説明

工作機械のクーラント処理装置

【課題】ドラムフィルタのVシール等のシールリングの交換作業のし易い構造の工作機械のクーラント処理装置を提供する。
【解決手段】工作機械の切屑排出装置から落とされる切屑とクーラントをダーティ槽3で受け、ダーティ槽内でスクレーパコンベアをモータによりできるだけ低速で周回駆動させ、切屑をかき上げて切屑投棄口から投棄する。スクレーパコンベアの内部空間にはドラムフィルタ21を設け、ドラムフィルタ21の一端部にVシール41が押圧される。Vシール41はダーティ槽の側壁19に着脱可能に取付けられる蓋部材29に設けられ、ドラムフィルタ21は仮留めブラケット49でダーティ槽の側壁19に仮留めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械から排出される切屑とクーラントを分離し、清浄なクーラントを得る改良型の工作機械のクーラント処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械のクーラント処理装置の従来の技術として、特許文献1に記載の濾過装置がある。これは、工作機械から排出される切屑及びクーラントを受けるダーティ槽と、高い位置にある切屑投棄口との間でスクレーパコンベアを周回させ、沈下している切屑をかき上げて切屑投棄口から投棄するとともに、スクレーパコンベアの内部空間に設けられたドラムフィルタによってクーラントを濾過し、濾過されたクーラントをクリーン槽に貯溜するものである。スクレーパコンベアを周回駆動するチェーンがドラムフィルタのスプロケットにも噛合し、共通のモータでスクレーパコンベアとドラムフィルタの両者をほぼ同一の周速、又はドラムフィルタよりスクレーパコンベアの方が大きな周速になるように駆動している。また、ダーティ槽の外周にクリーン槽が設けられ、ドラムフィルタの中心部両側から濾過されたクーラントが単純にクリーン槽へ流入し貯溜される構造である。更にドラムフィルタ両側とダーティ槽の側壁との間からドラムフィルタ内へダーティ液が侵入しないように設けられているVシールは消耗品であり、このVシールを交換するためには、ドラムフィルタを濾過装置本体から取りはずさないとならない構造である。
【0003】
もう1つの従来の技術として、特許文献2に記載の濾過装置がある。これは、工作機械から排出される切屑とクーラントをまずヒンジコンベアで受け、サイズの大きな切屑をヒンジコンベアで搬出、投棄する。ヒンジコンベアを通過したサイズの小さな切屑を、ヒンジコンベアの下方に設けたスクレーパコンベアで捕捉してかき上げるとともに、スクレーパコンベアの内部空間に設けられ、スクレーパコンベアと共通のモータでほぼ同一の周速で回転駆動されるドラムフィルタにより濾過し、浄化されたクーラントを得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2904334号公報
【特許文献2】特開2000−300914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダーティ槽内でスクレーパコンベアの周回速度が速いと、撹拌作用で切屑が沈下しにくかったり、周回中にかき上げた切屑がスクレーパから液中に浮遊してしまったりして切屑の回収効率が悪い。また、切屑と一緒にかき上げたクーラントは重力でダーティ槽に流下する前に投棄されることになり、クーラントの無駄が発生する。従って、スクレーパコンベアの周回速度は可能な限り遅い方が好ましい。一方、ドラムフィルタの周速は、逆洗されて透過率の大きくなったフィルタ部分で常に濾過される方が濾過効率が良いので、遅くできない。従って、スクレーパコンベアとドラムフィルタをほぼ同一の周速、又はドラムフィルタよりスクレーパコンベアの方が大きな周速になるように駆動するのは問題がある。
【0006】
ドラムフィルタで濾過されたクーラントといえども、フィルタ目より細かい微細な切粉を含んでおり、その切粉はクリーン槽にヘドロ状に沈澱、堆積し、定期的に清掃しなければならない。ダーティ槽の外周にクリーン槽を設けたタイプでは、クリーン槽全体に微細な切粉がヘドロ状に溜まり、清掃作業の面積が広く、清掃に時間がかかるという問題点がある。
