説明

嵌合検知型コネクタ

【課題】プラグとソケットからなるコネクタの接続検知精度が高く、プラグ及びソケットの小型化を図るのに有効な嵌合検知型コネクタの提供を目的とする。
【解決手段】ソケットとプラグとの嵌合状態を検知するスイッチ部を備えたコネクタであって、前記ソケットのソケットハウジングと前記プラグのプラグハウジングとのうち、いずれか一方のハウジングは嵌合方向に向けて突出したアーム状のロック部を有し、前記ロック部は嵌合方向に対して直交する内外方向に弾性変形可能で、且つ、外側方向に突出したロック爪を有し、他方のハウジングは当該ハウジングの内側に前記ロック爪の挿入孔と当該挿入孔に挿入されたロック爪が外側方向に弾性復帰することで係止する被係止部を有し、前記スイッチ部は前記他方のハウジングの内側に有するとともに、固定片と弾性を有する可動片とからなり、前記ロック爪が前記被係止部に係止する際に可動片を外側方向に押圧し、スイッチのON/OFFが切り替わることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグとソケットとが嵌合することで電気接続するコネクタにおいて嵌合状態を検知するためのスイッチ機能を備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プラグとソケットとを嵌合することで電気接続するコネクタにあって、プラグ端子又はソケット端子に電圧が印可された状態にて端子同士を嵌合接続すると、この接続の際にリークが発生し、接点部に絶縁部が生成したり、回路基板に不具合が生じるのを防止すべく、端子間の嵌合状態を検知するためのスイッチ部を備えたコネクタは公知である。
例えば、図8及び図9に従来のコネクタの構造例を示す。
図8は、ソケット110のソケットハウジング111とプラグ120のプラグハウジング121を嵌合接続する際に、プラグハウジング121内に固定片131と可動片132とからなるスイッチ部を形成してあり、ソケット端子115を収容した絶縁壁111aの側壁で可動片132を外側に押圧し、固定片131との接点接触を離間させる構造となっている。
その拡大図を図9(a)に示す。
ソケット端子115とプラグ端子125とが接続して、嵌合移動中に絶縁壁111aの先端が可動片132に当接することになるために接続寸法Lが短く、嵌合が不完全な状態で固定片131と可動片132との接点132aが離間することになる。
また、図9(b)に示すように絶縁壁111aの先端にて可動片132を下方向に押圧する場合も同様にプラグ端子125とソケット端子115とが接続移動中にスイッチの切り替えが生じ、接続寸法Lを充分に確保することができないだけでなく、端子の移動中にスイッチが切り替わることから、ソケット110がプラグ120に斜めに嵌合したような場合には複数ある端子の一部が接続する前にスイッチが切り替わってしまう問題もあった。
【0003】
特許文献1にロック部材が被ロック部材に係止する際のロック部材の復元変位にて可動接点片が固定接点片から接離する構造のコネクタを開示する。
しかし、同公報に開示するコネクタのスイッチ構造は、可動接点片の被押圧部がハウジングの外側に突出し、外部に露出した構造になっているためにコネクタの接続時に不本意に触れ、コネクタの嵌合の前にスイッチが切り替わってしまう恐れがある。
さらには外部に露出している可動片が不本意に変形してしまったり、弾性復元力が失われたりする恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−258012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はプラグとソケットからなるコネクタの接続検知精度が高く、プラグ及びソケットの小型化を図るのに有効な嵌合検知型コネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコネクタは、ソケットとプラグとの嵌合状態を検知するスイッチ部を備えたコネクタであって、前記ソケットのソケットハウジングと前記プラグのプラグハウジングとのうち、いずれか一方のハウジングは嵌合方向に向けて突出したアーム状のロック部を有し、前記ロック部は嵌合方向に対して直交する内外方向に弾性変形可能で、且つ、外側方向に突出したロック爪を有し、他方のハウジングは当該ハウジングの内側に前記ロック爪の挿入孔と当該挿入孔に挿入されたロック爪が外側方向に弾性復帰することで係止する被係止部を有し、前記スイッチ部は前記他方のハウジングの内側に有するとともに、固定片と弾性を有する可動片とからなり、前記ロック爪が前記被係止部に係止する際に可動片を外側方向に押圧し、スイッチのON/OFFが切り替わることを特徴とする。
ここで、スイッチ部がハウジングの内側に有するとは、スイッチ部の接点部がハウジングの外部に露出していないことをいう。
【0007】
本発明にて、ロック爪は外側方向に弾性復帰するのを補助する弾性材からなる復元補助部材を備えてもよい。
また、ソケットのソケット端子と前記プラグのプラグ端子とが嵌合接続した状態でのみ前記スイッチのON/OFFの切り替えを許容するように構成してもよい。
【0008】
