説明

工具ホルダ交換型パンチプレス

【課題】 工具ホルダだけでなく、工具ホルダに対する工具の交換も自動化できて、多数の工具を用いることが必要な多品種少量生産にも、効率良く生産が行え、また工具ホルダに対する交換工具の誤りが回避できる工具ホルダ交換型パンチプレスを提供する。
【解決手段】 パンチプレス1は、工具8を保持する複数の工具ホルダ7が装着可能であって、装備している工具ホルダ7が交換可能である。このパンチプレス1の外で工具ホルダ7を保管する機外工具ホルダマガジン6を設ける。このパンチプレス1と機外工具ホルダマガジン6との間で移動して工具ホルダ7を自動交換する工具ホルダチェンジャー3を設ける。工具8を複数保管する工具マガジン4を設ける。この工具マガジン4と機外工具ホルダマガジン6との間で工具8を自動交換する工具チェンジャー15を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タレット型等の工具ホルダを効果可能な工具ホルダ交換型パンチプレスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の工具を交換使用可能としたパンチプレスとして、タレット式のものが一般的である。しかし、タレットパンチプレスでは、タレット内に保持できるパンチ工具の種類が限られ、多彩な加工が行えない。
このような課題を解消するものとして、複数のパンチ工具を搭載したタレット型の工具ホルダを、旋回可能な機内工具ホルダマガジンの円周方向複数箇所に着脱自在に保持するマルチタレット形式のものが提案されている(例えば、特許文献1)。これは、機内工具ホルダマガジンの旋回により、希望の工具ホルダを所定位置に割出し、その割り出された工具ホルダを旋回させて工具ホルダ中の希望のパンチ工具をパンチ加工に用いるものである。
【0003】
パンチプレスの機内工具ホルダマガジンの工具ホルダは、機外に設けられた機外工具ホルダマガジンとの間で、走行移動する工具ホルダチェンジャーを介して交換可能とされる。工具ホルダに保持する工具を交換する段取り替えは、機外工具ホルダマガジンで行い、その工具を交換した工具ホルダを、工具ホルダチェンジャーにより、パンチプレス内の機内工具ホルダマガジンに搬入する。
このように、パンチプレスの機外で工具ホルダに対する工具交換の段取り替えを行うことにより、パンチプレスの運転中に停止させることなく、工具の段取り替えが行える。
【0004】
機外工具ホルダマガジンで、工具ホルダに対して装着する工具を交換する作業は、機外工具ホルダマガジンの近傍に設置された工具棚形式の工具マガジン上の工具との間で行われる。
この工具の交換の作業は、作業者に対して、画面表示装置等で交換の指示を与えることにより、作業者がこの指示を見て、工具マガジン上に並ぶ工具を探し、人手作業で交換する。
なお、タレットパンチプレスにおけるタレットに対する工具の交換については、ロボットにより自動化した装置が提案されている(例えば、特許文献2)。また、上記のようにパンチプレスに対する工具ホルダの交換は、工具ホルダチェンジャーで自動化されている。しかし機外工具ホルダマガジンにおける工具ホルダに対する工具の交換は、人手の作業に頼っている。
【特許文献1】特開2006−326709号公報
【特許文献2】特公平3−38006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機外工具ホルダマガジンでの工具ホルダに対する工具の交換は、全て作業者が行うために、次のような手間がかかり、常にミス防止が必要である。
1.人が交換することが前提であるので、工具マガジン上の工具の配置場所を検索する必要がある。
2.作業者は交換すべき工具ホルダの場所を記憶して検索した金型を挿入する。
3.このとき、工具ホルダにおける指定の工具支持部に工具が存在する場合は、その工具を取り出して仮置きする。
4.工具挿入を行う工具支持部と挿入角度の一致を確認する。
5.取り出した工具を確認して、その金型を工具マガジン上の決められた場所に収納する。
【0006】
このように、機外工具ホルダマガジンでの人手による工具の交換は、非常に多くの手間が掛かり、非能率であり、その遅れによってパンチプレスでの稼働に影響を与えることがあるうえ、ミスが発生する機会も多い。
【0007】
