左心室加速度に基づいて心臓再同期化治療を最適化する方法及び装置
【課題】 左心室の心筋の収縮性を監視し、且つ心腔の同期化を、長期に継続して、又は、短期に改善するために送出される多腔又は2心室ペーシング中に、左心室収縮性の最大の改善を生じる、最適な心臓ペーシング間隔を選択するデバイス及び方法を提供する
【解決手段】 左心室心臓収縮性を監視し、左心室側壁加速度(LVA)に基づいて心臓治療を最適化するシステムは、加速度センサを備えた左心室心外膜又は冠状静脈洞リード線と連結する埋め込み可能な又は外部の心臓刺激デバイスを含む。デバイスは、加速度センサ信号を受け取り、処理して、等容性収縮中のLVAを示す信号特性を決定する。治療最適化法は、様々な治療設定中にLVAを評価し、等容性収縮中の最大LVAに対応する設定(複数可)を選択する。心臓再同期化治療で使用するための最適心室間ペーシング間隔は、等容性収縮中の第1LVAピークの最大振幅に対応する間隔として決定される。
【解決手段】 左心室心臓収縮性を監視し、左心室側壁加速度(LVA)に基づいて心臓治療を最適化するシステムは、加速度センサを備えた左心室心外膜又は冠状静脈洞リード線と連結する埋め込み可能な又は外部の心臓刺激デバイスを含む。デバイスは、加速度センサ信号を受け取り、処理して、等容性収縮中のLVAを示す信号特性を決定する。治療最適化法は、様々な治療設定中にLVAを評価し、等容性収縮中の最大LVAに対応する設定(複数可)を選択する。心臓再同期化治療で使用するための最適心室間ペーシング間隔は、等容性収縮中の第1LVAピークの最大振幅に対応する間隔として決定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、心機能不全を監視又は処置する埋め込み可能医療デバイスに関し、より詳細には、心臓の収縮性を監視し、左心室自由壁の加速度に従って治療を最適化するデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
左心室機能の評価は、診断と治療適用の両方にとって重要である。心臓が正常に機能する間、心房及び心室は、心周期の収縮期(収縮)相と拡張期(弛緩)相の間に一貫した時間依存の関係を観測する。病理学的状況に伴い、又は、続く心臓関連の外科処置の後の心臓機能不全の間に、これらの時間依存の機械的関係が変化することが多い。心筋の弱化の作用と結合すると、この変化は、収縮の強さを生成する心室の能力を低下させ、血行力学的機能不全をもたらす。
【0003】
冠状動脈バイパスグラフト(CABG)手術に続く心室同期異常(dyssynchrony)は、比較的しばしば出くわす問題であり、術後の一時的なペーシングを必要とする。心房−2心室ペーシング(atrio-biventricular pacing)は、こうした処置に続く術後の血行力学を改善することがわかった。
【0004】
長期継続の心臓再同期化治療(CRT)は、うっ血性心不全を病む患者の心臓機能の指標を改善することを臨床的に立証した。心臓ペーシングが、一方又は両方の心室、或いは、一方又は両方の心房を含む複数の心腔に適用されて、心腔の協調が改善され、次に、心拍出量及びポンプ効率が改善されると考えられている。再同期化治療を受ける患者の臨床的追跡調査は、心臓機能、左心室容積、及び壁運動の血行力学的測度の改善を示した。しかしながら、全ての患者が心臓再同期化治療に好都合に反応するわけではない。医師は、利益を得ることになる患者を選択すること、及び、心腔収縮を再同期させるために適用される最適ペーシング間隔を選択することを要求される。
【0005】
心房−心室(A−V)及び心室間(V−V)ペーシング間隔の選択は、最良の短時間の(acute)血行力学的反応をもたらす設定を決定するために実施される心エコー検査による研究に基づくことが多い。しかしながら、無侵襲監視方法を使用して、著しい血行力学的変化が個々の患者において、常に短時間に観測可能であるとは限らない。したがって、パラメータの選択は、心室充満の変更又は妨害を回避することに基づく場合がある。本発明者が理解している、心臓再同期化治療を評価するために行われるMIRACLE臨床試験では、心エコー検査によって観測される、心房の寄与を切り捨てることなく、心室充満を最大にするようにA−V間隔を短くすることによって、A−V間隔が、患者において個々に最適化された。
【0006】
心エコー検査手法は、CRTを最適化する開ループ方法のみを提供する。ペーシング間隔の様々な組み合わせの血行力学的作用を評価した後、医師は、所望のパラメータを手作業で選択し、プログラムし、患者のデバイスの最適設定が、次の再最適化が起こるまで変わらないままであると仮定しなければならない。多腔ペーシング中にペーシング間隔を選択する自動化システムが提案されている。右心臓弁閉鎖又は右心室収縮のタイミングを決定し、左心室ペースパルスを送出するタイミングを調整するための、インピーダンス検知を含む4腔ペーシングシステムは、Bakels他に発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第6,223,082号に全体が記載される。埋め込み可能な多腔心臓刺激デバイスにおいて、患者に最適な血行力学的利益を提供するために選択されるプログラム可能な結合間隔は、Levineに発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第6,473,645号に全体が記載される。
