説明

工具

【課題】ワークピースの少なくとも1つの表面領域を機械加工できる可能性を与える工具を提供する。
【解決手段】本発明による実施の形態は、スピンドルに接続され、このスピンドルを駆動させるための駆動部を具備し、このスピンドルに着脱可能に取着される、ワークピース(24)の表面機械加工のための工具(10)において、この工具(10)には、少なくとも2つの作業面が設けられており、これら作業面は、ワークピース(24)を同時に機械加工する目的のために、前記駆動部により駆動されることを特徴とする工具(10)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルに接続され、このスピンドルを駆動させるための駆動部を具備し、このスピンドルに着脱可能に取着される、ワークピースの表面機械加工のための工具に関する。
【背景技術】
【0002】
幾何的に漠然とした切断縁を使用した切断による物品製造の場合には、回転工具の使用に関して、基本的な2つの主要な用途、即ち、軸方向及び径方向の用途がある。これら用途に関して、さまざまな工具、特にストック除去(stock-removing)工具がある。これら工具は、構成、形状及び粒状性が異なる。このような機械加工工具は、サイズに関して、それぞれの機械加工の目的の境界条件、機械加工される材料及び機械加工の速度に基づいて設計されている。
【0003】
好ましくは鋼でできたシャフトと、コア、即ち基体と、複数の研摩薄片とが、通常は、軸方向に作用するストック除去工具の主要な構成部品として設けられている。シャフトは、この場合、標準化された直径を有し、係合される工具ホルダにクランプ留めされる。コアは、それぞれの研磨薄片を取着し、支持するように働く。研磨薄片の数、粒状性及び形状は、意図された目的に依存している。それぞれの研磨薄片は、軸方向に沿ってコアに配置される、即ち、これらの作業面が軸方向にアラインメントされる。本質的には、機械加工される材料に従って、材料の必要な除去に従って、及び製造されるワークピースの表面の必要な品質に従って、それぞれの研磨薄片の粒状性の選択がなされる。
【0004】
スピンドルの駆動部は、いわゆる軸方向のストック除去工具を駆動させる回転運動を発生させる。必要な回転数は、例えば、工具の直径、機械加工される材料又は必要な表面品質などのように、様々な要素に依存している。
【0005】
軸方向のストック除去工具の場合には、機械加工面は、ストック除去工具の下側に位置している、即ち、研磨工具の軸線は、機械加工される面に垂直である。
【0006】
径方向に作用する機械加工工具は、同様に、好ましくは鋼でできたシャフトと、ストック除去本体とからなる。この本体は、例えば、回転対称の本体で、シリンダの形態で、周囲に配置された削屑生成(chip-producing)要素に設けられている。また、代わって、これは、それぞれの、互いに中心で接続されている径方向に突出した研磨薄片により構成されていてもよい。同様に標準化された直径を有するシャフトは、係合される工具ホルダにクランプ留めされる。ストック除去本体の削屑生成要素は、ストック除去本体と同じ材料があるか、例えば、硬金属、鋼玉(Al2O3)又はダイヤモンドである特別な材料で構成されることができる。
【0007】
研磨によるストック除去による削屑生成の場合には、それぞれの研磨薄片の粒状性や研磨体は、実質的に、機械加工される材料に従って、材料の必要な除去に従って、及びワークピースの必要な表面品質に従って決定される。
【0008】
ここで、同様に、いわゆる径方向のストック除去工具の回転運動は、スピンドルの駆動部によって発生される。必要な回転数は、例えば、工具の直径、機械加工される材料又は必要な表面品質などのように、様々な要素に依存している。
【0009】
径方向のストック除去工具の場合には、機械加工面は、工具の縁部に位置している、即ち、研磨工具と機械加工される表面とは、互いに平行に配置されている。
【発明の概要】
【0010】
この従来技術から進んで、本発明の目的は、上で述べられたタイプの工具であって、可能な最も簡単な方法で、ワークピースの少なくとも1つの表面領域が単一の工具によって同時に機械加工されることができる工具を提供することである。
【0011】
この目的は、本発明に従って、請求項1で特徴付けられる部分により達成される。
【0012】
従って、工具には、少なくとも2つの作業面が設けられており、これら作業面は、ワークピースに同時に作用する、即ち、軸方向に作用する少なくとも1つの作業面と、径方向に作用する少なくとも1つの作業面とが意図されている。
【0013】
本発明によれば、工具をスピンドルに接続するために与えられたシャフトは、好ましくは、金属でできている。しかし、特定用途のために、シャフトは、非金属材料、例えば、プラスチック又はセラミックでできていてもよく、必要であれば、繊維で補強されていてもよい。
