説明

工作機械

【課題】1軸方向に移動自在なサドルに1軸方向と直交する方向に移動するテーブルを搭載した工作機械において、テーブルに発生するヨーイングを補正する。
【解決手段】サドル3上にY軸方向に所定間隔をあけてX軸方向に移動する一対のリニアモータ7を配置するとともに、Y軸方向と平行となるようにY軸ガイド8を取り付ける。テーブル4をY軸ガイド8に、X軸方向には固定的に、テーブル4を通るZ軸回りには所定量回動可能に連結する。テーブル4のX軸方向の両端部分のY軸方向における位置を検出し、この検出位置に基づいて各リニアモータ7の位置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドに対して1軸方向に移動自在なサドルと、このサドル上に1軸方向と直交する方向に移動自在なテーブルを積載した工作機械に関する。より詳しくは、テーブルに発生するヨーイングを補正できる積載構造の工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベッドに対して1軸方向に移動自在なサドルと、この1軸方向と直交する方向に移動自在なテーブルをサドル上に積載した工作機械が知られている。このような積載構造の工作機械においては、サドル上に設けられたガイドレールを有するガイド部により、テーブルがガイドレールに沿って移動するため、ガイドレールの真直度に応じてテーブルにヨーイングが発生する。このため、ガイドレールの取り付けには相当の熟練度が要求され、特に長いガイドレールを用いる大型の工作機械においては、上記の積載構造を採用することが困難になっている。
【0003】
特許文献1には、積載構造の工作機械において自立駆動する回転補助テーブルを設けてテーブルのヨーイングを補正する技術が開示され、ヨーイングによるテーブルの移動誤差を測定し、この移動誤差を補正する調整量を算出して補正する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−117034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、自立駆動する回転補助テーブルを新たに設けると工作機械自体が大型化する虞がある。また、測定した移動誤差から調整量を算出すると工作機械の制御が複雑になる虞がある。
【0006】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、簡単な構成でテーブルのヨーイング補正できる工作機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の工作機械は、1軸方向に移動自在なサドルと、サドル上に配置され、1軸方向と直交する方向に移動自在なテーブルと、サドル上に1軸方向に所定間隔をあけて配置され、直交方向にテーブルを移動させる一対のリニアモータと、テーブルの1軸方向の両端部分の直交方向における位置を検出する位置検出部と、直交方向と平行となるようにサドル上に取り付けられたガイドレールとガイドレール上を移動自在な軸受とを有するガイド部と、テーブルを軸受に、1軸方向には固定的に、テーブルを通り且つ1軸方向と直交方向とに垂直な軸回りには所定量回動可能に連結する連結部と、位置検出部によるテーブルの1軸方向の両端部分の直交方向における検出位置に基づいて、各リニアモータの位置を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。ここで、本発明の工作機械における「軸受」とは、ガイドレ―ルに沿って案内するガイド体を意味するものでる。
【0008】
ここで、本発明の工作機械における「サドル上に1軸方向に所定間隔をあけて配置」とは、サドル上に各リニアモータの固定子を1軸方向に所定間隔をあけて配置することを意味する。また、上記「一対のリニアモータによって直交方向に移動自在」とは、各リニアモータの可動子に推進されることで直交方向に移動自在であることを意味する。また、上記「テーブルの1軸方向の両端部分」とは、テーブルの1軸方向の両端からテーブル全体の15パーセント程度の領域内の部分を意味する。また、上記「1軸方向には固定的」とは、1軸方向に厳密に固定する意味ではなく、ずれや撓み等による生じ得る1軸方向の微小な移動を含みつつ、1軸方向に固定する意味である。また、上記「リニアモータの位置」とは、リニアモータの可動子の位置を意味する。
