説明

嵩高紙の製造方法および嵩高紙

【課題】嵩高効果と紙力効果(特に内部強度)に優れる嵩高紙及びその製造方法の提供。
【解決手段】第2級アミノ基含有ポリアミン化合物、モノカルボン酸化合物およびグリシジル基含有化合物を反応成分とする第3級アミド基含有脂肪酸変性アミド樹脂を含む嵩高剤と、両性ポリアクリルアミドを含む紙力増強剤を、紙料に添加した後で、抄紙を行う嵩高紙の製造方法において、当該紙力増強剤が、〔紙力増強剤を含有する紙料のカナダ標準ろ水度〕と〔紙力増強剤を含有しない紙料のカナダ標準ろ水度〕との差として50ml以下の値を与えるものであることを特徴とする、嵩高紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は嵩高紙の製造方法および、当該製造方法で得られる嵩高紙に関する。
【背景技術】
【0002】
嵩高紙とは、紙の厚みを維持しつつ低密度化した(以下、嵩高効果ということがある)軽量紙のことをいい、紙の単位体積あたりのパルプ量が少ないことから、省資源に寄与する紙として、近年その需要が著しく伸びている。
【0003】
嵩高紙の製造方法は種々あるが、抄紙時に、有機系または無機系の添加剤(嵩高剤)を紙料に添加する方法によれば、嵩高効果に加えて他の要求性能を紙に付与しやすく、また特殊な装置を用いる必要もないなど利点が多い(特許文献1、2等参照)。
【0004】
ところで従来の製造方法で得られる嵩高紙は、表面強度や特に内部強度(紙内部のパルプ結合の強さ)が小さいなど、紙力効果の点で十分でない場合が多く、印刷時に膨れやエッジ捲れ、ピッキング等の問題が発生することが懸念されている。これはおそらく、嵩高紙は前記したように低密度化されているため、パルプ繊維間の相互作用(例えば、繊維の絡み合いや、セルロース分子間の水素結合等)が小さくなっていることが要因であると考えられている。
【特許文献1】特開平3−124895号公報
【特許文献2】特開2003−96692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、嵩高効果を維持しつつ、嵩高紙の紙力効果(特に内部強度)を向上させることができる、嵩高紙の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、嵩高効果を保ちつつ、かつ、紙力効果(特に内部強度)に優れる嵩高紙を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、特定の脂肪酸変性アミド樹脂系の嵩高剤を紙料に添加した後で抄紙を行う嵩高紙の製造方法において、当該嵩高剤と、パルプを一定の程度で凝集させる両性ポリアクリルアミド系の紙力増強剤とを併用することによって、前記課題を解決できることを見出した。即ち、本発明は、
【0007】
1.第2級アミノ基含有ポリアミン化合物(a1)、モノカルボン酸化合物(a2)およびグリシジル基含有化合物(a3)を反応成分とする第3級アミド基含有脂肪酸変性アミド樹脂(A)を含む嵩高剤(1)と、両性ポリアクリルアミド(B)を含む紙力増強剤(2)を、紙料(3)に添加した後で、抄紙を行う嵩高紙の製造方法において、
当該紙力増強剤(2)が、〔紙力増強剤(2)を含有する紙料(3)のカナダ標準ろ水度(ml)〕と〔紙力増強剤(2)を含有しない紙料(3)のカナダ標準ろ水度(ml)〕との差として50ml以下の値を与えるものであることを特徴とする、嵩高紙の製造方法、
【0008】
2.前記第3級アミド基含有脂肪酸変性アミド樹脂(A)の、(第3級アミド基含有脂肪酸変性アミド樹脂(A)が有する第3級アミド基の個数/第2級アミノ基含有ポリアミン化合物(a1)が有する第2級アミノ基の個数)の値が0.1〜0.95である、前記1.に記載の製造方法法、
【0009】
3.前記第2級アミノ基含有ポリアミン化合物(a1)が一般式(I):HN−[−(CHNH−]−H(式中、xは1〜3の整数を、またyは2〜6の整数を表す。)で表されるポリアルキレンポリアミンである、前記1.または2.に記載の製造方法、
【0010】
4.前記紙力増強剤(2)の、固形分濃度1.0重量%の溶液状態における濁度単位(NTU)が500未満である、前記1.〜3.のいずれかに記載の製造方法。
【0011】
5.前記両性ポリアクリルアミド(B)が、(メタ)アクリルアミド(b1)、カチオン性(メタ)アクリル系モノマー(b2)、アニオン性(メタ)アクリル系モノマー(b3)、N−置換(メタ)アクリルアミド(b4)、(メタ)アリル基含有ビニルモノマー(b5)を共重合させてなるポリマーである、前記1.〜4.のいずれかに記載の製造方法。
【0012】
6.前記両性ポリアクリルアミド(B)の重量平均分子量が100万以上である、前記1.〜5.のいずれかに記載の製造方法、
【0013】
7.前記紙料(3)のパルプ濃度が0.1〜4重量%である、前記1.〜6.のいずれかに記載の製造方法、
【0014】
8.前記嵩高剤(1)を紙料(3)に添加した後に、前記紙力増強剤(2)を更に添加して抄紙を行う、前記1.〜7.のいずれかに記載の製造方法、
【0015】
9.前記1.〜8.のいずれかの製造方法で得られる嵩高紙、に関する
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法により、嵩高効果を維持しつつ、紙力効果(特に内部強度)に優れる嵩高紙を提供することができる。また、当該嵩高紙は、低密度でありながら紙力効果に優れるほか、サイズ効果や地合いが良好であるため、各種印刷用紙(例えば、書籍用紙、印刷・情報用紙、新聞用紙、包装用紙、塗工紙、インクジェット記録用紙等)として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で用いられる嵩高剤(1)は、第3級アミド基含有脂肪酸変性アミド樹脂(A)(以下、(A)成分と略す)を含むものであり、当該(A)成分は、例えば、第2級アミノ基含有ポリアミン化合物(a1)(以下、(a1)成分という)、モノカルボン酸化合物(a2)(以下、(a2)成分という)およびグリシジル基含有化合物(a3)(以下、(a3)成分という)を反応させることにより得られる。
【0018】
前記(a1)成分としては、分子内に第2級アミノ基を1個以上有するポリアミン化合物であれば、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。なお、(a1)成分を構成する炭化水素基は直鎖状、環状、分岐状のいずれかであればよく、また、当該炭化水素基には炭素−炭素不飽和二重結合が存在していてもよい。また、(a1)成分には第2級アミノ基の他に、第1級アミノ基や第3級アミノ基が存在していてもよい。
【0019】
(a1)成分の具体例としては、例えば、一般式(I):HN−[−(CHNH−]−H(式中、xは1〜3の整数を、またyは2〜6の整数を表す。)で表されるポリアルキレンポリアミン〔ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン等〕、一般式(II):HRN(CHNRH(式中、Rは炭素数が1〜3のアルキル基を、zは1〜6の整数を表す)で表されるN,N’−ジアルキルアルキレンジアミン〔N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルプロピレンジアミン、N,N’−ジエチルプロピレンジアミン、N,N’−ジイソブチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジイソブチルプロピレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルプロピレンジアミン、N,N’−ジ−n−プロピルエチレンジアミン等〕などが挙げられ、これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、(a2)成分との反応性が良好であり前記(A)成分中に第3級アミド基を導入しやすいことや、(A)成分のエマルジョンが安定になること、常温で低粘度なのでハンドリング性が良好であること、入手が容易であること等の理由から、前記一般式(I)で表されるポリアルキレンポリアミンが、特にジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0020】
