説明

工業用二層織物

【課題】 耐摩耗性、表面性、剛性、走行安定性に優れた経地糸接結糸を用いた工業用二層織物を提供する。
【解決手段】 上面側緯糸と織り合わされる上面側経糸と、下面側緯糸と織り合わされる下面側経糸とが上下に配置して経糸の組を形成し、そのうちの少なくとも1組以上が、上面側緯糸と下面側緯糸の両方と織り合わされ上面側表面組織と下面側表面組織の一部を形成する経地糸接結糸から構成された接結経糸の組である二層織物において、経地糸接結糸と下面側経糸とがそれぞれ下面側緯糸と織り合わせて形成する下面側表面の経組織が2種類の異なる経組織であり、緯組織は下面側緯糸が隣接する2本の経糸の上側を通り、次いで複数本の経糸の下側を通って下面側表面にロングクリンプを形成する組織であることを特徴とする工業用二層織物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性、表面性、剛性、走行安定性、ろ水性等の工業用織物に要求される物性を満足させる、経地糸接結糸を用いた工業用織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から工業用織物としては経糸、緯糸で製織した織物が広く使用されており、例えば抄紙用ワイヤーや搬送用ベルト、ろ布等その他にも多くの分野で使用されており、用途や使用環境に適した織物特性が要求されている。特に織物の網目を利用して原料の脱水等を行う製紙工程で使用される抄紙用ワイヤーでの要求は厳しく、紙に織物のワイヤーマークを転写しにくい表面性に優れた織物、また過酷な環境下においても好適に使用できる程度の耐摩耗性、剛性を持ち合わせたもの、そして良好な紙を製造するために必要な条件を長期間持続することのできる織物が要求されている。その他にも繊維支持性、製紙の歩留まりの向上、良好なろ水性、寸法安定性、走行安定性等が要求されている。さらに近年では抄紙マシンが高速化しているため、それに伴い抄紙用ワイヤーへの要求も一段と厳しいものとなっている。
このように工業用織物の中でも最も要求が厳しい抄紙用織物について説明すればほとんどの工業用織物の要求とその解決について理解できるので、以下抄紙用織物を代表して本発明を説明する。
抄紙用織物としては特に紙に織物のワイヤーマークを転写しにくい、優れた表面性、微細な繊維をとめる繊維支持性、過酷な走行条件においても長期間走行できる耐摩耗性、使用末期まで安定した走行が行える走行安定性、剛性等が非常に重要である。これらを満足させる織物として組織や構成に関する研究が進められているが、最近では上下組になった上面側経糸、下面側経糸の一部を経地糸接結糸とした2層織物が使用されている。経地糸接結糸は上面側緯糸、下面側緯糸の両方と織り合わせる接結機能を有するものであるが、それと同時に上面側表面、下面側表面の一部を形成する上面側経糸、下面側経糸と同じ機能も有する。
特開2003−342889号公報にも経地糸接結糸を用いた2層織物が公開されている。この織物は経地糸接結糸を用いているため付加的な接結糸が無く、上面側織物組織を崩すことがないため、表面性に優れる。また緯糸接結織物と比較しても接結強度に優れる。しかし、この公報で説明されている織物は下面側表面を構成する下面側緯糸が2本の経糸の上側、次いで2本の経糸の下側を通る組織であるため下面側表面に下面側経糸2本分の短い緯糸クリンプが形成されている。一般的にマシンやロールと接触する下面側表面は緯糸に摩耗を受け持たせる下緯糸ロングクリンプ構造とすればよい。特開2003−342889号公報の織物は下面側織物において、下面側緯糸が2本の経糸の上側を通り、次いで2本の経糸の下側を通る組織である。この織物では隣接する下面側の経糸のペアとペアの間にろ水空間が形成されるものであって、小径の糸で構成することで網厚の薄いティッシュ製造用織物に適したものとなる。この織物は網厚の薄いティッシュ抄造用織物として適している構造であるが、耐摩耗性、剛性が要求される用途では適していない。下面側緯糸をロングクリンプ組織とすれば耐摩耗性は向上する傾向にあるのだが、経地糸接結糸を用いた織物では、線径、織物の構造及び用途等によって織物組織が制限される場合がある。例えば耐摩耗目的で、この組織の織物の下面側緯糸に大径の糸を用いたとしても、下面側緯糸が曲がりにくくなるため、下面側表面に現れる経糸は突出し摩耗しやすくなってしまう。
このように、経地糸接結糸を用いた織物において、耐摩耗性、表面性、剛性、走行安定性、ろ水性の全てを満足する工業用織物は未だ開発されていなかった。
【特許文献1】特開2003−342889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は工業用織物に必要とされる表面性、耐摩耗性、剛性、走行安定性、ろ水性等の全ての要求を満足させる工業用二層織物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
「1. 上面側緯糸と織り合わされる上面側経糸と、下面側緯糸と織り合わされる下面側経糸とが上下に配置して経糸の組を形成し、そのうちの少なくとも1組以上が、上面側緯糸と下面側緯糸の両方と織り合わされ上面側表面組織と下面側表面組織の一部を形成する経地糸接結糸から構成された接結経糸の組である二層織物において、経地糸接結糸と下面側経糸とがそれぞれ下面側緯糸と織り合わせて形成する下面側表面の経組織が2種類の異なる経組織であり、緯組織は下面側緯糸が隣接する2本の経糸の上側を通り、次いで複数本の経糸の下側を通って下面側表面にロングクリンプを形成する組織であることを特徴とする工業用二層織物。
2. 組を形成する経地糸接結糸が、交互に上面側表面に現れ、それぞれ別の上面側緯糸と織り合わされ、それらが協働して上面側表面組織を構成する1本の経糸として機能し、下面側表面では組を形成する経地糸接結糸が交互に下面側表面に現れ、それぞれ別の下面側緯糸と織り合わされていることを特徴とする、1項に記載された工業用二層織物。
3. 組を形成する経地糸接結糸が、一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされているところの下側で、もう一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされ、且つ、一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされているところの上側で、もう一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされた組織であって、1組の経地糸接結糸が互いに補完し合って上面側表面と下面側表面の両方に経糸1本分の組織を形成していることを特徴とする、1項または2項に記載された工業用二層織物。
4. 経地糸接結糸の組織が、下面側緯糸の下側を通って形成する下面側ナックルを基準に左右均等であり、且つ接結経糸の組が形成する下面側組織が、常に同じ本数の下面側緯糸の上下を通る組織であることを特徴とする、1項ないし3項のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
5. 組を形成する経地糸接結糸が、同じ組織であることを特徴とする請求項1項ないし4項のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
6. 接結経糸の組が形成する下面側の経組織が3本の下面側緯糸の上側を通った後、1本の下面側緯糸の下側を通る3/1組織からなる組織であり、下面側表面を形成する下面側緯組織が連続する2本の下面側の経糸の上側を通った後、連続する6本の下面側の経糸の下側を通る組織であることを特徴とする、1項ないし5項のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
7. 接結経糸の組が形成する下面側の経組織が4本の下面側緯糸の上側を通った後、1本の下面側緯糸の下側を通る4/1組織からなる組織であり、下面側表面を形成する下面側緯組織が連続する2本の下面側の経糸の上側を通った後、連続する8本の下面側の経糸の下側を通る組織であることを特徴とする、1項ないし5項のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
8. 下面側表面の2種類の異なる経組織が、4本の下面側緯糸の上側を通った後、1本の下面側緯糸の下側を通り、2本の下面側緯糸の上側を通った後、1本の下面側緯糸の下側を通る4/1−2/1組織と、3本の下面側緯糸の上側を通った後、1本の下面側緯糸の下側を通る3/1組織からなる組織であり、緯組織が連続する2本の下面側の経糸の上側を通った後、連続する6本の下面側の経糸の下側を通る組織であることを特徴とする、1項ないし6項のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
9. 接結経糸の組の両側に経糸の組が配置されていることを特徴とする、1項ないし8項のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
10. 下面側表面において、隣り合う2本の経糸が1本の下面側緯糸を下面側から織り込むことで、それにより該下面側緯糸が下面側表面に経糸複数本分の緯糸ロングクリンプを形成し、下面側表面を形成する全ての経糸が下面側緯糸を下面側から織り込む部分で隣り合う左右の経糸と交互に接近しながらジグザグ配置を形成していることを特徴とする、1項ないし9項のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
11. 経地糸接結糸と上面側経糸が上面側緯糸と織り合わせて形成する上面側表面組織が、1種類の経組織からなることを特徴とする、1項ないし10項のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
12. 経地糸接結糸と上面側経糸が上面側緯糸と織り合わせて形成する上面側表面組織が、2種類の異なる経組織を交互に配置したことを特徴とする、1項ないし10項のいずれか1項に記載された工業用二層織物。」
に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の工業用二層織物は、経地糸接結糸と下面側経糸とが下面側緯糸と織り合わされて形成される下面側表面組織を、2つの異なる経組織からなる下面側表面組織とし、組を形成する経地糸接結糸を下面側ナックルを基準に左右均等組織、さらに組を形成する経地糸接結糸を同じ組織とすることで、表面性に優れた織物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の工業用織物は、上面側緯糸と織り合わされる上面側経糸と、下面側緯糸と織り合わされる下面側経糸とがあり、1本の上面側経糸と下面側経糸とが常に組を形成しており、それらがほぼ上下に配置して「経糸の組」を形成し、そのうちの少なくとも1組以上が、上面側緯糸と下面側緯糸の両方と織り合わされ上面側表面組織と下面側表面組織の一部を形成する経地糸接結糸から構成された「接結経糸の組」である二層織物であって、経地糸接結糸と下面側経糸とが下面側緯糸と織り合わせて形成する下面側表面の経組織が2種類の異なる経組織であり、緯組織は下面側緯糸が隣接する2本の経糸の上側を通り、次いで複数本の経糸の下側を通って下面側表面にロングクリンプを形成する組織としたことを特徴とする工業用二層織物である。下面側表面の経組織が二種類の異なる経組織からなることにより下緯糸ロングクリンプを形成しつつも、経地糸接結糸を左右均等組織あるいは同じ組織とすることができるため表面性向上の効果が奏される。
【0007】