【0009】
また、本発明の工作機械は、制御部が、両端部分の直交方向における相対位置が一定となるように、各リニアモータの位置を制御するものであってもよい。
【0010】
また、本発明の工作機械は、連結部が、垂直軸と同軸となる回転軸を有する回転軸受を介してテーブルを軸受に連結するものであってもよい。
【0011】
また、本発明の工作機械は、ガイド部が、1軸方向に所定間隔をあけて配置された2本のガイドレールとガイドレール毎にガイドレール上を移動する3つの軸受とを有するものであり、連結部が、テーブルを、中央に配置された軸受には1軸方向に固定的に、両側に配置された軸受には1軸方向に所定量移動可能に連結するものであってもよい。
【0012】
また、本発明の工作機械は、ガイド部が、1軸方向に所定間隔をあけて配置された2本のガイドレールとガイドレール毎にガイドレール上を移動する2つの軸受とを有するものであり、連結部が、テーブルを同一円上に配置された軸受に同一円の周方向にのみ所定量移動可能に連結するものであってもよい。
【0013】
ここで、本発明における「周方向にのみ所定量移動可能」とは、厳密に周方向にのみ所定量移動可能とする意味ではなく、ずれや撓み等によって生じ得る周方向以外の方向の微小な移動を含みつつ、周方向に所定量移動可能とする意味である。
【0014】
また、本発明の工作機械は、サドルの1軸方向の移動を案内する第2のガイド部を備え、第2のガイド部が、直交方向に所定間隔をあけて配置された3つのガイド部からなり、3つのガイド部のうち、中間のガイド部がサドルの中央部分に取り付けられているものであってもよい。
【0015】
ここで、本発明における「サドルの中央部分に取り付ける」とは、サドル底面の中央部分に軸受を取り付けることを意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の工作機械によれば、テーブルの1軸方向の両端部分の直交方向における位置を検出し、テーブルを1軸方向には固定的に、テーブルを通り且つ1軸方向と直交方向とに垂直な軸回りには所定量回動可能に軸受と連結し、テーブルの1軸方向の両端部分の直交方向における検出位置に基づいて、各リニアモータの位置を制御するため、自立駆動する回転テーブルを設けることや、テーブルの移動誤差による調整量の算出処理を行う必要がなく、簡単な構成でテーブルのヨーイングを補正できる。
【0017】
また、本発明の工作機械によれば、両端部分の相対位置が一定となるように、各リニアモータの位置を制御すればよく、複雑な制御を行うことなくテーブルのヨーイングを補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態である工作機械の平面図
【図2】第1の実施形態である工作機械の正面図
【図3】第1の実施形態である工作機械の側面図
【図4】テーブルのヨーイングを説明する図
【図5】制御部のブロック構成図
【図6】第2の実施形態である工作機械の平面図
【図7】第2の実施形態である工作機械の正面図
【図8】第2の実施形態である工作機械の側面図
【図9A】撓みスペーサの外観斜視図(その1)
【図9B】撓みスペーサの外観斜視図(その2)
【図10】第3の実施形態である工作機械の平面図
【図11】第3の実施形態である工作機械の正面図
【図12】第3の実施形態である工作機械の側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる工作機械の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態である工作機械の平面図、図2は図1の下方から図中Y軸方向に見た本発明の第1の実施形態である工作機械の正面図、図3は図1を右方から図中X軸方向に見た本発明の第1の実施形態である工作機械の側面図を示す。なお、図面に示すX軸、Y軸およびZ軸は互いに直交するものである。
