説明

嵌合臼対型製粉機

【課題】嵌合臼対の間隙設定の操作性を確保した上で、製造コストの低減とともに、稼動時のメンテナンスを容易化することができる嵌合臼対型製粉機を提供する。
【解決手段】嵌合臼対型製粉機1は、互いに嵌合する固定外臼11と回転内臼12とからなる嵌合臼対と、その回転内臼11,12を軸支して嵌合軸線方向にスライド動作可能なスライドホルダ13とからなる製粉本体部4を備えるとともに、そのスライドホルダ13をスライド動作させて上記嵌合臼対11,12に製粉臼圧を作用するスプリング21を設けて構成され、上記製粉本体部4には、スプリング21によるスライドホルダ13のスライド動作を規制するカム部35を形成したカム軸23を一体に軸支したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定外臼と回転内臼とからなる嵌合臼対を備えて穀粒を粉砕製粉する嵌合臼対型製粉機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定外臼の中に回転内臼を嵌合配置した嵌合臼対を備える嵌合臼対型製粉機は、特許文献1に示すように、回転内臼を軸してその回転軸線方向にスライド可能に支持する筒状のスライドホルダと、このスライドホルダを進退動作させて所要の嵌合面間隙を設定するために、リンクを介して連結する間隙設定レバー等を備えて構成され、この間隙設定レバーを傾倒操作して嵌合臼対の嵌合面間隙を設定することができるので、簡易なレバー操作によって製粉間隙を調節することにより、幅広い製粉粒度の設定が可能となり、また、間隙設定レバーのリンクに介設したスプリングにより、一定の弾発力による製粉臼圧を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭57−115648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記間隙設定レバーは、相互嵌合する内外臼体による製粉本体部から逆動リンク、コーンロッド、ストッパ、バネ等の複雑な露出リンク機構を介して連結しているために、製粉機の製造の際の組付け調節を含む製造コストの問題のみならず、製粉機の稼動時において、間隙設定レバーに付帯するリンク、バネ等の露出リンク機構に付着する穀粉を除去するための煩雑なメンテナンスを強いられるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、嵌合臼対の間隙設定の操作性を確保した上で、製造コストの低減とともに、稼動時のメンテナンスを容易化することができる嵌合臼対型製粉機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、互いに嵌合する固定外臼と回転内臼とからなる嵌合臼対と、その回転内臼を軸支して嵌合軸線方向にスライド動作可能なスライドホルダとからなる製粉本体部を備えるとともに、そのスライドホルダをスライド動作させて上記嵌合臼対に製粉臼圧を作用するスプリングを設けてなる嵌合臼対型製粉機において、上記製粉本体部には、スプリングによるスライドホルダのスライド動作を規制するカム部を形成したカム軸を一体に軸支したことを特徴とする。
【0007】
上記構成による製粉機は、スライドホルダのスライド動作を規制するカム部を形成したカム軸を製粉本体部に一体に軸支したことから、カム軸の回動によって製粉間隙の調節が可能なユニットとして製粉本体部を取扱うことができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記カム軸は、その回動軸線を製粉本体部の嵌合軸線の外側方に向けて水平に配置するとともに、その回動操作用の調節レバーを備えたことを特徴とする。
製粉本体部の外側方に向けてカム軸の回動軸線を水平に配置したことから、その回動操作用の調節レバーの前後または上下方向の回動動作によってカム軸が回動される。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成において、前記スプリングは、スライドホルダに一端を連結するとともに、他端を前記カム部の作用位置で製粉本体部にスライド動作可能に支持したことを特徴とする。
上記スプリングは、カム軸とともに製粉本体部に一体に構成され、また、カム部の作用を端部に受けることにより、カム軸の回動動作に応じた長さのスプリングの弾発力が嵌合臼対に作用する。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3の構成において、前記スプリングをスライドホルダの両側部に設け、それぞれのスプリングに作用するアームを備えて一体伝動する連動軸を軸支し、その一方のアームをカム部の作用位置に配置したことを特徴とする。