前記(a2)成分としては、分子内にカルボキシル基を1個有するモノカルボン酸化合物であれば、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。なお、(a2)成分を構成する炭化水素基は直鎖状、環状、分岐状のいずれかであればよく、また、当該炭化水素基には炭素−炭素不飽和二重結合が存在していてもよい。
【0021】
(a2)成分の具体例としては、例えば、酢酸、飽和脂肪酸〔酪酸、プロピオン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等〕、不飽和脂肪酸〔パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸等〕、植物油脂ないし動物油脂〔ひまし油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、大豆油脂肪酸、なたね油脂肪酸、トール油脂肪酸等〕などが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に(a2)成分を2種以上組み合わせて用いる場合には、複数種の炭化水素基を前記(A)成分中に組み込めるなど、構造制御が可能になる。これらの中でも、後述するアミド化反応における反応性や、前記嵩高効果や粘度安定性が良好になる等の理由から、炭素数が12〜22程度の直鎖状アルキル基を有するモノカルボン酸化合物、特にステアリン酸、パルミチン酸、デカン酸、ベヘン酸、カプロン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0022】
前記(a3)成分としては、分子内にグリシジル基を1個有する化合物であれば、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。なお、(a3)成分を用いることにより(A)成分にカチオン性基や、分岐構造・架橋構造が導入される。(a3)成分の具体例としては、例えば、エピハロヒドリン類〔エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン等〕、グリシドール類〔2,3−エポキシ−1−プロパノール、3,4−エポキシ−1−ブタノール等〕などが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、前記(a2)成分との反応性が高いため前記カチオン性基・分岐構造・架橋構造を導入しやすいことや、得られる嵩高紙のサイズ効果が良好になること、安価であること等の理由から、前記エピハロヒドリン類、特にエピクロロヒドリンが好ましい。
【0023】
(A)成分における、前記(a1)成分、前記(a2)成分および前記(a3)成分の各使用量は特に限定されないが、通常は、前記(a1)成分の1級アミノ基をM個とし、またその第2級アミノ基をN個とした場合において、(a1)成分1モル(即ち、1級アミノ基がMモル、第2級アミノ基がNモル)に対し、(a2)成分が通常(M+0.05N)モル〜(M+0.9N)モル程度(好ましくは(M+0.2N)モル〜(M+0.7N)モルとなる範囲とし、また、(a3)成分が通常0.1Nモル〜1.5Nモル程度(好ましくは0.3Nモル〜0.75Nモル)となる範囲とすればよい。
【0024】
なお、(a2)成分の使用量が(M+0.05N)モル未満の場合には、(A)成分に導入される分岐構造や架橋構造の量が少なくなり、嵩高効果を維持し難くなる傾向にある。一方、その使用量が(M+0.9N)モルを超える場合には、残存する(a2)成分と(a3)成分との副反応の影響により前記粘度安定性や、得られる嵩高紙の各種性能が悪化する傾向にある。
【0025】
また、(a3)成分の使用量が0.1Nモル未満の場合には、(A)成分に導入されるカチオン性基の量が少なくなるため、(A)成分がパルプへ定着しにくくなり、嵩高効果を維持し難くなる傾向にある。一方、その使用量が1.5Nモルを超える場合には、(A)成分に導入される架橋構造やカチオン性基の量が少なくなる傾向にある。
【0026】
なお、(a1)成分を2種以上組み合わせて用いる場合には、前記MとNの値はそれぞれ平均値とする必要がある。例えば、(a1)成分1モルが、ジエチレントリアミン(M=2、N=3)0.2モルとペンタエチレンヘキサミン(M=3、N=2)0.8モルとの混合物であった場合には、M≒2.8およびN≒2.2となる。
【0027】
(A)成分の製造方法は特に限定されず、各種公知のアミド化反応および付加反応を採用できる。なお、(A)成分の構造が制御しやすくなることから、(a1)成分と(a2)成分とをアミド化反応(脱水縮合反応)させて第3級アミド基含有化合物(A’)(以下、(A’)成分という)を一旦製造し、次いで、当該(A’)成分と前記(a3)成分とを付加反応させる方法が好ましい。
【0028】
前記アミド化反応は特に限定されず、各種公知の方法を採用できる。具体的には、溶媒や触媒の存在下または不存在下において、通常、150℃〜200℃程度の温度において、2〜8時間程度、反応生成水を除去しながら、(a1)成分と前記モル範囲の(a2)成分を脱水縮合反応させればよい。
【0029】
なお、前記溶媒としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、芳香族炭化水素類〔ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等〕、ピリジン類〔N−メチル−2−ピロリドン等〕などが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらの中でも、反応生成水とともに共沸しやすいもの(トルエン等)が好ましい。また、該溶媒の使用量は、反応系の固形分濃度が通常50〜100重量%程度となる範囲であればよい。
【0030】
また、前記触媒としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、酸触媒〔アルキルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、硫酸、亜リン酸等〕、塩基性触媒〔ピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等〕などが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、該触媒の使用量は、(a1)成分と(a2)成分の合計重量に対して、通常3重量%以下程度となる範囲であればよい。
【0031】
前記付加反応は特に限定されず、各種公知の方法を採用できる。具体的には、通常は水の存在下において、通常、50〜100℃程度において、2〜6時間程度、前記(A’)成分と前記(a3)成分とを反応させればよい。
【0032】
