説明

工作機械の移動体案内装置

【課題】滑り軸受の高さ調整作業を簡単に行えるようにする。
【解決手段】支持軸14およびスピンドル15間に転がり軸受16、17が介在させられている。スピンドル15の上端に水平円板状テーブル31がその下面周縁部をガイド面13と相対させるように取付られている。テーブル31の外周面にはねじ孔42があけられている。テーブル31の外周面にリング状高さ調節部材43が昇降自在かつねじ孔42を被覆するようにはめ被せられている。高さ調節部材43には、ねじ孔42に合致させられたボルト孔44があけられている。ボルト45が、ボルト孔44に隙間嵌めされかつねじ孔42にねじ入れられている。高さ調節部材43に、滑り軸受46がその摺動面47をガイド面13と相対させられるように固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械において、例えば、ワーク載置テーブル、主軸台、タレットのような移動体の回転または直動を案内するための案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の案内装置としては、図2に示すように、中央に上方開放凹所101が設けらかつ凹所101の上方開口縁部に水平環状ガイド面102が設けられているベース103と、凹所101内中央を垂直にのびている支持軸104と、下面周縁部をガイド面102と相対させている水平円板状テーブル105と、支持軸104と同心状に配置されかつテーブル105下面に接触させられているカラー106と、支持軸104を間隔をおいて取囲みかつ上端面をカラー106下面に接触させている垂直筒状スピンドル107と、支持軸104およびスピンドル107間に介在させられている転がり軸受108と、スピンドル107外面にはめ被せられているウォームホイール111と、ウォームホイール111に噛み合わされているウォーム112と、テーブル105、カラー106、スピンドル107およびウォームホイールを、これらに一直線状に貫通させられて、一体化させている締付ボルト113とを備えており、テーブル105下面外周縁部にはリング状滑り軸受114が固定されおり、滑り軸受114の下面には、ガイド面102に接触させられた摺動面115が設けられているものが知られている。
【0003】
ガイド面102および摺動面115の関係は、当たりが強すぎず、隙間もできない適切な当たりとなることが好ましい。そのためには、カラー106の厚みを調節することが必要である。その調節は、想定されるよりも大きめの厚みのカラー106を用いて、ガイド面102および摺動面115の隙間を確認後、一旦、テーブル105およびカラー106を取外し、隙間の分、カラー106を厚みを薄くするように加工し、再び、テーブル105およびカラー106を取付けるという、手間暇の掛かる工程を必要とする。
【0004】
他の案内装置としては、特許文献1に開示されているものが知られている。この他の案内装置は、ベースにねじ込まれたジャッキボルトによってガイド部材が高さ調節自在に支持されており、ガイド部材によって移動体が支持されているものである。
【0005】
この他の案内装置では、移動体がジャッキボルトだけで支持されているため、強度が弱いという問題点がある。
【0006】
さらに他の案内装置として、特許文献2に開示されているものが知られている。このさらに他の案内装置は、ベースおよび移動体間にテーパ部材が介在させられており、テーパ部材を移動させることによって、ベースおよび移動体間の隙間を調整するようにしたものである。
【0007】
このさらに他の案内装置では、ベースおよび移動体間の隙間を確認しながら、テーパ部材を移動させる必要があるため、調整に時間が掛かる。さらに、構成が複雑であるため、製造コストが高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−226573号公報
【特許文献2】特開2009−228877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、上記課題を解決し、軸受の高さ調整作業を簡単に行うことができ、強度が強く、コストが安価である工作機械の移動体案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による第1工作機械の移動体案内装置は、ベースの頂面にガイド面が設けられており、移動体を、ガイド面にそって回転または直動させうるように第1転がり軸受が支持しており、移動体の側面にはねじ孔があけられており、ねじ孔を被覆しかつ移動体の側面にそって昇降しうるように高さ調節部材が配置されており、高さ調節部材には、ねじ孔に合致させられたボルト孔があけられており、ボルトが、ボルト孔に隙間嵌めされかつねじ孔にねじ入れられており、高さ調節部材に、第2転がり軸受または滑り軸受がガイド面と相対させられるように固定されているものである。
【0011】
この発明による第1の工作機械の移動体案内装置では、ボルトを緩めれば、高さ調節部材の昇降が自在となり、ガイド面に対して転がり軸受を適切な当たりに調整し、この後、ボルトを締付ければ、転がり軸受の当たりを保持した状態で、転がり軸受固定することができる。したがって、ボルトの締付作業だけで、調整作業を簡単に行うことができる。さらに、ボルトの締付による転がり軸受の強度は強い。また、部品点数が少なく、コストが安価で済む。
【0012】
この発明による第2の工作機械の移動体案内装置は、ベースの中央に上方開放凹所が設けられており、凹所の上方開口縁部に水平環状ガイド面が設けられており、凹所内中央に垂直状支持軸が設けられており、支持軸をこれと同心状かつ間隔をおいて垂直筒状スピンドルが取り囲んでおり、支持軸およびスピンドル間に転がり軸受が介在させられており、スピンドルの上端に水平円板状テーブルがその下面周縁部をガイド面と相対させるように取付られており、テーブルの外周面にはねじ孔があけられており、テーブルの外周面にリング状高さ調節部材が昇降自在かつねじ孔を被覆するようにはめ被せられており、高さ調節部材には、ねじ孔に合致させられたボルト孔があけられており、ボルトが、ボルト孔に隙間嵌めされかつねじ孔にねじ入れられており、高さ調節部材に、滑り軸受がその摺動面をガイド面と相対させられるように固定されているものである。
【0013】
この発明による第2の工作機械の移動体案内装置は、この発明による第1の工作機械の移動体案内装置をより具体化したものである。
【0014】