そして、経地糸接結糸は上面側緯糸と下面側緯糸の両方と織り合わされ上面側表面組織の一部を形成するものであり、2本の経地糸接結糸は交互に上面側表面に現れ、それぞれ別の上面側緯糸と織り合わされ、それらが協働して上面側表面組織を構成する1本の経糸として機能する構成にするとよい。もし組になった経地糸接結糸が2本とも同じ上面側緯糸の上側を通る組織にすると、組を形成する2本の経地糸接結糸が1本の上面側緯糸の上で並列して配置されることになるため、ろ水空間が塞がれ他とろ水性が変わってしまいマーク発生の原因となり得る。下面側表面についても同様な理由から、それぞれ別の下面側緯糸と織り合わされる構造にするとよい。
【0008】
また、本発明において「上面側の経糸」と表現する部分については、上面側経糸と、組になって上面側表面組織を形成する経地糸接結糸との両方を示すものであり、「下面側の経糸」と表現する部分については、下面側経糸と、組になって下面側表面組織を形成する経地糸接結糸との両方を示すものである。
そして組を形成する経地糸接結糸は、一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされているところの下側で、もう一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされ、且つ、一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされているところの上側で、もう一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされた組織とし、1組の経地糸接結糸が互いに補完し合って上面側表面と下面側表面の両方に経糸1本分の組織を形成する組織とすると、織物強度、接結の引き込みのバランスがよくなり、表面性にも優れた構造となるため好ましい。また織物使用時経地糸接結糸が伸びている方向に張力をかけて使用されるため、緯糸接結糸を用いた織物と比べ接結力に優れ、内部摩耗の心配もなく、不可的な接結糸を用いていないため緯糸の打込本数を増やした密な織物とすることができる。
経糸の組と接結経糸の組の配置比率については適宜選択でき、接結強度が必要な場合には接結経糸の割合を増やせばよく、経糸の組全てを接結経糸の組としてもよい。また、その他の場合においては経糸の組を多く配置し、接結経糸の組を少なくすればよい。
【0009】
そして、織物組織としては、下面側表面は2種類の異なる経組織からなり、且つ下面側緯糸は隣接する2本の経糸の上側を通り、次いで複数本の経糸の下側を通って下面側表面にロングクリンプを形成する組織とする。本発明において、下面側表面を形成する経糸は下面側経糸と組を形成する経地糸接結糸の2つがある。経地糸接結糸1本では上面側表面、下面側表面にそれぞれ適した組織を形成することはできないが、2本の経地糸接結糸が協働することで上面側経糸、並びに下面側経糸と同等の組織を形成することができる。このようにして、経地糸接結糸の組、下面側経糸によって2種類の異なる経組織を形成する。
また、本発明において「下面側表面が2種類の異なる経組織からなる」とは、例えば1本の下面側緯糸の下側を通り、3本の下面側緯糸の上側を通る組織を繰り返した3/1組織の下面側の経糸1と、4本の下面側緯糸の上側を通り、1本の下面側緯糸の下側を通り、2本の下面側緯糸の上側を通り、1本の下面側緯糸の下側を通る4/1−2/1組織の下面側の経糸2のような異なる2つの組織から構成された下面側表面組織をいう。ここでいう下面側の経糸1と経糸2は下面側経糸であっても組を形成した経地糸接結糸であっても構わない。しかし、経地糸接結糸については、好ましくは下面側ナックルを基準に左右均等組織としたいため、接結経糸の組が形成する下面側組織が、常に同じ本数の下面側緯糸の上下を通る3/1組織を繰り返した組織とするとよい。下面側経糸は3/1組織であっても4/1−2/1組織であっても構わない。これらは一
例であり、その他4/1組織と6/1−2/1組織の組み合わせ、3/1組織と3/1−4/1−3/1−2/1組織の組み合わせ等がある。
さらに、下面側緯糸は隣接する2本の経糸の上側を通り、次いで複数本の経糸の下側を通って下面側表面にロングクリンプを形成する組織とする。このように下面側表面に緯糸ロングクリンプを形成する組織とすることで、緯糸摩耗型の耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側の隣り合う2本の経糸が1本の下面側緯糸を同時に織り込む組織とすることで、下面側緯糸ロングクリンプがさらに表面に突出する構造となるため耐摩耗性が向上し、同時に剛性も向上する。さらに下面側表面において、隣り合う2本の経糸が1本の下面側緯糸を下面側から織り込むことで、それにより該下面側緯糸が下面側表面に経糸複数本分の緯糸ロングクリンプを形成し、下面側表面を形成する全ての経糸が下面側緯糸を下面側から織り込む部分で隣り合う左右の経糸と交互に接近しながらジグザグ配置を形成する。ジグザグ配置としたことにより、織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなる。ランダムな大きさや形状の網目ができることによって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【0010】
また組を形成するそれぞれの経地糸接結糸が、下面側緯糸の下側を通って形成する下面側ナックルを基準に左右均等組織とするとよい。経地糸接結糸が2本とも均等組織であれば、経地糸接結糸の交差部の落ち込みが均一になるため表面性に優れた織物となる。ただし、上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率の関係で意匠図上左右が全く同じ組織とならない場合があるが、それらも含めて左右均等組織ということとする。さらに組を形成する経地糸接結糸が、同じ組織であると好ましい。同じ組織とすることで、組を形成する経地糸接結糸による上面側緯糸の引き込み強さが同じになるため、表面均一な織物となる。また、経地糸接結糸の交差部の落ち込みも均一になり、表面性に優れた織物となる。ただし、上記同様上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率の関係で意匠図上全く同じ組織とならない場合があるが、緯糸が織物上ずれることも含めて同じ組織ということとする。経地糸接結糸が下面側ナックルを基準に左右均等組織でない場合、経地糸接結糸が上面側緯糸の上側を通るナックル高さが変わり、組になった経地糸接結糸の交差部の落ち込みも同じく異なる。特に交差部の落ち込みが紙にマークを与えてしまうため好ましくない。上記に述べたように下面側の経糸を4/1−2/1組織と3/1組織とした場合、接結経糸の組を4/1−2/1組織とすると、2本の経地糸接結糸共に下面側ナックルを基準に左右均等組織とならない。尚かつ組を形成する経地糸接結糸が同じ組織とすることは不可能である。そのため、接結経糸の組は常に同じ本数の下面側緯糸の上下を通る3/1組織等の繰り返し組織とするとよい。それに対して下面側経糸は3/1組織であっても、4/1−2/1組織であっても何ら構わない。このように本発明のような特別な構成の織物組織とするためには、経組織とその組み合わせ、経組織のシフトの仕方等を十分考慮する必要がある。
そして、上面側表面には上面側緯糸間に上面側緯糸よりも線径の小さい補助緯糸を配置してもよい。例えば上面側緯糸と補助緯糸を交互に配置し、補助緯糸が複数本の経糸の上側を通るロングクリンプを形成する組織とすることで、緯糸の繊維支持性を向上させる効果がある。
【0011】
上面側表面組織を構成する経糸は、上面側経糸と組を形成した経地糸接結糸であり、それらが上面側緯糸と織り合わされている。上面側織物組織に関しては特に限定はなく、平織、綾織、崩し綾織、サテン織等その他織物組織であっても構わない。また、上面側の経組織を1種類だけでなく2種類とし、2つの異なる組織の経糸を交互に配置した上面側表面組織等であっても構わない。例えば、平織を形成する経糸と、1本の上面側緯糸の上側を通り、3本の上面側緯糸の下側を通る組織の経糸を交互に配置した上面側表面組織等がある。この組織は、平織組織の剛性と1/3組織の通気性等それぞれの組織の両方の長所を取り入れることができ、尚かつ打ち込み本数限界の低下、斜め剛性の悪化等の両方の短所を打ち消すことができる。
上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率については、同じであっても異なっても構わない。例えば、上面側緯糸と下面側緯糸を1:1の割合で配置してもよく、2:1、3:2、4:3等の比率であっても構わない。抄紙用織物分野では繊維支持生、表面性等の面から上面側表面は緻密にした方がよいため、上面側緯糸比率を多くするとよい。
線径については特に限定はないが、緻密で平滑な表面とするためには上面側表面を構成する上面側緯糸、上面側経糸は比較的線径の小さいものである方が好ましい。そして、特に表面性を重視する用途においては、経地糸接結糸も上面側経糸と同径の糸を用いることが好ましい。上面側経糸と経地糸接結糸に線径差があると、径の大きい方の糸が上面側表面あるいは下面側表面に突出して、紙にワイヤーマークを付与してしまったり、摩耗切断してしまうことがあり好ましくない。上面側経糸と経地糸接結糸の線径が同じであれば上面側の経糸ナックルの高さがほぼ同じとなるため、比較的均一な表面を形成することができる。また、下面側経糸と経地糸接結糸の線径を同じとすれば耐摩耗性が必要とされる用途では好ましいが、表面性が要求される分野では好適でない。
マシンやロール接触面側となる下面側表面は剛性や耐摩耗性が必要とされるため、下面側緯糸、下面側経糸は比較的線径の大きいものである方が好ましい。抄紙用織物分野においては、上面側経糸と経地糸接結糸の線径を同じとし、下面側経糸、下面側緯糸をそれらよりも大径の糸とすることで表面性、耐摩耗性の両方を満足する織物とすることができる。その場合、経地糸接結糸が下面側緯糸の下側を通る部分では、線径の小さい経地糸接結糸が下面側表面に現れることになるため摩耗の心配はあるが、しかし接結経糸の組の両側に経糸の組を配置し、経地糸接結糸が下面側緯糸の下側を通る部分で隣接配置している下面側経糸も同じ下面側緯糸の下側を通る組織とすると、線径の小さい経地糸接結糸が線径の大きい下面側経糸よりも先に摩耗切断してしまうことはなく、経地糸接結糸の破断により織物が使用できなくなることはない。
【0012】
本発明の下面側表面は2種類の異なる下面側の経組織から構成され、そして緯組織は下面側緯糸が隣接する2本の経糸の上側を通り、次いで複数本の経糸の下側を通って下面側表面にロングクリンプを形成する組織とする。このような組織とするためには、2種類の下面側の経糸の組織及びその配置を十分に検討する必要があり、配置割合は1本交互であっても、2本交互であっても、複数本に1本の割合でそれぞれ配置すればよい。また、好ましくは、経地糸接結糸が共に下面側緯糸の下側を通って形成する下面側ナックルを基準に左右均等組織、さらには組を形成する経地糸接結糸が同じ組織とするとよい。どの経組織の組を接結経糸の組にするかは、これらの条件を考慮して考えればよい。本発明の構成の織物は特殊であり、組織や配置の仕方、シフトの仕方等十分検討する必要がある。
本発明に使用される糸は用途によって選択すればよいが、例えば、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、あるいはこれらを撚り合わせる等して組み合わせた糸が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の短形状の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できる。また、糸の材質としても、自由に選択でき、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロ、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、綿、ウール、金属等が使用できる。もちろん、共重合体やこれらの材質に目的に応じてさまざまな物質をブレンドしたり含有させた糸を使用しても良い。