こうして得られる(A)成分は、分子中に第3級アミド基を有することを特徴とする。なお、第3級アミド基の含有量は、(該(A)成分が有する第3級アミド基の個数)/(前記(a1)成分が有する第2級アミノ基の個数)の値が0.1〜0.95程度、好ましくは0.2〜0.7となる範囲である。当該数値範囲内であることにより、前記嵩高効果が特に良好となる。
【0033】
なお、該第3級アミド基とは、(a1)成分の第2級アミノ基と(a2)成分のカルボキシル基とから形成されるN,N−置換アミド基またはN,N’−置換アミド基をいう。例えば、(a1)成分が前記一般式(I)で表されるポリアルキレンポリアミンである場合には、前記N,N−置換アミド基はRN−CO−Rと表現できる(なお、該構造式中、Rは当該ポリアルキレンポリアミンのアルキレン基(−(CH−)に、また、Rは前記(a2)成分の炭化水素残基に、それぞれ由来する。)。また、(a1)成分が前記一般式(II)で表されるN,N’−ジアルキルアルキレンジアミンである場合には、前記N,N’−置換アミド基はRN−CO−Rと表現できる(該構造式中、RとRは、いずれか一方が当該N,N’−ジアルキルアルキレンジアミンのアルキレン基(―(CH―)に、また他方がそのアルキル基(R)にそれぞれ由来する。また、Rは前記(a2)成分の炭化水素残基に由来する。)
【0034】
当該(A)成分は、そのままでも嵩高剤(1)として用いうるが、紙料(3)が水系であることを考慮すると、これを水および乳化剤(界面活性剤)、ならびに必要に応じて保護コロイドの存在下で乳化または水分散させることにより、エマルジョンとして用いるのが好ましい。
【0035】
該乳化剤としては、各種公知の非反応性乳化剤ないし反応性乳化剤を特に制限なく用いることができる。なお、該乳化剤の使用量は、前記(A)成分(固形分)に対して通常1〜10重量%程度の範囲とするのがよい。
【0036】
該非反応性乳化剤としては、具体的には、例えば、カチオン性乳化剤〔テトラアルキルアンモニウムクロライド、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、トリアルキルアンモニウムクロライド、テトラアンモニウムクロライドトリアルキルベンジルアンモニウムクロライドオキシエチレンアルキルアミンの酢酸塩または塩酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアミンの酢酸塩または塩酸塩等〕、ノニオン性乳化剤〔ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー等〕、アニオン性乳化剤〔ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルリン酸カリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム等〕などが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
また、該反応性乳化剤としては、分子中に炭素−炭素二重結合〔(メタ)アリル基、1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ビニル基、イソプロペニル基、(メタ)アクリロイル基等〕、親水基および疎水基を有する乳化剤を用いうる。具体的には、例えば、該炭素−炭素二重結合を分子中に少なくとも一つ有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル類やそのスルホコハク酸エステル塩類、硫酸エステル塩類;該炭素−炭素二重結合を分子中に少なくとも一つ有するポリオキシアルキレンフェニルエーテル類やそのスルホコハク酸エステル塩類、硫酸エステル塩類;該炭素−炭素二重結合を分子中に少なくとも一つ有するポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類やそのスルホコハク酸エステル塩類、硫酸エステル塩類;該炭素−炭素二重結合を分子中に少なくとも一つ有するポリオキシアルキレンアラルキルフェニルエーテル類やそのスルホコハク酸エステル塩類、硫酸エステル塩類;該炭素−炭素二重結合を分子中に少なくとも一つ有するポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルの脂肪族や、該炭素−炭素二重結合を分子中に少なくとも一つ有する芳香族カルボン酸塩類;ロジングリシジルエステルアクリレートの酸無水物変性物(特開平4−256429号参照);酸性リン酸(メタ)アクリル酸エステル系乳化剤;その他公知の反応性乳化剤(特開昭63−23725号公報、特開昭63−240931号公報、特開昭62−104802号公報、特開平4−50204号公報、特開平4−53802号公報等参照)が挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記「オキシアルキレン」には、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシエチレン・オキシプロピレンなどが含まれる。
【0038】
前記保護コロイドとしては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、スチレン−マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩、イソブチレン−マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩、p−スルホン酸スチレン重合体のアルカリ金属塩、スルホン酸変性アミノ樹脂のアルカリ金属塩、ポリビニルアルコール等の酢酸ビニル重合体のケン化物が挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、該保護コロイドの使用量は特に制限されないが、前記(A)成分(固形分)に対して、通常1〜10重量%程度の範囲とするのがよい。
【0039】
乳化方法としては、各種公知の乳化方法を特に制限なく利用できる。具体的には、例えば、前記(A)成分と水を強制的に乳化させる機械的乳化法、前記(A)成分の溶融物に水を徐々に加えてゆき油相と水相を反転させる反転乳化法、前記(A)成分と水を高圧下で乳化する高圧乳化法などを採用することができる。なお、該機械的乳化法に用いる乳化機は特に限定されず、例えば、ホモミキサーや高圧ホモジナイザー(マントン−ガウリン社製)などを用いうる。
【0040】
こうして得られたエマルジョンの物性は特に限定されないが、作業性等を考慮して固形分濃度が通常0.1〜50重量%程度であり、また前記(A)成分のパルプへの定着等を考慮してゼータ電位が通常+10〜+60mV程度であり、また前記(A)成分の紙料(3)への分散性等を考慮して、粒子径が通常0.2〜10μm程度であるのが好ましい。また、pHは通常4〜7程度であり、外観は通常、白色ないし黄白色である。
【0041】
なお、当該エマルジョンには、pH調整剤などの添加剤を必要に応じて含有させることができる。該pH調整剤としては、例えば、アルカリ金属化合物〔水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等〕、鉱酸〔リン酸、硫酸、塩酸等〕、有機酸〔蟻酸、酢酸等〕アンモニアが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