【0020】
工作機械1は、工作機械1は、ベッド2、ベッド2上にX軸方向に移動自在なサドル3、サドル3上にY軸方向に移動自在なテーブル4を備えており、テーブル4上に被加工物を載置するものである。また、工作機械1は、テーブル4の上方でZ軸方向に移動可能な不図示の加工ヘッドを有するものであり、この加工ヘッドに取り付けられた工具でテーブル4に載置された被加工物を機械加工するものである。
【0021】
工作機械1は、ベッド2上にX軸リニアモータ5およびX軸ガイド6を備えている。X軸リニアモータ5は、Y軸方向に所定間隔をあけて配置された一対のリニアモータであって、サドル3の底面に取り付けられた可動子5a,5cと、ベッド2上に取り付けられた、可動子5a,5cに対して所定のギャップを有しつつ、対向配置される固定子5b,5dとから構成されている。X軸リニアモータ5は、可動子5a,5cに一次側励磁コイル、固定子5b,5dに所定ピッチで配列させた複数の二次側永久磁石を用いることにより、可動子5a,5cの一次側励磁コイルを励磁して可動子5a,5cに推力を供給してサドル3をX軸方向に移動自在にさせるものである。
【0022】
また、X軸ガイド6は、サドル3のX軸方向の移動を案内するものであり、Y軸方向に所定間隔をあけて配置された3つのガイドであって、ベッド2上に取り付けられたガイドレール6a,6c,6eと、サドル3の底面に取り付けた、ガイドレール6a,6c,6e上を移動する軸受(ガイド体)6b,6d,6fとから構成されるものである。
【0023】
そして、X軸ガイド6は、中間の軸受6dをサドル3の底面の中央部分、両側の軸受6b,6fをサドル3の底面の両側部分に取り付けている。これにより、被加工物、テーブル4およびサドル3の荷重によってサドル3が図3において下に凸となるように撓むことを防止できる。ここで、軸受6dは、サドル3の上方に位置する不図示の加工ヘッド(工具の基準位置)の可能な限り真下近傍であって両側のガイドレール6a,6eから等間隔にあるガイドレール6c上に取り付けられることが望ましい。
【0024】
また、工作機械1は、サドル3の底面の中央部分近傍に取り付けた光センサとベッド2上にX軸方向に平行に取り付けたリニアスケールとから構成されるX軸リニアエンコーダXSを備えている。このX軸リニアエンコーダXSは、光センサがリニアスケールを読み取ることにより、サドル3のX軸方向の位置を検出するものである。なお、X軸リニアエンコーダXSはマグネスケールをホール素子等の磁力センサで読み取る構成であってもよい。
【0025】
また、工作機械1は、サドル3上にY軸リニアモータ7およびY軸ガイド8を備えている。Y軸リニアモータ7は、X軸方向に所定間隔をあけて配置された一対のリニアモータであって、テーブル4の底面に取り付けられた可動子7a,7cと、サドル3上に取り付けられた、可動子7a、7cに対して所定のギャップを有しつつ、対向配置される固定子7b,7dとから構成されている。なお、Y軸リニアモータ7の構造はX軸リニアモータ5と同じであり、その説明は省略する。
【0026】
Y軸ガイド8は、後述する連結部100がY軸ガイド8の軸受8b,8dにテーブル4を連結することにより、テーブル4のY軸方向の移動を案内するものである。そして、Y軸ガイド8は、X軸方向に所定間隔をあけて配置された2つのガイドであって、サドル3上に取り付けられたガイドレール8a,8cと、テーブル4の底面に取り付けた、ガイドレール8a,8c上を移動する軸受8b,8dとから構成される。また、軸受8b,8dは、図1に示すように、ガイドレール8a,8c上を移動する2つの軸受によって構成される。
【0027】
また、工作機械1は、テーブル4の底面のX軸方向の両端部分近傍に2つの光センサとサドル3上のX軸方向の両側部分近傍にY軸方向に平行に取り付けた2つのリニアスケールとから構成されるY軸リニアエンコーダYS1,YS2を備えている。このY軸リニアエンコーダYS1,YS2は、テーブル4のX軸方向の両端部分のY軸方向の位置を検出するものである。なお、Y軸リニアエンコーダYS1,YS2の構造はX軸リニアエンコーダXSと同じであり、その説明は省略する。