【0007】
心筋収縮率及び収縮の強さを評価するために、ドプラ組織画像化が臨床的に使用されてきた。組織ドプラ画像化から導出される、等容性収縮中の心筋加速度は、指標すなわち右心室収縮性として調査されている。心筋加速度は、等容性収縮中は一定であると推定された。ドプラ組織画像化はまた、どの患者が心臓再同期化治療から利益を受ける可能性があるかを予想するために、中隔壁運動と側壁運動との間の協調を調査するのに使用されてきた。証拠が示唆することは、患者の反応が、治療の前後での心室同期性の程度に依存することである。ドプラ組織画像化研究が示したことは、左心室の中間から中間−基底セグメントが、心臓再同期化治療の後の短縮において最も大きな改善を示すことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、左心室の壁運動の検出及び監視は、心臓再同期化治療を最適化する際に有用であるであろう。心筋収縮性は、心室機能の血行力学的測度ほどには、前負荷依存でなく、自律的に敏感でもない。したがって、心筋収縮性に基づく心臓再同期化治療の最適化は、自律的影響又は前負荷の変更下で急激に変化すると思われる血行力学的パラメータに基づく最適化に比べて一過性でないことが期待される。しかしながら、加速度計によって直接測定される時、心筋加速度は等容性収縮中に一定ではない。したがって、心臓の収縮性を評価し、CRTを最適化する時に使用するために、特に左心室において心筋加速度を監視する方法が必要とされる。
【0009】
右心室を基準にして使用するための、心壁運動を監視する埋め込み可能センサが、説明され、実施されてきた。心臓マス(heart mass)のモーメント又は速度を監視することによる、心臓機能の監視のために心臓マスに埋め込まれたセンサは、Vallana他に発行された米国特許第5,454,838号に全体が開示される。カテーテル先端又は先端に近接して加速度トランスデューサを有する、心臓の収縮性を監視するための心室内挿入用のカテーテルは、Cunninghamに発行された米国特許第6,077,236号に全体が開示される。加速度計ベースの心壁運動センサを組み込む埋め込み可能リード線は、Moberg他に発行された米国特許第5,628,777号に全体が開示される。自然な心臓加速度を検知するデバイスは、Plicchi他に発行された米国特許第5,693,075号に全体が開示される。心臓収縮による曲げモーメント(bending)を受ける位置において配設された張力測定要素を含む心筋張力測定のためのシステムは、Ferek-Petric他に発行された米国特許第5,261,418号に全体が開示される。先に引用した特許は全て、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0010】
A−V間隔を最適化するために右心室心尖部のピーク心内膜壁運動を検出することは、臨床的に確認されている。心臓壁運動センサ信号を使用して心拍数及びAV間隔について血行力学的に最適な値を提供するシステム及び方法は、Bornzin他に発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第5,549,650号に全体が記載される。たとえば、心臓加速度を含む、心臓性能パラメータの最適化をもたらすように、ペーシングモードと1つ又は複数のペーシングサイクルパラメータの両方を自動的に最適化するように設計された心臓刺激システムは、Tockman他に発行された米国特許第5,540,727号に全体が開示される。
【0011】
CRT中にA−V間隔とV−V間隔の両方を最適化することは時間がかかるプロセスであり得る。最適化が、前負荷依存の血行力学的指標に基づく時、1つの調整は、他についての最適な設定に影響を与える可能性がある。したがって、心筋の収縮性などの、心室機能の比較的前負荷に依存しない指標に基づいてV−V間隔を最適化し、それによってV−V間隔の最適化がA−V間隔の最適化とは無関係になるようにする方法を提供することが望ましい。
【0012】
左心室の心筋の収縮性を監視し、且つ心腔の同期化を、長期に継続して、又は、短期に改善するために送出される多腔又は2心室ペーシング中に、左心室収縮性の最大の改善を生じる、最適な心臓ペーシング間隔を選択するデバイス及び方法を提供する必要性が残っていることが、先の説明から明らかである。改善された左心室収縮性の指標は、心腔全体の同期性及び機能の改善を反映し、且つ一般に、心臓効率の正味の改善をもたらすことが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、左心室自由壁の加速度の検出に基づいて、左心室の機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法及び装置を提供する。一実施形態では、本発明は、埋め込み可能な多腔パルス発生器及び関連するリード線システムを含む心臓再同期化システムにおいて実現され、左心室冠状静脈洞リード線又は左心室心外膜リード線は、左心室の、本明細書で「側壁」とも呼ばれる、自由壁の加速度を検出するセンサを備える。代替の一実施形態では、一時的外部パルス発生器が、加速度センサを備えた左心室の一時的ペーシングリード線を含む一時的ペーシングリード線に結合される。
