岸壁クレーン及びその制御方法
【課題】
クレーンが設置される地域において発生が想定されている大規模地震動の周期特性に対応して、免震及び制振装置の設計ができるクレーンを提供する。特に、縦ねじれ振動(ロッキング)を減衰することができるクレーンを提供する。
【解決手段】
脚構造物3と走行装置2を有する岸壁クレーン1において、岸壁クレーン1が少なくとも、振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体m1及び第2質量体m2を有し、地表面5と第1質量体m1の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置11を設置し、第1質量体m1と第2質量体m2の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第2免震装置12を設置し、他方に第2ヒンジ部8を設け、第1免震装置11及び第2免震装置12が垂直方向に摺動するように構成した。
クレーンが設置される地域において発生が想定されている大規模地震動の周期特性に対応して、免震及び制振装置の設計ができるクレーンを提供する。特に、縦ねじれ振動(ロッキング)を減衰することができるクレーンを提供する。
【解決手段】
脚構造物3と走行装置2を有する岸壁クレーン1において、岸壁クレーン1が少なくとも、振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体m1及び第2質量体m2を有し、地表面5と第1質量体m1の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置11を設置し、第1質量体m1と第2質量体m2の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第2免震装置12を設置し、他方に第2ヒンジ部8を設け、第1免震装置11及び第2免震装置12が垂直方向に摺動するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾や内陸地のコンテナターミナルなどでコンテナの荷役に使用するクレーン等に、地震対策を施した岸壁クレーン及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾や内陸地等のコンテナターミナルでは、岸壁クレーン、門型クレーン、コンテナトレーラによって、船舶及びトレーラ間のコンテナの荷役を行っている。このコンテナターミナルにおける地震対策として、岸壁クレーンに免震構造を備えたクレーンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10に、免震装置10を設置した従来型の岸壁クレーン1Xの1例を示す。岸壁クレーン1Xは、陸側走行装置2bに、油圧シリンダ等の減衰機構を有する免震装置10を内蔵している。この免震装置10は、矢印で示す様に垂直方向に揺動する。
【0004】
また、岸壁クレーン1Xは脚構造物3を有している。この脚構造物3は、海側脚20a及び陸側脚20bと、この脚を連結する水平材であるポータルタイビーム29と、海側脚20aの上方に延伸したマスト24を有している。更に、脚構造物3は、上方にブーム26及びガーダ27を有している。
【0005】
また、この脚構造物3は、岸壁5に平行な方向(図10の紙面手前から奥の方向)に、海側シルビーム21a、陸側シルビーム21b、海側タイビーム22a、及び陸側タイビーム22bを有している。更に、脚構造物3は、海側脚20aと、陸側脚20b又は陸側タイビーム22bを連結する斜材23を有しており、マスト24と、ガーダ27又は陸側タイビーム22bを連結するマスト支持斜材25を有している。このブーム26及びガーダ27に沿って、トロリ6が走行し、コンテナ41の荷役を行うように構成している。なお、2aは海側走行装置、4はクレーン1Xの機械室、40はコンテナ船を示している。
【0006】
図11に、岸壁クレーン1Xの免震構造のモデルを示す。図11Aに、コンテナの荷役作業等を行う通常時における岸壁クレーン1Xの振動解析用モデルを示す。このモデルは、地表面(岸壁)5上に、免震装置10(陸側脚に設置した免震装置)を介して、岸壁クレーン1Xの重心である質点m0を支持している状態を示している。なお、海側走行装置2a及び陸側走行装置2bと地表面5は、鉄製の車輪とレールで接触しているため、モデルでは紙面に垂直方向の軸を持つピン支持と見なすことができる。
また、免震装置10は、バネ機構14とダンパー機構15の組合せで示している。更に、岸壁クレーン1Xにおける質量体を、振動解析用モデルでは、質点m0としてモデル化している。
【0007】
図11Bに、岸壁クレーン1Xのモデルに地震動として、海側走行装置2a及び陸側走行装置2b(図10参照)を交互に浮き上がらせる(上下移動する)ような縦ねじれ振動S(ロッキングともいう)を加え、質点m0が振動している様子を示す。この縦ねじれ振動Sに対して、免震装置10が垂直方向に振動を減衰しながら伸縮する。この構造により、質点m0の縦ねじれ振動Sを抑制することができる。
【0008】
しかしながら、上記の構成を有するクレーン1Xは、免震ストロークが不十分であるため、強度の強い地震動に対して、十分な免震性能を発揮することができないという問題を有している。つまり、免震装置10の垂直方向の可動領域(摺動可能な距離)を、大きく構成することが困難であるため、減衰できる縦ねじれ振動Sの大きさが限定的となる。ま
た、免震装置10の他は、クレーン1Xの脚構造物3全体が歪んで地震動を吸収しなくてはならないため、大規模地震に対して免震性能を発揮することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−284230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、大規模地震に対応した免震構造及び制振構造を有するクレーンを提供することにある。つまり、クレーンが設置される地域において発生が想定されている大規模地震動の周期特性に対応して、免震及び制振装置の設計ができるクレーンを提供することにある。特に、縦ねじれ振動(ロッキング)を減衰することができるクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンは、脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体及び第2質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第2免震装置を設置し、他方に第2ヒンジ部を設け、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする。
【0012】
この構成により、クレーンは、少なくとも2つの質点(質量体)を有し、且つ複数の質点及び地表面の間に、それぞれ免震装置及びヒンジ部を介して連結する構成となる2質点系モデルを構築するため、あらゆる地震動の周期特性に対して免震及び制振することができる。
【0013】
ここで、クレーンの走行装置に設置した車輪と、地表面に敷設したレールの接触は、ピン支持と同等となるため、モデルにおいて見かけ上、第1ヒンジ部として取り扱うことができる。つまり、地表面と第1質量体の間に、第1免震装置と第1ヒンジ部を設け、第1質量体と第2質量体の間に、第2免震装置と第2ヒンジ部を設けた構成となる。そのため、クレーンが設置される地域において発生が想定されている大規模地震動の周期特性に対応して、免震及び制振装置の設計ができる。特に、縦ねじれ振動(ロッキング)を減衰することができる。
【0014】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする。
【0015】
この構成により、クレーンは、更に高い免震及び制振効果を得ることができる。これは、地表面、第1質量体及び第2質量体の間に、第1免震装置と第2免震装置、及び第1ヒンジ部(車輪とレールの接触点)と第2ヒンジ部を、海陸方向で互い違いとなるように配置するためである。
【0016】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンは、脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、振動解析用モデルにおいて質
点と見なせる第1質量体、第2質量体及び第3質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、前記第2質量体と前記第3質量体の間であって、前記第2免震装置を設置した方に第3ヒンジ部を設け、他方に第3免震装置を設置し、前記第1免震装置、前記第2免震装置及び前記第3免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする。
【0017】
この構成により、クレーンは、少なくとも3つの質点(質量体)を有し、且つ複数の質点及び地表面の間に、それぞれ免震装置及びヒンジ部を介して連結する多質点系モデルを構築するため、あらゆる地震動の周期特性に対して免震及び制振することができる。なお、モデルにおいて、クレーンの海側又は陸側では、免震装置及びヒンジ部が交互に配置されるように構成している。
【0018】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記脚構造物を、前記第1質量体を形成する下部構造物、及び前記第2質量体を形成する上部構造物に分割し、前記下部構造物が、上端に前記第2ヒンジ部を有する海側脚の一部と、陸側脚を有しており、前記上部構造物が、下端に前記第2ヒンジ部を有する海側脚の一部と、前記海側脚に固定した斜材と、前記斜材に固定した追加ビームを有しており、前記下部構造物の前記海側脚の下端と、海側走行装置の間に前記第1免震装置を設置し、前記陸側脚と前記追加ビームの間に前記第2免震装置を設置したことを特徴とする。