この発明による第2の工作機械の移動体案内装置においても、この発明による第1の工作機械の移動体案内装置と同様に、ボルトの締付作業だけで、滑り軸受の高さ調整作業を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、調整作業を簡単に行うことができ、強度が強く、コストが安価である工作機械の移動体案内装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明による案内装置の垂直縦断面図である。
【図2】従来例による案内装置の垂直縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、ベース11の中央に上方開放凹所12が設けられている。凹所12の上方開口縁部に水平環状ガイド面13が設けられている。凹所12内中央に垂直筒状支持軸14が設けられている。支持軸14をこれと同心状かつ間隔をおいて垂直筒状スピンドル15が取り囲んでいる。支持軸14およびスピンドル15間には上下転がり軸受16、17が介在させられている。スピンドル15外面上部には大径部18が設けられている。大径部18には複数の上下貫通状下ボルト孔19が大径部18周方向に等間隔であけられている。
【0018】
大径部18下方の、スピンドル15外面にはウォームホイール21がはめ被せられている。ウォームホイール21上端面には、各下ボルト孔19に合致させられた内ねじ孔22があけられている。ウォームホイール21にはウォーム23が噛み合わされている。
【0019】
支持軸14の上方には水平円板状テーブル31が支持軸14と同心状に配置されている。テーブル31の下面には下方突出環状当接部32がその下端面を大径部18上端面に当接させるように設けられている。当接部32より半径方向外側の、テーブル31下面がガイド面13にその上側から相対させられている。当接部32を上下に貫通しかつ各下ボルト孔19と合致させられた段付上ボルト孔33がテーブル31にあけられている。締付ボルト34が上ボルト孔33および下ボルト孔19を貫通して内ねじ孔22にねじ入れられている。
【0020】
テーブル31の外周面および下面の角には横断面輪郭逆L字状の環状切欠41が形成されている。切欠41の周面には複数の外ねじ孔42が切欠41周方向に等間隔でテーブル31の半径方向にあけられている。切欠41には横断面方形のリング状高さ調節部材43がはめ入れられている。高さ調節部材43は、切欠41の周面全体を被覆しかつ同周面にそって昇降自在である。高さ調節部材43には、各外ねじ孔42に合致させられた外ボルト孔44があけられている。高さ調節ボルト45が外ボルト孔44を貫通して外ねじ孔42にねじ入れられている。外ボルト孔44内面および高さ調節ボルト45の軸部外面間には隙間がある。高さ調節部材43の下面には滑り軸受46が固定されている。滑り軸受46の下面にはガイド面13に摺接させられた摺動面47が形成されている。
【0021】
高さ調節ボルト45の締付を緩めておいて、スピンドル15の上端にテーブル31を締付ボルト34によって固定した状態で、ガイド面13および摺動面の当たりが適切となるように高さ調節部材43の高さを調節し、この後、高さ調節ボルト45をさらに締付れば、テーブル31に対して滑り軸受46が所望の高さに固定される。
【0022】
この実施形態のように、テーブルがベース上で水平旋回かるような場合においては、高さ調節ボルト45を緩めて高さ調節部材43を自重によりガイド面13上に載置した状態で高さ調節ボルト45を締め付ければよく、高さの調節が実質不要で所望の状態を得ることができる。
【0023】
尚、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、滑り軸受46に代えて転がり軸受を配置してもよい。また、高さ調節部材43および滑り軸受46は切欠41を全体を一体で被覆する必要は無く、個々に高さ調節ボルトで固定されるものであれば、切欠41の周方向に等間隔に分割されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明による案内装置は、工作機械において、ワーク載置テーブルの回転を案内することを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0025】
11 ベース
12 凹所
13 ガイド面
14 支持軸
15 スピンドル
16、17 転がり軸受
31 テーブル
42 ねじ孔
43 高さ調節部材
44 ボルト孔
45 ボルト
46 滑り軸受
47 摺動面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースの頂面にガイド面が設けられており、移動体を、ガイド面にそって回転または直動させうるように第1転がり軸受が支持しており、移動体の側面にはねじ孔があけられており、ねじ孔を被覆しかつ移動体の側面にそって昇降しうるように高さ調節部材が配置されており、高さ調節部材には、ねじ孔に合致させられたボルト孔があけられており、ボルトが、ボルト孔に隙間嵌めされかつねじ孔にねじ入れられており、高さ調節部材に、第2転がり軸受または滑り軸受がガイド面と相対させられるように固定されている工作機械の移動体案内装置。
【請求項2】
ベースの中央に上方開放凹所が設けられており、凹所の上方開口縁部に水平環状ガイド面が設けられており、凹所内中央に垂直状支持軸が設けられており、支持軸をこれと同心状かつ間隔をおいて垂直筒状スピンドルが取り囲んでおり、支持軸およびスピンドル間に転がり軸受が介在させられており、スピンドルの上端に水平円板状テーブルがその下面周縁部をガイド面と相対させるように取付られており、テーブルの外周面にはねじ孔があけられており、テーブルの外周面にリング状高さ調節部材が昇降自在かつねじ孔を被覆するようにはめ被せられており、高さ調節部材には、ねじ孔に合致させられたボルト孔があけられており、ボルトが、ボルト孔に隙間嵌めされかつねじ孔にねじ入れられており、高さ調節部材に、滑り軸受がその摺動面をガイド面と相対させられるように固定されている工作機械の移動体案内装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−143820(P2012−143820A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2159(P2011−2159)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】