また、上述のようにVシールは消耗品であり、定期的に交換する必要がある。交換時にはドラムフィルタを濾過装置本体からはずさないとならない構造をしているので、作業が煩雑となり、時間がかかる問題点がある。
また、上記特許文献2の従来技術は、スクレーパコンベアの上方にヒンジコンベアを配置し、単純に2階建にしたコンベアを開示したものである。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術に存する問題のうちの一つを解消して、ドラムフィルタのVシール等のシールリングの交換作業のし易い構造の工作機械のクーラント処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み、本発明は、工作機械から排出される切屑とクーラントを受けるダーティ槽と、切屑投棄口と前記ダーティ槽との間を周回して沈下している切屑をかき上げて投棄するスクレーパコンベアと、前記スクレーパコンベアの内部空間に設けられ前記クーラントを濾過する回転形のドラムフィルタと、前記ドラムフィルタで濾過されたクーラントを貯溜するクリーン槽とを有した工作機械のクーラント処理装置であって、前記ドラムフィルタは、そのドラムの少なくとも一端部にシールリングが押圧され、前記シールリングは前記ダーティ槽の側壁に着脱可能に取付けられる蓋部材に設けられ、前記ドラムを前記ダーティ槽の側壁に仮留めする仮留め手段を備えて構成される工作機械のクーラント処理装置を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
消耗品のシールリングを交換する場合、ドラムを仮留め手段によってダーティ槽の側壁に仮留めし、ダーティ槽側壁の蓋部材をはずして、蓋部材に設けられたシールリングを交換し、蓋部材を取付け、仮留め手段をはずす。ドラムを濾過装置本体からはずすことなく容易にシールリングを交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の工作機械のクーラント処理装置の側面断面図である。
【図2】濾過されたクーラントの流路を示した図1の平面図である。
【図3】本発明の工作機械のクーラント処理装置のドラムフィルタの断面図である。
【図4】ドラムフィルタのVシール交換のため蓋部材をはずしたときの断面図である。
【図5】本発明の工作機械のクーラント処理装置の別の実施形態で、ヒンジコンベアを更に設けた場合の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の工作機械のクーラント処理装置の側面断面図、図2は、濾過されたクーラントの流路を示した図1の平面図、図3は、本発明の工作機械のクーラント処理装置のドラムフィルタの断面図、図4は、ドラムフィルタのVシールを交換するため蓋部材をはずした断面図、図5は、本発明の工作機械のクーラント処理装置の別の実施形態で、ヒンジコンベアを更に設けた場合の側面断面図である。
【0012】
工作機械で発生した切屑とクーラントは、切屑排出装置1で運ばれ、ダーティ槽3に落される。ダーティ槽3内にはスクレーパコンベア5が矢印方向に周回しており、底に沈下した切屑をスクレーパ11でかき上げ、切屑投棄口7からバケット9に投棄する。複数枚のスクレーパ11の各々は、ダーティ槽3の幅いっぱいの長さを有し、無端チェーン機構13に取付けられ、モータ15で周回駆動される。ダーティ槽3の水位より上に持ち上げられたスクレーパ11からは、クーラントが流下し、斜面17を登りつめるまでの間にほとんどのクーラントが流下し、切屑のみが投棄されるのが望ましいが、周回速度が速いとスクレーパ11からクーラントが流下し切れず、切屑と一緒に投棄されてしまう。これを極力防止するためには、工作機械から排出される切屑量に見合った切屑投棄速度を確保した上で、できるだけ遅くスクレーパコンベア5を周回させ、又は間欠運転するのが良い。
【0013】
