説明

工具洗浄機構及び工具洗浄方法

【課題】主軸に取り付けられる工具を交換する際に、工具ホルダに付着した切粉等をより簡易な構成でかつ確実に洗浄すること。
【解決手段】工具交換機構により工具が搬送されると、環状ホルダ32の各一体型ノズル40のノズル孔43から噴射されるクーラント液によって工具ホルダ60が洗浄される工作機械において、工具ホルダ60が主軸9に形成されたホルダ取付穴33の開口部33aの直下を通過する際に、クーラント液がシャンク部60aのみならずプルスタッド上端面60dにも供給されるようにクーラント液の噴射角度を設定した。これにより、工具ホルダ60に付着した切粉等を洗浄した状態で、工具ホルダ60が主軸9のホルダ取付穴33に挿入及び嵌着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主軸に取り付けられる工具を交換する際に、工具ホルダに付着した切粉等を洗浄する工具洗浄機構及び工具洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主軸に取り付けられた工具によって被加工物(ワーク)に機械加工(例えば、「中ぐり」、「フライス削り」、「穴空け」、「切削」等)を施す工作機械では、主軸に取り付けられる工具を交換する際に、工具交換に影響を与える箇所(例えば、工具ホルダのテーパ部やシャンクなど)に切粉等が付着していると、工具交換に支障が生じたり、加工精度の低下を招くおそれがある。そこで、主軸に取り付けられる工具を交換する際に、この切粉等を洗浄することが行われている。
【0003】
例えば、主軸に取り付けられた工具を交換する工具交換機構を備え、クーラントポンプから供給されるクーラント液を切削用ノズルから工具による切削箇所に噴射する工作機械用洗浄装置であって、切粉が付着すると工具交換に影響を与える箇所に清浄なクーラント液を噴射する洗浄ノズルを設ける。そして、この洗浄ノズルには、下方に開口したノズル孔を備え、ノズル孔の延長上に工具方向に向かって傾斜した傾斜壁を設ける。これにより、工具交換に影響を及ぼす切粉等を洗浄することができるようにした工作機械用洗浄装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−52185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の従来技術では、工具交換機構が交換用の工具を取り付けた工具ホルダを主軸の内部に向けて搬送する際、洗浄ノズルがその工具ホルダの側面に向けてクーラント液を噴射することで、工具交換に影響を与える箇所の洗浄を行っている。しかし、工具ホルダの上端部はクーラント液の噴射方向と略平行をなすためにクーラント液が吹き付けられにくく、この工具ホルダの上端部に付着した切粉等は洗浄されにくい。そして、この工具ホルダの上端部に切粉等が残存していると、工具交換に支障を生じさせたり、加工精度の低下を招くという問題があった。特に、より素早い工具交換を実現するために、工具交換機構が工具ホルダを高速で搬送する場合は、工具ホルダの洗浄時間が短くなるため、さらに工具ホルダの上端部に付着した切粉等の洗浄が困難となる。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、主軸に取り付けられる工具を交換する際に、工具ホルダに付着した切粉等をより簡易な構成でかつ確実に洗浄することができる工具洗浄機構及び工具洗浄方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の工具洗浄機構は、主軸に取り付けられる工具を交換する工具交換機構により、該工具が取り付けられた工具ホルダが該主軸の内部に向けて搬送されると、該工具ホルダが通過する主軸先端側に設けられた洗浄ノズルから該主軸の外部に向けてクーラント液が噴射されて、該工具ホルダが該主軸先端側の近傍で洗浄される工具洗浄機構であって、前記工具交換機構により搬送される前記工具ホルダが前記主軸先端側の近傍を通過する際に、前記洗浄ノズルから噴射される前記クーラント液が該工具ホルダの上端部に供給されるように、該洗浄ノズルにおける該クーラント液の噴射角度が設定されたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明の工具洗浄機構は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記工具ホルダは、前記主軸に設けられたテーパ状の内周面に密接して嵌まるためのテーパ部と、該テーパ部の縮径する上部に配置されたプルスタッド部を有し、前記工具ホルダの上端部は、前記プルスタッド部の上端から前記テーパ部の上端の範囲であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明の工具洗浄機構は、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記洗浄ノズルは、前記主軸先端側の近傍を通過する前記工具ホルダのテーパ部と、該テーパ部に対して供給される前記クーラント液とのなす角度が、前記主軸からみて90度以下となるように該クーラント液を噴射することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明の工具洗浄機構は、請求項1乃至3のいずれか記載の発明の構成に加え、前記洗浄ノズルは、前記主軸先端側の近傍を通過する前記工具ホルダに対して供給される前記クーラント液の流速が、30m/s以上となるように前記クーラント液を噴射することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明の工具洗浄機構は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記洗浄ノズルは、前記主軸先端側に複数設けられており、前記複数の洗浄ノズルは、前記主軸の軸線方向に向けて前記クーラント液を各々噴射することを特徴とする
