説明

工作機械のワーク洗浄装置

【課題】構造が簡単で、安価に製造することができ、大きなワークであってもその隅々までも確実に洗浄するワーク洗浄装置を提供する。
【解決手段】工作機械のワーク洗浄装置1は、テーブルとワーク段取台とにワークを選択的に位置させるパレット交換手段を備えた工作機械を囲む筐体12の上部に取付部材14が設けられ、取付部材14に基端部を水平旋回可能に支持され、先端側を前記ワーク段取台の上方を越えて該ワーク段取台の外周側の位置に移動、固定可能とした支持アーム15と、支持アーム15の先端部に鉛直状に支持された透明カバー17と、ホース19によって洗浄流体供給源に接続されており、作業者が手動で操作する洗浄流体吐出ノズル18とを備え、透明カバー17には把手17bと円弧状の凹部17cが設けられた構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の加工部で加工されたワークをワーク段取台において洗浄するワーク洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械のワーク洗浄装置として、工作機械とこれに付設したワーク段取台とを筐体で囲み、該筐体のワーク洗浄側の開口部に内外の二重の扉を開閉自在に設けると共に、内側扉の側面中央部に設けた貫通穴に、洗浄流体吐出ノズルを貫通して保持させた可撓膜あるいはスライドカバーを取り付け、前記内側扉の外側から前記洗浄流体吐出ノズルを操作して、または前記内側扉に取り付けた一対の手袋に手を通して内側扉内に配置した洗浄流体吐出ノズルを操作して、工作機械のテーブルからパレット交換手段(ワーク受渡手段)によって前記ワーク段取台に移載された加工済みのワークに、洗浄液や高圧エアーを吹き付けることにより、前記ワークに付着している切屑等を飛散させて除去するようにしたもの、さらに、前記洗浄流体吐出ノズルの操作をノズル移動制御機構により自動的に行うようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−297160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の工作機械のワーク洗浄装置は、開口部を内側扉を閉じた密閉された前記筐体内でワークの洗浄を衛生的に、安全に行うことができるものの、筐体の内側扉部に洗浄流体吐出ノズルを取り付けた可撓膜やスライドカバー、ノズル移動制御機構を付設しなければならず、装置が複雑になって製作コストが高くなる。また、ワーク段取台までも筐体で囲んでいるので、ワークが大きくなると、それに対応した段取台に合わせて筐体自体も大きくなり、製作コストの上昇の問題は避けられないうえに、前記内側扉やノズル移動機構に取り付けた洗浄流体吐出ノズルでは、大きなワークを隅々まで洗浄することが困難である。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、構造が簡単で、安価に製造することができ、大きなワークであってもその隅々までも確実に洗浄することができる工作機械のワーク洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために、以下の構成としたことを特徴とする。
すなわち、請求項1に係る工作機械のワーク洗浄装置は、テーブルとワーク段取台とにワークを選択的に位置させるパレット交換手段を備えた工作機械に設けた取付部材に基端部を支持され、先端側を前記ワーク段取台の上方を越えて該ワーク段取台の外周側の位置に移動、固定可能とした支持アームと、該支持アームの先端部に鉛直状に支持された透明カバーと、ホースによって洗浄流体供給源に接続されており、作業者が手動で操作する洗浄流体吐出ノズルとを備えていることを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る工作機械のワーク洗浄装置は、請求項1に記載のワーク洗浄装置において、前記透明カバーには、該透明カバーを掴んで移動操作するための取っ手が設けられていることを特徴としている。
【0007】