本発明では、紙力増強剤(2)として、〔紙力増強剤(2)を含有する紙料(3)のカナダ標準ろ水度(ml)〕と〔紙力増強剤(2)を含有しない紙料(3)のカナダ標準ろ水度(ml)〕との差として50ml以下の値を与えるものを用いる点に特徴がある。なお、当該カナダ標準ろ水度(以下、フリーネス値という)とは、JIS P 8121に規定される、パルプの水切れの程度(ml)を表す指標である。また、前記差(以下、フリーネス差という)とは、当該紙力増強剤(2)によるパルプの凝集程度を表す指標である。
【0043】
該紙力増強剤(2)により本発明の効果が得られる理由は定かではないが、おそらく、該フリーネス差が50ml以下であることにより当該紙力増強剤(2)のパルプへの定着率が向上し、且つ、嵩高紙における地合乱れが抑制されるためではないかと考えられる。
【0044】
当該「紙力増強剤(2)を含有する紙料(3)」(以下、試験紙料と略す)は、後述する紙料(3)に紙力増強剤(2)を含めたものと同一であってよい。また、当該「紙力増強剤(2)を含有しない紙料(3)」(以下、ブランク紙料と略す)は、後述する紙料(3)と同一であってよい。(換言すれば、紙力増強剤(2)を含まない以外は前記試験紙料と同一であってよい。)
【0045】
なお、フリーネス値の測定の際、該試験紙料と該ブランク紙料のパルプ種は問わないが、両紙料間で同一とする必要がある。また、両紙料におけるパルプの叩解度は、いずれにおいてもフリーネス値が通常200〜500ml程度の範囲とする必要がある。また、該試験紙料と該ブランク紙料は、嵩向上剤(1)を通常0.01〜5重量%程度となる範囲で含んでいてもよい。
【0046】
また当該紙力増強剤(2)としては、特に、固形分濃度1.0重量%の溶液状態における濁度単位(NTU)が通常500未満であるもの、特に、50〜400程度であるものが好ましい。ここに、濁度単位(NTU)とは、当該紙力増強剤(2)中の両性ポリアクリルアミド(B)(以下、(B)成分という)が所謂ポリイオンコンプレックスをどの程度形成しているかを示す指標であり、これが500を超えると、当該両性ポリアクリルアミド(B)のパルプを凝集させる力が強くなりすぎ、目的とする嵩高紙が得難くなる傾向にある。
【0047】
なお、当該濁度単位(NTU)は、具体的には、ANALITE濁度計「NEP-160 Portable
Turbidity Meter」(MacVan社製)を用い、900nmの赤外光における180度の散乱光を測定することにより得られる、標準物質(ホルマジン標準液(400NTU)、和光純薬工業(株)製)に対する相対的な値である。
【0048】
前記(B)成分としては、各種公知のものから、前記フリーネス差や好ましくは前記濁度単位(NTU)を与えるものを適宜選択して用いることができる。
【0049】
該(B)成分は、具体的には、(メタ)アクリルアミド(b1)(以下、(b1)成分という)、カチオン性(メタ)アクリル系モノマー(b2)(以下、(b2)成分という)、アニオン性(メタ)アクリル系モノマー(b3)(以下、(b3)成分という)、N−置換(メタ)アクリルアミド(b4)(以下、(b4)成分という)、(メタ)アリル基含有ビニルモノマー(b5)(以下、(b5)成分という)、および必要に応じて(b1)〜(b5)以外のビニルモノマー(b6)(以下、(b6)成分という)を共重合させてなるポリマーを含む組成物である。(なお、以下、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」または「メタクリル」の意味である。)
【0050】
前記(b1)成分としては、アクリルアミドやメタクリルアミドが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
前記(b2)成分としては、分子内に(メタ)アクリロイル基とカチオン性官能基を少なくとも1つずつ有する化合物であれば、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、第3級アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマー〔N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等〕、当該第3級アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーの塩〔塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等〕、該第3級アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーと四級化剤(メチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリン等)が反応してなる、第4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリル系モノマーなどが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
前記(b3)成分としては、分子内に(メタ)アクリロイル基とアニオン性官能基を少なくとも1つずつ有する化合物であれば、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、α、β−不飽和モノカルボン酸類〔アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等〕、α、β−不飽和ジカルボン酸〔マレイン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等〕、α、β−不飽和スルホン酸〔スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等〕、これらの塩類〔ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等〕などが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
前記(b4)成分としては、前記(b2)成分以外のN−置換(メタ)アクリルアミドであれば、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(ネタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
前記(b5)成分としては、分子内に(メタ)アリル基を1つ有する化合物であれば、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、(メタ)アリルスルホン酸ナトリウムおよびその中和塩、アリルアルコール、アリルアミンが等が挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、当該中和塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)や、アンモニウム塩等が挙げられる。(b5)成分の中でも、両性ポリアクリルアミド(B)が高分子量化し、前記紙力向上効果が得られやすいことから、(メタ)アリルスルホン酸ナトリウムおよびその中和塩が、特にそれ自体の安定性をも考慮してメタリルスルホン酸ナトリウムおよびその中和塩が好ましい。
【0055】
