説明

工業用途用耐酸性フィラメントおよびそれで製造されたブラシ

本発明は、工業用途用ブラシフィラメントおよびそれで製造されたブラシに関する。このブラシフィラメントは、マトリックス樹脂、加水分解安定剤および/または酸吸収剤、ならびに酸化防止剤を含む。本発明のブラシフィラメントは、工業用途用に、特に、カット後の大理石および/または金属の研削、研磨およびクリーニングのために好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年9月18日出願の中国特許出願第200810213179.3号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ブラシフィラメントおよびその製造方法に、ならびに具体的には強酸性環境で有用なブラシフィラメントおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、工業用途用に研削および研磨機能を有する様々な研磨ブラシフィラメントは、ある一定の割合に従ってカーボランダム、アルミナおよび合成ダイヤモンなどの研磨材と共にナイロン、ポリエステルおよびポリオレフィンなどの合成材料でできている。これらの研磨ブラシフィラメントから製造された工業用ブラシは多くの場合、カット後の大理石および金属の研削、研磨、面取りおよびクリーニングのために使用される。例えば、ナイロン612およびナイロン610が多くの場合、工業用ブラシフィラメントを製造するために使用される。加えて、PBT、PET、PTTなどのある種のポリエステルおよびPPなどのポリオレフィンもまた、工業用ブラシフィラメントを製造するために使用される合成ポリマー材料である。しかしながら、これらのブラシフィラメントは通常、周囲温度でpH4〜10の環境で使用できるにすぎない。幾つかの特有の用途用に、例えば、製鉄所で12%硝酸および3%フッ酸(2未満のpH)でのそれらの酸処理後に鋼板のトリミングおよびクリーニングのために使用されるときには、これらの従来のブラシフィラメントの性能および実用寿命は大きく低下するであろう。強酸性環境でのこれらの従来のブラシフィラメントの実用寿命は、典型的には6〜7日にすぎない。
【0004】
ポリカルボジイミドおよびカルボジイミドは、良好な耐熱性および高活性を有し、多くの物質と反応することができ;それ故それらは広範囲の用途を有する。今まで開発されたポリカルボジイミドは主に、以下の態様で用途を有する:
(1)強化剤として:ナイロン中で1%のポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)の使用は、溶融強度および相対粘度を増加させることができる。その機構は、分岐鎖構造の形成にある。さらに、ポリカルボジイミドがポリホルムアルデヒドを変性するために使用されるとき、その生成物は、より良好な物理的特性を有するであろう。ポリカルボジイミドで変性されたエポキシ樹脂は、接着剤として使用されるとき、優れたチキソトロピーおよび糸引きを有する。
(2)コーティング材料として:ポリカルボジイミドは、塗料でマトリックス樹脂または添加剤としておよび接着剤でマトリックス樹脂として使用されてきた。それはまた、塗料工業用の新規架橋剤である。それは水中で自己乳化し、優れた耐汚染性、耐溶剤性、耐塩水噴霧性および高硬度のコーティングを提供するための水分散性塗料に使用することができる。
(3)発泡材料およびエラストマーを製造するために:ジイソシアネートが重縮合反応でポリカルボジイミドへ変換されるときに二酸化炭素が発生するので、ポリカルボジイミドは、成形された剛性の多孔質発泡材料を製造するために使用することができる。さらに、ポリカルボジイミドはまた、多数のポリマー材料において弾性成分として使用することができる。
(4)加水分解安定剤として:プラスチック工業において、ポリカルボジイミドは、ポリエステル、ポリエーテルまたはポリアミドが加水分解されることから守るために使用できることがずっと以前に見出された。ポリカルボジイミドはまた、ゴム用の加水分解安定剤として使用できることが後に見出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中国特許出願第200610015736.1号明細書は、高い耐加水分解性、疲労抵抗、耐摩耗性、および優れた製織性能を有するモノフィラメントを形成するためにポリカルボジイミドがポリエステルと共に溶融される、高い耐加水分解性の着色フラットフィラメントおよびその製造方法を開示した。しかしながら、中国特許出願第200610015736.1号明細書は、耐酸性(特に、耐強酸性)に関して問題を解決する方法を開示していない。それと同時に、この着色フラットフィラメントは研磨材を含有せず、研削および研磨機能を有する研磨ブラシフィラメントとして使用することができない。単に加水分解安定剤または制酸剤のみの使用は、ブラシフィラメントの耐酸性の増加に限定的な効果を有するであろう。従って、強酸性条件下により高い安定性およびより長い実用寿命を有するブラシフィラメントが現在緊急に必要とされている。
【0006】
本発明の目的は、工業用途用の強酸性条件下でより高い安定性およびより長い実用寿命を持ったブラシフィラメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、マトリックス樹脂、加水分解安定剤および/または酸吸収剤、ならびに酸化防止剤を含む、工業用途用ブラシフィラメントを提供する。
【0008】
本発明による好ましい実施形態では、マトリックス樹脂は、ポリアミドおよび/またはポリエステルからなる群から選択される。
【0009】