カム部の作用を受ける一方のアームは、連動軸を介して他方のアームと同時回動が可能であることから、各アームの作用を受けるスプリングを介してスライドホルダがその両側部からバランス良く弾発力を受ける。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明の製粉機は、回転内臼を軸支して嵌合軸線方向にスライド動作可能なスライドホルダは、嵌合臼対が嵌合当接する方向にスプリングの弾発力を受け、嵌合臼対が嵌合当接するまでスライド動作することにより、スプリングの弾発力と対応する製粉臼圧が嵌合面に作用することから、製粉本体部によって微細製粉が可能となり、このとき、スライドホルダのスライド動作がカム軸のカム部によって規制された場合は、製粉本体部と一体構成のカム軸の回動に応じて嵌合臼対の製粉間隙が調節される。
【0012】
このように、上記製粉機は、スプリング21によって付勢されたスライドホルダのスライド動作を規制するカム部を形成したカム軸を製粉本体部に一体に軸支したことから、一体構成のカム軸の回動操作によって製粉間隙の調節が可能なユニットとして製粉本体部を取扱うことができるので、間隙設定用のレバーと連結するリンク等の付帯構造の組付けや、その煩わしいメンテナンス等を要することがなく、製粉機全体として、製造コストの低減とともに、稼動時のメンテナンスを容易化することができる。
【0013】
請求項2の発明の製粉機は、請求項1の効果に加え、カム軸の回動軸線を製粉本体部の嵌合軸線の外側方に向けて水平に配置するとともに、その回動操作用の調節レバーを備えたことから、この調節レバーの前後または上下方向の回動動作によってカム軸が回動されるので、上記嵌合臼対型製粉機は、カム軸に取付けた調節レバーの簡易な操作によって間隙設定が可能となる。
【0014】
請求項3の発明の製粉機は、請求項1の効果に加え、スプリングの一端をスライドホルダに連結するとともに、他端をカム部の作用位置で製粉本体部にスライド動作可能に支持し、カム部の作用を端部に受けることにより、カム軸の回動動作に応じた製粉臼圧が嵌合臼対に作用することから、スプリングまでを含めたユニットとして製粉本体部を取扱うことができるので、製粉臼圧を設定するためのバネ付きリンク等の別設の付帯構造の組付けや、その煩わしいメンテナンス等を要することがなく、製粉機全体として、製造コストの低減とともに、稼動時のメンテナンスを容易化することができる。
【0015】
請求項4の発明の製粉機は、請求項3の効果に加え、スライドホルダの両側部にスプリングを設け、それぞれのスプリングに作用するアームを備えて一体伝動する連動軸を軸支し、その一方のアームをカム部の作用位置に配置したことから、カム部の作用を受ける一方のアームは、連動軸を介して他方のアームと同時に回動動作するので、各アームの作用を受けるスプリングを介してスライドホルダがその両側部からバランス良く弾発力を受けることによりスライドホルダの安定動作が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】製粉機の正面図(a)およびその側面図(b)
【図2】製粉本体部の拡大縦断面図
【図3】製粉間隙設定機構の要部分解斜視図
【図4】製粉間隙設定機構の部分断面平面図(a)およびその側面図(b)
【図5】カム軸によるスプリングの動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は、製粉機の正面図(a)、側面図(b)である。製粉機1は、駆動部2を内設した支持部3によって穀粒を粉砕製粉する製粉本体部4を保持し、この製粉本体部4に穀粒を供給するホッパ5を備えて構成され、製粉本体部4には、保持部6aによって操作位置に保持可能な間隙調節レバー6を備えた製粉間隙設定機構7を備える。
【0018】
詳細には、製粉本体部4は、その拡大縦断面図を図2に示すように、固定外臼11と回転内臼12とからなる嵌合臼対と、その回転内臼12を軸支して固定外臼11に対して進退動作可能なスライドホルダ13等から構成される。
【0019】
嵌合臼対11,12は、投入穀粒を粉砕しつつ送り出すための溝状パターンを形成した円錐面状の嵌合面を回転内臼12の進退によって嵌合面間隙Sを調節可能に構成される。回転内臼12の中心軸12aは、穀粒を送り込む螺旋部12bを備えてその後方に延び、スライドホルダ13の中空部を貫通してその後方に突出する軸端にプーリ16を備えて駆動部2から回転動力を受けつつ、2つのベアリング17,17によってスライドホルダ13に軸支する。スライドホルダ13は、回転内臼12の中心軸12aの軸線方向にスライド動作可能に製粉本体部4のハウジング18に内設されるとともに、回り止めのピン19によってハウジング18と連結する。
