説明

嵩高い置換基を有するノルボルネン−エステル系重合体

【課題】嵩高い置換基を有する、全炭素数19〜80のノルボルネン単量体から得られたノルボルネン−エステル系重合体を提供すること。
【解決手段】本発明のノルボルネン−エステル系重合体は、i)所定の化学式1で表わされる全炭素数19〜80のノルボルネン−エステル系化合物の繰り返し単位からなり、ii)キャスティングフィルムに形成され、ヘイズメーターを用いて波長400〜800nmにおいて測定した基材に対する光の垂直入射強度、基材への光の吸収強度および基材からの光の反射強度を用い、式1に基づき求められる光透過度が0.9以上である。


(式中、lは基材に対する光の垂直入射強度、lは基材への光の吸収強度、lは基材からの光の反射強度である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル基を有するノルボルネン−エステル系重合体に係り、さらに詳しくは、嵩高い置換基を有するノルボルネン系単量体から得られたノルボルネン−エステル系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、絶縁素材用材料として無機物、例えばシリコン酸化物、シリコン窒化物などが主に用いられてきた。しかし、より小さくて高効率の素子に対する必要性が増加しており、これにより誘電定数と吸湿性が低いながら金属付着性、強度、熱的安定性および光透過性に優れるうえ、ガラス転移温度が高い重合体が要求されている。
【0003】
現在は、ポリイミドやBCB(ビス−ベンゾシクロブテン)などが電子素材用低誘電物質として使われている。このポリイミドは、優れた熱的安定性および酸化安定性、高いガラス転移温度、および優れた機械的特性を持つため、電子素材として広く用いられている。しかし、ポリイミドでは、高い水分吸収率による素材の腐食および誘電定数の増加、異方的・電気的特性、銅線との反応を減らすための前処理の必要性、並びに金属との付着性などが問題となってきた。また、BCBには、水分吸湿性と誘電定数はポリイミドより低いが、金属付着性が良くなく、高温で硬化させなければならないという問題がある。
【0004】
このため、環状オレフィン高分子に関する研究が試みられているが、環状オレフィン高分子は、環状オレフィン単量体、例えばノルボルネンなどの重合によって発生する高分子であって、既存のオレフィン系高分子に比べて透明性、耐熱性および耐薬品性が優れるうえ、複屈折率と水分吸収率が非常に低い。したがって、これは半導体またはTFT−LCDの絶縁膜、偏光板保護フィルム、多重チップモジュール、集積回路(IC)、プリント配線板(printed circuit board)、電子素材の封止剤、または平板ディスプレイ(flat panel display)或いは光学用のための低誘電コーティング剤、フィルムおよびパッケージングなどとして使用でき、フレキシブルディスプレイ実現のためのプラスチック基板の材料としても使用できる。
【0005】
しかし、前述したような用途にノルボルネン系重合体を使用するためには、高い光学特性および熱的安定性が保障されなければならない。現在、商用化されたノルボルネン系重合体は、光透過度が80〜90%程度であり、ガラス転移温度(Tg)は100〜180℃であって、前記用途に使用されるための物性を効果的に満足してはいない。
【0006】
一方、環状オレフィンモノマーが極性官能基、例えばエステル基などを含有する場合、極性官能基が分子間の充填(intermolecular packing)、および金属基質または他のポリマーとの接着性を増加させる役割を果たして情報電子素材に有用に使用できるため、エステル基を有するノルボルネンの重合または共重合は、深い関心を受けてきた(米国特許第3,330,815号、ヨーロッパ特許第0445755号A2、米国特許第5,705,503号、米国特許第6,455,650号)。
【0007】
しかし、このように極性官能基を含有するだけでは光学特性および熱的安定性が保障されないという問題がある。
【0008】
韓国公開特許第2004−5593号には、低い誘電定数、低い吸湿性、高いガラス転移温度、優れる熱安定性および酸化安定性、並びに高い耐化学性および金属接着性を持つノルボルネン−エステル系付加重合体、およびその製造方法が開示されている。ここには、エキソ異性体のノルボルネン−エステルモノマーを少なくとも50モル%含有するノルボルネン−エステル系モノマーを繰り返し単位として含み、少なくとも20,000の分子量(Mn)を有するノルボルネン−エステル系付加重合体について開示されている。
【0009】
しかし、この重合体の金属付着性および表面張力と、付加重合体を使用したフィルムの接着性および複屈折率のみを測定し、吸湿性、熱的安定性、安定性および光学特性については言及がないため、上述した問題を解決するには足りない点がある。また、エキソ異性体のノルボルネン−エステルモノマーを50モル%以上含有しなければならないため、モノマーの確保に効果的ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明に係る一実施形態によれば、ノルボルネン−エステル系単量体に嵩高い置換基を導入することにより、ガラス転移温度が高くなり、これを含む光学素材の光学的特性および熱的特性に優れたノルボルネン−エステル系重合体を提供する。
【0011】
本発明は、熱的安定性および光透過度を増大させ且つ水分吸収率を最小化させることが可能なノルボルネン−エステル系重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、i)下記化学式1で表わされる全炭素数19〜80のノルボルネン−エステル系化合物の繰り返し単位からなり、ii)キャスティングフィルムに製造した後、ヘイズメーター(Hazemeter)を用いて400〜800nmにおける基材に対する光の垂直入射強度、基材への光の吸収強度、および基材からの光の反射強度を測定し、次の式1から求めた光透過度が0.9以上である、ノルボルネン−エステル系重合体を提供する。
【化1】