【0014】
好ましい一実施形態では、センサは加速度計であり、単軸、2軸、又は3軸加速度計であってもよい。左心室側壁の加速度に比例する信号を生成することが可能な他のタイプのセンサで置き換えることができるであろう。センサは、好ましくは、中間の、又は、中間−基底の左心室自由壁セグメントに、又は、それに近接して設置される。
【0015】
埋め込み可能な、又は、外部のシステムは、加速度センサ信号を受信し、処理して、等容性収縮中の左心室自由壁加速度(LVA)に基づいて心臓収縮性の指標を決定する。信号処理が実施されることによって、加速度信号が測定され、1つ又は複数の信号パラメータが心臓収縮性の指標として導出される。好ましい一実施形態では、等容性収縮相中に発生する第1加速度ピークの最大振幅が、心臓収縮性指標として決定される。心臓収縮性指標は、監視目的及び/又は診断目的で、他のパラメータデータ又は生理的データと共に記憶される可能性がある。
【0016】
自動化された、反復的な試験ルーチン中に、心臓治療は、心臓収縮性のLVA指標に基づいて最適化される。一実施形態では、CRTは、心室間(すなわち、心室−心室又は「V−V」)間隔を変化させ、且つ等容性収縮中のピークLVAを決定するアプリケーションを含む反復最適化法を実行することによって最適化される。等容性収縮中に発生する第1加速度ピークの最大振幅を生成するV−V間隔が、心臓再同期化治療を送出するために選択される。このV−V間隔は、最適な心室間同期性を生じ、長期の閉ループCRT制御を提供することが示された。心不全の患者に対してこうした最適なCRT制御を提供するために本発明が実施される場合、こうした患者のNYHAクラスが徐々に改善していくことができると考えられる(たとえば、NYHAクラスIVからNYHAクラスIII、又は、NYHAクラスIIへなど)。さらに、本発明は、いわゆる、「逆再モデル化」の作用を増大する場合があり、長期継続CRTに応答して、こうした心不全の患者についての、心臓の形状、心臓のサイズ、及び/又は、心臓機能などが、徐々に相当に改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
先に示したように、本発明は、等容性収縮相中に、心臓収縮性を監視し、且つ左心室自由壁加速度を監視することに基づいて心臓治療を最適化する方法及び装置を提供することを対象とする。特に、本発明は、心不全を処置するのに使用される長期継続再同期化治療中に、心室間ペーシング間隔を最適化するのに役立つ。本発明はまた、術後心室同期異常を処置するために適用される一時的ペーシング中に使用されるペーシングパラメータを選択する際に役立つ。したがって、本発明は、2腔又は多腔ペースメーカ及び関連するリード線のセットを含む埋め込み可能な心臓ペーシングシステムにおいて具体化されてもよい。代わりに、本発明は、関連する一時的ペーシングリード線を有する外部ペーシングデバイスを含む一時的ペーシングシステムにおいて具体化されてもよい。
【0018】
図1Aは、本発明を実施することができる、例示的な、埋め込み可能な多腔心臓ペースメーカ14を示す。多腔ペースメーカ14は、必要である場合に、1つ又は複数の心腔に対してペーシングパルスを送出することによって、心室同期性を回復し、心臓活性化シーケンスを制御することを可能にする。ペースメーカ14は、3本のリード線16、32、及び52によって、患者の心臓10とつながっているものとして示される。心臓10は、上部心腔すなわち右心房(RA)と左心房(LA)、及び、下部心腔すなわち右心室(RV)と左心室(LV)、及び、右心房内の開口から、横方向に、心房の周囲へ延びて、大心臓静脈48を形成し、中心静脈(inferior cardiac veins)を形成するように分岐する冠状静脈洞(CS)を示す部分断面図で示される。
【0019】
本明細書で「埋め込み可能パルス発生器」又は「IPG」とも呼ばれるペースメーカ14は、皮膚と肋骨の間の患者の体内に皮下的に埋め込まれる。3本の経静脈的心内膜リード線16、32、及び52は、それぞれ、IPG14をRA、RV、及びLVに接続する。各リード線は、少なくとも1つの電気導体及びペース/センス電極を有する。遠隔不関筐体(remote indifferent can)電極20は、IPG14のハウジングの外部表面の一部として形成される。ペース/センス電極及び遠隔不関筐体電極20は、ペーシング及び検知機能のために、多数の単極及び双極ペース/センス電極の組み合わせを提供するために選択的に採用される可能性がある。
【0020】
図示する双極心内膜RAリード線16は、静脈を通って心臓10のRA腔内に通され、RAリード線16の遠位端は、取り付け機構17によってRA壁に取り付けられる。双極心内膜RAリード線16は、インラインコネクタ13がIPGコネクタブロック12の双極穴に嵌合した状態で形成され、インラインコネクタ13は、リード線本体15内にあって、RAペーシングを達成し、RA電位図(EGM)信号を検知するために設けられた遠位先端RAペース/センス電極19及び近位リングRAペース/センス電極21に接続された、一対の電気絶縁した導体に結合する。
