説明

工具及び/又はパレット搬送システム

【課題】工具搬送車及び/又はパレット搬送車が作動していない段階において、駆動源であるサーボモータに対し常時電力を供給するような状態を避けること。
【解決手段】工作機械に対し、サーボモータを駆動源とする工具及び/又はパレット搬送車の各作動を中央コントローラーによって制御されている工具及び/又はパレット搬送システムにおいて、工具搬送車及び/又はパレット搬送車が、所定時間以上作動しない場合に、当該搬送車のサーボモータに対する電源をOFFとし、当該搬送車の重力軸のブレーキをONとする一方、前記サーボモータに対し、中央コントローラーからの更なる作動指令が伝達された段階にて、前記サーボモータに対する電源をONとし、かつ重力軸のブレーキを開放することによって前記課題を達成することができる工具及び/又はパレット搬送システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に対し、工具の搬入及び搬出を行う工具搬送車及び/又は工作物の搬入及び搬出を行うパレット搬送車の搬送を中央コントローラーによって制御するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工具搬送車及び/又はパレット搬送車は、通常サーボモータ(ステップモータ)を駆動源としているが、搬送の作動が行われていない場合であっても、正確な停止位置を維持することを目的として、当該搬送車のサーボモータの電源をONとして、駆動源たるサーボモータに対する電力が供給され、当該供給によってサーボモータを不動の状態とし、上記停止位置の維持が行われている。
【0003】
しかしながら、このような電力の供給は、極めてエネルギー消費として無駄であり、特にパレット搬送車の場合には、停止時間が長い場合が多いため、そのような無駄の割合が著しい。
【0004】
ところが、工具搬送車及び/又はパレット搬送車は、非常時に使用するための重力軸ブレーキを備えているにも拘らず、当該重力軸ブレーキを作動していない段階において有効に活用する発想はこれまで提唱されていない。
【0005】
特許文献1は、工作機械における重量軸に対するブレーキ装置及び当該ブレーキ装置に対する制御電源の構成について説明しているが、到底前記のようなサーボモータが作動していない停止段階における無駄な電力資料を改善する発想には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−9168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、工具搬送車及び/又はパレット搬送車が作動していない段階において、駆動源であるサーボモータに対し常時電力を供給するような状態を避け、効率的なエネルギー使用を可能とするような工具及び/又はパレット搬送システムの構成を採用することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)工作機械に対し、工具の搬入及び搬出に関与し、かつサーボモータを駆動源とする工具搬送車及び/又は当該工作機械に対し、パレットに載置されている工作物の搬入及び搬出に関与し、かつサーボモータを駆動源とするパレット搬送車の各作動を中央コントローラーによって制御されている工具及び/又はパレット搬送システムにおいて、工具搬送車及び/又はパレット搬送車が、所定時間以上作動しない場合に、当該搬送車のサーボモータに対する電源をOFFとし、当該搬送車の重力軸のブレーキをONとする一方、前記サーボモータに対し、中央コントローラーからの更なる作動指令が伝達された段階にて、前記サーボモータに対する電源をONとし、かつ重力軸のブレーキを開放している工具及び/又はパレット搬送システム、
(2)中央コントローラーにおける中央コンピュータが、当該搬送車のサーボモータに対しONの指令を発した段階にて、所定時間経過した後に、前記サーボモータが作動状態にあるか否かを判断する工程を、中央コンピュータシステムの作動に必要な指令工程の間に挿入し、作動している場合には、当該作動を継続させ、作動していない場合には、前記サーボモータによって回転している重力軸のブレーキをONとし、かつ前記サーボモータの電源をOFFとする指令を発することを特徴とする前記(1)記載の工具及び/又はパレット搬送システム、