【0014】
本発明に係る工具の好ましい一実施の形態によると、工具は、ワークピースのストック除去又は削屑生成の機械加工の目的に役立つ。これは、この場合、スピンドルの軸線から径方向と軸方向との少なくとも一方に突出した作業面を有する工具にとって効果的であることが判る。
【0015】
さらなる効果的な実施の形態の変形例によると、本発明に係る工具は、スピンドルの軸線に対して90°未満の角度で傾斜した少なくとも1つの作業面を有することができる。作業面は、前述の複数の作業面のうちの1つに加えて、又は前述の複数の作業面のうちの2つと共に設けられる。
【0016】
本発明のさらなる効果的な実施の形態の変形例では、工具は、少なくとも2つの表面領域を有し、これらは、スピンドルの軸線に対して異なって傾斜していることにより、果されることができる。
【0017】
本発明のさらなる態様は、工具の駆動部に関する。この駆動部は、完全に回転することができ、駆動部により駆動されるこの工具を回転させる、又は部分的に回転させる、即ち、本発明に係る工具は、振動回転され、この回転運動は、振動数に従って反対の(contra-directional)回転方向に交互に変化する。
【0018】
回転駆動部は、一般的であり、例えば、動力ドリルとして知られている。また、部分的に回転するように設計された駆動部は、回転駆動部ほど広くなくても、本質的に知られている。部分的な回転駆動部のために意図された工具は、形態と寸法の精度を確実にするために、反対の回転方向に合わせられなければならない。
【0019】
本発明に従う工具のために、一般的に、複数の作業面により規定された工具の外形(outer contour)は、回転対称である。
【0020】
従って、本発明の好ましい発展形態によれば、工具は、回転対称のフライス本体又は、鋸引き(sawing)本体である。この場合、鋸引き本体は、わずかな厚さのディスク形状のフライス本体であることが理解される。
【0021】
このようなフライス本体の作用の方向は、好ましくは径方向であるが、特別な場合には、軸方向にも与えられることができる。
【0022】
一実施の形態によると、本発明に従うフライス工具は、少なくとも1つの、好ましくは3つ以上の切断縁を有し、これら切断縁は、スピンドルの軸線に平行と垂直との少なくとも一方に延びた面内に延びている。代わって、これら切断縁は、スピンドルに対して90°未満の角度で傾斜した面内に延びることができる。
【0023】
さらに、本発明に従うフライス本体は、直線の、又は曲がった切断縁に設けられることができ、後者は、好ましくは、らせん形状を有することができる。
【0024】
本発明の代わりの一実施の形態によると、工具は、径方向と軸方向との少なくとも一方に係合する中心ガイド研磨手段により構成され、研摩材は、好ましくは、径方向と軸方向との少なくとも一方と係合する中心ガイド(centrally guided)研磨薄片により構成される。
【0025】
本発明の発展形態では、この場合、複数の薄片が設けられた工具は、シャフトと、このシャフトに回転可能に取着されるようにして設けられた基体と、この基体に交換可能に取り付けられた研磨薄片と、を有し、シャフトは、スピンドルに動作的に接続されており、複数の研磨薄片に従って設けられた外径を有する。
【0026】
本発明の他の代わりの形態によると、工具は、径方向と軸方向との少なくとも一方に係合する中心ガイド研磨体により構成されていることを特徴とし、この研磨体は、基体を有し、これら基体の表面には、研磨粒子がそれぞれ与えられている。
【0027】
それぞれの研磨体の外形は、好ましくは、形成されるワークピースの外形に合わせられることができる。
【0028】
本発明の効果的な発展形態によると、各基体の表面に与えられた研磨粒子は、それぞれの基体に密接に関連している。
【0029】
好ましくは、各基体の表面に与えられた研磨粒子は、異なる粒状性で与えられている、即ち、本発明に従って、別個の研磨体が各粒状性に与えられている。この場合、好ましくは、研磨粒子の粒状性は、機械加工されるワークピースを構成している材料に応じている。
【0030】
代わって、しかし、例えば、鋼玉(Al2O3)の研磨粒子とダイヤモンドの劣った粒子とが支配的な、異なる粒状性と異なる材料との少なくとも一方の研磨粒子が与えられることができる。
【0031】
さらに、本発明に従う研磨体に面して与えられた研磨材料の選択における決定要素は、粒状特性に加えて、その密度、配置である。
【0032】
金属材料が、好ましくは、本発明に係る研磨手段のための基体の材料として可能である。しかし、特定用途のために、これは、非金属材料、例えば、プラスチック又はセラミックであることができ、繊維で補強されていてもよい。