式中、R、RおよびRは、互いに同一または異なり、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル、または炭素数5〜12の環状アルキル基であるが、R、RおよびRの少なくとも一つは水素原子でなく、R
【化2】

【化3】

および
【化4】

の中から選ばれた構造であって、ここで、R5は水素原子、または炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、或いは炭素数5〜12の環状アルキル基であり;nは0以上の整数である。
【数1】

式中、lは基材に対する光の垂直入射強度、lは基材への光の吸収強度、lは基材からの光の反射強度である。
【0013】
本発明の一実施形態に係るノルボルネン−エステル系重合体は、ガラス転移温度(Tg)が200〜300℃であってもよい。
【0014】
前記ノルボルネン−エステル系重合体は、数平均分子量(Mn)が10,000以上であり、分子量分布は1.0〜4.0であってもよい。
【0015】
また、本発明は、前記ノルボルネン−エステル系重合体を含む光学素材を提供する。
【0016】
前記光学素材は、前記式1による光透過度が0.9以上である。
【0017】
前記光学素材は、特にフィルムであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガラス転移温度が高くて熱的安定性が優れ、金属付着性が良好であり、光透過度が増大して光特性が優れるうえ、最小の水分吸収率を持つため、電子素材を容易に製造することができる、ノルボルネン−エステル系重合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本発明のノルボルネン−エステル系重合体は、環状のノルボルネン系単量体にエステル基と嵩高い置換基を導入し、前記化学式1の構造を持つ炭素数19〜80のノルボルネン−エステル系単量体の重合によって得られたものである。
【0021】
重合体の鎖が絡み合っており或いは多く積層されていると、光透過度が減少できる。本発明の重合体は、繰り返し単位を構成する単量体自体に嵩高い置換基を導入することにより、これを重合して生成された重合体の鎖間の積層を減らし或いは積層間隔を広めて絡み合いを防止して光透過度を増加させることができる。
【0022】
ここで、「ノルボルネン−エステル系単量体」とは、下記化学式2で表わされるノルボルネン(ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン)単量体を少なくとも一つ含むモノマーを意味する。
【化5】

