説明

工作機械用荷重測定装置

【課題】極端に処理速度が速い高価なCPUを使用しなくても、複数の切削部22、22を円周方向に関して等間隔に設けた切削工具16を使用する、工作機械の主軸12に加わる荷重の平均値を、精度良く測定できる構造を実現する。
【解決手段】エンコーダ4aの外周面に検出部を対向させたセンサ組立体6cの出力信号の位相に関する情報に基づいて、前記主軸12に作用する荷重を求める。前記エンコーダ4aの被検出面は、円周方向の一部に、特性が円周方向に関して隣り合う部分と異なる複数組の被検出部を、それぞれ測定すべき荷重の作用方向に関して傾斜した状態で、円周方向に関して等間隔に設けている。前記切削工具16に設けられた切削部22、22の数mを、前記エンコーダ4aの被検出面に存在する被検出部の組数nで除した数m/nが、整数でない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フライス盤、マシニングセンタ等の各種工作機械の主軸の如く、荷重を受けつつ高速で回転する回転軸に加わる荷重を精度良く測定できる装置を、低コストで実現すべく発明したものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸は、先端部に刃物等の工具を固定した状態で高速回転し、加工台上に固定した被加工物に、切削等の加工を施す。前記主軸を回転自在に支持したヘッドは、この被加工物の加工の進行に伴って、所定方向に所定量だけ移動し、この被加工物を、所定の寸法及び形状に加工する。この様な加工作業時、前記ヘッドの移動速度を適正にする事が、加工能率を確保しつつ、前記工具の耐久性及び前記被加工物の品質を確保する為に必要である。前記移動速度が速過ぎると、前記工具に無理な力が加わり、この工具の耐久性が損なわれるだけでなく、前記被加工物の表面性状が悪化したり、著しい場合にはこの被加工物に亀裂等の損傷が発生する。逆に、前記移動速度が遅過ぎると、前記被加工物の加工能率が徒に悪化する。
【0003】
前記ヘッドの移動速度の適正値は一定ではなく、工具の種類(大きさ)、被加工物の材質や形状により大きく変わる為、前記移動速度を一定としたまま、この移動速度を適正値に維持する事は難しい。この為、前記工具を固定した回転軸に加わる荷重を測定する事により、前記移動速度を適正値に調節する事が、従来から知られている。即ち、工具により被加工物に切削等の加工を施す際には、加工抵抗により、この工具を固定した回転軸に荷重が加わる。この加工抵抗、延いてはこの回転軸に加わる荷重は、前記移動速度が速くなる程大きくなり、逆に、この移動速度が遅くなる程小さくなる。そこで、前記荷重が所定範囲に収まる様に、前記移動速度を調節すれば、この移動速度を適正範囲に収める事ができる。
【0004】
又、この移動速度等、他の条件を同じとした場合に前記荷重は、前記工具の切削性(切れ味)が劣化する程大きくなる。そこで、前記移動速度との関係で前記荷重の大小を観察すれば、前記工具が寿命に達した事を知る事ができて、寿命に達した不良工具で加工を継続する事による、歩留まりの悪化を防止できる。又、前記荷重を、前記移動速度等、他の加工条件と関連付けて継続的に観察する事により、最適な加工条件を見出して、省エネルギ化や工具の長寿命化に繋げる事もできる。更に、継続的観察により、工具破損等の事故発生時に、その原因を特定する事もできる。
【0005】
この様な目的で、工作機械の主軸等の回転軸に加わる荷重を測定する為の装置として、特許文献1に記載された発明装置が、従来から知られている。この特許文献1に記載された発明装置は、水晶圧電式の荷重センサを複数個、荷重の作用方向に対して直列に配置し、この荷重センサの測定信号に基づいて、切削工具を支持固定した回転軸(スピンドル)に加わる荷重(切削抵抗)を測定する様に構成している。この様な特許文献1に記載された従来装置の場合、高価な水晶圧電式の荷重センサを使用する為、荷重測定装置全体としてのコストが嵩む事が避けられない。
【0006】
一方、特許文献2〜4には、水晶圧電式の荷重センサに比べて低コストで調達できる、磁気式のエンコーダとセンサ組立体とにより構成する、荷重測定装置付転がり軸受ユニットに関する発明が記載されている。図12〜14は、前記特許文献2〜4に記載される等により、従来から知られている荷重測定装置付転がり軸受ユニットの1例を示している。この従来から知られている荷重測定装置付転がり軸受ユニットは、使用時にも回転しない外輪1の内径側に、使用時に車輪を支持固定した状態でこの車輪と共に回転するハブ2を、複列に配置された転動体3、3を介して、回転自在に支持している。これら各転動体3、3には、両列同士の間で互いに逆向きの(図示の場合には背面組み合わせ型の)接触角と共に、予圧を付与している。
【0007】
又、上記ハブ2の内端部には、円筒状のエンコーダ4を、上記ハブ2と同心に支持固定している。又、上記外輪1の内端開口を塞ぐ有底円筒状のカバー5の内側に、1対のセンサ組立体6a、6bを支持すると共に、これら両センサ組立体6a、6bの検出部を、上記エンコーダ4の被検出面である外周面に近接対向させている。このうちのエンコーダ4は、磁性金属板製である。被検出面である、このエンコーダ4の外周面の先半部(軸方向内半部)には、透孔7、7(第一特性部)と柱部8、8(第二特性部)とを、円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置している。これら各透孔7、7と各柱部8、8との境界は、上記エンコーダ4の軸方向に対し同じ角度だけ傾斜させると共に、この軸方向に対する傾斜方向を、上記エンコーダ4の軸方向中間部を境に互いに逆方向としている。従って、上記各透孔7、7と上記各柱部8、8とは、軸方向中間部が円周方向に関して最も突出した「く」字形となっている。そして、上記境界の傾斜方向が互いに異なる、上記被検出面の軸方向外半部と軸方向内半部とのうち、軸方向外半部を第一の特性変化部9とし、軸方向内半部を第二の特性変化部10としている。