この発明の目的は、工具ホルダだけでなく、工具ホルダに対する工具の交換も自動化できて、多数の工具を用いることが必要な多品種少量生産にも、効率良く生産が行え、また工具ホルダに対する交換工具の誤りが回避できる工具ホルダ交換型パンチプレスを提供することである。
この発明の他の目的は、比較的簡易な構成の工具チェンジャーでも自動交換を可能とすることである。
この発明のさらに他の目的は、機外工具ホルダマガジンと、工具ホルダチェンジャーと、工具チェンジャーとのバランスの取れたレイアウトとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の工具ホルダ交換型パンチプレスは、それぞれ工具を保持する複数の工具ホルダが装着可能であって、装備している工具ホルダが交換可能であるパンチプレスと、このパンチプレスの外で工具ホルダを保管する機外工具ホルダマガジンと、前記パンチプレスと機外工具ホルダマガジンとの間で移動して工具ホルダを自動交換する工具ホルダチェンジャーと、前記工具を複数保管する工具マガジンと、前記機外工具ホルダマガジンと工具マガジンの間で工具を自動交換する工具チェンジャーとを備える。
【0009】
この構成によると、パンチプレスと機外工具ホルダマガジンとの間での工具ホルダの自動交換が工具ホルダチェンジャーにより行われる。また、機外工具ホルダマガジン上の工具ホルダと工具マガジンとの間での工具の自動交換が、工具チェンジャーにより行われる。このように、工具ホルダだけでなく、工具ホルダに対する工具の交換も自動化できて、多数の工具を用いることが必要な多品種少量生産にも、効率良く生産が行える。また、工具ホルダに対する交換工具の誤りが回避できる。
【0010】
この発明において、前記機外工具ホルダマガジンは、工具ホルダを保持する工具ホルダ保持部から工具ホルダを排出して所定位置に配置する工具ホルダ排出部を有し、前記工具チェンジャーは、前記工具ホルダ排出部にある工具ホルダと前記工具マガジンとの間で前記工具を交換するものであっても良い。
このような工具ホルダ排出部を設けた場合、機外工具ホルダマガジンの工具ホルダ保持部が、外部から工具の出し入れを行い難い箇所にあっても、工具チェンジャーは、工具ホルダ排出部との間で工具の交換を行えば良い。そのため、比較的簡易な構成の工具チェンジャーでも自動交換が可能となる。また、工具ホルダ排出部で工具の交換を行えば良いため、機外工具ホルダマガジンが工具ホルダチェンジャーとの工具ホルダの交換のための割り出し動作中であっても、工具チェンジャーによる工具の交換を可能なようにする構成も採用可能となる。
【0011】
上記のように工具ホルダ排出部を設ける場合に、この機外工具ホルダマガジンの工具ホルダ排出部は、前記工具ホルダチェンジャーの移動領域とは反対側に配置しても良い。
機外工具ホルダマガジンの両側に工具ホルダチェンジャーの移動領域と上記工具ホルダ排出部とが位置すると、機外工具ホルダマガジンと、工具ホルダチェンジャーと、工具チェンジャーとをバランスのとれたレイアウトとできる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の工具ホルダ交換型パンチプレスは、それぞれ工具を保持する複数の工具ホルダが装着可能であって、装備している工具ホルダが交換可能であるパンチプレスと、このパンチプレスの外で工具ホルダを保管する機外工具ホルダマガジンと、前記パンチプレスと機外工具ホルダマガジンとの間で移動して工具ホルダを自動交換する工具ホルダチェンジャーと、前記工具を複数保管する工具マガジンと、前記機外工具ホルダマガジンと工具マガジンの間で工具を自動交換する工具チェンジャーとを備えるため、工具ホルダだけでなく、工具ホルダに対する工具の交換も自動化できて、多数の工具を用いることが必要な多品種少量生産にも、効率良く生産が行え、また工具ホルダに対する交換工具の誤りが回避できる。
前記機外工具ホルダマガジンが、工具ホルダを保持する工具ホルダ保持部から工具ホルダを排出して所定位置に配置する工具ホルダ排出部を有し、前記工具チェンジャーが、前記工具ホルダ排出部にある工具ホルダと前記工具マガジンとの間で前記工具を交換するものである場合は、比較的簡易な構成の工具チェンジャーでも自動交換を可能とすることができる。