【0023】
前記化学式1で表わされるノルボルネン−エステル系単量体は、例えば、アルキルで置換された、或いは非置換のシクロペンタジエン(CPD)、ジシクロペンタジエン(DCPD)またはこれらの混合物と、アダマンチル基を有するアルキルアクリレートをディールスアルダー反応させる方法によって得られたものであってもよい。
【0024】
具体的には、アルキル基で置換された、或いは非置換のCPD、DCPDまたはこれらの混合物と、アダマンチル基を有するアルキルアクリレートが1:0.5〜10モル比、好ましくは1:0.5〜4モル比となるように反応させて得られたものであってもよい。
【0025】
この際、反応温度は180〜220℃とし、反応圧力は常圧以上とする。
【0026】
前記化学式1の単量体を合成するとき、化学式1においてnを目的の数値に調節するために重合防止剤を添加することができる。前記重合防止剤としては、具体的にアニリン、シクロヘキサン、フェノール、4−エポキシフェノール、ニトロベンゼン、ヒドロキノン、ベンゾキノン、二塩化銅、および2,2−ジ(4−tert−オクチルフェニル)−1−ピクリルヒドラジルよりなる群から選ばれた物質を使用することができ、好ましくはヒドロキノンまたはベンゾキノンを使用することが良いが、これに限定されるものではない。
【0027】
前記重合防止剤の添加量は、アルキル基で置換された、或いは非置換のCPD、DCPDまたはこれらの混合物と重合防止剤のモル比が1:0.001〜0.05であることがよく、好ましくは1:0.002〜0.04である。
【0028】
このように得られた単量体は、前記化学式1で表示されるもので、特に化学式1において、R〜Rの少なくとも一つ、特にRは水素原子ではない構造を持ってもよい。このような構造は、これを繰り返し単位として含む重合体において無定形性を増加させて光透過度を増加させる役割を果たす。
【0029】
一方、前記の単量体を用いて重合体を重合するときには、通常のノルボルネン系重合体の重合方法のように、有機溶媒に、重合しようとする単量体と触媒とを混合し、必要に応じて助触媒をさらに混合する。
【0030】
前記有機溶媒は、アルコール単独で使用し、或いはアルコールを除いた有機溶剤、例えば水またはテトラヒドロフランにアルコールを混合して使用することができる。前記アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどを使用することができる。
【0031】
前記触媒としては、例えばメタロセン化合物、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属触媒を使用することができる。
【0032】
重合反応温度は、溶媒の種類によって異なるが、20〜100℃を維持するようにし、1〜24時間反応させてノルボルネン−エステル系重合体を製造する。
【0033】
前述したように製造された本発明の嵩高い置換基を持つノルボルネン−エステル系重合体は、数平均分子量(Mn)が10,000以上であり、通常の重合条件であれば、20,000〜1,000,000の数平均分子量(Mn)を持つことができ、分子量分布は1.0〜4.0である。
【0034】
本発明のノルボルネン−エステル系重合体は、ガラス転移温度が200〜300℃なので、熱的安定性に優れた素材を提供することができ、従来のノルボルネン−エステル系重合体と同等以上の金属付着性を持っている。
【0035】
一方、前記嵩高い置換基を有するノルボルネン−エステル系重合体を溶媒に溶かした後、溶媒キャスティング法によってフィルム状またはシート状に製造する。この際、前記重合体は少なくとも1種を混合して使用することができる。製造されたフィルムは、50〜500μmの厚さを有し、下記式1で表わされる光透過度が0.9以上の値を満足する。
【数2】

