説明

嵩高上質印刷用紙

【課題】 優れた不透明度、表面平滑性、表面強度、かつ柔軟性を有し、印刷適性に優れた嵩高上質印刷用紙を提供する。
【解決手段】 二酸化ケイ素および/またはケイ酸塩から形成されたケイ素含有粒子と、該ケイ素含有粒子100質量部に対して酸化物換算で0.1〜8.0質量部の金属化合物を含有し、比表面積が10〜150m/g、細孔径が0.10〜0.80μm、平均粒子径が16〜40μmである多孔性填料を、紙中填料率として1〜20質量%含有させ、密度が0.6g/cm以下で、かつ用紙の表面平滑度が、20〜200秒であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた不透明度、表面平滑性、表面強度を有し、かつ柔軟で印刷適性に優れた嵩高上質印刷用紙を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
紙は省資源や物流費の削減といった観点、環境保護運動の高まりといった社会的要求等から軽量化が望まれている。しかし、紙を軽量化すると紙厚が減少し、不透明度が下がって裏側の印刷が透けてしまうため、読みにくくなるだけでなく紙の高級感も損なわれるという問題があった。そのため、高い不透明度および印刷適性を有した軽量化、すなわち嵩高化が要求されている。
【0003】
紙の嵩高化方法としては、例えば、紙の主原料である木材パルプを適宜選択する方法、パルプを叩解、マーセル化処理や酵素処理する方法、抄紙時にかかるウェットプレス圧または平滑化処理の圧力を緩和する方法、界面活性剤などの嵩高剤をパルプに添加する方法などが知られている。
しかしながら、これらの方法では、紙を充分に嵩高にできない上に、嵩高剤を用いた場合には抄紙時に発泡する、また内部結合強度が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、嵩比重が小さい填料を添加する方法が提案されている。例えば、針状、柱状、イガグリ状炭酸カルシウム等のアスペクト比の高い填料を配合する方法(特許文献1参照)、中空の合成有機物カプセルを配合する方法(特許文献2参照)、無定形シリカや無定形シリケート、ゼオライト等の多孔性填料を配合する方法(特許文献3参照)などが提案されている。
しかしながら、針状、柱状、イガグリ状炭酸カルシウム等の様にアスペクト比の高い填料は粒子径が大きくなるほど嵩比重は小さくなるが、このような填料を紙に配合した場合には、抄紙時のシェアや、ロールニップなどの機械的な負荷により凝集構造が破壊されてしまい、充分な嵩高化効果が得られないのが実情である。また、中空プラスチックピグメントなどの中空粒子は優れた嵩高化効果を示すものの、高価であることから汎用性のある上質印刷用紙への適用は難しい。
【0005】
また、多孔性填料は、紙の嵩高化効果に優れる上に、印刷時のインキ成分を吸収する能力が他の填料よりも優れているが、炭酸カルシウムやタルクに比べて紙の不透明性を高める能力が低かった。また、粒度分布がブロードであるため、表面強度が乏しく、粗大粒子に起因する印刷時のパイリングや粉落ちといった問題が生じると共に、微細粒子に起因する繊維間結合強度(内部結合強度)の低下といった問題が生じた。そこで、紙の不透明性を高める方法として、二酸化チタンなどの高屈折率の填料を配合することが提案されている。二酸化チタンは粒子径が0.2〜0.3μmと微小であり、歩留が低くなるため、特許文献4では、二酸化チタンと炭酸カルシウムやホワイトカーボンなどとを複合化した複合粒子が提案されている。また、特許文献5には、二酸化ケイ素またはケイ酸塩と軽質炭酸カルシウムとからなり、二酸化ケイ素またはケイ酸塩より軽質炭酸カルシウムが多い複合粒子が提案されている。また特許文献6では、軽質炭酸カルシウム表面をシリカで被覆した軽質炭酸カルシウム−シリカ複合体が提案されている。また、特許文献7では、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合体スラリーに塩酸などの酸を添加することで軽質炭酸カルシウムを溶解させた中空構造を有するシリカ粒子が提案されている。また、粗大粒子を除去する方法としては、振動スクリーン等を用いた分級処理や、反応終了後のスラリーを湿式粉砕する方法(特許文献8参照)が提案されている。また、多孔性填料の製造工程中に徹底的に粉砕処理を施すことで、粗大粒子を減らして平均粒子径を小さくしつつ、1μm以下の微細粒子の生成を少なくする方法が開示されている(特許文献9参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献4に記載の複合粒子では、二酸化チタンが他の填料に比べて高価であるため、汎用性の高い上質印刷用紙ではコスト面から二酸化チタンの使用量に限界があり、白紙の不透明性を十分に確保できなかった。特許文献5、6に記載の複合粒子では、填料本来の吸油性が高くとも、紙に配合する際のパルプスラリー調製時、乾燥工程でのプレス処理、平滑化工程でのソフトカレンダのようなカレンダ処理で、上記複合填料は潰れてしまい、紙に配合した際の嵩高化効果は不十分であった。また各工程で潰れ、発生した微細粒子が増加するため、十分な表面強度および内部結合強度を確保できなかった。また、分級処理では、粗大粒子を除去できるものの、パルプスラリー調製時、抄紙時のプレス処理およびキャレンダー処理時に受けるストレスでの凝集構造の破壊などを防止できず、嵩高効果が不十分である他、分留まりが悪くなってしまう。また、特許文献8に記載の湿式粉砕では、粉砕処理によって微細粒子が増加するため、得られた多孔性填料を紙に配合した場合に内部結合強度を確保できなかった。しかも、粉砕によって凝集構造が破壊され、多孔性填料の嵩高性が低下した。特許文献9に記載の方法によれば、嵩高化効果を保持したまま粗大粒子を少なくできるが、湿式粉砕ほどではないにしても、製造工程中の徹底的な粉砕処理により、微細粒子量が増加した。そのため、紙に配合した際の繊維間結合(内部結合強度)が低下した上に、多孔性填料を含む液の粘性が増加した。また、特許文献7に記載の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合体スラリーに酸を添加し軽質炭酸カルシウムを溶解させ、中空構造を形成することでカレンダでの潰れを防止するとの記載があるが、軽質炭酸カルシウムを完全に溶解させれば、分留まりが悪くなりコストアップとなるといった問題があるほか、十分な不透明度および内部結合強度を確保できなかった。また複合体スラリーの粘性も増加した。特許文献10に記載の水和珪酸系填料では内添填料として、粉落ち少なく、高不透明度で裏抜け防止に優れるものの、その平均粒子径の範囲が1〜15μmであるため嵩高性能の点で不十分である。
【0007】
