適な層厚は、触媒の使用および外部耐火性酸化物の選択に依存することに留意すべきである。外部耐火性無機成分の層で内部コアを被覆したら、その得られた層状担体を、1〜24時間、約100℃(212°F)〜約150℃(608°F)の温度で乾燥させ、次いで、400℃(752°F)〜900℃(1652°F)の温度で0.5〜10時間焼成して外層を内部コアに効果的に結合させて層状触媒担体を提供する。もちろん、乾燥工程と焼成工程を組み合わせて一工程とすることができる。
【0023】
[0028]層状触媒担体が得られたら、触媒金属および/または触媒金属前駆体を、当業において公知の手段によって、層状担体上に分散させることができる。而して、IUPAC周期表10族およびIUPAC周期表11族の金属/金属前駆体は、外層に分散させることができる。IUPAC周期表10族の金属および/または金属前駆体としては、白金およびパラジウムが挙げられる。IUPAC周期表11族の金属および/または金属前駆体としては、銅、銀および金が挙げられる。
【0024】
[0029]触媒金属は、当業において公知の任意の適当な方法で層状担体上に堆積させることができる。一つの方法は、金属または金属前駆体の分解可能な化合物の溶液(好ましくは水溶液)を層状担体に含浸させる工程を含む。IUPAC周期表10族金属の分解可能な化合物の例は、クロロ白金酸、塩化白金酸アンモニウム、ブロモ白金酸、ジニトロジアミノ白金、テトラニトロ白金酸ナトリウム、亜塩化パラジウム、硝酸パラジウム、水酸化ジアンミンパラジウム、テトラアンミンパラジウムクロリドおよび有機金属化合物、例えばパラジウムビスπ−アリルおよびパラジウムビス−アセチルアセトネートである。IUPAC周期表11族金属の分解可能な化合物の例は、硝酸銅、アセチル酢酸銅、酢酸銅、臭化銅、ブタン酸銅、塩化銅、塩素酸銅、クエン酸銅、蟻酸銅、過塩素酸銅、酒石酸銅、硝酸銀、酢酸銀、炭酸銀、塩素酸銀、亜硝酸銀、過塩素酸銀、および臭化金である。
【0025】
[0030]触媒は、好ましくはIUPAC周期表1または2族のアルカリ金属またはアルカリ土類金属も含み、その例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウム、好ましくはナトリウムまたはカリウムが挙げられるが、それらに限定されない。
【0026】
[0031]すべての金属は、1つの共通の溶液を使用して含浸させることができるか、または、任意の順序で順々に含浸させることができるが、必ずしも結果は等価ではない。
一つの含浸手順は、蒸気ジャケット付き回転乾燥器の使用を含む。触媒担体は、乾燥器中に含有された所望の金属化合物を含む含浸液中に浸漬させ、また、その担体を、乾燥器の回動運動によってその中で混転させる。触媒担体は、液相、好ましくはすべて液相の存在下にある。含浸液は、自由液体が存在するように、触媒担体の量に比べて過剰に存在する。金属の沈殿は、含浸液のpHを適当にコントロールすることによって、防止される。混転している担体と接触する溶液の蒸発は、乾燥器ジャケットに蒸気を入れることによって促進される。得られた複合材料は、周囲温度条件下で乾燥させるか、または、80℃(176°F)〜110℃(230°F)の温度で乾燥させ、次いで、400℃(752°F)〜700℃(1292°F)の温度で1〜4時間焼成し、それにより、金属化合物を金属または金属酸化物へと転化させる。
【0027】
[0032]一つの調製法では、方法は、層として内部コア上へ施用する前に、金属成分の1種以上を外部耐火性成分に添加する工程を含む。例えば、IUPAC周期表10族の金属若しくはIUPAC周期表11族の金属のいずれか、または、IUPAC周期表10族の金属とIUPAC周期表11族の金属の両方をスラリーに加えることができる。而して、一つの方法では、触媒金属は、内部コア上へ層として第二の耐火性成分を堆積させる前に、外部耐火性成分上へ堆積させる。触媒金属は任意の順序で外部耐火性成分粉末上へと堆積させることができるが、必ずしも等価の結果は得られない。
【0028】
[0033]層状触媒組成物の調製における最終工程として、水素または他の還元性雰囲気下で触媒組成物を還元して、IUPAC周期表10族およびIUPAC周期表11族の金属成分を確実に金属状態(原子価0)にする。還元は、還元環境下において、好ましくは乾燥水素下において、100℃(212°F)〜650℃(1202°F)の温度で0.5〜10時間行なった。
【0029】
[0034]好ましい実施態様では、金属は、外部耐火性成分の外層全体にわたって均一に分散され、また、外層にのみ実質的に存在する。IUPAC周期表10族およびIUPAC周期表11族の金属は、外層全体に均一に分散させることも好ましい。好ましくは、耐火性成分の外層上のIUPAC周期表10族金属対IUPAC周期表11族金属の割合は、実質的に一定である。
【0030】