【0021】
双極心内膜RVリード線32は、RAを通ってRV内に通され、その近位リング及び先端RVペース/センス電極38及び40は、従来の遠位取り付け機構41によって心尖部の適所に固定される。RVリード線32は、インラインコネクタ34がIPGコネクタブロック12の双極穴内に嵌合した状態で形成され、インラインコネクタ34は、リード線本体36内にあって、RVペーシングを達成し、RV EGM信号を検知するために設けられた遠位先端RVペース/センス電極40及び近位リングRVペース/センス電極38に接続された、一対の電気絶縁した導体に結合する。RVリード線32は、オプションで、RV壁運動センサ60を含んでもよい。RV壁運動センサ60は、RV先端領域の運動すなわち加速度を検出するために、RV心尖部内か、又は、RV心尖部に近接して位置決めされてもよい。右心室内における加速度センサの埋め込みは、先に引用したPlicchi他に発行された米国特許第5,693,075号に全体が記載される。
【0022】
図示するこの実施形態では、単極心内膜LV CSリード線52は、RAを通ってCS内に、さらに、心臓静脈内に通されて、遠位LV CSペース/センス電極50をLV腔に沿って延ばし、LVペーシング及びLV EGM信号の検知を達成する。LV CSリード線52は、IPGコネクタブロック12の穴内に嵌合する近位端コネクタ54で結合する。遠位LV CSペース/センス電極50を、大心臓静脈48から分岐する心臓静脈内の深いところに入れるために、直径の小さい単極リード線本体56が選択される。
【0023】
本発明によれば、冠状静脈洞リード線52は、左心室自由壁の加速度に比例する信号を生成することが可能なセンサ62を装備する。センサ62は、好ましくは、比較的小さいサイズ及び直径のカプセル内に収容される、単軸、2軸、又は3軸加速度計として具体化されることによって、センサ62が、リード線の直径を実質的に増加させることなく、又は、左心室ペーシング及び検知部位へリード線を方向制御する能力を実質的に損なうことなく、冠状静脈洞内に組み入れられるようになる。長手方向加速度としてLV壁加速度を評価し、且つペーシング間隔を最適化する時に、半径方向加速度は有用でない場合があり、したがって、単軸加速度計が、これらの目的に適合している場合がある。センサ62は、代わりに、光学センサ、音響センサ、又は、左心室加速度に比例するか、若しくは、そこからLV加速度の変動が導出される可能性がある可変信号を生成する、圧電性、誘導性、容量性、抵抗性、又は他の素子を有するセンサなどの、別のタイプのセンサとして設けられてもよい。センサ62は、好ましくは、CSリード線52上に位置し、それによって、CSリード線52がLVペーシング及び検知のために位置決めされると、センサ62が、左心室自由壁の中間−側面から中間−基底セグメントの上にほぼ配置される。右心腔及び左心腔内、又は、その周囲にある、図1Aに示すリード線及び電極の図示する位置は、近似であり、例示にすぎない。たとえば、左心室加速度センサ62は、代わりに、CSリード線52上に位置し、それによって、センサ62が、冠状静脈洞内、大心臓静脈内、又は、任意のアクセス可能な中心静脈内に位置決めされる。さらに、RA、LA、RV、及びLV上か、その中か、又は、それを基準にしたペーシング又は検知部位に設置するようになっている代替のリード線及びペース/センス電極が、本発明と共に使用されてもよいことが認識される。
【0024】
4腔の一実施形態では、LV CSリード線52は、LAをペーシングし、又はLA EGM信号を検知する時に使用するために、LAに隣接する大きな直径の冠状静脈洞内にあるように、リード線本体に沿って位置決めされた近位LA CSペース/センス電極を搭載するであろう。その場合、リード線本体56は、より近位のLA CSペース/センス電極(複数可)から近位に延び、且つ双極コネクタ54で終端する絶縁リード線導体を収納することになる。
【0025】
図1Bは、経静脈的心内膜リード線、及び、加速度センサ62を備えた付加的な左心室心外膜リード線を介して患者の心臓に結合する、例示的な埋め込み可能な多腔心臓ペースメーカを示す。患者は、加速度センサを装備しない冠状静脈洞リード線52を含む経静脈的リード線システムを、既に埋め込まれていてもよい。こうした患者は、再同期化治療を最適なペーシング間隔で提供するように、閉ループフィードバックシステムで使用するためのLV加速度信号を提供するための、コネクタ66を介してIPG14に結合する加速度センサ62を装備する心外膜リード線64の設置から利益を得る場合がある。
【0026】