【0019】
この構成により、地震動を原因として海側脚又は陸側脚の端部にたわみ振動が発生した場合であっても、このたわみ振動が免震装置に与える影響を抑制することができる。そのため、クレーンは、大規模地震に対しても十分な免震及び制振効果を得ることができる。
【0020】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記免震装置をバネ機構及びダンパー機構で構成し、第1の条件下では前記免震装置の摺動を固定し、第2の条件下では少なくとも前記バネ機構のバネ定数又は前記ダンパー機構の粘性定数を制御して、前記免震装置の摺動を制御するように構成したことを特徴とする。
【0021】
この構成により、クレーンの振動をアクティブに制御することができ、制振効果を向上することができる。つまり、地震動によるクレーンの振動に対して、この振動を打ち消すように免震装置の摺動を制御できるため、積極的にクレーンの振動を減衰することができる。なお、第1の条件下とは、クレーンがコンテナの荷役作業等を行う通常時を想定しており、第2の条件下とは、地震発生時を想定している。なお、免震装置の摺動の固定は、せん断ピン等で構造的に固定する方法、又はダンパー機構等で使用する油圧の流動を閉止する方法等、任意に決定することができる。
【0022】
上記の岸壁クレーンにおいて、少なくとも前記免震装置のいずれか1つに、ロック機能付き油圧ダンパーを設置し、前記ロック機能付き油圧ダンパーが、端部に可変流量ピストンを有する軸と、内部に前記可変流量ピストンを摺動自在に配置して且つ流体を充填したケーシングを有しており、第1の条件下では、前記可変流量ピストンに形成した貫通孔を閉止し、前記軸を前記ケーシングに対して固定し、前記免震装置の摺動を禁止する制御を行い、第2の条件下では、前記可変流量ピストンに形成した貫通孔を連通し、前記軸を前記ケーシングに対して摺動自在とし、前記免震装置の摺動を自在とする制御を行うことを特徴とする。
【0023】
この構成により、クレーンの免震装置が作動を開始するタイミングを精密に制御することができる。つまり、予め設定した値を超える大きさの地震動が発生した場合に、免震装
置が速やかに作動するように制御することができる。そのため、確実且つ精密な免震効果を得ることができる。
【0024】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンの制御方法は、脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体及び第2質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成した岸壁クレーンの制御方法であって、前記免震装置をバネ機構及びダンパー機構で構成しており、第1の条件下では、前記免震装置の摺動を固定する制御を行い、第2の条件下では、少なくとも前記バネ機構のバネ定数又は前記ダンパー機構の粘性定数を制御して、前記免震装置の摺動を制御するように構成したことを特徴とする。この構成により、上記の岸壁クレーンと同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るクレーンによれば、大規模地震動に対応した免震及び制振構造を得ることができる。すなわち、クレーンが設置される地域において発生が想定されている大規模地震動の周期特性に対して、クレーンが共振状態とならず、免震及び制振効果を効率的に得ることができる。特に、縦ねじれ振動(ロッキング)を減衰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る実施の形態のクレーンの概要を示した図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のクレーンの振動解析用モデルを示した図である。
【図3】本発明に係る実施の形態のクレーンの振動モードを示した図である。
【図4】本発明に係る実施の形態のクレーンの部分拡大図である。
【図5】本発明に係る実施の形態のクレーンの免振装置を示した図である。
【図6】本発明に係る異なる実施の形態のクレーンの概要を示した図である。
【図7】本発明に係る異なる実施の形態のクレーンの振動解析用モデルを示した図である。
【図8】本発明に係る異なる実施の形態のクレーンの部分拡大図である。
【図9】本発明に係る異なる実施の形態のクレーンの概要を示した図である。
【図10】従来の免震機構を有したクレーンの概要を示した図である。
【図11】従来の免震機構を有したクレーンの振動解析用モデルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施の形態のクレーンについて、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る実施の形態の岸壁クレーン1を示す。岸壁クレーン1は、クレーン構造物を下部構造物及び上部構造物の2つに分割し、海側走行装置2aと下部構造物の間に第1免震装置11を、下部構造物と上部構造物の間に、第2免震装置12及び第2ヒンジ部8を設けている。なお、上部構造物には斜線を付している。
【0028】
第1免震装置11と、第2免震装置12及び第2ヒンジ部8の間には、海側脚20aの一部、陸側脚20b、海側シルビーム21a、陸側シルビーム21b、陸側タイビーム22b、機械室4及びポータルタイビーム29を配置している(下部構造物)。
【0029】
第2免震装置12及び第2ヒンジ部8の上部には、追加ビーム17、海側脚20aの一部、海側タイビーム22a、斜材23、マスト24、マスト支持斜材25、ブーム26、及びガーダ27を配置している(上部構造物)。ここで、上部構造物及び下部構造物を構成する部材の構成は、上記に限られるものではなく、クレーン1が見かけ上、2つの構造
物(上部及び下部構造物)にわけられる限りにおいて、適宜変更することができる。
【0030】
なお、第1免震装置11を、海側走行装置2aの内部、又は下部構造物の内部に組み込んでもよい。また、免震装置11、12は、油圧シリンダを利用したバネダンパー機構で構成することが望ましいが、他の免震装置を利用することもできる。例えば、垂直スライダー機構、バネ機構、ダンパー機構等を単独又は組み合わせて、垂直方向に摺動可能な免震装置を利用することができる。更に、第2ヒンジ部8は、海側脚20aの一部(上部)が海陸方向(図1の左右方向)に傾斜(回転)できる構成を有している。
【0031】
図2に、図1に示した岸壁クレーン1の振動解析用モデルを示す。この振動解析用モデルにおいて、下部構造物及び上部構造物(質量体)の重心を、第1質点(第1質量体)m1、及び第2質点(第2質量体)m2として表している。また、下部構造物である第1質点m1は、第1免震装置11を介して地表面5と接触し、更に、第2免震装置12及び第2ヒンジ部8を介して、上部構造物である第2質点m2と接続している。ここで、海側走行装置2a及び陸側走行装置2b(図1参照)と地表面5は、鉄製の車輪とレールで接触しているため、モデルでは紙面に垂直方向の軸を持つピン支持と見なすことができる。そのため、陸側走行装置2bと地表面5の接触点は、第1ヒンジ部7と見なすことができる。
【0032】
つまり、岸壁クレーン1は、地表面5、第1質点m1及び第2質点m2を、それぞれ免震装置11、12及びヒンジ部7、8で連結するように構成している。更に、免震装置11、12とヒンジ部7、8の設置位置は、海陸方向(図2左右方向)で交互となるように構成することが望ましい。具体的には、海側(図2右方)に第1免震装置11を設置した場合、第2免震装置12は陸側(図2左方)に設置する。同様に、陸側に第1ヒンジ部7を設けた場合、第2ヒンジ部8は海側に設けるように構成する。また、上記と海陸の方向を入れ替えて構成することもできる。ここで、高さh1及びh2は、地表面(岸壁)5からそれぞれの質点m1及びm2までの高さを示している。また、免震装置11、12を、バネ機構14とダンパー機構15の組み合わせで表現している。なお、上記では、第1ヒンジ部7を、車輪とレールの接触により実現しているが、第2ヒンジ部8と同様の構造を第1ヒンジ部7として、クレーン脚構造物に設置してもよい。
【0033】
次に、クレーン1における免震装置の動作について説明する。図2Aに、クレーン1がコンテナ41の荷役等を行う通常時(第1の条件下)の状態を示す。このとき、クレーン1の免震装置11、12は、せん断ピン等の固定具で固定し、剛の状態とする。この免震装置11、12の固定は、例えばダンパー機構15に付属する油圧回路において、流体の流動を閉止する方法で実現することもできる。更に、第2ヒンジ部8を固定具等で固定してもよい。
【0034】
図2Bに、クレーン1が、地震発生時(第2の条件下)に振動している状態を示す。このとき、免震装置11、12は、固定を解除され、柔の状態となる。また、第2ヒンジ部8を固定している場合、第2ヒンジ部8は固定を解除され、柔の状態となる。このときの地震動は、クレーン1の海側の走行装置と陸側の走行装置が、交互に浮き上がるような縦ねじれ振動(ロッキング)Sを想定している。
【0035】
この縦ねじれ振動Sにより、第1質点m1及び第2質点m2は、矢印に示す様に海陸方向に回転力を受ける。この縦ねじれ振動を、第1免震装置11及び第2免震装置12は、垂直方向に摺動(伸縮)を繰り返して(白抜き矢印参照)減衰する。このとき、第1質点m1が、第2質点m2の振動に対して逆位相モードで振動するように、クレーンを設計する。
【0036】