請求項3に係る工作機械のワーク洗浄装置は、請求項1または2の記載のワーク洗浄装置において、前記透明カバーの両側には、上下方向の中央部付近に作業者の腕を副える円弧状の凹部が設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項4に係る工作機械のワーク洗浄装置は、請求項1〜3のいずれかに記載のワーク洗浄装置において、前記工作機械を囲む筐体の側板を前記ワーク段取り台側に突き出して、該ワーク段取り台の外周側を囲むように形成したスプラッシュガードが設けられ、該スプラッシュガードには、作業者が前記透明カバーを操作し得る開口部が設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項5に係る工作機械のワーク洗浄装置は、請求項4に記載のワーク洗浄装置において、前記スプラッシュガードの開口部には、該開口部を左右に開閉可能な一対の安全カバーが設けられ、該安全カバーには、安全カバーが閉められたことを検知して前記パレット交換手段の作動を許容するスイッチが設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項6に係る工作機械のワーク洗浄装置は、請求項5に記載のワーク洗浄装置において、前記各安全カバーは、前記パレット交換手段の上方における前記筐体に設けた取付部材に基端部が支持されて左右に旋回可能な一対の保持アームの先端部にそれぞれ取り付けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項7に係る工作機械のワーク洗浄装置は、請求項1〜6のいずれかに記載のワーク洗浄装置において、前記支持アームは、前記取付部材側の水平旋回アーム部と、該水平旋回アーム部の先端に伸縮回可能に連結され前記透明カバーを支持する伸縮アーム部とを備え、前記ワーク段取台の外周から離れた位置に設置された格納ボックスに前記透明カバーを移動して格納可能とされており、前記格納ボックスには、前記透明カバーが格納されたことを検知して前記パレット交換手段の作動を許容するスイッチが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以下の優れた効果を奏する。
すなわち、請求項1に係る工作機械のワーク洗浄装置によれば、作業者が前記透明カバーによって身体をワークから跳ね返る切屑や洗浄流体から守りながら、洗浄流体吐出ノズルから洗浄流体をワークに噴射して洗浄作業を行うことができるので、該ワークの洗浄作業を容易に、かつ安全、衛生的に行うことができる。また、支持アームに支持した透明カバーをワーク段取台の周囲に任意に移動、固定して洗浄作業を行うことができるので、大きなワークであってもその隅々までも確実に洗浄することができる。さらに、支持アームに懸垂支持させた透明カバーと手動操作の洗浄流体吐出ノズルを備えるものであるので、構造が簡単で、安価に製造することができ、工作機械に付設した既設のワーク段取台に対して簡単に追加設備することができる。
【0013】
請求項2に係る工作機械のワーク洗浄装置によれば、作業者が、把手を掴んで透明カバーを介して支持アームを移動させることにより、該透明カバーをワーク段取台の回りの任意の洗浄位置に容易に移動させることができると共に、前記把手を片手で掴んで透明カバーをしっかりと身体の正面で固定した状態で洗浄作業を的確に行うことができる。
【0014】
請求項3に係る工作機械のワーク洗浄装置によれば、作業者が幅広とした透明カバーを凹部に上腕を副えて身体の正面で透明カバーを抱えて支えるようにして洗浄作業を行うことができるので、洗浄流体と一緒に飛散する切屑等が作業者の身体に当たるのを一層良好に防止することができる。
【0015】
請求項4に係る工作機械のワーク洗浄装置によれば、スプラッシュガードによってワーク洗浄空間の外側にワークから跳ね返る切屑や洗浄流体が外部へ飛散して作業環境を悪化させることがないと共に、作業者が、スプラッシュガードの外側からスプラッシュガードの開口部を通して、透明カバーによって前記ワークから跳ね返る切屑や洗浄流体から身体を守りながら洗浄作業を行うことができるので、洗浄作業時における作業者の身体に対する安全、衛生上の保護を確実に行うことができる。
【0016】
請求項5に係る工作機械のワーク洗浄装置によれば、ワーク段取台でのワーク洗浄作業やワーク取付作業が終わっても、安全カバーが閉められるまでは、パレット交換手段の交換アームが旋回しないので、作業環境の安全を確保することができる。
【0017】
請求項6に係る工作機械のワーク洗浄装置によれば、スプラッシュガードに安全カバーを案内移動させるガイドレールを付設する必要がなく、スプラッシュガードの構成を簡単にすることができると共に、安全カバーを掴んで保持アームを旋回移動させることによって容易に該安全カバーを開閉させることができ。
【0018】
請求項7に係る工作機械のワーク洗浄装置によれば、透明カバーが格納ボックスに格納するまでは、パレット交換手段を作動させるスイッチが動作せず、前記パレット交換手段の交換アームが旋回することがないので、ワークWの洗浄作業が終了して透明カバーがワーク段取台付近に懸垂されていても、前記パレット交換手段によるパレットの交換時に透明カバーがパレット上のワークと干渉して破損するといった事故が発生するのを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置を添付図面を参照して説明する。