心外膜リード線64は、付加的に、ペーシング及び/又は検知電極として役立つ場合がある固定部材63を備える。場合によっては、冠状静脈洞リード線をLV自由壁上の比較的小さな心臓静脈内に進めることが難しいために、心外膜リード線が冠状静脈洞リード線に比べて好ましい場合がある。冠状静脈洞リード線の設置は、心臓静脈の蛇行性のために厄介な仕事になる可能性がある。したがって、少なくとも一部の患者では、ペーシング、EGM検知、及び加速度監視のために、LV側壁上に位置決めされる可能性がある心外膜リード線を提供することが望ましい場合があり、それによって冠状静脈洞リード線に対する必要性がなくなる。代わりに、別個のLV心外膜リード線がLV側壁加速度を検知するために位置決めされた状態で、LVペーシング及びEGM検知のための小さい直径の冠状静脈洞リード線を配備することが望ましい場合がある。
【0027】
図1Bに全体が示される実施形態は、再同期化治療ペーシング部位を選択する時に使用されるのに特に有利である。心外膜リード線64が、LV側壁加速度を評価するために所望の場所に固定された状態で、1つ又は複数の心腔内の異なる場所におけるペーシング作用は、経静脈的ペーシングリード線16、32、及び52を異なる場所へ配備することによって評価される可能性がある。特に、LV加速度センサ62からの信号を解析することに基づいて最適な場所が識別されるまで、冠状静脈洞リード線52は、異なる場所に進められる場合がある。加速度センサ62を別個の心外膜リード線64上に設けることによって、冠状静脈洞リード線52上に設けられたペーシング電極50の位置が、センサ62と無関係に調整されることができる。ペーシング電極50の位置が調整を必要とする場合、加速度センサ62は、LV側壁上の所望の測定部位に固定されたままとなることができ、それによって、異なるペーシング間隔及び/又はペーシング部位について同じ場所で繰り返された測定間の比較を行うことが可能になる。
【0028】
図2は、再同期化治療の送出を提供し、且つ左心室加速度信号入力を処理することが可能な、図1A又は図1Bに示すような、例示的な多腔IPG14のブロック略図である。IPG14は、好ましくは、マイクロプロセッサベースのデバイスである。それに応じて、組み込まれるタイプ及び機能の特徴に応じて、精巧さ及び複雑さが変わる、マイクロプロセッサベースの制御及びタイミングシステム102は、関連するRAM及びROMに記憶される、ファームウェア及びプログラム式のソフトウェアアルゴリズムを実行することによって、IPG14の機能を制御する。制御及びタイミングシステム102はまた、ウォッチドッグ回路、DMAコントローラ、ブロックムーバ/リーダ、CRC計算器、及び、当該技術分野で知られる方法で、パス又はツリーにおけるオン−チップデータバス、アドレスバス、電力、クロック、及び制御信号線によって共に結合される他の特定ロジック回路機構を含んでもよい。IPG14の制御及びタイミング機能は、プログラム式マイクロコンピュータではなく、専用回路ハードウェア又は状態マシンロジックによって達成される可能性があることも理解されるであろう。
【0029】
IPG14は、患者の心腔の特定の部位に配置されるセンサ及びペース/センス電極から信号を受け取り、且つ心臓ペーシングを送出して患者の心調律を制御し、心腔活性化を再同期させるインタフェース回路機構104を含む。したがって、インタフェース回路機構104は、制御及びタイミングシステム102の制御下で心臓ペーシングインパルスを送出することを目的とする治療送出システム106を含む。2つ以上の心腔へのペーシングパルスの送出は、心房−心房(A−A)、心房−心室(A−V)、及び心室−心室(V−V)間隔を含む可能性がある、プログラム可能なペーシング間隔の選択によって部分的に制御される。
【0030】
生理的な入力信号処理回路108は、患者の心調律を決定するために心臓電位図(EGM)信号を受け取るために設けられる。生理的な入力信号処理回路108は、さらに、左心室壁加速度センサ62、オプションで、RV壁運動センサ60からの信号を受け取り、これらの信号を処理し、さらなる信号解析のために、信号データを制御及びタイミングシステム102に提供する。本発明の可能性のある使用を具体的に示すために、治療送出システム106と、入力信号処理回路108と、ペース/センス電極、加速度センサ、及びRA、LA、RV、及びLVと動作可能に配置される任意の他の生理的センサとの間で電気接続するためのリード線接続のセットが示される。
【0031】
制御及びタイミングシステム102は、心腔同期性を改善することを目的として、2心房、2心室、又は多腔心臓ペーシングパルスの選択された間隔での送出を制御する。IPG14によるペーシングパルスの送出は、Struble他に発行され、参照によりその全体が援用される、米国特許第6,070,101号に全体が開示される、プログラム可能な伝導遅延窓時間、又は、Levineに発行され、先に引用した米国特許第6,473,645号に全体が本明細書に開示される、プログラム可能な結合間隔などの、プログラム可能なペーシング間隔に従って提供されてもよい。プログラム可能なペーシング間隔の選択は、好ましくは、以下でより詳細に説明されるように、センサ62信号から導出される左心室側壁加速度の決定に基づく。
【0032】
治療送出システム106は、オプションで、患者の心調律を制御するための心臓ペーシングパルスに加えて、カーディオバージョン/ディフィブリレーション治療を送出する回路機構を含むように構成されてもよい。それに応じて、患者の心臓とつながるリード線は、さらに、高電圧カーディオバージョン又はディフィブリレーションショック電極を含むであろう。