抄紙用ワイヤーとしては一般的には、上面側経糸、下面側経糸、経地糸接結糸、上面側緯糸には剛性があり、寸法安定性に優れるポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましい。また、耐摩耗性が要求される下面側緯糸にはポリエステルモノフィラメントとポリアミドモノフィラメントを交互に配置する等、交織するのが剛性を確保しつつ耐摩耗性を向上できて好ましい。
【実施例】
【0013】
発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。
図1〜25は本発明の実施例であって、意匠図、経糸に沿った断面図、緯糸に沿った断面図を示している。そして、図26、27は従来例であって、図26は従来例の意匠図で、図27は図26の経糸に沿った断面図を示している。
意匠図とは織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物全体の組織が形成される。意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1、2、3で示し、そのうち上面側経糸と下面側経糸からなる経糸の組の場合と、2本の経地糸接結糸からなる接結経糸の組の場合がある。緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1´、2´、3´で示し、配置比率によって上面側緯糸と下面側緯糸が上下に配置されている場合と、上面側緯糸のみの場合がある。
また、×印は上面側経糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、△印は下面側経糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。◆印は接経地糸結糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、◇印はその経地糸接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。また●印も経地糸接結糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、○印はその経地糸接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。また、経糸、緯糸に沿った断面図では組になった経地糸接結糸を区別するために、意匠図上の◆◇印の経地糸接結糸は点で塗りつぶし、●○印の経地糸接結糸は斜線で塗りつぶした。
上面側経糸と下面側経糸、および上面側緯糸と下面側緯糸は上下に重なって配置されている。緯糸については配置比率から一部上面側緯糸の下に下面側緯糸が配置されていないところもある。
意匠図では糸が上下に正確に重なって配置されることになっているが、これは図面の都合上であって実際の織物ではずれて配置されても構わない。また、組を形成する2本の経地糸接結糸は互いにくっつき合って上面側表面で上面側完全組織を構成する1本の経糸として機能する。下面側織物においても同様である。
【0014】
(比較例1)
図26は比較例1の織物の意匠図である。図27は図26の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。この織物は接結経糸の組を2/10の割合で配置した20シャフトの2層織物であって、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図26の意匠図において、2、7は2本の経地糸接結糸からなる接結経糸の組であり、1、3、4、5、6、8、9、10は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。
下面側表面組織は1種類の経組織からなり、下面側の経糸は6本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る6/1−2/1組織である。下面側表面は耐摩耗性の向上を目的として、下面側緯糸が2本の下面側の経糸の上を通った後、8本の下面側の経糸の下側を通る組織とした。この織物は下面側緯糸ロングクリンプを形成できるものの、組を形成する経地糸接結糸の組織をそれぞれ、下面側緯糸の下側を通って形成する下面側ナックルを基準に左右均等、且つ同じ組織とすることは不可能である。一方を左右均等組織とすることができても、もう一方は左右均等組織とはならない。そのため、上面側緯糸の上側を通って形成されるナックル高さが異なることはもちろん、2本の経地糸接結糸の交差部の落ち込みもまばらになり、ワイヤーマークの強い織物となってしまう。交差部の落ち込みは特に紙にマークを与えてしまう。
比較例1の経糸に沿った断面図を示す図27の2を見るとわかるように、経地糸接結糸2A、2B共に下面側緯糸の下側を通る下面側ナックルを基準に左右均等組織ではない。経地糸接結糸2Aでは、上面側緯糸1´uの下、2´uの上、3´uの下、4´uの上を通り、次いで下面側に向かい下面側緯糸8´dの下側を通り、また上側に向かって上面側緯糸10´uの上側を通る組織である。つまり、下面側緯糸8´dを基準に片側は3本の上面側緯糸7´u、6´u、5´uと下面側緯糸7´d、6´d、5´dの間を通り、次いで上面側緯糸4´uの上側を通る組織としており、その反対側では下面側緯糸8´dの下側を通った後、1本の上面側緯糸9´uと下面側緯糸9´dの間を通り、次いで上面側緯糸10´uの上側を通る組織であるため、左右均等組織とはいえない。また、経地糸接結糸2Bにおいても、下面側緯糸1´dの下側を通った後、上側に向かい上面側緯糸6´uの上、7´uの下、8´uの上側を通り、次いで下側に向かう組織となる。つまり、下面側緯糸1´dを基準に片側では4本の上面側緯糸2´u、3´u、4´u、5´uと下面側緯糸2´d、3´d、4´d、5´dの間を通り、次いで上面側緯糸6´uの上側を通る組織としており、その反対側では下面側緯糸1´dの下側を通った後、2本の上面側緯糸10´u、9´uと下面側緯糸10´d、9´dの間を通り、次いで上面側緯糸8´uの上側を通る組織であるため、左右均等組織とはいえない。
このような比較例1の上面側表面では、マークの少ない表面性に優れた織物は期待できない。それをふまえて実施例を確認する。
【0015】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の織物の意匠図である。図2は図1の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。図3は図1の意匠図の上面側緯糸と下面側緯糸が上下に配置された緯糸1´に沿った断面図である。この織物は接結経糸の組を2/8の割合で配置した16シャフトの2層織物であって、上面側表面組織、下面側表面組織共に2つの異なる経組織からなり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は3:2である。
図1の意匠図において、2、6は2本の経地糸接結糸からなる接結経糸の組であり、1、3、4、5、7、8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。上下層を織り合わせる接結経糸の組が2/8の割合で配置されているが、この程度であっても接結強度は十分である。
組を形成する経地糸接結糸は、一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされて上面側表面組織を形成しているとき、もう一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされて下面側表面組織を形成している。つまり、一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を補完し、一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を補完している。このようにして2本の経地糸接結糸が互いに組織を補完し合い、上面側表面組織と下面側表面組織を形成している。
下面側表面は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、4、5、7、8は4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る4/1−2/1組織であり、下面側の経糸2、6は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した3/1組織である。ここで経糸2、経糸6は接結経糸の組であるが、2本ペアにすることで他の下面側経糸と同じように1本の下面側経糸として機能し組織を形成している。そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する6本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
【0016】
上面側表面は2つの異なる経組織を交互に配置したものであり上面側の経糸1、3、5、7は1本の上面側緯糸の上、1本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した1/1組織であり、上面側の経糸2、4、6、8は2本の上面側緯糸の上、2本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した2/2組織である。上記の下面側組織同様、経糸2、経糸6は接結経糸の組であるが、他の上面側経糸と同じように1本の上面側経糸として機能し組織を形成している。このような上面側表面を2つの異なる経組織から構成した組織にすると2つの組織の両方の長所を発現することができ、また両方の短所を打ち消す効果が奏される。
本実施例について組を形成する経地糸接結糸は異なる組織のものが組を形成しており、図2の経地糸接結糸2の断面図を見ると、2Aは上面側緯糸1´u、2´uの下を通り、上面側緯糸3´u、4´uの上を通り、次いで下面側に向かい下面側緯糸7´dの下側を通り、また上側に向かって上面側緯糸11´u、12´uの上側を通る組織となる。また、もう一方の経地糸接結糸2Bは下面側緯糸1´dの下側を通って上側に向かい、上面側緯糸7´u、8´uの上を通り、次いで下面側に向かう組織である。これらは異なる組織であるが、組み合わせることで上面側表面に2/2組織、下面側表面に3/1組織が形成される。また、経地糸接結糸2A、2B共に下面側ナックルを基準に左右均等組織となっている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率が3:2であるため、左右全く均等ではないが、織物組織上、下面側緯糸7´dが8´d側にずれることもあり、実質的にほぼ均等組織となる。このように組を形成する経地糸接結糸を左右均等組織とすることで、組を形成する経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にすることができる。つまり、本実施例のように下面側ナックルを基準に左右均等組織とすると、経地糸接結糸2Aが上面側緯糸3´uと4´uを下面側に引き込む部分と、上面側緯糸7´uと8´uを下面側に引き込む部分の高さが同じになる。また、もう一方の経地糸接結糸2Bにおいても下面側ナックルを基準に左右均等組織となっているため、上面側緯糸7´uと8´uを下面側に引き込む部分と、次のサイクルの上面側緯糸7´uと8´uを下面側に引き込む部分の高さが同じになる。それによって、緯糸4´uと5´uの間、そして9´uと10´uの間にある経地糸接結糸2Aと2Bの交差部にできる落ち込みが均一となるため、織物全体として表面均一性に優れた織物とすることができる。