図1〜図3は本発明の第1の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1を示す。
このワーク洗浄装置1は、例えば、横型のマシニングセンタである工作機械2の前面側に設備されている。
前記工作機械2は、ベッド3と、該ベッド3の後部側に設けた一対のガイドレール3a,3aに沿ってX軸方向xに移動可能に設けたコラム4と、工具Tを取り付けた主軸を有し前記コラム4のガイドレールに沿ってY軸方向yに移動可能な主軸ヘッド5と、前記ベッド3の前部側に設けた一対のガイドレール3b,3bに沿ってZ軸方向zに移動可能なテーブル6、該テーブル6に旋回割出可能に設けられ、治具7を介してワークWを取り付けたパレット8を上面に載置した旋回テーブル9と、前記ベッド3の前面に設置されたワーク段取台10と、該ワーク段取台10と前記テーブル6(旋回テーブル9)とに、前記パレット8(治具7に取り付けたワークW)を選択的に位置させるパレット交換手段11とを備えている。
【0020】
前記ワーク段取台10は、段取台ベース10aと、該段取台ベース10aの上端に水平旋回、傾動可能に設けた段取テーブル10bと、前記段取台ベース10aの下部に段取台ベース10aを囲むように設けたオイルパン10c等を備えて構成されている。前記段取テーブル10bは前記パレット8を着脱可能に支持する支持手段が取り付けられている。
前記パレット交換手段11は、両端部に前記パレット8を支持する一対の把持部11a,11aを有する交換アーム11bを備え、駆動手段(図示せず)によって軸線Cの回りに180度だけ往復旋回すると共に所定高さ昇降するように、前記ベッド3の前端上部に支持されている。
【0021】
前記工作機械2とワーク段取台10には、それらを囲むようにして工作機械2側の筐体12aとワーク段取台10側の筐体12bとからなる筐体12が設けられている。工作機械2側の筐体12aは、前記ベッド3の前端部側の開口部12cを除いて他の部分を閉じるように形成され、また、前記ワーク段取台10側の筐体12bは、天井部が開放され、前面側(図1〜図3で左側)の中央上半部に開口部12dが設けられ、後面側(図1〜図3で右側)が前記筐体12aの開口部12cに連通する開放部とされたスプラッシュガードとして形成されて、工作機械2側の筐体12aの側板2eに接続されている。
【0022】
前記パレット交換手段11の交換アーム11bの上面には、該交換アーム11bの一対の把持部11a,11aの中間に位置し、かつ前記軸線Cを含む交換アーム11bに垂直な平面を有する合成樹脂製の遮蔽プレート13が固定されている。該遮蔽プレート13の上端部は、前記筐体12における工作機械2側の筐体12aとワーク段取台10側の筐体12bとの境界付近であって、前記軸線Cの位置近くに設けた取付部材14に、前記軸線C回りに旋回可能に支軸によって支持されており、遮蔽プレート13は前記交換アーム11bの軸線C回りの旋回に連動して旋回し、常時は、前記工作機械2側の筐体12の開口部12cを閉鎖するようになっている。
【0023】
そして、前記取付部材14には、支持アーム15がその基端部を介して支軸16によって左右に水平旋回、固定可能に支持されており、前記支持アーム15の先端側は、前記ワーク段取台10の上方を越えて該ワーク段取台10の外側に所定距離離れる位置まで水平状に延長されている。また、前記支持アーム15の先端には、透明カバー17が鉛直状に支持されている。前記透明カバー17は、透明の合成樹脂製の平板からなり、その下端部の両側には上下に長い一対の長穴が17a,17aがあけられ、該長穴17a,17aの外側の板部分は、透明カバー17を掴んで移動操作するための一対の把手17b,17bを構成している。さらに、前記透明カバー17の両側には、上下方向の中央部付近に作業者の上腕を副える円弧状の凹部17c,17cが設けられている。
また、前記ワーク段取台10側の筐体12bの内部には、作業者が手動で操作する洗浄流体吐出ノズル18が配置され、該洗浄流体吐出ノズル18はホース19によって洗浄流体供給源(図示せず)に接続されている。
前記筐体(スプラッシュガード)12bと、取付部材14と,支持アーム15と,透明カバー17と,洗浄流体吐出ノズル18と、ホース19等とによって前記ワーク洗浄装置1が構成されている。
【0024】
次に、前記構成のワーク洗浄装置1によって加工済みのワークWを洗浄する方法について説明する。
