説明

工程処理制御装置

【課題】複数の被処理物の位置に偏りを無くし、全体としての工程処理能力を大幅に向上させることができる工程処理制御装置を提供する。
【解決手段】複数の工程処理が一定の処理順序で各被処理物に対し行われるように、複数の工程処理がそれぞれ行われる複数の工程処理場所へ各被処理物を搬送し、複数の工程処理場所から各被処理物を搬送する搬送作業を、複数の搬送装置で行う場合を対象とする。設定候補とする搬送作業の優先順位の指標として、複数の搬送作業が一定の順序で循環する設定候補循環順序が定められており、搬送装置9、11に対し搬送作業を新たに設定する時、この時に該搬送装置が行っている搬送作業を候補基準とする。作業予定設定部7は、設定候補循環順序において該候補基準の次に来る搬送作業を、設定候補として、搬送装置に対し設定可能かどうかを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程処理制御装置に関する。より詳しくは、本発明は、複数の工程処理が一定の処理順序で各被処理物に対し行われるように、前記複数の工程処理がそれぞれ行われる複数の工程処理場所へ各被処理物を搬送し、該複数の工程処理場所から各被処理物を搬送する搬送作業を、複数の搬送装置で行うための工程処理制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、複数の工程処理を一定の処理順序で各被処理物に対し行う場合に、工程処理制御を、先入れ先出し方式で行っていた。
先入れ先出し方式において、工程処理が行われる優先順位は、下流側にある被処理物ほど高くなっている。すなわち、先入れ先出し方式では、常に、下流側の工程処理から上流側の工程処理の順に、工程処理が可能な被処理物がないかを調べ、処理可能であると最初に見つけた被処理物から順に、当該被処理物を、次の工程処理を行う工程処理場所へ搬送する。
【0003】
なお、本発明の技術分野における先行技術として、例えば下記の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3950361号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の先入れ先出し方式では、特定の搬送装置が、互いに異なる複数の搬送処理を行う場合には、以下のように全体としての工程処理能力が上がらなくなる。
例えば、前記特定の搬送装置が、最下流の工程処理が行われる最下流工程処理場所へ被処理物を搬送する作業と、中間の工程処理が行われる中間工程処理場所へ被処理物を搬送する作業とを行うものであるとする。
この場合に、上述の先入れ先出し方式を採用すると、前記特定の搬送装置が、下流側において同じ搬送作業を連続して行う傾向が高くなる。例えば、特定の搬送装置が、最下流工程処理場所へある被処理物を搬送した後に、再び、同じ最下流工程処理場所へ別の被処理物を搬送する傾向が高くなる。
従って、複数の被処理物の位置に偏りが生じる。例えば、最下流工程処理場所には被処理物が複数搬送されてくるのに、他の工程処理場所には、被処理物が1つも搬送されてこないがことが生じる。このような場合には、複数の工程処理の処理能力が、全体として上がらないことになる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、複数の被処理物の位置に偏りを無くし、全体としての工程処理能力を大幅に向上させることができる工程処理制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によると、複数の工程処理が一定の処理順序で各被処理物に対し行われるように、前記複数の工程処理がそれぞれ行われる複数の工程処理場所へ各被処理物を搬送し、該複数の工程処理場所から各被処理物を搬送する搬送作業を、複数の搬送装置で行うための工程処理制御装置であって、
前記各搬送装置に対して設定された搬送作業を保持する作業予定保持部と、
作業予定保持部に保持されている搬送作業に従って各搬送装置を制御する制御部と、
前記各搬送装置に対し新たな搬送作業を設定して作業予定保持部に保持させる搬送作業設定処理を行う作業予定設定部と、を備え、
前記作業予定設定部は、互いに異なる複数の搬送作業を行う搬送装置に対して前記搬送作業設定処理を行う場合には、設定候補循環方式で行い、
該設定候補循環方式では、設定候補とする搬送作業の優先順位の指標として、前記複数の搬送作業が一定の順序で循環する設定候補循環順序が定められており、前記作業予定設定部は、搬送装置に対し搬送作業を新たに設定する時、この時に該搬送装置が行っている搬送作業を候補基準とし、前記設定候補循環順序において該候補基準の次に来る搬送作業を、設定候補として、該搬送装置に対し設定可能かどうかを判断する、ことを特徴とする工程処理制御装置が提供される。
【0008】
また、前記作業予定設定部は、前記設定候補循環方式で、前記設定候補循環順序において前記候補基準の次に来る搬送作業を搬送装置に対し設定可能であると判断した場合には、該搬送作業を該搬送装置に対し新たに設定し、該搬送作業が設定可能でないと判断した場合には、前記設定候補循環順序において該搬送作業の次に来る搬送作業を、設定候補として、該搬送装置に対し設定可能かどうかを判断する。
【0009】
上述の本発明による工程処理制御装置では、該設定候補循環方式において、前記作業予定設定部は、搬送装置に対し搬送作業を新たに設定する時、この時に該搬送装置が行っている搬送作業を候補基準とし、前記設定候補循環順序において該候補基準の次に来る搬送作業を、設定候補として、該搬送装置に対し設定可能かどうかを判断し、設定可能であると判断した場合には、該搬送作業を該搬送装置に対し新たに設定し、該搬送作業が設定可能でないと判断した場合には、前記設定候補循環順序において該搬送作業の次に来る搬送作業を、設定候補として、該搬送装置に対し設定可能かどうかを判断する。このように、設定可能な搬送作業を検索していき、設定可能な搬送作業を設定する。