(3)中央コントローラーにおいて、中央コンピュータ以外に各工具搬送車及び/又はパレット搬送車のサーボモータに対応するマイクロコンピュータを備えており、当該マイクロコンピュータにおいては、中央コンピュータが前記サーボモータに対する作動指令と同期して、所定の時間を経過した後に、前記サーボモータが作動状態にあるか否かの判断の工程を中央コンピュータのシステムの作動に必要な指令工程と並行して行い、作動している場合には当該作動を継続させ、作動していない場合には前記サーボモータによって回転している重力軸のブレーキをONとし、かつ前記サーボモータの電源をOFFとする指令を発することを特徴とする前記(1)記載の工具及び/又はパレット搬送システム、
からなる。
【発明の効果】
【0009】
前記基本構成においては、一方では所定時間以上作動していない工具搬送車及び/又はパレット搬送車におけるサーボモータに対する電力の供給を免れることによって、無駄なエネルギー消費を回避する一方、前記所定時間の設定によって工具搬送車及び/又はパレット搬送車が頻繁に作動を繰り返す場合には、前記サーボモータに対する電源のON及びOFFの繰り返しによる作動の遅れを免れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】前記基本構成(2)において、中央コントローラーが有している中央コンピュータの作業に関するフローチャートを示す。
【図2】前記基本構成(3)において、中央コントローラーが有している中央コンピュータ及び各マイクロコンピュータの作業に関するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記基本構成(1)は、実際には前記基本構成(2)又は(3)による実施形態によって実現することができる。
但し、前記基本構成(1)においては、前記基本構成(2)及び(3)による実施形態以外にも、例えば工具搬送車及び/又はパレット搬送車において、それぞれ備えているサーボモータに対応するマイクロコンピュータを載置しており、前記基本構成(3)に代えて、無線信号によって中央コンピュータとの同期をキャッチし、前記基本構成(3)と同一の作動を実現し得る実施形態も存在する。
【0012】
前記基本構成(2)の実際の作動状況は、図1のフローチャートに示すとおりである。
【0013】
即ち、図1に示すように、中央コンピュータにおいては工具搬送車及び/又はパレット搬送車が有している当該搬送車のサーボモータに対し、作動指令を発した後に自ら有している時間単位(コンピュータクロック時間単位)に基づいて所定の時間を経過した段階にて、前記サーボモータが作動状態にあるか否かの判断を通常のシステムの作動に必要な指令行程の間に挿入(割り込み)している。
【0014】
万一、他のシステムの作動に必要な指令工程の時刻と前記判断工程の時刻とが一致する場合には、大抵の場合には前者の指令を優先させ、後者の判断をその後に設定している(この点は、システムに必要な他の指令工程に関する制御の方が、全体のシステムに作動するうえで重視されることに基づいている。)。
【0015】
前記基本構成(3)の作動は、図2のフローチャートに示すとおりである。
【0016】
図2のフローチャートの場合には、工具搬送車及び/又はパレット搬送車がそれぞれ備えているサーボモータに対応する各マイクロコンピュータは、中央コンピュータが前記サーボモータに対し作動指令を発することと同期して、前記所定時間を設定し、中央コンピュータにおけるシステムの作動に必要な指令行程と独立かつ並行して前記サーボモータが作動しているか否かの判断を行うことができ、前記(1)の基本構成のように、中央コンピュータにおいて、システムに必要な指令工程の時期と前記判断の時期とが偶然一致するというような事態を避けることができる。
尚、図1及び図2のフローチャートは、あくまで特定の工具搬送車及び/又はパレット搬送車を基準としており、前記特定以外の他の工具搬送車及び/又はパレット搬送車の作動指令及び停止指令については、中央コンピュータの工具に対する作動指令等のシステムに必要な指令工程として扱っている(図1及び図2においては、工具搬送車及び/又はパレット搬送車を「搬送車」と略称している。)。
【0017】
前記基本構成(2)、(3)の何れにおいても、前記判断の結果、前記サーボモータの作動している場合には、当該作動を継続させ、作動していない場合には、前記サーボモータによって回転している重力軸のブレーキをONとすると共に、前記サーボモータの電源をOFFとする点において変わりはない。
尚、前記所定時間は、工具搬送車の場合には通常5秒ないし5分程度に設定され、パレット搬送車の場合には10秒ないし10分程度に設定される場合が多いが、そのような時間の選択は、作業現場の実状に即して適宜選択すると良い。