[0035]触媒粒子の形状と大きさは、多くの技術的経済的ファクターと、考慮すべき事柄、例えば、選択的水素化反応器全体の許容可能な圧力降下、触媒の量および製造コストとに左右される。粒子の好ましい形状は球状である。触媒粒子は、0.8mm(1/32インチ)〜6.4mm(1/4インチ)、好ましくは1.6mmまたは1600ミクロン(1/16インチ)の直径を有することが好ましい。
【0031】
[0036]本明細書で開示される選択的水素化法で使用される水素化可能な炭化水素混合物は、ジ不飽和化合物、好ましくはジオレフィン、およびモノ不飽和化合物、好ましくはモノオレフィンを含む。不飽和化合物は、好ましくは、1分子あたり8〜19個、しばしば9〜16個の炭素原子を有する脂肪族オレフィンである。モノオレフィンでは、オレフィン結合の位置決定は、本明細書で開示される選択的水素化法には重要ではない。しかしながら、共役ジオレフィンは、非共役ジオレフィンに比べて、モノオレフィンへとより容易に選択的に水素化される。大部分のアルキル化触媒はオレフィン結合の移動を促進することが見出されたので、モノオレフィンがアルキルベンゼン洗剤前駆体の製造で使用されるとき、モノオレフィンにおけるオレフィン結合の位置は重要ではない。モノオレフィンおよびジオレフィンの炭化水素主鎖の分岐は、本明細書で開示される選択的水素化法では重要ではない。しかしながら、アルキルベンゼン生成物のアルキル基の構造立体配置が性能に影響を及ぼすことがあるので、モノオレフィンの炭化水素主鎖の分岐はしばしばより重要である。例えば、アルキルベンゼンをスルホン化して界面活性剤を製造する場合、過度の分岐は、界面活性剤の生分解性に悪影響を及ぼすことがある。一方、米国特許第6,187,981 B1号に記載されている若干分岐した変性アルキルベンゼンのように若干の分岐は望ましいかもしれない。オレフィン、すなわちモノオレフィンまたはジオレフィンは、分岐または若干分岐していることができ、また、本明細書で使用される場合3または4個の第一級炭素原子を有するオレフィンを指しており、また、そのために、残りの炭素原子のいずれもが第四級炭素原子ではない。第一級炭素原子とは、おそらく炭素原子以外の他の原子にも結合しているが、ただ1個の炭素原子に結合している炭素原子である。第四級炭素原子とは、4個の他の炭素原子に結合している炭素原子である。
【0032】
[0037]脂肪族モノオレフィンは、通常は2種以上のモノオレフィンから成る混合物であり、また、脂肪族ジオレフィンは、通常は2種以上のジオレフィンから成る混合物である。商業的な方法では、オレフィン含有脂肪族化合物と一緒に他の成分が存在していてもよい。例えば、モノオレフィンおよびジオレフィンは、パラフィン系供給原料の脱水素によって得ることができ、オレフィンから分離させるのが困難な非脱水素パラフィンは選択的水素化反応器に通す。未反応パラフィンは、1分子あたり8〜19個、しばしば9〜16個の炭素原子を有する1種以上のノルマルパラフィンまたは分岐パラフィンであることができる。例えば、その内容を参照により本明細書に引用したものとする米国特許第6,670,516 B1号を参照されたい。一般的に、パラフィン供給原料を脱水素することによってオレフィンが得られる場合、オレフィン対パラフィンのモル比は1:12〜1:8であるが;パラフィンの量は本発明方法では重要ではない。実際には、パラフィンを実質的に有してないオレフィン含有供給原料が好適である。
【0033】
[0038]水素化可能な炭化水素混合物におけるモノオレフィンおよびジオレフィンの濃度は、本明細書で開示される選択的水素化法では重要ではない。混合物は、0.5〜95モル%のモノオレフィンおよび0.1〜20モル%のジオレフィンを含むことができる。パラフィン供給原料の脱水素によって製造される適当な混合物は、通常は10〜15モル%のモノオレフィンおよび0.5〜1.5モル%のジオレフィンを含む。混合物におけるモノオレフィン対ジオレフィンのモル比は、典型的には50:1〜5:1であり、好ましくは25:1〜7:1である。
【0034】
[0039]脱水素のためのパラフィン供給原料のソースは重要ではないが、パラフィン供給原料のある種のソースは、おそらく結果としてある種の不純物を与えてしまう可能性がある。従来から、原油分留によって、または、転化プロセスによって製油所で製造される灯油留分は、適当な供給混合物前駆体を形成する。分留によって原油から回収される留分は、典型的には、本方法に供給する前に、硫黄および/または窒素を除去するために水素処理が必要である。灯油留分の沸点範囲を予備分留によって調整して、パラフィンの炭素数範囲を調節することができる。極端な場合、ただ1種の炭素数のパラフィンのみが優位を占めるように、沸点範囲を限定することができる。灯油留分は極めて多数の異なる炭化水素を含んでおり、而して、本方法への供給混合物は、200種以上の異なる化合物を含むことができる。
【0035】