なお、本発明では、必要に応じて、前記(b1)〜(b5)以外のビニルモノマー(以下、(b6)成分という)を用いることができる。(b6)成分の具体例としては、例えば、前記α、β−不飽和モノカルボン酸類のアルキルエステル類〔(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソステアリルアルコール等〕、多官能ビニルモノマー〔メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1、3、5−トリアクロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等〕などが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、該多官能ビニルモノマーを用いると、(B)成分が高分子量化することにより前記紙力効果が向上するため好ましい。
【0056】
前記(b1)成分〜(b6)成分の使用量は特に限定されないが、一般的には、(b1)成分が57〜99.78モル%程度(好ましくは63〜97.8モル%)の範囲、(b2)成分が0.1〜15モル%程度(好ましくは1〜15モル%)の範囲、(b3)成分が0.1〜15モル%程度(好ましくは1〜15モル%)の範囲、(b4)成分が0.01〜2モル%程度(好ましくは0.1〜1モル%)の範囲、(b5)成分が0.01〜10モル%程度(好ましくは0.1〜5モル%)の範囲、(b6)成分が1モル%未満の範囲とするのがよい。
【0057】
なお、(b2)成分と(b3)成分のいずれか或いは双方が0.1モル%未満の場合には、(B)成分がパルプに定着し難くなって、紙力効果が得難くなる傾向にあり、一方、両成分のいずれか或いは双方が15モル%を越える場合には、(B)成分中のアクリルアミド分が減少するため、やはり紙力効果が得難くなる傾向にある。また、(b4)成分が0.01モル%未満の場合には、(B)成分が高分子量化し難くなり、一方、2.0モル%を超える場合には、(B)成分を製造する際にゲル化が生ずる傾向にある。また、(b5)成分が0.01モル%未満の場合には、その連鎖移動効果が弱くなって、(B)成分に分岐構造が十分に導入されなくなる傾向にあり、一方、10モル%超える場合には、逆に連鎖移動効果が強くなりすぎて、(B)成分の高分子量化が困難になる傾向にある。
【0058】
(B)成分の製造方法は特に限定されず、各種公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、前記(b1)成分〜(b5)成分(必要に応じてさらに(b6)成分)を反応容器中に滴下しながら重合反応させる方法や、各成分を反応容器に一括で仕込んで重合反応させる方法が挙げられる。なお、各重合方法は、各種公知のラジカル重合開始剤および水の存在下、および必要に応じて連鎖移動剤の存在下において、通常20〜140℃程度、2〜12時間程度行えばよい。
【0059】
前記重合開始剤としては、各種公知のものを特に限定なく使用することができる。具体的には、例えば、有機過酸化物〔ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等〕、無機過酸化物〔過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等〕、アゾ系化合物〔2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2、2’−アゾビスイソブチレイト等〕などが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、該重合開始剤の使用量は、通常、前記(b1)成分〜(b6)成分の総重量に対して0.01〜5重量%程度の範囲とすればよい。
【0060】
前記連鎖移動剤は、(B)成分の分子量や粘度を調整することを目的として必要に応じて用いることができる。具体例としては、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系連鎖移動剤が挙げられる。また、該連鎖移動剤の使用量は、通常、前記(b1)成分〜(b6)成分の総重量に対して0〜5重量%程度の範囲とすればよい。なお、該連鎖移動剤は溶媒としても作用する。
【0061】
なお、本発明では、(B)成分として、上記方法で得られた(B)成分を各種公知の方法でホフマン分解ないしマンニッヒ変性したもの(以下、(B’)成分という)を用いることもできる。
【0062】
前記ホフマン分解による(B’)成分の調製法は特に限定されず、各種公知の方法を採用すればよい。具体的には、例えば、前記(B)成分の水溶液に次亜ハロゲン酸塩とアルカリ触媒とを添加することにより、アルカリ性領域においてアクリルアミド系ポリマーと次亜ハロゲン酸とを反応させた後に、酸を添加して反応系を通常pH3.5〜5.5程度に調整すればよい。当該(B’)成分におけるアクリルアミド系ポリマーは、一般的には、カチオン性単量体単位を通常5〜50モル%程度、アクリルアミド単位を通常60〜95モル%程度含有したものであり、また重量平均分子量が通常5〜300万程度であるのが好ましい。
【0063】
また、本発明では、当該(B’)成分のほかにも、次に例示するホフマン分解物を用いることができる。具体的には、塩化コリンの存在下にポリアクリルアミド系ポリマーをホフマン分解して調製したカチオン変性物(特開昭53-109594号)、ホフマン分解反応において、水酸基を有する第3級アミンと、塩化ベンジルあるいはその誘導体との4級か反応物を添加して調製したカチオン変性物(特公昭58-8682号)、ホフマン分解反応において安定剤として有機多価アミンを添加して調製したカチオン変性物(特公昭60-17322号)、またホフマン分解反応において安定剤として特定のカチオン性化合物を添加して調製したカチオン変性物(特公昭62-45884号)等が挙げられる。
【0064】
前記マンニッヒ反応による(B’)成分の調製法は特に限定されず、各種公知の方法を採用すればよい。具体的には、例えば、前記(B)成分の水溶液に、ホルマリン及び第2級アミン(ジメチルアミン等)を添加し、通常、40〜60℃程度、1〜5時間程度反応させればよい。なお、当該(B’)成分におけるアクリルアミド系ポリマーは、一般的には、カチオン性単量体単位を通常10〜60モル%程度、アクリルアミド単位を通常40〜90モル%程度含有するものである。
【0065】
(B)成分(または(B’)成分)の物性は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が通常100万以上、具体的には、100万〜1000万であるのが好ましい。重量平均分子量が100万以上であることにより、十分な紙力効果が得やすくなる傾向にある。これはおそらく、当該紙力増強剤(2)のパルプへの定着率が特に向上し、また、嵩高紙の地合乱れが抑制されるためではないかと考えられる。
【0066】
なお、該重量平均分子量は、GPC−LALLS法やGPC−RALLS法によるポリエチレンオキシド換算値をいう。また、測定条件はいずれの方法においても、0.5mol/l酢酸緩衝液(0.5mol/l酢酸+0.5mol/l酢酸ナトリウム水溶液、pH約4.2)を溶媒(溶離液)として、ポリマー濃度が0.025%、溶液温度が40℃、光散乱角が5°あるいは90°である。
【0067】
また、(B)成分は、粘度が通常、2万mPa・sec/25℃以下、具体的には10〜5000mPa・sec/25℃程度であるのが好ましい。粘度を2万mPa・sec/25℃以下とすることにより、得られる嵩高紙の紙力効果や地合いが良好になる傾向にある。なお、該粘度は、B型粘度計を用い、固形分濃度5%、温度25℃で測定した値をいう。
【0068】
本発明で用いられる抄紙を行う際に用いる紙料(3)とは、具体的には、パルプ、水、および必要に応じて各種添加剤(定着剤、填料、前記pH調整剤等)を含むパルプスラリーをいう。但し、ここでいう紙料(3)は、嵩高剤(1)と紙力増強剤(2)をいずれも含まない。
【0069】