【0033】
電池136は、IPG14の部品及び回路機構に電力を供給し、電気インパルスを心臓に送出するための電気刺激エネルギーを提供する電気エネルギー源を提供する。通常のエネルギー源は、パワー−オン−リセット(POR)能力を有する電源/POR回路126と結合する、高エネルギー密度の低電圧電池136である。電源/POR回路126は、1つ又は複数の低電圧電力(Vlo)、POR信号、1つ又は複数の基準電圧(VREF)源、電流源、選択交換インジケータ(ERI)信号、及び、カーディオバージョン/ディフィブリレーション能力の場合において高電圧電力(Vhi)を治療送出システム106へ提供する。これらの電圧及び信号の従来の相互接続の全てが図2に示されているわけではない。
【0034】
現在の電子多腔ペースメーカ回路機構は、通常、圧電結晶132及び圧電結晶132に結合したシステムクロック122によって提供されるクロック信号CLKを必要とするクロック駆動式CMOSデジタルロジックIC、並びに、1つ又は複数の基板或いはプリント回路板にICと共に搭載される、ディスクリート部品、たとえば、インダクタ、コンデンサ、変圧器、高電圧保護ダイオードなどを採用する。図2では、システムクロック122によって生成された各CLK信号は、クロックツリーを介して全ての適用可能なクロック駆動式ロジックに送られる。システムクロック122は、システムタイミング及び制御機能のために、また、テレメトリI/O回路124におけるアップリンクテレメトリ信号伝送をフォーマットする際に、動作電池電圧範囲にわたって、電池電圧と無関係である1つ又は複数の固定周波数CLK信号を提供する。
【0035】
マイクロプロセッサベースの制御及びタイミングシステム102内に含まれるRAMレジスタは、ダウンリンクテレメトリ伝送による取り出し又は呼び掛け命令を受信するとすぐアップリンクテレメトリ伝送するために、検知されたEGM信号、加速度信号から編集した、且つ/又は、デバイス動作履歴又は他の検知された生理的パラメータに関係するデータを記憶するのに使用されてもよい。データ記憶をトリガする基準は、ダウンリンクされる命令及びパラメータ値によってプログラムされる可能性がある。加速度データを含む生理的データは、トリガごとか、又は、定期的に、又は、生理的な入力信号処理回路108内の検出ロジックによって記憶されてもよい。場合によっては、IPG14は、磁界に応答して閉じる磁界感知スイッチ130を含み、閉じることによって、磁石モードで応答する磁気スイッチ回路120が、制御及びタイミングシステム102にスイッチ閉鎖(SC)信号を出す。たとえば、患者は、皮下に埋め込まれたIPG14の上で適用され得る磁石116を備えてもよく、それによって、スイッチ130を閉じ、制御及びタイミングシステムが、治療を送出する、且つ/又は、生理的データを記憶するよう指示する。事象関連データ、たとえば、日時及び現在のペーシングパラメータは、後の呼び掛けセッションにおけるアップリンクテレメトリのための記憶された生理的データと共に記憶されてもよい。
【0036】
アップリンク及びダウンリンクテレメトリ能力は、遠くに配置される外部医療デバイスか、患者の体の上又は体内のより近位にある医療デバイスのいずれかとの通信を可能にするために設けられる。記憶されたEGM又はLV加速度データ、並びに、リアルタイムに生成される生理的データ及び非生理的データは、ダウンリンク遠隔送信呼び掛けコマンドに応答して、アップリンクRFテレメトリによって、IPG14から外部プログラマ又は他の遠隔医療デバイス26に送信されてもよい。したがって、アンテナ128は、アップリンク/ダウンリンクテレメトリ動作のために、無線周波数(RF)送受信機回路124に接続される。アンテナ128と、アンテナ118を同様に装備する外部デバイス26の間でのアナログとデジタルの両方のデータの遠隔送信は、埋め込み可能デバイスで使用するための技術分野で知られている多くのタイプのテレメトリシステムを使用して達成されてもよい。
【0037】
生理的な入力信号処理回路108は、増幅し、処理し、場合によっては、電気的センス信号又はセンサ出力信号の特性からセンス事象を検出する、少なくとも1つの電気的信号増幅器回路を含む。そのため、生理的な入力信号処理回路108は、心腔を基準にして配置されるセンス電極からの心臓信号を検知し、処理するための複数の心臓信号センスチャネルを含んでもよい。こうしたそれぞれのチャネルは、通常、特定の心臓事象を検出するセンス増幅器回路、及び、サンプリングし、デジタル化し、記憶するか、又は、アップリンク伝送において送信するために、EGM信号を制御及びタイミングシステム102に提供するEGM増幅器回路を含む。心房及び心室センス増幅器は、それぞれ、P波又はR波の発生を検出し、心房センス又は心室センス事象信号を制御及びタイミングシステム102に提供するための、信号処理段を含む。タイミング及び制御システム102は、特定の動作システムに従って応答して、適切である場合には、ペーシング治療を送出するか、若しくは、変更し、又は、当該技術分野で知られている種々の方法でアップリンクテレメトリ伝送のためのデータを収容する。そのため、ペーシングパルス送出に対する必要性は、有効である特定の動作モードに従って、EGM信号入力に基づいて決定される。ペーシングパルスが送出される間隔は、好ましくは、LV壁加速度データの評価に基づいて決定される。