【0020】
製粉間隙設定機構7は、その要部分解斜視図を図3に示すように、スライドホルダ13にその両外側位置で弾発力を作用するコイルバネによる2つのスプリング21,21と、これら2つのスプリング21,21にそれぞれ作用するアーム22a、22aを備えて各スプリング21,21を連動動作可能に軸支した連動軸22と、この連動軸22に作用するカム軸23とから構成する。
【0021】
スプリング21,21は、製粉間隙設定機構7の部分断面平面図(a)およびその側面図(b)を図4に示すように、その一端に連結したガイドロッド31,31を製粉本体部4のハウジング18の両側部に突設したガイド部32,32に所定範囲でスライド可能に連結し、他端側をスライドホルダ13の両側部に突設したバネ受部33,33にロックナット付きの調節ボルト34,34を介して連結する。これら2つのスプリング21,21による弾発力は、スライドホルダ13を介して、嵌合臼対11,12の嵌合面間隙Sを縮小する方向に作用し、弾発力の大きさは、ガイドロッド31,31のスライドに伴うスプリング21,21の伸縮量と対応する。
【0022】
連動軸22は、製粉本体部4のハウジング18の上部を横断するように軸支し、その両端のアーム22a、22aを2つのスプリング21,21のガイドロッド31,31のそれぞれに同様に作用するように連動動作させる構成により、2つののスプリング21,21の弾発力がスライドホルダ13の両側方に均等に作用する。
【0023】
カム軸23は、その一端にカム部35を備え、このカム部35は円柱ピンによる偏心カムによって形成し、ハウジング18に取付けたホルダ36によって軸支する。カム軸23の回動軸線を製粉本体部4の外側方に向けて水平に配置し、その外側端に直交して調節レバー6を配置する。また、連動軸22の一方のアーム22aに作用する中継ピン37を設け、この中継ピン37をカム部35によって進退動作可能にホルダ36に支持することにより、ガイドロッド31,31のスライド範囲内についてスプリング21,21の作用位置を調節可能に構成する。カム軸23の回動位置に応じて作用位置を調節するために、カム軸23の回動範囲の一端Aをガイドロッド31,31の最進出位置、他端Cを最後退位置と対応させる。
【0024】
さらに、カム部35が係合可能な係合部38をスライドホルダ13に形成し、スプリング21,21によるスライドホルダ13のスライド動作をカム部35の係合によって規制することにより、嵌合臼対11,12の嵌合面間隙Sを調節可能に構成する。カム軸23の回動位置に応じて嵌合面間隙Sを調節するために、カム軸23の回動範囲の一端Aを嵌合面間隙Sの最大間隙位置、他端Cに至る直前位置Bを間隙が閉じて嵌合当接する位置と対応させる。
【0025】
上述の構成による製粉機1は、製粉本体部4に備えた製粉間隙設定機構7の調節レバー6の操作により嵌合臼対11,12の嵌合面間隙Sの設定を行うことができ、このときの部材相互の作用と嵌合臼対11,12の嵌合面間隙Sおよび製粉臼圧との関係について説明する。
【0026】
スプリング21,21は、カム軸23による動作説明図を図5に示すように、一端Aから他端Cまでを回動範囲とするカム部35の作用を受けて進退動作する中継ピン37の係合当接に伴ってガイドロッド31,31の位置が変化するとともに、その弾発力は、スライドホルダ13の両側部に突設したバネ受部33,33に連動軸22を介して同様に作用し、嵌合臼対11,12の嵌合面を閉じる方向に回転内臼12を弾発付勢することにより、嵌合臼対11,12の嵌合面にカム軸23の回動位置に応じた長さのスプリングの弾発力を製粉臼圧として作用する。
【0027】
また、カム部35は、一端Aから他端Cに至る直前位置Bまでの回動範囲においてスライドホルダ13の係合部38に係合し、スライドホルダ13のスライド位置を規制することにより、カム軸23の回動位置に応じて嵌合臼対11,12の嵌合面間隙Sが規定される。
【0028】
このように、嵌合臼対11,12は、カム軸23の回動範囲の一端Aから他端Cに至る角度位置に応じて伸縮するスプリング21,21の弾発力によって嵌合面に製粉臼圧を受けるとともに、カム軸23の回動範囲の一端Aから他端Cに至る直前位置Bまでの回動位置に応じてスライド位置の規制を受けるスライドホルダ13によって嵌合面間隙Sが規定され、特に、カム部35を円柱ピンによる偏心カムとすることにより、スライドホルダ13とガイドロッド31,31が同時に移動する範囲においてスプリング21,21の弾発力が一定となる。
【0029】