【0017】
また、接結経糸の組の両側に経糸の組を配置することで、比較的線径の小さい経地糸接結糸の下面側の摩耗を軽減することができる。下面側表面を形成する経糸は下面側経糸と経地糸接結糸であって、隣接する下面側の2本の経糸が同じ下面側緯糸の下側を通る組織である。そして、本実施例では意匠図をみると下面側経糸、経地糸接結糸は共に下面側緯糸の下側を通る下面側ナックルが2ヶ所存在する。下面側をマシン接触面側としたとき、下面側経糸は線径が大きいためマシンやロールと接触しても比較的摩耗切断しにくい。しかし、小径の経地糸接結糸の下面側ナックルが、マシンやロールと接触して摩耗切断し使用できなくなってしまうことがある。
しかし、本実施例のように経地糸接結糸が下面側緯糸の下側を通る部分で隣接配置している下面側経糸も同じ下面側緯糸の下側を通る組織とすると、線径の小さい経地糸接結糸が線径の大きい下面側経糸よりも先に摩耗切断してしまうことはなく、経地糸接結糸の破断により織物が使用できなくなることはない。具体的には、経地糸接結糸が下面側経糸よりも小径の場合この糸1本で見ると、経地糸接結糸2Aが下面側緯糸7´dの下側を通る部分では、経地糸接結糸2Aは最もロール側に近い下面側表面に存在しているため、ロール等で擦過摩耗しやすい。しかし、この経地糸接結糸2Aが下面側緯糸7´dの下側を通る下面側ナックルの隣に、下面側経糸3bが同じ下面側緯糸7´dの下側を通る下面側ナックルを形成する組織とすることで、実質的に隣接する経地糸接結糸2Aと下面側経糸3bが下面側緯糸7´dの下側を通る組織となるため、下面側経糸3bが摩耗を受け持ち小径の経地糸接結糸2Aであっても摩耗切断しにくくなる。
同様に経地糸接結糸2Bが下面側緯糸1´dの下側を通る下面側ナックルの隣で、隣接配置する経糸1bが同じ下面側緯糸1´dの下側を通る下面側ナックルを形成する組織とすることで、実質的に隣接配置する経地糸接結糸2Bと下面側経糸1bが下面側緯糸1´dの下側を通る組織となるため、小径の経地糸接結糸2Bであっても摩耗切断しにくくなり短期間で織物が破断してしまうこともない。このように接結経糸の組の両側に経糸の組が配置された配置とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。
また下面側表面において、隣り合う2本の経糸が1本の下面側緯糸を下面側から織り込むことで、それにより該下面側緯糸が下面側表面に経糸複数本分の緯糸ロングクリンプを形成し、下面側表面を形成する全ての経糸が下面側緯糸を下面側から織り込む部分で隣り合う左右の経糸と交互に接近するジグザグ配置とするとよい。
【0018】
ジグザグ配置とは、下面側表面において1本の下面側の経糸が右側に隣接配置している下面側の経糸と同じ下面側緯糸の下側でナックルを形成した後、左側に隣接配置している下面側の経糸と同じ下面側緯糸の下側でナックルを形成し、1本の経糸が右側の緯糸、左側の緯糸に交互に寄り合っている構造をいう。ジグザグ配置としたことにより、織物の斜め方向の剛性が向上し、斜行を防止し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなる。ランダムな大きさや形状の網目ができることによって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
例えば、下面側経糸3においては、右隣に隣接配置している経地糸接結糸4と同時に下面側緯糸2´dの下側でナックルを形成し、その後左隣に隣接配置している経地糸接結糸2と同時に下面側緯糸7´dの下側でナックルを形成している。すると、下面側経糸3は下面側緯糸2´dとの交点では右側に寄り、下面側緯糸7´dとの交点では左側に寄りジグザグ配置となる。上面側表面では上面側経糸、経地糸接結糸が下面側の経糸と同じジグザグ配置を構成する組織でないため、ある部分では上下の経糸が重なり、ある部分では上下の経糸が重ならない構造となり、上側から下側に貫通する脱水孔の形状もランダムとなることで、部分的な急激脱水を抑制できる。上記では下面側経糸3についてのみ説明したが、その他の下面側経糸、経地糸接結糸においても同様のジグザグ配置となっており、織物全体として同様な表面性が得られる。
【0019】
(実施例2)
図4は本発明の実施例2の織物の意匠図である。図5は図4の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。前記の実施例1では上面側表面組織を形成する組織が2種類あり、上面側の経糸1、3、5、7は1/1組織を、上面側の経糸2、4、6、8は2/2組織を形成するものであったが、本実施例ではそれを入れ替えて、上面側の経糸1、3、5、7は2/2組織を、上面側の経糸2、4、6、8は1/1組織を形成する組織とした。それにより、本実施例では接結経糸の組が上面側表面に1/1組織を形成する組織とした。その他の条件は同じである。
【0020】
本実施例の下面側表面は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、4、5、7、8は4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る4/1−2/1組織であり、下面側の経糸2、6は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した3/1組織である。経糸2、経糸6は接結経糸の組であるが、2本ペアにすることで他の下面側経糸と同じように1本の下面側経糸として機能し組織を形成している。そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する6本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
【0021】
上面側表面は2つの異なる経組織を交互に配置したものであり上面側の経糸1、3、5、7は2本の上面側緯糸の上、2本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した2/2組織であり、上面側の経糸2、4、6、8は1本の上面側緯糸の上、1本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した1/1組織である。このように接結経糸の組が上面側表面に1/1平織組織を形成する組織であっても構わない。また、本実施例では、組を形成する経地糸接結糸は同じ組織であり、図5の経地糸接結糸2の断面図を見ると、2Aは上面側緯糸1´uの上、2´uの下、3´uの上を通り、次いで下面側に向かい下面側緯糸7´dの下側を通り、また上側に向かって上面側緯糸11´uの上、12´uの下を通る組織となっている。また、もう一方の経地糸接結糸2Bは下面側緯糸1´dの下側を通って上側に向かい、上面側緯糸5´uの上、6´uの下、7´uの上、8´uの下、9´uの上を通り、次いで下面側に向かう組織となっている。これらは1本の上面側緯糸の上側を通る3つのナックルを形成した後、1本の下面側緯糸の下側を通る組織であり互いに同じ組織であり、組み合わせることで上面側表面に1/1組織、下面側表面に3/1組織を形成している。また、経地糸接結糸2A、2B共に下面側ナックルを基準に左右均等組織となっている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率が3:2であるため、左右全く均等ではないが、織物組織上、下面側緯糸7´dが8´d側にずれることもあり、実質的にほぼ均等組織となる。このように組を形成する経地糸接結糸をそれぞれ左右均等組織、且つ同じ組織とすることで、組を形成する経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にすることができる。つまり、本実施例のように下面側ナックルを基準に左右均等組織、且つ2本を同じ組織とすると、経地糸接結糸2Aが上面側緯糸3´uを下面側に引き込む部分と、上面側緯糸11´uを下面側に引き込む部分の高さが同じになり、もう一方の経地糸接結糸2Bにおいても上面側緯糸5´uを下面側に引き込む部分と、上面側緯糸9´uを下面側に引き込む部分の高さが同じになり、尚かつ上面側緯糸3´uと4´uの間、そして9´uと10´uの間にある経地糸接結糸2Aと2Bの交差部にできる落ち込みも均一になるため、織物全体として均一性に優れた織物とすることができる。
そして下面側の経糸をジグザグ配置とした。それにより織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなるため、ランダムな大きさや形状の網目によって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【0022】
(実施例3)
図6は本発明の実施例3の織物の意匠図である。図7は図6の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。実施例1、2では上面側表面組織を形成する組織が2種類あったが、本実施例では1種類とし、全ての上面側の経糸を2/2組織とした。それによって、本実施例の接結経糸の組は実施例2と同じように上面側表面に2/2組織を形成する組織とした。その他の条件は同じである。
【0023】
本実施例の下面側表面は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、4、5、7、8は4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る4/1−2/1組織であり、下面側の経糸2、6は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した3/1組織である。経糸2、経糸6は接結経糸の組であるが、2本ペアにすることで他の下面側経糸と同じように1本の下面側経糸として機能し組織を形成している。そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する6本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
上面側表面は1種類の経組織からなり、全ての上面側の経糸は2本の上面側緯糸の上、2本の上面側緯糸の下側を通る組織を繰り返した2/2組織とした。
また、本実施例では経地糸接結糸が下面側ナックルを基準に左右均等組織となっている。このように組を形成する経地糸接結糸をそれぞれ左右均等組織とすることで、組を形成する経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にでき、織物全体として均一性に優れた織物とすることができる。
そして下面側の経糸をジグザグ配置とした。それにより織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなるため、ランダムな大きさや形状の網目によって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【0024】
(実施例4)
図8は本発明の実施例4の織物の意匠図である。図9は図8の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。実施例3のように上面側表面の経組織が1種類であり、全ての上面側の経糸を1/1組織とした。その他の条件は同じである。
