説明

工作機械のテーブルユニット

【課題】チルトテーブルのバランスを良好として水平軸周りの旋回半径や慣性モーメントを小さくする。
【解決手段】基台10上にA軸周りで旋回割出可能に保持されたトラニオン11と、そのトラニオン11上でA軸と直交するC軸周りで回転割出可能に設けられた回転テーブル12とを含むAC軸ユニット6において、トラニオン11内に設けられて回転テーブル12を回転駆動させるモータ22を、モータ軸の軸線PをA軸とC軸とで形成される平面上に位置するように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平軸周りで旋回割出可能に保持されたチルトテーブルと、そのチルトテーブル上で水平軸と直交する垂直軸周りで回転割出可能に保持された回転テーブルとを備えた工作機械のテーブルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば立形マシニングセンタにおいては、ベッド上に、テーブルユニットとしてのトラニオンユニット(AC軸ユニット)が設けられる。このトラニオンユニットは、ベッド上のY軸案内面によってY軸方向へ移動可能な基台上に、X軸と平行な水平軸であるA軸周りで旋回割出可能に保持されたチルトテーブルとしてのトラニオンと、そのトラニオン上でA軸と直交する垂直軸であるC軸周りで回転割出可能に保持された回転テーブルとを備えている(例えば特許文献1参照)。
そして、このようなテーブルユニットの駆動装置としては、特許文献2に開示のように、チルトテーブルの旋回駆動は基台に内設したモータ及びギヤを用いて行うと共に、回転テーブルの回転駆動は、チルトテーブル内で回転テーブルに同軸で設けたギヤ部に、一対の歯車を噛み合わせて、両歯車をベルト及びプーリ等を介してモータで同調回転させて行う構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−319951号公報
【特許文献2】特開平10−118867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2の駆動装置においては、チルトテーブル内のモータが、チルトテーブルが水平姿勢となる平面視で水平軸よりもY軸方向へシフトして設けられているため、チルトテーブルがアンバランスとなり、水平軸周りの旋回半径が大きくなって慣性モーメントも増加し、必要な駆動力が大きくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、チルトテーブルのバランスを良好として水平軸周りの旋回半径や慣性モーメントも小さくでき、小さい駆動力で駆動させることができる工作機械のテーブルユニットを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、チルトテーブル内に設けられて回転テーブルを回転駆動させるモータを、モータ軸の軸線を水平軸と垂直軸とで形成される平面上に位置させて配置したことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、チルトテーブルは、基台上で両持ちで支持され、モータは、垂直軸を中心とした点対称位置に一対配置されることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1の構成において、チルトテーブルは、基台上で片持ち支持されることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、回転テーブルとモータとの間に減速機を介在させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、チルトテーブルのバランスを良好として水平軸周りの旋回半径や慣性モーメントを小さくすることができる。よって、小さい駆動力で駆動させることができる。特に、チルトテーブルを両持ち支持としてモータを一対配置すれば、比較的小さなモータでも大きな駆動トルクを得ることができると共に、ギヤのバックラッシュも相殺することができ、コンパクトで精度の高いテーブルユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】立形マシニングセンタの斜視図である。
【図2】AC軸ユニットの説明図で、(A)が平面、(B)が正面、(C)がトラニオンの側面をそれぞれ示す。
【図3】変更例のAC軸ユニットの説明図で、(A)が平面、(B)が正面、(C)がトラニオンの側面をそれぞれ示す。
【図4】テーブルユニットの変更例を示す立形マシニングセンタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、工作機械の一例である5軸制御の立形マシニングセンタの斜視図で、立形マシニングセンタ1において、2はベッド、3は門形構造のクロスレールで、ベッド2の上面には、Y軸案内レール4,4が設けられる一方、クロスレール3の前面には、X軸案内レール5,5が設けられている。Y軸案内レール4,4上には、テーブルユニットとしてのトラニオン構造のAC軸ユニット6がY軸方向へ移動可能に設置されて、X軸案内レール5,5には、ラムサドル7がX軸方向へ移動可能に設置されている。ラムサドル7の前面には、下端に主軸9を備えた主軸頭8が、Z軸方向へ移動可能に設置されている。
【0010】
AC軸ユニット6は、ベッド2上を移動する正面視U字状の基台10に、幅広なU字状に形成されてなるチルトテーブルとしてのトラニオン11を備え、そのトラニオン11上に、加工対象となるワークが載置されるパレットを設置可能な回転テーブル12を備えている。トラニオン11は、図2に示すように、左右に突設した支軸14,14が基台10両端の支持部13,13内で軸受15によって軸支されて、X軸方向と平行な水平軸であるA軸を中心に旋回可能に支持されている。基台10内には、図示しないモータと減速機構とが設けられて、支軸14への回転伝達により、トラニオン11をA軸周りの所定の旋回位置へ旋回割出可能としている。
【0011】
また、トラニオン11内において、回転テーブル12は、上下の軸受16,17によって軸支されて、A軸方向と直交する垂直軸であるC軸を中心に360度回転可能に支持されている。軸受16,17間で回転テーブル12には、ギヤ部18が同軸で一体回転可能に設けられている。