【0028】
ここで、X軸方向に移動自在なサドル上にY軸方向に移動自在なテーブル4を積載した工作機械において、テーブル4に発生するヨーイングについて図4を用いて説明する。この図4においては、テーブル4が後述する連結部100を介さずに軸受8b,8dに直に固定されているものとする。なお、図4は、テーブル4のみに番号を付してその他の番号を省略している。
【0029】
図4の右図は、Y軸方向の真直度が0であるガイドレール8a,8c上を移動する軸受8b,8dによって、テーブル4がY軸方向に移動する状態を図示している。ガイドレール8a,8cのY軸方向の真直度が0であるとき、軸受8b,8dもY軸方向に真直ぐ移動するため、テーブル4にヨーイングが発生しない。すなわちテーブル4の両側部分のY軸方向の移動量が等しくなる。
【0030】
一方、図4の左図は、Y軸方向の真直度に誤差を有するガイドレール8a,8c上を移動する軸受8b,8dによって、テーブル4がY軸方向に移動する状態を図示している。ガイドレール8a,8cのY軸方向の真直度に誤差があるとき、軸受8b,8dもガイドレール8a,8cに沿って曲がって移動するため、テーブル4にヨーイングが発生する。すなわちテーブル4の左側部分と右側部分とではY軸方向の移動量に差が生じてしまう。
【0031】
また、ガイドレール6a,6c,6eがX軸方向の真直度に誤差を有すると、サドル3がガイドレール6a,6c,6eに沿って曲がって移動する。そして、サドル3のY軸方向の位置に関わらず、不図示の加工ヘッド(工具位置)とガイドレール6a,6c,6eとの相対位置はほとんど変わらないため、X軸方向のヨーイングが発生しても、Y軸方向の位置誤差は、Y軸方向の位置に関わらず略同じとなる。しかしながら、X軸方向の位置が変化すると、不図示の加工ヘッドとY軸方向のガイドレール8a,8cとの相対位置関係が変化し、このX軸方向の真直度の誤差によるヨーイングは、Y軸方向の送り精度に影響を与える。したがって、Y軸方向の移動ストローク(最大移動距離)に比較してX軸方向の移動ストロークが大きい工作機械においては、図4に示されるように、ガイドレール6a,6c,6eのX軸方向の真直度の誤差による影響を無視できなくなる。
【0032】
再び図1〜図3を参照する。工作機械1は、上記のようなテーブル4のヨーイングを防止するために、連結部100を介して軸受8b,8dとテーブル4とを連結する。この連結部100は、軸受8b,8d上に取り付けられたテーブル旋回ベース101と、このテーブル旋回ベース101に取り付けられた回転軸受102とから構成されている。
【0033】
テーブル旋回ベース101は、本図に示すように、4つの軸受8b,8dが同一な円C上に位置するように取り付けられている。また、回転軸受102は、回転軸受102の回転軸がテーブル4を通るZ軸と同軸となるようにテーブル旋回ベース101に取り付けられている。この回転軸受102は、少なくとも4つの軸受8b,8dを結ぶ円Cの内側の領域であって、可能な限り中心Oと同軸に配置されることが望ましい。また、4つのローラ103は、可能な限り円Cの同心円上に均等に分散して配置(放散同形)されることが望ましく、4つの軸受8b,8dの直上に配置されることがより望ましい。本実施形態では、回転軸受102は、回転軸がテーブル4の中心Oを通るZ軸と同軸となるように取り付けている。また、円Cの中心は、テーブル4の中心Oと一致している。
【0034】
これにより、テーブル4は、X軸方向には固定されるとともに、中心Oを通るZ軸方向の軸回りに回動可能な状態で軸受8b,8dに連結される。本実施形態では、回転軸受102は、外輪をテーブル旋回ベース101に固定して取り付け、回動可能な内輪がテーブル4の底面から突出する不図示の軸を軸支しているものとするが、特に限定するものでない。テーブル4がX軸方向には固定されるとともに、中心Oを通るZ軸回りに回動可能となるように軸受8b,8dに連結されるならば、どのような取り付け方法であってもよい。