【0011】
また、請求項6に係る発明の工具洗浄機構は、請求項5に記載の発明の構成に加え、前記主軸先端側には、該主軸と同軸をなす環状のホルダが設けられており、前記複数の洗浄ノズルは、前記環状のホルダにおいて、前記主軸の軸線方向に対して周方向に配置されたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る発明の工具洗浄機構は、請求項6に記載の発明の構成に加え、前記環状のホルダは、前記主軸先端側に着脱可能に構成されたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る発明の工具洗浄方法は、主軸に取り付けられる工具を交換する工具交換機構により、該工具が取り付けられた工具ホルダが該主軸の内部に向けて搬送される工具搬送工程と、該工具ホルダが通過する主軸先端側に設けられた洗浄ノズルから該主軸の外部に向けてクーラント液が噴射されて、該工具ホルダが該主軸先端側の近傍で洗浄される工具洗浄工程とからなる工具洗浄方法であって、前記工具搬送工程は、前記主軸先端側に搬送する工程と、前記主軸の内部に搬送する工程を含み、該主軸先端側に搬送する工程において、前記工具ホルダの上端部にクーラント液が供給され、該主軸内部に搬送する工程において、前記工具ホルダの上端部からテーパ部へクーラント液が供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明の工具交換機構では、工具交換機構により工具が取り付けられた工具ホルダが搬送されると、洗浄ノズルから噴射されるクーラント液によって工具ホルダが洗浄されるものであって、工具ホルダが主軸先端側の近傍を通過する際にクーラント液が工具ホルダの上端部に供給されるように、洗浄ノズルにおけるクーラント液の噴射角度が設定された。よって、主軸に取り付けられる工具を交換する際に、工具ホルダに付着した切粉等をより簡易な構成でかつ確実に洗浄することができる。
【0015】
また、請求項2に係る発明の工具交換機構では、請求項1に記載の発明の効果に加え、工具ホルダは、主軸内周面に密接して嵌まるためのテーパ部と、その上部に配置されたプルスタッド部を有し、工具ホルダの上端部はプルスタッド部の上端からテーパ部の上端の範囲である。よって、主軸に取り付けられる工具を交換する際に、プルスタッドの上端からテーパ部の上端の範囲に切粉等が残らないように洗浄することができる。
【0016】
また、請求項3に係る発明の工具交換機構では、請求項2に記載の発明の効果に加え、主軸先端側の近傍を通過する工具ホルダのテーパ部と、テーパ部に対して供給されるクーラント液とのなす角度が主軸からみて90度以下となるように、洗浄ノズルがクーラント液を噴射する。よって、洗浄ノズルによるクーラント液の接触角度を適切に調整することで、工具ホルダの上端部に付着した切粉等を確実に洗浄することができる。
【0017】
また、請求項4に係る発明の工具交換機構では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加え、主軸先端側の近傍を通過する工具ホルダに対して供給されるクーラント液の流速が30m/s以上となるように、洗浄ノズルがクーラント液を噴射する。よって、洗浄ノズルによるクーラント液の吐出流速を適切に調整することで、工具ホルダの上端部に付着した切粉等を確実に洗浄することができる。
【0018】
また、請求項5に係る発明の工具交換機構では、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加え、洗浄ノズルは主軸先端側に複数設けられており、各洗浄ノズルが主軸の軸線方向に向けてクーラント液を各々噴射する。よって、主軸先端側の近傍を通過する工具ホルダに対して複数の方向からクーラント液を噴射して、工具ホルダの上端部に付着した切粉等を確実に洗浄することができる。
【0019】
また、請求項6に係る発明の工具交換機構では、請求項5に記載の発明の効果に加え、主軸先端側には主軸と同軸をなす環状ホルダが設けられており、複数の洗浄ノズルは、環状ホルダにおいて主軸の軸線方向に対して周方向に配置された。よって、主軸先端側の近傍を通過する工具ホルダに対して、その周方向から満遍なくクーラント液を噴射することができる。
【0020】
また、請求項7に係る発明の工具洗浄機構では、請求項6に記載の発明の効果に加え、環状ホルダは主軸先端側に着脱可能に構成された。よって、主軸先端側に取り付けられた環状ホルダを容易に交換することができる。
【0021】
また、請求項8に係る発明の工具洗浄方法では、工具交換機構により工具が取り付けられた工具ホルダが搬送されると、洗浄ノズルから噴射されるクーラント液によって工具ホルダが洗浄されるものであって、主軸先端側に搬送する工程で工具ホルダの上端部にクーラント液が供給され、主軸内部に搬送する工程で工具ホルダの上端部からテーパ部へクーラント液が供給される。よって、主軸に取り付けられる工具を交換する際に、工具ホルダに付着した切粉等をより簡易な構成でかつ確実に洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。本実施の形態では、主軸に取り付けられる工具の交換時に工具ホルダを洗浄する工具洗浄機構及び工具洗浄方法を、固定式の一体型ノズルを複数備えた環状ホルダを実装した工作機械1を例示して説明する。
【0023】