これにより、互いに異なる搬送作業を行う搬送装置が、特定の搬送作業を連続して行うことが抑制される。従って、複数の被処理物の位置に偏りが生じることを抑制できる。また、被処理物が破損するなどにより被処理物の搬送流れが乱れて複数の被処理物の位置に偏りが生じた場合に、互いに異なる搬送作業を行う搬送装置に対する搬送作業設定を設定候補循環順序で行うので、実行可能な搬送作業を設定しつつ、同じ搬送作業が連続して設定されることが防止される。その結果、新たな搬送作業が適切に設定されて速やかに搬送流れの乱れが解消される。よって、全体としての工程処理能力を大幅に向上させることができる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によると、前記搬送作業設定処理を行う搬送装置の順序の指標として、前記複数の搬送装置が一定の順序で循環する搬送装置循環順序が定められており、前記作業予定設定部は、前記搬送装置循環順序で、前記複数の搬送装置に対し前記搬送作業設定処理を行う。
【0011】
このように、前記作業予定設定部は、前記搬送装置循環順序で、複数の搬送装置に対し前記搬送作業設定処理を行う。これにより、搬送作業の新たな設定が特定の搬送装置に偏ることが防止される。
【0012】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記作業予定保持部は、各搬送装置に対し未実行の搬送作業を2以上の上限数(例えば2つ)まで保持でき、
前記作業予定設定部は、
前記設定候補循環方式において、前記作業予定保持部に保持される未実行の搬送作業の数が前記上限数になるまで、前記設定候補循環順序に従って、設定可能と判断した搬送作業を搬送装置に対し設定し、
その後、前記搬送装置循環順序における次の搬送装置に対し搬送作業設定処理を行う。
【0013】
このように、前記設定候補循環方式において、前記作業予定保持部に保持される未実行の搬送作業の数が前記上限数になるまで、前記設定候補循環順序に従って、設定可能と判断した搬送作業を搬送装置に対し設定する。
これにより、当該搬送装置に対する搬送作業の設定が次に行われる時までに、当該搬送装置に設定された搬送作業がすべて実行済みとなってしまうことを防止できる。従って、搬送装置の稼働率を向上させることができる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によると、前記各工程処理場所で対応する前記工程処理を行う場合に、所定の保管場所から該工程処理場所へ被処理物を搬送する処理前搬送と、該工程処理場所で工程処理が行われた該被処理物を同じまたは別の保管場所へ搬送する処理後搬送とが行われるようになっており、該処理前搬送と処理後搬送を合わせたものを1つの搬送作業とし、
上流側の前記工程処理を行うための前記1つの搬送作業を上流側の搬送作業とし、下流側の前記工程処理を行うための前記1つの搬送作業を下流側の搬送作業とし、
前記設定候補循環順序は、
下流側の搬送作業から上流側の搬送作業へ1つずつ前記設定候補が移行していき、前記複数の搬送作業のうち最上流の搬送作業の次に、前記複数の搬送作業のうちの最下流の搬送作業へ移行する順序であるか、または、
上流側の搬送作業から下流側の搬送作業へ1つずつ前記設定候補が移行していき、前記複数の搬送作業のうち最下流の搬送作業の次に、前記複数の搬送作業のうちの最上流の搬送作業へ移行する順序である。
【0015】
このように、前記設定候補循環順序は、下流側の搬送作業から上流側の搬送作業へ1つずつ前記設定候補が移行する順序、または、上流側の搬送作業から下流側の搬送作業へ1つずつ前記設定候補が移行する順序であるので、実行される搬送作業が上流側と下流側とで偏りが生じることが防止される。
【0016】
好ましくは、被処理物に対し前記複数の工程処理を行うために要する搬送作業が、前記複数の搬送装置に割り当てられており、
割り当てられた搬送作業の実行必要時間の合計が最も長くなる搬送装置を、ボトルネック搬送装置とし、
該ボトルネック搬送装置は、前記複数の工程処理のうち最下流の工程処理を行うための前記搬送作業を行い、該搬送作業により、最下流の工程処理が行われた被処理物が、所定の最終保管場所の空き格納位置へ搬送され、
前記搬送装置循環順序では、前記最終保管場所から被処理物を取り出した作業の後に、前記複数の搬送装置のうち、最初に、ボトルネック搬送装置に対し搬送作業設定処理が行われるようになっている。
【0017】
このように、前記最終保管場所から被処理物を取り出した作業の後に搬送作業設定処理を最初に行う搬送装置が、ボトルネック搬送装置となっているので、ボトルネック搬送装置に対して搬送作業を設定できなくなる確率を下げることができる。これにより、ボトルネック搬送装置の稼動率を高く維持できる。よって、全体としての工程処理能力を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明によると、複数の被処理物の位置に偏りを無くし、全体としての工程処理能力を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態による工程処理制御装置を示すブロック図である。
【図2】本発明が適用可能な工程処理設備を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態による工程処理制御装置による制御を示すフローチャートである。
【図4】設定候補循環方式による搬送作業設定ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
本発明の実施形態による工程処理制御装置10は、複数の工程処理が一定の処理順序で各被処理物に対し行われるように、前記複数の工程処理がそれぞれ行われる複数の工程処理場所へ各被処理物を搬送し、該複数の工程処理場所から各被処理物を搬送する搬送作業を、複数の搬送装置で行う場合を対象とする。
また、本発明の実施形態による工程処理制御装置10は、複数の搬送装置の少なくとも1つに、互いに異なる複数の搬送作業が割り当てられている場合を対象とする。
【0022】
図1は、工程処理制御装置10の構成を示すブロック図である。図1に示すように、工程処理制御装置10は、作業予定保持部3と、制御部5と、作業予定設定部7とを備える。
【0023】
作業予定保持部3は、前記各搬送装置に対して設定された搬送作業を保持する。すなわち、作業予定保持部3は、各搬送装置毎に、該搬送装置が行うべき1つまたは複数の搬送作業を保持する。
【0024】
制御部5は、作業予定保持部3に保持されている搬送作業に従って各搬送装置を制御する。例えば、搬送作業とともにその開始時刻が作業予定保持部3に保持されている場合には、制御部5は、該開始時刻に、該搬送作業を行うべき搬送指令信号を該搬送装置に出力する。これにより、各搬送装置は、前記搬送指令信号に基づいて搬送作業を開始する。