図3に、クレーン1の振動モードを示す。図3Aは、通常時の状態を示しており、第1質点m1及び第2質点m2は、地表面5に対して定位置にある。図3Bは、地震発生時の状態を示しており、第1質点m1と第2質点m2が、海陸方向(図3左右方向)において、逆となるように振動している(逆位相モード)。なお、この振動モードは、地震動と、各質点m1、m2の位置及び重量、地表面から質点までの高さh1、h2、バネ機構14のバネ定数k、ダンパー機構15の粘性定数cをパラメータとして設計することができる。
【0037】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、大きな地震動であっても、小さい免震ストロークで減衰することができる。つまり、第1質点m1及び第2質点m2が、逆位相モードで振動するため、互いの振動を相殺し、高い振動減衰効果を得ることができる。そのため、免震装置11、12の免震ストローク(伸縮長さ、又は摺動距離)が小さくても、大きな地震動を減衰することができる。
【0038】
第2に、クレーン1が、地震動に対して発散型の共振状態となることを、抑制することができる。日本国内においては、港湾法第五六条二の二の2により、特定の岸壁に設置するクレーンは耐震性に関して確認審査が必要となっているため、設置される地域ごとに地震波は予め想定されており、強い揺れ成分の周波数も算定できる。つまり、クレーン1が見かけ上2つの質点m1、m2を有するように構成しているため、クレーン1が地表面5の振動に対して、発散型の共振状態となることを防止又は抑制することができる。
【0039】
また、クレーン1に設置した免震装置11、12をアクティブ制御とし、積極的にクレーン1の振動を減衰するように構成してもよい。つまり、地震発生時に、振動モードを決定するパラメータであるバネ定数k、及び粘性定数c等を変更する制御を行い、積極的に免震装置11、12の摺動を制御するように構成してもよい。更に、免震装置11、12の固定及び開放において、せん断ピンの代わりに、固定具として油圧駆動ロックピン、電動駆動ロックピン、又は後述するロック機能付き油圧ダンパー等を使用してもよい。なお、油圧駆動ロックピン及び電動駆動ロックピンは、せん断ピンが地震動からの外力により破断するのに対して、油圧及び電気等の動力により、引き抜く構造を有している。また、免震装置11、12を油圧機構で構成し、油圧機構の回路に設置したトリガー弁等の開閉制御により、免震装置11、12の固定及び開放を行うように構成してもよい。
【0040】
次にクレーン1の振動制御に関して説明する。まず、免震装置11、12をパッシブ制御とした場合を説明する。免震装置11、12をパッシブ制御とする場合は、クレーン1を構成する各パラメータ(質量m、高さh、バネ定数k、粘性定数c)を変数として、クレーン1の設計を行う。例えば、このクレーン1の振動が、予め想定した地震動に対して、発散せず、図2B又は図3Bに示す逆位相のモードとなるように設計することが望ましい。
【0041】
コンテナの荷役等を行う通常時には、クレーン1の免震装置11、12はせん断ピン、油圧駆動ロックピン、電動駆動ロックピン、トリガー弁の制御、又はロック機能付き油圧ダンパー等で固定し、剛の状態としている。地震発生時には、せん断ピンの破断等により免震装置11、12が開放され、クレーン1が、図2B又は図3Bに示す逆位相モードで振動する。なお、油圧駆動ロックピン、電動駆動ロックピン、ロック機能付き油圧ダンパー、又はトリガー弁等を利用する場合は、地震発生をセンサ等で感知して免震装置11、12を開放するように構成する。
【0042】
次に、免震装置11、12をアクティブ制御とした場合を説明する。免震装置11、12をアクティブ制御とする場合は、まず、クレーン1を構成する各パラメータを変数として、クレーン1の設計を行う。更に、地震発生時にバネ定数k及び粘性定数cを可変とし
て、積極的に制御できるように構成する。地震発生時には、バネ機構14のバネ定数k及びダンパー機構15の粘性定数cをリアルタイムで制御し、クレーン1が逆位相モードで振動するように制御する。
【0043】
上記の構成により、以下のような作用効果を得ることができる。第1に、クレーン1が2つの質点m1、m2を有する構成により、大規模地震に対しても十分な免震及び制振効果を得ることができる。特に、縦ねじれ振動(ロッキング)に対して有効な免震及び制振効果を得ることができる。つまり、免震装置11、12、及びヒンジ部7、8を介して連結した質点m1、m2は、地表面(岸壁)5で発生した地震動に対して、発散型の共振状態となることがほとんどないため、地震動によるクレーン1の振動を抑制することができる。これは、第2質点m2を、クレーン1に対する制振マス(振動を打ち消すためのおもり)として利用できるためである。
【0044】
第2に、クレーン1の設計段階において、予め想定される地震動に応じて、各質点m1、m2の重量、地表面5から各質点m1、m2までの高さh1、h2、バネ機構14のバネ定数k、ダンパー機構15の粘性定数cを変更することができる。そのため、例えば、300secの長時間にわたり、高いエネルギーを放出し続けるような地震を想定した場合であっても、十分な免震及び制振効果を得ることができる。特に従来は対応することができなかった、長周期の地震動に対しても、クレーン1が発散型の共振とならず、十分な免震及び制振効果を得ることができる。また、ヒンジ部の位置の変更により、クレーンの振動の周期特性を変更することができる。
【0045】
第3に、免震装置11、12をアクティブ制御とする場合、あらゆる周波数の地震動に対して、クレーン1の振動を効果的に減衰するように制御することができる。つまり、地震によりクレーン1が振動している間、例えばダンパー機構15の粘性定数cを変更する制御により、逆位相の振動モードとすることができる。この逆位相モードにより、第2質点m2を、クレーン1に対する制振マス(振動を打ち消すためのおもり)として利用することができる。
【0046】
なお、クレーン1の振動モードの制御において、地震速報等の情報をもとに、免震装置11、12をアクティブ制御するように構成してもよい。具体的には、まず、無線等で受信した情報から、地震動の振幅、周期等を取得する。この地震動に対して、逆位相の振動モード(図2B又は図3B参照)で振動するように、免震装置11、12を構成するバネ機構14のバネ定数k及びダンパー機構15の粘性定数c等の制御をそれぞれ開始する。次に、地震動の変化に応じて、2つの免震装置11、12のバネ定数k及び粘性定数cをリアルタイムでそれぞれ制御するように構成してもよい。この構成により、免震及び制振効果を更に向上することができる。
【0047】
図4に、第2免震装置12を中心とする拡大図を示す。この第2免震装置12は、陸側脚20bの側方に設置した架台18上に固定している。第2免震装置12上には、上部構造物側である追加ビーム17を固定している。この追加ビーム17に、海側脚20a(図1参照)から延長した斜材23と、ガーダ27を連結している。また、ガーダ27にマスト支持斜材25を固定している。他方で、下部構造物側は、陸側脚20bと、その上部に陸側タイビーム22bを介して設置した機械室4を有している。
【0048】
上記の構成により、以下のような作用効果を得ることができる。第1に、クレーン1が2つの質点m1、m2を有する構成により、大規模地震に対しても十分な免震及び制振効果を得ることができる。第2に、脚構造物3を構成する主要な梁部材が、門型あるいは三角形構造を構成しているので、たわみ剛性を高めることが可能となる。そのため、第2免震装置12に発生する免震ストロークを、梁部材のたわみ変形で相殺してしまう事態を回
避することが可能となる。
【0049】
図5に、ロック機能付き油圧ダンパーとバネ機構(図示しない)で構成した第2免震装置12の1例を示す。この第2免震装置12は、陸側脚20bに設置した架台18と、追加ビーム17の間に設置している。第2免震装置12は端部に可変流量ピストン33を有する二重管状の軸32と、内部に油等の流体を満たしたケーシング34を有している。この可変流量ピストン33は、貫通孔35を有しており、この貫通孔35の開口面積を制御することができるように構成している。
【0050】
具体的には、それぞれ貫通孔35を形成した円板状部材を重ねて、可変流量ピストン33を構成する。この円板状部材の一方を回転し、この回転により円板状部材の互いの貫通孔35を連通又は閉止できるように構成している。
【0051】
なお、可変流量ピストン33の回転は、モータ等の動力を設置して制御してもよい。また、バネ等の弾性体と電磁石等の固定部材を組み合わせて設置してもよい。つまり、通常時には、可変流量ピストン33は、弾性体の復元力に逆らって貫通孔35を閉止した状態にあり、このピストン33を固定部材により固定する。そして、地震発生時には、固定部材による固定を解除し、ピストン33が弾性体により貫通孔35を連通するように構成してもよい。
【0052】
次に、ロック機能付き油圧ダンパーの動作に関して説明する。通常時(第1の条件下)は、可変流量ピストン33の貫通孔35を閉止し、ケーシング34内で、充填した流体が移動しないように制御する。この制御により、軸32はケーシング34に対して固定した状態となるため、免震装置12は、固定された状態(剛の状態)となる。
【0053】
地震発生時(第2の条件下)には、円板状部材を回転し、可変流量ピストン33の貫通孔35を連通する。そして、ケーシング34内で、充填した流体が貫通孔35を経由して自由に移動するように制御する。この制御により、軸32はケーシング34に対して摺動自在(白抜き矢印参照)となるため、免震装置12は摺動可能となり、その効果を発揮する。
【0054】