先ず、工作機械2の加工部でワークWの加工が終了すると、テーブル6がベッド3の前端のワーク交換位置まで移動される。その際、前記パレット交換手段11における交換アーム11bのベッド3側に向けられていた一方の把持部11aに、テーブル6(旋回テーブル9)上のパレット8が載せられる。そこで、前記駆動手段(図示せず)が作動されて、前記パレット交換手段11の交換アーム11bが上昇され、加工済みのワークWを載せた前記パレット8がテーブル6から把持部11aに受け取られる。そして、前記交換アーム11bが180度旋回されて、加工済みのワークWを載せたパレット8が前記ワーク段取台10の段取テーブル10bの上に位置されたときに、前記交換アーム11bが下降されて前記パレット8が段取テーブル10bに載置され、クランプ機構(図示せず)によって前記パレット8が段取テーブル10bに固定される。
なお、加工済みのワークWを載せたパレット8がワーク段取台10側に旋回移動される際には、予めワーク段取台10で段取りされて新たなワークWを取付けたパレット8が、交換アーム11bの他方の把持部11aに載せられて工作機械2側に旋回され、ワーク交換位置に待機されていた前記テーブル6に載置される。
【0025】
この後に、作業者は、図3に示すように、前記ワーク段取台10側の筐体12bにおける開口部12dの正面に位置して、洗浄流体供給源を作動させると共に、前記透明カバー17の把手17bを掴んで支持アーム15を旋回させて透明カバー17を自分の身体の正面に移動させる、そして、前記透明カバー17をその凹部17c,17cに上腕を副えることにより上半身の前面に位置させ、前記洗浄流体吐出ノズル18を手で持って操作し、洗浄流体吐出ノズル18から前記ワーク段取台10上の加工済みのワークWに向けて洗浄液や高圧エアーを噴射させることにより、前記加工済みのワークWに付着した切屑等を飛散、除去させる。
前記ワークWの洗浄作業中は、作業者は、前記ワーク段取台10の旋回傾動装置(図示せず)を適宜に作動させることにより、加工済みのワークWの姿勢を種々変化させると共に、前記洗浄流体吐出ノズル18の噴口の方向を自由に変化させながら、洗浄流体吐出ノズル18からの洗浄液等がワークWの略全体に噴射されるようにする。その場合、ワークWから跳ね返る洗浄流体や切屑がなるべく作業者側に向かないように、洗浄流体ノズル18の噴射方向を変えるとよい。
なお、前記飛散された切屑や洗浄液等は前記オイルパン10内に落下して適宜装置に回収される。洗浄を終えたワークWは前記ワーク段取台10から取り外した後、前記筐体12bの開口部12dから外部へ搬出することができる。
【0026】
前記第1の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1によれば、作業者が前記透明カバー17によって身体をワークWから跳ね返る切屑や洗浄流体から守りながら、洗浄流体吐出ノズル18から洗浄流体をワークWに噴射して洗浄作業を行うことができるので、該ワークWの洗浄作業を容易に、かつ安全、衛生的に行うことができる。また、前記支持アーム15に支持した透明カバー17をワーク段取台10の周囲に任意に移動、固定して洗浄作業を行うことができるので、大きなワークWであってもその隅々までも確実に洗浄することができる。さらに、前記支持アーム15に支持させた透明カバー17と手動操作の洗浄流体吐出ノズル18を備えるものであるので、構造が簡単で、安価に製造することができ、工作機械2に付設した既設のワーク段取台10に対して簡単に追加設備することができる。
【0027】
そして、工作機械のワーク洗浄装置1によれば、作業者が、把手17bを掴んで前記透明カバー17を介して前記支持アーム15を移動させることにより、透明カバー17をワーク段取台10の回りの任意の洗浄位置に容易に移動させることができると共に、前記把手17bを片手で掴んで透明カバー17をしっかりと身体の正面で固定した状態で洗浄作業を的確に行うことができる。また、作業者が幅広とした透明カバー17を凹部17c,17cに上腕を副えて身体の正面で透明カバー17を抱えて支えるようにして洗浄作業を行うことができるので、洗浄流体と一緒に飛散する切屑等が作業者の身体に当たるのを一層良好に防止することができる。また、ワーク段取台10側の筐体12bによってワーク洗浄空間Gの外側にワークWから跳ね返る切屑や洗浄流体が外部へ飛散して作業環境を悪化させることがないと共に、作業者が、前記筐体12bの外側から該筐体12bの開口部12dを通して、透明カバー17によって前記ワークWから跳ね返る切屑や洗浄流体から身体を守りながら洗浄作業を行うことができるので、洗浄作業時における作業者の身体に対する安全、衛生上の保護を確実に行うことができる。
【0028】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1Aについて図4を参照して説明する。