【0025】
作業予定設定部7は、前記各搬送装置に対し新たな搬送作業を設定して作業予定保持部3に保持させる搬送作業設定処理を行う。本実施形態によると、前記作業予定設定部7は、互いに異なる複数の搬送作業を行う搬送装置に対し前記搬送作業設定処理を行う場合には、設定候補循環方式で行う。
設定候補循環方式では、設定候補とする搬送作業の優先順位の指標として、複数の搬送作業が一定の順序で循環する設定候補循環順序が定められており、前記作業予定設定部7は、搬送装置に対し搬送作業を新たに設定する時、この時に該搬送装置が行っている搬送作業を候補基準とし、前記設定候補循環順序において該候補基準の次に来る搬送作業を、設定候補として、該搬送装置に対し設定可能かどうかを判断する。前記作業予定設定部7は、前記設定候補循環順序において前記候補基準の次に来る搬送作業を搬送装置に対し設定可能であると判断した場合には、該搬送作業を該搬送装置に対し新たに設定し、該搬送作業が設定可能でないと判断した場合には、前記設定候補循環順序において該搬送作業の次に来る搬送作業を、設定候補として、該搬送装置に対し設定可能かどうかを判断する。
【0026】
好ましくは、前記作業予定設定部7により新たな搬送作業の設定を行う搬送装置の順序の指標として、複数の搬送装置が一定の順序で循環する搬送装置循環順序が定められている。前記作業予定設定部7は、前記搬送装置循環順序で、複数の搬送装置に対し前記搬送作業設定処理を行う。
【0027】
また、好ましくは、作業予定保持部3は、各搬送装置に対し未実行の搬送作業を2以上の上限数まで保持できる。この場合、前記作業予定設定部7は、前記設定候補循環方式において、作業予定保持部3に保持される未実行の搬送作業の数が前記上限数になるまで、前記設定候補循環順序に従って、設定可能と判断した搬送作業を搬送装置に対し設定し、その後、前記搬送装置循環順序における次の搬送装置に対し搬送作業設定処理を行う。
【0028】
図2は、工程処理制御装置10が適用される工程処理設備の一例を示す平面図である。
図2に示すように、工程処理設備は、それぞれ符号P1〜P7で示す第1〜第7の工程処理場所と、第1および第2の搬送装置9,11と、それぞれ符号S1〜S3で示す第1〜第3の保管場所とを備える。
【0029】
第1〜第7の工程処理場所P1〜P7は、それぞれ第1〜第7の工程処理が行われる場所である。なお、各被処理物に対し行われる工程処理の順序は、第1〜第7の工程処理の順である。この実施例では、第1〜第7の工程処理の各々は、被処理物に所定のコーティングを行う処理である。この例では、第1および第2の搬送装置9,11は、ロボットであり、このロボット自身が各工程処理場所P1〜P7で被処理物の工程処理も行う。代わりに、各工程処理場所P1〜P7に、所定の工程処理装置があり、各搬送装置9,11は、工程処理装置との間で被処理物を受け渡してもよい。
【0030】
第1および第2の搬送装置9,11の各々は、各工程処理場所P1〜P7で対応する前記工程処理を行うために、1つの搬送作業として、所定の保管場所から該工程処理場所へ被処理物を搬送する処理前搬送と、該工程処理場所で工程処理が行われた該被処理物を同じまたは別の保管場所へ搬送する処理後搬送とを合わせた搬送作業を実行する。
上流側の前記工程処理を行うための前記1つの搬送作業を上流側の搬送作業とし、下流側の前記工程処理を行うための前記1つの搬送作業を下流側の搬送作業とする。この場合、前記設定候補循環順序は、この例では、下流側の搬送作業から上流側の搬送作業へ1つずつ前記設定候補が移行していき、前記複数の搬送作業のうち最上流の搬送作業の次に、前記複数の搬送作業のうちの最下流の搬送作業へ移行する順序である。
【0031】
第1〜第3の保管場所S1〜S3は、被処理物が保管される場所である。この例では、各工程処理において、前記処理後搬送により該当する保管場所S1、S2またはS3へ搬送された各被処理物は、所定の保管時間以上の間、該保管場所で保管されるようになっている。
【0032】
第1〜第3の保管場所S1〜S3の各々は、この例では、コーティングが行われた被処理物を乾燥させる乾燥室である。また、この実施例では、各乾燥室S1〜S3には、上下2段のハンガーコンベヤ13が設けられている。図2において、上下2段のハンガーコンベヤ13は上下に重なっているので、上段のハンガーコンベヤ13のみ図示している。上下各段のハンガーコンベヤ13は、無端状の循環コンベヤに、その循環方向に間隔を置いて固定された複数のハンガー13aを有する。各ハンガー13aは、1つの被処理物を吊るせるようになっている。また、この例では、第1の乾燥室S1は、第1の工程処理が行われていない被処理物の入口である入庫口Qと、工程処理場所へ被処理物を出庫させ工程処理場所から被処理物を入庫させる出入口Rとを有する。第2の乾燥室S2は、工程処理場所へ被処理物を出庫させ工程処理場所から被処理物を入庫させる2つの出入口Rとを有する。なお、図2の例では、第2の保管場所S2において、左側の出入口Rは、第1の搬送装置9だけがアクセスするためのもので、第2の保管場所S2の右側の出入口Rは、第2の搬送装置11だけがアクセスするためのものある。第3の乾燥室S3は、第7の工程処理場所P7から被処理物を搬入させる出入口Rと、第3の乾燥室S3から被処理物を取り出す出庫口Tとを有する。上下各段のハンガーコンベヤ13は、循環方向に移動させられることで、所望のハンガー13aを入庫口Q、出入口Rまたは出庫口Tに配置させることができる。
【0033】
この例では、下記の[表1]のように、第1および第2の搬送装置9,11に、搬送作業が割り当てられる。
【0034】
【表1】

【0035】
この[表1]では、第1〜第7の工程処理を行うために必要な搬送作業には、第1〜第7の搬送作業がある。第1〜第7の搬送作業は、それぞれ、第1〜第7の工程処理を行うための搬送作業である。[表1]に示すように、第1〜第3の搬送作業は、第1の搬送装置9に行われ、第4〜第7の搬送作業は、第2の搬送装置11に行われる。
[表1]において、各項目は以下の通りである。
項目「取出位置」は、対応する工程処理が行うために被処理物を取り出す乾燥室とそのハンガーコンベヤ13の段を示す。
項目「格納位置」は、対応する工程処理が行われた直後の被処理物を保管する乾燥室とそのハンガーコンベヤ13の段を示す。