上記のロック機能付き油圧ダンパーを利用する構成により、免震装置12の動作開始(開放)を正確に制御することができる。せん断ピンを利用した場合、このせん断ピンの破断する力及びタイミングの制御が困難となることがあった。これに対して、ロック機能付き油圧ダンパーは、免震装置12が作動するタイミングを制御できるため、確実且つ精密な免震及び制振効果を得ることができる。
【0055】
ここで、可変流量ピストン33の制御をアクティブに行うように構成しても良い。つまり、地震発生時において、免震装置12の変位量をもとに、貫通孔35の開口面積をリアルタイムで制御する。この構成により、ロック機能付き油圧ダンパーにおける可変流量ピストン33の摺動抵抗を制御できるため、免震装置12の減衰特性の制御を行うことができる。なお、第2免震装置12に関して説明したが、他の免震装置(例えば第1免震装置11)も同様に構成することができる。
【0056】
図6に、本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーン1Aを示す。岸壁クレーン1Aは、クレーン構造物を下部構造物、中部構造物及び上部構造物の3つに分割している。海側走行装置2aと下部構造物の間に第1免震装置11を設置している。また、下部構造物と斜線を付した中部構造物の間に、第2免震装置12及び第2ヒンジ部8を設置している。更に、中部構造物と上部構造物の間に、第3免震装置13及び第3ヒンジ部9を設置している。
【0057】
下部構造物は、海側脚20aの一部、陸側脚20b、海側シルビーム21a、陸側シルビーム21b、下部斜材23a、ポータルタイビーム29を有している。中部構造物は、海側脚20aの一部、中部斜材23b、追加ポータルタイビーム29a、陸側タイビーム22b、機械室4を有している。上部構造物は、ブーム26、ガーダ27、マスト24、海側タイビーム22aを有している。ここで、上部構造物、中部構造物及び下部構造物を構成する部材の構成は、上記に限られるものではなく、クレーン1Aが見かけ上、3つの構造物(上部、中部及び下部構造物)にわけられる限りにおいて、適宜変更することができる。
【0058】
図7に、図6に示した岸壁クレーン1Aの振動解析用モデルを示す。この図7Aに示す振動解析用モデルにおいて、下部構造物、中部構造物及び上部構造物(質量体)の重心を、第1質点(第1質量体)m1、第2質点(第2質量体)m2、及び第3質点(第3質量体)m3として表している。また、下部構造物である第1質点m1は、第1免震装置11及び第1ヒンジ部7を介して地表面5に接触している。同様に、中部構造物である第2質点m2は、第1ヒンジ部7と同じ側(例えば陸側)に設置した第2免震装置12、及び第1免震装置11と同じ側(例えば海側)に配置した第2ヒンジ部8を介して、下部構造物と連結している。同様に、上部構造物である第3質点m3は、第2ヒンジ部8と同じ側(例えば海側)に配置した第3免震装置13、及び第2免震装置12と同じ側(例えば陸側)に配置した第3ヒンジ部9を介して、中部構造物と連結している。つまり、地表面5及び各質点m1、m2、m3は、免震装置及びヒンジ部でそれぞれ連結している。そして、免震装置とヒンジ部の海陸方向の位置は、上下で入れ替わるように構成している。
【0059】
図7Bは、隣接する各質点m1、m2、m3がそれぞれ逆方向に振動する様子を示している(逆位相モード)。また、図7Cは、第1質点m1及び第2質点m2が同一方向に振動し、これに対して、第3質点m3が逆方向に振動する様子を示している。岸壁クレーン1Aの振動を、図7B及び図7Cに示す振動モードに制御する構成により、クレーン1Aの振動を効果的に減衰することができる。これは、各質点が、互いの振動を打ち消すように振動するためである。
【0060】
クレーン1Aが3つの質点m1、m2、m3を有する構成により、地震動に対する免震及び制振効果を向上することができる。これは質点の数が多い方が、より適切な振動モードとなるように制御することが容易となるためである。ただし、質点数が増加すると免震装置の数が増加し、これに伴いコストが増加する。
【0061】
図8に、第2免震装置12及び第3ヒンジ部9を中心とする拡大図を示す。この第2免震装置12は、陸側脚20bと陸側タイビーム22bの間に設置している。また、第3ヒンジ部9は、陸側タイビーム22bからガーダ27を懸吊するように構成している。
【0062】
図9に、本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーン1Bを示す。岸壁クレーン1Bは、クレーン構造物を下部構造物、中部構造物及び上部構造物の3つに分割している。陸側走行装置2bと下部構造物の間に第1免震装置11bを設置している。また、下部構造物と斜線を付した中部構造物の間に、第2免震装置12b及び第2ヒンジ部8bを設置している。更に、中部構造物と上部構造物の間に、第3免震装置13b及び第3ヒンジ部9bを設置している。
【0063】
下部構造物は、海側脚20a、陸側脚20bの一部、海側シルビーム21a、陸側シルビーム21b、下部斜材23a、ポータルタイビーム29を有している。中部構造物は、陸側脚20bの一部、中間斜材23b、追加ポータルタイビーム29a、海側タイビーム22a、陸側タイビーム22b、機械室4、マスト24を有している。上部構造物は、ブ
ーム26、ガーダ27を有している。
【0064】
なお、図6及び図9の実施例では、質点を3つとした例を説明したが、質点を4つ以上としても、同様の免震及び制振効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1、1A、1B クレーン(岸壁クレーン)
2 走行装置
2a 海側走行装置
2b 陸側走行装置
3 脚構造物
5 地表面(岸壁)
7 第1ヒンジ部
8 第2ヒンジ部
9 第3ヒンジ部
11 第1免震装置
12 第2免震装置
13 第3免震装置
14 バネ機構
15 ダンパー機構
17 追加ビーム
20a 海側脚
20b 陸側脚
23 斜材
26 ブーム
27 ガーダ
31 ロック機能付き油圧ダンパー
32 軸
33 可変流量ピストン
34 ケーシング
35 貫通孔
k バネ定数
c 粘性定数
m1 第1質点(第1質量体)
m2 第2質点(第2質量体)
m3 第3質点(第3質量体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾や内陸地のコンテナターミナルなどでコンテナの荷役に使用するクレーン等に、地震対策を施した岸壁クレーン及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾や内陸地等のコンテナターミナルでは、岸壁クレーン、門型クレーン、コンテナトレーラによって、船舶及びトレーラ間のコンテナの荷役を行っている。このコンテナターミナルにおける地震対策として、岸壁クレーンに免震構造を備えたクレーンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10に、免震装置10を設置した従来型の岸壁クレーン1Xの1例を示す。岸壁クレーン1Xは、陸側走行装置2bに、油圧シリンダ等の減衰機構を有する免震装置10を内蔵している。この免震装置10は、矢印で示す様に垂直方向に揺動する。
【0004】
また、岸壁クレーン1Xは脚構造物3を有している。この脚構造物3は、海側脚20a及び陸側脚20bと、この脚を連結する水平材であるポータルタイビーム29と、海側脚20aの上方に延伸したマスト24を有している。更に、脚構造物3は、上方にブーム26及びガーダ27を有している。
【0005】
また、この脚構造物3は、岸壁5に平行な方向(図10の紙面手前から奥の方向)に、海側シルビーム21a、陸側シルビーム21b、海側タイビーム22a、及び陸側タイビーム22bを有している。更に、脚構造物3は、海側脚20aと、陸側脚20b又は陸側タイビーム22bを連結する斜材23を有しており、マスト24と、ガーダ27又は陸側タイビーム22bを連結するマスト支持斜材25を有している。このブーム26及びガーダ27に沿って、トロリ6が走行し、コンテナ41の荷役を行うように構成している。なお、2aは海側走行装置、4はクレーン1Xの機械室、40はコンテナ船を示している。
【0006】
図11に、岸壁クレーン1Xの免震構造のモデルを示す。図11Aに、コンテナの荷役作業等を行う通常時における岸壁クレーン1Xの振動解析用モデルを示す。このモデルは、地表面(岸壁)5上に、免震装置10(陸側脚に設置した免震装置)を介して、岸壁クレーン1Xの重心である質点m0を支持している状態を示している。なお、海側走行装置2a及び陸側走行装置2bと地表面5は、鉄製の車輪とレールで接触しているため、モデルでは紙面に垂直方向の軸を持つピン支持と見なすことができる。
また、免震装置10は、バネ機構14とダンパー機構15の組合せで示している。更に、岸壁クレーン1Xにおける質量体を、振動解析用モデルでは、質点m0としてモデル化している。
【0007】
図11Bに、岸壁クレーン1Xのモデルに地震動として、海側走行装置2a及び陸側走行装置2b(図10参照)を交互に浮き上がらせる(上下移動する)ような縦ねじれ振動S(ロッキングともいう)を加え、質点m0が振動している様子を示す。この縦ねじれ振動Sに対して、免震装置10が垂直方向に振動を減衰しながら伸縮する。この構造により、質点m0の縦ねじれ振動Sを抑制することができる。
【0008】
しかしながら、上記の構成を有するクレーン1Xは、免震ストロークが不十分であるため、強度の強い地震動に対して、十分な免震性能を発揮することができないという問題を有している。つまり、免震装置10の垂直方向の可動領域(摺動可能な距離)を、大きく構成することが困難であるため、減衰できる縦ねじれ振動Sの大きさが限定的となる。ま