本発明による好ましい実施形態では、ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン1010、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン810、ナイロン1212、ナイロン612、高温ナイロン、もしくはそれらの組み合わせからなる群から選択され;ポリエステルは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートもしくはそれらの組み合わせからなる群から選択され;および/または加水分解安定剤は、ポリカルボジイミド、カルボジイミド、イソシアネート、オキサゾリンおよびエポキシ化合物からなる群から選択され;および/または酸吸収剤は、ハイドロタルサイトなどのアルミン酸塩水和物酸吸収剤、ポリアクリルアミド酸吸収剤、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウムおよび/またはステアリン酸ナトリウムから選択される。
【0010】
本発明による好ましい実施形態では、マトリックス樹脂は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、50〜90重量%、好ましくは55〜75重量%、より好ましくは60〜70重量%、最も好ましくは65〜69重量%の割合を占め;および/または加水分解安定剤は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.1〜8重量%の割合を占め;および/または酸吸収剤は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.2〜5重量%の割合を占める。
【0011】
本発明による好ましい実施形態では、酸化防止剤は、銅ハロゲン化物とアルカリ金属ハロゲン化物との混合物、ヒンダードフェノール、ホスホネート、硫黄含有化合物、金属酢酸塩またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
本発明による好ましい実施形態では、酸化防止剤は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.05〜1重量%、最も好ましくは0.05〜0.5重量%の割合を占める。
【0013】
本発明による好ましい実施形態では、ブラシフィラメントは、カーボランダム、アルミナおよび/または合成ダイヤモンドからなる群から選択される研磨材をさらに含む。
【0014】
本発明による好ましい実施形態では、研磨材は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%、最も好ましくは25〜35重量%の割合を占める。
【0015】
本発明はまた、本発明のブラシフィラメントを含むブラシを提供する。
【0016】
多数の実験結果に基づき、マトリックス樹脂は、主に加水分解および酸化によって酸性環境で分解することが発見された。この事実を考慮して、本発明は、加水分解を防ぐための加水分解安定剤および/または酸吸収剤ならびに酸化を防ぐための酸化防止剤を研磨フィラメントに添加することによって強酸性環境で研磨フィラメントの耐酸性および実用寿命を大きく増加させ、任意選択的に研磨材を含んでいてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明では、全成分の合計は、ブラシフィラメントの処方に関して100重量%に等しい。
【0018】
本発明は、マトリックス樹脂、加水分解安定剤および/または酸吸収剤、ならびに酸化防止剤を含み、そして研磨剤含んでもよい、工業用途用ブラシフィラメントを提供する。
【0019】
本発明では、マトリックス樹脂に関して特有の制限は全くない。それは、当該技術分野で研磨ブラシフィラメントを製造するために使用される任意の材料であってもよい。本発明による好ましい実施形態では、マトリックス樹脂には、ナイロン、ポリエステルまたはそれらのブレンドが含まれる。本発明による別の好ましい実施形態では、ナイロンには、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン1010、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン810、ナイロン1212、ナイロン612、高温ナイロン[HTN]もしくはそれらの組み合わせが含まれる。本発明による別の好ましい実施形態では、ポリエステルには、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、もしくはそれらの組み合わせが含まれる。
【0020】
本発明では、マトリックス樹脂の量に関して特有の制限は全くない。それは、当該技術分野で通常使用される量であってもよい。本発明による好ましい実施形態では、マトリックス樹脂は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、50〜90重量%、好ましくは55〜75重量%、より好ましくは60〜70重量%、最も好ましくは65〜69重量%の割合を占める。
【0021】
本発明では、加水分解安定剤は、ポリマー鎖中に含有される反応性の高い水素原子と容易に反応することができる化合物を意味する。それには通常、カルボジイミド、イソシアネート、オキサゾリン、エポキシ化合物などが含まれ、それらのうちカルボジイミドが加水分解を防止するために最も望ましい効果を有する。カルボジイミドは、モノカルボジイミドおよびポリカルボジイミド(すなわち、カルボジイミドのオリゴマー)に分類することができる。ポリカルボジイミドが幾つかの官能基を有するという事実により、それはエンドキャッピング効果を有するのみならず、ある程度連鎖延長効果をも有し、こうして加水分解を防止するためのより良好な性能を有する。
【0022】
本発明では、酸吸収剤は、酸と直接反応することができるステアリン酸塩またはアルミン酸塩水和物を意味する。その機構は、外部環境から浸透する少量の酸と直接反応することかまたは強無機酸を弱脂肪族有機酸へ変換することであり、こうして外部強酸によって引き起こされるポリマー主鎖の破壊および分解を防止する。酸吸収剤には主として、ハイドロタルサイト(DHT4A)などのアルミン酸塩水和物酸吸収剤、ポリアクリルアミド酸吸収剤、または水酸化カルシウムが含まれる。
【0023】