したがって、優れた不透明度、表面平滑性を有しながら、低密度な特性を併せ持ち、印刷適性にも優れた、現状よりもさらに高いレベルの品質を有する上質印刷用紙とするためには、従来の手法では限界があり、目標とする高いレベルの品質を得ることは困難であった。
【特許文献1】特開平10−226974号公報
【特許文献2】特開平11−12993号公報
【特許文献3】特開平10−226982号公報
【特許文献4】特開2002−29739号公報
【特許文献5】特開2003−212539号公報
【特許文献6】特開2005−281915号公報
【特許文献7】特開2005−272155号公報
【特許文献8】特開平5−301707号公報
【特許文献9】特開平8−91820号公報
【特許文献10】特開2002−274837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上質印刷用紙において、優れた不透明度、表面平滑性、表面強度を有し、印刷適性に優れ、柔軟で、かつ低密度すなわち嵩高性を有する嵩高上質印刷用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)二酸化ケイ素および/またはケイ酸塩から形成されたケイ素含有粒子と、該ケイ素含有粒子100質量部に対して酸化物換算で0.1〜8.0質量部の金属化合物とを含有し、かつ比表面積が10〜150m/g、細孔径が0.10〜0.80μm、平均粒子径が16〜40μmである多孔性填料を、紙中填料率として1〜20質量%含み、密度が0.6g/cm以下で、かつ、用紙の表面平滑度が、20〜200秒である嵩高上質印刷用紙。
(2)前記嵩高上質印刷用紙の、JAPAN TAPPI No.18−2に従い測定した内部結合強度が150J/m以上である(1)に記載の嵩高上質印刷用紙。
(3)前記嵩高上質印刷用紙が、水溶性および/または水分散性接着剤を主成分とする表面処理剤で片面あたり0.3〜3.0g/m2塗布された(1)又は(2)に記載の嵩高上質印刷用紙。
(4)前記嵩高上質印刷用紙が、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を設け、該塗被層が水溶性および/または水分散性接着剤を全顔料100質量部に対し、5〜200質量部含有し、かつ該顔料で片面当たり0.1〜2.0g/m塗表面被覆した(1)または(2)に記載の嵩高上質印刷用紙。
(5)前記顔料中に、レーザー法で測定した平均粒子径が2.0〜7.0μm、かつレーザー法および沈降法で測定した平均粒子径の比(レーザー法/沈降法)が5.0〜12.0の範囲である顔料を5〜50質量%含有する(4)に記載の嵩高上質印刷用紙。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る嵩高上質印刷用紙は、低密度でありながら、優れた不透明度、表面平滑性、表面強度、および柔軟性を有し、印刷適性に優れた特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る嵩高上質印刷用紙は、二酸化ケイ素および/またはケイ酸塩から形成されたケイ素含有粒子と、該ケイ素含有粒子100質量部に対して酸化物換算で0.1〜8.0質量部の金属化合物を含有し、比表面積が10〜150m/g、細孔径が0.10〜0.80μm、平均粒子径が16〜40μmである多孔性填料を、紙中填料率として1〜20質量%含有し、0.6g/cm以下の低密度で、かつ印刷用紙表面の平滑度が20〜200秒である。印刷用紙の不透明度、表面平滑性、表面強度、内部結合強度、柔軟性を高いレベルで付与するものであり、坪量は30g/m〜300g/mの範囲で、密度が0.58g/cm以下であれば嵩高効果が高く好ましい。0.56g/cm以下であればさらに好ましい。
【0012】
したがって、本発明における高いレベルの嵩高性を維持しながら、優れた不透明度、表面平滑性、さらには柔軟性を上質印刷用紙に併せ持たせるためには、調製工程での攪拌および搬送時ポンプのシェア、脱水工程でのプレス処理および平滑化工程におけるカレンダ処理での極度の潰れを防止することが必要である。以下にそれらの方法を説明すると同時に、規定した数値の意義、効果などについて詳述する。
【0013】
本発明の上質印刷用紙の嵩高性を維持した上で優れた平滑性を発現させるには、先述したように、二酸化ケイ素および/またはケイ酸塩から形成されたケイ素含有粒子と、該ケイ素含有粒子100質量部に対して酸化物換算で0.1〜8.0質量部の金属化合物を含有し、比表面積が10〜150m/g、細孔径が0.10〜0.80μm、平均粒子径が16〜40μmである多孔性填料を、紙中填料率として1〜20質量%含有させることが必要である。ここで、ケイ素含有粒子を形成するケイ酸塩とは、一般式xMO・ySiO、xMO・ySiO、xM・ySiOで表される化合物であって、MがAl,Fe,Ca,Mg,Na,K,Ti,Znのいずれかのものである(x,yは任意の正の数値である。)。
【0014】
多孔性填料に含まれる金属化合物を形成する金属元素としては、例えば、バリウム、チタン、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、鉄、ジルコニウム、ストロンチウム、などが挙げられる。中でもアルミニウムは安価であるだけでなく、歩留りが良好であるため好ましい。
【0015】
金属化合物の含有量は、ケイ素含有粒子100質量部に対して酸化物換算で0.1〜8.0質量部であり、好ましくは0.1〜4.3質量部である。金属化合物の含有量が前記範囲であることにより、紙の嵩高化および白紙不透明度に適したものであって、適切な平均粒子径および狭い粒度分布を有する多孔性填料が得られる。金属化合物の含有量が0.1質量部未満であると、スラリー状態での粘度が高くなり、ハンドリングが悪化するほか、粒度分布が悪くなり、微細粒子と粗大粒子が多くなり、表面強度が低下する。また8.0質量部を超えると、紙に内添した際の嵩高効果が不十分となる。なお、金属化合物の含有量は、多孔性填料の粉末サンプルを錠剤化した後、蛍光X線分析装置を用いて各元素の含有量を測定し、酸化物量として換算することにより求められる。
【0016】
また、本発明の多孔性填料は、比表面積が10〜150m/g、かつ細孔径が0.10〜0.80μmである必要がある。比表面積が150m/gを超える場合は、凝集構造体の結合力が弱くなり、パルプスラリー調製時およびプレス圧、キャレンダー処理圧力で潰れやすく、紙に内添した際の嵩高性が不十分となる。比表面積が10m/g未満の場合は、粒度分布が悪くなり、微細粒子と粗大粒子が多くなり、表面強度が低下する。また、細孔径が0.10μm未満の場合は、凝集構造体の結合力が弱くなり、パルプスラリー調製時およびプレス圧、キャレンダー処理圧力で潰れやすく、紙に内添した際に嵩高性が不十分となる。細孔径が0.80μmを超える場合は、粒度分布が悪くなり、微細粒子と粗大粒子が多くなり、表面強度が低下する。ここで、比表面積は、ポアサイザ9230(島津製作所社製)を用いて、細孔形状が円筒であると仮定した全細孔の表面積で、測定範囲内における圧力と圧入された水銀量の関係から求めた値である。また細孔径も、ポアサイザ9230(島津製作所社製)を用いて、積分比表面積曲線から得られるメジアン細孔直径のことである。