本実施例の下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、4、5、7、8は4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る4/1−2/1組織であり、下面側の経糸2、6は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した3/1組織である。経糸2、経糸6は接結経糸の組であるが、2本ペアにすることで他の下面側経糸と同じように1本の下面側経糸として機能し組織を形成している。そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する6本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
【0025】
上面側表面は1種類の経組織からなり、全ての上面側の経糸は1本の上面側緯糸の上、1本の上面側緯糸の下側を通る組織を繰り返した1/1組織とした。
また、本実施例では経地糸接結糸が下面側ナックルを基準に左右均等組織であり、且つ組を形成する経地糸接結糸が同じ組織となっている。このように組を形成する経地糸接結糸をそれぞれ左右均等、且つ同じ組織とすることで、経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にでき、織物全体として均一性に優れた織物とすることができる。
そして下面側の経糸をジグザグ配置とした。それにより織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなる。ランダムな大きさや形状の網目ができることによって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
そして下面側の経糸をジグザグ配置とした。それにより織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなるため、ランダムな大きさや形状の網目によって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【0026】
(実施例5)
図10は本発明の実施例5の織物の意匠図である。図11は図10の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。この織物は接結経糸の組を1/8の割合で配置した16シャフトの2層織物であって、下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図10の意匠図において、2は2本の経地糸接結糸からなる接結経糸の組であり、1、3、4、5、6、7、8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。上下層を織り合わせる接結経糸の組が1/8の割合で配置されているが、この程度であっても接結強度は十分である。
組を形成する経地糸接結糸は、一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされて上面側表面組織を形成しているとき、もう一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされて下面側表面組織を形成している。つまり、一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を補完し、一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を補完している。このようにして2本の経地糸接結糸が互いに組織を補完し合い、上面側表面組織と下面側表面組織を形成している。
【0027】
下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、4、5、7、8は4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る4/1−2/1組織であり、下面側の経糸2、6は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した3/1組織である。ここで経糸2は接結経糸の組であるが、経糸6と同じ下面側表面組織を形成しており、経地糸接結糸を2本ペアにすることで下面側の経糸6と同じ組織を形成でき、1本の下面側経糸として機能する。
そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する6本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
【0028】
上面側表面は1本の上面側緯糸の上、1本の上面側緯糸の下を通る経組織を繰り返した1/1組織である。経糸2は接結経糸の組であるが、他の上面側経糸と同じように1本の上面側経糸として機能し組織を形成している。
本実施例について組を形成する経地糸接結糸は同じ組織であり、図11の経地糸接結糸2の断面図を見ると、2Aは上面側緯糸1´uの下、2´uの上を通り、次いで下面側に向かい下面側緯糸5´dの下側を通り、また上側に向かって上面側緯糸8´uの上側を通る組織となる。また、もう一方の経地糸接結糸2Bは下面側緯糸1´dの下側を通って上側に向かい、上面側緯糸4´uの上、5´uの下、6´uの上を通り、次いで下面側に向かう組織である。これらを組み合わせることで上面側表面に1/1組織、下面側表面に3/1組織が形成される。また、経地糸接結糸2A、2B共に下面側ナックルを基準に左右均等組織となっている。このように組を形成する経地糸接結糸を左右均等組織とすることで、組を形成する経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にすることができる。つまり、本実施例のように下面側ナックルを基準に左右均等組織とすると、経地糸接結糸2Aが上面側緯糸2´uを下面側に引き込む部分と、上面側緯糸8´uを下面側に引き込む部分の高さが同じになる。また、もう一方の経地糸接結糸2Bにおいても下面側ナックルを基準に左右均等組織となっているため、上面側緯糸4´uを下面側に引き込む部分と、上面側緯糸6´uを下面側に引き込む部分の高さが同じになる。それによって、緯糸2´uと3´uの間、そして7´uと8´uの間にある経地糸接結糸2Aと2Bの交差部にできる落ち込みが均一となるため、織物全体として均一性に優れた織物とすることができる。
また、接結経糸の組の両側に経糸の組を配置することで、比較的線径の小さい経地糸接結糸の下面側の摩耗を軽減することができる。
そして下面側の経糸をジグザグ配置とした。それにより織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなるため、ランダムな大きさや形状の網目によって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【0029】
(実施例6)
図12は本発明の実施例6の織物の意匠図である。図13は図12の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。この織物は接結経糸の組を1/8の割合で配置した16シャフトの2層織物であって、下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図12の意匠図において、2は2本の経地糸接結糸からなる接結経糸の組であり、1、3、4、5、6、7、8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。上下層を織り合わせる接結経糸の組が1/8の割合で配置されているが、この程度であっても接結強度は十分である。
組を形成する経地糸接結糸は、一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされて上面側表面組織を形成しているとき、もう一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされて下面側表面組織を形成している。つまり、一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を補完し、一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を補完している。このようにして2本の経地糸接結糸が互いに組織を補完し合い、上面側表面組織と下面側表面組織を形成している。
【0030】
下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、4、5、7、8は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る3/1−4/1−3/1−2/1組織であり、下面側の経糸2、6は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した3/1組織である。ここで経糸2は接結経糸の組であるが、経糸6と同じ下面側表面組織を形成しており、経地糸接結糸を2本ペアにすることで下面側の経糸6と同じ組織を形成でき、1本の下面側経糸として機能する。
そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する6本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
【0031】
上面側表面は1本の上面側緯糸の上、1本の上面側緯糸の下を通る経組織を繰り返した1/1組織である。経糸2は接結経糸の組であるが、他の上面側経糸と同じように1本の上面側経糸として機能し組織を形成している。
本実施例について組を形成する経地糸接結糸は同じ組織であり、図13の経地糸接結糸2の断面図を見ると、2Aは上面側緯糸1´uの下、2´uの上を通り、次いで下面側に向かい下面側緯糸5´dの下側を通り、また上側に向かって上面側緯糸8´uの上、9´uの下、10´uの上側を通り、次いで下面側に向かい下面側緯糸13´dの下側を通り、また上側に向かって上面側緯糸16´uの上を通る組織となる。また、もう一方の経地糸接結糸2Bは下面側緯糸1´dの下側を通って上側に向かい、上面側緯糸4´uの上、5´uの下、6´uの上を通り、次いで下面側に向かい下面側緯糸9´dの下側を通り、また上側に向かって上面側緯糸12´uの上、13´uの下、14´uの上側を通り、次いで下面側に向かう組織である。これらを組み合わせることで上面側表面に1/1組織、下面側表面に3/1組織が形成される。また、経地糸接結糸2A、2B共に下面側ナックルを基準に左右均等組織となっている。このように組を形成する経地糸接結糸を左右均等組織とすることで、組を形成する経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にすることができる。
そして下面側の経糸をジグザグ配置とした。それにより織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなるため、ランダムな大きさや形状の網目によって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【0032】
(実施例7)