まず、工作機械1の構成について説明する。図1は、工作機械1の全体斜視図である。図2は、主軸ヘッド7の正面図である。図3は、主軸ヘッド7のA―A線方向における矢視方向断面図である。図4及び図5は、工具交換機構20の動作を説明するための、工具交換機構20を中心とした正面図である。図6は、主軸9を中心とした底面拡大図である。図7は、主軸9を中心としたB―B線方向における矢視方向断面図である。図8は、環状ホルダ32及び蓋体31の外観斜視図である。なお、工作機械1において、そのX軸方向とは工作機械1の左右方向を指し、そのY軸方向とは工作機械1の前後方向(奥行き方向)を指し、そのZ軸方向とは工作機械1の上下方向を指すものとする。また、図2のA−A線は、工作機械1のZ軸方向と平行をなす主軸9の軸線方向と一致する線であり、図6のB−B線は、工作機械1のY軸方向と平行をなし、かつ主軸9の断面中心を通る線である。
【0024】
図1に示すように、工作機械1は、機械本体3の土台となる鉄製の基台2と、該基台2の上部に設けられ、ワーク(図示外)を加工する機械本体3とから構成されている。そして、図示しないが、基台2の上部には、機械本体3を囲繞して保護するとともに、機械本体3から切粉が外部に飛散するのを防止する略直方体状のボックス型のスプラッシュカバーが固定されるようになっている。
【0025】
基台2は、工作機械1のY軸方向に延設され、その下部の四隅には脚部2aが各々設けられている。そして、これら4本の脚部2aが工場などの床面に設置されることにより、工作機械1が所定場所に設置される。さらに、基台2上部の後方側には、略直方体状のコラム座部4が設けられている。なお、この基台2の芯部は、軽量化、高強度化及び低コスト化のため、いわゆる肉抜き成形(リブによる骨組構造)されている。
【0026】
機械本体3は、基台2のコラム座部4の上面に載置して固定され、垂直上方に延設された略角柱状のコラム5と、該コラム5の前面に沿って昇降可能に設けられた主軸ヘッド7と、該主軸ヘッド7の下部前側から鉛直下方に突出する主軸9と、前記主軸ヘッド7の右側に設けられ、主軸9の先端に装着された後述の工具ホルダ60を、他の工具6(図2及び図3参照)を保持する工具ホルダ60に交換する工具交換機構(ATC)20と、基台2の上部に設けられ、ワークを着脱可能に保持するテーブル10と、コラム5の背面側に設けられ、電源装置、制御装置等の各装置を内蔵する制御盤19とを主体に構成されている。
【0027】
ここで、図2及び図3に示すように、主軸ヘッド7は、主軸9が備えるスピンドル29(図7参照)を回転駆動させるための主軸モータ8を上部に備え、該主軸モータ8の出力軸は、カップリング(図示外)を介してスピンドル29に連結されている。さらに、主軸ヘッド7は、コラム5の前面側に設けられたガイドレール(図示外)にリニアガイド(図示外)を介して昇降自在にガイドされている。そして、昇降自在にガイドされる主軸ヘッド7は、モータ駆動されるボールねじ(図示外)とナットとの結合により昇降駆動されるようになっている。
【0028】
図1に戻り、主軸ヘッド7の下部後部寄りには、コラム5の前面側に設けられた主軸ヘッド7の昇降機構を覆い隠すための正面視縦長長方形状のZ軸カバー18の上端部が固定されている。これにより、Z軸カバー18は、コラム5の前面を覆い隠しながら主軸ヘッド7と一体的に昇降する。また、後述するように、主軸9の先端側(下端側)には、クーラント液を工具ホルダ60に向けて噴射して切粉を洗い流すための噴射ノズルである一体型ノズル40を複数備えた環状ホルダ32(図7参照)が設けられている。また、基台2の後部には、その一体型ノズル40にクーラント液を供給するためのクーラント供給管17が設けられている。
【0029】
一方、基台2の上部中央には、ワークを着脱可能に保持するテーブル10がX軸−Y軸方向に移動可能に配置されている。このテーブル10の移動機構は次の通りである。まず、テーブル10の下側には、略直方体状の支持台12が設けられている。そして、その支持台12の上部には、X軸方向に沿って延設された一対のX軸送りガイド(図示外)が設けられ、そのX軸送りガイド上にテーブル10が移動可能に支持されている。さらに、支持台12は、基台2の長手方向に沿って延設された一対のY軸送りガイド上に移動可能に支持されている。このような状態で、テーブル10は、基台2上に設けられたXモータ(図示外)により、X軸送りガイドに沿ってX軸方向に移動し、同じく基台2上に設けられたYモータ(図示外)により、Y軸送りガイドに沿ってY軸方向に移動するようになっている。
【0030】
また、X軸送りガイドには、テーブル10を中央に挟み、テレスコピック式に収縮するテレスコピックカバー13,14が左右に各々覆設されている。さらに、Y軸送りガイドには、支持台12を中央に挟み、テレスコピックカバー15とY軸後ろカバー(図示外)とが前後に各々覆設されている。なお、Y軸後ろカバーは一枚の板金からなる断面山型に形成され、コラム5の下部に設けられたカバー収納部(図示外)に収容されるようになっている。そして、これら複数のカバーにより、テーブル10がX軸方向及びY軸方向の何れの方向に移動した場合でも、X軸送りガイド及びY軸送りガイドは、常にテレスコピックカバー13,14,15及びY軸後ろカバー(図示外)によって覆われている。よって、テーブル10の周辺等から飛散する切粉や、クーラント液の飛沫等が各レール上に落下するのを防ぐことができる。
【0031】
ここで、工具交換機構20について説明する。図4及び図5に示すように、工具交換機構20は、工具6が取り付けられた工具ホルダ60を複数格納する側面視略小判型状の工具マガジン21と、主軸9に装着されている工具ホルダ60と他の工具ホルダ60とを把持及び搬送するための工具交換アーム22とを備えている。工具交換アーム22は、回転可能および上下動可能に装着された円筒状のアーム旋回軸22cの下端部に、その両端部に工具ホルダ60を各々把持する把持部22a,22aが設けられたアーム部22bが固定されて構成されている。なお、アーム旋回軸22cはZ軸方向と平行をなし、アーム部22bはアーム旋回軸22cを軸として回動可能である(図4及び図5参照)。