このワーク洗浄装置1Aは、第1の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1における筐体(スプラッシュガード)12bの開口部12dに、該開口部12dを左右に開閉可能な一対の安全カバー20,20を設け、該安全カバーの一方にスイッチ20aを、他方に該スイッチ20aを動作させる作動片20bを設けたものである。前記スイッチ20aは、前記パレット交換手段11の交換アーム11bを作動させる駆動手段(図示せず)の駆動回路(図示せず)に電気的に接続されており、前記安全カバー20,20が閉められたときに、作動片20bによって動作されて安全カバー20,20が閉められたことを検知する。そして、その検知信号により前記駆動回路が動作して、前記駆動手段を介して前記パレット交換手段11の交換アーム11bの旋回、昇降作動が許容されるようになっている。
その他の構成は第1の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1と同一であるので、同一の構成部分には同一の符号を付してそれらについての説明は省略する。
【0029】
前記各安全カバー20,20は、合成樹脂製、鋼板製等の平板状部材からなり、前記取付部材14の上面に基端部を支軸21,21で支持されて左右に水平旋回、固定可能に設けられた一対の保持アーム22,22の先端にそれぞれ鉛直に取り付けられている。そして、前記保持アーム22,22の先端は、前記安全カバー20,20が前記透明カバー17の旋回軌跡の外側に位置まで延長されている。また、前記安全カバー20,20には、その略中央部に透明窓20c,20cがそれぞれ設けられている。また、前記各安全カバー20,20の前面の下部には、互いの当接辺側の近くに棒状部材をコ字状に曲げて形成された把手20b,20bが取り付けられている。
なお、前記ワーク洗浄装置1では、前記支持アーム15が前記取付部材14の上面に支持されているが、このワーク洗浄装置1Aでは、前記支持アーム15が旋回時における前記保持アーム22,22との干渉を避けるために前記取付部材14の下面に支持されている。
【0030】
前記構成のワーク洗浄装置1Aにおいては、作業者は、前記安全カバー20,20で前記筐体12bの開口部12dを開いた状態として、前記ワーク洗浄装置1の場合と同様に、前記透明カバー17の凹部17c,17cに上腕を副えて前記洗浄流体吐出ノズル18(図4では図示を省略されている)を操作して、加工済みのワークWの洗浄作業を行う。
この実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1Aによれば、前記ワーク洗浄装置1による場合と同様な作用効果が得られる他に、前記ワーク段取台10でのワーク洗浄作業やワーク取付作業が終わっても、安全カバー20,20が閉められて筐体12bの開口部12dが閉鎖されるまでは、前記スイッチ20aは動作せず、パレット交換手段11の交換アーム11bが旋回しないので、作業環境の安全を確保することができる。
【0031】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1Bについて図5を参照して説明する。
このワーク洗浄装置1Bは、第1の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1における筐体12bが省略され、それに代わり、該筐体12bの設置部分に沿うようにして前記ワーク段取台10を囲む安全柵23が設けられ、該安全柵23の所定場所に前記透明カバー17を収納する扁平の矩形箱からなる格納ボックス24が設けられると共に、該格納ボックス24には、該格納ボックス24内に前記透明カバー17が格納されたときに、透明カバー17の下端によって動作されるスイッチ25が取り付けられて構成されている。前記スイッチ25は、前記スイッチ20aと同様に、前記パレット交換手段11の交換アーム11bを作動させる前記駆動手段の駆動回路に電気的に接続されており、前記透明カバー17が格納ボックス24に格納されたときに、それを検知したスイッチ25からの信号により前記駆動回路が動作して、前記駆動手段を介して前記パレット交換手段11の交換アーム11bの旋回、昇降作動が許容されるようになっている。
【0032】
また、前記支持アーム15は、前記筐体12aの前側の上面に設けた取付部材14に水平旋回、固定可能に支持された基部アーム15aと、該基部アーム15aの先端に垂直旋回、固定可能(伸縮可能)に連結された先端アーム部15bから構成され、先端アーム15bの先端にボールジョイント15c等によって透明カバー17が鉛直に支持されている。前記基端アーム15aと先端アーム15bとの連結部は、垂直旋回動に対して適宜の摩擦抵抗が付加されており、僅かな力で垂直旋回が可能で、垂直旋回させた後は透明カバー17の自重等で自由に旋回することなく、垂直旋回を止めた位置を保持できるようになっている。