前記機外工具ホルダマガジンの前記工具ホルダ排出部を、前記工具ホルダチェンジャーの移動領域とは反対側に配置した場合は、機外工具ホルダマガジンと、工具ホルダチェンジャーと、工具チェンジャーとをバランスの取れたレイアウトとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の一実施形態を図1ないし図12と共に説明する。図1は、この工具ホルダ交換型パンチプレスを備えた加工システムの概略平面図である。この加工システムは、パンチプレス1と、機外工具ホルダマガジン6を有するプリセッター2と、工具ホルダチェンジャー3と、工具マガジン4と、工具チェンジャー15とを備える。
【0014】
パンチプレス1は、機内工具ホルダマガジン5を備え、工具8を搭載した複数の工具ホルダ7を、機内工具ホルダマガジン5に交換可能に装備するものである。工具ホルダチェンジャー3は、パンチプレス1およびプリセッター2にそれぞれ設けられた機内工具ホルダマガジン5および機外工具ホルダマガジン6の間で工具ホルダ7を自動交換する装置である。工具マガジン4は、工具8を複数保管するラックであり、前面に沿って仮置き台14が設けられている。工具チェンジャー15は、プリセッター2の機外工具ホルダマガジン6と工具マガジン4の間で工具8を自動交換する装置であり、多関節ロボットで構成されている。
【0015】
工具ホルダ7は、図3に示すように、平面形状が円形のタレットであり、一つまたは複数の工具8が搭載される。工具8は、工具ホルダ7に設けられた貫通孔等からなる工具支持部7a内に、交換自在に搭載される。工具8は、パンチ工具8A(図5)またはダイ工具8Bである。パンチ工具8Aおよびダイ工具8Bは、上下に対として用いられるものである。工具ホルダ7は、パンチ工具用の工具ホルダ7Aと、ダイ工具用の工具ホルダ7Bとが、上下に対として同心位置に設けられる。この明細書において、工具8および工具ホルダ7については、特にパンチ用とダイ用とに区別が必要な場合の他は、単に「工具8」および「工具ホルダ7」と総称する。図5を除く各図では、パンチ工具用の工具ホルダ7(7A)のみを示し、ダイ工具用の工具ホルダ7Bは、図示を省略している。
【0016】
工具8は、パンチ加工する孔形状や寸法が種々異なるものがあり、工具ホルダ7に設けられた複数の工具支持部7aには、それぞれ異なる孔形状,寸法の加工用のものが搭載される。
また、工具ホルダ7は、図2のように工具支持部7aの個数,配置,寸法等の種々異なる複数種類のものが準備される。同じ工具支持部7aに、外径寸法の合う複数種類の工具8の搭載が可能であり、各種類の工具ホルダ7の工具支持部7aに、適合可能な任意の工具8を搭載して工具ホルダ7の工具編成が行われる。
【0017】
機内工具ホルダマガジン5は、水平旋回自在に設けられ、外周部の円周方向複数箇所に、工具ホルダ7を着脱自在に保持する工具ホルダ保持部5aが設けられている。各工具ホルダ保持部5aは、制御上でアドレスM1〜M8が付される。機内工具ホルダマガジン5は、上下に一対のものが同心に設けられ、それぞれパンチ側およびダイ側の工具ホルダ7を保持して同期して旋回する。
【0018】
図1において、パンチプレス1は、工具割出機構として、マガジン割出部と工具ホルダ割出部(いずれも図示せず)とを有する。マガジン割出部は、機内工具ホルダマガジン5の任意の工具ホルダ保持部5aが所定のプレスヘッド位置Qに来るように機内工具ホルダマガジン5を旋回させる機構である。工具ホルダ割出部は、プレスヘッド位置Qにある工具ホルダ7を保持してその工具ホルダ中心回りに旋回させ、工具ホルダ7の任意の工具8を所定のパンチ位置Pに割出す機構である。
パンチ位置Pに割り出された工具8は、サーボモータ等のパンチ駆動源により、昇降自在なラムを介してパンチ加工のための昇降動作が与えられる。
【0019】
パンチプレス1は、テーブル9上の板材Wを直交2軸(X軸,Y軸)方向に移動させる板材送り機構10を有しており、その移動により、板材Wの加工すべき箇所がパンチ位置Pへ移動させられる。板材送り機構10は、Y軸方向に進退するキャリッジ11に、X軸方向に進退可能にクロススライド12を搭載し、板材Wの端部を把持する複数のワークホルダ13を、クロススライド12に取付けたものである。
【0020】
プリセッタ2は、機外工具ホルダマガジン6を旋回割出可能に設置したものであり、その機外工具ホルダマガジン6は、パンチプレス1の外に、つまりパンチプレス1の板材送り機構10、機内工具ホルダマガジン5、およびパンチ駆動源による駆動系等と干渉することのない位置に設けられる。この実施形態では、プリセッタ2は、パンチプレス1の背後に、パンチプレス1とは別置きに、パンチプレス1とは独立して設けられている。
