説明

工作機械用の回転テーブル割出し装置

【課題】 モータ直接駆動方式の工作機械用の回転テーブル割出し装置において、停電等に伴って工作機械や割出し装置への給電が断たれた場合であっても回転テーブルの停止位置を確実に保持できるようにすると共に、ワーク加工時における回転テーブルの停止位置の保持を安定して行うことのできる回転テーブルの割出し装置を提供する。
【解決手段】 本体フレーム11に固定されるモータ20用のステータ21と、該ステータに対向して同軸的に設けられたロータ22であって本体フレームに回転自在に支持された軸に固定されたモータ用のロータ22と、前記軸に固定された回転テーブル12と、割出しされた前記回転テーブルの角度位置を保持するクランプ装置30とを含む工作機械用の回転テーブル割出し装置において、上記クランプ装置30とは別の保持装置であって装置への給電停止時に回転テーブル12を支持する軸へ保持力を作用させる第2の保持装置50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械(例えば、マシニングセンタ等)に用いられる回転テーブルの割出し装置であって、特に、本体フレームに固定されるモータ用のステータと、該ステータに対向して同軸的に設けられたロータであって本体フレームに回転自在に支持された軸に固定されたモータ用のロータと、前記軸に固定された回転テーブルと、割出しされた前記回転テーブルの角度位置をクランプ部材によって保持するクランプ装置とを含む、いわゆるモータ直接駆動方式の回転テーブルの割出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ直接駆動方式の回転テーブルの割出し装置として、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の回転割出し装置は、ケーシング(本体フレーム)に固定されたモータ用ステータと、ケーシングに回転自在に支持される軸に設けられたモータ用ロータと、上記軸に固定される割出しテーブル(回転テーブル)とを含む。すなわち、ケーシング内にモータが内蔵されていて、モータの軸により割出しテーブルが直接的に回転駆動される。
【0003】
また、特許文献1に記載の割出し装置には、割出しされた割出しテーブルの停止位置(=角度位置)を保持するためのクランプ装置が設けられている。このクランプ装置は、割出しテーブルに固定された摩擦ディスクと、摩擦ディスクを挟むように配置されたクランプピストン(クランプ部材)とを含む。このクランプ装置によれば、油圧によりクランプピストンを摩擦ディスクに向けて押圧することにより、摩擦ディスクがクランプ(保持)されてロック状態となり、割出しテーブルの回転が阻止され、その停止位置が保持された状態となる。
【0004】
また、他のモータ直接駆動方式の回転テーブルの割出し装置として、特許文献2に記載されたものがある。特許文献2に記載の割出し装置では、クランプ装置は、内周にクランプ面が形成されたクランプリング(クランプ部材)を有する。テーブル(回転テーブル)は、その外周に受圧面を形成しており、その受圧面を形成する部分の径がクランプリングの内周面に対し締めしろを有するように設定されている。そして、受圧面に圧油を供給することにより、上記クランプリングをテーブルに対しアンクランプ方向へ撓ませることで、テーブルを回転可能(割出し可能)とするものである。
【0005】
特許文献1に記載の割出し装置の場合、例えば、停電の発生等によって工作機械への給電が断たれた場合、クランプ装置による保持力が失われるという問題がある。すなわち、停電が発生すると、工作機械への給電が断たれ、これに伴って割出し装置に内蔵されたモータへの通電も断たれ、モータの軸は自由に回転し得る状態となる。しかも、クランプピストンを摩擦ディスクへ押圧するための圧油を供給するポンプも作動を停止してしまうため、クランプピストンを摩擦ディスクへ押圧するための力が失われ、クランプ装置はアンクランプ状態となる。
【0006】
この状態では、回転テーブルは自由に回転し得る状態であるため、回転テーブル上のワークに作用する重力によって回転テーブルが不用意に回転し、そのときの回転テーブルやワークの傾斜角度によっては、ワークがベースと衝突して破損するとった問題が生じる。また、ワークの不用意な回転によって、その近傍に位置する工具にワークが衝突し、工具を破損させるだけでなく、破損したワークの先端や破片等が周囲に飛び、周囲にいる作業者に危険を及ぼすといった問題も生じる。
【0007】
特許文献2に記載の割出し装置では、回転テーブルの割出し時に圧油を供給してクランプリングをアンクランプ方向へ撓ませるものであり、言い換えれば、圧油の供給を停止することによってクランプリングがその機械的な構成によって保持力を発生するものである。従って、上記のように停電が発生した場合でも、回転テーブルが自由に回転し得る状態となることはなく、上記のような特許文献1に記載の回転割出し装置における問題が発生することはない。