スクレーパコンベア5の内部空間には、ダーティタンク3の側壁19に回転可能に支持されてドラムフィルタ21が設けられている。そして、チェーン23によりモータ25と連結され、回転駆動される。ドラムフィルタ21は、円筒状のドラムの外周にシート状フィルタが巻き付けられたもので、ダーティ槽3の両側壁19の開口部27に蓋部材29によって固定されたパイプ状の軸31に軸受支持されている。ドラムフィルタ21の外周にはスプロケット(図示せず)が同心に取付けられ、回転駆動用のチェーン23が係合している。ドラムフィルタ21はダーティ槽3に漬っており、ドラムフィルタ21を透過した濾過されたクーラントは両側の蓋部材29の穴33から矢印のようにクリーン槽35又はクリーン管路37へ流出する。
【0014】
パイプ状の軸31内には濾過されたクーラントの一部が供給され、そのクーラントが複数の逆洗ノズル39によりドラムフィルタ21の内側から外側に向って噴出され、ドラムフィルタ21の目づまりが清掃される。ドラムフィルタ21の回転と逆洗によりドラムフィルタ21は常に目づまりのないフィルタで濾過が行われるようになっている。蓋部材29に設けられたVシール41はドラムフィルタ21の端面に押し付けられ、ダーティ槽3のクーラントがドラムフィルタ21内へ入り込まない様になっている。目づまりを早く清掃して効率の良い濾過を行うためには、ドラムフィルタ21の周速はスクレーパコンベア5の周回速度より速い方が良い。よって本発明ではスクレーパコンベア周回用の駆動モータ15とドラムフィルタ回転用の駆動モータ25とを別々に設け、スクレーパコンベア5の周回速度がドラムフィルタ21の周速より小さなそれぞれ適切な速度で独立して駆動できるようにしている。
【0015】
スクレーパコンベア5の周回速度は、ドラムフィルタ21の周速の1/2以下が好ましい。実際の速度の一例を述べると、従来スクレーパコンベアの周回速度2.6m/min、ドラムフィルタの周速1.9m/minであったのに対し、本発明ではスクレーパコンベア5の周回速度0.3m/min以下、ドラムフィルタ21の周速1.9m/minを採用している。尚、共通の駆動モータで動力伝達機構を介在させ、スクレーパコンベア5の周回速度がドラムフィルタ21の周速より小さくなるように構成しても良い。
また、スクレーパコンベア5をドラムフィルタ21の駆動モータ25とは別の駆動モータ15で駆動する場合は、スクレーパコンベア5を間欠運転させることができ、斜面17でのクーラントの流下を促進して、切屑と一緒に投棄されてしまうクーラント量を減らすことができる。
【0016】
ドラムフィルタ21で濾過されたクーラントはクリーン槽35へ直接的に、又はクリーン管路37を経てクリーン槽35へ導入され、ポンプ43により工作機械側へ循環供給される。ドラムフィルタ21からクリーン槽35へ直接的に流入するクーラント、及びクリーン管路37を経てクリーン槽35へ流入するクーラントの流速は比較的速いが、クリーン槽35の幅広部45に達すると流速が遅くなり、クーラント内の微細な切粉は沈澱、堆積する。クリーン管路37内の流速は比較的速く、切粉は沈澱しにくく、ほとんど清掃しなくて良い。幅広部45だけを定期的に清掃すれば良く、保守作業が楽になる。この幅広部45が切粉滞溜箇所である。
【0017】
図3及び図4により、Vシール41の交換方法を説明する。ダーティ槽3の上側の斜面47の蓋(図示せず)をあけ、仮留めブラケット49でドラムフィルタ21をダーティ槽3の側壁19に仮留めする。両側の蓋部材29のねじをはずし、蓋部材29を側壁19からとりはずす。Vシール41は蓋部材29に取付けられているので、新品のVシール41と交換し、逆の手順でドラムフィルタ21を取付け、仮留めブラケット49をはずす。ドラムフィルタ21を本体から取りはずすという大がかりな作業をしなくても、容易にVシール41を交換できる。
【0018】