項目「搬送装置」は、対応する工程処理を行うための搬送作業を行う搬送装置を示す。すなわち、対応する工程処理の工程処理場所へ被処理物を搬送する処理前搬送と、該工程処理場所から該工程処理が行われた被処理物を対応する乾燥室へ搬送する処理後搬送とを行う搬送装置を示す。
項目「作業時間」は、対応する工程処理を行うのに要する時間であり、対応する前記処理前搬送と処理後搬送に要する時間を含めたものである。すなわち、項目「作業時間」は、対応する前記処理前搬送を開始した時から対応する前記処理後搬送を完了するまでの時間である。
項目「乾燥時間」は、前記保管時間に相当し、対応する工程処理の直後に対応する乾燥室で被処理物を乾燥させるのに要する時間である。
例えば、[表1]によると、第1の工程処理を行うために、第1の搬送装置9は、第1の搬送作業として、第1の保管場所S1(この例では、第1の乾燥室S1の下段のハンガーコンベヤ13)から第1の工程処理場所P1へ被処理物を搬送する処理前搬送と、第1の工程処理場所P1で第1の工程処理が行われた該被処理物を第1の保管場所S1(この例では、第1の乾燥室S1の上段のハンガーコンベヤ13)へ搬送する処理後搬送とを連続して行う。すなわち、第1の搬送装置9は、第1の工程処理場所P1へ被処理物を搬送した後、第1の工程処理が行われた該被処理物を第1の保管場所S1へ搬送するまでの間、他の搬送作業を行わない。第2〜第7の工程処理を行う場合も同様に[表1]のように搬送作業が行われる。
【0036】
図3は、工程処理制御装置10により行われる工程処理制御を示すフローチャートである。
本実施形態による工程処理制御は、出庫作業ステップS1と、搬送作業設定ステップS2と、搬送作業設定ステップS3と、出庫作業設定ステップS4と、入庫作業設定ステップS5と、入庫作業ステップS6とを有する。この順で各ステップが繰り返し行われる。
【0037】
出庫作業ステップS1では、制御部5が、第3の保管場所S3に前記保管時間を経過した被処理物があると判断した場合には、第3の保管場所S3から被処理物を所定の格納場所へ取り出す。最終保管場所である第3の保管場所S3には、最下流の工程処理(第7の工程処理)が行われた被処理物が保管される。第3の保管場所S3で、第3の保管場所S3での前記保管時間以上の間、保管(乾燥)されられた被処理物は、第3の保管場所S3から取り出してよいものである。従って、このステップS1では、そのような被処理物を完成品として所定の格納場所へ取り出す取出作業が行われる。なお、ステップS1は、制御部5が、第3の保管場所S3から被処理物を所定の格納場所へ取り出す取出装置を制御することで行われる。
【0038】
搬送作業設定ステップS2では、作業予定設定部7が、第2の搬送装置11に対して搬送作業設定処理を行う。第1の搬送装置9よりも先に、第2の搬送装置11に対して搬送作業設定処理を行うのは、第2の搬送装置11がボトルネック搬送装置であるからである。
ボトルネック搬送装置は、工程処理設備で用いられる複数の搬送装置のうち、割り当てられた搬送作業の実行必要時間の合計が最も長くなる搬送装置である。[表1]の例で説明する。第1および第2の搬送装置9,11のうち、第1の搬送装置9には、これが第1〜第3の工程処理を行う装置であるので第1〜第3の搬送作業が割り当てられている。第1〜第3の搬送作業の実行必要時間は、それぞれ4分、5分、5分であるので、これらの合計は14分である。一方、第2の搬送装置11には、これが第4〜第7の工程処理を行う装置であるので第4〜第7の搬送作業が割り当てられている。第4〜第7の搬送作業の実行必要時間は、それぞれ6分、6分、6分、4分30秒であるので、これらの合計は22分30秒である。従って、第1および第2の搬送装置9,11のうち、割り当てられた搬送作業の実行必要時間の合計が最も長くなる搬送装置は、第2の搬送装置11である。よって、[表1]の例では、第2の搬送装置11がボトルネック搬送装置となる。
また、ボトルネック搬送装置は、前記複数の工程処理のうち最下流の工程処理を行うための前記搬送作業を行い(この例では、第7の搬送作業)、該搬送作業により、最下流の工程処理が行われた被処理物が、最終保管場所(この例では、第3の保管場所S3)の空き格納位置へ搬送される。なお、この格納位置は、最終保管場所に複数設けられていてよい。
本実施形態によると、前記搬送装置循環順序では、出庫作業ステップS1の後に(すなわち、前記最終保管場所から被処理物を取り出した作業の後に)、前記複数の搬送装置(この例では、第1および第2の搬送装置9,11)のうち、最初に、ボトルネック搬送装置11に対し搬送作業設定処理が行われるようになっている。これにより、前記最終保管場所に空き格納位置が生じたら、速やかに、第7の搬送作業を第2の搬送装置11に対し設定可能にすることができる。
【0039】
搬送作業設定ステップS3では、作業予定設定部7が、第1の搬送装置9に対して搬送作業設定処理を行う。
【0040】
出庫作業設定ステップS4では、作業予定設定部7が、第3の保管場所S3から被処理物を取り出す出庫作業を設定する。この設定に基づいて、上記の出庫作業ステップS1が行われる。
【0041】
入庫作業設定ステップS5では、作業予定設定部7が、第1の保管場所S1に被処理物を入庫させる入庫作業を設定する。なお、このステップS5で、入庫させられる被処理物は、これから最上流の工程処理(この例では第1の工程処理)が行われるものである。
【0042】
入庫作業ステップS6では、入庫作業設定ステップS5での設定に基づいて、第1の保管場所S1へ被処理物を入庫させる。なお、ステップS6は、制御部5が、第1の保管場所S1へ被処理物を第1の保管場所S1へ入庫させる入庫装置を制御することで行われる。
【0043】
入庫作業ステップS6の後、出庫作業ステップS1へ戻り、上述のステップS1〜S6をこの順で繰り返す。この繰り返し処理は、各搬送作業により搬送作業が実行されている間でも、途切れることなく継続して行われる。すなわち、工程処理設備による工程処理開始時から全ての被処理物に対し最下流の工程処理がなされるまで、途切れることなく継続して行われる。
【0044】
以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0045】
出庫作業ステップS1は、ステップS11、S12、S13を有する。
ステップS11では、制御部5が、入庫作業設定ステップS4で設定された出庫作業が存在するかを判断する。存在しないと判断した場合には、ステップS2へ進み、存在すると判断した場合には、ステップS12へ進む。