【0018】
以下実施例に即して説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例1においては、重力軸のブレーキをONとした後に、サーボモータの電源をOFFとすることを特徴としている。
【0020】
即ち実施例1においては、前記基本構成(1)、(2)、(3)の何れの場合においても、重力軸のブレーキをONとする作動信号の後に前記サーボモータの電源をOFFの指令を行うという2段階の指令が発せられることになる。
【0021】
このような2段階による指令の発生によって、重力軸のブレーキによって工具搬送車及び/又はパレット搬送車を固定させた後に、サーボモータの電源をOFFとし、工具搬送車及び/又はパレット搬送車の停止状態を安全な状態にて実現することができる。
【実施例2】
【0022】
実施例2は、重力軸のブレーキをONとする時期と同時に、サーボモータの電源をOFFとすることを特徴としている。
【0023】
即ち実施例2においては、前記基本構成(1)、(2)、(3)の何れにおいても、重力軸のブレーキのONの指令とする作動信号と同時に前記サーボモータの電源をOFFの指令を行うという1段階の指令が発せられることになる。
【0024】
このような1段階による指令の発生によって、工具搬送車及び/又はパレット搬送車の停止及び電力供給の切断を一挙に実現するという効率的な措置が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本願は、工作機械に対し、工具の搬入及び搬出に関与している工具搬送車及び/又はパレット搬送車を制御するシステムの全分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に対し、工具の搬入及び搬出に関与し、かつサーボモータを駆動源とする工具搬送車及び/又は当該工作機械に対し、パレットに載置されている工作物の搬入及び搬出に関与し、かつサーボモータを駆動源とするパレット搬送車の各作動を中央コントローラーによって制御されている工具及び/又はパレット搬送システムにおいて、工具搬送車及び/又はパレット搬送車が、所定時間以上作動しない場合に、当該搬送車のサーボモータに対する電源をOFFとし、当該搬送車の重力軸のブレーキをONとする一方、前記サーボモータに対し、中央コントローラーからの更なる作動指令が伝達された段階にて、前記サーボモータに対する電源をONとし、かつ重力軸のブレーキを開放している工具及び/又はパレット搬送システム。
【請求項2】
中央コントローラーにおける中央コンピュータが、当該搬送車のサーボモータに対しONの指令を発した段階にて、所定時間経過した後に、前記サーボモータが作動状態にあるか否かを判断する工程を、中央コンピュータにおけるシステムの作動に必要な指令工程に挿入し、作動している場合には、当該作動を継続させ、作動していない場合には、前記サーボモータによって回転している重力軸のブレーキをONとする指令とし、かつ前記サーボモータの電源をOFFとする指令を発することを特徴とする請求項1記載の工具及び/又はパレット搬送システム。
【請求項3】
中央コントローラーにおいて、中央コンピュータ以外に各工具搬送車及び/又はパレット搬送車のサーボモータに対応するマイクロコンピュータを備えており、当該マイクロコンピュータにおいては、中央コンピュータが前記サーボモータに対する作動指令と同期して、所定の時間を経過した後に、前記サーボモータが作動状態にあるか否かの判断する工程を、中央コンピュータのシステムの作動に必要な指令工程と並行して行い、作動している場合には当該作動を継続させ、作動していない場合には前記サーボモータによって回転している重力軸のブレーキをONとし、かつ前記サーボモータの電源をOFFとする指令を発することを特徴とする請求項1記載の工具及び/又はパレット搬送システム。
【請求項4】
重力軸のブレーキをONとした後に、サーボモータの電源をOFFとすることを特徴とする請求項1、2、3の何れか一項に記載の工具及び/又はパレット搬送システム。
【請求項5】
重力軸のブレーキをONとする時期と同時に、サーボモータの電源をOFFとすることを特徴とする請求項1、2、3の何れか一項に記載の工具及び/又はパレット搬送システム。

【図1】
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【図2】
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