したがって、調節レバー6の傾倒操作による保持位置が回動範囲の一端Aから直前位置Bに近づくに連れて嵌合面間隙Sが減少する一方で製粉臼圧が一定に維持されることから、この範囲で所望のサイズの大挽きによる大粒粉砕処理が可能となり、次いで、直前位置Bから他端Cに近づくに連れて嵌合面当接のまま製粉臼圧が次第に増加することから、所望の微細製粉処理、例えば、硬い原料の製粉にも対応が可能となる。なお、カム部35は、各種のカム特性の設定が可能であり、特に、スライドホルダに対するカム特性とガイドロッドに対するカム特性を個別に設定することにより、必要に応じた幅広い製粉特性を簡易に実現することができる。
【0030】
また、上記構成による製粉機は、スプリングによって付勢されたスライドホルダのスライド動作を規制するカム部を形成したカム軸を製粉本体部に一体に軸支したことから、一体構成のカム軸の回動操作によって製粉間隙の調節が可能なユニットとして製粉本体部を取扱うことができるので、間隙設定用のレバーと連結するリンク等の付帯構造の組付けや、その煩わしいメンテナンス等を要することがなく、製粉機全体として、製造コストの低減とともに、稼動時のメンテナンスを容易化することができる。
【0031】
また、カム軸の回動軸線を製粉本体部の嵌合軸線の外側方に向けて水平に配置するとともに、その回動操作用の調節レバーを備えたことから、この調節レバーの前後または上下方向の回動動作によってカム軸が回動されるので、上記嵌合臼対型製粉機は、カム軸に取付けた調節レバーの簡易な操作によって間隙設定が可能となる。
【0032】
また、スプリングをスライドホルダに沿って配置し、その一端を連結するとともに、他端をカム部の作用位置で製粉本体部にスライド動作可能に支持し、カム部の作用を一端に受けることにより、カム軸の回動動作に応じた製粉臼圧が嵌合臼対に作用することから、上記製粉本体部は、スプリングまでを含めたユニットとして取扱うことができるので、製粉臼圧を設定するためのバネ付きリンク等の別設の付帯構造の組付けや、その煩わしいメンテナンス等を要することがなく、製粉機全体として、製造コストの低減とともに、稼動時のメンテナンスを容易化することができる。
【0033】
また、スプリングは、スライドホルダの両側部に設け、それぞれのスプリングに作用するアームを備えて一体伝動する連動軸を軸支し、その一方のアームをカム部の作用位置に配置したことから、カム部の作用を受けるアームは、連動軸を介して他のアームと同時回動が可能であることから、各アームの作用を受けるスプリングを介してスライドホルダがその両側部からバランス良く弾発力を受けるので、スライドホルダの安定動作が確保される。
【符号の説明】
【0034】
1 嵌合臼対型製粉機
4 製粉本体部
6 間隙調節レバー
7 製粉間隙設定機構
11 固定外臼(嵌合臼対)
12 回転内臼(嵌合臼対)
12a 中心軸
13 スライドホルダ
18 ハウジング
21 スプリング
22 連動軸
22a アーム
23 カム軸
31 ガイドロッド
32 ガイド部
33 バネ受部
35 カム部
37 中継ピン
38 係合部
A 一端
B 直前位置
C 他端
S 嵌合面間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合する固定外臼と回転内臼とからなる嵌合臼対と、その回転内臼を軸支して嵌合軸線方向にスライド動作可能なスライドホルダとからなる製粉本体部を備えるとともに、そのスライドホルダをスライド動作させて上記嵌合臼対に製粉臼圧を作用するスプリングを設けてなる嵌合臼対型製粉機において、
上記製粉本体部には、スプリングによるスライドホルダのスライド動作を規制するカム部を形成したカム軸を一体に軸支したことを特徴とする嵌合臼対型製粉機。
【請求項2】
前記カム軸は、その回動軸線を製粉本体部の嵌合軸線の外側方に向けて水平に配置するとともに、その回動操作用の調節レバーを備えたことを特徴とする請求項1記載の嵌合臼対型製粉機。
【請求項3】
前記スプリングは、スライドホルダに一端を連結するとともに、他端を前記カム部の作用位置で製粉本体部にスライド動作可能に支持したことを特徴とする請求項1記載の嵌合臼対型製粉機。
【請求項4】
前記スプリングをスライドホルダの両側部に設け、それぞれのスプリングに作用するアームを備えて一体伝動する連動軸を軸支し、その一方のアームをカム部の作用位置に配置したことを特徴とする請求項3記載の嵌合臼対型製粉機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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