【0008】
又、上記1対のセンサ組立体6a、6bはそれぞれ、永久磁石と、検出部を構成する磁気検出素子とから成る。これら両センサ組立体6a、6bは、上記カバー5の内側に支持固定した状態で、一方のセンサ組立体6aの検出部を上記第一の特性変化部9に、他方のセンサ組立体6bの検出部を上記第二の特性変化部10に、それぞれ近接対向させている。これら両センサ組立体6a、6bの検出部が上記両特性変化部9、10に対向する位置は、上記エンコーダ4の円周方向に関して同じ位置としている。又、上記外輪1とハブ2との間にアキシアル荷重が作用しない状態で、上記各透孔7、7及び柱部8、8の軸方向中間部で円周方向に関して最も突出した部分(境界の傾斜方向が変化する部分)が、上記両センサ組立体6a、6bの検出部同士の間の丁度中央位置に存在する様に、各部材の設置位置を規制している。
【0009】
上述の様に構成する状態量測定装置付転がり軸受ユニットの場合、上記外輪1とハブ2との間にアキシアル荷重が作用し、これら外輪1とハブ2とがアキシアル方向に相対変位すると、上記両センサ組立体6a、6bの出力信号が変化する位相がずれる。即ち、上記外輪1とハブ2との間にアキシアル荷重が作用していない、中立状態では、上記両センサ組立体6a、6bの検出部は、図14の(A)の実線イ、イ上、即ち、上記最も突出した部分から軸方向に同じだけずれた部分に対向する。従って、上記両センサ組立体6a、6bの出力信号の位相は、同図の(C)に示す様に一致する。
【0010】
これに対して、上記エンコーダ4を固定したハブ2に、図14の(A)で下向きのアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ組立体6a、6bの検出部は、図14の(A)の破線ロ、ロ上、即ち、上記最も突出した部分からの軸方向に関するずれが互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ組立体6a、6bの出力信号の位相は、同図の(B)に示す様にずれる。更に、上記エンコーダ4を固定したハブ2に、図14の(A)で上向きのアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ組立体6a、6bの検出部は、図14の(A)の鎖線ハ、ハ上、即ち、上記最も突出した部分からの軸方向に関するずれが、前述の場合と逆方向に互いに異なる部分に対向する。この状態では上記両センサ組立体6a、6bの出力信号の位相は、同図の(D)に示す様にずれる。
【0011】
上述の様に、特許文献2〜4に記載される等により従来から知られている構造の場合には、上記両センサ組立体6a、6bの出力信号の位相が、上記外輪1とハブ2との間に加わるアキシアル荷重の作用方向(これら外輪1とハブ2とのアキシアル方向の相対変位の方向)に応じた向きにずれる。又、このアキシアル荷重(相対変位)により上記両センサ組立体6a、6bの出力信号の位相がずれる程度は、このアキシアル荷重(相対変位)が大きくなる程大きくなる。従って、上記両センサ組立体6a、6bの出力信号の位相ずれの有無、ずれが存在する場合にはその向き及び大きさに基づいて、上記外輪1とハブ2とのアキシアル方向の相対変位の向き及び大きさ、並びに、これら外輪1とハブ2との間に作用しているアキシアル荷重の作用方向及び大きさを求められる。尚、上記両センサ組立体6a、6bの出力信号の位相差に基づいて上記アキシアル方向の相対変位及び荷重を算出する処理は、図示しない演算器により行う。この為、この演算器には、予め理論計算や実験により調べておいた、上記位相差と上記アキシアル方向の相対変位及び荷重との関係を、計算式やマップ等の型式で組み込んでおく。
【0012】
又、特許文献2には、エンコーダの軸方向に対する傾斜方向が互いに異なる1対の凹溝をこのエンコーダの回転方向に隣り合わせて対として(「ハ」字形に)配置した構造も記載されている。この様なエンコーダの被検出面にセンサの検出部を対向させると、このエンコーダを固定した回転軸に作用する荷重に基づく、前記被検出面と検出部との(回転方向以外の)相対変位に基づいて、前記センサの出力信号が変化するタイミングが1周期の間でずれる。従って、単一のセンサのみで、前記出力信号の1周期に対する上記タイミングの比に基づき、前記回転軸に作用する荷重を求める事ができる。
【0013】
上述した従来構造の場合、自動車の車輪を支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニットに加わるアキシアル荷重を測定し、走行安定性の為の制御を行う事を考慮している。この様な場合に、この車輪支持用転がり軸受ユニットに加わるアキシアル荷重の値が、車輪支持部の構造等、本来の測定すべきアキシアル荷重以外の要因で、規則的に変化する事は無い。これに対して、工作機械の回転軸(主軸)の場合には、先端部に支持固定した加工工具の種類によっては、この回転軸に加わる荷重が規則的(正弦波的)に変化する。例えば、ドリルやエンドミル等の切削工具(加工工具)の場合、外周面や先端面に複数の切削部(加工部)を、円周方向に関して等間隔に設けている。これら各切削部の総てが被加工物の被加工面を均等に切削等の加工をし続けるのであれば、前記切削工具の形状に起因して、前記回転軸に加わる荷重が変動する事は無い。但し、実際の場合には、前記各切削部の総てが被加工物の被加工面を均等に切削加工する事は希であり、前記切削工具の形状に起因して、前記回転軸に加わる荷重が規則的に変動する。