本発明では、耐酸性の加水分解安定剤または酸吸収剤に関して特有の制限は全くない。それは、耐加水分解性ポリカルボジイミドおよびカルボジイミド、または当該技術分野で使用される酸吸収性ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウムもしくはハイドロタルサイトであってもよい。本発明による好ましい実施形態では、加水分解安定剤にはポリカルボジイミドおよびカルボジイミドが含まれる。
【0024】
本発明では、加水分解安定剤の量に関して特有の制限は全くない。それは、当該技術分野で通常使用される量であってもよい。本発明による好ましい実施形態では、加水分解安定剤は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.1〜8重量%の割合を占める。
【0025】
本発明では、酸吸収剤の量に関して特有の制限は全くない。それは、当該技術分野で通常使用される量であってもよい。本発明による好ましい実施形態では、酸吸収剤は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.2〜5重量%の割合を占める。
【0026】
本発明では、酸化防止剤の機能は、酸化によるブラシフィラメントの分解を防止することである。それは、当該技術分野で一般に使用される任意の酸化防止剤であってもよい。通常、酸化防止剤には、銅ハロゲン化物とアルカリ金属ハロゲン化物との混合物、ヒンダードフェノール、ホスホネート、硫黄含有化合物、亜リン酸またはそれらの組み合わせが含まれる。本発明による好ましい実施形態では、酸化防止剤は、Cibaから入手可能な、ヒンダードフェノールIrganox(登録商標)である。
【0027】
本発明では、酸化防止剤の量に関して特有の制限は全くない。それは、当該技術分野で通常使用される量であってもよい。本発明による好ましい実施形態では、酸化防止剤は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.05〜1重量%、最も好ましくは0.05〜0.5重量%の割合を占める。
【0028】
本発明では、ブラシフィラメントは、具体的な用途に応じて様々な添加剤を使用してもよい。添加剤は、難燃剤などの、当該技術分野で一般に使用される任意の添加剤であってもよい。
【0029】
本発明では、難燃剤は、当該技術分野で使用される従来型のものである。当業者は、本発明の説明に従って彼らの専門的知識と組み合わせて、どの難燃剤を本発明のために使用できるかを直接決定することができる。本発明による好ましい実施形態では、難燃剤は、ホスフェートエステル、ハロゲン化炭化水素および酸化アンチモンだけでなく、リン、臭素、塩素、アンチモンおよびアルミニウムの化合物からなる群から選択される。
【0030】
本発明では、添加剤の量に関して特有の制限は全くない。それは、当該技術分野で通常使用される量であってもよい。本発明による好ましい実施形態では、添加剤の総量または個々の量は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.1〜2重量%、最も好ましくは0.1〜1重量%の割合を占める。
【0031】
本発明では、ブラシフィラメントはまた、その研削/研磨効果を高めるために研磨材を含んでもよい。研磨材に関して特有の制限は全くない。それは、当該技術分野で研磨ブラシフィラメントを製造するために使用される任意の研磨剤であってもよい。本発明による好ましい実施形態では、研磨材には、カーボランダム、アルミナ、または合成ダイヤモンドが含まれる。
【0032】
本発明では、研磨材の量に関して特有の制限は全くない。それは、当該技術分野で通常使用される量であってもよい。本発明による好ましい実施形態では、研磨材は、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%、最も好ましくは25〜35重量%の割合を占める。
【0033】
本発明では、研磨ブラシフィラメントの形成方法は従来型である。当業者は、どのフィラメント形成方法を本発明のために使用できるかを直接決定することができる。本発明による好ましい実施形態では、フィラメント形成方法には、溶液紡糸、溶融紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸などが含まれる。
【0034】
本発明では、フィラメントが大理石の研削ならびに金属の研削、研磨、面取りおよびクリーニングのために使用できる限り、個々のフィラメントの横断面の形状に関して特有の制限は全くない。通常、個々のフィラメントの横断面の形状は、円形、卵形、正方形、長方形、三角形、菱形、または輪状である。
【0035】
本発明はまた、本発明のブラシフィラメントを含むブラシを提供する。
【0036】
本発明のブラシは、工業用途用に、例えば、カット後の大理石および/または金属の研削、研磨およびクリーニングのために使用されてもよい。
【0037】
良好な耐酸性の研磨ブラシフィラメントおよびその製造方法は、単位が全て重量パーセントである、以下の実施例によってさらに例示される。これらの実施例は、例示目的のみのために提供され、本発明の範囲を全く限定しない。
【実施例】
【0038】
相対粘度の試験方法
少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度を、試料を90%ギ酸または98%硫酸で溶解させた後、ポリマー科学において現在一般に使用されているUbbelohde粘度計を使用することによって測定した。
【0039】
実施例1
1.4.93kgのナイロン610樹脂、0.05kgのポリカルボジイミド(Rhein Chemieから入手可能な、Staboxol(登録商標)P100)および0.02kgのヒンダードフェノール酸化防止剤Irganox(登録商標)1098を一様に混合した。