[0040]または、パラフィン供給原料は、オリゴマー化反応またはアルキル化反応から少なくとも部分的に誘導することができる。前記パラフィン供給原料混合物の調製法は、本質的に不正確であって、化合物の混合物が生じる。脱水素法へのパラフィン供給原料混合物は、複数の分岐を有するパラフィンおよび分岐中に複数の炭素原子を有するパラフィン、シクロパラフィン、分岐シクロパラフィン、または所望の化合物異性体に比較的近い沸点を有する他の化合物を大量に含んでいる可能性がある。而して、脱水素工程へのパラフィン供給原料混合物は、大量の芳香族炭化水素も含んでいることがある。
【0036】
[0041]パラフィンの別のソースは、ガス井からの凝縮物である。通常は、パラフィン供給原料の独占的ソースとして利用可能な前記凝縮物の量は不充分である。しかしながら、他のパラフィン供給原料を補充するために凝縮物を利用することは好ましいものであり得る。典型的には、これらの凝縮物は、硫黄化合物を含んでいるので、従来それらの用途は制限されてきた。本明細書で開示される選択的水素化法は、硫黄含有供給原料の使用を可能にするので、これらの凝縮物を使用して、アルキル化のためにパラフィンを供給することができる。パラフィンは、合成ガス(Syngas)、すなわち水素と一酸化炭素から製造することもできる。この方法は、一般的にフィッシャートロプシュ法と呼ばれている。合成ガスは、天然ガスおよび石炭を含む様々な原料から作ることができ、而して、石油蒸留物が利用できない場合には、パラフィン供給原料の魅力的なソースである。
【0037】
[0042]場合によっては、灯油留分が容易に利用できないか、または、灯油留分に関する他の商業的用途の方がアルキルベンゼンを作るための供給原料としての用途に比べて経済的に魅力的な場所にアルキルベンゼン施設を置くことが望ましいかもしれない。これらの場合では、代替供給原料を使用する能力は非常に望ましい。代替供給原料としては、他の石油留分、特にナフサ範囲の留分、およびフィッシャートロプシュ材料のような合成炭化水素が挙げられる。これらの原料は、アルキル化のために要求されるオレフィンに比べて分子量が小さいので、適当な鎖長のオレフィン(洗剤範囲のオレフィン)を生成させるために二量体化またはメタセシスさせなければならない。これらの代替供給原料から洗剤オレフィンを調製するのために多くの方法が開示されてきた。例えば、国際公開第WO 2004/072005A1号、第WO 2004/072006A1号、米国特許第2004/0030209A1号、第2004/0176655A1号および第2004/0199035A1号を参照をされたい。1つの装置では、水素化可能な炭化水素混合物は、CおよびCパラフィンを含む供給原料を脱水素してCおよびCオレフィンを製造し、次いで、連鎖成長条件下でCおよびCオレフィンを反応させてC10〜C12モノオレフィンを含む洗剤範囲のオレフィン生成物を提供することによって、製造することができる。連鎖成長反応工程は、オリゴマー化と組み合わせることができる二量体化またはメタセシスであることができる。
【0038】
[0043]本明細書で開示される選択的水素化法に供給される水素化可能な炭化水素混合物は、選択的水素化触媒の寿命に過度に悪影響を及ぼすことがある水、窒素化合物および硫黄化合物のような不純物を含んでいるべきではない。水素化可能な炭化水素混合物は、米国特許第5,276,231号に記載されているように、パラフィン供給原料の脱水素によって生成される芳香族副生物を含んでいる可能性もある。あるいは、米国特許第5,276,231号に記載されている選択的芳香族化合物除去法を使用して、本明細書で開示される選択的水素化法の上流にある芳香族副生物のいくらかまたは実質的に全てを除去することができる。
【0039】
[0044]本明細書で開示される選択的水素化法では、C−C19ジオレフィンおよびC−C19モノオレフィンの水素化可能な炭化水素混合物を、選択的水素化条件下に保たれた選択的水素化ゾーンにおいて、本明細書で開示される触媒と接触させる。この接触は、固定化触媒床システム、可動触媒床システム、流動床システムなど、またはバッチ式運転で達成できる。好ましくは固定床システムである。この固定床システムでは、炭化水素供給流を、所望の反応温度まで予熱し、次いで、触媒の固定床を含む選択的水素化ゾーンへと流す。選択的水素化ゾーンそれ自体は、所望の反応温度を各反応ゾーンへの入口で維持できることを保証するために、温度調節手段をその間に有する1つ以上の独立している反応ゾーンを含むことができる。炭化水素は、上方流、下方流、または放射状流の形式で触媒床と接触できる。固定触媒床を通る炭化水素の下方流が好ましい。触媒は、液相中に存在することができ、また好ましくは、全液相中または超臨界条件下で存在することができる。
【0040】