なお、前記ワーク洗浄装置1Bでは、前記透明カバー17の凹部17c,17cは省略されているが、凹部17c、17cを設けてもよい。また、前記安全柵23の所定箇所には、ヒンジで開閉自在の扉26を有する入口27が設けられ、作業者が、該入口27の正面に設置された階段28を利用して前記入口27から、前記ワーク段取台10の回りに設置された床板F上に上がり、そこでワークWの洗浄作業を行うようになっている。
その他の構成は前記第1の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1と同様であるので、同一の構成部分には同一の符号を付してそれらの構成についての説明は省略する。
【0033】
この実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1Bにおいては、作業者は、床板F上に上がって前記透明カバー17を把手17bを一方の片手で掴んで身体の正面に位置させながら、他方の片手で前記洗浄流体吐出ノズル18を操作して、前記パレット8上のワークWの洗浄を行う。その際、作業者h、必要に応じて前記支持アーム15を水平、垂直旋回させながら前記パレット8の回りに移動して、ワークWのあらゆる方向からその隅々にまで洗浄流体を洗浄流体ノズルから噴射させてワークWに付着している切屑をしっかりと飛散、除去させる。そして、ワークWの洗浄を終えたときには、前記支持アーム15を伸長する方向に旋回させて前記透明カバー17を前記安全柵23に支持された格納ボックス24内に格納する。そのときは、前記スイッチ25が働いて前記パレット交換手段11の駆動手段の駆動回路が動作することにより、パレット交換手段11の交換アーム11bが軸線C回りに回転可能な状態となる。
【0034】
この実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1Bによれば、洗浄済みのワークWをパレット8と一緒にワーク段取台10から取り外した後に、新たなワークWをワーク段取台10で段取りしてパレット8に載置して、該パレット8を、テーブル6の加工を終了したワークWを取り付けたパレット8と交換するにあたり、前記ワーク交換手段11の交換アーム11bを旋回させる場合、前記透明カバー17がワーク段取台10の近くに懸垂された状態にあるときは、前記スイッチ25は動作せず、前記パレット交換手段11の交換アーム11bが旋回することがない。したがって、ワークWの洗浄作業が終了して透明カバー17がワーク段取台10付近に懸垂されていても、前記パレット交換手段11によるパレット8の交換時に前記透明カバー17が前記パレット8上のワークWと干渉して破損するといった事故が発生するのを未然に防止することができる。
【0035】
なお、このワーク洗浄装置1Bにおいて、前記ワーク洗浄装置1Aの場合と同様に、安全柵23の代わりに開口部を有する筐体(スプラッシュガード)12bを設け、その開口部に設けた安全カバーが閉められたことをスイッチが検知することにより、前記パレット交換手段11の交換アーム11bの旋回が許容されるようにしてもよく、また、前記安全柵23に設けた扉26にスイッチを設けて、該扉26が閉められたことを該スイッチが検知したときに、前記パレット交換手段11の交換アーム11bの旋回が許容されるようにしてもよい。それらの場合には、前記透明カバー17の格納ボックス24への格納の検知と安全カバーまたは扉26が閉められたことの検知の両条件が満たされたときに、前記パレット交換手段11の交換アーム11bの旋回が許容されるように構成することにより、作業環境の安全性を一層向上させることができる。
【0036】
なお、前記実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1,1A,1Bにおいては、前記パレット交換手段11の上方における筐体12に設けた取付部材14に支持アーム15を旋回、固定可能に支持して、その先端側を前記ワーク段取台10の上方を越えて該ワーク段取台10の外周側の位置に移動、固定可能としたが、前記支持アーム15は、筐体12でなく工作機械2の側部に設置した支柱等に旋回、固定可能に支持してもよく、また、複数のアーム部材を水平または垂直旋回可能に連結して基端側のアーム部材に対して先端側のアーム部材を屈曲させて伸縮する構成としたり、複数の管状アーム部材を嵌合させて基端側の水平旋回可能な管状アーム部材に対して先端側の管状アーム部材をそれらの軸線方向に伸縮させる構成として、支持アーム15の先端側(透明カバー)を任意位置に移動させるようにしてもよい。
また、前記安全カバー20,20は、保持アーム22,22に支持させたが、これに限らず、筐体(スプラッシュガード)12bにガイドレールを設けてこれに支持させて案内移動させるようにしてもよい。