た、免震装置10の他は、クレーン1Xの脚構造物3全体が歪んで地震動を吸収しなくてはならないため、大規模地震に対して免震性能を発揮することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−284230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、大規模地震に対応した免震構造及び制振構造を有するクレーンを提供することにある。つまり、クレーンが設置される地域において発生が想定されている大規模地震動の周期特性に対応して、免震及び制振装置の設計ができるクレーンを提供することにある。特に、縦ねじれ振動(ロッキング)を減衰することができるクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンは、脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体及び第2質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第2免震装置を設置し、他方に第2ヒンジ部を設け、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする。
【0012】
この構成により、クレーンは、少なくとも2つの質点(質量体)を有し、且つ複数の質点及び地表面の間に、それぞれ免震装置及びヒンジ部を介して連結する構成となる2質点系モデルを構築するため、あらゆる地震動の周期特性に対して免震及び制振することができる。
【0013】
ここで、クレーンの走行装置に設置した車輪と、地表面に敷設したレールの接触は、ピン支持と同等となるため、モデルにおいて見かけ上、第1ヒンジ部として取り扱うことができる。つまり、地表面と第1質量体の間に、第1免震装置と第1ヒンジ部を設け、第1質量体と第2質量体の間に、第2免震装置と第2ヒンジ部を設けた構成となる。そのため、クレーンが設置される地域において発生が想定されている大規模地震動の周期特性に対応して、免震及び制振装置の設計ができる。特に、縦ねじれ振動(ロッキング)を減衰することができる。
【0014】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする。
【0015】
この構成により、クレーンは、更に高い免震及び制振効果を得ることができる。これは、地表面、第1質量体及び第2質量体の間に、第1免震装置と第2免震装置、及び第1ヒンジ部(車輪とレールの接触点)と第2ヒンジ部を、海陸方向で互い違いとなるように配置するためである。
【0016】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンは、脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、振動解析用モデルにおいて質
点と見なせる第1質量体、第2質量体及び第3質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、前記第2質量体と前記第3質量体の間であって、前記第2免震装置を設置した方に第3ヒンジ部を設け、他方に第3免震装置を設置し、前記第1免震装置、前記第2免震装置及び前記第3免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする。
【0017】
この構成により、クレーンは、少なくとも3つの質点(質量体)を有し、且つ複数の質点及び地表面の間に、それぞれ免震装置及びヒンジ部を介して連結する多質点系モデルを構築するため、あらゆる地震動の周期特性に対して免震及び制振することができる。なお、モデルにおいて、クレーンの海側又は陸側では、免震装置及びヒンジ部が交互に配置されるように構成している。
【0018】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記脚構造物を、前記第1質量体を形成する下部構造物、及び前記第2質量体を形成する上部構造物に分割し、前記下部構造物が、上端に前記第2ヒンジ部を有する海側脚の一部と、陸側脚を有しており、前記上部構造物が、下端に前記第2ヒンジ部を有する海側脚の一部と、前記海側脚に固定した斜材と、前記斜材に固定した追加ビームを有しており、前記下部構造物の前記海側脚の下端と、海側走行装置の間に前記第1免震装置を設置し、前記陸側脚と前記追加ビームの間に前記第2免震装置を設置したことを特徴とする。
【0019】
この構成により、地震動を原因として海側脚又は陸側脚の端部にたわみ振動が発生した場合であっても、このたわみ振動が免震装置に与える影響を抑制することができる。そのため、クレーンは、大規模地震に対しても十分な免震及び制振効果を得ることができる。
【0020】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記免震装置をバネ機構及びダンパー機構で構成し、第1の条件下では前記免震装置の摺動を固定し、第2の条件下では少なくとも前記バネ機構のバネ定数又は前記ダンパー機構の粘性定数を制御して、前記免震装置の摺動を制御するように構成したことを特徴とする。
【0021】
この構成により、クレーンの振動をアクティブに制御することができ、制振効果を向上することができる。つまり、地震動によるクレーンの振動に対して、この振動を打ち消すように免震装置の摺動を制御できるため、積極的にクレーンの振動を減衰することができる。なお、第1の条件下とは、クレーンがコンテナの荷役作業等を行う通常時を想定しており、第2の条件下とは、地震発生時を想定している。なお、免震装置の摺動の固定は、せん断ピン等で構造的に固定する方法、又はダンパー機構等で使用する油圧の流動を閉止する方法等、任意に決定することができる。
【0022】
上記の岸壁クレーンにおいて、少なくとも前記免震装置のいずれか1つに、ロック機能付き油圧ダンパーを設置し、前記ロック機能付き油圧ダンパーが、端部に可変流量ピストンを有する軸と、内部に前記可変流量ピストンを摺動自在に配置して且つ流体を充填したケーシングを有しており、第1の条件下では、前記可変流量ピストンに形成した貫通孔を閉止し、前記軸を前記ケーシングに対して固定し、前記免震装置の摺動を禁止する制御を行い、第2の条件下では、前記可変流量ピストンに形成した貫通孔を連通し、前記軸を前記ケーシングに対して摺動自在とし、前記免震装置の摺動を自在とする制御を行うことを特徴とする。
【0023】
この構成により、クレーンの免震装置が作動を開始するタイミングを精密に制御することができる。つまり、予め設定した値を超える大きさの地震動が発生した場合に、免震装
置が速やかに作動するように制御することができる。そのため、確実且つ精密な免震効果を得ることができる。
【0024】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンの制御方法は、脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体及び第2質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成した岸壁クレーンの制御方法であって、前記免震装置をバネ機構及びダンパー機構で構成しており、第1の条件下では、前記免震装置の摺動を固定する制御を行い、第2の条件下では、少なくとも前記バネ機構のバネ定数又は前記ダンパー機構の粘性定数を制御して、前記免震装置の摺動を制御するように構成したことを特徴とする。この構成により、上記の岸壁クレーンと同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るクレーンによれば、大規模地震動に対応した免震及び制振構造を得ることができる。すなわち、クレーンが設置される地域において発生が想定されている大規模地震動の周期特性に対して、クレーンが共振状態とならず、免震及び制振効果を効率的に得ることができる。特に、縦ねじれ振動(ロッキング)を減衰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る実施の形態のクレーンの概要を示した図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のクレーンの振動解析用モデルを示した図である。
【図3】本発明に係る実施の形態のクレーンの振動モードを示した図である。
【図4】本発明に係る実施の形態のクレーンの部分拡大図である。
【図5】本発明に係る実施の形態のクレーンの免振装置を示した図である。
【図6】本発明に係る異なる実施の形態のクレーンの概要を示した図である。
【図7】本発明に係る異なる実施の形態のクレーンの振動解析用モデルを示した図である。
【図8】本発明に係る異なる実施の形態のクレーンの部分拡大図である。
【図9】本発明に係る異なる実施の形態のクレーンの概要を示した図である。
【図10】従来の免震機構を有したクレーンの概要を示した図である。
【図11】従来の免震機構を有したクレーンの振動解析用モデルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施の形態のクレーンについて、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る実施の形態の岸壁クレーン1を示す。岸壁クレーン1は、クレーン構造物を下部構造物及び上部構造物の2つに分割し、海側走行装置2aと下部構造物の間に第1免震装置11を、下部構造物と上部構造物の間に、第2免震装置12及び第2ヒンジ部8を設けている。なお、上部構造物には斜線を付している。
【0028】
第1免震装置11と、第2免震装置12及び第2ヒンジ部8の間には、海側脚20aの一部、陸側脚20b、海側シルビーム21a、陸側シルビーム21b、陸側タイビーム22b、機械室4及びポータルタイビーム29を配置している(下部構造物)。