【0017】
本発明に用いる多孔性填料は平均粒子径が16〜40μmであることが必要である。多孔性填料の平均粒子径が16μm未満であると、嵩高性が不十分となり、平均粒子径が40μmを超えれば、紙面に存在する粗大粒子の脱落に起因する表面強度が低下する。なお、本発明における平均粒子径とは、SALD2000J(島津製作所社製)を用いて、レーザー回折法により測定し、体積積算で50%となる値のことである。また、多孔性填料の粒度分布としては、標準偏差(σ)が0.490以下であることが好ましく、さらには0.400以下であることが好ましい。このような粒度分布であれば、粗大粒子および微細粒子が共により少なくなり、紙に配合した際に、より優れた表面強度が得られる。
【0018】
本発明に係る上質印刷用紙では、上記多孔性填料を、紙中填料率として1〜20質量%含有させる。より好ましくは3〜15質量%含有させる。1質量%未満であると、本発明が課題とする優れた不透明度、表面平滑性、印刷適性に優れ、柔軟で、かつ低密度すなわち嵩高性を有する上質印刷用紙を得ることはできない。一方20質量%を超える場合は表面強度および内部結合強度が低下し過ぎて、印刷適性の点で問題となることがある。内部結合強度はJAPAN TAPPI No.18−2に従い測定し、150J/m以上であることが好ましい。150J/m以上であれば印刷時において層内剥離に起因する紙切れを起こす懸念もないため好ましい。
【0019】
紙を形成する原料パルプとしては、例えば、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)化学パルプが挙げられる。これら単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0020】
本発明の嵩高上質印刷用紙は、パルプおよび上記多孔性填料を含む紙料を調製し、その紙料を抄紙することにより得られる。その際使用される抄紙機としては、例えば、長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式抄紙機などが挙げられる。紙料中には、必要に応じて、各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の各種抄紙用内添助剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を適宜添加できる。
【0021】
なお、密度を低くするための方法としては、上記記載の多孔性填料を内添する他に、細胞膜の厚いパルプを選択して使用する、パルプの叩解を粗くする、アラミド繊維等の硬質パルプの配合、嵩高い填料を使用する、嵩高剤と呼ばれる繊維間結合を阻害する界面活性剤系の薬品を使用する、プレスでの初期脱水を少なくする、抄紙機のカレンダ圧を軽減する等の手段があり、最終製品の品質仕様を勘定し、上記の1つ、あるいは2つ以上の手段を組合せてもよい。
【0022】
本発明では、填料として上記特定の多孔性填料の少なくとも1種を内添するものであるが、抄紙適性や原紙の強度特性を調節する目的で、それ以外の填料、例えばタルク、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン等を少量併用しても良い。
【0023】
本発明の嵩高上質印刷用紙では、印刷適性を向上させるために、水溶性および/または水分散性接着剤を主成分とする表面処理剤を片面あたり0.3〜3.0g/m2の範囲で塗布することが好ましい。0.3g/m2未満では、効果がなく、3.0g/mを越えて塗布しても効果が頭打ちとなるだけでなく、密度が上がり、作業性も悪くなるため好ましくない。表面処理剤の主成分である水溶性および/または水分散性接着剤としては、澱粉等天然接着剤やポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0024】
また本発明の嵩高上質印刷用紙において、より高い印刷適性を付与するため、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を設けることが好ましい。塗被量は片面あたり0.5〜5g/mであり、さらに好ましくは0.5〜2.0g/mである。塗被層を設けるに際しては、その塗被液中に水溶性および/または水分散性接着剤を、全顔料100質量部に対し5〜200質量部含有させ、かつ、塗被層中の該顔料を片面あたり、0.1〜2.0g/m含有させる、さらに好ましくは0.2〜1.5g/m含有させるように塗布する。該塗被層を設けることにより嵩高性を維持しながらインキ着肉性を向上できる。
上記塗被層中の顔料に関しては、レーザー法で測定した平均粒子径が2.0〜7.0μmの範囲で、かつレーザー法および沈降法で測定した平均粒子径の比(レーザー法/沈降法)が5.0〜12の範囲である特定顔料を選んで、かつ上記全顔料の5〜50質量%含有させることが、塗被層を低密度化でき、本発明の上質印刷用紙の嵩高性の維持できるため好ましい。上記特定顔料を、全顔料の5〜30質量%、さらに好ましくは5〜9質量%の範囲で含有させることが塗被層の平滑性、光沢、嵩高性のバランスの点でより好ましい。
【0025】
これら表面処理剤液や、顔料と接着剤を主成分とする塗被液には、必要に応じて、青系統あるいは紫系統の染料や有色顔料、蛍光染料、増粘保水剤、酸化防止剤、老化防止剤、導電誘導剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤、離型剤、耐水化剤、紙力増強剤、外添サイズ剤、撥水剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
【0026】
上述の表面処理剤液や、顔料と接着剤を主成分とする塗被液の塗布は、2本ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、プレメタリングサイズプレスコーター、キャレンダコーター等の公知公用の装置が適用でき、適宜選択して使用される。また、エアーナイフコーター、各種ブレードコーター等で上述の顔料と接着剤を主成分とする塗被層を、少なくとも片面に設けて使用しても良い。なお、顔料と接着剤を主成分とする塗被液は、表面処理剤液を塗布した後、併用して塗布することも可能である。
【0027】