【0008】
しかし、特許文献2に記載の割出し装置では、クランプリングのクランプ面と回転テーブルの受圧面との間に圧油を供給することによってクランプリングを撓ませてアンクランプ状態とするものであるため、クランプ時にもクランプ面と受圧面との間に作動油が残存し、その作動油の影響で摩擦力が低下し、必要とされる保持力が安定して得られないおそれがある。また、供給される圧油に異物が混入し、これがクランプ面あるいは受圧面に付着した場合、これも必要とされる保持力が得られない要因となる。そして、このように必要とされる保持力が安定して得られない場合、ワーク加工時に回転テーブルの角度位置にズレが生じ、ワークの加工精度に支障を来すこととなる。
【0009】
さらに、上記のような圧油の存在に影響されることなく必要とされる保持力を安定して得られるようにするためには、クランプリングによる保持力を非常に大きくする(すなわち、クランプリングのクランプ面と回転テーブルの受圧面との間の締まりばめを大きくする)必要がある。しかし、この場合、その様な大きな保持力を発生しているクランプリングをアンクランプ状態となるように撓ませるためには、供給される圧油の圧力を非常に高くしなければならなくなる。その結果、圧油を供給するポンプの負荷が大きくなると共に、割出し装置内部の部材(Oリング、オイルシール等)の破損を招いてしまう。
【特許文献1】特開平4−289042号公報
【特許文献2】特開平10−29125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、工作機械用の回転テーブルの割出し装置において、停電等に伴ってクランプ装置のクランプ部材を動作させるための装置への給電が断たれた場合であっても、回転テーブルの停止位置を確実に保持できるようにすると共に、ワーク加工時における回転テーブルの停止位置の保持を安定して行うことのできる回転テーブルの割出し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題のもとに、本発明は、割出しされた回転テーブルの停止位置をクランプ部材によって保持するクランプ装置を有する上記したモータ直接駆動方式の回転テーブルの割出し装置おいて、上記クランプ装置とは別の保持装置であって上記クランプ部材を駆動する装置への給電停止時に回転テーブルを支持する軸へ保持力を作用させる第2の保持装置を備えることを特徴とする。
【0012】
なお、上記でいう「クランプ部材を駆動する装置」とは、例えば、クランプ装置が前述の従来技術のような圧縮流体(圧油)を供給することによって保持力を発生する流体圧作動型のブレーキ(保持装置)の場合は、クランプ部材(クランプピストン等)を動作させるための圧縮流体(油、空気等)を供給する装置(例えば、ポンプ、コンプレッサ等)、または圧縮流体の供給を制御すべく圧縮流体の供給管路上に設けられた電磁弁がこれに相当する。また、クランプ装置が励磁作動型の電磁ブレーキ(保持装置)の場合は、クランプ部材を動作させるために通電(励磁)される電磁コイルがこれに相当する。また、一般的には、上記した圧縮流体を供給する装置、電磁弁もしくは電磁コイルは、いずれも工作機械側から作動電力を供給されるものであるため、工作機械自体がクランプ部材を駆動する装置に相当するともいえる。
【0013】
また、上記装置への「給電停止時」とは、一例として、前述の従来の技術でも説明した停電の発生が考えられる。この場合は、工作機械自体への給電が停止され、これに伴って上記のクランプ部材を駆動する装置に対する給電が停止される。また、このような停電発生時に限らず、例えば、工作機械のNC制御のためのプログラムにミスがあり、工作機械の動作と割出し装置の動作との関係に異常が発見されたときや、クランプ部材を駆動する装置や割出し装置の動作に異常が発見されたときに、作業者が非常停止釦を操作して工作機械及び割出し装置を手動停止させる場合があるが、この場合に上記のクランプ部材を駆動する装置への給電を積極的に停止する場合も含む。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明による工作機械用の回転テーブルの割出し装置によれば、停電の発生等に伴い、ワーク加工時に回転テーブルの停止位置を保持するクランプ装置(以下では、第2の保持装置と区別するために「第1の保持装置」ともいう)のクランプ部材を駆動する装置への給電が停止した場合(以下、単に「給電停止」という)でも、回転テーブルの停止位置を保持するための別の保持装置(第2の保持装置)を備えているため、回転テーブルが不用意に回転することなく、ワークや工具等を破損させることはない。
【0015】
しかも、本発明では、従来の技術のように第1の保持装置に対し給電停止時に保持力を発生する機能を持たせるのではなく、その様な第1の保持装置とは別に上記の第2保持装置を設けたため、第1の保持装置については、給電停止時の対策を考慮することなく、ワーク加工時に必要とされる保持力を安定して発生できるものを採用することができ、精度の高いワークの加工を保証することができる。