【0035】
また、本実施形態では、テーブル旋回ベース101の軸受8b,8dの直上部分に円Cの周方向に転動可能なローラ103を設けている。これにより、被加工物やテーブル4の荷重を、ローラ103を介して軸受8b,8dに分散させて回転軸受102に集中することを回避している。
【0036】
工作機械1は、X軸リニアエンコーダXSおよびY軸リニアエンコーダYS1,YS2によるサドル3およびテーブル4のX軸方向の両端部の検出位置に基づいて、X軸リニアモータ5およびY軸リニアモータ7を制御する制御部9を備えている。図5は制御部9のブロック構成図である。制御部9は、図5に示すように、移動指示受付部91、駆動制御部92,93および駆動出力部94,95から構成されている。
【0037】
移動指示受付部91は、不図示の操作パネルを介してユーザからの移動指示を受け付けるとともに、移動指示に基づく移動指令を駆動制御部92,93に出力するものである。駆動制御部92および駆動出力部94はX軸リニアモータ5を、駆動制御部93および駆動出力部95はY軸リニアモータ7を制御するものである。
【0038】
駆動制御部92は、移動指令およびX軸リニアエンコーダXSからのサドル3のX軸方向の位置情報に基づいて、X軸リニアモータ5へ指令値を出力するものであり、目標位置演算手段92a、位置検出手段92b、速度検出手段92c、位置補償手段92dおよび速度補償手段92eを備えている。
【0039】
目標位置演算手段92aは、移動指令に基づいて単位時間毎の目標位置を演算して位置補償手段92dに出力するものである。単位時間は駆動制御部92の演算処理速度に依存して決められている。
【0040】
位置検出手段92bは、X軸リニアエンコーダXSからのサドル3のX軸方向の位置情報に基づいて可動子5a、5cのX軸方向の位置を検出するものである。
【0041】
速度検出手段92cは、位置検出手段92bから単位時間毎に位置情報を受け取り、可動子5a,5cの速度を検出するものである。
【0042】
位置補償手段92dは、目標位置演算手段92aから目標位置、位置検出手段92bから検出位置をそれぞれ受け取り、目標位置と検出位置との偏差に所定の位置ゲインを付与した目標速度を速度補償手段92eに出力するものである。
【0043】
速度補償手段92eは、位置補償手段92dから目標速度、速度検出手段92cから検出速度をそれぞれ受け取り、目標速度と速度情報との偏差に所定の速度ゲインを付与した目標電流を駆動出力部94に出力するものである。
【0044】
駆動出力部94は、目標電流に基づいてX軸リニアモータ5に駆動電流を出力するものであり、電流補償手段94a、94bおよび電流増幅手段94c,94dを備えている。電流補償手段94a,94bは、目標電流を受け取るとともに、電流増幅手段94c,94dの駆動電流をフィードバックして電流増幅手段94c,94dに電流指令を出力するものである。電流増幅手段94c,94dは、電流補償手段94a,94bから電流指令を受け取り、駆動電流をX軸リニアモータ5に出力するものである。
【0045】
駆動制御部93は、移動指令およびY軸リニアエンコーダYS1,YS2からのテーブル4のX軸方向の両端部分の位置情報に基づいてY軸リニアモータ5へ指令値を出力するものである。そして、駆動制御部93は、Y軸リニアエンコーダYS1からのテーブル4のX軸方向の左側端部(図2参照)の位置情報に基づいてY軸リニアモータ7の可動子7aに関する指令値、Y軸リニアエンコーダYS2からのテーブル4のX軸方向の右側端部(図2参照)の位置情報に基づいてY軸リニアモータ7の可動子7cに関する指令値を出力するものである。駆動制御部93は、駆動制御部92と同様に、目標位置演算手段93a、位置検出手段93b,93c、速度検出手段93d,93e、位置補償手段93f,93gおよび速度補償手段92h,93iを備えている。
【0046】
目標位置演算手段93aは、移動指令に基づいて単位時間毎の各目標位置を演算して位置補償手段93f,93gにそれぞれ出力するものである。そして、目標位置演算手段93aは、Y軸リニアエンコーダYS1,YS2からの各位置情報が相対的に一定となるように、各目標値を演算して出力するものである。