【0038】
したがって、入力信号処理回路108はさらに、LV壁加速度センサ信号を、受け取り、増幅し、フィルタリングし、平均し、デジタル化し、又は、その他の方法で処理する、信号処理回路機構を含む。さらなる加速度又は他の壁運動センサ、たとえば、RV壁運動センサが、関連するリード線システムに含まれる場合、さらなる壁運動信号処理回路機構が、必要に応じて設けられてもよい。加速度信号処理回路機構は、さらに、最大及び最小ピーク振幅、傾斜、積分などの1つ又は複数の加速度信号特性、又は、加速度の指標として使用される場合がある、他の時間又は周波数ドメイン信号特性の検出及び/又は決定のために設けられてもよい。LV側壁加速度センサ信号からの加速度データは、最適なLV加速度を生成するペーシング間隔を識別するために実施されるアルゴリズムで使用するために、LV MOTION信号線を介して制御及びタイミングシステム102に利用可能にされる。RV壁運動センサが存在する場合、さらなるRV MOTION信号線が、RV壁運動信号データを制御及びタイミングシステム102に提供する。
【0039】
図3は、患者の心臓に結合した代替の心外膜リード線システムを示す。心外膜リード線は、長期継続の埋め込み可能なペーシングシステムか、一時的な外部ペーシングシステムのいずれかと共に使用されてもよい。図示する実施形態では、RV心外膜リード線80は、右心室におけるペーシング及び検知のために、活性固定電極82がRV心外膜組織と接触するように位置決めされるように、RVの心尖部の近くで活性固定電極82によって固定されているのが示される。RV心外膜リード線80は、オプションで、RV先端領域の運動すなわち加速度を検出するためのRV壁運動センサ84を装備してもよい。左心室におけるペーシング及び検知のために、活性固定電極72が、LV心外膜組織と接触するように位置決めされるように、LV心外膜リード線70がLV自由壁内に活性固定電極72によって固定されているのが示される。LV心外膜リード線70は、LV自由壁の加速度を検出する加速度センサ74を装備する。心外膜リード線システムは、さらに、心外膜RA及び/又はLAリード線を含んでもよい。心外膜リード線及び経静脈的心内膜リード線の種々の組み合わせもまた、2心室又は多腔心臓刺激システムと共に使用することが可能である。
【0040】
図3では、外部の一時的心臓ペーシングデバイス90に結合した、LV心外膜リード線70及びRV心外膜リード線80が示される。外部ペーシングデバイス90は、好ましくは、LV及びRVペース/センス電極72及び82へのペーシングパルスの送出を制御するために、ファームウェア及びプログラム可能なソフトウェアを記憶し、実行するための、関連するRAM及びROMを有するマイクロプロセッサ96を含むマイクロプロセッサ制御式デバイスである。外部デバイス90は、LV心外膜リード線本体76及びRV心外膜リード線本体86に含まれる導体を介してLV及びRVペース/センス電極72及び82に対して信号を受け取り、電位パルスを送出する。EGM信号、LV側壁加速度信号、及び、オプションで、RV壁運動信号は、入力信号処理回路機構94への入力として受け取られる。ペーシングインパルスは、以下でより詳細に説明されるように、LV加速度センサ74から受け取られる信号に基づいて決定される間隔で、検知されたEGM信号に基づいて、必要に応じて出力回路機構92によって送出される。LV加速度センサ及びオプションでRV壁運動センサを含む、図3に示すような心外膜リード線システムは、代わりに、先に説明し、図1A及び図2に示した多腔システムなどの埋め込み可能ペーシングシステムと共に使用されてもよいことが認識される。
【0041】
図3の外部デバイス90及び図1A、図1B、及び図2の埋め込み可能デバイス14は、検知/監視能力とペーシング送出能力の両方を提供するために示される。所望である場合、一定のデバイスの特徴が使用可能にされるか、又は、使用不能にされてもよい。たとえば、ペーシング治療を送出することなく、LV側壁加速度を監視することが望まれる場合がある。したがって、加速度センサ信号データは、後の解析及び臨床医による見直しのために、埋め込み可能デバイス又は外部デバイスによって、受け取られ、処理され、記憶されてもよい。
【0042】
図4は、LV側壁加速度を検知することに基づいて心臓収縮性を監視する方法の概要を提供するフローチャートである。監視は、先に説明した加速度センサを備えたLVリード線と関連する埋め込み式デバイス又は外部デバイスを使用して、短期的又は長期継続的に実施されてもよい。監視は、診断、予後、又は治療評価のために実施されてもよい。したがって、監視は、医療治療又はデバイスが送出した治療の後に続く薬剤注入中に術後的に、又は、患者の状態についての通院での監視又は治療の最適化及び評価のために長期継続的に実施されてもよい。
【0043】