[0045]選択的水素化法を実行する条件は、当業において公知であり、回分式または連続式で実行することができる。一般的に、選択的水素化条件としては、圧力0kPa(g)(0psi(g))〜13,789kPa(g)(2000psi(g))、温度30℃(86°F)〜180℃(356°F)、H対ジ不飽和化合物のモル比5:1〜0.1:1および液空間速度(LHSV)0.1〜20hr−1が挙げられる。H対ジ不飽和化合物のモル比がより低い1:1未満である条件を達成することは、転化率を制限する必要がある場合にのみ望ましいことが認められる。本明細書で使用される場合、ジ不飽和化合物は、ジオレフィン化合物と、三重結合を有する化合物の両方を含む。本明細書で使用される場合、略語LHSVとは、時間あたりの液体の体積流量を触媒体積で割ったものと規定される液空間速度を意味しており、そしてその場合、液体体積および触媒体積は同じ体積単位である。
【0041】
[0046]選択的水素化ゾーンからの流出物流は、一般的に、未転化の水素化可能な炭化水素、水素および水素化反応の生成物を含む。この流出物流を、冷却し、水素分離ゾーンへと通して、炭化水素富化液相から水素富化気相を分離することができる。H対ジ不飽和化合物のモル比が1:1に近い場合、独立水素分離ゾーンは必要ではないかもしれない。独立水素分離ゾーンが無い場合、炭化水素富化液相、または流出物流は、適当な選択的吸着剤、選択的溶媒、選択的反応(1つまたは複数の反応)によって、または、適当な分別スキームによって、更に分離される。未転化の水素化可能な炭化水素を回収し、水素化ゾーンへ再循環させることができる。水素化反応の生成物を、最終生成物として、または、他の化合物を調製する場合の中間生成物として回収する。
【0042】
[0047]その水素化可能な炭化水素は、通常は、選択的水素化ゾーンへと流す前に、流しながら、または流した後に、希釈材と混合する必要はない。ジ不飽和化合物のモノ不飽和化合物への選択的水素化反応は、ほんのわずかに発熱反応であると考えられるので、選択的水素化反応器における温度上昇は典型的には極端なものではない。選択的水素化反応器は、好ましくは、熱が発生される場合、また反応器が断熱されている場合に、熱を除去するための間接的な熱交換手段を有していない。使用する場合、希釈材は、水素であることができるか、または、1分子あたり8〜19個の炭素原子を有するパラフィンであることができる。選択的水素化ゾーンに通されるあらゆる希釈剤は、典型的には、流出物から分離され、そして、選択的水素化反応ゾーンへと再循環される。
【0043】
[0048]以下、実施例を掲げて本発明を例示するが、添付の請求の範囲に記載してある本発明の一般的な広い範囲を過度に限定することを意図していない。
【0044】
実施例
実施例1
[0049]100ミクロンのアルミナ外層を有するコージライト球に硝酸パラジウム、硝酸銅および硝酸カリウムの溶液を含浸させることによって本発明の1つの触媒を調製した。得られた溶液は、乾燥するまで蒸発させ、そのサンプルを450℃(842°F)で焼成した。次いで、サンプルを、水素を使用して200℃(392°F)で還元した。標準的な含浸条件および技術を使用して、触媒の重量を基準として、次の金属充填量:すなわちPd 0.02重量%、Cu 0.038重量%およびK0.33重量%を達成した。
【0045】
実施例2
[0050]100ミクロンのアルミナ外層を有するコージライト球に硝酸パラジウム、硝酸銀および硝酸カリウムの溶液を含浸させることによって本発明の第二の触媒を調製した。得られた溶液は、乾燥するまで蒸発させ、そのサンプルを450℃(842°F)で焼成した。次いで、サンプルを、水素を使用して200℃(392°F)で還元した。標準的な含浸条件および技術を使用して、触媒の重量を基準として、次の金属充填量:すなわちPd 0.02重量%、Ag 0.065重量%およびK0.33重量%を達成した。
[0051]市販の接触脱水素ユニットの生成物を供給原料として使用して、実施例1および2で調製した触媒のジオレフィン転化率および選択率を研究した。同じソースからの他の同様な供給原料の分析に基づいて、実施例1および2で使用した供給原料は、表1に示した組成を有すると考えられる。試験しようとする触媒の一定量を反応器に充填し、そして、供給原料流を選択的水素化条件下で流し始めた。試験の間は、圧力を3447kPa(g)(500psi(g))、LHSVを5hr−1に保ち、液相が存在した。触媒は、35℃(95°F)〜85℃(185°F)の範囲で評価した。水素対ジオレフィンのモル比は1.4:1であった。実施例1および2で調製した触媒に関して55℃(131°F)で得られた結果は表2に示してある。
【0046】
比較実施例1
[0052]球状アルミナ担体上に0.1%のパラジウムを含む第一参照触媒を評価した。この参照触媒の一定量を、実施例2に記載した方法で試験した。得られた結果は表2に示してある。
【0047】
比較実施例2
[0053]アルミナ担体上に分散された硫化ニッケルを含む第二参照触媒を評価した。