【0014】
図15は、外周面に10箇所の切削部を有するエンドミル(ドリルでも同様)を工作機械の回転軸の先端部に、この回転軸と同心に結合固定し、この回転軸を定速で回転させつつ、被加工物に向け定速で前進させて、この被加工物に切削加工を施した場合に於ける、前記回転軸に関する物理量の変動状況を示している。図15のうちの(A)はこの回転軸に加わる荷重の変動状況を、(B)はこの回転軸の変位状況を、それぞれ表している。荷重と変位とは比例するので、図15の(A)(B)は、縦軸の値が異なるだけで、実質的に同じ図である。
【0015】
前記図15の(A)(B)に示す様に、被加工物を複数の切削部を有する切削工具により加工する場合には、本来は回転軸に加わる荷重が一定となるべき、定速回転、定速前進状態でも、この回転軸に加わる荷重が規則的に変動する。この為、荷重測定のタイミングを考慮しないと、前記図15の(A)(B)に示した変動に基づき、前記回転軸に加わる荷重の測定精度が悪化する。例えば、前述の図13〜14に示した荷重測定の為の構造で、エンコーダ4の外周面に設ける(1周当りの)前記透孔7、7の数を、前記切削工具の切削部の数と同じ10個とした場合、例えば前記図15の(A)(B)に黒丸印で示した部分(測定点)で、前記センサ組立体6a、6bの出力信号の位相差を求め、この位相差に基づいて、前記回転軸に加わる荷重を求める事になる。前記図15の(A)(B)の黒丸印で示した部分は、正弦波上の同じ位相部分である。この為、上述の様に、前記透孔7、7の数を、前記切削工具の切削部の数と同じ10個とした場合には、前記図15の(A)(B)の記載から明らかな通り、δなる値(DC成分のオフセット)が、前記変動に基づく誤差成分となる。
【0016】
特許文献2〜4に示した様に、エンコーダ4の被検出面に存在する透孔7、7及び柱部8、8等の被検出部の組数の数を、前記切削工具の切削部の数よりも十分に多く(自動車の車輪支持用の荷重測定装置付転がり軸受ユニットの場合の様に数十個と)し、荷重測定を複数回行ってその平均値を取れば、前記誤差成分δの影響を排除できる。但し、工作機械の回転軸(主軸)の回転速度は、自動車用車輪の回転速度よりも桁違いに速い為、センサの出力信号を入力した演算器(CPU)の処理速度を考慮した場合、前記被検出部の組数の数を、前記切削部の数を越えて多くする事は難しい。極端に処理速度が速い高価なCPUを使用せずに工作機械の回転軸に加わる荷重を測定する事を考慮した場合、工作機械用荷重測定装置を構成するエンコーダでは、前記被検出部の組数は、1桁からせいぜい10組程度とする事が現実的である。
【0017】
ところが、前記エンコーダの被検出面に設けた被検出部の組数を1桁からせいぜい10組程度とした場合には、前記切削工具の切削部の数mとこの被検出部の組数nとが一致(m=n)したり、この切削工具の切削部の数mがこの被検出部の組数nの整数倍(m/n=整数)となる場合が生じる。これら両数m、nが一致した場合は勿論、これら両数の比m/nが整数の場合も、前記誤差成分δの影響を排除できない。前記被検出部の組数nを前記切削工具の切削部の数mよりも多くすれば、仮にこれら両数n、mの比n/mが2以上の整数となっても、荷重測定を複数回行ってその平均値を取る事により前記誤差成分δの影響を排除できる。但し、前記被検出部の組数nは、上述の様な理由により多くする事は難しい為、現実的な対応方法とは言えない。又、回転方向に関して、切削工具とセンサの検出部との位相を適切に規制し、図15に示した測定点を正弦波曲線の中央位置にすれば、前記誤差成分δが生じる事を防止する事は、不可能ではない。但し、工具交換の度に前記位相を一致させる事は、何らかの位置決め用の印や、位置決め用の係合部を設けたとしても面倒で、やはり現実的な対応方法とは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、極端に処理速度が速い高価なCPUを使用しなくても、複数の切削部(加工部)を円周方向に関して等間隔に設けた切削工具(加工工具)を使用する工作機械の回転軸(主軸)に加わる荷重を、精度良く測定できる工作機械用荷重測定装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の工作機械用荷重測定装置は、ハウジングと、回転軸と、切削工具(加工工具)と、エンコーダと、センサユニットと、演算器とを備える。
このうちのハウジングは回転しない。
又、前記回転軸は、それぞれが予圧を付与された複数の転がり軸受により、前記ハウジングの内側に回転自在に支持されている。
又、前記切削工具(加工工具)は、前記回転軸の先端部に、この回転軸と同心に支持固定されたもので、複数の切削部(加工部)を円周方向に関して等間隔に設けている。
又、前記エンコーダは、前記回転軸の一部に支持固定されたもので、この回転軸と同心の被検出面を有する。
又、前記センサユニットは、少なくとも1個のセンサ組立体を備えたもので、前記被検出面に検出部を対向させた状態で前記ハウジングに、直接又は他の部材を介して支持されている。
又、前記演算器は、前記センサユニットの出力信号を処理するもので、このセンサユニットの出力信号の位相に関する情報に基づいて、前記回転軸に作用する荷重を求める。