機外工具ホルダマガジン6は、機内工具ホルダマガジン5と同様に水平旋回自在に設けられ、外周部の円周方向複数箇所に、工具ホルダ7を着脱自在に保持する工具ホルダ保持部6aが設けられている。機外工具ホルダマガジン6も、パンチ工具搭載の工具ホルダ7用のものと、ダイ工具搭載の工具ホルダ7用のものとが、上下に同心に設置され、旋回割出の駆動がマガジン割出手段(図示せず)で行われる。プリセッタ2には、機外工具ホルダマガジン6に対して作業者が工具ホルダ7の交換を行うための段取り用交換部17が設けられている。
【0021】
プリセッタ2は、機外工具ホルダマガジン6をマガジンカバー2aで覆っており、このマガジンカバー2aは、工具ホルダチェンジャー3の移動領域に臨んで、工具ホルダ7の挿脱用の開口(図示せず)が設けられている。また、プリセッタ2の、工具ホルダチェンジャー3の移動領域とは反対側に、段取り用交換部17が設けられている。
【0022】
図5,図4に拡大して示すように、段取り用交換部17は、マガジンカバー2aに設けた段取り用開口2aaを開閉する扉2abを設けたものである。扉2abは、開閉駆動装置(図示せず)により開閉させられる。この段取り用交換部17に、下側の機外工具ホルダマガジン6(6B)の工具ホルダ保持部6aからダイ工具用の工具ホルダ7(7B)を排出して所定位置Fに配置する工具ホルダ排出部17aが設けられている。
工具ホルダ排出部17aは、工具ホルダ7を載せるスライド台17aaを、ガイドレール17ab上で、機外工具ホルダマガジン6の半径方向に進退自在に設置したものである。スライド台17aaは、進退駆動装置(図示せず)により、機外工具ホルダマガジン6の工具ホルダ保持部6aの直下と、マガジンカバー2aの外部となる上記所定位置F(図に実線で示す位置)との間を往復移動可能とされる。
【0023】
図1において、工具ホルダチェンジャー3は、パンチプレス1の機内工具ホルダマガジン5と、機外工具ホルダマガジン6との間で工具ホルダ7を交換する装置であり、これらマガジン工具5,6の所定の交換用割出位置R,Sで交換を行う。
工具ホルダチェンジャー3は、これら機内工具ホルダマガジン5と機外工具ホルダマガジン6の交換用割出位置R,Sに渡って設けられたガイドレール21と、このガイドレール21に沿って走行する移動体22とを備える。移動体22は、それぞれ工具ホルダ7を保持する2つのチャック23,24が走行方向に並んで設けられている。これら2つのチャック23,24は、いずれか片方のチャック23,24で交換用の工具ホルダ7を保持しておき、空の方のチャック23,24で工具ホルダマガジン5,6から工具ホルダ7を受け取り、上記片方のチャック23,24で保持していた交換用の工具ホルダ7を工具ホルダマガジン5,6に渡す動作を行う。これにより、移動体22の両工具ホルダマガジン5,6間の一度の走行で工具ホルダ7の交換が行える。
【0024】
なお、移動体22は、チャック23,24を1個のみとし、交換用割出位置R,Sの付近に設けた仮置き台(図示せず)に、交換用の工具ホルダ7を仮置きすることによっても、一度の走行で工具ホルダ7の交換が行える。
また移動体22に設けられる上記チャック23,24は、いずれも各工具ホルダマガジン5,6と同じく、パンチ工具搭載の工具ホルダ7用のものと、ダイ工具搭載の工具ホルダ7用のものとが、上下に並んで設けられている。
【0025】
工具マガジン4は、図7に示すように、複数の棚4aを支柱4bで支持したラックであり、これらの棚4aに、パンチ工具8Aおよびダイ工具8B等の工具8が対として載置される。工具マガジン4は、前後両面から工具8の出し入れが可能である。この工具マガジン4は、図1のように工具チェンジャー15の後方に配置され、前面を工具チェンジャー15に向けて設置されている。
【0026】
工具チェンジャー15は、多関節ロボットからなり、ボディ15aに水平旋回自在な旋回台15bが設けられ、この旋回台15bに1本のアーム15cが設けられている。
図6に示すように、アーム15cは、関節18を介して順次連結された複数のアーム構成部材15caを有し、先端の関節18に、把持具であるハンド19が設けられている。ハンド19は、開閉動作が可能で、工具8を挟んで把持する構成とされている。ハンド19を取付けた関節18は、直交2軸方向の屈曲と回転とが可能な3自由度の関節とされている。アーム15cの各関節18は、屈曲や回転の他、伸縮動作を行う部位であっても良い。アーム15cは、動作の冗長性が得られるように、各関節18の合計で7以上の自由度以上を持つものであることが好ましい。