式中、lは基材に対する光の垂直入射強度、lは基材への光の吸収強度、lは基材からの光の反射強度である。
【0036】
また、前記フィルムまたはシートは、水分吸収率が低くて寸法安定性に優れる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
ノルボルネン−エステル系単量体の合成(合成例1〜8、比較合成例1、2)
<合成例1>2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの合成
0.25Lの高圧反応器にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、10.2mL、0.0757mol)、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(42.6g、0.18mol)、およびヒドロキノン(0.83g、0.1mol)を入れて180℃で12時間反応させた後、反応物を冷やし、蒸留装置に移した後、真空ポンプを用いて1torrに減圧蒸留して110℃で生成物を得た(収率:25%)。この生成物のエキソ異性体とエンド異性体のモル比(モル%)は48.5:51.5である。
H−NMR (500MHz, CDCl), endo: δ6.20 (dd, 1H), 6.18 (dd, 1H); exo: δ 6.12 (m, 2H)
【0039】
<合成例2>2−エチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの合成
0.25Lの高圧反応器にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、10.2mL、0.0757mol)、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート(44.3g、0.18mol)、およびヒドロキノン(0.83g、0.1mol)を入れて200℃で12時間反応させた後、反応物を冷やし、蒸留装置に移した後、真空ポンプを用いて1torrに減圧蒸留して120℃で生成物を得た(収率:27%)。この生成物のエキソ異性体とエンド異性体のモル比(モル%)は45.5:54.2である。
H−NMR (500MHz, CDCl), endo: δ6.22 (dd, 1H), 6.19 (dd, 1H); exo: δ 6.18 (m, 2H)
【0040】
<合成例3>2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−エチル−2−カルボキシレートの合成
0.25Lの高圧反応器にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、10.2mL、0.0757 mol)、2−メチル−2−アダマンチルエタクリレート(44.3g、0.18mol)、およびヒドロキノン(0.83g、0.1mol)を入れて200℃で12時間反応させた後、反応物を冷やし、蒸留装置に移した後、真空ポンプを用いて1torrに減圧蒸留して117℃で生成物を得た(収率:34%)。この生成物のエキソ異性体とエンド異性体のモル比(モル%)は40.2:59.5である。
H−NMR (500MHz, CDCl), endo: δ6.20 (dd, 1H), 6.18 (dd, 1H); exo: δ6.14 (m, 2H)
【0041】
<合成例4>1−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの合成
0.25Lの高圧反応器にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、10.2mL、0.0757mol)、1−アダマンチルメタクリレート(40.0g、0.18mol)、およびヒドロキノン(0.83g、0.1mol)を入れて200℃で12時間反応させた後、反応物を冷やし、蒸留装置に移した後、真空ポンプを用いて1torrに減圧蒸留して100℃で生成物を得た(収率:85%)。この生成物のエキソ異性体とエンド異性体のモル比(モル%)は40.0:59.1である。
H−NMR (500MHz, CDCl), endo: δ6.18 (dd, 1H), 6.04 (dd, 1H); exo: δ6.12 (dd, 1H), 6.04 (dd, 1H)
【0042】
<合成例5>2−メチル−2−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレートの合成
0.25Lの高圧反応器にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、10.2mL、0.0757mol)、および2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(42.6g、0.18mol)を入れて180℃で12時間反応させた後、反応液にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、5.1mL、0.0379mol)を入れて200℃で8時間反応させた後、反応物を冷やし、蒸留装置に移した後、真空ポンプを用いて1torrに減圧蒸留して110℃で生成物を得た(収率:25%)。この生成物のエキソ異性体とエンド異性体のモル比(モル%)は47.5:52.5である。
H−NMR (500MHz, CDCl), endo: δ6.30 (dd, 1H), 6.18 (dd, 1H), 2.32 (dd, 2H); exo: δ6.20 (m, 2H), 2.40 (dd, 2H)
【0043】
<合成例6>2−エチル−2−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレートの合成
0.25Lの高圧反応器にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、10.2mL、0.0757mol)、および2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート(44.3g、0.18mol)を入れて200℃で12時間反応させた後、反応液にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、5.1mL、0.0379mol)を入れて200℃で8時間反応させた後、反応物を冷やし、蒸留装置に移した後、真空ポンプを用いて1torrに減圧蒸留して120℃で生成物を得た(収率:27%)。この生成物のエキソ異性体とエンド異性体のモル比(モル%)は43.7:56.3である。
H−NMR (500MHz, CDCl), endo: δ6.32 (dd, 1H), 6.20 (dd, 1H), 2.32 (dd, 2H); exo: δ6.25 (m, 2H), 2.40 (dd, 2H)
【0044】
<合成例7>2−メチル−2−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−エチル−4−カルボキシレートの合成
0.25Lの高圧反応器にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、10.2mL、0.0757mol)、および2−メチル−2−アダマンチルエタクリレート(44.3g、0.18mol)を入れて210℃で12時間反応させた後、反応液にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、5.1mL、0.0379mol)を入れて210℃で8時間反応させた後、反応物を冷やし、蒸留装置に移した後、真空ポンプを用いて1torrに減圧蒸留して117℃で生成物を得た(収率:34%)。この生成物のエキソ異性体とエンド異性体のモル比(モル%)は50.1:49.9である。