【0032】
そして、主軸9に装着される工具6の交換時には、工具交換アーム22が原点に上昇されている状態において、まず、工具交換アーム22が旋回し、工具マガジン21側の工具ホルダ60と主軸9に装着された工具ホルダ60とが、把持部22a,22aでそれぞれ把持される。次いで、工具交換アーム22が下降して、工具抜脱動作が行われる。その後、工具交換アーム22が旋回して主軸9側の工具ホルダ60と工具マガジン21側の工具ホルダ60とが入れ替わる。このとき、工具交換アーム22は180度回転することになる。その後、工具交換アーム22が上昇し、工具交換アーム22に把持された工具6は、工具マガジン21側の工具ポット(図示外)あるいは主軸9に装着される。そして、工具交換アーム22が所定角度旋回して、把持部22a,22aから工具ホルダ60がそれぞれ開放されて、工具交換アーム22のアーム旋回動作の1サイクルが終了する。
【0033】
次に、主軸9について説明する。図6及び図7に示すように、主軸9は、上下方向に長い略円筒状のハウジング23を備えており、そのハウジング23の内側に、スピンドル29が回転自在に設けられている。さらに、ハウジング23の軸線方向先端側(下端側)の内周面には、スピンドル29を回転自在に支持するベアリング軸受け50,51が各々設けられている。また、スピンドル29の先端部の中心には、テーパ状の内周面を有するホルダ取付穴33が、スピンドル29の軸線に沿って穿設されている。そして、このホルダ取付穴33の内周面に対し、後述する工具ホルダ60のシャンク部60aのテーパ状の外周面が密着して嵌まるようになっている。
【0034】
さらに、このホルダ取付穴33の縮径する上部には、このホルダ取付穴33の内周面に連続するとともに、径がやや広くなった広径部34が設けられている。そして、その広径部34の上部には、複数の鋼球38を介して工具ホルダ60のプルスタッド部60cを把持するチャック機構部39が配置されている。また、ハウジング23の先端部(下端部)には、スピンドル29とベアリング軸受け50,51を保持するとともに、切削時の切粉等がベアリング軸受け50,51に侵入するのを防止する平面視略リング状のベアリング押さえである蓋体31が設けられている。さらに、蓋体31の下部に、平面視略リング状をなし、複数の一体型ノズル40及びノズル孔43が形成された環状ホルダ32が設けられている。なお。蓋体31及び環状ホルダ32は、複数のボルト37によりハウジング23の先端部(下端部)に重ねて固定されている。
【0035】
ところで、工具ホルダ60は、先述の工具交換機構20により搬送されて、主軸9内のスピンドル29に形成されたホルダ取付穴33に挿脱される。この工具ホルダ60は、ホルダ取付穴33のテーパ状の内周面に密接して嵌まるためのテーパ状(円錐台形状)のシャンク部60aと、シャンク部60aの底面にフランジ状に形成された略円柱状のフランジ部60bと、フランジ部60bの下面の中心部から下方に突出され、その先端部に工具6を支持する工具支持部60eとを備える。また、シャンク部60aの縮径する上部には、その頭部が周方向に膨らんだ側面視T字型をなす取付け金具であるプルスタッド部60cが設けられている。
【0036】
そして、工具ホルダ60の上端部において、プルスタッド部60cの先端に形成された平面(すなわち、プルスタッド部60cの頭部に形成された平面)が、プルスタッド上端面60dである。工具交換機構20により搬送される工具ホルダ60は、このプルスタッド上端面60dを上に向けた状態でホルダ取付穴33に上方向に挿入され、又は下方向に抜脱される。また、フランジ部60bの外周面の幅方向の工具6側には、工具交換アーム22の把持部22aに把持されるために縮径する凹部60fが形成されている。
【0037】
すなわち、本実施の形態に係る工具ホルダ60は、主軸9内に工具ホルダ60が挿入されると、そのシャンク部60aがホルダ取付穴33の内面と密着して支持及び固定される、いわゆるBTシャンクである。そして、ホルダ取付穴33に挿入された工具ホルダ60の先端では、チャック機構部39によってプルスタッド部60cが把持されるようになっている。
【0038】
また、先述の蓋体31及び環状ホルダ32の間隙には環状の溝26が形成されており、この溝26に連通して形成された接続孔28にはクーラントホース30が接続されている。クーラントホース30は、工具ホルダ60に付着した切粉等を洗浄するクーラント液を溝26の内部に供給するためのものであり、環状ホルダ32の側面で接続孔28と接続されている。なお、クーラントホース30のクーラント液は、図示外のクーラントポンプによってクーラント供給管17(図1参照)を介して供給される。
【0039】
ここで、環状ホルダ32について説明する。図8に示すように、環状ホルダ32は、リング状金具の本体部であるリング体32aを有し、その背面側から蓋体31の下部に取り付けられる。そして、リング体32aの正面32c側には、環状ホルダ32をハウジング23の先端部(下端部)に固定するためのボルト37が挿嵌される複数のボルト穴32bが、環状ホルダ32の外周に沿って等間隔で穿設されている。さらに、環状ホルダ32の内部には、クーラント液の流路を形成する複数の一体型ノズル40があらかじめ設けられている(図7参照)。そして、これらの一体型ノズル40の流路40a(図9参照)の延長上に位置する微小な円形開口部であるノズル孔43が、環状ホルダ32の正面32cに各々形成されている。なお、環状ホルダ32が蓋体31の下部に取り付けられると、各一体型ノズル40は先述の溝26に各々連通する。
【0040】