本発明において、可動片を外側方向に押圧することでスイッチのON/OFFが切り替わる態様には、プラグとソケットとの嵌合前は可動片が固定片に弾性接触した状態にあり、当該プラグとソケットが嵌合すると、ロック爪が外側に弾性復帰する際に可動片を外側に押圧し、接点が離間する態様の他に、その逆に嵌合前に固定片と可動片が離れた状態から、ロック爪で可動片が外側に押圧されると、この固定片に可動片が接触することで、ON/OFFが切り替わる態様が含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るコネクタは、プラグハウジングとソケットハウジングとのうち、いずれか一方に嵌合方向に向けて突出したアーム状のロック部を有し、他方のハウジングは前記ロック部のロック爪が挿入される挿入孔を当該他方のハウジングの内側に設けたので、プラグとソケットの嵌合状態を検知するスイッチ部もこの他方のハウジングの内側に設けることができるので、従来の特許文献1のように不本意にスイッチ部が何らかに触れ、プラグとソケットの嵌合前にON/OFF状態が切り替わるのを防止する。
【0010】
また、一方のハウジングに設けたアーム状のロック部に設けたロック爪が、他方のハウジングに設けた被係止部に係止する動きに合せてスイッチ部のON/OFFが切り替わることになるので、プラグ端子とソケット端子との嵌合接続が完了すると同時にあるいはそれよりもやや遅れて可動片が外側に押圧され、固定片から接点が離間、あるいはこの固定片に接点が接触することになり、このスイッチ部の切り替えによりプラグ端子とソケット端子との間に電圧が印可されるように設定することで、リークの発生を確実に防ぐことができる。
また、プラグとソケットとの嵌合を取り外す際には、ロック部を内側に押圧しロック爪を被係止部から解除することになり、このロック爪が内側に移動すると必然的にスイッチ部の可動片も内側に移動するので、スイッチ部が確実に切り替わった状態でないとプラグとソケットとの嵌合を外すことができない。
また、ロック爪に復元補助部材を備えることによってプラグとソケットとの嵌合をより強固なものとすると共に、プラグをソケットに挿入した際におけるスイッチ部のON/OFF切り替えを、より確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るコネクタの構造例を示し、(a)はソケットとプラグの嵌合前の状態、(b)は嵌合途中の状態、(c)は嵌合完了によりスイッチ部が切り替わった状態をそれぞれ示す。
【図2】スイッチ部の拡大図を示し、(a)はプラグとソケットの嵌合途中、(b)は嵌合完了によりスイッチ部が切り替わる状態を示す。
【図3】ソケットに設けたロック部を内側に押圧し、プラグとソケットとの嵌合を外す操作を示す。(a)は両側のロック解除部を内側に押圧した状態、(b)はその際のスイッチ部の拡大図を示す。
【図4】スイッチ部の部品構成例を示す。(a)は固定片と可動片との位置関係を示し、(b)は固定片と可動片を分離した状態を示す。
【図5】ロック爪がロック孔に挿入し、スイッチ部が切り替わる状態を示す。(a)はプラグとソケットとの嵌合前、(b)は嵌合後を示す。
【図6】プラグ及びソケットの嵌合面の斜視図を示す。(a)はソケット、(b)はプラグを示す。
【図7】プラグの裏面(嵌合方向とは反対側の面)から固定片と可動片を組み込む状態を示す。(a)はソケットにスイッチ部を組み込む前、(b)は固定片を組み込んだ状態、(c)は可動片を組み込んだ状態を示す。
【図8】従来のコネクタの構造例を示す。
【図9】従来のコネクタのスイッチ部の構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るコネクタの構造例を以下、図面に基づいて説明する。
本実施例はソケットにロック爪を設け、プラグにロック爪の挿入孔とスイッチ部を設けた例になっているが、ソケットとプラグの構造はこの逆でもよく本実施例に限定されるものではない。
【0013】
図1に示すようにソケット10は絶縁性である樹脂製のソケットハウジング11の内部に、筒状の絶縁壁11aを形成し、内側に、ケーブル14の先端に接続したソケット端子15を収納する。
ソケットハウジング11は外観図を図6(a)に示すように側部の両側にアーム状のロック部12,13を有する。
アーム状のロック部12,13はソケットハウジング11の側部からプラグ20への嵌合方向に向けて突出し、その先端部付近に外側に向けて突出したロック爪12a,13aを有する。
ロック部12,13はソケットハウジング11との付け根部12d,13dを支点にして嵌合方向とは直交する内外方向に弾性変形する。
この付け根部12d,13dとロック爪12a,13aとの間にはロック解除部12b,13bを有し、このロック解除部を内側に押圧すると、ロックが解除される。
ロック爪12a,13aの嵌合方向先端側は嵌合方向に向けて内側に傾斜した斜面部12c,13cを形成し、後述するプラグ20の挿入孔22,23にロック爪12a,13aを挿入する際に挿入方向をガイドする。
【0014】
プラグ20はその外観図を図6(b)に示すように、絶縁樹脂製のプラグハウジング21の内側にプラグ端子25とロック爪12a,13aの挿入孔22,23を有する。
挿入孔22,23は、嵌合前のソケット10の解放状態のロック爪12a,13aの左右方向外側の突出先端部よりも内側に位置する摺接壁部22a,23aを有し、ロック爪12a,13aをこの挿入孔22,23に挿入すると図1(b)に示すようにロック部12,13が摺接壁部22a,23aにより内側に押圧され弾性変形する。