【0027】
工具チェンジャー15は、ハンド19等に検出器20を有するものとしても良い。検出器20は、例えば、孔内面の位置等の触針等で検出するものであっても、またカメラであっても良い。
【0028】
制御系を説明する。図1おいて、パンチプレス1は、その後部に配置されたパンチプレス制御装置31により制御され、工具ホルダチェンジャー3はその後部に配置された工具ホルダチェンジャー制御装置32により制御される。また、工具チェンジャー15は、その近傍に配置された工具チェンジャー制御装置33により、機外工具ホルダマガジン6は機外工具ホルダマガジン制御装置34により制御される。パンチプレス1の前方には、パンチプレス制御装置31および工具ホルダチェンジャー制御装置32の操作部となる操作盤31aが設けられている。
【0029】
図8に示すように、これらパンチプレス制御装置31、工具ホルダチェンジャー制御装置32、工具チェンジャー制御装置33、および機外工具ホルダマガジン制御装置34は、スケジュール設定手段36および工具マガジン収容データ記憶手段35と共に加工システム制御手段30を構成する。
【0030】
パンチプレス制御装置31は、数値制御装置からなり、加工プログラム38を実行して制御指令を出力する。工具ホルダチェンジャー制御装置32および機外工具ホルダマガジン制御装置34は、プログラマブルコントローラ等からなり、それぞれシーケンスプログラム等からなる工具ホルダチェンジャー制御プログラム37および機外工具ホルダマガジン制御プログラム40に従って制御を行う。工具ホルダチェンジャー33は、数値制御装置からなり、工具ホルダチェンジャー制御プログラム39に従って制御を行う。これら各制御装置31〜34は、いずれもコンピュータ式であり、物理的に同じコンピュータに構成されたものであっても良いが、この実施形態ではそれぞれ別のコンピュータに構成されている。
【0031】
スケジュール設定手段36は、加工のスケジュールを記憶したコンピュータであり、パンチプレス制御装置31および工具ホルダチェンジャー制御装置32に、バス、ネットワーク等で接続されている。スケジュール設定手段36に記憶されるスケジュールは、1枚の素材板材を加工する単位の個別スケジュールを実行順に配列したものである。上記個別スケジュールには、加工プログラム38のプログラム番号と、その加工プログラム38で使用する工具ホルダ7の識別番号が定められている。
【0032】
機外工具ホルダマガジン制御装置34は、機外工具ホルダマガジン制御プログラム40に従い、図9に流れ図で示す制御動作を行う。工具チェンジャー制御装置33は、工具チェンジャー制御プログラム39に従い、図10に流れ図で示す制御動作を行う。これらの流れ図と共に、機外工具ホルダマガジン6上の工具ホルダ7の工具交換を行うときの動作を説明する。
【0033】
図9の流れ図に示すように、機外工具ホルダマガジン6は、工具交換命令があると(ステップR1)、その交換を行う工具ホルダ7を保持した工具ホルダ保持部6aが段取り用交換部17に位置するように旋回割り出しを行う。上記工具交換命令は、例えば、機外工具ホルダマガジン制御装置34に付属の操作盤34aから作業者により入力された命令であっても、またスケジュール設定手段36から与えられた命令であっても良い。
上記旋回割り出しの後、扉2ab(図5)をオープンする(図9のステップR3)。この後、工具ホルダ排出部17aのスライド台17aaを所定位置Fに自動引き出しする(ステップR4)。この自動引き出しの前に、下側の機外工具ホルダマガジン6Aは、工具ホルダ排出部17aに位置する工具ホルダ保持部6aによる保持を解除しており、この工具ホルダ保持部6aの工具ホルダであるダイ側の工具ホルダ7(7A)は、スライド台17aaに載せられている。したがって、ダイ側の工具ホルダ7(7A)は、工具ホルダ排出部17aの自動引き出しによって、同図および図4に示すように、上側の工具マガジン6(6A)およびこれに保持されたパンチ側の工具ホルダ7(7A)に対して突出した位置となる。
【0034】
自動引き出しの後、機外工具ホルダマガジン制御装置34は、工具チェンジャー制御装置33へ工具交換指令を出力し(ステップR5)、工具ホルダチェンジャー15による工具交換の完了を待つ。
工具チェンジャー制御装置33の出力する完了信号が受信されると(ステップR6)、工具ホルダ排出部17aの収納を行い(ステップR7)、扉2abをクローズし(ステップR8)、工具交換に対する動作を完了する。