前記パルプとしては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、砕木パルプ(BKP)、加圧砕木パルプ(P−BKP)、広葉樹さらしパルプ(L−BKP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、セミケミカルパルプ(SCP)、化学パルプ(AP,KP)、脱墨パルプ(DIP)から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、当該パルプの叩解度は特に限定されないが、通常は、JIS P 8121で測定されるカナダ標準ろ水度(以下、フリーネス値ということがある)が通常200〜500程度の範囲となるものが用いられる。
【0070】
また、紙料(3)における該パルプの含有量は特に限定されないが、嵩高剤(1)および紙力増強剤(2)の分散性を考慮して、通常0.1〜4重量%程度、好ましくは0.3〜3.5重量%の範囲とするのがよい。
【0071】
前記定着剤としては、各種公知のアルミニウム化合物を用いることができる。具体的には、例えば、ポリ塩化アルミニウム、アルミナゾル、ポリ硫酸アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ミョウバンが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、紙料(3)における当該定着剤の含有量は特に限定されないが、パルプに対して、通常0〜10重量%の範囲とすればよい。
【0072】
前記填料としては、例えば、クレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタンが挙げられ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、紙料(3)における当該填料の含有量は特に限定されないが、パルプに対して通常、0〜100重量%程度の範囲とすればよい。
【0073】
その他、本発明では、前記添加剤のほかにも、サイズ剤、デンプン、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、歩留向上剤、消泡剤、顔料、染料等の添加剤を、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
なお、該紙料(3)の水温は特に限定されず、通常10〜60℃程度である。また、そのpHも特に限定されず、通常4〜9程度である。
【0075】
嵩高剤(1)と紙力増強剤(2)を紙料(3)に添加する際、その添加順序は特に限定されないが、本発明の効果を良好なものとするためには、嵩高剤(1)を紙料(3)に添加した後に、紙力増強剤(2)を更に添加してから、抄紙を行うのが好ましい。なお、両者の添加は、通常、強い攪拌下に行う。
【0076】
また、抄紙系における嵩高剤(1)と紙力増強剤(2)の各使用量は特に限定されないが、前記嵩高効果と紙力効果を考慮して、通常、嵩高剤(1)は0.01〜5重量%程度(好ましくは0.01〜2重量%)、紙力増強剤(2)は0.01〜2重量%程度(好ましくは0.05〜1重量%)の範囲とするのがよい。
【0077】
また、紙の製造ラインにおいて、嵩高剤(1)と紙力増強剤(2)を紙料(3)に添加する地点は特に限定されず、例えば、パルプ調製工程におけるミキシングチェスト、マシンチェスト、原料移送ポンプ等のいずれの地点であってもよい。
【0078】
また、抄紙機については、インレット、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、表面塗布装置、キャレンダーパート等の、形式や形態は特に限定されない。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
製造例1
(嵩高剤の調製)
攪拌機、脱水管、冷却管、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器にステアリン酸1095.2gを仕込んで加熱溶融した後に、トリエチレンテトラミン(M=2、N=2)166.6gを加えて窒素雰囲気下に反応系を180℃まで昇温した。(なお、トリエチレンテトラミン1モルに対し、ステアリン酸は(M+0.69N)モルである。)次いで、反応生成水を除去しながら反応系を180℃〜200℃に保持し、反応生成水の発生が認められなくなったことを確認してから加熱を停止して、反応系を室温まで冷却することにより、第3級アミド化合物を得た。
【0081】
次いで、第3級アミド化合物100重量部を採取して同様の反応容器に仕込み、さらに20重量部のイソプロピルアルコールを加えて、反応系を80℃〜90℃に保持した。次いで、80℃のイオン交換水1247gを加え、反応系を激しく攪拌することにより、懸濁状の溶液を調製した。次いで、エピクロロヒドリン52.7gを加え、反応系を80℃〜85℃で約4時間保持することにより、脂肪酸変性アミド樹脂を得た。なお、当該脂肪酸変性アミド樹脂の、ASTM D 2074に準拠して測定した第2級アミン価は約25mgKOH/g、また第3級アミン価は約77mgKOH/gであった。
【0082】
次いで、同じ反応系にノニオン性界面活性剤(商品名:エパン720、第一工業製薬(株)製)24.0gを加えて良く攪拌し、得られた溶液を高圧乳化機(model 15MR、APV GAULIN社製)を用いてさらに乳化することにより、前記脂肪酸変性アミド樹脂のエマルジョンを得た。
【0083】
なお、当該エマルジョンの粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(装置名:SALD2000、島津製作所(株)製)を用いた測定した測定値として、約1.8μmであった。当該エマルジョンは、嵩高剤(1−1)として用いる。
【0084】
製造例2(紙力増強剤の調製)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置にイオン交換水350部を仕込んだ。次いで、一の滴下ロートには、pHを3に調整したモノマー溶液(アクリルアミド179部、62.5%硫酸11部、80%のアクリル酸水溶液12.8部、メタアリルスルホン酸ナトリウム2.3部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト22.4部、ジメチルアクリルアミド2.8部およびイオン交換水340部)を、また他の滴下ロートには、重合開始剤溶液(過硫酸アンモニウム0.3部、イオン交換水100部)を仕込んだ。次いで、窒素ガス導入管を通じて反応系内の酸素を除去した後、反応系を90℃まで加熱し、前記各滴下ロートからモノマー溶液および重合開始剤溶液をそれぞれ約3時間かけて、反応系に滴下した。滴下終了後、前記他の滴下ロートから更に重合開始剤溶液(過硫酸アンモニウム0.45部、イオン交換水10部)を仕込み、反応系を1時間保温することにより重合反応を完結させた。次いで、イオン交換水80部を加えることにより、固形分濃度が20.2重量%、粘度が6000mPa・s重量平均分子量が2,500,000の両性ポリアクリルアミド(以下、PAM−1という)の水溶液を得た。当該水溶液は、紙力増強剤(2−1)として用いる。また、PAM−1の組成とその使用割合、物性を表1に示す。なお、PAM−1の重量平均分子量は、以下の条件で求めた(以下、同様にして求める)。
【0085】
GPC本体:東ソー(株)製
カラム:東ソー(株)製ガードカラムPWXL1本およびGMPWXL2本(温度40℃)