ステップS12では、制御部5が、設定された出庫作業が開始可能かどうかを判断する。この例では、設定された出庫作業の対象となる被処理物が、(この例では、ハンガーコンベヤ13の移動により)第3の保管場所S3の出庫口Tに位置しているかどうかを判断する。当該被処理物が出庫口Tに位置している場合に、設定された出庫作業か実行可能であるとして、ステップS13へ進む。一方、設定された出庫作業か実行可能でないと判断したら、ステップS2へ進む。
ステップ13では、制御部5が、所定の取出装置に取出制御信号を出力することで、当該被処理物を、第3の保管場所S3の出庫口Tから所定の格納場所へ取り出す動作を該取出装置に行わせる。
【0046】
搬送作業設定ステップS2では、作業予定設定部7が、第2の搬送装置11に対する搬送作業設定処理を、上述した該設定候補循環方式で行う。ここで、前記候補基準は、搬送作業設定ステップS2を行う時点で、第2の搬送装置11が実行している搬送作業となる。また、ステップS2では、第2の搬送装置11について、作業予定保持部3に保持される未実行の搬送作業の数が前記上限数になるまで、前記設定候補循環順序で、設定可能と判断した搬送作業を搬送装置11に対し設定していく。例えば、ステップS2を行う時点で行われている搬送作業が、第6の工程を行っている場合には、第5→第4→第7→第6の順で、設定可能な搬送作業を設定する。
【0047】
搬送作業設定ステップS3は、搬送作業設定ステップS2と同様の処理を行うステップである。すなわち、搬送作業設定ステップS3では、作業予定設定部7が、第1の搬送装置9に対する搬送作業設定処理を、上述した該設定候補循環方式で行う。ここで、前記候補基準は、搬送作業設定ステップS3を行う時点で、第1の搬送装置9が実行している搬送作業となる。また、ステップS3では、第1の搬送装置9について、作業予定保持部3に保持される未実行の搬送作業の数が前記上限数になるまで、前記設定候補循環順序で、設定可能と判断した搬送作業を搬送装置9に対し設定していく。例えば、ステップS3を行う時点で行われている搬送作業が、第2の工程を行っている場合には、第1→第3→第2の順で、設定可能な搬送作業を設定する。
【0048】
出庫作業設定ステップS4では、作業予定設定部7が、第3の保管場所S3に、第3の保管場所S3での保管時間が経過した被処理物が存在するかを判断する。存在すると判断したら、作業予定設定部7が、その被処理物に対し出庫作業を設定する。この例では、ステップS4において、この設定に基づいて、制御部5は、移動制御信号を第3の保管場所S3の該当するハンガーコンベヤ13に出力する。これにより、次に上記のステップS12を行う時点で、当該出庫作業の対象となる被処理物を第3の保管場所S3の出庫口Tへ位置しているようにする。
【0049】
入庫作業設定ステップS5では、作業予定設定部7が、第1の保管場所S1に設けられた1つまたは複数の入庫用保管位置に、空きがあると判断した場合には、被処理物を入庫させる入庫作業を設定する。この例では、第1の保管場所S1の下段ハンガーコンベヤ13の各ハンガー13aが入庫用保管位置に相当する。従って、この例では、被処理物が吊るされていない空きハンガー13aが、下段ハンガーコンベヤ13に存在する場合には、被処理物を入庫させる入庫作業を設定する。また、この例では、ステップS5において、この設定に基づいて、制御部5は、移動制御信号を第3の保管場所S3の該当するハンガーコンベヤ13に出力する。これにより、次に後述のステップS62を行う時点で、空ハンガー13aを第1の保管場所S1の入庫口Qへ位置しているようにする。
【0050】
入庫作業ステップS6は、ステップS61、S62、S63を有する。
ステップS61では、制御部5が、入庫作業設定ステップS5で設定された入庫作業が存在するかを判断する。存在しないと判断した場合には、ステップS1へ戻り、存在すると判断した場合には、ステップS62へ進む。
ステップS62では、制御部5が、設定された入庫作業が開始可能かどうかを判断する。この例では、ステップS62において、制御部5が、第1の保管場所S1の入庫口Qに空ハンガー13aが位置しているかどうかを判断する。空ハンガー13aが入庫口Qに位置している場合には、設定された入庫作業か実行可能であるとして、ステップS63へ進む。一方、空ハンガー13aが入庫口Qに位置していない場合には、ステップS1へ戻る。
ステップS63では、制御部5が、入庫装置に入庫制御信号を出力することで、入庫装置により、入庫用保管位置に新たな被処理物を配置する。この例では、制御部5が、入庫装置に入庫制御信号を出力することで、入庫装置により、新たな被処理物を、第1の保管場所S1の入庫口Qに位置する空ハンガー13aに吊るす。
【0051】
図4は、上述のステップS2またはステップS3の処理を示すフローチャートである。すなわち、ステップS2とステップS3のいずれも、図4のフローチャートに従って行われる。
【0052】
ステップS101では、作業予定設定部7が、搬送作業設定対象の搬送装置について、作業予定保持部3に保持されている未実行の搬送作業の数が前記上限数より少ないかどうかを判断する。少ない場合には、ステップ102へ進み、そうでない場合には、ステップS2の処理を終了する。
【0053】
ステップS102では、作業予定設定部7が、設定候補循環方式により設定候補の初期選択を行う。ここで、前記候補基準は、このステップS102を行う時点で、対象とする搬送装置が実行している搬送作業となる。なお、ステップS102を行う時点で、対象の搬送装置が搬送作業を実行していない場合には、ステップS102を行う時点で、対象の搬送装置が最後に実行した搬送作業を前記候補基準としてよい。前記設定候補循環順序において、前記候補基準の次の搬送作業を設定候補として選択する。ステップS102で、設定候補を選択したら、ステップS103へ進む。
【0054】
ステップS103では、ステップS102または後述のステップS111で選択した設定候補の搬送作業の対象となる被処理物の中で、この時点において該搬送作業を開始できるものを被処理物候補として選択し、該搬送作業を開始できるものがない場合には、最も早く該搬送作業を開始できるものを被処理物候補として選択する。被処理物候補を選択したら、ステップS104へ進む。なお、ステップS103は作業予定設定部7により実行される。