【0047】
位置検出手段93b,93cはY軸リニアエンコーダYS1,YS2からのテーブル4のX軸方向の両端部分のY軸方向の位置情報に基づいて可動子7a,7cのY軸方向の位置を検出するものである。
【0048】
速度検出手段93d,93e、位置補償手段93f,93g、速度補償手段93h,93iは、速度検出手段92c、位置補償手段92d、速度補償手段92eと同様であり、その説明は省略する。
【0049】
駆動出力部95は、目標電流に基づいてY軸リニアモータ7に駆動電流を出力するものであり、電流補償手段95a,95bおよび電流増幅手段95c,95dを備えている。これらの電流補償手段95a,95bおよび電流増幅手段95c,95dは、電流補償手段94a、94bおよび電流増幅手段94c,94dと同様であり、その説明は省略する。
【0050】
再び図1〜図3を参照して第1の実施形態の作用について説明する。X軸リニアモータ5によってサドル3がX軸方向、Y軸リニアモータ7によってテーブル4がY軸方向に移動すると、テーブル4にX軸ガイド6およびY軸ガイド8の真直度の誤差によるヨーイング(図中矢印方向)が発生する。
【0051】
テーブル4は、テーブル旋回ベース101に取り付けられた回転軸受102によってX軸方向には固定されつつ、テーブル4の中心Oを通るZ軸回りに回動可能で軸受8b、8cに連結されているため、制御部9が、Y軸リニアエンコーダYS1,YS2の位置情報が相対的に一定となるようにY軸リニアモータ7を制御することにより、発生したヨーイングを相殺する方向にテーブル4が回動してヨーイングが補正される。
【0052】
上記の実施形態によれば、Y軸リニアエンコーダYS1,YS2がテーブル4のX軸方向の両端部分のY軸方向の位置を検出し、簡易な構造の連結部100がテーブル4をX軸方向には固定的に、テーブル4の中心を通るZ軸回りに回動可能に軸受8b,8dに連結し、制御部9がテーブル4の両端部分のY軸方向の検出位置に基づいて、Y軸リニアモータ7を制御することにより、自立駆動する回転補助テーブルを設けることなく、テーブル4のヨーイングを補正できる。
【0053】
また、上記の実施形態によれば、制御部9は、テーブル4の両端部分のY軸方向の相対位置が一定となるように、Y軸リニアモータ7の位置を制御すればよく、ヨーイングによる移動誤差の調整量を計算する複雑な制御を行うことなく、テーブル4のヨーイングを補正できる。
【0054】
次に本発明の工作機械の第2の実施形態について説明する。図6は本発明の第2の実施形態である工作機械の平面図、図7は図6の下方から図中Y軸方向に見た本発明の第2の実施形態である工作機械の正面図、図8は図6を右方から図中X軸方向に見た本発明の第2の実施形態である工作機械の側面図を示す。
【0055】
第2の実施形態は、Y軸ガイド8の軸受8b,8dの構成および連結部100の構成が第1の実施形態とは異なるものである。したがって、異なる内容のみを説明し、その他の内容についての説明を省略するとともに、第1の実施形態と同じ構成には同一の番号を付すものとする。
【0056】
第2の実施形態は、図に示すように、Y軸ガイド8の軸受8b,8dが3つの軸受から構成されるものである。そして、連結部100は、軸受8b,8dの中間の軸受上に配置された2つの固定スペーサ104と軸受8b,8dの両側の軸受上に配置された4つの撓みスペーサ105とで構成されるものである。
【0057】
固定スペーサ104は、テーブル4を中間の2つの軸受に固定的に連結するものである。固定スペーサ104は、テーブル4を中間の軸受に完全に固定するものに限定されず、中間の軸受とガイドレール8a,8cとのクリアランスや、固定スペーサ104の撓み等による微小変位を含みつつ連結するものである。
【0058】