【0035】
図10の流れ図に示すように、工具ホルダチェンジャー15は、図9のステップR5で機外工具ホルダマガジン制御装置34から送信された工具交換命令を受信すると(ステップS1)と、以下の動作を開始する。上記工具交換命令には、要求工具の識別データである工具番号と、工具ホルダ7上の工具8を挿入する位置のデータ(工具ホルダ7のどの工具支持部7aであるかの識別データ、またはその工具支持部7aの平面座標データ)が含まれる。
【0036】
工具交換にあたっては、まず、工具ホルダ7の新たな工具8を挿入する工具支持部7aに入っている工具8(これを「先入工具」と称す)があるか否かを判断する。工具ホルダチェンジャー15は、先入工具がある場合は、これを取り出して(ステップS3)、所定の仮置き位置(例えば仮置き台14上の所定位置)に仮置きした後に(ステップS4)、要求の工具8を、工具マガジン4から把持する(ステップS5)。工具マガジン4の何処に要求の工具8があるかは、上記工具交換命令に含まれる要求工具の識別データを、工具マガジン収容データ記憶手段35と照合するこで分かる。工具マガジン収容データ記憶手段35は、工具番号と収容位置との関係を記憶したテーブルである。
【0037】
工具ホルダチェンジャー15は、このように要求工具8を把持し、目的の工具ホルダ7の工具支持部7aに挿入する(ステップS5,S6)。なお、パンチ側の工具8の把持,挿入と、ダイ側の工具8の把持,挿入は、それぞれ別に行う。ダイ側の工具8の挿入は、図5のように引き出された工具ホルダ7に対して行うが、パンチ側の工具8の挿入は、図5のように、工具ホルダ7が機外工具ホルダマガジン6に保持された状態で行う。工具チェンジャー15において、工具ホルダ7に対し工具8を挿入する位置は、前記のように受信した工具交換指令における挿入位置のデータから認識できる。挿入位置のデータが工具ホルダ7およびその所定の工具支持部7aの識別データである場合は、これら工具ホルダ7の工具支持部7aの形状寸法を識別データと共に記憶した工具ホルダマスタファイル等の記憶手段(図示せず)と照合することで得られる。
【0038】
要求工具の挿入(ステップS6)の開始の後、適正に挿入されたか否かを確認する。挿入したが挿入状態が適正でない場合や、挿入途中でそれ以上の挿入ができなくなる等の支障が生じた場合は、挿入不良とする。この確認は、工具ホルダチェンジャー15のハンド19が所定位置まで移動したた否かを確認することで行える。また、ハンド19に設けられる検出器20をカメラとし、挿入状態の撮像データを画像処理して、所定の判定を加えることによっても、適正に挿入されたか否かを確認できる。挿入途中で引っ掛かり等が生じて挿入不可になった場合は、その挿入抵抗を検出することで、つまり工具ホルダチェンジャー15のハンド19を移動させる何処かの関節18の駆動源に、所定以上の負荷が加わったことを検出することで、適正に挿入できなかったことが分かる。
【0039】
挿入不良の場合は、繰り返し挿入回数の計数用のカウンタ(図示せず)カウントして(ステップS9)、設定回数になったかを判断し(ステップS10)、設定回数未満の場合は、再挿入補助の処理(ステップS12)を行った後、再度、要求工具8の挿入を行う(ステップS6)。上記再挿入補助の処理(ステップS12)については、後に例を説明する。
【0040】
再挿入、適正挿入確認(ステップS7)を繰り返し、設定回数に達した場合は、ステップS10からステップS11に進み、アラームを発生させてオペレータコールを行い、かつ工具ホルダチェンジャー15の動作を停止する。
【0041】
適正挿入確認のステップ(S7)で、適正に挿入されたと確認できた場合は、完了送信信号を、工具チェンジャー制御装置33から機外工具ホルダマガジン制御装置34へ出力し、工具チェンジャー15の動作を終了する。
【0042】
なお、図10のステップS4で仮置きした先入工具8は、適宜の時、例えば、工具チェンジャー15による工具8の適正な挿入が完了した後に、工具マガジン4へ収納する。また、図10では説明を省略したが、適正挿入が確認されると、上記繰り返し挿入回数の計数用のカウンタはリセットする。
【0043】
次に、再挿入補助の処理例を説明する。挿入不良のときは、何らかの不良原因が存在するため、単に挿入を繰り返すだけでは、挿入できない場合が多い。そのため、挿入不良の原因を除く処理や、その原因を確認する処理が必要となる。