次に本発明の嵩高上質印刷用紙は、各種公知公用の仕上げ装置、例えばワインダー部前のマシンカレンダ、および/またはスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ等に通紙して平滑化処理を行ない、密度0.6g/cm以下の嵩高上質印刷用紙に仕上げる。坪量は30g/m〜300g/mの範囲で、密度が0.58g/cm以下であれば嵩高効果が高く好ましい。0.56g/cm以下であればさらに好ましい。本発明の場合、嵩高化発現の課題達成にため、平滑化しやすく、また必要に応じて光沢が発現しやすい加工仕上げを行なう必要があり、硬質樹脂ロール等を備えたカレンダに通紙して仕上げる方法が好ましい。
【0028】
本発明の嵩高上質印刷用紙では、印刷作業適性並びに印刷品質適性の観点から、平滑度を20〜200秒とする。すなわち平滑度が20秒未満の場合、粗い表面となり印刷品質や印字画像品質が劣ってしまう他、ガイドローラー汚れを起こし易くなる。また200秒を超える場合、搬送系内のローラーでスリップにより蛇行や、紙こわさが低い場合はブランケットへの貼りつきが生じ易く、安定した印刷が出来ないことがある。
【0029】
近年の印刷様態として固定情報をオフセット印刷し、その後、可変情報を印字する機会が増えている。この際、高速印字が可能で騒音の発生がない利点を有することから、熱・圧力定着やフラッシュ定着、オーブン定着による電子写真方式で出力することが主流になっている。熱・圧力定着方式の印字装置では、粉体トナーを用紙へ転写した後、約200℃に加熱したヒートロールに紙を押し付けることにより、粉体トナー定着が行われる。機種によってはヒートロールの前に、約100℃のプレヒーター部を設けているものがある。
【0030】
フラッシュ定着方式は、感光体または中間転写部材から転写紙上に転写された粉体トナー像に、たとえば、キセノン、ハロゲンフラッシュランプなどの閃光を照射し、その輻射熱によりトナー像を溶融して転写紙上に定着する方法である。
オーブン定着方式は、感光体または中間転写部材から転写紙上に転写された粉体トナー像に、たとえば、オーブン雰囲気下で赤外線を照射し、その輻射熱によりトナー像を溶融して転写紙上に定着する方法である。
【0031】
定着方式としてのフラッシュ方式やオーブン方式のような非接触加熱定着方式は以下に述べるような優れた特徴をもつことから、注目されている。
(1)粉体トナー像がいかなる部材にも接触することなく溶融して定着する非接触定着方式であるので、定着用ロール等の部材による像つぶれがなく現像時の解像度を劣化させない。
(2)定着時間が極めて短時間であるため、高速定着が可能である。
(3)定着による待ち時間がないため、クイックスタートが可能である。
(4)厚さ、紙質の異なる転写紙に容易に対応可能である。
【0032】
本発明に係る嵩高上質印刷用紙は、上記方式の熱・圧力定着やフラッシュ定着、オーブン定着による電子写真方式の出力に対して、良好な画質と走行性が得られる用紙である。特に用紙の不透明度が高いため、両面印字品での画像の裏映りが小さくなるといった利点がある。
【0033】
前記画像記録において、特に、5〜7μm程度のトナー粒子によって画像が形成される電子写真方式では、上述の塗工紙を用いることによって極めて高品位な画像を得ることができる。例えば、ISO−13660ドラフトスタンダード・QEA(Quality Engineering Assosiates,Inc.)に準拠した方法に基づいて、電子写真方式プリンターを用いて画像を形成、評価すると、タイルサイズ40μmにおけるモトルが、10GSV(Grey Scale Value)以下、ラインのラジェドネス(ギザギザ度)が10μm以下、ブラリネス(ぼやけ度)が11μm以下であり、極めて良好な画像を得ることが出来る。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例および比較例を示して、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。なお、以下の例において、特に断りのない限り、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」のことである。
【0035】
<多孔性填料の製造>
(多孔性填料A)
水210質量部、硫酸ナトリウム61質量部、ケイ酸ソーダ347質量部(SiO濃度;28.8質量%、NaO濃度;9.5質量%)を混合攪拌し、硫酸(濃度;20質量%)を50℃で攪拌しながら78質量部添加、つぎに温度を90℃とし、硫酸(濃度;20質量%)を143質量部添加し、硫酸アルミニウム(濃度;20質量%)をpHが6.0となるまで添加して得たスラリーを200メッシュ篩で分離し、ベルトフィルターでろ過して12%の多孔性填料スラリーを得た。
【0036】
(多孔性填料B)
水210質量部、硫酸ナトリウム61質量部、ケイ酸ソーダ347質量部(SiO濃度;28.8質量%、NaO濃度;9.5質量%)を混合攪拌し、硫酸(濃度;20質量%)を50℃で攪拌しながら78質量部添加、つぎに温度を90℃とし、硫酸(濃度;20質量%)を52質量部添加し、硫酸アルミニウム(濃度;20質量%)をpHが6.0となるまで添加して得たスラリーを200メッシュ篩で分離し、ベルトフィルターでろ過して12%の多孔性填料スラリーを得た。
【0037】
(多孔性填料C)
水210質量部、硫酸ナトリウム61質量部、ケイ酸ソーダ347質量部(SiO濃度;28.8質量%、NaO濃度;9.5質量%)を混合攪拌し、硫酸(濃度;20質量%)を50℃で攪拌しながら78質量部添加、つぎに温度を90℃とし、硫酸(濃度;20質量%)を117質量部添加し、硫酸アルミニウム(濃度;20質量%)をpHが6.0となるまで添加して得たスラリーを200メッシュ篩で分離し、ベルトフィルターでろ過して12%の多孔性填料スラリーを得た。
【0038】
(多孔性填料D)
水250質量部、硫酸ナトリウム58質量部、ケイ酸ソーダ347質量部(SiO濃度;28.8質量%、NaO濃度;9.5質量%)を混合攪拌し、硫酸(濃度;20質量%)を50℃で攪拌しながら78質量部添加、つぎに温度を90℃とし、硫酸(濃度;20質量%)を166質量部添加し、硫酸アルミニウム(濃度;20質量%)をpHが6.0となるまで添加して得たスラリーを200メッシュ篩で分離し、ベルトフィルターでろ過して12%の多孔性填料スラリーを得た。
【0039】
(多孔性填料E)
水623質量部、硫酸ナトリウム32質量部、ケイ酸ソーダ347質量部(SiO濃度;28.8質量%、NaO濃度;9.5質量%)を混合攪拌し、硫酸(濃度;20質量%)を50℃で攪拌しながら78質量部添加、つぎに温度を90℃とし、硫酸アルミニウム(濃度;20質量%)をpHが6.0となるまで添加して得たスラリーを200メッシュ篩で分離し、ベルトフィルターでろ過して12%の多孔性填料スラリーを得た。