【0055】
ステップS104では、ステップS103で選択した被処理物候補に対し、ステップS102で選択した設定候補の搬送作業が実行可能であるかを判断する。具体的には、次の(1)〜(3)のいずれかの時点で、該被処理物候補に対してステップS102で選択した設定候補の搬送作業を開始できるようになっている場合(すなわち、該当する保管場所で該被処理物候補が保管されている時間が、前記保管時間以上となる場合)には、該被処理物候補に対する前記設定候補の搬送作業が実行可能であると判断する。
(1)現時点。
(2)対象とする搬送装置について、現時点で作業予定保持部3に保持されている未実行の搬送作業がすべて終了する搬送作業終了予定時点。
(3)保管場所に、上述のハンガーコンベヤ13を用いる場合には、ステップS103で選択した被処理物候補が、当該搬送作業を開始できるように該当する保管場所の出入口Rに到達できる予定時点。
ただし、ハンガーコンベヤ13を用いる場合に、ハンガーコンベヤ13に対し設定されている移動作業の数が、所定の上限数(例えば6つ)に達している場合には、ステップS104において、前記被処理物候補に対する前記設定候補の搬送作業が実行可能できないと判断する。
ステップS104において、前記被処理物候補に対する前記設定候補の搬送作業が実行可能であると判断した場合には、ステップS105へ進み、そうでない場合には、ステップS111へ進む。
なお、ステップS104の判断は作業予定設定部7により実行される。
【0056】
ステップS105では、作業予定設定部7は、ステップS103で選択した被処理物候補に対し、ステップS102で選択した設定候補の搬送作業を開始する時刻を設定する。この時刻は、例えば、上記の(1)〜(3)の時点のうち最も遅い時点とする。ステップS105の時刻設定を終えたら、ステップS106へ進む。
【0057】
ステップS106では、作業予定設定部7は、ステップS105で設定した時刻に、ステップS103で選択した被処理物候補が保管場所の出入口Rに到達しているように、該当するハンガーコンベヤ13の移動作業を設定する。この設定が終了したらステップS107へ進む。なお、ハンガーコンベヤ13は、この設定通りに、移動するように制御部5に制御される。
【0058】
ステップS107では、作業予定設定部7は、ステップS102で選択した設定候補の搬送作業が、同じ保管場所の同じハンガーコンベヤ13に対し行われるものかどうかを判断する。具体的には、[表1]の情報に基づいて、該搬送作業が、該当する保管場所の該当する段のハンガーコンベヤ13から被処理物を取り出して該当する工程処理場所へ搬送し、該当する工程処理が該被処理物になされた後、これを、同じ保管場所の同じ段のハンガーコンベヤ13に戻す搬送作業であるかどうかを判断する。該搬送作業が、同じ保管場所の同じハンガーコンベヤ13に対し行うものである場合には、ステップS109へ進み、そうでない場合には、ステップS108へ進む。
ステップS107からステップS109へ進む場合には、ステップS102で選択した設定候補の搬送作業の処理前搬送で該当する被処理物が取り出されるハンガー13aを、該搬送作業の処理後搬送で該被処理物が戻される格納ハンガー13aとして設定してから、ステップS109へ進む。
【0059】
ステップS108では、作業予定設定部7は、ステップS102で選択した設定候補の搬送作業に属する処理後搬送で被処理物を戻すハンガー13aを選定する。選定できる空ハンガー13aがある場合には、ステップS109へ進み、そうでない場合には、ステップS103〜S106で行った処理を破棄して、ステップS111に進む。
ステップS107からステップS109へ進む場合には、前記選定できる空ハンガー13aを、該搬送作業の処理後搬送で該被処理物を戻すハンガー13aとして設定してから、ステップS109へ進む。この場合、例えば、上記(2)の搬送作業終了予定時点における該当するハンガーコンベヤ13の循環位置から、該当する保管場所の出入口Rに最も早く到達できる空ハンガー13aを、該当する被処理物を吊るす格納ハンガー13aとして設定する。
【0060】
ステップS109では、このステップとステップ107またはステップS108との間で設定した前記格納ハンガー13aが、ステップS102で選択した設定候補の搬送作業の処理後搬送により該被処理物が該当する保管場所の出入口Rに到達する時刻までに、該出入口Rへ到達しているように、該当するハンガーコンベヤ13に対して移動作業を設定する。この設定は、作業予定設定部7により、例えば[表1]の「作業時間」などに基づいて行われてよい。設定したらステップS111へ進む。なお、ハンガーコンベヤ13は、この設定通りに、移動するように制御部5に制御される。
【0061】
ステップS110では、作業予定設定部7は、ステップS102で選択した設定候補の搬送作業を、ステップS105で設定した時刻に開始できるように、対象とする搬送装置に対して設定する。すなわち、該搬送作業を対象の搬送装置に対し設定するとともに、該搬送作業の開始時刻を設定する。設定したら、この搬送装置の前記上限数を1つ増加させて、ステップS101へ戻る。なお、2回目以降にステップS102を行う場合、その直前に、ステップS110とS101を経由している場合には、前記設定候補循環順序において、前回に設定候補となった搬送作業の次にくる搬送作業をS102で設定候補とする。
【0062】
ステップS111では、前記設定候補循環順序におけるすべての搬送作業について、調査済みかを判断する。すなわち、前記設定候補循環順序におけるすべての搬送作業について、ステップS103、S104を実行したかを判断する。すべての搬送作業について、調査済みの場合には、図4のフローを終了し、そうでない場合には、前記設定候補循環順序に従って、次の搬送作業を新たな設定候補として選択して、ステップS103へ戻る。
【0063】
作業予定設定部7などについて、補足する。
作業予定設定部7は、上述の例では、各搬送装置9,11に対して搬送作業を設定するとともに、該搬送作業の開始時刻も設定して作業予定保持部3に保持させる。この開始時刻は、機器同士の動作が干渉しないように作業予定設定部7により設定される。そのために、作業予定設定部7は、各機器について設定されている作業(搬送作業、移動作業)がいつの時点で開始されいつの時点で終了するかなどの動作状態を把握している。なお、機器同士の干渉する場合しては、例えば、第2の保管場所S2において、下段ハンガーコンベヤ13の循環位置によって、第1の搬送装置9が図2の左側出入口Rに位置する空ハンガー13aに被処理物を吊るす処理と、第2の搬送装置11が図2の右側出入口Rから所望のハンガー13aから被処理物を取り出す処理を同時にできない場合などがある。