挿入不良の原因を除く処理として、例えば、工具チェンジャー15で把持している工具8を、仮置き台14に載せて、把持し直すようにしても良い。これにより、微妙な把持の誤差が解消され、次回は適正に挿入できる場合がある。
【0044】
図11(A),(B)は、それぞれ挿入不良の原因を調べる処理例を示す。同図(A)は、長さ測定器41の触針41a,41bに、工具チェンジャー15で把持している工具8の両端面を接触させることで、工具8の長さLを確認する例を示す。長さ測定器41は、例えば仮置き台14上やその付近等に設置する。これにより誤差が検出される場合として、工具8自体の長さに誤差がある場合や、工具チェンジャー15のハンド19による把持が傾いていて、結果として長さが短く検出される場合とがある。傾きにより短く検出された場合は、ハンド19から工具8を一旦離して、再度把持することで、適正な把持が行える。工具8自体の長さに誤差がある場合や、要求工具8とは別の工具8を把持している可能性が強い。この場合は、作業者が確認して適宜の処置を行う必要がある。
【0045】
図11(B)は、傾き角度測定器43の2本の触針43a,43bに、工具チェンジャー15で把持している工具8の側面を接触させることで、鉛直線O0 に対する工具8の軸心O1 の傾き角度θを調べる状態を示す。傾き角度測定器43は、2本の触針43a,43bが出入り自在であり、その出入り位置の差から、傾き角度θを検出する。
このように傾いて把持している場合は、ハンド19から工具8を一旦離して、再度把持することで、適正な把持が行える。
【0046】
図12は、工具ホルダ7の工具支持部7aの位置を調べる例を示す。この処理は、機外工具ホルダマガジン6上の工具ホルダ7の工具支持部7aに、停止位置決め等によって誤差が生じている場合に、その補正を行う処理である。まず、工具チェンジャー15のハンド19に取付けられる検出器20の触針20aを、工具ホルダ7の工具支持部7aの開口縁における任意の3点P1,P2,P3に接触させ、その接触時のハンド19の座標データから、上記3点P1,P2,P3の位置を検出する。円周上の3点P1,P2,P3の位置が検出できれば、その円の中心、つまり工具支持部7aの中心位置の座標がわかる。この中心位置の座標は、工具チェンジャー制御装置33に入力された工具交換指令から得られる座標値と、本来は一致しているはずであるが、なんらかの誤差発生要因によりずれる場合がある。そのため、工具交換指令から得られる座標値を、測定された上記中心位置の座標のずれ量によって補正し、再挿入を行うことで、円滑な挿入が行える。上記の補正は、ずれ量をそのまま補正量としても良く、ずれ量に対して計数を掛けた値を補正量としても良い。
【0047】
なお、これらの再挿入補助の処理は、再挿入の場合に限らず、初回の挿入時に行っても良いが、通常は、特に処理を行わなくても適正な挿入が行えるため、再挿入時のみ行うことが効率的である。ただし、工具チェンジャー15により工具マガジン4で把持した工具8を、仮置き台14に一旦載せ、把持し直す処理は、毎回行っても良い。
【0048】
この工具ホルダ交換型パンチプレスによると、このように、パンチプレス1と機外工具ホルダマガジン6との間での工具ホルダ7の自動交換が工具ホルダチェンジャー3により行われる。また、機外工具ホルダマガジン6上の工具ホルダ7と工具マガジン4との間での工具8の自動交換が、工具チェンジャー15により行われる。このように、工具ホルダ7だけでなく、工具ホルダ7に対する工具8の交換も自動化できて、多数の工具8を用いることが必要な多品種少量生産にも、効率良く生産が行える。また、工具ホルダ7に対する交換工具の誤りが回避できる。このため、多品種少量生産に適したものとでき、工具交換を少なくしつつ、工具の交換も可能なものとできる。しかも、工具ホルダ7に対する工具8の交換は、パンチプレス1の機外で行えて、パンチプレス1の運転中に停止させることなく行え、工具8の段取り替えを、パンチプレス1の稼働率を低下させることなく行える。
【0049】