図14は本発明の実施例7の織物の意匠図である。図15は図14の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。この織物は接結経糸の組を2/8の割合で配置した16シャフトの2層織物であって、下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図14の意匠図において、2、6は2本の経地糸接結糸からなる接結経糸の組であり、1、3、4、5、7、8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。上下層を織り合わせる接結経糸の組が2/8の割合で配置されているが、この程度であっても接結強度は十分である。
組を形成する経地糸接結糸は、一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされて上面側表面組織を形成しているとき、もう一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされて下面側表面組織を形成している。つまり、一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を補完し、一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を補完している。このようにして2本の経地糸接結糸が互いに組織を補完し合い、上面側表面組織と下面側表面組織を形成している。
【0033】
下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、4、5、7、8は4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る4/1−2/1組織であり、下面側の経糸2、6は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した3/1組織である。ここで経糸2、6は接結経糸の組であるが、経地糸接結糸を2本ペアにすることで1本の下面側経糸として機能する。
そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する6本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
【0034】
上面側表面は2つの異なる経組織を交互に配置したものであり上面側の経糸1、3、5、7は2本の上面側緯糸の上、2本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した2/2組織であり、上面側の経糸2、4、6、8は1本の上面側緯糸の上、1本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した1/1組織である。
本実施例について組を形成する経地糸接結糸は同じ組織であり、図15の経地糸接結糸2の断面図を見ると、2Aは上面側緯糸1´uの下、2´uの上を通り、次いで下面側に向かい下面側緯糸7´dの下側を通り、また上側に向かって上面側緯糸12´uの上、13´uの下、14´uの上、15´uの下、16´uの上側を通る組織となる。また、もう一方の経地糸接結糸2Bは上面側緯糸4´uの上、5´uの下、6´uの上、7´uの下、8´uの上、9´uの下、10´uの上を通り、次いで下面側に向かい下面側緯糸15´dの下側を通り、また上側に向かう組織である。これらを組み合わせることで上面側表面に1/1組織、下面側表面に3/1組織が形成される。また、経地糸接結糸2A、2B共に下面側ナックルを基準に左右均等で尚かつ同じ組織となっている。このように組を形成する経地糸接結糸を左右均等で尚かつ同じ組織とすることで、組を形成する経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にすることができる。
そして下面側の経糸をジグザグ配置とした。それにより織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなるため、ランダムな大きさや形状の網目によって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【0035】
(実施例8)
図16は本発明の実施例8の織物の意匠図である。図17は図16の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2、6の断面図を示したものである。この織物は接結経糸の組を2/8の割合で配置した16シャフトの2層織物であって、下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は1:1である。
図16の意匠図において、2、6は2本の経地糸接結糸からなる接結経糸の組であり、1、3、4、5、7、8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組である。上下層を織り合わせる接結経糸の組が2/8の割合で配置されているが、この程度であっても接結強度は十分である。
組を形成する経地糸接結糸は、一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされて上面側表面組織を形成しているとき、もう一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされて下面側表面組織を形成している。つまり、一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を補完し、一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を補完している。このようにして2本の経地糸接結糸が互いに組織を補完し合い、上面側表面組織と下面側表面組織を形成している。
【0036】
下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、4、5、7、8は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る3/1−4/1−3/1−2/1組織であり、下面側の経糸2、6は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した3/1組織である。ここで経糸2、経糸6は接結経糸の組であるが、2本ペアにすることで他の下面側経糸と同じように1本の下面側経糸として機能し組織を形成している。そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する6本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
【0037】
上面側表面は1本の上面側緯糸の上、1本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した1/1組織である。上記の下面側組織同様、経糸2、経糸6は接結経糸の組であるが、他の上面側経糸と同じように1本の上面側経糸として機能し組織を形成している。
本実施例では経糸2と6が接結経糸の組であるが、これらは異なる組織である。図17の経地糸接結糸2と6の断面図を見るとわかる。経地糸接結糸2Aは上面側緯糸1´uの下、2´uの上を通って下側に向かい、下面側緯糸5´dの下側を通り、また上側に向かって上面側緯糸8´uの上、9´uの下、10´uの上側を通って下側に向かい、下面側緯糸13´dの下側を通り、また上側に向かって上面側緯糸16´uの上側を通る組織となる。もう一方の経地糸接結糸2Bは下面側緯糸1´dの下側を通り、次いで上側に向かい4´uの上、5´uの下、6´uの上、を通って下側に向かい、下面側緯糸9´dの下側を通り、また上側に向かって上面側緯糸12´uの上、13´uの下、14´uの上を通って下側に向かう組織となる。それにより経地糸接結糸2Aと2Bが協働して、上面側表面に1/1組織が形成され、下面側表面に3/1組織が形成される。
そして、経地糸接結糸6Aは下面側緯糸4´dの下側を通り、次いで上面側緯糸5´u、6´u、7´uと下面側緯糸5´d、6´d、7´dの間を通り、次いで下面側緯糸8´dの下側を通り、上側に向かって、上面側緯糸10´uの上、11´uの下、12´uの上、13´uの下、14´uの上、15´uの下、16´uの上側を通る組織となる。もう一方の経地糸接結糸6Bは上面側緯糸1´uの下、2´uの上、3´uの下、4´uの上、5´uの下、6´uの上、7´uの下、8´uの上側を通り、下側に向かって下面側緯糸12´dの下側を通り、次いで上面側緯糸13´u、14´u、15´uと下面側緯糸13´d、14´d、15´dの間を通り、次いで下面側緯糸16´dの下側を通る組織となる。それにより経地糸接結糸6Aと6Bが協働して、上面側表面に1/1組織が形成され、下面側表面に3/1組織が形成される。
本実施例において、組を形成する経地糸接結糸は同じ組織を形成しており、2本組み合わせることで上面側表面に1/1組織、下面側表面に3/1組織が形成される。また、経地糸接結糸2Aと2Bは下面側ナックルを基準に左右均等組織となっている。また経地糸接結糸6Aと6Bは同じ組織である。このように組を形成する経地糸接結糸を左右均等組織あるいは同じ組織とすることで、組を形成する経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にすることができる。
また、接結経糸の組の両側に経糸の組を配置することで、比較的線径の小さい経地糸接結糸の下面側の摩耗を軽減することができる。本実施例のように経地糸接結糸が下面側緯糸の下側を通る部分で隣接配置している下面側経糸も同じ下面側緯糸の下側を通る組織とすると、線径の小さい経地糸接結糸が線径の大きい下面側経糸よりも先に摩耗切断してしまうことはなく、経地糸接結糸の破断により織物が使用できなくなることはない。
また下面側表面において、隣り合う2本の経糸が1本の下面側緯糸を下面側から同時に織り込む組織とすることで、下面側緯糸が下面側表面に経糸複数本分の緯糸ロングクリンプを形成すると同時に、下面側表面を形成する経糸が隣り合う左右の経糸と交互に隣接しながらジグザグ配置の構造とするとよい。
ジグザグ配置により織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなるため、ランダムな大きさや形状の網目によって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【0038】
(実施例9)
図18は本発明の実施例9の織物の意匠図である。図19は図18の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。上面側表面組織を形成する経組織は2種類あり、上面側の経糸1、3、5、7は2/2組織を、上面側の経糸2、4、6、8は1/1組織を形成するものであり、接結経糸の組が上面側表面に1/1組織を形成する組織とした。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は2:1である。
本実施例の下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、4、5、7、8は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る3/1−4/1−3/1−2/1組織であり、下面側の経糸2、6は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した3/1組織である。経糸2、経糸6は接結経糸の組であるが、2本ペアにすることで他の下面側経糸と同じように1本の下面側経糸として機能し組織を形成している。そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する6本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