【0033】
既に上に述べられたように、基体への研磨粒子の密接な接続が、本発明により与えられる。十分な機械的安定性を有するこのような密接な接続は、好ましくは、金属材料か非金属の材料のための接着剤によって実現される。好ましくは、本発明によれば、この目的のために、多成分系接着剤が使用される。
【0034】
本発明に従う工具の有効性のためのさらなる評価基準は、適用分野、即ち、機械加工されるワークピースのそれぞれの材料と、工具の構造型とであり、これは、径方向の工具か軸方向の工具であるかに依存して、工具の直径か厚さによって、実質的に決定される。
【0035】
さらに、それぞれの工具の全長は、耐久性及びその適用範囲に影響する。
【0036】
さらに、研磨薄片を用いて動作する径方向の工具の場合には、与えられる研磨薄片の数は、決定要素である。
【0037】
本発明のこれら及びさらなる効果的な発展形態及び改良形態は、従属請求項の対象事項を構成している。
【0038】
本発明、本発明の効果的な発展形態及び改良形態、並びに本発明の特定の効果が、添付図面に示される本発明の例示的な実施の形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明に従う工具の斜視側面図である。
【図2】図2は、図1に従う工具の実用的な用途の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1には、本発明に従う工具10の斜視側面図が示されている。この工具は、径方向の研磨体16の上側境界として機能するシャフト12に取り付けられたディスク14を有する。この径方向の研磨体は、互いに接続され、径方向に突出した複数の中心ガイド研磨薄片18により構成されている。図1に示される工具は、完全な回転用途を、即ち、一方向の回転である円運動を意図している。
【0041】
本発明によると、上で説明された研磨薄片18は、シャフト12に着脱可能でないように接続されている。このシャフトは、一部が、駆動部のシャフトレシーバ内に受けられることができ、回転可能に取り付けられるようにして、これに取着されることができる。シャフトレシーバは、詳細は図示されないが、この目的のために設けられている。
【0042】
軸方向の研磨体20が、図1に示される径方向の研磨体16の下に位置されている。この軸方向の研磨体は、中心から星形に延びた研磨スプライン22により構成されており、既に説明された研磨薄片18と同様にして、回転可能に取り付けられるようにして、中心でシャフト12に接続されている。
【0043】
研磨薄片18及び研磨スプライン22は、詳細は図示されないが、各々が研磨粒子で覆われており、好ましくは、接着結合手段によってこれら研磨薄片及び研磨スプラインに取り付けられている。
【0044】
かくして覆われた研磨スプライン22が、これらの同一の波形形状、又は角張った形状により、既に研磨効果を有しているが、研磨薄片18の研磨効果は、これらの可撓性に、即ち、研磨薄片18の縁部領域の可撓性による。
【0045】
ワークピースに使用されるとき、各研磨薄片18は、ここに示されないが、駆動部により与えられる回転と、機械加工動作に必要な接触力とにより、弾性曲がりを受け、かくして、研磨薄片の表面のほぼ細長い幅(strip-wide)の領域は、ワークピースの表面に沿ってガイドされる。各研磨薄片18の表面に置かれた研磨粒子は、かくして、材料の除去を果し、この除去は、機械加工の継続時間、接触力及び成形面により決定される。
【0046】
図1に従う工具10のための実用的な用途の一例が、図2に示される。この場合、矩形のワークピース24には、縁凹部26が設けられており、これは、本発明に従う工具10によって所定の通路(pass)で形成されることができる。
【0047】
この場合、本発明に従う工具10は、この研磨体が結果として生じる材料の除去により凹部26を与えるようにして、工具10に与えられ研磨体に作用する径方向及び軸方向の力の成分により動作する。
【0048】
径方向に効果的な径方向の研磨体16の高さ、長さ及び直径は、この場合には、利用可能な駆動部、又はこの駆動力と、それぞれのワークピース24が構成されている材料との両方に適合している。
【符号の説明】
【0049】
10…工具,12…シャフト,14…ディスク,16…径方向の研磨体,18…研磨薄片,20…軸方向の研磨体,22…研磨スプライン,24…ワークピース,26…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルに接続され、このスピンドルを駆動させるための駆動部を具備し、
このスピンドルに着脱可能に取着される、ワークピース(24)の表面機械加工のための工具(10)において、