【0016】
詳しくは、従来の回転テーブルの割出し装置においては、2種類のクランプ装置(保持装置)を同時に備えるという技術思想はなく、1つのクランプ装置により回転テーブルの停止位置を保持するということしか行われていない。従って、従来では、給電停止に対処するためには、この1つのクランプ装置を、給電停止時にも保持力を発生するような構成とすることしか考えられていなかった。しかし、1つのクランプ装置を、ワーク加工時に保持力を発生しつつも給電停止時にも保持力を発生する構成にしようとした場合、前述の特許文献2に記載の技術のように、圧縮流体等の力を作用させてクランプ部材を変位させてクランプ装置をアンクランプ状態にするという構成を採用せざるを得ず、逆にこれが、ワーク加工時の安定した保持力を阻害する要因となってしまう。これに対し、本発明では、給電停止への対策として、ワーク加工時に回転テーブルの停止位置を保持する第1の保持装置とは別に、給電停止時にのみ保持力を発生する第2の保持装置を備えたため、ワーク加工時における回転テーブルの停止位置の保持が必要とされる保持力で安定して行われると共に、第1の保持装置のクランプ部材を駆動する装置への給電停止時にも回転テーブルの停止位置が保持されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1、2に示すのは本発明による回転テーブルの割出し装置の一実施形態であって、図1に示すように、本発明の割出し装置1は、本体フレーム11と、工作機械で加工されるワークが取り付けられる回転テーブル12と、本体フレーム11に対し回転可能に支持された軸としてのスピンドル13とを含む。
【0019】
本体フレーム11は、工作機械のテーブル等の所定位置にボルト等で固定可能な足11aを有する。また、本体フレーム11は、軸受(例えば、ローラベアリング)62によってスピンドル13を回転可能に支持している。そして、回転テーブル12は、スピンドル13の一端に対し、円周上で等ピッチ間隔に複数螺挿されたボルト61によって固定されている。
【0020】
割出し装置1は、前述のようにモータ直接駆動方式であって、本体フレーム11内には、本体フレーム11に固定されたモータ用のステータ21と、このステータ21に対向して同軸的に設けられたモータ用のロータ22とを備えている。ロータ22は、複数のボルト64によってスピンドル13に固定されたスリーブ14を介し、スピンドル13に嵌入固定されている。そして、これらステータ21とロータ22により、回転テーブル12を直接的に駆動して回転割出しするモータ20を構成している。
【0021】
また、割出し装置1は、スピンドル13の回転角度を検出するエンコーダ等の回転位置検出装置40を備える。この回転位置検出装置40は、公知のものであって、スピンドル13に固定されてスピンドル13と共に回転する回転部分41と、ディスク16に固定された固定部分42とからなる。ディスク16は、複数の箇所においてボルト65により本体フレーム11に組み付けられており、フレームに対し回転不能となっている。従って、固定部分42も本体フレーム11に対し回転不能に固定されている。そして、この回転位置検出装置40では、スピンドル13が回転すると、それに伴って回転部分41が回転するため、固定部分42がその回転量を電気的に検出し、その回転量に相当するパルス信号を図示しない工作機械の制御器等に送り出す。そして、工作機械は、この回転位置検出装置40から出力されるパルス信号に基づいて、回転後のスピンドル13の回転角度を把握する。
【0022】
さらに、この割出し装置1には、ワーク加工時に回転テーブル12の停止位置を保持するための第1の保持装置であるクランプ装置として、圧縮流体(例えば、空気、油等)が供給されることによって保持力を発生するクランプ装置30が設けられている。このクランプ装置30は、その内周面がクランプ面32となるクランプリング31からなっている。また、クランプリング31の外周面には、本体フレーム11に形成された圧縮流体の供給路15に連通する溝33が外周に亘って形成されており、この溝33が加圧室となる。なお、供給される圧縮流体が圧縮空気の場合は、図示のように、クランプ部材を駆動する装置であるコンプレッサCによって圧縮空気が電磁開閉弁Vを介して加圧室33に供給される。また、供給される圧縮流体が圧油の場合は、図示のコンプレッサCの代わりにポンプを使用し、ポンプによって油槽から作動油を汲み上げると共に、ポンプがこれを圧縮して圧油として送出し、電磁開閉弁Vを介して加圧室33に供給する。
【0023】