更に、本発明の工作機械用荷重測定装置では、前記エンコーダの被検出面は、円周方向の一部に、特性が円周方向に関して隣り合う部分と異なる複数組の被検出部を、それぞれ測定すべき荷重の作用方向に関して傾斜した状態で、円周方向に関して等間隔に設けている。
そして、前記切削工具(加工工具)に設けられた切削部(加工部)の数mを、前記エンコーダの被検出面に存在する被検出部の組数nで除した数m/nが、整数ではない。
【0020】
上述の様に構成する本発明の工作機械用荷重測定装置を実施する場合に好ましくは、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記エンコーダを磁性材製とする。
そして、前記被検出部を、このエンコーダの被検出面の幅方向に形成された、前記センサユニットを構成する前記センサ組立体の検出部との距離が残部と異なる除肉部若しくは突条部である距離変化部とし、この距離変化部の少なくとも一部を、測定すべき荷重の作用方向に対して傾斜した形状とする。
又、前記センサ組立体を、前記被検出面と前記検出部とが対向する方向に着磁された永久磁石と、この永久磁石の着磁方向両端面のうちでこの被検出面と対向する端面に配置されたホール素子、磁気抵抗素子等の磁気検出素子と、この磁気検出素子が検出する磁束密度の変化を表す信号を出力するICとを備えたものとする。
更に、前記演算器を、前記センサ組立体の出力信号に基づいて、前記回転軸に作用する荷重を求めるものとする。
【0021】
上述の様な請求項2に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項3に記載した発明の様に、センサユニットを、単一のセンサ組立体を備えたものとする。この場合に、このセンサ組立体は、前記エンコーダの回転に伴う距離変化部の通過に伴って出力信号を変化させるもので、回転軸に加わる荷重に伴う前記磁気検出素子と前記エンコーダとの相対変位に伴って、1周期の間で前記出力信号が変化するタイミングがずれるものとする。そして、前記演算器が荷重を求める為に使用する位相に関する情報を、前記出力信号の1周期に対する上記タイミングの比とする。
この様な請求項3に記載した発明を実施する場合に、例えば請求項4に記載した発明の様に、前記エンコーダを円筒状に造られたものとして、このエンコーダを前記回転軸に外嵌固定する。そして、前記被検出面を、このエンコーダの外周面とする。又、前記距離変化部を、この外周面に形成された複数の凹溝若しくは突条とする。これら各凹溝若しくは各突条は、前記エンコーダの軸方向に対する傾斜方向が互いに異なる1対の凹溝若しくは突条をこのエンコーダの回転方向に隣り合わせて対としたものであり、単一のセンサ組立体の検出部がこれら各凹溝若しくは各突条に対向しており、前記1対の凹溝若しくは突条を1組とする被検出部の組数をnとする。
【発明の効果】
【0022】
上述の様に構成する本発明の工作機械用荷重測定装置によれば、極端に処理速度が速い高価なCPUを使用しなくても、複数の切削部(加工部)を円周方向に関して等間隔に設けた切削工具(加工工具)を使用する工作機械の回転軸(主軸)に加わる荷重の平均値を、精度良く測定できる。
即ち、複数の切削部を備えた切削工具を回転軸の先端部に結合固定した状態で被加工物の加工を行うと、この切削工具を介してこの回転軸に加わる荷重は細かく変動する。工作機械の回転軸の送り速度等を制御するには、この細かく変動する値ではなく、平均値を求める必要がある。前記切削工具の切削部の数mがエンコーダの被検出面に設けた被検出部の組数nの整数倍の場合には、前述した様に、前記平均値中に、前記変動に基づく誤差成分δが入り込み易く、入り込んだ場合には、これを除去できない。
【0023】
これに対して本発明の場合には、前記切削工具の切削部の数mがエンコーダの被検出面に設けた被検出部の組数nの整数倍ではない(m/n≠整数)為、前記誤差成分の影響を除去して、前記平均値を精度良く求められる。即ち、本発明の場合でも、或る1組の被検出部を利用して測定した1回の荷重測定の結果には、前述の図15に正弦波曲線で示した様な荷重変動の影響が出る可能性が高い。但し、前記「m/n≠整数」なる要件を満たす為、この影響の程度及び方向、即ち、前記誤差成分δの大きさ、並びに、当該誤差成分δが平均値に足される状態で生じるか、逆に平均値から減じる状態で生じるかは、測定毎に異なる。この為、連続して求めた複数の測定値の平均値を求めれば、前記誤差成分δの影響をなくすか、又は減じて、前記平均値を精度良く求められる。連続して求めた複数の測定値の平均値を求める事で、前記回転軸に加わる荷重の平均値を求めるタイミングが多少遅れるが、本発明の対象となる工作機械用荷重測定装置に関して、この遅れが問題になる事はない。この理由は、工作機械の回転軸(主軸)の回転速度は数万min-1にも達する為、この回転軸が数回転する間の平均値を求めるとしても、それに要する時間は数msec乃至は数十msec程度に過ぎない事による。この様に平均値を求める為に要する時間が、極く短時間で済むのに対して、前記回転軸の送り速度の制御等は、数百msec乃至は数sec毎に行えば十分であり、工具の寿命検出等に関しては、これよりも遥かに長い時間的余裕がある為である。以上の理由により、本発明によれば、前記回転軸に加わる荷重の平均値を、測定のタイミングに関して特に問題を生じる事なく、精度良く求められる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す要部断面図。
【図2】図1のイ部拡大図。
【図3】エンコーダを取り出して示す斜視図。
【図4】センサユニットを取り出して、検出部を被覆する以前の状態(A)と被覆した後の状態(B)とで示す斜視図。