溶離液:0.5mol/l酢酸緩衝液(0.5mol/l酢酸(和光純薬工業(株)製)+0.5mol/l酢酸ナトリウム(キシタ゛化学(株)製)水溶液、pH約4.2)
流速:0.8ml/分
検出器:ビスコテック社製TDA MODEL301(濃度検出器および90°光散乱検出器および粘度検出器(温度40℃))(GC−RALLS法)
【0086】
製造例3〜4(紙力増強剤の調製)
製造例2において、両性ポリアクリルアミドの組成とその使用割合を表1のように変えたほかは同様にして、PAM−2およびPAM−3の各水溶液を得た。それぞれ紙力増強剤(2−2)、紙力増強剤(2−3)として用いる。また、PAM−1とPAM−3の各物性を表1に示す。
【0087】
製造例5(紙力増強剤の調製)
製造例2と同様の反応装置に、アクリルアミド135.2部、62.5%硫酸4.0部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト8.1部、60%ジメチルアミノエチルメタクリレ−トの4級化物水溶液24.4部、イタコン酸6.7部、メタアリルスルホン酸ナトリウム0.8部、メチレンビスアクリルアミド0.06部及びイオン交換水660部を仕込み、窒素ガス導入管を通じて反応系の酸素を除去した。次いで、反応系を55℃に昇温して、攪拌下に重合開始剤溶液(過硫酸アンモニウム0.23部、イオン交換水10部)を加えた。次いで、反応系を90℃まで昇温した後30分保温し、更に重合開始剤溶液(過硫酸アンモニウム0.34部、イオン交換水10部)を加えて1時間保温することにより重合反応を完結させた。次いで、イオン交換水260部を加えることにより、両性ポリアクリルアミド(以下、PAM−4という)の水溶液を得た。当該水溶液は、紙力増強剤(2−4)として用いる。また、PAM−4の組成とその使用割合、物性を表1に示す。
【0088】
製造例6(紙力増強剤の調製)
製造例2と同様の反応装置に、アクリルアミド75.1部、62.5%硫酸4.5部、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト9.1部、イタコン酸1.9部、80%アクリル酸水溶液2.6部、トリアリルイソシアヌレート0.04部及びイオン交換水470部を仕込み、窒素ガス導入管を通じて反応系の酸素を除去した。次いで、反応系を55℃に昇温して、攪拌下に重合開始剤溶液(過硫酸アンモニウム0.12部、イオン交換水10部)を加えた。次いで、反応系を90℃まで昇温した後30分保温し、更に重合開始剤溶液(過硫酸アンモニウム0.18部、イオン交換水10部)を加えて1時間保温することにより重合反応を完結させた。次いで、イオン交換水530部を加えることにより、両性ポリアクリルアミド(以下、PAM−5という)の水溶液を得た。当該水溶液は、紙力増強剤(2−5)として用いる。また、PAM−5の組成とその使用割合、物性を表1に示す。
【0089】
(濁度単位(NTU)の測定)
製造例2で得た水溶液に水を加えて固形分濃度1.0重量%の溶液とし、これの濁度単位を、ANALITE濁度計「NEP-160 Portable Turbidity Meter」(MacVan社製)を用いて測定した。なお、測定値は、標準物質(ホルマジン標準液(400NTU)、和光純薬工業(株)製)に対する相対的な値である。
また、製造例3〜6で得た水溶液についても同様にして濁度単位を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1中、
AA:アクリル酸
SMAS:メタアリルスルホン酸ナトリウム
IA:イタコン酸
DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
DML:ジメチルアミノエチルメタクリレートのベンジルクロライド4級化物
AM:アクリルアミド
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
MBAA:メチレンビスアクリルアミド
TAIC:トリアリルイソシアヌレート
【0092】
(フリーネス値の測定)
フリーネス値の測定試験条件は、以下の通りである。
・試験器具:熊谷理機工業(株)販売「カナディアンフリーネステスター No.2580-A」
・試験回数:2回
・紙料水温:20.0±0.5℃
・紙料におけるパルプ濃度:約0.3%
・紙料におけるパルプの種類:上質古紙の再生パルプとナイアガラビーターで叩解したL−BKPを重量比で7:3の割合で含むパルプ。
・紙料におけるパルプの種類の叩解度:フリーネス値が420ml
・実測値の補正:実測値をJIS P 8121の補正表により補正し、補正値を前記試験回数で割った値を測定値とする。
【0093】
実施例1
前記パルプと水とを混合し、パルプ濃度が2%含の紙料を調製した。次いで、当該紙料に、嵩高剤(1−1)(対パルプ0.8重量%)、紙力増強剤(2−1)(対パルプ0.3重量%)、硫酸アルミニウム(対パルプ0.7重量%)、軽質炭酸カルシウム(対パルプ20重量%)を添加し、攪拌下に良く分散させて、試験試料1を調製した。次いで、当該試験紙料1についてフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0094】
次に、前記試験試料1から、80g/mの手抄き紙(シート)を作成できる量を採取し、これを1重量%となるまで水で希釈した。次いで、当該希釈液を丸型抄紙機(タッピ・スタンダード・シートマシン)にて抄紙し、湿潤シートを得た。そして、当該湿潤シートを自動プレス機(343kPa)で2分間脱水し、その後回転ドライヤー(105℃、1分間)で乾燥させ、紙(ア)を得た。
【0095】
実施例2
前記実施例1において、紙力増強剤(2−1)に換えて紙力増強剤(2−2)を用いたほかは同様にして試験紙料2を調製し、同様にフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0096】
実施例3
前記実施例1において、紙力増強剤(2−1)に換えて紙力増強剤(2−3)を用いたほかは同様にして試験紙料3を調製し、同様にフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0097】
比較例1
前記実施例1において、紙力増強剤(2−1)に換えて紙力増強剤(2−4)を用いたほかは同様にして試験紙料4を調製し、同様にフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0098】
比較例2
前記実施例1において、紙力増強剤(2−1)に換えて紙力増強剤(2−5)を用いたほかは同様にして試験紙料5を調製し、同様にフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0099】
比較例3
前記パルプと水とを混合し、パルプ濃度が2%含のパルプスラリーを調製した。次いで、当該パルプスラリーから、80g/mの手抄き紙(シート)を作成できる量を採取し、これに、紙力増強剤(2−1)(対パルプ0.3重量%)、硫酸アルミニウム(対パルプ0.7重量%)、軽質炭酸カルシウム(対パルプ20重量%)を添加し、攪拌下に良く分散させて試験試料4を調製した。次いで、当該試験紙料6についてフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0100】
比較例4
前記比較例3において、紙力増強剤(2−1)に換えて紙力増強剤(2−2)を用いたほかは同様にして試験紙料7を調製し、同様にフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0101】
比較例5