このクランプ装置30では、供給路15から加圧室33へ圧縮流体が供給されることにより、クランプリング31が圧縮流体の圧力作用を受け、その内径が縮小する方向へ変形する。その結果、クランプリング31のクランプ面32が、クランプ面32と対向する回転テーブル12の受圧面12aを押圧し、クランプ面32と押圧面12aとの摩擦力によって回転テーブル12が保持され、回転テーブル12及びスピンドル13が回転不能な状態となる。また、回転テーブルの割出し時には、加圧室33へ加えていた圧力流体による圧力を解放することにより、クランプリング31が元の状態へ戻り、クランプ面32と受圧面12aとの接触が離れて両者間の摩擦力がなくなり、回転テーブル12及びスピンドル13が回転可能な状態となる。
【0024】
このように、図示のクランプ装置30は、圧縮流体が供給されることによって保持力を発生するものであり、従来技術のように、機械的な構成で保持力を発生し、保持力の解除のために圧縮流体の供給を行うものではないため、必要とされる保持力を安定して得ることができる。しかも、供給される圧縮流体の圧力は、必要とされる保持力に対応する圧力で十分であり、それ以上の高い圧力を必要としないため、圧縮流体を供給するための装置の負荷が増大することなく、割出し装置内部の部材(Oリング、オイルシール等)の破損を招くことはない。
【0025】
なお、図示のクランプ装置30は、圧縮流体を供給することによって保持力を発生する流体圧作動型のブレーキであり、言い換えれば、圧縮流体を供給可能な状態、すなわち、クランプ部材を駆動する装置への給電が可能な状態で保持力を発生することが可能な装置である。このようなクランプ部材を駆動する装置への給電が行われている状態で保持力を発生することが可能なクランプ装置として、上記の流体圧作動型のブレーキに代えて励磁作動型の電磁ブレーキを採用することもできる。
【0026】
以上のような工作機械用の回転テーブルの割出し装置1において、本発明では、上記したクランプ装置30とは別に、第2の保持装置としてのクランプ装置50を備えている。図示の例は、クランプ装置50として無励磁作動型の電磁ブレーキを採用したものである。
【0027】
この無励磁作動型の電磁ブレーキ自体は公知のものであるが、念のために説明すると、クランプ装置50は、フィールドコア51が電磁コイル52をその内部に収納し、複数の箇所でねじ部材(図示せず)等によって本体フレーム11に組み付けられている。また、磁性体製のアーマチュア53は、スピンドル13の軸線方向に移動可能にスピンドル13に遊嵌されている。円筒状のディスク54には多角形の穴54aが形成されていてハブ55の外周面と嵌合しており、円筒状のディスク54はハブ55に対しスピンドル13の軸線方向に移動可能で、かつ相対回転不能に設けられている。
【0028】
ハブ55は、スピンドル13に設けられたキー13aと係合してスピンドル13に対する相対回転が阻止されており、また、ストップリング56によってスピンドル13の他端部に固定されている。円板上のサイドプレート57とアーマチュア53とは、複数の箇所で取付ねじ66により、フィールドコア51に対し軸方向に移動可能に取付けられる。取付ねじ66の外周には、アーマチュア53とディスク54の厚さ寸法の合計よりも寸法aだけ長いカラー59が設けられており、これにより磁気ギャップaが形成されている。アーマチュア53は、フィールドコア51に形成された複数の穴51aに内装された圧縮ばね51bにより、ディスク54の方へ押し付けられ、これによってフィールドコア51とアーマチュア53との間に磁気ギャップaが形成される。
【0029】
電磁コイル52は、割出し装置1の作動中は常時通電(励磁)されており、アーマチュア53が圧縮ばね51bのばね力に抗してフィールドコア51に吸着されるため、アーマチュア53とディスク54との間及びディスク54とサイドプレート57との間に若干の間隙が形成されて両者間の摩擦力は零に近い状態となる。このため、このクランプ装置50によるスピンドル13に対する保持力は発生しない。
【0030】
一方、停電の発生等に伴って工作機械への給電が停止されると、クランプ装置30のクランプリング31を駆動するコンプレッサCの作動も停止し、クランプ装置30による回転テーブル12の保持力が失われる。しかし、この給電停止に伴い、電磁コイル52への通電も停止されるため、電磁コイル52は無励磁状態となり、圧縮ばね51bのばね力により、アーマチュア53がディスク54を介してサイドプレート57へ押し付けられる。この結果、ディスク54がアーマチュア53とサイドプレート57との間でクランプされた状態となり、アーマチュア53とディスク54との間の摩擦力及びディスク54とサイドプレート57との間の摩擦力によって保持力が発生し、スピンドル13は回転を阻止され、それに伴って回転テーブル12も回転を阻止された状態となる。
【0031】
以上のように、図示の例では、クランプ装置30のクランプ部材を駆動する装置への給電が停止する状況が発生したとしても、それに伴ってクランプ装置50が保持力を発生し、スピンドル13及び回転テーブル12の回転を阻止した状態とする。これにより、クランプ装置30のクランプ部材を駆動する装置への給電が停止されても回転テーブル12が不用意に回転することなく、ワークや工具等を破損させることはない。