【0040】
(多孔性填料F)
水320質量部、硫酸ナトリウム96質量部、ケイ酸ソーダ347質量部(SiO濃度;28.8質量%、NaO濃度;9.5質量%)を混合攪拌し、硫酸(濃度;20質量%)を50℃で攪拌しながら70質量部添加、つぎに温度を90℃とし、硫酸(濃度;20質量%)を151質量部添加し、硫酸アルミニウム(濃度;20質量%)をpHが6.0となるまで添加して得たスラリーを200メッシュ篩で分離し、ベルトフィルターでろ過して12%の多孔性填料スラリーを得た。
【0041】
(多孔性填料G)
水980質量部、硫酸ナトリウム7質量部、ケイ酸ソーダ347質量部(SiO濃度;28.8質量%、NaO濃度;9.5質量%)を混合攪拌し、硫酸(濃度;20質量%)を50℃で攪拌しながら78質量部添加、つぎに温度を90℃とし、硫酸(濃度;20質量%)を52質量部添加し、硫酸アルミニウム(濃度;20質量%)をpHが6.0となるまで添加して得たスラリーを200メッシュ篩で分離し、ベルトフィルターでろ過して12%の多孔性填料スラリーを得た。
【0042】
(多孔性填料H)
水568質量部、硫酸ナトリウム15質量部、ケイ酸ソーダ347質量部(SiO濃度;28.8質量%、NaO濃度;9.5質量%)を混合攪拌し、硫酸(濃度;20質量%)を50℃で攪拌しながら99質量部添加、つぎに温度を90℃とし、硫酸(濃度;20質量%)を123質量部添加し、硫酸アルミニウム(濃度;20質量%)をpHが6.0となるまで添加して得たスラリーを200メッシュ篩で分離し、ベルトフィルターでろ過して12%の多孔性填料スラリーを得た。
【0043】
(多孔性填料I)
水587質量部、硫酸ナトリウム101質量部、ケイ酸ソーダ347質量部(SiO濃度;28.8質量%、NaO濃度;9.5質量%)を混合攪拌し、硫酸(濃度;20質量%)を50℃で攪拌しながら57質量部添加、つぎに温度を90℃とし、硫酸(濃度;20質量%)を164質量部添加し、硫酸アルミニウム(濃度;20質量%)をpHが6.0となるまで添加して得たスラリーを200メッシュ篩で分離し、ベルトフィルターでろ過して12%の多孔性填料スラリーを得た。
【0044】
(多孔性填料J)
水664質量部、硫酸ナトリウム29質量部、ケイ酸ソーダ347質量部(SiO濃度;28.8質量%、NaO濃度;9.5質量%)を混合攪拌し、硫酸(濃度;20質量%)を50℃で攪拌しながら78質量部添加、つぎに温度を90℃とし、硫酸(濃度;20質量%)を143質量部添加し、硫酸アルミニウム(濃度;20質量%)をpHが6.0となるまで添加して得たスラリーを200メッシュ篩で分離し、ベルトフィルターでろ過して12%の多孔性填料スラリーを得た。
【0045】
(多孔性填料K)
水430質量部、硫酸ナトリウム126質量部、ケイ酸ソーダ347質量部(SiO濃度;28.8質量%、NaO濃度;9.5質量%)を混合攪拌し、硫酸(濃度;20質量%)を50℃で攪拌しながら91質量部添加、つぎに温度を90℃とし、硫酸(濃度;20質量%)を104質量部添加し、硫酸アルミニウム(濃度;20質量%)をpHが6.0となるまで添加して得たスラリーを200メッシュ篩で分離し、ベルトフィルターでろ過して12%の多孔性填料スラリーを得た。
【0046】
以上のようにして得られた多孔性填料(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)、(G)、(K)各スラリーについて、平均粒子径および標準偏差、スラリー粘度を測定した。また、多孔性填料の各スラリーのろ過・洗浄後のケーキの一部を105℃にて乾燥し、比表面積、細孔径を測定し、また、蛍光X線分析装置による金属化合物割合の測定に供した。各々の多孔性填料について、金属化合物含有率(酸化物換算)、比表面積、細孔径、平均粒子径および標準偏差、15%スラリー粘度の各特性測定結果を表1に纏める。
(金属化合物含有量)
多孔性填料中の金属化合物の含有量(酸化物換算)は、蛍光X線分析装置(スペクトリス社製PW2404)を用いて測定した値である。
(比表面積)
比表面積は、ポロシメーターであるポアサイザ9230(島津製作所社製)を用いて、細孔形状が幾何学的な円筒であると仮定した場合の全細孔の表面積であり、測定範囲内における圧力と圧入された水銀量の関係から求めた値である。
(細孔径)
細孔径は、ポアサイザ9230(島津製作所社製)を用いて測定されたメジアン細孔直径である。
(平均粒子径と標準偏差)
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(SALD2000J(島津製作所社製))を用いて測定された50%体積積算値の粒子径である。また、粒子径の標準偏差はレーザー回折式粒度分布計により求めた粒子径から算出した値である。
(多孔性填料スラリーの粘度)
多孔性填料スラリーの粘度は、多孔性填料スラリーの固形分濃度を15%に調整し、温度20℃で、B型粘度計により測定した値である。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例1
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Aを、原紙中に5.0質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に5.0質量%含まれるように添加した。さらに、パルプ(LBKPとNBKP)100部に対して、内添サイズ剤としてAKDサイズ剤(商品名:サイズパインK−902、荒川化学社製)0.01部(固形分換算)および硫酸アルミニウム0.5部(固形分換算)をそれぞれ添加して紙料を調製した。
そして、この紙料を用いて抄紙し、両面に、下記塗被液(1)を片面当たりの乾燥塗工量が1.25g/mとなるように、ゲートロールコーターで塗工、水分が5.0%になるように乾燥し、塗被層を形成して、ソフトニップカレンダ条件を調整、通紙して、王研平滑度が35秒、紙厚みが125μm(坪量68g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
[塗被液の調製(1)]
光散乱方式により測定した平均粒子径d50が4.58μm、沈降方式により測定した平均粒子径d50が0.46μm、d50/d50が10.0であるデラミネーテッドカオリンA(コンツアー1500/イメリス社製)20部、立方体状軽質炭酸カルシウム(商品名;ブリリアントS15、白石工業社製)80部、酸化トウモロコシ澱粉(商品名;王子エースA、王子コーンスターチ社製)100部、スチレン−ブタジエン共重合体(商品名;T−2635R、JSR社製)20部からなる固形分濃度20%の顔料分散液を調製した。