この第二参照触媒の一定量を、185℃(365°F)の温度および水素対ジオレフィンのモル比が1.5:1であった以外は、実施例2に記載した方法で試験した。得られた結果は表2に示してある。
【0048】
比較実施例3
[0054]アルミナ担体上に分散された硫化ニッケルを含む第三参照触媒を評価した。この第三参照触媒は、第二参照触媒に比べてニッケル含量が低い。この第三参照触媒の一定量を、比較実施例2に記載した方法で試験した。得られた結果は表2に示してある。
【0049】
【表1】

【0050】
[0055]表2の結果から、実施例1および2で調製した触媒は、130℃(234°F)よりも低い温度で運転した場合に、 第二および第三参照触媒に等しいかまたは第二および第三参照触媒に比べてより良好なジオレフィン転化率および選択率結果を示したことが分かる。55℃(131°F)の同じ温度で運転した場合に、実施例1および2で調製した触媒は第一参照触媒に比べてより良好なジオレフィン転化率を示し、また、実施例1で調製した触媒は第一参照触媒に比べてより良好な選択率も示した。
【0051】
実施例3
[0056]脱着および吸着技術を使用して実施例1の触媒を研究し、触媒の細孔サイズ分布、平均細孔半径、表面積および総細孔容積を決定した。得られた結果は表3に示してある。
【0052】
実施例4
[0057]触媒を実施例2で調製した触媒のようにして調製した。触媒は、実施例2で調製した触媒と同じ金属充填量を有するが、200ミクロンのアルミナ外層を有する。脱着および吸着技術を使用して触媒を研究し、触媒の細孔半径サイズ分布、平均細孔半径、表面積および総細孔容積を決定した。得られた結果は表3に示してある。
【0053】
【表2】

【0054】
[0058]表3に示した結果から、触媒の特性は、主として層によって決定され、そして比較的厳密に制御することができること、また、コアは、表面積または細孔容積にほとんど寄与しないことが分かる。而して、コアは、触媒のバルク特性(圧力低下、例えば、バルク流体の力学的性質は、触媒の総パラメーターの影響を受け、層厚の微細な細部には影響されない)を主として規定し、そして、コアの組成は、層に対して良好な結合を示しながら反応に対しては不活性であることが第一に重要である。而して、バルク特性と顕微鏡的特性の両方を比較的独立に制御することができる。
【0055】
[0059]実施例3および4で調製した触媒の細孔半径および微分容積に対してプロットした吸着および脱着プロフィールが図に示してある。
【0056】
[0060]C−C19ジオレフィンとC−C19モノオレフィンとを含む炭化水素混合物中においてC−C19ジオレフィンをC−C19モノオレフィンへと選択的に水素化する方法であって、前記方法は:選択的な水素化条件下で炭化水素混合物を触媒と接触させてC−C19モノオレフィン生成物を実質的に生成させる工程を含み;そしてその場合、前記触媒は(a)第一耐火性無機成分を含む内部コア、(b)少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属とがその上に分散された第二耐火性無機成分を含む、前記内部コアに結合された外層とを含む。本方法は、外層を内部コアに結合させた後に、第二耐火性無機成分の上に少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属とを堆積させる工程を含む方法により触媒を調製することを更なる特徴とすることができる。本方法は、第二耐火性無機成分の上に少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属とを堆積させている間、外層は液相中に存在していることを更なる特徴とすることができる。
【0057】
[0061]本方法では、第一耐火性の無機成分は、アルファアルミナ、シータアルミナ、炭化ケイ素、金属、コージライト、ジルコニア、チタニアおよびそれらの混合物から成る群より選択することができ、そして好ましくは、内部コアはコージライトである。本方法では、第二耐火性無機成分は、ガンマアルミナ、デルタアルミナ、イータアルミナ、シータアルミナ、シリカ/アルミナ、ゼオライト、非ゼオライトモレキュラーシーブ、チタニア、ジルコニアおよびそれらの混合物から成る群より選択することができ、そして好ましくは第二耐火性無機成分はガンマアルミナである。本方法では、少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属は白金およびパラジウムから成る群より選択される金属であり、そして少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属は銅および銀から成る群より選択される金属である。
【0058】