この主軸9と同軸をなすリング状金具である環状ホルダ32が、複数のボルト37で取り付けられると、環状ホルダ32が有する断面中央の貫通孔はホルダ取付穴33と連通し、その開口中心が主軸9の軸線上に位置する。そのため、工作機械1の主軸ヘッド7を下方向からみると(図6参照)、環状ホルダ32の貫通孔からホルダ取付穴33に工具ホルダ60を着脱可能となっている。
【0041】
先述のように、この環状ホルダ32には、その内部の溝26と連通する複数の一体型ノズル40がリング状に等間隔で取り付けられており、その流路40a(図9参照)の延長上に形成されたノズル孔43が、環状ホルダ32における主軸9の軸線方向(すなわち、環状ホルダ32の断面中心)に向けられている。本実施の形態では、環状ホルダ32に12個の一体型ノズル40(ノズル孔43)が、その内周に沿ってリング状に等間隔で設けられている。
【0042】
このような構成のもと、主軸9に取り付けられる工具6の交換時には、クーラントホース30から溝26に供給されたクーラント液が、環状ホルダ32に形成された各ノズル孔43から主軸9の回転中心に向かって噴射される。すなわち、主軸9の軸線方向における主軸9の外部(すなわち、ホルダ取付穴33の直下)に向けて、各ノズル孔43からクーラント液が噴射される。そして、本発明では、工具交換の際に工具交換アーム22に把持された工具ホルダ60の上端部(プルスタッド部60cのプルスタッド上端面60dからシャンク部60aの上端までの範囲)にもクーラント液が吹き付けられるように、クーラント液の噴射角度及び吐出流速が調整されているが、詳細は後述する。
【0043】
ここで、本実施形態の工作機械1における、工具交換時の工具洗浄について具体的に説明する。図9は、工具交換時における、主軸9のホルダ取付穴33を中心とした側面断面拡大図である。図10は、工具交換時における、環状ホルダ32を中心とした底面拡大図である。以下では、工具交換機構20により、新たな工具6が取付けられた工具ホルダ60が、プルスタッド上端面60dを上に向けてホルダ取付穴33に挿入される場合を例示する。
【0044】
図9に示すように、工具ホルダ60は工具交換機構20によりホルダ取付穴33に向けて上方向に搬送されつつ(工具搬送工程)、環状ホルダ32の各ノズル孔43からクーラント液が噴射される(工具洗浄工程)。すなわち、工具洗浄工程において、クーラント液が主軸9の軸線方向における主軸9の外部(ホルダ取付穴33の開口部33aの直下)に向けて一定角度で噴射されるため、工具搬送工程では、工具ホルダ60がホルダ取付穴33の開口部33aの直下を通過する際に、その側面に周方向からクーラント液から吹き付けられる。
【0045】
より詳細には、工具搬送工程は、主軸9の先端側(開口部33a)に搬送する工程と、主軸9の内部(ホルダ取付穴33)に搬送する工程とで構成される。そして、主軸9の先端側に搬送する工程において、工具ホルダ60が開口部33aの直下を通過する際に、工具ホルダ60の上端部(プルスタッド部60cのプルスタッド上端面60dからシャンク部60aの上端までの範囲)にクーラント液が供給される。さらに、主軸9の内部に搬送する工程において、工具ホルダ60が上方向に移動されるのに応じて、工具ホルダ60の上端部からシャンク部60aへクーラント液が供給される。その後、工具ホルダ60に付着した切粉等が洗浄された状態で、工具ホルダ60が開口部33aを経由してホルダ取付穴33に挿入及び嵌着される。
【0046】
ここで、図10に示すように、環状ホルダ32の各一体型ノズル40は放射状に配置されており、各ノズル孔43から噴射されるクーラント液が環状ホルダ32の断面中心(すなわち、主軸9の軸線方向)に集中するようになっている。そのため、主軸9の軸線方向に沿って搬送される工具ホルダ60の側面部(シャンク部60a)には、クーラント液が効果的にかつ満遍なく吹き付けられるため、確実に切粉等が洗浄される。
【0047】
そして、図9に示すように、各ノズル孔43は、ホルダ取付穴33の開口部33aからみて所定角度下方に向けてそれぞれクーラント液を噴射するため、各ノズル孔43が噴射したクーラント液はホルダ取付穴33の直下に集中するようになっている。そのため、ホルダ取付穴33の直下を通過する工具ホルダ60の側面部(シャンク部60a)には、クーラント液が効果的にかつ満遍なく吹き付けられるため、確実に切粉等が洗浄される。
【0048】
ここで、本実施の形態では、さらに以下の工夫を加えることで、工具ホルダ60の上端部(プルスタッド部60cのプルスタッド上端面60dからシャンク部60aの上端までの範囲)にも確実にクーラント液が吹き付けられるようにして、この工具ホルダ60の上端部に切粉等が残存しないようにしている。そして、工具交換を高速に行うために、工具交換機構20による工具ホルダ60の搬送速度を速くしてクーラント液による洗浄時間を短くしても、確実に工具ホルダ60の上端部を洗浄できるようにしている。
【0049】
まず、各ノズル孔43からのクーラント液の噴射角度に工夫を施している。すなわち、主軸9のホルダ取付穴33の直下を通過する工具ホルダ60のシャンク部60aと、このシャンク部60aに対して供給されるクーラント液とのなす角度βが主軸9からみて90度以下となるように、ホルダ取付穴33の開口部33aからみた各ノズル孔43がクーラント液を噴射する角度αを設定している(図9参照)。言い換えれば、クーラント液の接触角度βが90度以下となるように、クーラント液の噴射角度αを最適な値であらかじめ設定している。
【0050】
ここで、クーラント液の接触角度βが90度よりも大きいと、各ノズル孔43から噴射されたクーラント液と、工具ホルダ60の上端部(特に、プルスタッド上端面60d)とのなす角度が小さくなり(すなわち、平行に近くなり)、工具ホルダ60の上端部にクーラント液が吹き付けられにくい。また、工具ホルダ60のシャンク部60aに吹き付けられたクーラント液が上方に飛散したり舞い上がったりしてしまい、工具ホルダ60から洗浄された切粉等がホルダ取付穴33に侵入するおそれがある。かかる事態は、工具ホルダ60の取付け時に切粉等を噛んでしまい、工具交換の支障や加工精度の低下をまねく。