【0049】
実施例2
下記塗被液(2)を片面当たりの乾燥塗工量が1.25g/mとなるように、ゲートロールコーターで塗工、水分が5.0%になるように乾燥し、塗被層を形成した以外は、実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量67g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
[塗被液の調製(2)]
光散乱方式により測定した平均粒子径d50が4.58μm、沈降方式により測定した平均粒子径d50が0.46μm、d50/d50が10.0であるデラミネーテッドカオリンA(コンツアー1500/イメリス社製)9部、立方体状軽質炭酸カルシウム(商品名;ブリリアントS15、白石工業社製)91部、酸化トウモロコシ澱粉(商品名;王子エースA、王子コーンスターチ社製)100部、スチレン−ブタジエン共重合体(商品名;T−2635R、JSR社製)20部からなる固形分濃度20%の顔料分散液を調製した。
【0050】
実施例3
下記塗被液(3)を片面当たりの乾燥塗工量が1.25g/mとなるように、ゲートロールコーターで塗工、水分が5.0%になるように乾燥し、塗被層を形成した以外は、実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量69g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
[塗被液の調製(3)]
軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−121、奥多摩工業社製)100部、酸化澱粉(商品名:エースA)100部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:スマテックスPA2327、日本エイアンドエル社製)20部からなる固形分濃度30%の顔料分散液を調製した。
【0051】
実施例4
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Bを、原紙中に5.0質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に5.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量71g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0052】
実施例5
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Cを、原紙中に5.0質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に5.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量68g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0053】
実施例6
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Aを、原紙中に2.5質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に8.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量72g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0054】
実施例7
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Aを、原紙中に10.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量64g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0055】
実施例8
下記塗被液(4)を片面当たりの乾燥塗工量が0.9g/mとなるように、ゲートロールコーターで塗工、水分が5.0%になるように乾燥し、塗被層を形成した以外は、実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量68g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
[塗被液の調製(4)]
酸化澱粉(商品名:エースA)、固形分濃度8.0%の塗被液(1)を調製した。
【0056】
実施例9
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Aを、原紙中に17.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量62g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0057】
実施例10
実施例1において、平滑度が25秒となるように、ソフトニップカレンダ条件を調整、通紙した以外は、実施例1と同様にして、坪量68g/mの嵩高上質印刷用紙を得た。
【0058】
実施例11
実施例1において、平滑度が150秒となるように、ソフトニップカレンダ条件を調整、通紙した以外は、実施例1と同様にして、坪量68g/mの嵩高上質印刷用紙を得た。
【0059】
比較例1
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Dを、原紙中に5.0質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に5.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量68g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0060】
比較例2
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Eを、原紙中に5.0質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に5.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量75g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0061】
比較例3