さらに、ギヤ部18の左右両側には、上側の出力軸にギヤ20を、下側の入力軸にプーリ21を備えた一対の減速機19,19が、C軸を中心とする左右対称に配置されて、ギヤ20,20をギヤ部18に噛合させている。減速機19は、周知の遊星歯車減速機構を内設している。
【0012】
加えて、減速機19,19の左右両側には、下向きにしたモータ軸にプーリ23を備えた一対のモータ22,22が、C軸を中心とする左右対称に配置されて、プーリ23と、隣接する減速機19のプーリ21との間にベルト24をそれぞれ張設している。
このモータ22は、モータ軸の軸線PをC軸−A軸で形成される平面上に位置させて、C軸と平行に配置されている。
なお、このモータ22やトラニオン11を旋回割出するモータの駆動、AC軸ユニット6やラムサドル7、主軸頭8の移動等は、図示しないNC装置によって制御される。
【0013】
以上の如く構成された立形マシニングセンタ1においては、回転テーブル12上でパレットに固定されたワークを、トラニオン11のA軸周りでの旋回動作と、回転テーブル12のC軸周りでの回転動作と、AC軸ユニット6のY軸方向へのスライド動作とにより所望の加工位置へ位置決めし、工具を取り付けた主軸9をX軸及びZ軸方向へ移動させながら加工を行う。
このとき、トラニオン11内では、回転テーブル12を回転させるモータ22,22が、軸線PがC軸−A軸平面上に位置するように配置されているので、A軸周りの旋回半径が小さくなる。よって、トラニオン11を旋回割出する際の慣性モーメントが小さくなる。
【0014】
このように、上記形態の立形マシニングセンタ1のAC軸ユニット6によれば、トラニオン11内に設けられて回転テーブル12を回転駆動させるモータ22を、モータ軸の軸線PをA軸とC軸とで形成される平面上に位置させて配置したことで、トラニオン11のバランスを良好としてA軸周りの旋回半径や慣性モーメントを小さくすることができる。よって、小さい駆動力で駆動させることができる。
特にここでは、トラニオン11を、基台10上で両持ちで支持させて、モータ22を、C軸を中心とした点対称位置に一対配置しているので、比較的小さなモータ22でも大きな駆動トルクを得ることができると共に、ギヤ20のバックラッシュも相殺することができ、コンパクトで精度の高いAC軸ユニット6が得られる。
【0015】
なお、上記形態では、回転テーブルのギヤ部とモータとの間に減速機やベルト伝達機構を介在させているが、これに代えて、モータ軸に設けた歯車を直接回転テーブルのギヤ部に噛合させたり、モータ軸の歯車と回転テーブルのギヤ部との間に一又は複数の歯車を介在させたりすることも可能である。
【0016】
また、モータを、モータ軸の軸線がC軸と平行となる縦向きに配置しているが、これに限らず、A軸−C軸とで形成される平面上であれば、例えば図3に示すように、回転テーブル12のギヤ部18をベベルギヤとし、モータ25のモータ軸にベベルギヤ26を設けてギヤ部18に直接噛合させて、モータ25を、モータ軸の軸線PがA軸と平行となる横向きに配置してもよい。勿論この場合もギヤ部18とベベルギヤ26との間にベベルギヤを用いた減速機等を介在させることができる。さらに、当該平面上でA軸とC軸とに対してモータ軸の軸線Pが所定の角度(例えば45度)をなすように傾斜させてもよい。
【0017】
そして、上記形態では立形マシニングセンタのAC軸ユニットに本発明を適用しているが、チルトテーブルと回転テーブルとを含むテーブルユニットを備えた工作機械であれば、横形マシニングセンタ等でも本発明は採用可能である。
【0018】
例えば、図4に示す立形マシニングセンタ30のように、Y軸テーブル31上に、前方へ突出するL字状に片持ち支持されてY軸と平行な水平軸であるB軸周りで旋回割出可能なチルトテーブル33と、そのチルトテーブル33上に設けられ、B軸と直交する垂直軸であるC軸周りで回転割出可能な回転テーブル34とからなるテーブルユニット32を備えたタイプであっても本発明は適用できる。この場合は、チルトテーブル33内でB軸−C軸平面上にモータ軸の軸線Pを位置させたモータ36を一つ配置して、モータ軸に設けたギヤ37の回転を、減速機38やベルト伝達機構を介して回転テーブル34に設けたギヤ部35に回転伝達させればよい。勿論この場合も減速機38等をなくしてギヤ37を直接ギヤ部35に噛合させたりしてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1,30・・立形マシニングセンタ、2・・ベッド、3・・クロスレール、6・・AC軸ユニット、8・・主軸頭、9・・主軸、10・・基台、11・・トラニオン、12,34・・回転テーブル、13・・支持部、14・・支軸、15,16,17・・軸受、18,35・・ギヤ部、19,38・・減速機、20,37・・ギヤ、21,23・・プーリ、22,25,36・・モータ、32・・テーブルユニット、33・・チルトテーブル、P・・軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に水平軸周りで旋回割出可能に保持されたチルトテーブルと、そのチルトテーブル上で前記水平軸と直交する垂直軸周りで回転割出可能に設けられた回転テーブルと、を含む工作機械のテーブルユニットであって、
前記チルトテーブル内に設けられて前記回転テーブルを回転駆動させるモータを、モータ軸の軸線を前記水平軸と垂直軸とで形成される平面上に位置させて配置したことを特徴とする工作機械のテーブルユニット。
【請求項2】
前記チルトテーブルは、前記基台上で両持ちで支持され、前記モータは、前記垂直軸を中心とした点対称位置に一対配置されることを特徴とする請求項1に記載の工作機械のテーブルユニット。
【請求項3】
前記チルトテーブルは、前記基台上で片持ち支持されることを特徴とする請求項1に記載の工作機械のテーブルユニット。
【請求項4】
前記回転テーブルと前記モータとの間に減速機を介在させたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の工作機械のテーブルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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