【0051】
そこで、本実施の形態では、クーラント液の接触角度βが90度以下となるようにすることで、各ノズル孔43から噴射されたクーラント液が、工具ホルダ60の上端部にも確実に吹き付けられるようにしている。そして、工具ホルダ60の上端部に吹き付けられたクーラント液が、シャンク部60aのテーパ状に沿って下方に流れるようにして、洗浄された切粉等がホルダ取付穴33に侵入することを防止している。さらに、工具ホルダ60のプルスタッド部60c及びシャンク部60aの側面に沿って下方に流れるクーラント液が、工具ホルダ60の全体(プルスタッド部60c,シャンク部60a,フランジ部60b,凹部60f)を順に満遍なく洗浄する効果もある。
【0052】
なお、クーラント液の接触角度βを90度以下とするためには、クーラント液の噴射角度αを以下のように調整する必要がある。すなわち、クーラント液の噴射角度αは一体型ノズル40の流路40aの形成方向(ノズル孔43の形成角度)によって決定されるため、クーラント液の接触角度βが90度以下となるように、一体型ノズル40の流路40a(ノズル孔43)を最適なクーラント液の噴射角度αであらかじめ形成しておく。一例として、本実施の形態では、クーラント液の接触角度βを68度とするために、クーラント液の噴射角度αが30度となるように一体型ノズル40の流路40a(ノズル孔43)を形成している。
【0053】
一方で、工具ホルダ60のシャンク部60aやプルスタッド部60cなどの形状や、工具交換時に工具交換機構20によって振り込まれる工具ホルダ60の高さによって、クーラント液の接触角度βを90度以下とするためのクーラント液の噴射角度αは異なる。そのため、これらの要素を考慮したうえで、クーラント液の接触角度βを90度以下とするクーラント液の噴射角度αをあらかじめ算出しておき、その噴射角度αとなるように一体型ノズル40の流路40a(ノズル孔43)をあらかじめ形成しておく。
【0054】
ところで、本実施の形態では、主軸9の先端部(下端部)に着脱可能な環状ホルダ32を用いているため、工具ホルダ60のシャンク部60aの形状などの条件に応じて、環状ホルダ32を上記条件を満たす最適なものに取り替えることも容易である。
【0055】
次に、各ノズル孔43からのクーラント液の吐出流速に工夫を施している。すなわち、従来の工作機械では、ノズル孔に供給するクーラント液の供給圧が低圧(1MPa以下)であった。一方、本実施の形態では、図示外のクーラントポンプによるクーラント液の供給圧を高圧(1MPa以上)とし、また各ノズル孔43の径の大きさをより小さいものとすることで、各ノズル孔43からのクーラント液の吐出流速をより高速化している。
【0056】
ここで、発明者の実験と経験により、クーラント液の供給圧及び各ノズル孔43のノズル径を調整することで、クーラント液の吐出流速を少なくとも30m/s以上となるようにすれば、工具ホルダ60の上端部(特に、プルスタッド上端面60d)を確実に洗浄できることが明らかとなった。一例として、本実施の形態では、クーラント液の吐出流速が55m/sとなるように、クーラント液の供給圧と各ノズル孔43のノズル径を調整している。
【0057】
以上、第1の実施の形態に係る工作機械1によれば、工具交換機構20により工具ホルダ60が搬送されると、環状ホルダ32の各一体型ノズル40から噴射されるクーラント液によって工具ホルダ60が洗浄されるものであって、工具ホルダ60が主軸9に形成されたホルダ取付穴33の開口部33aの直下を通過する際に、工具ホルダ60の上端部(プルスタッド部60cのプルスタッド上端面60dからシャンク部60aの上端までの範囲)に供給されるようにクーラント液の噴射角度αを設定した。そして、工具ホルダ60のプルスタッド部60cからシャンク部60aへと、工具ホルダ60の移動に従って順にクーラント液が供給されるようにした。よって、主軸9に取り付けられる工具6を交換する際に、工具ホルダ60に付着した切粉等をより簡易な構成でかつ確実に洗浄することができる。
【0058】
また、環状ホルダ32の各一体型ノズル40は、主軸9に形成されたホルダ取付穴33の開口部33aの直下を通過する工具ホルダ60のシャンク部60aと、シャンク部60aに対して供給されるクーラント液の接触角度βが、主軸9からみて90度以下となるようにした。よって、クーラント液の接触角度βを適切に調整することで、工具ホルダ60の上端部に付着した切粉等を確実に洗浄することができる。
【0059】
また、環状ホルダ32の各一体型ノズル40は、主軸9に形成されたホルダ取付穴33の開口部33aの直下を通過する工具ホルダ60に対して供給されるクーラント液の流速が30m/s以上となるようにした。よって、クーラント液の吐出流速を適切に調整することで、工具ホルダ60の上端部に付着した切粉等を確実に洗浄することができる。
【0060】
また、蓋体31の下部には、主軸9と同軸をなす環状ホルダ32が設けられており、環状ホルダ32において周方向に配置された各一体型ノズル40は、主軸9の軸線方向に向けてクーラント液を各々噴射するようにした。よって、主軸9に形成されたホルダ取付穴33の開口部33aの直下を通過する工具ホルダ60に対して、周方向から満遍なくクーラント液を噴射して切粉等を洗浄することができる。また、環状ホルダ32を主軸9の先端部(下端部)に設けることで本発明を実現することができ、環状ホルダ32を最適なものに交換することも容易である。