【0032】
因みに、上記の第2の保持装置としてのクランプ装置50では、アーマチュア53及びサイドプレート57が第2のクランプ部材に相当し、電磁コイル52が第2のクランプ部材を駆動する装置に相当する。すなわち、本発明の第2の保持装置は、そのクランプ部材を駆動する装置への給電が停止された時にクランプ部材を駆動して保持力を発生するものである。
【0033】
このような第2の保持装置としては、上記実施例で具体的に説明した構成の無励磁作動型の電磁ブレーキに限らず、他の構成のものであってもよい。例えば、同じく無励磁作動型の電磁ブレーキを採用する場合であっても、上記とは異なる構成からなる公知の無励磁作動型の電磁ブレーキを採用することも可能である。
【0034】
また、第2の保持装置としては、無励磁作動型の電磁ブレーキに代えて、前述の従来技術のように、機械的な構成によって保持力を発生し、圧縮流体の圧力作用によってその保持力を解除する形式のクランプ装置を採用することも可能である。すなわち、前述のように、圧縮流体の圧力作用によってその保持力を解除する形式のクランプ装置では、ワーク加工時に必要とされる保持力を安定して得られないものであるが、給電停止時に回転テーブルの停止位置を保持するのに必要とされる保持力は、ワーク加工時に必要とされる保持力よりも小さくてよいため、給電停止時にのみ保持力を発生する本発明でいう第2の保持装置としては十分に使用可能である。なお、この形式のクランプ装置としては、前述の従来技術のようなクランプ部材の変形を利用するもののほか、上記の電磁ブレーキと同様に、スプリング等によってクランプ方向へ付勢されている部材を圧縮流体の圧力作用によってアンクランプ方向へ変位させるもの等が考えられる。
【0035】
また、本発明では、停電の発生のように、第1の保持装置のクランプ部材を駆動する装置及び第2の保持装置の第2のクランプ部材を駆動する装置への給電が必然的に停止する場合に限らず、何らかの原因で第1の保持装置のクランプ部材を駆動する装置に対する給電が停止された場合(例えば、作業者の手動操作によって停止された場合)に、それに伴って第2のクランプ部材を駆動する装置への給電が断たれるように第2のクランプ部材を駆動する装置に対し給電を行う電源回路を構成するものも含む。
【0036】
また、本発明は以上の実施形態のいずれにも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態を示す側面断面図。
【図2】本発明が採用される割出し装置の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0038】
1 割出し装置
11 本体フレーム
12 回転テーブル
13 軸としてのスピンドル
15 圧縮流体供給路
20 モータ
21 ステータ
22 ロータ
30 クランプ装置
31 クランプリング
32 クランプ面
33 加圧室
40 回転位置検出装置
50 第2の保持装置としてのクランプ装置
51 フィールドコア
52 電磁コイル
53 アーマチュア
54 ディスク
55 ハブ
56 ストップリング
57 サイドプレート
59 カラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレームに固定されるモータ用のステータと、該ステータに対向して同軸的に設けられたロータであって本体フレームに回転自在に支持された軸に固定されたモータ用のロータと、前記軸に固定された回転テーブルと、割出しされた前記回転テーブルの停止位置をクランプ部材によって保持するクランプ装置とを含む工作機械用の回転テーブル割出し装置において、
前記クランプ装置とは別の保持装置であって前記クランプ装置のクランプ部材を駆動する装置への給電停止時に保持力を発生する第2の保持装置を備える、
ことを特徴とする工作機械用の回転テーブル割出し装置。
【請求項2】
前記第2の保持装置は、回転テーブルの停止位置を保持するための第2のクランプ部材を含み、第2のクランプ部材を駆動する装置への給電が停止されたときに保持力を発生する、ことを特徴とする請求項1に記載の工作機械用の回転テーブル割出し装置。
【請求項3】
前記第2の保持装置は、無励磁作動型の電磁ブレーキである、ことを特徴とする請求項2に記載の工作機械用の回転テーブル割出し装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−125640(P2007−125640A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319586(P2005−319586)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】