前記比較例3において、紙力増強剤(2−1)に換えて紙力増強剤(2−3)を用いたほかは同様にして試験紙料8を調製し、同様にフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0102】
比較例6
前記比較例3において、紙力増強剤(2−1)に換えて紙力増強剤(2−4)を用いたほかは同様にして試験紙料9を調製し、同様にフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0103】
比較例7
前記比較例3において、紙力増強剤(2−1)に換えて紙力増強剤(2−5)を用いたほかは同様にして試験紙料10を調製し、同様にフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0104】
比較例8
前記比較例3において、紙力増強剤(2−1)(対パルプ0.3重量%)に換えて嵩高剤(1−1)(対パルプ0.8重量%)を用いたほかは同様にしてブランク紙料1を調製し、同様にフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0105】
参照例
前記パルプと水とを混合し、パルプ濃度が2%含のパルプスラリーを調製した。次いで、当該パルプスラリーから、80g/mの手抄き紙(シート)を作成できる量を採取し、これに、硫酸アルミニウム(対パルプ0.7重量%)、軽質炭酸カルシウム(対パルプ20重量%)を添加し、攪拌下に良く分散させて紙料1を調製した。次いで、当該紙料1についてフリーネス値を測定した。結果を表2に示す。
【0106】
(フリーネス差の計算)
なお、表2における実施例1についてのフリーネス差は、〔実施例1における試験試料1のフリーネス値(397ml)〕と、〔比較例8におけるブランク紙料1のフリーネス値(376ml)〕の差として求めた値(21ml)である。
実施例2、3および比較例1、2のそれぞれについてのフリーネス差も同様にして求めた値である。
【0107】
また、表2における、比較例3についてのフリーネス差は、〔比較例3における試験紙料試験紙料6のフリーネス値(482ml)〕と、〔参照例における紙料1のフリーネス値(387ml)〕の差として求めた値(17ml)である。
比較例4〜7のそれぞれについてのフリーネス差も同様にして求めた値である。
【0108】
(嵩高紙の作成)
前記実施例1における試験試料1から、80g/mの手抄き紙(シート)を作成できる量を採取し、これを1重量%となるまで水で希釈した。次いで、当該希釈液を丸型抄紙機(タッピ・スタンダード・シートマシン)にて抄紙し、湿潤シートを得た。そして、当該湿潤シートを自動プレス機(343kPa)で2分間脱水し、その後回転ドライヤー(105℃、1分間)で乾燥させ、紙(ア)を得た。
【0109】
次いで、当該紙(ア)を温度23℃湿度50%の恒湿室で24時間調湿し、試験用シートとした。その後、以下の項目に基づき、該試験用シートを評価した。
【0110】
(1)密度
JIS P 8118(紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法)に準じ、各試験用シートの密度を測定した。結果を表2に示す。
(2)内部強度
JAPAN TAPPI紙パルプ試験法No.54-93の試験方法に準じ、各試験用シートの内部強度を測定した。結果を表2に示す。
【0111】
前記実施例2、3および比較例1〜8、ならびに参照例についても、各紙料について前記同様にして、紙(イ)〜(シ)を作成した。そして、各紙を前記同様に試験用シートとし、前記同様に評価した。結果を表2に示す。
【0112】
【表2】

【0113】
まず、比較例8と参照例との対比により、嵩高剤(1−1)を用いることで紙が低密度化されている(嵩高効果が得られる)が、紙の内部強度も小さくなる(紙力効果が失われる)ことがわかる。
また、実施例1〜3と比較例8との対比により、嵩高剤(1−1)とともに、フリーネス差が50ml以下となる紙力増強剤((2−1)〜(2−3))とを用いることで、紙の密度をほぼ維持したまま、紙の内部強度を向上できることがわかる。
一方、実施例1〜3と比較例1〜2との対比より、嵩高剤(1−1)と、フリーネス差が50mlより大きくなる紙力増強剤((2−4)〜(2−5))とを併用した場合には、紙の密度を維持することができず、また、紙の内部強度も小さくなることがわかる。
なお、実施例1〜3および比較例1〜2と、比較例3〜7との対比により、嵩高剤(1−1)を用いない場合には紙を低密度化できないことがわかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2級アミノ基含有ポリアミン化合物(a1)、モノカルボン酸化合物(a2)およびグリシジル基含有化合物(a3)を反応成分とする第3級アミド基含有脂肪酸変性アミド樹脂(A)を含む嵩高剤(1)と、両性ポリアクリルアミド(B)を含む紙力増強剤(2)を、紙料(3)に添加した後で、抄紙を行う嵩高紙の製造方法において、
当該紙力増強剤(2)が、〔紙力増強剤(2)を含有する紙料(3)のカナダ標準ろ水度(ml)〕と〔紙力増強剤(2)を含有しない紙料(3)のカナダ標準ろ水度(ml)〕との差として50ml以下の値を与えるものであることを特徴とする、嵩高紙の製造方法。
【請求項2】
前記第3級アミド基含有脂肪酸変性アミド樹脂(A)の、(第3級アミド基含有脂肪酸変性アミド樹脂(A)が有する第3級アミド基の個数)/(第2級アミノ基含有ポリアミン化合物(a1)が有する第2級アミノ基の個数)の値が0.1〜0.95である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2級アミノ基含有ポリアミン化合物(a1)が、一般式(I):HN−[−(CHNH−]−H(式中、xは1〜3の整数を、またyは2〜6の整数を表す。)で表されるポリアルキレンポリアミンである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記紙力増強剤(2)の固形分濃度1.0重量%の溶液状態における濁度単位(NTU)が500未満である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記両性ポリアクリルアミド(B)が、(メタ)アクリルアミド(b1)、カチオン性ビニルモノマー(b2)、アニオン性ビニルモノマー(b3)、N−置換(メタ)アクリルアミド(b4)、(メタ)アリル基含有ビニルモノマー(b5)を共重合させてなるポリマーである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記両性ポリアクリルアミド(B)の重量平均分子量が100万以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記紙料(3)のパルプ濃度が0.1〜4重量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記嵩高剤(1)を紙料(3)に添加した後に、前記紙力増強剤(2)を更に添加して抄紙を行う、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの製造方法で得られる嵩高紙。

【公開番号】特開2008−179910(P2008−179910A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14030(P2007−14030)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】