この工具(10)には、少なくとも2つの作業面が設けられており、
これら作業面は、ワークピース(24)を同時に機械加工する目的のために、前記駆動部により駆動されることを特徴とする工具(10)。
【請求項2】
この工具(10)は、ワークピース(24)のストック除去又は削屑生成の機械加工を目的として働くことを特徴とする請求項1の工具。
【請求項3】
この工具(10)は、前記スピンドルの軸線から径方向と軸方向との少なくとも一方に突出した複数の作業面を有することを特徴とする請求項1又は2の工具。
【請求項4】
この工具は、前記スピンドルの軸線に対して90°未満の角度で傾斜した少なくとも1つの作業面を有することを特徴とする請求項3の工具。
【請求項5】
この工具は、前記スピンドルの軸線に対して異なって傾斜した少なくとも2つの表面領域を有することを特徴とする請求項3又は4の工具。
【請求項6】
前記作業面により規定されるこの工具の外形は、回転対称であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1の工具。
【請求項7】
この工具(10)は、フライスヘッドであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1の工具。
【請求項8】
この工具(10)は、径方向と軸方向との少なくとも一方に係合する中心ガイド研磨手段(16,20)により構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1の工具。
【請求項9】
この工具(10)は、径方向と軸方向との少なくとも一方に係合する複数の中心ガイド研磨薄片(18)により構成されていることを特徴とする請求項8の工具。
【請求項10】
前記複数の研磨薄片(18)が設けられたこの工具(10)は、
シャフト(12)と、
このシャフトに回転可能に取着されるようにして設けられた基体(14)と、
この基体に交換可能に取り付けられた少なくとも1つの研磨薄片(18)と、を有することを特徴とする請求項9の工具。
【請求項11】
前記シャフト(12)は、前記スピンドルに動作的に接続されており、前記複数の研磨薄片(18)に従って設けられた外径を有する請求項9又は10の工具。
【請求項12】
この工具(10)は、径方向と軸方向との少なくとも一方に係合する中心ガイド研磨体(16,20)により構成されていることを特徴とする請求項8の工具。
【請求項13】
前記研磨手段(16,20)は、各々が、基体(18,20)を有し、
これら基体の表面には、研磨粒子がそれぞれ与えられている請求項8ないし12のいずれか1の工具。
【請求項14】
各基体の表面に与えられた前記研磨粒子は、それぞれの基体(18,20)に密接に関連していることを特徴とする請求項13の工具。
【請求項15】
前記研磨粒子は、異なる粒状性で与えられていることを特徴とする請求項13又は14の工具。
【請求項16】
前記研磨粒子の粒状性は、機械加工される前記ワークピース(24)を構成している材料に応じていることを特徴とする請求項15の工具。
【請求項17】
前記フライスヘッドは、複数の切断縁を有し、
これら切断縁は、前記スピンドルに平行と垂直との少なくとも一方に延びた面内に延びていることを特徴とする請求項7の工具。
【請求項18】
前記切断縁は、前記スピンドルに対して90°未満の角度で傾斜した面内に延びていることを特徴とする請求項17の工具。
【請求項19】
この工具(10)は、前記駆動部により与えられる回転運動をすることを特徴とする請求項1ないし18のいずれか1の工具。
【請求項20】
この工具(10)は、前記駆動部により与えられる反対方向の振動回転運動をすることを特徴とする請求項1ないし18のいずれか1の工具。
【請求項21】
前記研磨粒子は、接着剤によってそれぞれの基体に取着されていることを特徴とする請求項13ないし16のいずれか1の工具。
【請求項22】
多成分系接着剤が接着剤として与えられていることを特徴とする請求項21の工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−167555(P2010−167555A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−287603(P2009−287603)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(509112534)アーベーベー・アーゲー (4)
【氏名又は名称原語表記】ABB AG
【住所又は居所原語表記】Clemens−Holzmeister−Str.4, A−1109 Wien, Austria
【Fターム(参考)】