【図5】センサ組立体を取り出して示す略斜視図。
【図6】荷重測定の原理を説明する為の模式図。
【図7】本発明の実施の形態の第2例を示す、図2と同様の図。
【図8】エンコーダを取り出して示す斜視図。
【図9】センサユニットを取り出して、検出部を被覆する以前の状態(A)と被覆した後の状態(B)とで示す斜視図。
【図10】センサ組立体を取り出して示す略斜視図。
【図11】荷重測定の原理を説明する為の模式図。
【図12】車輪支持用転がり軸受ユニットに加わるアキシアル荷重を測定する為に考えられた、従来構造の1例を示す断面図。
【図13】エンコーダの被検出面の一部を径方向から見た図。
【図14】アキシアル荷重に基づくエンコーダの変位により、1対のセンサ組立体の出力信号同士の間に位相差が生じる状況を説明する為の模式図。
【図15】回転軸の先端部に結合固定した切削工具の形状に起因し、この回転軸に加わる荷重及びこの回転軸の変位が変動して、荷重測定に誤差が生じる状況を説明する為の線図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態の第1例]
図1〜6は、請求項1〜4に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。工作機械のハウジング(主軸頭)11の内径側に主軸12を、多列転がり軸受ユニット13により回転自在に支持すると共に、電動モータ14により、前記主軸12を回転駆動自在としている。前記多列転がり軸受ユニット13を構成する複数個の転がり軸受15a〜15dのうち、先端寄りに配置した2個の転がり軸受15a、15bと、基端寄りに配置した2個の転がり軸受15c、15dとには、互いに逆向きの接触角を付与すると共に、これら各転がり軸受15a〜15dに、予圧を付与している。そして、前記主軸12を前記ハウジング11に対して、ラジアル荷重及び両方向のスラスト荷重を支承する状態で、がたつきなく、回転自在に支持している。前記工作機械の運転時には、前記主軸12の先端部(図1の左端部)に、テーパコーン等の結合治具を介してこの主軸12と同心に結合固定した、エンドミル、ドリル等の切削工具16を、高速で回転しつつ被加工物に押し付け、この被加工物に、切削等の加工を施す。この様にして加工を施す際に、前記主軸12には、この被加工物に前記切削工具16を押し付ける事の反作用として、各方向の荷重が加わる。図1に示した構造では、このうち、前記主軸12の軸方向に一致する、アキシアル方向の荷重を求められる様にしている。
【0026】
この為に本例の構造の場合には、前記主軸12の中間部先端寄り部分で、前記多列転がり軸受ユニット13を構成する転がり軸受15b、15c同士の間に、図3に示す様なエンコーダ4aを外嵌固定すると共に、前記ハウジング11に、図2、4、5に示す様なセンサユニット17を支持固定している。このうちのエンコーダ4aは、内輪間座を兼ねるもので、鋼等の磁性金属により造り、全体を円筒状としている。そして、被検出面である前記エンコーダ4aの外周面に前記センサユニット17の検出部を近接対向させ、このセンサユニット17の出力信号中に含まれる、位相に関する情報に基づいて、前記主軸12に作用するアキシアル荷重を求める様にしている。
【0027】
本例の工作機械用荷重測定装置の場合には、コスト低減及び小型化の面から、単一のセンサ組立体6cの出力信号のタイミング比α/L(出力信号が1回変化する周期/出力信号が2回変化する周期)により、前記エンコーダ4a(を固定した前記主軸12)に加わるアキシアル荷重を求める様にしている。この為に使用する前記センサ組立体6cは、前記エンコーダ4aの被検出面の性状に基づき、出力信号が1周期の途中で変化するもので、ホールIC24a、24b、磁気抵抗素子等の磁気検出素子の背面(前記エンコーダ4aの外周面と対向する検出部と反対側の面)に、永久磁石18を配置して前記センサ組立体6cとし、このセンサ組立体6cを合成樹脂製のホルダ19の先端部に包埋保持して、前記センサユニット17を構成している。前記永久磁石18の着磁方向は、前記センサ組立体6cを構成する前記磁気検出素子が、前記エンコーダ4aの被検出面に対向している方向とする。そして、これらセンサ組立体6cとエンコーダ4aとの相対変位に伴って、前記1周期の間で変化するタイミング(1周期の初めから途中で変化する瞬間迄の時間)がずれるものとする。尚、前記1対のホール素子24a、24bは差動式ホールICとして機能して、前記エンコーダ4aの被検出面の性状変化を、高精度に検出する。この為に、前記両ホール素子24a、24bを、前記エンコーダ4aの回転方向に配列している。必要とする精度が高くない場合には、1個のホール素子で代用できる。
【0028】
この為に、前記エンコーダ4aの外周面に、それぞれが特許請求の範囲に記載した被検出部であり、同じく距離変化部である、複数組の被検出用特性変化組み合わせ部20、20を、周方向に関して等間隔に、それぞれ前記アキシアル荷重の測定方向に一致する前記被検出面の幅方向である、前記エンコーダ4aの軸方向に形成している。前記各被検出用特性変化組み合わせ部20、20は、この軸方向に対する傾斜方向が互いに異なる1対の特性変化部である、それぞれが直線状の凹溝21a、21bを、前記エンコーダ4aの周方向に離隔した状態で設けている。この様な凹溝21a、21bを形成した、このエンコーダ4aの外周面に検出部である前記磁気検出素子を近接対向させた、前記センサ組立体6cの出力信号は、このセンサ組立体6cの検出部が対向する部分(検出部の直前部分)を前記各凹溝21a、21bが通過する(前記センサ組立体6cの検出部がこれら各凹溝21a、21bを形成した、前記エンコーダ4aの外周面を走査する)のに伴って変化する(パルス信号を出力する)。又、この変化のタイミング(パルスが発生する位相)は、前記センサ組立体6cの検出部が、前記エンコーダ4aの外周面のうち、軸方向に関して何れの部分を走査するかによって変化する。そして、この変化に基づいて、前記エンコーダ4a(を外嵌した前記主軸12)の軸方向変位量を求められる。この点に就いて、図6により説明する。