【0029】
第2免震装置12及び第2ヒンジ部8の上部には、追加ビーム17、海側脚20aの一部、海側タイビーム22a、斜材23、マスト24、マスト支持斜材25、ブーム26、及びガーダ27を配置している(上部構造物)。ここで、上部構造物及び下部構造物を構成する部材の構成は、上記に限られるものではなく、クレーン1が見かけ上、2つの構造
物(上部及び下部構造物)にわけられる限りにおいて、適宜変更することができる。
【0030】
なお、第1免震装置11を、海側走行装置2aの内部、又は下部構造物の内部に組み込んでもよい。また、免震装置11、12は、油圧シリンダを利用したバネダンパー機構で構成することが望ましいが、他の免震装置を利用することもできる。例えば、垂直スライダー機構、バネ機構、ダンパー機構等を単独又は組み合わせて、垂直方向に摺動可能な免震装置を利用することができる。更に、第2ヒンジ部8は、海側脚20aの一部(上部)が海陸方向(図1の左右方向)に傾斜(回転)できる構成を有している。
【0031】
図2に、図1に示した岸壁クレーン1の振動解析用モデルを示す。この振動解析用モデルにおいて、下部構造物及び上部構造物(質量体)の重心を、第1質点(第1質量体)m1、及び第2質点(第2質量体)m2として表している。また、下部構造物である第1質点m1は、第1免震装置11を介して地表面5と接触し、更に、第2免震装置12及び第2ヒンジ部8を介して、上部構造物である第2質点m2と接続している。ここで、海側走行装置2a及び陸側走行装置2b(図1参照)と地表面5は、鉄製の車輪とレールで接触しているため、モデルでは紙面に垂直方向の軸を持つピン支持と見なすことができる。そのため、陸側走行装置2bと地表面5の接触点は、第1ヒンジ部7と見なすことができる。
【0032】
つまり、岸壁クレーン1は、地表面5、第1質点m1及び第2質点m2を、それぞれ免震装置11、12及びヒンジ部7、8で連結するように構成している。更に、免震装置11、12とヒンジ部7、8の設置位置は、海陸方向(図2左右方向)で交互となるように構成することが望ましい。具体的には、海側(図2右方)に第1免震装置11を設置した場合、第2免震装置12は陸側(図2左方)に設置する。同様に、陸側に第1ヒンジ部7を設けた場合、第2ヒンジ部8は海側に設けるように構成する。また、上記と海陸の方向を入れ替えて構成することもできる。ここで、高さh1及びh2は、地表面(岸壁)5からそれぞれの質点m1及びm2までの高さを示している。また、免震装置11、12を、バネ機構14とダンパー機構15の組み合わせで表現している。なお、上記では、第1ヒンジ部7を、車輪とレールの接触により実現しているが、第2ヒンジ部8と同様の構造を第1ヒンジ部7として、クレーン脚構造物に設置してもよい。
【0033】
次に、クレーン1における免震装置の動作について説明する。図2Aに、クレーン1がコンテナ41の荷役等を行う通常時(第1の条件下)の状態を示す。このとき、クレーン1の免震装置11、12は、せん断ピン等の固定具で固定し、剛の状態とする。この免震装置11、12の固定は、例えばダンパー機構15に付属する油圧回路において、流体の流動を閉止する方法で実現することもできる。更に、第2ヒンジ部8を固定具等で固定してもよい。
【0034】
図2Bに、クレーン1が、地震発生時(第2の条件下)に振動している状態を示す。このとき、免震装置11、12は、固定を解除され、柔の状態となる。また、第2ヒンジ部8を固定している場合、第2ヒンジ部8は固定を解除され、柔の状態となる。このときの地震動は、クレーン1の海側の走行装置と陸側の走行装置が、交互に浮き上がるような縦ねじれ振動(ロッキング)Sを想定している。
【0035】
この縦ねじれ振動Sにより、第1質点m1及び第2質点m2は、矢印に示す様に海陸方向に回転力を受ける。この縦ねじれ振動を、第1免震装置11及び第2免震装置12は、垂直方向に摺動(伸縮)を繰り返して(白抜き矢印参照)減衰する。このとき、第1質点m1が、第2質点m2の振動に対して逆位相モードで振動するように、クレーンを設計する。
【0036】
図3に、クレーン1の振動モードを示す。図3Aは、通常時の状態を示しており、第1質点m1及び第2質点m2は、地表面5に対して定位置にある。図3Bは、地震発生時の状態を示しており、第1質点m1と第2質点m2が、海陸方向(図3左右方向)において、逆となるように振動している(逆位相モード)。なお、この振動モードは、地震動と、各質点m1、m2の位置及び重量、地表面から質点までの高さh1、h2、バネ機構14のバネ定数k、ダンパー機構15の粘性定数cをパラメータとして設計することができる。
【0037】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、大きな地震動であっても、小さい免震ストロークで減衰することができる。つまり、第1質点m1及び第2質点m2が、逆位相モードで振動するため、互いの振動を相殺し、高い振動減衰効果を得ることができる。そのため、免震装置11、12の免震ストローク(伸縮長さ、又は摺動距離)が小さくても、大きな地震動を減衰することができる。
【0038】
第2に、クレーン1が、地震動に対して発散型の共振状態となることを、抑制することができる。日本国内においては、港湾法第五六条二の二の2により、特定の岸壁に設置するクレーンは耐震性に関して確認審査が必要となっているため、設置される地域ごとに地震波は予め想定されており、強い揺れ成分の周波数も算定できる。つまり、クレーン1が見かけ上2つの質点m1、m2を有するように構成しているため、クレーン1が地表面5の振動に対して、発散型の共振状態となることを防止又は抑制することができる。
【0039】
また、クレーン1に設置した免震装置11、12をアクティブ制御とし、積極的にクレーン1の振動を減衰するように構成してもよい。つまり、地震発生時に、振動モードを決定するパラメータであるバネ定数k、及び粘性定数c等を変更する制御を行い、積極的に免震装置11、12の摺動を制御するように構成してもよい。更に、免震装置11、12の固定及び開放において、せん断ピンの代わりに、固定具として油圧駆動ロックピン、電動駆動ロックピン、又は後述するロック機能付き油圧ダンパー等を使用してもよい。なお、油圧駆動ロックピン及び電動駆動ロックピンは、せん断ピンが地震動からの外力により破断するのに対して、油圧及び電気等の動力により、引き抜く構造を有している。また、免震装置11、12を油圧機構で構成し、油圧機構の回路に設置したトリガー弁等の開閉制御により、免震装置11、12の固定及び開放を行うように構成してもよい。
【0040】
次にクレーン1の振動制御に関して説明する。まず、免震装置11、12をパッシブ制御とした場合を説明する。免震装置11、12をパッシブ制御とする場合は、クレーン1を構成する各パラメータ(質量m、高さh、バネ定数k、粘性定数c)を変数として、クレーン1の設計を行う。例えば、このクレーン1の振動が、予め想定した地震動に対して、発散せず、図2B又は図3Bに示す逆位相のモードとなるように設計することが望ましい。
【0041】
コンテナの荷役等を行う通常時には、クレーン1の免震装置11、12はせん断ピン、油圧駆動ロックピン、電動駆動ロックピン、トリガー弁の制御、又はロック機能付き油圧ダンパー等で固定し、剛の状態としている。地震発生時には、せん断ピンの破断等により免震装置11、12が開放され、クレーン1が、図2B又は図3Bに示す逆位相モードで振動する。なお、油圧駆動ロックピン、電動駆動ロックピン、ロック機能付き油圧ダンパー、又はトリガー弁等を利用する場合は、地震発生をセンサ等で感知して免震装置11、12を開放するように構成する。
【0042】
次に、免震装置11、12をアクティブ制御とした場合を説明する。免震装置11、12をアクティブ制御とする場合は、まず、クレーン1を構成する各パラメータを変数として、クレーン1の設計を行う。更に、地震発生時にバネ定数k及び粘性定数cを可変とし
て、積極的に制御できるように構成する。地震発生時には、バネ機構14のバネ定数k及びダンパー機構15の粘性定数cをリアルタイムで制御し、クレーン1が逆位相モードで振動するように制御する。
【0043】
上記の構成により、以下のような作用効果を得ることができる。第1に、クレーン1が2つの質点m1、m2を有する構成により、大規模地震に対しても十分な免震及び制振効果を得ることができる。特に、縦ねじれ振動(ロッキング)に対して有効な免震及び制振効果を得ることができる。つまり、免震装置11、12、及びヒンジ部7、8を介して連結した質点m1、m2は、地表面(岸壁)5で発生した地震動に対して、発散型の共振状態となることがほとんどないため、地震動によるクレーン1の振動を抑制することができる。これは、第2質点m2を、クレーン1に対する制振マス(振動を打ち消すためのおもり)として利用できるためである。
【0044】
第2に、クレーン1の設計段階において、予め想定される地震動に応じて、各質点m1、m2の重量、地表面5から各質点m1、m2までの高さh1、h2、バネ機構14のバネ定数k、ダンパー機構15の粘性定数cを変更することができる。そのため、例えば、300secの長時間にわたり、高いエネルギーを放出し続けるような地震を想定した場合であっても、十分な免震及び制振効果を得ることができる。特に従来は対応することができなかった、長周期の地震動に対しても、クレーン1が発散型の共振とならず、十分な免震及び制振効果を得ることができる。また、ヒンジ部の位置の変更により、クレーンの振動の周期特性を変更することができる。
【0045】