また、作業予定設定部7または制御部5は、各ハンガーコンベヤ13の各ハンガー13aが空きハンガーであるかどうかを、把握しているとともに、各ハンガー13aにどの被処理物が吊るされているかも把握しており、さらに、各ハンガーコンベヤ13の循環位置なども把握している。これらの把握は、作業予定設定部7または制御部5が自身で行った設定処理・制御処理または他の手段(センサーなど)に基づいてなされてよい。
作業予定設定部7により設定された各作業(搬送作業、移動作業、入庫作業、取出作業)は、作業予定保持部3に保持されるが、実行されたら作業予定保持部3から消去される。
なお、各被処理物が、格納場所に保管されている時間のカウントは、作業予定保持部3または制御部5により実行されてよい。このカウントに基づいて、各被処理物毎に、保管時間が経過したかを作業予定保持部3または制御部5により判断されてよい。また、時間のカウントの開始は、制御部5の制御情報や他の手段(センサーなど)などにより、各被処理物が保管場所へ搬入される時点を検知することでなされてよい。
【0064】
上述の実施形態の工程処理制御装置10によると、以下の効果(A)〜(D)が得られる。
【0065】
(A)該設定候補循環方式において、前記作業予定設定部7は、搬送装置9,11に対し搬送作業を新たに設定する時、この時に該搬送装置が行っている搬送作業を候補基準とし、前記設定候補循環順序において該候補基準の次に来る搬送作業を、設定候補として、該搬送装置に対し設定可能かどうかを判断し、設定可能であると判断した場合には、該搬送作業を該搬送装置に対し新たに設定し、該搬送作業が設定可能でないと判断した場合には、前記設定候補循環順序において該搬送作業の次に来る搬送作業を、設定候補として、該搬送装置に対し設定可能かどうかを判断する。このように、設定可能な搬送作業を検索していき、設定可能な搬送作業を設定する。これにより、互いに異なる搬送作業を行う搬送装置9,11が、特定の搬送作業を連続して行うことが抑制される。従って、複数の被処理物の位置に偏りが生じることを抑制できる。また、被処理物が破損するなどにより被処理物の搬送流れが乱れて複数の被処理物の位置に偏りが生じた場合に、互いに異なる搬送作業を行う搬送装置9,11に対する搬送作業設定を設定候補循環順序で行うので、実行可能な搬送作業を設定しつつ、同じ搬送作業が連続して設定されることが防止される。その結果、新たな搬送作業が適切に設定されて速やかに搬送流れの乱れが解消される。よって、全体としての工程処理能力を大幅に向上させることができる。
【0066】
(B)また、前記作業予定設定部7は、前記搬送装置循環順序で、複数の搬送装置9,11に対し前記搬送作業設定処理を行う。これにより、搬送作業の新たな設定が特定の搬送装置に偏ることが防止される。
【0067】
(C)前記設定候補循環方式において、作業予定保持部3に保持される未実行の搬送作業の数が前記上限数になるまで、前記設定候補循環順序に従って、設定可能と判断した搬送作業を搬送装置に対し設定する。これにより、当該搬送装置に対する搬送作業の設定が次に行われる時までに、当該搬送装置に設定された搬送作業がすべて実行済みとなってしまうことを防止できる。従って、搬送装置9,11の稼働率を向上させることができる。
【0068】
(D)前記最終保管場所から被処理物を取り出した作業の後に搬送作業設定処理を最初に行う搬送装置11が、ボトルネック搬送装置となっているので、ボトルネック搬送装置に対して搬送作業を設定できなくなる確率を下げることができる。これにより、ボトルネック搬送装置の稼動率を高く維持できる。よって、全体としての工程処理能力を一層高めることができる。
【0069】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下で述べる内容を、単独でまたは組み合わせるように変更可能である。
【0070】
工程処理設備で用いられる搬送装置の数は、上述では2つであったが、3つ以上であってもよい。
【0071】
上述の例では、前記設定候補循環順序は、下流側の搬送作業から上流側の搬送作業へ1つずつ前記設定候補が移行していく順序であったが、逆の順序であってもよい。すなわち、前記設定候補循環順序は、上流側の搬送作業から下流側の搬送作業へ1つずつ前記設定候補が移行していき、前記複数の搬送作業のうち最下流の搬送作業の次に、前記複数の搬送作業のうちの最上流の搬送作業へ移行する順序であってもよい。ただし、複数の搬送装置の間で、前記設定候補循環順序による循環方向は同じであるのがよい。例えば、ある搬送装置については、上流側から下流側へ移行する順序であれば、残りのすべての搬送装置についても、上流側から下流側へ移行する同じ順序とするのがよい。
【0072】
作業予定設定部7は、各搬送装置に対して搬送作業を設定するときに、該搬送作業の開始時刻を設定しなくてもよい。この場合には、例えば、各搬送装置は、各搬送作業を終了した時点で、終了信号を制御部5に出力する。これにより、制御部5は、該搬送装置の搬送作業が終了したことを認識し、該搬送装置について作業予定保持部3に設定されている次の搬送作業を実行させる旨の作業開始指令を、該搬送装置に出力する。これにより、該搬送装置は、作業開始指令に基づいて次の搬送作業を開始する。この場合、各搬送装置について、未実行の複数の搬送作業が作業予定保持部3に保持されている場合、制御部5は、設定された順に、搬送作業を実行させるように、前記作業開始指令を出力するのがよい。すなわち、未実行の複数の搬送作業のうち、最初に設定された搬送作業から実行させるのがよい。
【0073】
また、上述の例では、保管場所にハンガーコンベヤ13を用いていたが、保管場所に他の移動装置を用いてもよい。この場合、各保管場所において、各被処理物を、該保管場所内の複数の保管位置の各々と、該保管場所における上述したような入庫口Q、出入口Rまたは出庫口Tとの間で移動させるようにしてよい。この場合、各搬送装置は、例えば、出入口Rと工程処理場所との間で被処理物を搬送してよい。
【0074】