【0029】
例えば、前記エンコーダ4aを外嵌した前記主軸12にアキシアル荷重が加わらず、このエンコーダ4aが軸方向中立位置に存在する場合、前記センサ組立体6cの検出部は、図6の(A)に実線aで示す様に、前記エンコーダ4aの外周面のうちで、ほぼ軸方向中央部を走査する。この結果、前記センサ組立体6cの出力信号は、例えば、図6の(C)に示す様に変化する。
【0030】
これに対して、前記エンコーダ4a(を外嵌固定した前記主軸12)に、図6の(A)で下向きのアキシアル荷重が作用し、前記エンコーダ4aが、この図6の(A)で下方に変位すると、前記センサ組立体6cの検出部は、図6の(A)に鎖線bで示す様に、このエンコーダ4aの外周面のうちで、軸方向片側{図6の(A)の上側}に偏った部分を走査する。この結果、前記センサ組立体6cの出力信号は、例えば、図6の(B)に示す様に変化する。アキシアル荷重の作用方向が逆向きの場合には、前記出力信号は、逆方向に変化する。尚、工作機械用の主軸12の場合、アキシアル荷重の作用方向は一定である場合が多い。そこで、アキシアル荷重が加わらない状態で、前記センサ組立体6cの検出部が前記エンコーダ4aの外周面の軸方向一端側を走査し、前記アキシアル荷重が大きくなるに従って、前記センサ6cの走査位置が軸方向他端側に変位する事にしても良い。
【0031】
これら図6の(B)(C)に記載した各周期α、β、Lのうち、全周期Lは、円周方向に隣り合う1対の被検出用特性変化組み合わせ部20、20に関する、前記センサ組立体6cの出力信号の周期である。具体的には、回転方向前側(図6の左側)の被検出用特性変化組み合わせ部20に関する所定部分(図示の例では、この被検出用特性変化組み合わせ部20を構成する1対の凹溝21a、21bのうち、回転方向前側の凹溝21aの回転方向後端縁)での、前記出力信号の立ち上がり部から、回転方向後側(図6の右側)の被検出用特性変化組み合わせ部20に関する同等部分での前記出力信号の立ち上がり部までの時間である。又、第一部分周期αは、回転方向前側の被検出用特性変化組み合わせ部20を構成する1対の凹溝21a、21bのうち、回転方向前側の凹溝21aに関する(前記所定部分での)前記出力信号の立ち上がり部から、回転方向後側の凹溝21bに関する前記出力信号の立ち上がり部までの時間である。更に、第二部分周期βは、回転方向前側の被検出用特性変化組み合わせ部20を構成する1対の凹溝21a、21bのうち、回転方向後側の凹溝21bに関する前記出力信号の立ち上がり部から、回転方向後側の被検出用特性変化組み合わせ部20を構成する1対の凹溝21a、21bのうち、回転方向前側の凹溝21aに関する(前記同等部分での)前記出力信号の立ち上がり部までの時間である。
【0032】
前記各周期α、β、Lのうちの全周期Lは、前記第一部分周期αと前記第二部分周期βとの和(L=α+β)になる。又、前記タイミング比は、α/L(又はβ/L)となる。尚、前記各周期のうちの全周期Lは、出力信号が2回変化する周期(2パルス分の周期)であり、前記エンコーダ4aの回転速度が一定である限り、一定である。又、前記第一部分周期α及び前記第二部分周期βが、前記出力信号が1回変化する周期(1パルス分の周期)であり、前記エンコーダ4aの回転速度が一定であっても、このエンコーダ4aの軸方向位置が変化すると変化する。
【0033】
図6から明らかな通り、前記タイミング比α/L又はβ/L(出力信号が1回変化する周期/出力信号が2回変化する周期)は、前記エンコーダ6cの軸方向位置に伴って変化し、このタイミング比α/L又はβ/Lの変化量は、この軸方向位置の変化量(軸方向変位量)が大きくなる程大きくなる。又、この軸方向変位量は、前記エンコーダ4aを外嵌固定した、前記主軸12に加わるアキシアル荷重が大きくなる程大きくなる。又、このアキシアル荷重に基づく前記軸方向変位量は、前記多列転がり軸受ユニット13を構成する前記各転がり軸受15a〜15dのうち、前記アキシアル荷重を支承する転がり軸受の剛性が大きくなる程小さくなる。又、このアキシアル荷重と前記軸方向変位量との関係は、この剛性を勘案した計算により、或は既知のアキシアル荷重と軸方向変位量との関係を測定する実験により、予め求めておく事ができる。従って、図1〜6に示す様な構造を採用すれば、低コストで、しかも小型に構成できる構造で、工作機械の主軸12に加わるアキシアル荷重を求められる。
【0034】
上述の説明から明らかな通り、本例の工作機械用荷重測定装置によれば、前記各被検出用特性変化組み合わせ部20、20を、前記エンコーダ4aの外周面のn箇所に設けたとすれば、前記主軸12に加わるアキシアル荷重を、この主軸12が1回転する間にn回求められる。一方、この主軸12の先端部に結合固定した前記切削工具16の先端面又は外周面には、m箇所の切削部22、22が存在する。そして、これらm箇所の切削部22、22に基づいて、前記主軸12に加わる荷重が、前述の図15に破線で示した様に、この主軸12が1回転する間に、m回変動する。この変動に基づいて、前記主軸12に加わる荷重の測定値の平均値に誤差を生じない様にするべく、前記切削工具16に設けられた切削部22、22の数mを、前記エンコーダ4aの外周面に設けた前記各被検出用特性変化組み合わせ部20、20の組数nの非整数倍(m/n≠整数)としている。