【0039】
上面側表面は2つの異なる経組織を交互に配置したものであり上面側の経糸1、3、5、7は2本の上面側緯糸の上、2本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した2/2組織であり、上面側の経糸2、4、6、8は1本の上面側緯糸の上、1本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した1/1組織である。また、本実施例では、組を形成する経地糸接結糸は同じ組織であり、組み合わせることで上面側表面に1/1組織、下面側表面に3/1組織を形成している。また、経地糸接結糸2Aと2Bは同じ組織とした。このように組を形成する経地糸接結糸を同じ組織とすることで、組を形成する経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にすることができる。
そして下面側の経糸をジグザグ配置とした。それにより織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなるため、ランダムな大きさや形状の網目によって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【0040】
(実施例10)
図20は本発明の実施例10の織物の意匠図である。図21は図20の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。この織物は接結経糸の組を2/8の割合で配置した16シャフトの2層織物であって、下面側表面は2つの異なる経組織からなり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図20の意匠図において、1、3、4、5、7、8は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組で2、6は2本の経地糸接結糸からなる接結経糸の組である。
組を形成する経地糸接結糸は、一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされて上面側表面組織を形成しているとき、もう一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされて下面側表面組織を形成している。つまり、一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を補完し、一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を補完している。このようにして2本の経地糸接結糸が互いに組織を補完し合い、上面側表面組織と下面側表面組織を形成している。
【0041】
下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、4、5、7、8は4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、5本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、1本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る4/1−2/1−4/1−2/1−5/1−1/1組織であり、下面側の経糸2、6は3本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した3/1組織である。ここで経糸2、経糸6は接結経糸の組であるが、2本ペアにすることで他の下面側経糸と同じように1本の下面側経糸として機能し組織を形成している。そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する6本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
【0042】
上面側表面は1本の上面側緯糸の上、1本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した1/1組織である。上記の下面側組織同様、経糸2、経糸6は接結経糸の組であるが、他の上面側経糸と同じように1本の上面側経糸として機能し組織を形成している。
本実施例について組を形成する経地糸接結糸は同じ組織のものが組を形成している。これらの2本の経地糸接結糸を組み合わせることで上面側表面に1/1組織、下面側表面に3/1組織が形成される。また、経地糸接結糸2A、2B共に下面側ナックルを基準に左右均等組織となっている。このように組を形成する経地糸接結糸を左右均等組織とすることで、経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にすることができる。つまり、本実施例のように下面側ナックルを基準に左右均等組織とすると、経地糸接結糸のナックルの高さが同じになり、経地糸接結糸2Aと2Bの交差部にできる落ち込みが均一となるため、織物全体として均一性に優れた織物とすることができる。
また、接結経糸の組の両側に経糸の組を配置することで、比較的線径の小さい経地糸接結糸の下面側の摩耗を軽減することができる。そして、下面側表面では、隣り合う2本の経糸が1本の下面側緯糸を下面側から同時に織り込む組織とすることで、下面側緯糸が下面側表面に経糸複数本分の緯糸ロングクリンプを形成すると同時に、下面側表面を形成する経糸が隣り合う左右の経糸と交互に隣接しながらジグザグ配置した構造とするとよい。下面側の経糸をジグザグ配置としたことにより織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなるため、ランダムな大きさや形状の網目によって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【0043】
(実施例11)
図22は本発明の実施例11の織物の意匠図である。図23は図22の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。この織物は接結経糸の組を5/10の割合で配置した20シャフトの2層織物であって、下面側表面は2つの異なる経組織からなり、上面側緯糸と下面側緯糸の配置割合は2:1である。
図22の意匠図において、1、3、5、7、9は上面側経糸、下面側経糸からなる経糸の組で2、4、6、8、10は2本の経地糸接結糸からなる接結経糸の組である。
組を形成する経地糸接結糸は、一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされて上面側表面組織を形成しているとき、もう一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされて下面側表面組織を形成している。つまり、一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を補完し、一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を補完している。このようにして2本の経地糸接結糸が互いに組織を補完し合い、上面側表面組織と下面側表面組織を形成している。
【0044】
下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、5、7、9は2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、6本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る2/1−6/1組織であり、下面側の経糸2、4、6、8、10は4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した4/1組織である。ここで経糸2、4、6、8、10は接結経糸の組であるが、2本ペアにすることで他の下面側経糸と同じように1本の下面側経糸として機能し組織を形成している。そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する8本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
上面側表面は1本の上面側緯糸の上、1本の上面側緯糸の下、1本の上面側緯糸の上、2本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した1/1−1/2組織である。上記の下面側組織同様、経糸2、4、6、8、10は接結経糸の組であるが、他の上面側経糸と同じように1本の上面側経糸として機能し組織を形成している。
【0045】
本実施例について組を形成する経地糸接結糸は同じ組織のものが組を形成している。これらの2本の経地糸接結糸を組み合わせることで上面側表面に1/1−1/2組織、下面側表面に4/1組織が形成される。また、経地糸接結糸2A、2B共に下面側ナックルを基準に左右均等組織となっている。このように組を形成する経地糸接結糸を左右均等組織とすることで、経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にすることができる。つまり、本実施例のように下面側ナックルを基準に左右均等組織とすると、経地糸接結糸のナックルの高さが同じになり、経地糸接結糸2Aと2Bの交差部にできる落ち込みが均一となるため、織物全体として均一性に優れた織物とすることができる。
また、接結経糸の組の両側に経糸の組を配置することで、比較的線径の小さい経地糸接結糸の下面側の摩耗を軽減することができる。そして、下面側表面では、隣り合う2本の経糸が1本の下面側緯糸を下面側から同時に織り込む組織とすることで、下面側緯糸が下面側表面に経糸複数本分の緯糸ロングクリンプを形成すると同時に、下面側表面を形成する経糸が隣り合う左右の経糸と交互に隣接しながらジグザグ配置した構造とするとよい。下面側の経糸をジグザグ配置としたことにより織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなるため、ランダムな大きさや形状の網目によって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【0046】
(実施例12)
図24は本発明の実施例12の織物の意匠図である。図25は図24の意匠図の経糸の組1と接結経糸の組2の断面図を示したものである。本実施例は実施例11と上面側表面組織が異なるだけであり、その他の条件は同じとした。
組を形成する経地糸接結糸は、一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされて上面側表面組織を形成しているとき、もう一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされて下面側表面組織を形成している。つまり、一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を補完し、一方の経地糸接結糸が上面側表面組織を形成している部分ではもう一方の経地糸接結糸が下面側表面組織を補完している。このようにして2本の経地糸接結糸が互いに組織を補完し合い、上面側表面組織と下面側表面組織を形成している。
【0047】