【0061】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態では、主軸に取り付けられる工具の交換時に工具ホルダを洗浄する工具洗浄機構及び工具洗浄方法を、着脱式の別体型ノズルを複数備えた環状ホルダを実装した工作機械1を例示して説明する。
【0062】
本実施の形態に係る工作機械1は、基本的に第1の実施の形態と同様であるが、環状ホルダ32の構成が異なる。以下では、第1の実施の形態と異なる点のみを説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を用いるものとする。図11は、環状ホルダ32´及び蓋体31の外観斜視図である。図12は、別体型ノズル50の拡大斜視図である。図13は、工具交換時における、環状ホルダ32´を中心とした底面拡大図である。
【0063】
図11に示すように、環状ホルダ32´は、第1の実施の形態(図8に示す環状ホルダ32)と同様に、リング状金具の本体部であるリング体32´aを有し、リング体32´aの正面32´cには、後述の別体型ノズル50をリング体32´aに取り付けるための複数のノズル取付穴32´dが内周に沿って等間隔で穿設されている。環状ホルダ32´は、蓋体31の下端に接着剤によって固定されている。なお、環状ホルダ32´が蓋体31の下部に取り付けられると、各ノズル取付穴32´dは先述の溝26に各々連通する。
【0064】
図12に示すように、別体型ノズル50は、環状ホルダ32´のノズル取付穴32´dに嵌合される円柱状の胴部51と、リング体32´aの表面から突出する頭部52とで構成される。胴部51の内部には溝26と連通する流路51aが形成されており、また、頭部52の内部には流路51aと連通する流路52aが形成されており、流路52aの先端側に微小な円形開口部であるノズル孔53が形成されている。すなわち、溝26に供給されるクーラント液は、各別体型ノズル50の流路51a,52aを経由してノズル孔53から各々噴射される。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、環状ホルダ32´に12個の別体型ノズル50(ノズル孔53)が、その内周に沿ってリング状に等間隔で設けられている。
【0065】
このような構成のもと、主軸9に取り付けられる工具6の交換時には、クーラントホース30から溝26に供給されたクーラント液が、環状ホルダ32´に形成された各ノズル孔53から主軸9の回転中心に向かって噴射される。すなわち、主軸9の軸線方向における主軸9の外部(すなわち、ホルダ取付穴33の直下)に向けて、各ノズル孔53からクーラント液が噴射される。
【0066】
ここで、本実施形態の工作機械1における工具交換時の工具洗浄は、第1の実施の形態と同様である。すなわち、図13に示すように、環状ホルダ32´の各別体型ノズル50は放射状に配置されており、各ノズル孔53が噴射するクーラント液が環状ホルダ32´の断面中心(すなわち、主軸9の軸線方向)に集中するようになっている。また、各ノズル孔53は、ホルダ取付穴33の開口部33aからみて所定角度下方に向けて各々クーラント液を噴射するため、各ノズル孔53が噴射するクーラント液が、このホルダ取付穴33の開口部33aの直下に集中するようになっている(図9参照)。
【0067】
そして、クーラント液の接触角度βが90度以下となるように、各ノズル孔53からのクーラント液の噴射角度αが設定されている(図9参照)。さらに、クーラント液の吐出流速が少なくとも30m/sとなるように、クーラント液の供給圧及び各ノズル孔53のノズル径が調整されている。本実施の形態では、クーラント液の接触角度βを68度(すなわち、クーラント液の噴射角度αを30度)に設定しており、また、クーラント液の吐出流速を55m/sに調整している。
【0068】
以上、第2の実施の形態に係る工作機械1によれば、着脱可能な別体型ノズル50が取付けられた環状ホルダ32´を実装した構成であっても、第1の実施の形態と同様に、主軸9に取り付けられる工具6を交換する際に、工具ホルダ60に付着した切粉等をより簡易な構成でかつ確実に洗浄することができる。
【0069】
ところで、上記第1及び第2の実施の形態において、工具ホルダ60のシャンク部60aが、本発明の「工具ホルダのテーパ部」に相当する。一体型ノズル40及び別体型ノズル50が、本発明の「洗浄ノズル」に相当する。工具ホルダ60におけるプルスタッド部60cのプルスタッド上端面60dからシャンク部60aの上端までの範囲が、本発明の「工具ホルダの上端部」に相当する。環状ホルダ32,32´が、本発明の「環状のホルダ」に相当する。
【0070】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【0071】
例えば、クーラント液の接触角度βを68度とするために、一体型ノズル40及び別体型ノズル50をクーラント液の噴射角度αが30度となるように形成している。しかし、クーラント液の接触角度βが90度以下となるのであれば、任意のクーラント液の噴射角度αとすることができる。
【0072】
また、クーラント液の吐出流速が55m/sとなるように、クーラント液の供給圧と各ノズル孔43,53のノズル径を調整している。しかし、クーラント液の吐出流速が少なくとも30m/s以上となるのであれば、任意のクーラント液の供給圧及び各ノズル孔43,53のノズル径とすることができる。
【0073】
また、上記実施の形態では、工具ホルダ60の上端部がプルスタッド部60cのプルスタッド上端面60dからシャンク部60aの上端までの範囲となっているが、工具ホルダ60の形状は主軸9の形状や工具6の種類などに応じて異なる。しかし、本発明によれば、工具ホルダ60の形状を問わずに、工具ホルダ60の側面部のみならず上端部も確実にクーラント液で洗浄することができる。
【0074】