上述の例では、保管場所は、所定の保管時間以上の間、被処理物を保管することで、被処理物を乾燥させるためのものであったが、本発明によると、保管場所は、他の目的で、所定の保管時間以上の間、被処理物を保管するものであってもよい。
【0075】
本発明は、保管場所を有しない工程処理設備にも適用可能である。例えば、各工程処理場所P1〜P7で工程処理が行われた被処理物は、該工程処理場所から、保管場所を経由することなく、直接次の工程処理場所へ搬送する場合にも本発明を適用可能である。
すなわち、本発明による工程処理制御装置10は、複数の工程処理が一定の処理順序で各被処理物に対し行われるように、前記複数の工程処理がそれぞれ行われる複数の工程処理場所へ各被処理物を搬送し、該複数の工程処理場所から各被処理物を搬送する搬送作業を、複数の搬送装置で行う場合であって、複数の搬送装置の少なくとも1つに、互いに異なる複数の搬送作業が割り当てられている場合に適用可能である。
例えば、上述の[表1]、図2の例において、保管場所がないものとし、各搬送装置9,11は、前記処理前搬送を1つの搬送作業として実施する。この場合、保管場所に関連する処理を省略または適宜変更するが、それ以外の点は、上述と同じであってよい。
【符号の説明】
【0076】
3 作業予定保持部、
5 制御部、
7 作業予定設定部、
9、11 各搬送装置
10 工程処理制御装置、
13 ハンガーコンベヤ、13a ハンガー
P1〜P7 第1〜第7の工程処理場所
S1〜S3 第1〜第3の保管場所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程処理が一定の処理順序で各被処理物に対し行われるように、前記複数の工程処理がそれぞれ行われる複数の工程処理場所へ各被処理物を搬送し、該複数の工程処理場所から各被処理物を搬送する搬送作業を、複数の搬送装置で行うための工程処理制御装置であって、
前記各搬送装置に対して設定された搬送作業を保持する作業予定保持部と、
作業予定保持部に保持されている搬送作業に従って各搬送装置を制御する制御部と、
前記各搬送装置に対し新たな搬送作業を設定して作業予定保持部に保持させる搬送作業設定処理を行う作業予定設定部と、を備え、
前記作業予定設定部は、互いに異なる複数の搬送作業を行う搬送装置に対して前記搬送作業設定処理を行う場合には、設定候補循環方式で行い、
該設定候補循環方式では、設定候補とする搬送作業の優先順位の指標として、前記複数の搬送作業が一定の順序で循環する設定候補循環順序が定められており、前記作業予定設定部は、搬送装置に対し搬送作業を新たに設定する時、この時に該搬送装置が行っている搬送作業を候補基準とし、前記設定候補循環順序において該候補基準の次に来る搬送作業を、設定候補として、該搬送装置に対し設定可能かどうかを判断する、ことを特徴とする工程処理制御装置。
【請求項2】
前記作業予定設定部は、前記設定候補循環方式で、前記設定候補循環順序において前記候補基準の次に来る搬送作業を搬送装置に対し設定可能であると判断した場合には、該搬送作業を該搬送装置に対し新たに設定し、該搬送作業が設定可能でないと判断した場合には、前記設定候補循環順序において該搬送作業の次に来る搬送作業を、設定候補として、該搬送装置に対し設定可能かどうかを判断する、ことを特徴とする請求項1に記載の工程処理制御装置。
【請求項3】
前記搬送作業設定処理を行う搬送装置の順序の指標として、前記複数の搬送装置が一定の順序で循環する搬送装置循環順序が定められており、前記作業予定設定部は、前記搬送装置循環順序で、前記複数の搬送装置に対し前記搬送作業設定処理を行う、ことを特徴とする請求項1または2に記載の工程処理制御装置。
【請求項4】
前記作業予定保持部は、各搬送装置に対し未実行の搬送作業を2以上の上限数まで保持でき、
前記作業予定設定部は、
前記設定候補循環方式において、前記作業予定保持部に保持される未実行の搬送作業の数が前記上限数になるまで、前記設定候補循環順序に従って、設定可能と判断した搬送作業を搬送装置に対し設定し、
その後、前記搬送装置循環順序における次の搬送装置に対し搬送作業設定処理を行う、ことを特徴とする請求項3に記載の工程処理制御装置。
【請求項5】
前記各工程処理場所で対応する前記工程処理を行う場合に、所定の保管場所から該工程処理場所へ被処理物を搬送する処理前搬送と、該工程処理場所で工程処理が行われた該被処理物を同じまたは別の保管場所へ搬送する処理後搬送とが行われるようになっており、該処理前搬送と処理後搬送を合わせたものを1つの搬送作業とし、
上流側の前記工程処理を行うための前記1つの搬送作業を上流側の搬送作業とし、下流側の前記工程処理を行うための前記1つの搬送作業を下流側の搬送作業とし、
前記設定候補循環順序は、
下流側の搬送作業から上流側の搬送作業へ1つずつ前記設定候補が移行していき、前記複数の搬送作業のうち最上流の搬送作業の次に、前記複数の搬送作業のうちの最下流の搬送作業へ移行する順序であるか、または、
上流側の搬送作業から下流側の搬送作業へ1つずつ前記設定候補が移行していき、前記複数の搬送作業のうち最下流の搬送作業の次に、前記複数の搬送作業のうちの最上流の搬送作業へ移行する順序である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の工程処理制御装置。
【請求項6】
被処理物に対し前記複数の工程処理を行うために要する搬送作業が、前記複数の搬送装置に割り当てられており、
割り当てられた搬送作業の実行必要時間の合計が最も長くなる搬送装置を、ボトルネック搬送装置とし、
該ボトルネック搬送装置は、前記複数の工程処理のうち最下流の工程処理を行うための前記搬送作業を行い、該搬送作業により、最下流の工程処理が行われた被処理物が、所定の最終保管場所の空き格納位置へ搬送され、
前記搬送装置循環順序では、前記最終保管場所から被処理物を取り出した作業の後に、前記複数の搬送装置のうち、最初に、ボトルネック搬送装置に対し搬送作業設定処理が行われるようになっている、ことを特徴とする請求項5項に記載の工程処理制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−3096(P2011−3096A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146835(P2009−146835)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】