下面側表面組織は2つの異なる経組織からなり、下面側の経糸1、3、5、7、9は2本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下、6本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る2/1−6/1組織であり、下面側の経糸2、4、6、8、10は4本の下面側緯糸の上、1本の下面側緯糸の下を通る組織を繰り返した4/1組織である。ここで経糸2、4、6、8、10は接結経糸の組であるが、2本ペアにすることで他の下面側経糸と同じように1本の下面側経糸として機能し組織を形成している。そして、下面側緯糸は隣接する2本の下面側の経糸の上側を通り、次いで連続する8本の下面側の経糸の下側を通って下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とした。下面側表面に緯糸のロングクリンプを形成する組織とすることで耐摩耗性に優れた織物となる。また、下面側緯糸は隣接する2本の経糸により下側から織り込まれることで剛性が向上し、尚かつ下面側表面にロングクリンプが突出し耐摩耗体積が増えて耐摩耗性に優れたものとなる。
【0048】
上面側表面は2本の上面側緯糸の上、3本の上面側緯糸の下を通る組織を繰り返した2/3組織である。上記の下面側組織同様、経糸2、4、6、8、10は接結経糸の組であるが、他の上面側経糸と同じように1本の上面側経糸として機能し組織を形成している。
本実施例について組を形成する経地糸接結糸は同じ組織のものが組を形成している。これらの2本の経地糸接結糸を組み合わせることで上面側表面に2/3組織、下面側表面に4/1組織が形成される。また、経地糸接結糸2A、2B共に下面側ナックルを基準に左右均等組織となっている。このように組を形成する経地糸接結糸を左右均等組織とすることで、経地糸接結糸の交差部の落ち込みを均一にすることができる。つまり、本実施例のように下面側ナックルを基準に左右均等組織とすると、経地糸接結糸のナックルの高さが同じになり、経地糸接結糸2Aと2Bの交差部にできる落ち込みが均一となるため、織物全体として均一性に優れた織物とすることができる。
また、接結経糸の組の両側に経糸の組を配置することで、比較的線径の小さい経地糸接結糸の下面側の摩耗を軽減することができる。そして、下面側表面では、隣り合う2本の経糸が1本の下面側緯糸を下面側から同時に織り込む組織とすることで、下面側緯糸が下面側表面に経糸複数本分の緯糸ロングクリンプを形成すると同時に、下面側表面を形成する経糸が隣り合う左右の経糸と交互に隣接しながらジグザグ配置した構造とするとよい。下面側の経糸をジグザグ配置としたことにより織物の斜め方向の剛性が向上し、上面側の経糸と下面側の経糸が重なる部分と重ならない部分が混在することとなるため、ランダムな大きさや形状の網目によって段階的に脱水させることができ、脱水マークの発生、ワイヤー上のシート原料の刺さり込み、繊維や填料等の抜けを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
要求の厳しい抄紙用ワイヤーであっても、紙に織物のワイヤーマークを転写しにくく、また過酷な環境下においても好適に使用できる耐摩耗性、剛性、そして繊維支持性、製紙の歩留まりの向上、良好なろ水性、寸法安定性、走行安定性等を有し、良好な紙を製造するために必要な条件を使用末期まで長期間使用することができるので、製紙等の工業用に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例1の工業用二層織物の意匠図である。
【図2】図1の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図3】図1の上下に配置された緯糸1の緯糸に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施例2の工業用二層織物の意匠図である。
【図5】図4の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施例3の工業用二層織物の意匠図である。
【図7】図6の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図8】本発明の実施例4の工業用二層織物の意匠図である。
【図9】図8の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図10】本発明の実施例5の工業用二層織物の意匠図である。
【図11】図10の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図12】本発明の実施例6の工業用二層織物の意匠図である。
【図13】図12の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図14】本発明の実施例7の工業用二層織物の意匠図である。
【図15】図14の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図16】本発明の実施例8の工業用二層織物の意匠図である。
【図17】図16の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図18】本発明の実施例9の工業用二層織物の意匠図である。
【図19】図18の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図20】本発明の実施例10の工業用二層織物の意匠図である。
【図21】図20の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図22】本発明の実施例11の工業用二層織物の意匠図である。
【図23】図22の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図24】本発明の実施例12の工業用二層織物の意匠図である。
【図25】図24の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【図26】従来例1の工業用二層織物の意匠図である。
【図27】図26の上面側経糸1の組、および経地糸接結糸2の組の経糸に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1、2、3・・・10 経糸の組、あるいは接結経糸の組
1´〜32´ 上面側緯糸、下面側緯糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側緯糸と織り合わされる上面側経糸と、下面側緯糸と織り合わされる下面側経糸とが上下に配置して経糸の組を形成し、そのうちの少なくとも1組以上が、上面側緯糸と下面側緯糸の両方と織り合わされ上面側表面組織と下面側表面組織の一部を形成する経地糸接結糸から構成された接結経糸の組である二層織物において、経地糸接結糸と下面側経糸とがそれぞれ下面側緯糸と織り合わせて形成する下面側表面の経組織が2種類の異なる経組織であり、緯組織は下面側緯糸が隣接する2本の経糸の上側を通り、次いで複数本の経糸の下側を通って下面側表面にロングクリンプを形成する組織であることを特徴とする工業用二層織物。
【請求項2】
組を形成する経地糸接結糸が、交互に上面側表面に現れ、それぞれ別の上面側緯糸と織り合わされ、それらが協働して上面側表面組織を構成する1本の経糸として機能し、下面側表面では組を形成する経地糸接結糸が交互に下面側表面に現れ、それぞれ別の下面側緯糸と織り合わされていることを特徴とする、請求項1に記載された工業用二層織物。
【請求項3】
組を形成する経地糸接結糸が、一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされているところの下側で、もう一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされ、且つ、一方の経地糸接結糸が少なくとも1本の下面側緯糸と織り合わされているところの上側で、もう一方の経地糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされた組織であって、1組の経地糸接結糸が互いに補完し合って上面側表面と下面側表面の両方に経糸1本分の組織を形成していることを特徴とする、請求項1または2に記載された工業用二層織物。
【請求項4】
経地糸接結糸の組織が、下面側緯糸の下側を通って形成する下面側ナックルを基準に左右均等であり、且つ接結経糸の組が形成する下面側組織が、常に同じ本数の下面側緯糸の上下を通る組織であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
【請求項5】
組を形成する経地糸接結糸が、同じ組織であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
【請求項6】
接結経糸の組が形成する下面側の経組織が3本の下面側緯糸の上側を通った後、1本の下面側緯糸の下側を通る3/1組織からなる組織であり、下面側表面を形成する下面側緯組織が連続する2本の下面側の経糸の上側を通った後、連続する6本の下面側の経糸の下側を通る組織であることを特徴とする請求項、1ないし5のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
【請求項7】
接結経糸の組が形成する下面側の経組織が4本の下面側緯糸の上側を通った後、1本の下面側緯糸の下側を通る4/1組織からなる組織であり、下面側表面を形成する下面側緯組織が連続する2本の下面側の経糸の上側を通った後、連続する8本の下面側の経糸の下側を通る組織であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
【請求項8】
下面側表面の2種類の異なる経組織が、4本の下面側緯糸の上側を通った後、1本の下面側緯糸の下側を通り、2本の下面側緯糸の上側を通った後、1本の下面側緯糸の下側を通る4/1−2/1組織と、3本の下面側緯糸の上側を通った後、1本の下面側緯糸の下側を通る3/1組織からなる組織であり、緯組織が連続する2本の下面側の経糸の上側を通った後、連続する6本の下面側の経糸の下側を通る組織であることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
【請求項9】
接結経糸の組の両側に経糸の組が配置されていることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
【請求項10】
下面側表面において、隣り合う2本の経糸が1本の下面側緯糸を下面側から織り込むことで、それにより該下面側緯糸が下面側表面に経糸複数本分の緯糸ロングクリンプを形成し、下面側表面を形成する全ての経糸が下面側緯糸を下面側から織り込む部分で隣り合う左右の経糸と交互に接近しながらジグザグ配置を形成していることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
【請求項11】
経地糸接結糸と上面側経糸が上面側緯糸と織り合わせて形成する上面側表面組織が、1種類の経組織からなることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項に記載された工業用二層織物。
【請求項12】
経地糸接結糸と上面側経糸が上面側緯糸と織り合わせて形成する上面側表面組織が、2種類の異なる経組織を交互に配置したことを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項に記載された工業用二層織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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