H−NMR (500MHz, CDCl), endo: δ6.31 (dd, 1H), 6.23 (dd, 1H), 2.30 (dd, 2H); exo: δ6.27 (m, 2H), 2.39 (dd, 2H)
【0045】
<合成例8>1−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレートの合成
0.25Lの高圧反応器にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、10.2mL、0.0757mol)、および1−アダマンチルメタクリレート(40.0g、0.18mol)を入れて200℃で12時間反応させた後、反応液にDCPD(ジシクロペンタジエンe、Aldrich、5.1mL、0.0379mol)を入れて200℃で8時間反応させた後、反応物を冷やし、蒸留装置に移した後、真空ポンプを用いて1torrに減圧蒸留して100℃で生成物を得た(収率:75%)。この生成物のエキソ異性体とエンド異性体のモル比(モル%)は45.2:54.8である。
H−NMR (500MHz, CDCl), endo: δ6.34 (dd, 1H), 6.27 (dd, 1H), 2.32 (dd, 2H); exo: δ6.31 (m, 2H), 2.34 (dd, 2H)
【0046】
<比較合成例1>ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステルの合成
0.5Lの高圧反応器にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、67mL、0.5mol)、メチルアクリレート(Aldrich、94.6mL、1.05mol)、およびヒドロキノン(2.3g、0.02mol)を入れて200℃で12時間反応させた後、反応物を冷やし、蒸留装置に移した後、真空ポンプを用いて1torrに減圧蒸留して50℃で生成物を得た(収率:89%)。この生成物のエキソ異性体とエンド異性体のモル比(モル%)は52.8:47.2である。
H−NMR (500MHz, CDCl), endo: δ6.17 (dd, 1H), 5.91 (dd, 1H), 3.60 (s, 3H), 3.17 (b, 1H), 2.91 (m, 1H), 2.88 (b, 1H), 1.28 (m,1H); exo: δ6.09 (m, 2H), 3.67 (s, 3H), 3.01 (b, 1H), 2.88 (b, 1H), 2.20 (m, 1H), 1.88 (m, 1H), 1.51 (d,1H), 1.34 (m, 2H)
【0047】
<比較合成例2>2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−カルボキシレートの合成
0.25Lの高圧反応器にDCPD(ジシクロペンタジエン、Aldrich、10.2mL、0.0757mol)、2−アダマンチルアクリレート(37.1g、0.18mol)、およびヒドロキノン(0.83g、0.1mol)を入れて200℃で12時間反応させた後、反応物を冷やし、蒸留装置に移した後、真空ポンプを用いて1torrに減圧蒸留して120℃で生成物を得た(収率:40%)。この生成物のエキソ異性体とエンド異性体のモル比(モル%)は50.2:49.8である。
H−NMR (500MHz, CDCl), endo: δ6.22 (dd, 1H), 6.19 (dd, 1H); exo: δ6.17 (m, 2H)
【0048】
ノルボルネン−エステル系重合体の合成(実施例1〜10、比較例1〜2)
<実施例1>2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートホモ重合体
塩化ニッケル(NiCl)0.13g(1.0mmol)にエタノール3mLを加え、温度を60℃に維持しながら、合成例1で合成した2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレート20g(6.73mmol)を加えて12時間反応を行った。反応が終結した後には、反応器の温度を室温に冷却させた後、過量のメタノールに反応溶液を一滴ずつ滴加して沈殿を析出させた。析出された沈殿はエタノール5mLに溶かした後、再び過量のメタノールに滴下して沈殿を析出させた後、濾過して60℃の真空オーブンで24時間乾燥させて5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステルの単独重合体を得た。得られた重合体は真空乾燥によって精製した。この実施例の結果は12gの収率(60%)、数平均分子量35,000、および分子量分布2.0gの結果を得た。
【0049】
<実施例2>2−エチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートホモ重合体
2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの代わりに、合成例2で合成した2−エチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレート20g(6.47mmol)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。実施例1の触媒と単量体のモル比を使用した。この実施例の結果は10gの収率(50%)、数平均分子量22,000、および分子量分布1.48の結果を得た。
【0050】
<実施例3>2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−エチル−2−カルボキシレートホモ重合体
2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの代わりに、合成例3で合成した2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−エチル−2−カルボキシレート20g(6.47mmol)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。実施例5の触媒と単量体のモル比を使用した。この実施例の結果は9.2gの収率(46%)、数平均分子量21,000、および分子量分布1.72の結果を得た。
【0051】
<実施例4>1−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートホモ重合体
2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの代わりに、合成例4で合成した1−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレート20g(6.99mmol)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。実施例1の触媒と単量体のモル比を使用した。この実施例の結果は16gの収率(80%)、数平均分子量26,000、および分子量分布1.42の結果を得た。
【0052】
<実施例5>2−メチル−2−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレートホモ重合体