[0062]本方法は、外層が、少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属対少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属の割合を有していて、そしてその割合は、外層上において実質的に一定であることを更なる特徴とする。本方法では、外層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびそれらの混合物から成る群より選択される変性剤金属を更に含む。本方法では、外層は、50〜300ミクロンの厚さを有し、そして触媒の外層は、外層の重量を基準として50〜200m/gの表面積を有する。
【0059】
[0063]本方法は、選択的水素化条件が30〜180℃の温度および液相の存在を含み、そしてその場合、選択的水素化条件は1:1〜2:1の水素対ジオレフィン比を含むことを更なる特徴とする。
【0060】
[0064]第一液相を含む選択的水素化条件において、C−C19ジオレフィンとC−C19モノオレフィンとを含む炭化水素混合物中においてC−C19ジオレフィンをC−C19モノオレフィンへと選択的に水素化するための層状触媒組成物を調製する方法であって、そしてその場合、前記触媒が:a)第一耐火性無機成分を含む内部コアと、b)少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属とがその上に分散された第二耐火性無機成分を含む、前記内部コアに結合された外層とを含み、また前記方法は:i)内部コアを第二耐火性無機成分を含むスラリーで被覆し、その被覆されたコアの上に、第二液相の存在下において、少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属とを堆積させ、その被覆コアを乾燥させ、そして、外層を内部コアに結合させ且つ層状担体を提供するのに充分な時間、400〜900℃の温度で焼成する工程;およびii)還元条件下で工程i)の生成物を還元して層状触媒組成物を提供する工程を含む。
【0061】
[0065]本方法では、少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属を、含浸工程によって第二耐火性無機成分上に分散させる。本方法では、スラリーは有機結合剤を含む。本方法では、第二液相は、少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属の水溶液を含む。別の本方法では、第二液相は、少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属の水溶液を含む。本方法では、内部コアの第一耐火性無機成分は、アルファアルミナ、シータアルミナ、炭化ケイ素、金属、コージライト、ジルコニア、チタニアおよびそれらの混合物から成る群より選択され、そして好ましくは内部コアの第一耐火性無機成分はコージライトである。本方法では、外層の第二耐火性無機成分は、ガンマアルミナ、デルタアルミナ、イータアルミナ、シータアルミナ、シリカ/アルミナ、ゼオライト、非ゼオライトモレキュラーシーブ、チタニア、ジルコニアおよびそれらの混合物から成る群より選択され、そして好ましくは外層の第二耐火性無機成分はガンマアルミナである。
【0062】
[0066]本方法では、少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属は白金およびパラジウムから成る群より選択される金属であり、そして少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属は銅および銀から成る群より選択される金属である。本方法では、触媒は、外層が、少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属対少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属の割合を有していて、そしてその割合は、外層上において実質的に一定であることを更なる特徴とする。外層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびそれらの混合物から成る群より選択され、好ましくは外層はナトリウムまたはカリウムから選択されるアルカリ金属およびそれらの混合物を含む。外層は、50〜300ミクロンの厚さを有し、そして外層中の触媒は、外層の重量を基準として50〜200m/gの表面積を有する。
【0063】