この為に本例の場合には、前述した理由により、極端に処理速度が速い高価なCPUを使用しなくても、複数の切削部22、22を円周方向に関して等間隔に設けた前記切削工具16を先端部に結合固定した、前記主軸12に加わるアキシアル荷重の平均値を、精度良く測定できる。
【0035】
[実施の形態の第2例]
図7〜11は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合も、上述した実施の形態の第1例の場合と同様に、主軸12の軸方向に一致する、アキシアル方向の荷重を求められる様にしている。この為に本例の場合には、前記主軸13の中間部先端寄り部分で、多列転がり軸受ユニット13(全体構成に就いては前述の図1参照)を構成する転がり軸受15b、15c同士の間に、図8に示す様なエンコーダ4bを外嵌固定すると共に、ハウジング11に、センサユニット17aを支持固定している。このうちのエンコーダ4bは、鋼等の磁性金属により全体を円筒状としたもので、被検出面であるこのエンコーダ4bの外周面に、前記センサユニット17aの検出部を、径方向に近接対向させている。そして、このセンサユニット17aの出力信号中に含まれる、位相に関する情報に基づいて、前記主軸13に作用するアキシアル荷重を求める様に構成している。
【0036】
この為に本例の場合には、前記エンコーダ4bの外周面の一部に、径方向に見た形状が「く」字形であって、それぞれが特許請求の範囲に記載した被検出部であり距離変化部でもある、凹溝23、23を形成している。これら各凹溝23、23は、全体として前記エンコーダ4bの外周面の幅方向(このエンコーダ4bの軸方向)に設けられているが、各部分は、この幅方向に対し傾斜している。又、傾斜方向は、幅方向片半部と同他半部とで、互いに逆に(但し、傾斜角度の絶対値は両半部同士の間で互いに等しく)している。尚、本例の場合も、前記エンコーダ4bに、内輪間座としての機能を持たせている。
【0037】
一方、前記センサユニット17aは、合成樹脂製のホルダ19aの先端部に、1対のセンサ組立体6a、6bを支持固定して成る。
これら両センサ組立体6a、6bはそれぞれ、図10、11に示す様に、1個の永久磁石18aと、1対のホール素子24a、24bと、IC25とを備える。
このうちの永久磁石18aは、前記エンコーダ4bの外周面と前記センサユニット17aの検出部とが対向する方向である、このエンコーダ4bの径方向に着磁されている。本例の場合には、図10に示す様に、前記両センサ組立体6a、6bに組み込む永久磁石18a、18aの着磁方向を互いに同じ(前記エンコーダ4bの径方向に関して内側をN極、外側をS極)としている。
【0038】
又、前記両ホール素子24a、24bは、前記永久磁石18aの着磁方向両端面のうちで、前記エンコーダ4bの外周面と対向する、N極側の端面に、前記主軸12の回転方向(図10、11の左右方向)に離隔して配置している。前記永久磁石18aの直径は、前記両ホール素子24a、24bをこの永久磁石18aの端面に配置できる程度に十分に大きくしている。そして、この永久磁石18aを、前記両ホール素子24a、24bに掛け渡した状態で設けている。尚、前記両ホール素子24a、24bは、互いに同じ特性を有する(同種のものを使用する)。
【0039】
又、前記IC25は、前記両ホール素子24a、24bが検出する磁束密度(実際には、この磁束密度の差に応じて変化する電圧信号)の差を求め、更にこの差を表す信号と互いに異なる2種類の閾値とを比較する事で生成したディジタル信号を、前記センサ組立体6a(6b)の出力信号として出力する。即ち、このセンサ組立体6a(6b)は、前述した実施の形態の第1例の場合と同様に、磁気検出素子として、特許文献5や非特許文献1、2等により従来から広く知られている差動式ホールICの原理を利用し、前記各凹溝23、23の周方向端縁の位置を精度良く求められる様にしている。そして、図11の(A)(B)に示す様に、これら各凹溝23、23の片半部を走査するセンサ組立体6aの出力信号と、同じく他半部を走査するセンサ組立体6bの出力信号との間の位相差に基づき、前記エンコーダ4bを外嵌固定した主軸12に加わるアキシアル荷重を測定可能としている。前記位相差に基づいてこのアキシアル荷重を求める原理は、前述の図13〜14に示した従来構造の場合と同様である。
【0040】
この様な本例の構造の場合も、前記各凹溝23、23を前記エンコーダ4bの外周面のn箇所に設けたとすれば、前記主軸12に加わるアキシアル荷重を、この主軸12が1回転する間にn回求められる。この主軸12の先端部に結合固定した前記切削工具16の先端面及び外周面にm箇所の切削部22、22(図1参照)が存在すれば、前記主軸12に加わる荷重が、この主軸12が1回転する間に、m回変動する事も、前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。そこで、本例の場合も、前記切削工具16に設けられた切削部22、22の数mを、前記エンコーダ4bの外周面に設けた前記各凹溝23、23の組数nの非整数倍(m/n≠整数)として、前記変動に基づいて、前記主軸12に加わる荷重の平均値に誤差を生じない様にしている。