2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの代わりに、合成例5で合成した2−メチル−2−アダマンチル−9−テトラヒドロシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレート20g(5.46mmol)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。実施例1の触媒と単量体のモル比を使用した。この実施例の結果は15gの収率(81%)、数平均分子量31,500、および分子量分布1.92の結果を得た。
【0053】
<実施例6>2−エチル−2−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレートホモ重合体
2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの代わりに、合成例6で合成した2−エチル−2−アダマンチル−9−テトラヒドロシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレート20g(5.26mmol)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。実施例1の触媒と単量体のモル比を使用した。この実施例の結果は9gの収率(45%)、数平均分子量14,000、および分子量分布1.83の結果を得た。
【0054】
<実施例7>2−メチル−2−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−エチル−4−カルボキシレートホモ重合体
2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの代わりに、合成例7で合成した2−メチル−2−アダマンチル−9−テトラヒドロシクロドデセン−4−エチル−4−カルボキシレート20g(5.26mmol)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。実施例1の触媒と単量体のモル比を使用した。この実施例の結果は12gの収率(60%)、数平均分子量27,000、および分子量分布1.27の結果を得た。
【0055】
<実施例8>1−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレートホモ重合体
2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの代わりに、合成例8で合成した1−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレート20g(5.68mmol)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。実施例1の触媒と単量体のモル比を使用した。この実施例の結果は9.5gの収率(48%)、数平均分子量34,000、および分子量分布1.53の結果を得た。
【0056】
<実施例9>2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートと2−エチル−2−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレートの共重合体
塩化ニッケル(NiCl)1.0mmolにエタノール10mLを加え、温度を60℃に維持しながら、合成例1で合成した2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートと合成例5の2−エチル−2−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレートを1:1のモル比で加えて15時間反応を行った。反応が終結した後には、反応器の温度を室温に冷却させた後、過量のメタノールに反応溶液を一滴ずつ滴加して沈殿を析出させた。析出された沈殿はエタノール5mLに溶かした後、再び過量のメタノールに滴下して沈殿を析出させた後、濾過して60℃の真空オーブンで24時間乾燥させて5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステルの単独重合体を得た。得られた重合体は、真空乾燥によって精製した。この実施例の結果は収率(62%)、数平均分子量42,000、および分子量分布2.2の結果を得た。
【0057】
<実施例10>1−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートと2−エチル−2−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレートの共重合体
合成例4で合成した1−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートと、合成例6で合成した2−エチル−2−アダマンチル−9−テトラシクロドデセン−4−メチル−4−カルボキシレートを使用した以外は、実施例9と同様の方法で重合を行った。この実施例の結果は収率(48%)、数平均分子量37,600、および分子量分布2.53の結果を得た。
【0058】
<比較例1>ノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステルホモ重合体
2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの代わりに、比較合成例1で合成したノルボルネン−2−カルボン酸メチルエステル50g(0.33mol)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。実施例1の触媒と単量体のモル比を使用した。この実施例の結果は40gの収率(80%)、数平均分子量60,000、および分子量分布1.7の結果を得た。
【0059】
<比較例2>2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−カルボキシレートホモ重合体
2−メチル−2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレートの代わりに、比較合成例2で合成した2−アダマンチル−5−ノルボルネン−2−カルボキシレート20g(7.3mmoL)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。実施例1の触媒と単量体のモル比を使用した。この比較例の結果は8.8gの収率(44%)、数平均分子量23,000、および分子量分布2.1の結果を得た。
【0060】
フィルムの製造
<実施例11〜20、比較例3〜4>
実施例1〜10および比較例1、2で得た重合体を用いてそれぞれフィルムを製造した。具体的には、実施例1〜10および比較例1〜2から得られた前記それぞれの重合体に有機溶媒を下記表1の組成のように混合してコーティング溶液を製造し、このコーティング溶液をアプリケータ(YOSHMITSU YBA−4)を用いてガラス基板上でキャスティングした後、常温で1時間乾燥させ、さらに窒素雰囲気の下に100℃で18時間乾燥させた。乾燥の後に−10℃で10秒間保管し、しかる後に、ナイフでガラス基板上のフィルムを剥離し、表1に記載した厚さであって厚さ偏差が5%未満の均一な厚さの実施例11〜20および比較例3、4の透明フィルムを得た。
【0061】
【表1】