また、前記実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置1,1A,1Bにおいては、本発明を適用する工作機械として横型のマシニングセンタを例にして説明したが、本発明はこれに限らず、縦型のマシニングセンタ、フライス盤、研削盤、その他の工作機械に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置を設備した工作機械を示す平面図である。
【図2】同じく側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置を示す斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る工作機械のワーク洗浄装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ワーク洗浄装置
2 工作機械
3 ベッド
6 テーブル
7 治具
8 パレット
10 ワーク段取台
10a 段取りテーブル
11 パレット交換手段
12 筐体
12b ワーク段取台側の筐体(スプラッシュガード)
13 遮蔽プレート
14 取付部材
15 支持アーム
17 透明カバー
17b 把手
17c 凹部
18 洗浄流体吐出ノズル
19 ホース
20 安全カバー
20a,25 スイッチ
20b 作動片
24 格納ボックス
G ワーク洗浄空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルとワーク段取台とにワークを選択的に位置させるパレット交換手段を備えた工作機械に設けた取付部材に基端部を支持され、先端側を前記ワーク段取台の上方を越えて該ワーク段取台の外周側の位置に移動、固定可能とした支持アームと、該支持アームの先端部に鉛直状に支持された透明カバーと、ホースによって洗浄流体供給源に接続されており、作業者が手動で操作する洗浄流体吐出ノズルとを備えていることを特徴とする工作機械のワーク洗浄装置。
【請求項2】
前記透明カバーには、該透明カバーを掴んで移動操作するための把手が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械のワーク洗浄装置。
【請求項3】
前記透明カバーの両側には、上下方向の中央部付近に作業者の上腕を副える円弧状の凹部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の工作機械のワーク洗浄装置。
【請求項4】
前記工作機械を囲む筐体の側板を前記ワーク段取り台側に突き出して、該ワーク段取り台の外周側を囲むように形成したスプラッシュガードが設けられ、該スプラッシュガードには、作業者が前記透明カバーを操作し得る開口部が設けられていることを特徴と請求項1〜3のいずれかに記載の工作機械のワーク洗浄装置。
【請求項5】
前記スプラッシュガードの開口部には、該開口部を左右に開閉可能な一対の安全カバーが設けられ、該安全カバーには、安全カバーが閉められたことを検知して前記パレット交換手段の作動を許容するスイッチが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の工作機械のワーク洗浄装置。
【請求項6】
前記各安全カバーは、前記パレット交換手段の上方における前記筐体に設けた取付部材に基端部が支持されて左右に旋回可能な一対の保持アームの先端部にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載の工作機械のワーク洗浄装置。
【請求項7】
前記支持アームは、前記取付部材側の水平旋回アーム部と、該水平旋回アーム部の先端に伸縮回可能に連結され前記透明カバーを支持する伸縮アーム部とを備え、前記ワーク段取台の外周から離れた位置に設置された格納ボックスに前記透明カバーを移動して格納可能とされており、前記格納ボックスには、前記透明カバーが格納されたことを検知して前記パレット交換手段の作動を許容するスイッチが設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の工作機械のワーク洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−190623(P2007−190623A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8557(P2006−8557)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(303024138)株式会社ニイガタマシンテクノ (78)
【Fターム(参考)】