この為に本例の場合も、前述した実施の形態の第1例と同様に、極端に処理速度が速い高価なCPUを使用しなくても、前記主軸12に加わる荷重の平均値を、精度良く測定できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明を実施する場合に、主軸等の回転軸に、この回転軸と同心に外嵌固定したエンコーダの被検出面を軸方向側面とし、この被検出面にセンサの検出部を軸方向に対向させれば、前記回転軸に加わるラジアル荷重を求められる。
【符号の説明】
【0042】
1 外輪
2 ハブ
3 転動体
4、4a、4b エンコーダ
5 カバー
6a、6b、6c センサ組立体
7 透孔
8 柱部
9 第一特性変化部
10 第二特性変化部
11 ハウジング
12 主軸
13 多列転がり軸受ユニット
14 電動モータ
15a、15b、15c、15d 転がり軸受
16 切削工具
17、17a センサユニット
18、18a 永久磁石
19、19a ホルダ
20 被検出用特性変化組み合わせ部
21a、21b 凹溝
22 切削部
23 凹溝
24a、24b ホール素子
25 IC
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開2002−187048号公報
【特許文献2】特開2006−317420号公報
【特許文献3】特開2008−39155号公報
【特許文献4】特開2008−64731号公報
【特許文献5】特開平8−220200号公報
【非特許文献】
【0044】
【非特許文献1】旭化成株式会社のホームページ、“ホールICの動作原理:ホールIC:製品紹介:旭化成の磁気センサ”、[online]、[平成21年8月13日検索]、インターネット<URL:http://www.asahi-kasei.co.jp/ake/jp/product/ic/outline.html>
【非特許文献2】ローム株式会社のホームページ、“交番磁界検出ホールIC”、[online]、[平成21年8月13日検索]、インターネット<URL:http://www.rohm.co.jp/products/databook/sensor/pdf/bu52040hfv-j.pdf>

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しないハウジングと、それぞれが予圧を付与された複数の転がり軸受により、このハウジングの内側に回転自在に支持された回転軸と、この回転軸の先端部にこの回転軸と同心に支持固定された、複数の切削部を円周方向に関して等間隔に設けた切削工具と、前記回転軸の一部に支持固定された、この回転軸と同心の被検出面を有するエンコーダと、この被検出面に検出部を対向させた状態で前記ハウジングに、直接又は他の部材を介して支持された少なくとも1個のセンサ組立体と、このセンサ組立体の出力信号を処理する演算器とを備え、この演算器は、このセンサ組立体の出力信号の位相に関する情報に基づいて、前記回転軸に作用する荷重を求める工作機械用荷重測定装置であって、前記エンコーダの被検出面は、円周方向の一部に、特性が円周方向に関して隣り合う部分と異なる複数組の被検出部を、それぞれ測定すべき荷重の作用方向に関して傾斜した状態で、円周方向に関して等間隔に設けられており、前記切削工具に設けられた切削部の数mを、前記エンコーダの被検出面に存在する被検出部の組数nで除した数m/nが、整数ではない事を特徴とする工作機械用荷重測定装置。
【請求項2】
エンコーダが磁性材製であり、被検出部が、このエンコーダの被検出面の幅方向に形成された、センサ組立体の検出部との距離が残部と異なる除肉部若しくは突条部である距離変化部であって、この距離変化部は、少なくとも一部が、測定すべき荷重の作用方向に対して傾斜した形状を有するものであり、
前記センサ組立体は、前記被検出面と前記検出部とが対向する方向に着磁された永久磁石と、この永久磁石の着磁方向両端面のうちでこの被検出面と対向する端面に配置された磁気検出素子と、この磁気検出素子が検出する磁束密度の変化を表す信号を出力するICとを備えたものであり、
演算器は、前記センサ組立体の出力信号に基づいて回転軸に作用する荷重を求める、請求項1に記載した工作機械用荷重測定装置。
【請求項3】
単一のセンサ組立体を備えており、このセンサ組立体は、エンコーダの回転に伴う距離変化部の通過に伴って出力信号を変化させるものであり、回転軸に加わる荷重に伴う前記センサ組立体と前記エンコーダとの相対変位に伴って、1周期の間で前記出力信号が変化するタイミングがずれるものであり、荷重を求める為に使用する位相に関する情報が、前記出力信号の1周期に対する上記タイミングの比である、請求項2に記載した工作機械用荷重測定装置。
【請求項4】
エンコーダが円筒状に造られたものであって回転軸に外嵌固定されており、被検出面がこのエンコーダの外周面であり、距離変化部が、この外周面に形成された複数の凹溝若しくは突条であって、これら各凹溝若しくは突条は、このエンコーダの軸方向に対する傾斜方向が互いに異なる1対の凹溝若しくは突条をこのエンコーダの回転方向に隣り合わせて対としたものであり、単一のセンサ組立体の検出部がこれら各凹溝若しくは各突条に対向しており、前記1対の凹溝若しくは突条を1組とする被検出部の組数がnである、請求項3に記載した工作機械用荷重測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−161588(P2011−161588A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29153(P2010−29153)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】