【0062】
<物性評価>
(1)ガラス転移温度
実施例1〜10および比較例1、2で得た重合体のガラス転移温度は、TGA(Thermogravimetric Analyzer)とDSC(Differential Scanning Calorimeter)で測定し、その結果は表2の通りである。
【0063】
【表2】

【0064】
(2)金属付着性
実施例1〜10および比較例1、2で得た重合体の金属付着性を試験するために、前記それぞれの重合体をトルエン10重量%に溶かした後、クロム、アルミニウムおよびタングステンのパターンが被せられたガラス板にそれぞれ1μmの厚さにコートした。この薄膜を横、縦それぞれ5mmの正方形格子形状に分離した後、180°テープ試験を行った。その結果、実施例1〜10および比較例1、2の試片全ては、パターンが被せられたガラス板から一つの格子も分離されなかった。
【0065】
(3)光透過度
実施例11〜20および比較例3、4で得たそれぞれのフィルムは、ヘイズメーター(日本電飾300A)を用いて400〜800nmにおける基材に対する光の垂直入射強度、基材への光の吸収強度および基材からの光の反射強度を測定し、下記式1から光透過度を求めた。その結果は表3の通りである。
【数3】

=基材に対する光の垂直入射強度
=基材への光の吸収強度
=基材からの光の反射強度
【0066】
(4)水分吸収率
実施例11〜20および比較例3、4で得たそれぞれのフィルムをそれぞれ10×10cmに切断した後、水中で25℃、24時間放置し、しかる後に、重量変化から水分吸収率を測定した。その測定結果は表3の通りである。
【0067】
【表3】

【0068】
前記評価結果、嵩高い置換基であるアダマンチル基を含むノルボルネン−エステル系重合体は、ガラス転移温度が200℃以上であって、熱的安定性に優れて電子素材として使用するには適し、金属付着性も良好であることが分かる。
【0069】
一方、嵩高い置換基であるアダマンチル基を含むノルボルネン−エステル系重合体を用いてフィルムを製造したとき、そうでない場合に比べて光透過度が増加すること、および水分吸収率が低くて寸法安定性に優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)下記化学式1で表わされる全炭素数19〜80のノルボルネン−エステル系化合物の繰り返し単位からなり、
ii)キャスティングフィルムに形成され、ヘイズメーターを用いて波長400〜800nmにおいて測定した基材に対する光の垂直入射強度、基材への光の吸収強度および基材からの光の反射強度を用い、下記式1に基づき求められる光透過度が0.9以上である、ノルボルネン−エステル系重合体。
【化1】

(式中、R、RおよびRは、互いに同一または異なり、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル、または炭素数5〜12の環状アルキル基であるが、R、RおよびRの少なくとも一つは水素原子でなく、R
【化2】

【化3】

および
【化4】

の中から選ばれた構造であって、ここで、Rは水素原子、または炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、或いは炭素数5〜12の環状アルキル基であり;nは0以上の整数である。)
【数1】

(式中、lは基材に対する光の垂直入射強度、lは基材への光の吸収強度、lは基材からの光の反射強度である。)
【請求項2】
ガラス転移温度(Tg)が200〜300℃である請求項1に記載のノルボルネン−エステル系重合体。
【請求項3】
数平均分子量(Mn)が10,000以上であり、分子量分布が1.0〜4.0である請求項1に記載のノルボルネン−エステル系重合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のノルボルネン−エステル系重合体を含む光学素材。
【請求項5】
ヘイズメーターを用いて400〜800nmにおいて測定した基材に対する光の垂直入射強度、基材への光の吸収強度および基材からの光の反射強度を用い、下記式1に基づき求められる光透過度が0.9以上である請求項4に記載の光学素材。
【数2】

(式中、lは基材に対する光の垂直入射強度、lは基材への光の吸収強度、lは基材からの光の反射強度である。)
【請求項6】
フィルムである請求項4に記載の光学素材。

【公表番号】特表2009−528421(P2009−528421A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557215(P2008−557215)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/KR2007/001047
【国際公開番号】WO2007/100223
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】