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Fを、原紙中に5.0質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に5.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量70g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0062】
比較例4
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Gを、原紙中に5.0質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に5.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量78g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0063】
比較例5
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Hを、原紙中に5.0質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に5.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量78g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0064】
比較例6
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Iを、原紙中に5.0質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に5.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度37秒、紙厚み125μm(坪量67g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0065】
比較例7
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Jを、原紙中に5.0質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に5.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量76g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0066】
比較例8
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Kを、原紙中に5.0質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に5.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量66g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0067】
比較例9
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Aを、原紙中に0.5質量%含まれるように、軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:6.1μm)を、原紙中に9.5質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量80g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0068】
比較例10
LBKP75部(フリーネス450ml/CSF)、NBKP25部(フリーネス450ml/CSF)を含むパルプスラリーに、填料として表1に示す多孔性填料Aを、原紙中に25.0質量%含まれるように添加して紙料を調製したこと以外は実施例1と同様にして、王研平滑度35秒、紙厚み125μm(坪量59g/m)の嵩高上質印刷用紙を得た。
【0069】
比較例11
実施例1において平滑度が10秒となるように、ソフトニップカレンダ条件を調整、通紙した以外は実施例1と同様にして、坪量68g/mの嵩高上質印刷用紙を得た。
【0070】
比較例12
実施例1において平滑度が320秒となるように、ソフトニップカレンダ条件を調整、通紙した以外は実施例1と同様にして、坪量68g/mの嵩高上質印刷用紙を得た。
【0071】
各実施例および比較例において、塗被液中に含有させる、特定顔料のレーザー方式、沈降方式による平均粒子径は以下のように測定した。その結果を表2、表3に示す。
(レーザー方式による顔料の平均粒子径測定)
レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2000(島津製作所社製)を使用して、顔料の粒度分布を測定し、50累積質量%に該当する平均粒子径(d50)を測定した。なお、測定に供した顔料分散液は、分散剤(ポリアクリル酸ナトリウム)を対顔料0.05%添加して調製した顔料スラリーを、当該測定装置で測定可能な領域にまで希釈して得た。
(沈降方式による顔料の平均粒子径測定)
沈降方式粒度分布装置セディグラフ5100(マイクロメリテクス社製)を使用して、顔料の粒度分布を測定し、50累積質量%に該当する平均粒子径(d50)を求めた。なお、測定に供した顔料分散液は、分散剤(ポリアクリル酸ナトリウム)を対顔料0.05%添加して調製した顔料スラリーを、燐酸塩系分散剤(ナンカリン)の0.1%水溶液で、顔料固形分濃度が約1%になるよう希釈して得た。
【0072】
各実施例および比較例で得られた上質印刷用紙について、以下に示す、多孔性填料含有率、坪量、密度、不透明度、平滑度、内部結合強度、柔軟係数、表面強度、インキ着肉性、印刷濃淡ムラ、コスレ汚れ、巻きシワ、電子写真印字評価での裏移りと画像濃淡ムラを評価した。その結果を表2、表3に示す。
(多孔性填料含有量)
JIS P 8251、JIS P 8252に従い、その灰分から算出。
(坪量)
JIS P 8124−1998に従って測定した。
(密度)
JIS P 8118−1998に従って測定した。
(不透明度)
JIS P 8149に従って測定した。
(平滑度)
JAPAN TAPPI紙パルプ試験法No.5Bによる空気リーク方式の王研式平滑度計(旭精工社製)を用いて測定した。
(内部結合強度)
JAPAN TAPPI No.18−2に従って測定した。
(柔軟係数)
JIS P 8143−1996に従って測定し、縦方向、横方向を平均した値をクラーク剛度Aとし、下記式に代入し、柔軟係数を求めた。柔軟係数6以下が、柔軟性を有する。