[0067]第一液相を含む選択的水素化条件において、C−C19ジオレフィンとC−C19モノオレフィンとを含む炭化水素混合物中においてC−C19ジオレフィンをC−C19モノオレフィンへと選択的に水素化するための層状触媒組成物を調製する方法によって作られる生成物であって、そしてその場合、前記触媒は:a)第一耐火性無機成分を含む内部コア、b)少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属とがその上に分散された第二耐火性無機成分を含む、前記内部コアに結合された外層とを含み、また前記方法は:i)内部コアを第二耐火性無機成分を含むスラリーで被覆し、その被覆されたコアの上に、第二液相の存在下において、少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属を堆積させ、その被覆コアを乾燥させ、そして、外層を内部コアに結合させ且つ層状担体を提供するのに充分な時間、400〜900℃の温度で焼成する工程;およびii)還元条件下で工程i)の生成物を還元して層状触媒組成物を提供する工程を含む。その生成物は、触媒が、触媒の重量を基準として0.1重量%未満の少なくとも1種のIUPAC周期表10族金属の濃度を有し、そして好ましくは、触媒が、触媒の重量を基準として0.2重量%未満の少なくとも1種のIUPAC周期表11族金属の濃度を有すことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】触媒の細孔半径に対して触媒の微分容積をプロットした実施例3および4の触媒に関する吸着および脱着プロフィールを示しているグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−C19ジオレフィンとC−C19モノオレフィンとを含む炭化水素混合物中においてC−C19ジオレフィンをC−C19モノオレフィンへと選択的に水素化する方法であって、以下の工程:すなわち、
(i)選択的な水素化条件下で該炭化水素混合物を触媒と接触させてC−C19モノオレフィン生成物を実質的に生成させる工程を含み;そしてその場合、該触媒が
(a)第一耐火性無機成分を含む内部コア、
(b)少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属とがその上に分散された第二耐火性無機成分を含む、該内部コアに結合された外層
とを含むことを特徴とする前記方法。
【請求項2】
該外層を該内部コアに結合させた後に、該第二耐火性無機成分の上に、該少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と該少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属とを堆積させる工程を含む方法によって該触媒を調製することを更なる特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
該第二耐火性無機成分の上に、該少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属と該少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属とを堆積させている間、該外層が液相中にあることを更なる特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
該第一耐火性の無機成分が、アルファアルミナ、シータアルミナ、炭化ケイ素、金属、コージライト、ジルコニア、チタニアおよびそれらの混合物から成る群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項5】
該第二耐火性無機成分が、ガンマアルミナ、デルタアルミナ、イータアルミナ、シータアルミナ、シリカ/アルミナ、ゼオライト、非ゼオライトモレキュラーシーブ、チタニア、ジルコニアおよびそれらの混合物から成る群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項6】
該外層が、該少なくとも1種のIUPAC周期表10族の金属対該少なくとも1種のIUPAC周期表11族の金属の割合を有していて、そしてその割合が、該外層上において実質的に一定であることを更なる特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
該外層が50〜300ミクロンの厚さを有する請求項1記載の方法。
【請求項8】
該触媒の該外層が、該外層の重量を基準として50〜200m/gの表面積を有する請求項1記載の方法。
【請求項9】
該選択的水素化条件が、30〜180℃の温度および液相の存在を含むことを更なる特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
該選択的水素化条件が1:1〜2:1の水素対ジオレフィン比を含む請求項1記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−13363(P2010−13363A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−172402(P2008−172402)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】