【0040】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0041】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0042】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の3%低下でそれぞれ3.27および3.26と測定された。
【0043】
実施例2
1.4.955kgのナイロン610樹脂、0.025kgのステアリン酸ナトリウムおよび0.02kgのヒンダードフェノール酸化防止剤Irganox(登録商標)1098を一様に混合した。
【0044】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0045】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0046】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の0%低下でそれぞれ2.34および2.34と測定された。
【0047】
比較例1(空試料)
1.5.00kgのナイロン610樹脂を、加水分解安定剤および/または酸吸収剤などの、いかなる添加剤も加えることなく採取した。
【0048】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0049】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0050】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の10.7%低下でそれぞれ2.90および2.59と測定された。
【0051】
比較例2
1.4.98kgのナイロン610樹脂および0.02kgのヒンダードフェノール酸化防止剤Irganox(登録商標)1098を一様に混合した。
【0052】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0053】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0054】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の2.7%低下でそれぞれ2.88および2.80と測定された。
【0055】
比較例3
1.4.98kgのナイロン610樹脂および0.025kgのステアリン酸ナトリウムを一様に混合した。
【0056】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0057】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0058】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の3.6%低下でそれぞれ2.49および2.40と測定された。
【0059】
比較例4
1.4.98kgのナイロン610樹脂および0.05kgのポリカルボジイミドを一様に混合した。
【0060】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0061】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0062】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の2.1%低下でそれぞれ3.27および3.20と測定された。
【0063】
実施例3
1.4.91kgのPBT樹脂、0.05kgのカルボジイミド、0.02kgのハイドロタルサイトおよび0.02kgのヒンダードフェノール酸化防止剤Irganox(登録商標)1098を一様に混合した。
【0064】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0065】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0066】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の0.7%低下でそれぞれ2.92および2.90と測定された。
【0067】
実施例4
1.4.92kgのPBT樹脂、0.04kgのカルボジイミド、0.02kgのハイドロタルサイトおよび0.02kgのヒンダードフェノール酸化防止剤Irganox(登録商標)1098を一様に混合した。
【0068】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0069】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0070】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の1.4%低下でそれぞれ1.45および1.43と測定された。
【0071】
実施例5
1.4.45kgのPBT樹脂、0.5kgのカルボジイミド、0.02kgのハイドロタルサイトおよび0.03kgのヒンダードフェノール酸化防止剤Irganox(登録商標)1098を一様に混合した。
【0072】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0073】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0074】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の1.3%低下でそれぞれ1.51および1.49と測定された。
【0075】
実施例6
1.4.9kgのナイロン1010樹脂、0.05kgのカルボジイミド、0.02kgのハイドロタルサイトおよび0.03kgのヒンダードフェノール酸化防止剤Irganox(登録商標)1098を一様に混合した。