柔軟係数=(クラーク剛度A)×(米坪量)×9.8/100
【0073】
(表面強度)
得られた上質印刷用紙を23℃±1℃、(50±2)%RHの環境下で調湿したのち、同環境下で、RI印刷試験機にて、印刷インキ(紙試験用SD50紅、東洋インキ製造社製)を0.6cm使用して印刷を行い、印刷面のピッキングの程度を目視にて以下の5段階評価で行った。
◎:ピッキングが全く発生せず、表面強度が極めて良好。
:ピッキングが極々僅かに発生しているが、良好なレベル。
○:ピッキングが僅かに発生しているが、実用的に良好なレベル。
△:ピッキングが発生しており、表面強度が低く、実用上問題のレベル。
×:ピッキングが多く発生しており、表面強度が著しく低く、問題あるレベル。
【0074】
(インキ着肉性)
得られた上質印刷用紙から巾2cmの試料ストリップを切り取り、これをサンプル台紙(OK特アートポスト 256g/m)に貼りつけ、RI印刷試験機(明製作所製)にて、墨インキ(News Webmaster 墨、サカタインクス株式会社製)を0.4cc展開させ、ゴムロールと練りロール間をキスタッチにして、その間に水を0.2cc滴下後、印刷を行い、墨ベタ印刷面の濃度を目視にて、以下の5段階評価で行った。
◎:黒ベタ濃度が極めて高く、インキ着肉性が極めて優良。
:黒ベタ濃度が高く、インキ着肉性が良好。
○:黒ベタ濃度が高く、インキ着肉性が実用上問題ないレベル。
△:黒ベタ濃度がやや低調で、実用的に問題のレベル。
×:黒ベタ濃度が低調で、実用に供し得ないレベル。
【0075】
(印刷濃淡ムラ)
各実施例および比較例で得た上質印刷用紙から巾2cm長さ20cmの試料を切り取り、これをサンプル台紙(OK特アートポスト 256g/m2)に貼りつけ、RI印刷試験機(石川島産業機械社製)にて、印刷インキ(紙試験 GEOS−G 墨 DIC社製)を0.2cc使用して印刷を行い、印刷面の濃淡ムラの程度を目視にて、以下の5段階評価で行った。
〈評価基準〉
◎ :濃淡ムラが全く発生していなくて優良。
:ごくわずかに濃淡ムラが発生しているが良好なレベル。
○ :一部で濃淡ムラの発生がみられるが、実用上問題のないレベル。
△ :濃淡ムラがみられ、実用上の問題レベル。
× :全面で濃淡ムラが発生している。
【0076】
(コスレ汚れ;ガイドロール汚れ)
各実施例及び比較例で得た、上質印刷用紙をタワー型多色印刷輪転機で12万部/時の速度で印刷し、そのコスレによる紙面の汚れ具合を目視で評価した。評価は5段階評価で行ない、評価が△、×のものは、実用上問題がある。
〈評価基準〉
◎ :印刷物のコスレ汚れの程度が著しく優れている
:印刷物のコスレ汚れの程度が良好。
○ :印刷物のコスレ汚れが少し見られるが、実用上問題ないレベル。
△ :印刷物のコスレ汚れが少し見られ、実用上問題のレベル。
×:印刷物のコスレ汚れの程度が劣り、実用上に供しない。
【0077】
(巻きシワ;搬送性)
各実施例及び比較例で得た、上質印刷用紙をタワー型多色印刷輪転機で12万部/時の速度で印刷し、その搬送系内のローラーでスリップによる蛇行で発生する巻きシワを目視で以下の5段階評価で行なった。
〈評価基準〉
◎:蛇行制御の為のテンション調整が不要、巻きシワも全く発生せず、優良。
:蛇行制御の為のテンション調整が、時に必要となるが、巻きシワは全く発生せず良好。
○:蛇行制御の為のテンション調整が必要であるが、巻きシワの発生は非常に少なく実用上問題ない。
△:蛇行制御の為のテンション調整が必要で、巻きシワの発生が、実用上問題となるレベル。
×:蛇行制御の為のテンション調整を行っても、巻きシワが発生し、実用上に供しない。
【0078】
電子写真方式での印字評価
各実施例および比較例で得た上質印刷用紙について、昭和情報機器(株)のSR3000、コニカミノルタの連続紙フルカラープリンタCP1275C(非接触フラッシュ定着方式)を用いて、両面印字を行い、裏映り度合い、並びに画像濃淡ムラを目視にて判定した。評価は各々次の5段階評価で行った。
(裏映り)
〈評価基準〉
◎ :表の画像が全く見えない。
:表の画像がごくわずかに見られる。
○ :表の画像が見えるが、実用上問題のないレベル。
△ :表の画像が裏映りして見える。
× :表の画像が裏映りして明瞭に見える。
なお、評価が△,×のものは、実用上問題がある。
(画像濃淡ムラ)
〈評価基準〉
◎ :中間調の均一濃度部分に、濃淡が観られず良好。
:中間調の均一濃度部分に、若干濃淡ムラが観られるが良好。
○:中間調の均一濃度部分に、やや濃淡ムラが観られるが、実用上問題ない。
△:中間調の均一濃度部分に、濃淡ムラが観られ、実用上問題レベル。
×:中間調の均一濃度部分に、著しい濃淡ムラが観られ、実用上問題がある。
なお、評価が△,×のものは、実用上問題がある。
【0079】
【表2】

【0080】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素および/またはケイ酸塩から形成されたケイ素含有粒子と、該ケイ素含有粒子100質量部に対して酸化物換算で0.1〜8.0質量部の金属化合物とを含有し、かつ比表面積が10〜150m/g、細孔径が0.10〜0.80μm、平均粒子径が16〜40μmである多孔性填料を、紙中填料率として1〜20質量%含み、密度が0.6g/cm以下で、かつ用紙の表面平滑度が、20〜200秒であることを特徴とする嵩高上質印刷用紙。
【請求項2】
前記嵩高上質印刷用紙の、JAPAN TAPPI No.18−2に従い測定した内部結合強度が150J/m以上である請求項1に記載の嵩高上質印刷用紙。
【請求項3】
前記嵩高上質印刷用紙が、水溶性および/または水分散性接着剤を主成分とする表面処理剤で片面当り0.3〜3.0g/m表面塗布された請求項1または2に記載の嵩高上質印刷用紙。
【請求項4】
前記嵩高上質印刷用紙が、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を有し、該塗被層中の全顔料100質量部に対する水溶性および/または水分散性の接着剤が5〜200質量部であり、かつ該顔料を片面当り0.1〜2.0g/m含有する請求項1または2に記載の嵩高上質印刷用紙。
【請求項5】
前記顔料中に、レーザー法で測定した平均粒子径が2.0〜7.0μm、かつレーザー法および沈降法で測定した平均粒子径の比(レーザー法/沈降法)が5.0〜12.0の範囲である顔料を、5〜50質量%含有する請求項4に記載の嵩高上質印刷用紙。

【公開番号】特開2009−84718(P2009−84718A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253363(P2007−253363)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】