図5に示すように、スクレーパコンベア5の上部にヒンジコンベア51を設けた本発明の別の実施形態について説明する。ヒンジコンベア51は、モータ53と無端チェーン機構55により矢印方向に周回するヒンジで連続的に接続されたコンベア上に切屑を載せ、上部の切屑投棄口7から切屑をバケット9内へ投棄するものである。工作機械の切屑排出装置1から落とされた切屑とクーラントのうち、大きな切屑を運搬、回収する。ヒンジコンベア51の隙間を通過した細かい切屑とクーラントはダーティ槽3に落下し、上述の実施形態と同様にスクレーパコンベア5とドラムフィルタ21によって切屑と清浄なクーラントに分離される。ヒンジコンベア51のモータ53は、スクレーパコンベア5やドラムフィルタ21のモータ15、25と独立して設けられており、ヒンジコンベア51は工作機械側から投入される切屑量に応じた速度で周回でき、またクーラントの無駄な投棄をしないよう間欠運転しても良い。ヒンジコンベア51の存在によってスクレーパコンベア5の周回速度を更に下げ、切屑回収効率を上げられる。スクレーパ11はダーティ槽3の幅いっぱいに設けられており、ダーティ槽3内は常にスクレーパ11でかき取られ、清掃する必要がない。
【0019】
以上説明したように本発明によれば、スクレーパコンベアの周回速度をドラムフィルタの周速より小さくなるように駆動するので、ドラムフィルタは比較的速く回転させて目づまりの少ない状態で濾過を行って濾過効率を上げ、スクレーパコンベアは極力遅く周回させたり間欠運転して切屑を沈下させ、確実にスクレーパでかき上げて切屑回収効率を上げられる。また切屑と一緒に投棄されるクーラントの無駄を少なくできる。
クリーン槽に切粉滞溜箇所を設けたので、ドラムフィルタで濾過できなかった微細な切粉がヘドロ状に沈澱、堆積する箇所を意図的に作り出せ、その箇所だけを定期的に清掃すれば済むようにできる。
【0020】
また、ドラムフィルタのシールリングをダーティ槽の蓋部材側に設け、かつドラムフィルタの仮留め手段を設けたので、シールリングの交換作業が容易に、短時間に行える。
更に、スクレーパコンベアとドラムフィルタの上部にヒンジコンベアを設けることにより、比較的大きな切屑はヒンジコンベアにより能率良く回収でき、スクレーパコンベアが担当する切屑は量が少なく、細かいものだけとなり、よりスクレーパコンベアの周回速度を遅くして、スクレーパコンベアの回収効率を向上できる。
【符号の説明】
【0021】
1 切屑排出装置
3 ダーティ槽
5 スクレーパコンベア
7 切屑投棄口
11 スクレーパ
13 無端チェーン機構
15 モータ
19 側壁
21 ドラムフィルタ
23 チェーン
25 モータ
29 蓋部材
35 クリーン槽
37 クリーン管路
41 Vシール
45 幅広部
49 仮留めブラケット
51 ヒンジコンベア
53 モータ
55 無端チェーン機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械から排出される切屑とクーラントを受けるダーティ槽と、切屑投棄口と前記ダーティ槽との間を周回して沈下している切屑をかき上げて投棄するスクレーパコンベアと、前記スクレーパコンベアの内部空間に設けられ前記クーラントを濾過する回転形のドラムフィルタと、前記ドラムフィルタで濾過されたクーラントを貯溜するクリーン槽とを有した工作機械のクーラント処理装置であって、
前記ドラムフィルタは、そのドラムの少なくとも一端部にシールリングが押圧され、前記シールリングは前記ダーティ槽の側壁に着脱可能に取付けられる蓋部材に設けられ、前記ドラムを前記ダーティ槽の側壁に仮留めする仮留め手段を備えて構成されることを特徴とした工作機械のクーラント処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−214294(P2009−214294A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138602(P2009−138602)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【分割の表示】特願2003−184794(P2003−184794)の分割
【原出願日】平成15年6月27日(2003.6.27)
【出願人】(000154990)株式会社牧野フライス製作所 (116)
【Fターム(参考)】