第3に、免震装置11、12をアクティブ制御とする場合、あらゆる周波数の地震動に対して、クレーン1の振動を効果的に減衰するように制御することができる。つまり、地震によりクレーン1が振動している間、例えばダンパー機構15の粘性定数cを変更する制御により、逆位相の振動モードとすることができる。この逆位相モードにより、第2質点m2を、クレーン1に対する制振マス(振動を打ち消すためのおもり)として利用することができる。
【0046】
なお、クレーン1の振動モードの制御において、地震速報等の情報をもとに、免震装置11、12をアクティブ制御するように構成してもよい。具体的には、まず、無線等で受信した情報から、地震動の振幅、周期等を取得する。この地震動に対して、逆位相の振動モード(図2B又は図3B参照)で振動するように、免震装置11、12を構成するバネ機構14のバネ定数k及びダンパー機構15の粘性定数c等の制御をそれぞれ開始する。次に、地震動の変化に応じて、2つの免震装置11、12のバネ定数k及び粘性定数cをリアルタイムでそれぞれ制御するように構成してもよい。この構成により、免震及び制振効果を更に向上することができる。
【0047】
図4に、第2免震装置12を中心とする拡大図を示す。この第2免震装置12は、陸側脚20bの側方に設置した架台18上に固定している。第2免震装置12上には、上部構造物側である追加ビーム17を固定している。この追加ビーム17に、海側脚20a(図1参照)から延長した斜材23と、ガーダ27を連結している。また、ガーダ27にマスト支持斜材25を固定している。他方で、下部構造物側は、陸側脚20bと、その上部に陸側タイビーム22bを介して設置した機械室4を有している。
【0048】
上記の構成により、以下のような作用効果を得ることができる。第1に、クレーン1が2つの質点m1、m2を有する構成により、大規模地震に対しても十分な免震及び制振効果を得ることができる。第2に、脚構造物3を構成する主要な梁部材が、門型あるいは三角形構造を構成しているので、たわみ剛性を高めることが可能となる。そのため、第2免震装置12に発生する免震ストロークを、梁部材のたわみ変形で相殺してしまう事態を回
避することが可能となる。
【0049】
図5に、ロック機能付き油圧ダンパーとバネ機構(図示しない)で構成した第2免震装置12の1例を示す。この第2免震装置12は、陸側脚20bに設置した架台18と、追加ビーム17の間に設置している。第2免震装置12は端部に可変流量ピストン33を有する二重管状の軸32と、内部に油等の流体を満たしたケーシング34を有している。この可変流量ピストン33は、貫通孔35を有しており、この貫通孔35の開口面積を制御することができるように構成している。
【0050】
具体的には、それぞれ貫通孔35を形成した円板状部材を重ねて、可変流量ピストン33を構成する。この円板状部材の一方を回転し、この回転により円板状部材の互いの貫通孔35を連通又は閉止できるように構成している。
【0051】
なお、可変流量ピストン33の回転は、モータ等の動力を設置して制御してもよい。また、バネ等の弾性体と電磁石等の固定部材を組み合わせて設置してもよい。つまり、通常時には、可変流量ピストン33は、弾性体の復元力に逆らって貫通孔35を閉止した状態にあり、このピストン33を固定部材により固定する。そして、地震発生時には、固定部材による固定を解除し、ピストン33が弾性体により貫通孔35を連通するように構成してもよい。
【0052】
次に、ロック機能付き油圧ダンパーの動作に関して説明する。通常時(第1の条件下)は、可変流量ピストン33の貫通孔35を閉止し、ケーシング34内で、充填した流体が移動しないように制御する。この制御により、軸32はケーシング34に対して固定した状態となるため、免震装置12は、固定された状態(剛の状態)となる。
【0053】
地震発生時(第2の条件下)には、円板状部材を回転し、可変流量ピストン33の貫通孔35を連通する。そして、ケーシング34内で、充填した流体が貫通孔35を経由して自由に移動するように制御する。この制御により、軸32はケーシング34に対して摺動自在(白抜き矢印参照)となるため、免震装置12は摺動可能となり、その効果を発揮する。
【0054】
上記のロック機能付き油圧ダンパーを利用する構成により、免震装置12の動作開始(開放)を正確に制御することができる。せん断ピンを利用した場合、このせん断ピンの破断する力及びタイミングの制御が困難となることがあった。これに対して、ロック機能付き油圧ダンパーは、免震装置12が作動するタイミングを制御できるため、確実且つ精密な免震及び制振効果を得ることができる。
【0055】
ここで、可変流量ピストン33の制御をアクティブに行うように構成しても良い。つまり、地震発生時において、免震装置12の変位量をもとに、貫通孔35の開口面積をリアルタイムで制御する。この構成により、ロック機能付き油圧ダンパーにおける可変流量ピストン33の摺動抵抗を制御できるため、免震装置12の減衰特性の制御を行うことができる。なお、第2免震装置12に関して説明したが、他の免震装置(例えば第1免震装置11)も同様に構成することができる。
【0056】
図6に、本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーン1Aを示す。岸壁クレーン1Aは、クレーン構造物を下部構造物、中部構造物及び上部構造物の3つに分割している。海側走行装置2aと下部構造物の間に第1免震装置11を設置している。また、下部構造物と斜線を付した中部構造物の間に、第2免震装置12及び第2ヒンジ部8を設置している。更に、中部構造物と上部構造物の間に、第3免震装置13及び第3ヒンジ部9を設置している。
【0057】
下部構造物は、海側脚20aの一部、陸側脚20b、海側シルビーム21a、陸側シルビーム21b、下部斜材23a、ポータルタイビーム29を有している。中部構造物は、海側脚20aの一部、中部斜材23b、追加ポータルタイビーム29a、陸側タイビーム22b、機械室4を有している。上部構造物は、ブーム26、ガーダ27、マスト24、海側タイビーム22aを有している。ここで、上部構造物、中部構造物及び下部構造物を構成する部材の構成は、上記に限られるものではなく、クレーン1Aが見かけ上、3つの構造物(上部、中部及び下部構造物)にわけられる限りにおいて、適宜変更することができる。
【0058】
図7に、図6に示した岸壁クレーン1Aの振動解析用モデルを示す。この図7Aに示す振動解析用モデルにおいて、下部構造物、中部構造物及び上部構造物(質量体)の重心を、第1質点(第1質量体)m1、第2質点(第2質量体)m2、及び第3質点(第3質量体)m3として表している。また、下部構造物である第1質点m1は、第1免震装置11及び第1ヒンジ部7を介して地表面5に接触している。同様に、中部構造物である第2質点m2は、第1ヒンジ部7と同じ側(例えば陸側)に設置した第2免震装置12、及び第1免震装置11と同じ側(例えば海側)に配置した第2ヒンジ部8を介して、下部構造物と連結している。同様に、上部構造物である第3質点m3は、第2ヒンジ部8と同じ側(例えば海側)に配置した第3免震装置13、及び第2免震装置12と同じ側(例えば陸側)に配置した第3ヒンジ部9を介して、中部構造物と連結している。つまり、地表面5及び各質点m1、m2、m3は、免震装置及びヒンジ部でそれぞれ連結している。そして、免震装置とヒンジ部の海陸方向の位置は、上下で入れ替わるように構成している。
【0059】
図7Bは、隣接する各質点m1、m2、m3がそれぞれ逆方向に振動する様子を示している(逆位相モード)。また、図7Cは、第1質点m1及び第2質点m2が同一方向に振動し、これに対して、第3質点m3が逆方向に振動する様子を示している。岸壁クレーン1Aの振動を、図7B及び図7Cに示す振動モードに制御する構成により、クレーン1Aの振動を効果的に減衰することができる。これは、各質点が、互いの振動を打ち消すように振動するためである。
【0060】
クレーン1Aが3つの質点m1、m2、m3を有する構成により、地震動に対する免震及び制振効果を向上することができる。これは質点の数が多い方が、より適切な振動モードとなるように制御することが容易となるためである。ただし、質点数が増加すると免震装置の数が増加し、これに伴いコストが増加する。
【0061】
図8に、第2免震装置12及び第3ヒンジ部9を中心とする拡大図を示す。この第2免震装置12は、陸側脚20bと陸側タイビーム22bの間に設置している。また、第3ヒンジ部9は、陸側タイビーム22bからガーダ27を懸吊するように構成している。
【0062】
図9に、本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーン1Bを示す。岸壁クレーン1Bは、クレーン構造物を下部構造物、中部構造物及び上部構造物の3つに分割している。陸側走行装置2bと下部構造物の間に第1免震装置11bを設置している。また、下部構造物と斜線を付した中部構造物の間に、第2免震装置12b及び第2ヒンジ部8bを設置している。更に、中部構造物と上部構造物の間に、第3免震装置13b及び第3ヒンジ部9bを設置している。
【0063】
下部構造物は、海側脚20a、陸側脚20bの一部、海側シルビーム21a、陸側シルビーム21b、下部斜材23a、ポータルタイビーム29を有している。中部構造物は、陸側脚20bの一部、中間斜材23b、追加ポータルタイビーム29a、海側タイビーム22a、陸側タイビーム22b、機械室4、マスト24を有している。上部構造物は、ブ
ーム26、ガーダ27を有している。
【0064】
なお、図6及び図9の実施例では、質点を3つとした例を説明したが、質点を4つ以上としても、同様の免震及び制振効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1、1A、1B クレーン(岸壁クレーン)
2 走行装置
2a 海側走行装置
2b 陸側走行装置
3 脚構造物
5 地表面(岸壁)
7 第1ヒンジ部