両側の挿入孔22,23のうち、少なくとも一方の挿入孔22には奥側に摺接壁部22aを切り欠いた被係止部22bと、さらにその嵌合方向奥側であってプラグハウジング21の内側にスイッチ収容部24を有する。
スイッチ収容部24には導電性の固定片31と可動片32からなるスイッチ部30を有する。
尚、プラグ20の組み立てに際して丸ピン状の4つのプラグ端子25は、ケーブル(図示しない)を組み付けた状態でプラグハウジング12の裏面より、プラグ端子25を収容する穴に挿入される。
【0015】
スイッチ部30は部品の構造例を図4に示し、プラグハウジング21への組み込み手順を図7に示す。
固定片31は接点部31aを有し、本実施例ではベース部31b,31cをL字型に折り曲げ、ベース部31cに矢印型の爪部を有する係止部31dを形成し、図7(b)に示すようにプラグハウジング21の裏面に設けた断面L字型の収容部26に挿入するだけで組み付けられるようになっている。
可動片32は固定片31を裏面側から回り込むようにU字形状に折り曲げた接点部32aを形成し、さらにその先端側に被押圧部32bを弾性変形可能に備えられている。
このように構成することで、可動片32の嵌合方向の寸法を抑えながら良好な弾性特性を得ることができる。
可動片32もランス片32dを有し、図7(c)に示すようにプラグハウジング21の裏面に設けた収容部27に挿入するだけで組み込むことができる。
【0016】
ソケット10とプラグ20とを図1(b)に示すように嵌合しようとすると、ロック爪12a,13aが挿入孔22,23に沿って内側に弾性変形しながら進行し、ロック爪12a,13aが被係止部22b,23bに位置するようになると、図1(c)に示すようにロック爪12a,13aが被係止部22b,23bに係止するように外側に弾性復帰する。
この状態の拡大図を図2に示し、可動片32の被押圧部32bとの位置関係を図5に示す。
ロック爪12aの外側先端部が可動片32の被押圧部32bを外側に押圧するので弾性変形し、接点部32a,31aは離れる。
これによりソケット端子15とプラグ端子25との接続タイミング(接続寸法Lを長く)を充分に確保しながら、スイッチ部30がONからOFFに切り替わり、これを検知しソケット端子15とプラグ端子25とが電気的に接続するように回路を設定することができる。
【0017】
本実施例ではアーム状のロック部12,13と絶縁壁11aとの間にU字形状に折り曲げた復元補助部材16を取り付けた例になっている。
アーム状のロック部は絶縁性である必要があることから樹脂成形される。
そこで樹脂の弾性力を補強する目的で板バネをU字状に折り曲げ、一方の側片16aを絶縁壁11aの外側の側面に固定し、他方の側片16bをロック爪12aの内側12eに当接させてある。
【0018】
上記とは逆にソケット20とプラグ10との嵌合接続を解除する場合には、図3に示すようにロック部12b,13bを押圧力fにて内側に矢印の方向に押圧すると、ロック爪12a,13aが内側に弾性変形し、被係止部22b,23bから離れる。
これと同時に可動片32の被押圧部32bが内側に弾性復帰するので接点部32aが固定片31の接点部31aに接触する。
よって、スイッチ部30のスイッチが切り替わらないと、ソケット10をプラグ20から引き抜くことができない。
【符号の説明】
【0019】
10 ソケット
11 ソケットハウジング
12 ロック部
12a ロック爪
12b ロック解除部
15 ソケット端子
16 復元補助部材
20 プラグ
21 プラグハウジング
22 挿入孔
22b 被係止部
24 スイッチ収容部
25 プラグ端子
30 スイッチ部
31 固定片
32 可動片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケットとプラグとの嵌合状態を検知するスイッチ部を備えたコネクタであって、
前記ソケットのソケットハウジングと前記プラグのプラグハウジングとのうち、いずれか一方のハウジングは嵌合方向に向けて突出したアーム状のロック部を有し、
前記ロック部は嵌合方向に対して直交する内外方向に弾性変形可能で、且つ、外側方向に突出したロック爪を有し、
他方のハウジングは当該ハウジングの内側に前記ロック爪の挿入孔と当該挿入孔に挿入されたロック爪が外側方向に弾性復帰することで係止する被係止部を有し、
前記スイッチ部は前記他方のハウジングの内側に有するとともに、固定片と弾性を有する可動片とからなり、前記ロック爪が前記被係止部に係止する際に可動片を外側方向に押圧し、スイッチのON/OFFが切り替わることを特徴とする嵌合検知型コネクタ。
【請求項2】
前記ロック爪は外側方向に弾性復帰するのを補助する弾性材からなる復元補助部材を備えることを特徴とする請求項1記載の嵌合検知型コネクタ。
【請求項3】
前記ソケットのソケット端子と前記プラグのプラグ端子とが嵌合接続した状態でのみ前記スイッチのON/OFFの切り替えを許容することを特徴とする請求項1又は2記載の嵌合検知型コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−99294(P2012−99294A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244892(P2010−244892)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】