なお、本発明の趣旨の範囲内であれば、環状ホルダ32,32´の形態や、一体型ノズル40及び別体型ノズル50の位置、形状,大きさ,数量なども任意である。また、工具ホルダ60に取り付けられる工具6はドリルに限定されずに、各種カッターやエンドミルなどの各種工具を用いることができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の工具洗浄機構及び工具洗浄方法は、主軸に取り付けられる工具を交換する際に、工具ホルダに付着した切粉等を洗浄する工作機械に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】工作機械1の全体斜視図である。
【図2】主軸ヘッド7の正面図である。
【図3】主軸ヘッド7のA―A線方向における矢視方向断面図である。
【図4】工具交換機構20の動作を説明するための、工具交換機構20を中心とした正面図である。
【図5】工具交換機構20の動作を説明するための、工具交換機構20を中心とした正面図である。
【図6】主軸9を中心とした底面拡大図である。
【図7】主軸9を中心としたB―B線方向における矢視方向断面図である。
【図8】環状ホルダ32及び蓋体31の外観斜視図である。
【図9】工具交換時における、主軸9のホルダ取付穴33を中心とした側面断面拡大図である。
【図10】工具交換時における、環状ホルダ32を中心とした底面拡大図である。
【図11】環状ホルダ32´及び蓋体31の外観斜視図である。
【図12】別体型ノズル50の拡大斜視図である。
【図13】工具交換時における、環状ホルダ32´を中心とした底面拡大図である。
【符号の説明】
【0077】
1 工作機械
6 工具
7 主軸ヘッド
9 主軸
10 テーブル
20 工具交換機構
21 工具マガジン
22 工具交換アーム
23 ハウジング
26 溝
28 接続孔
29 スピンドル
30 クーラントホース
31 蓋体
32,32´ 環状ホルダ
33 ホルダ取付穴
37 ボルト
40 一体型ノズル
43 ノズル孔
50 別体型ノズル
53 ノズル孔
60 工具ホルダ
60a シャンク部
60b フランジ部
60c プルスタッド部
60d プルスタッド上端面
60e 工具支持部
60f 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に取り付けられる工具を交換する工具交換機構により、該工具が取り付けられた工具ホルダが該主軸の内部に向けて搬送されると、該工具ホルダが通過する主軸先端側に設けられた洗浄ノズルから該主軸の外部に向けてクーラント液が噴射されて、該工具ホルダが該主軸先端側の近傍で洗浄される工具洗浄機構であって、
前記工具交換機構により搬送される前記工具ホルダが前記主軸先端側の近傍を通過する際に、前記洗浄ノズルから噴射される前記クーラント液が該工具ホルダの上端部に供給されるように、該洗浄ノズルにおける該クーラント液の噴射角度が設定されたことを特徴とする工具洗浄機構。
【請求項2】
前記工具ホルダは、前記主軸に設けられたテーパ状の内周面に密接して嵌まるためのテーパ部と、該テーパ部の縮径する上部に配置されたプルスタッド部を有し、
前記工具ホルダの上端部は、前記プルスタッド部の上端から前記テーパ部の上端の範囲であることを特徴とする請求項1記載の工具洗浄機構。
【請求項3】
前記洗浄ノズルは、前記主軸先端側の近傍を通過する前記工具ホルダのテーパ部と、該テーパ部に対して供給される前記クーラント液とのなす角度が、前記主軸からみて90度以下となるように該クーラント液を噴射することを特徴とする請求項2に記載の工具洗浄機構。
【請求項4】
前記洗浄ノズルは、前記主軸先端側の近傍を通過する前記工具ホルダに対して供給される前記クーラント液の流速が、30m/s以上となるように前記クーラント液を噴射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の工具洗浄機構。
【請求項5】
前記洗浄ノズルは、前記主軸先端側に複数設けられており、
前記複数の洗浄ノズルは、前記主軸の軸線方向に向けて前記クーラント液を各々噴射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の工具洗浄機構。
【請求項6】
前記主軸先端側には、該主軸と同軸をなす環状のホルダが設けられており、
前記複数の洗浄ノズルは、前記環状のホルダにおいて、前記主軸の軸線方向に対して周方向に配置されたことを特徴とする請求項5に記載の工具洗浄機構。
【請求項7】
前記環状のホルダは、前記主軸先端側に着脱可能に構成されたことを特徴とする請求項6に記載の工具洗浄機構。
【請求項8】
主軸に取り付けられる工具を交換する工具交換機構により、該工具が取り付けられた工具ホルダが該主軸の内部に向けて搬送される工具搬送工程と、該工具ホルダが通過する主軸先端側に設けられた洗浄ノズルから該主軸の外部に向けてクーラント液が噴射されて、該工具ホルダが該主軸先端側の近傍で洗浄される工具洗浄工程とからなる工具洗浄方法であって、
前記工具搬送工程は、前記主軸先端側に搬送する工程と、前記主軸の内部に搬送する工程を含み、該主軸先端側に搬送する工程において、前記工具ホルダの上端部にクーラント液が供給され、該主軸内部に搬送する工程において、前記工具ホルダの上端部からテーパ部へクーラント液が供給されることを特徴とする工具洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−175786(P2007−175786A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373536(P2005−373536)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】