【0076】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0077】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0078】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の1.4%低下でそれぞれ2.85および2.81と測定された。
【0079】
実施例7
1.4.96kgのPBT樹脂、0.01kgのカルボジイミドおよび0.03kgのヒンダードフェノール酸化防止剤Irganox(登録商標)1098を一様に混合した。
【0080】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0081】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0082】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の0.7%低下でそれぞれ1.46および1.45と測定された。
【0083】
実施例8
1.4.78kgのPBT樹脂、0.02kgのハイドロタルサイトおよび0.02kgのヒンダードフェノール酸化防止剤Irganox(登録商標)1098を一様に混合した。
【0084】
2.上記の混合物を、従来型溶融紡糸を実施するために2.14kgの研磨剤カーボランダムをサイドフィーダーによって加えながら二軸スクリュー押出機に通した。
【0085】
3.紡糸ダイから紡糸されたフィラメントを、水浴中の水によって冷却し、ローラーによって延伸し、熱風で凝固させ、次に工業用途用研磨フィラメントとして包装した。
【0086】
4.少量の試料を、包装された研磨フィラメントから採取し、前もって調合した0.1M硫酸で処理した。試料を40日の処理後に取り出した。処理前および後の研磨フィラメントの相対粘度は、相対粘度の1.38%低下でそれぞれ1.44および1.42と測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂、酸化防止剤、ならびに加水分解安定剤および/または酸吸収剤を含む、工業用途用ブラシフィラメント。
【請求項2】
前記マトリックス樹脂が、ポリアミドおよびポリエステルからなる群から選択される、請求項1に記載のブラシフィラメント。
【請求項3】
前記ポリアミドが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン1010、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン810、ナイロン1212、ナイロン612、高温ナイロン、もしくはそれらの組み合わせからなる群から選択され;前記ポリエステルが、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、もしくはそれらの組み合わせからなる群から選択され;および/または前記加水分解安定剤が、ポリカルボジイミド、カルボジイミド、イソシアネート、オキサゾリンおよびエポキシ化合物からなる群から選択され;および/または前記酸吸収剤が、ハイドロタルサイトから選択されるアルミン酸塩水和物酸吸収剤、ポリアクリルアミド酸吸収剤、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸ナトリウムから選択される、請求項2に記載のブラシフィラメント。
【請求項4】
前記マトリックス樹脂が、ブラシフィラメントの総重量を基準として、50〜90重量%、好ましくは55〜75重量%、より好ましくは60〜70重量%、最も好ましくは65〜69重量%の割合を占め;および/または前記加水分解安定剤が、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.1〜8重量%の割合を占め;および/または前記酸吸収剤が、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.2〜5重量%の割合を占める、請求項1に記載のブラシフィラメント。
【請求項5】
前記酸化防止剤が、銅ハロゲン化物とアルカリ金属ハロゲン化物との混合物、ヒンダードフェノール、ホスホネート、硫黄含有化合物、金属酢酸塩またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のブラシフィラメント。
【請求項6】
前記酸化防止剤が、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.05〜1重量%、最も好ましくは0.05〜0.5重量%の割合を占める、請求項1に記載のブラシフィラメント。
【請求項7】
研磨材をさらに含む、請求項1に記載のブラシフィラメント。
【請求項8】
前記研磨材が、カーボランダム、アルミナおよび合成ダイヤモンドからなる群から選択される、請求項7に記載のブラシフィラメント。
【請求項9】
前記研磨材が、ブラシフィラメントの総重量を基準として、0〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%、最も好ましくは25〜35重量%の割合を占める、請求項7に記載のブラシフィラメント。
【請求項10】
請求項1に記載のブラシフィラメントを含むブラシ。

【公表番号】特表2012−512035(P2012−512035A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527953(P2011−527953)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/057270
【国際公開番号】WO2010/033671
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(508073900)デュポン シンダ フィラメンツ カンパニー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】