撓みスペーサ105は、テーブル4を両側の4つの軸受にX軸方向に所定量移動可能に連結するものである。図9Aおよび図9Bは、撓みスペーサ105の外観斜視図を示すものである。撓みスペーサ105は、底面105aを軸受に、上面105bをテーブル4に取り付けるものであり、図に示すようなスリット105cが形成されている。このスリット105cを設けることにより、下部分105dと上部分105eが図中に実線および破線の矢印で示すような互いに異なる方向に所定量だけ移動可能な構造となる。そして、第2の実施形態では、上記の移動方向がX軸方向となるように、撓みスペーサ105を両側の4つの軸受とテーブル4とに取り付けている。
【0059】
再び図6〜図8を参照する。テーブル4は、固定スペーサ104によって中間の軸受に固定的に、撓みスペーサ105によって両側の軸受にX軸方向に所定量移動可能に連結される。これにより、テーブル4は、X軸方向には固定されつつ、テーブル4の中心Oを通るZ軸回りに所定量だけ回動可能な状態で軸受8b,8dに連結される。したがって、制御部9が第1の実施形態と同様な制御を行うことにより、第1の実施形態と同様にテーブル4に発生するヨーイングを補正することができる。この第2の実施形態は、テーブル旋回ベース101を用いる必要がなく、連結部100の高さを低くすることが可能となり、工作機械1の小型化や、作業性が向上する点において有利である。
【0060】
次に本発明の工作機械の第3の実施形態について説明する。図10は本発明の第3の実施形態である工作機械の平面図、図11は図10の下方から図中Y軸方向に見た本発明の第3の実施形態である工作機械の正面図、図12は図10を右方から図中X軸方向に見た本発明の第3の実施形態である工作機械の側面図を示す。
【0061】
第3の実施形態は、連結部100の構成において第1および第2の実施形態と異なる。したがって、異なる内容のみを説明し、その他の内容についての説明を省略するとともに、第1の実施形態と同じ番号を付すものとする。
【0062】
連結部100は、図に示すように、軸受8b,8d上に取り付けられたテーブル旋回ベース101と、テーブル旋回ベース101上に軸受8b,8dの直上となるように取り付けられた撓みスペーサ105とで構成される。
【0063】
テーブル旋回ベース101は、第1の実施形態と同様に、4つの軸受8b,8dが同一な円C上に位置するように取り付けられている。また、円Cの中心は、テーブル4の中心Oと一致している。撓みスペーサ105は、撓みスペーサ105の移動方向が円Cの周方向となるように、テーブル旋回ベース101およびテーブル4に取り付けられている。
【0064】
これにより、テーブル4は、テーブル4の中心Oを通るZ軸回りに所定量回動可能な状態で軸受8b、8dに連結される。また、テーブル4は、円Cの周方向にのみ移動可能であるため、X軸方向には固定的な状態で軸受8b,8dに連結される。したがって、制御部9が第1および第2の実施形態と同様な制御を行うことにより、第1および第2の実施形態と同様にテーブル4に発生するヨーイングを補正することができる。
【0065】
第3の実施形態では、テーブル4の荷重によってガイドレール8a,8cがZ軸方向にうねり変形した場合、第2の実施形態のように、ガイドレール8a,8c上に1つの固定スペーサ104および2つの撓みスペーサ105による3箇所でテーブル4を支持すると、このうねり変形の影響を吸収できずテーブル4のY軸方向の移動が困難となることを回避できる。
【0066】
第3の実施形態は、第1の実施形態を簡略化して設計を容易化させるものである。第1の実施形態では、軸受8b,8dの真上に設けた4つのローラ103上方からの荷重を受け、テーブル旋回ベース101の中央に設けた回転軸受け102が水平方向の荷重を受ける。これに対し、第3の実施形態では、4つのローラ103を撓みスペーサ105に置き換えることにより、軸受8b,8dが、テーブル旋回ベース101を介して上方からの荷重だけでなく、水平な方向の荷重をも受けるため、回転軸受102を不要にさせている。また、少なくとも1本のガイドレールに取り付いた2個の軸受は、相対距離が変動しないように連結しておかないと、X軸方向の荷重を受けた際、当該相対距離の変動によってX軸方向の荷重に対する剛性が確保できないため、第3の実施形態ではテーブル旋回ベース101を設けている。
【0067】