8 第2ヒンジ部
9 第3ヒンジ部
11 第1免震装置
12 第2免震装置
13 第3免震装置
14 バネ機構
15 ダンパー機構
17 追加ビーム
20a 海側脚
20b 陸側脚
23 斜材
26 ブーム
27 ガーダ
31 ロック機能付き油圧ダンパー
32 軸
33 可変流量ピストン
34 ケーシング
35 貫通孔
k バネ定数
c 粘性定数
m1 第1質点(第1質量体)
m2 第2質点(第2質量体)
m3 第3質点(第3質量体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体及び第2質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、
前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第2免震装置を設置し、他方に第2ヒンジ部を設け、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項2】
前記地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、
前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の岸壁クレーン。
【請求項3】
脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体、第2質量体及び第3質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、
前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、
前記第2質量体と前記第3質量体の間であって、前記第2免震装置を設置した方に第3ヒンジ部を設け、他方に第3免震装置を設置し、前記第1免震装置、前記第2免震装置及び前記第3免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項4】
前記脚構造物を、前記第1質量体を形成する下部構造物、及び前記第2質量体を形成する上部構造物に分割し、前記下部構造物が、上端に前記第2ヒンジ部を有する海側脚の一部と、陸側脚を有しており、前記上部構造物が、下端に前記第2ヒンジ部を有する海側脚の一部と、前記海側脚に固定した斜材と、前記斜材に固定した追加ビームを有しており、
前記下部構造物の前記海側脚の下端と、海側走行装置の間に前記第1免震装置を設置し、前記陸側脚と前記追加ビームの間に前記第2免震装置を設置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の岸壁クレーン。
【請求項5】
前記免震装置をバネ機構及びダンパー機構で構成し、第1の条件下では前記免震装置の摺動を固定し、第2の条件下では少なくとも前記バネ機構のバネ定数又は前記ダンパー機構の粘性定数を制御して、前記免震装置の摺動を制御するように構成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の岸壁クレーン。
【請求項6】
少なくとも前記免震装置のいずれか1つに、ロック機能付き油圧ダンパーを設置し、前記ロック機能付き油圧ダンパーが、端部に可変流量ピストンを有する軸と、内部に前記可変流量ピストンを摺動自在に配置して且つ流体を充填したケーシングを有しており、
第1の条件下では、前記可変流量ピストンに形成した貫通孔を閉止し、前記軸を前記ケーシングに対して固定し、前記免震装置の摺動を禁止する制御を行い、第2の条件下では、前記可変流量ピストンに形成した貫通孔を連通し、前記軸を前記ケーシングに対して摺動自在とし、前記免震装置の摺動を自在とする制御を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の岸壁クレーン。
【請求項7】
脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、
振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体及び第2質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、
前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成した岸壁クレーンの制御方法であって、
前記免震装置をバネ機構及びダンパー機構で構成しており、第1の条件下では、前記免震装置の摺動を固定する制御を行い、第2の条件下では、少なくとも前記バネ機構のバネ定数又は前記ダンパー機構の粘性定数を制御して、前記免震装置の摺動を制御するように構成したことを特徴とする岸壁クレーンの制御方法。
【請求項1】
脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体及び第2質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、
前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第2免震装置を設置し、他方に第2ヒンジ部を設け、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項2】
前記地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、
前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の岸壁クレーン。
【請求項3】
脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体、第2質量体及び第3質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、
前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、
前記第2質量体と前記第3質量体の間であって、前記第2免震装置を設置した方に第3ヒンジ部を設け、他方に第3免震装置を設置し、前記第1免震装置、前記第2免震装置及び前記第3免震装置が垂直方向に摺動するように構成したことを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項4】
前記脚構造物を、前記第1質量体を形成する下部構造物、及び前記第2質量体を形成する上部構造物に分割し、前記下部構造物が、上端に前記第2ヒンジ部を有する海側脚の一部と、陸側脚を有しており、前記上部構造物が、下端に前記第2ヒンジ部を有する海側脚の一部と、前記海側脚に固定した斜材と、前記斜材に固定した追加ビームを有しており、
前記下部構造物の前記海側脚の下端と、海側走行装置の間に前記第1免震装置を設置し、前記陸側脚と前記追加ビームの間に前記第2免震装置を設置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の岸壁クレーン。
【請求項5】
前記免震装置をバネ機構及びダンパー機構で構成し、第1の条件下では前記免震装置の摺動を固定し、第2の条件下では少なくとも前記バネ機構のバネ定数又は前記ダンパー機構の粘性定数を制御して、前記免震装置の摺動を制御するように構成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の岸壁クレーン。
【請求項6】
少なくとも前記免震装置のいずれか1つに、ロック機能付き油圧ダンパーを設置し、前記ロック機能付き油圧ダンパーが、端部に可変流量ピストンを有する軸と、内部に前記可変流量ピストンを摺動自在に配置して且つ流体を充填したケーシングを有しており、
第1の条件下では、前記可変流量ピストンに形成した貫通孔を閉止し、前記軸を前記ケーシングに対して固定し、前記免震装置の摺動を禁止する制御を行い、第2の条件下では、前記可変流量ピストンに形成した貫通孔を連通し、前記軸を前記ケーシングに対して摺動自在とし、前記免震装置の摺動を自在とする制御を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の岸壁クレーン。
【請求項7】
脚構造物と走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが少なくとも、
振動解析用モデルにおいて質点と見なせる第1質量体及び第2質量体を有し、地表面と前記第1質量体の間であって、クレーン構造物の海側又は陸側のいずれか一方に第1免震装置を設置し、
前記第1質量体と前記第2質量体の間であって、前記第1免震装置を設置した方に第2ヒンジ部を設け、他方に第2免震装置を設置し、前記第1免震装置及び前記第2免震装置が垂直方向に摺動するように構成した岸壁クレーンの制御方法であって、
前記免震装置をバネ機構及びダンパー機構で構成しており、第1の条件下では、前記免震装置の摺動を固定する制御を行い、第2の条件下では、少なくとも前記バネ機構のバネ定数又は前記ダンパー機構の粘性定数を制御して、前記免震装置の摺動を制御するように構成したことを特徴とする岸壁クレーンの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−251794(P2011−251794A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125566(P2010−125566)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】
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