また、ダイ側の機外工具ホルダマガジン6に、工具ホルダ保持部6aから工具ホルダ7を排出して所定位置Fに配置する工具ホルダ排出部17aを設けている。このため、ダイ側の機外工具ホルダマガジン6の工具ホルダ保持部6aが、パンチ側の機外工具ホルダマガジン6等で隠れて外部から工具8の出し入れを行い難い箇所にありながら、工具チェンジャー15は、工具ホルダ排出部17aとの間で工具8の交換を行えば良く、比較的簡易な構成の工具チェンジャーであっても自動交換が可能となる。また、工具ホルダ排出部17aで工具8の交換を行えば良いため、機外工具ホルダマガジン6が工具ホルダチェンジャー3との工具ホルダの交換のための割り出し動作中であっても、工具チェンジャー15による工具8の交換が可能である。
上記工具ホルダ排出部17aは、機外工具ホルダマガジン6における工具ホルダチェンジャー3の移動領域とは反対側に配置されているため、機外工具ホルダマガジン6と、工具ホルダチェンジャー3と、工具チェンジャー15とがバランスのとれたレイアウトとなる。
また、工具マガジン4は、両面から工具8の出し入れが可能であるため、工具チェンジャー15とは反対側から、工具マガジン4に対する工具8の出し入れが行え、作業者により安全に、工具マガジン4に対する工具8の出し入れが行える。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の一実施形態に係る工具ホルダ交換型パンチプレスを備えた加工システムの概略構成を示す平面図である。
【図2】その機内工具ホルダマガジン、機外工具ホルダマガジン、および工具ホルダチェンジャーを示す拡大平面図である。
【図3】その工具ホルダの斜視図である。
【図4】同機外工具ホルダマガジンの段取り用交換部の平面図である。
【図5】同機外工具ホルダマガジンの段取り用交換部の破断側面図である。
【図6】その工具チェンジャーの正面図である。
【図7】その工具マガジンの正面図である。
【図8】この工具ホルダ交換型パンチプレスの制御系の概念構成を示すブロック図である。
【図9】その機外工具ホルダマガジンの動作の流れ図である。
【図10】その工具チェンジャーの動作の流れ図である。
【図11】(A),(B)は、それぞれ工具の長さおよび傾きを調べる処理の説明図である。
【図12】工具ホルダの工具保持部の中心位置を計測して求める処理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1…パンチプレス
2…プリセッター
2a…マガジンカバー
2ab…扉
3…工具ホルダチェンジャー
4…工具マガジン
5…機内工具ホルダマガジン
5a…工具ホルダ保持部
6…機外工具ホルダマガジン
7,7A,7B…工具ホルダ
7a…工具支持部
8,8A,8B…工具
10…板材送り機構
14…仮置き台
15…工具チェンジャー
15c…アーム
17…段取り用交換部
17a…工具ホルダ排出部
17aa…スライド台
19…ハンド
20…検出器
22…移動体
30…加工システム制御手段
31…パンチプレス制御装置
32…工具ホルダチェンジャー制御装置
33…工具チェンジャー制御装置
34…機外工具ホルダマガジン制御装置
36…スケジュール設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ工具を保持する複数の工具ホルダが装着可能であって、装備している工具ホルダが交換可能であるパンチプレスと、このパンチプレスの外で工具ホルダを保管する機外工具ホルダマガジンと、前記パンチプレスと機外工具ホルダマガジンとの間で移動して工具ホルダを自動交換する工具ホルダチェンジャーと、前記工具を複数保管する工具マガジンと、前記機外工具ホルダマガジンと工具マガジンの間で工具を自動交換する工具チェンジャーとを備えた工具ホルダ交換型パンチプレス。
【請求項2】
前記機外工具ホルダマガジンは、工具ホルダを保持する工具ホルダ保持部から工具ホルダを排出して所定位置に配置する工具ホルダ排出部を有し、前記工具チェンジャーは、前記工具ホルダ排出部にある工具ホルダと前記工具マガジンとの間で前記工具を交換するものである請求項1記載の工具ホルダ交換型パンチプレス。
【請求項3】
前記機外工具ホルダマガジンの前記工具ホルダ排出部は、前記工具ホルダチェンジャーの移動領域とは反対側に配置される請求項2記載の工具ホルダ交換型パンチプレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−56501(P2009−56501A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227545(P2007−227545)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】