なお、本実施形態における工作機械1は、テーブル4上に載置された被加工物を不図示の加工ヘッドで機械加工する工作機械として説明したが、被加工物をX軸方向およびY軸方向に移動させるのみの工作機械等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0068】
YS1,YS2 Y軸リニアエンコーダ(位置検出部)
1 工作機械
3 サドル
4 テーブル
5 X軸リニアモータ
6 X軸ガイド(第2のガイド部)
7 Y軸リニアモータ
8 Y軸ガイド(ガイド部)
8a,8c ガイドレール
8b,8d 軸受
9 制御部
100 連結部
102 回転軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1軸方向に移動自在なサドルと、
該サドル上に配置され、前記1軸方向と直交する方向に移動自在なテーブルと、
前記サドル上に前記1軸方向に所定間隔をあけて配置され、前記直交方向に前記テーブルを移動させる一対のリニアモータと、
該テーブルの前記1軸方向の両端部分の前記直交方向における位置を検出する位置検出部と、
前記直交方向と平行となるように前記サドル上に取り付けられたガイドレールと該ガイドレール上を移動自在な軸受とを有するガイド部と、
前記テーブルを前記軸受に、前記1軸方向には固定的に、前記テーブルを通り且つ前記1軸方向と前記直交方向とに垂直な軸回りには所定量回動可能に連結する連結部と、
前記位置検出部による前記テーブルの前記1軸方向の両端部分の前記直交方向における検出位置に基づいて、各前記リニアモータの位置を制御する制御部とを備えたことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記制御部が、前記両端部分の前記直交方向における相対位置が一定となるように、各前記リニアモータの位置を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記連結部が、前記垂直軸と同軸となる回転軸を有する回転軸受を介して前記テーブルを前記軸受に連結するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記ガイド部が、前記1軸方向に所定間隔をあけて配置された2本のガイドレールと該ガイドレール毎に該ガイドレール上を移動する3つの軸受とを有するものであり、
前記連結部が、前記テーブルを、中央に配置された軸受には前記1軸方向に固定的に、両側に配置された軸受には前記1軸方向に所定量移動可能に連結するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記ガイド部が、前記1軸方向に所定間隔をあけて配置された2本のガイドレールと該ガイドレール毎に該ガイドレール上を移動する2つの軸受とを有するものであり、
前記連結部が、前記テーブルを同一円上に配置された軸受に前記同一円の周方向にのみ所定量移動可能に連結するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項6】
前記サドルの前記1軸方向の移動を案内する第2のガイド部を備え、
該第2のガイド部が、前記直交方向に所定間隔をあけて配置された3つのガイド部からなり、該3つのガイド部のうち、中間のガイド部が前記サドルの中央部分に取り付けられているものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−49099(P2013−49099A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186991(P2011−186991)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【特許番号】特許第5137218号(P5137218)
【特許公報発行日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【出願人】(000132725)株式会社ソディック (197)
【Fターム(参考)】