診断と治療の両方の適用について、左心室収縮性の評価が重要である。そのため、本発明の態様は、治療の最適化又は評価があるか、又は、それがない状態で、心臓監視のために採用されてもよいことが認識される。したがって、図4で要約される方法200は、LV壁加速度信号に基づいて心臓収縮性の指標を導出し、記憶することによって、LV収縮性を監視するための、図1A、図1B、及び図3に示すデバイスなどの埋め込み可能デバイス又は外部デバイスにおいて実施されてもよい。こうしたデバイスの治療送出機能は、選択的に使用不能になってもよく、又は、使用可能な場合、LV加速度に基づく治療最適化が、選択的に、使用可能になるか、又は、監視機能のみが使用可能になるように使用不能になってもよい。方法200は、代わりに、治療送出能力を含まないが、加速度センサを備えたLVリード線と連携して 、LV加速度データを処理し、記憶することが可能な内部デバイス又は外部デバイスにおいて実施されてもよい。
【0044】
監視は、連続して、定期的に、又はトリガによって実施されてもよい。たとえば、LV機能は、1時間ごとに、1日ごとに、1週間ごとに、又はその他の期間でなど、定期的に評価されてもよい。さらに、又は、代わりに、LV機能は、手動又は自動トリガであってもよいトリガごとに評価されてもよい。自動トリガは、特定の心拍数範囲、活動、又は他の条件などの、LV機能評価がその間に望まれる所定の条件を検出するとすぐに発生するように設計されてもよい。
【0045】
一実施形態では、LV加速度は、連続して監視され、LV加速度データの記憶は、限定はしないが、心拍数、活動、又はLV加速度に関係する条件などの、所定のデータ記憶条件を検出するとすぐにトリガされる。たとえば、LV加速度は、連続して検知されてもよく、LV加速度パラメータが、閾値を交差するか、又は、他の所定のデータ記憶基準を満たす場合、LV加速度パラメータ(複数可)が記憶される。
【0046】
LV加速度検知及び/又はデータ記憶についての手動トリガは、たとえば、患者が兆候を感じる時に、臨床医又は患者によって送られてもよい。生理的データの埋め込み可能デバイスへの記憶を手動でトリガする方法は、Klein他に発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第5,987,352号に全体が記載される。
【0047】
方法200は、定期的、連続的、又は、トリガ式動作モードに従って使用可能になるステップ205にて開始する。ステップ210にて、データ収集窓が設定される。LV加速度データは、好ましくは、心室収縮期中、最も好ましくは、等容性収縮相中に収集される。一実施形態では、データ収集窓は、検知されたR波又は心室ペーシングパルスによってトリガされる固定時間間隔である。データ収集窓は、R波又は心室ペーシングパルスの検知直後、又は、検知後の一定間隔に続いて始まり、好ましくは、等容性収縮相を通して、通常継続時間が30〜180ms(ミリ秒)程度延びる。
【0048】
図5は、1心周期にわたって取得したサンプルLV側壁加速度データ及び同時血行力学的データのプロット図である。一番上の線は、比較的振幅の大きな通常のQRS群とそれに続く比較的小さな振幅のT波を示す心室EGM信号を表す。QRS群は、心筋組織の電気的活性化を表し、脱分極及びその後の心筋線維の収縮を引き起こす。2番目の線は、LV自由壁加速度を測定するために設置された加速度計から取得される左心室加速度(LVA)信号を表す。LVAは、QRS群の直後にピークに達しているのが見られる。グラフ上で示すS1相は、心室収縮期の等容性収縮相に対応し、収縮期の始めに発生する第1心音(S1)に関連する。本明細書で「S1相」とも呼ばれる、この等容性相中の左心室自由壁加速度は一定ではない。示す例では、LVAは、S1相中に、2つのピーク、A1及びA2を形成する。条件の変動によって、等容性収縮相中に、1つ、2つ、3つ、又は、おそらくそれ以上のLVAピークが生じる場合がある。4番目の線上で示すように、等容性収縮中に、左心圧(LVP)の大きな増加が生じる。LVPの1次微分(dP/dt)である3番目の線でも示すように、等容性相中に、LVPが急速に上昇する。LVPがピークに達すると、大動脈弁が開き、収縮期駆出相及び一番下の線で示す大動脈流(Ao FLOW)の関連した増加が始まる。LVPが降下した後、大動脈弁が閉じる。第2心音S2を伴う、この相の間に、LVA信号は、通常S1ピークより振幅が小さい、1つ又は複数のピークを示す。本発明の好ましい実施形態では、LVA信号は、等容性のS1相の、少なくとも一部の間、又は、その全ての間で取得される。
【0049】
したがって、図4では、データ収集窓が、ほぼ始めから等容性収縮相の終わりまで延びるようにステップ210にて設定されたデータ収集窓の間に、方法200は、ステップ215にてLV側壁加速度信号を検知する。好ましくは、加速度センサは、先に説明したように、LV自由壁内に、又は、LV自由壁に近接して埋め込まれる。より好ましくは、LV加速度信号は、加速度計が、左心室自由壁の中間−側部、中間−基底、又は基底セグメントの上に位置するように位置決めされた冠状静脈リード線又は心外膜リード線上に配置される加速度計から取得される。ステップ215にて、いくつかの心周期にわたって、好ましくは、少なくとも1呼吸サイクルにわたって、LV側壁加速度信号が取得され、その結果、ステップ220にて、信号平均化が実施され、呼吸関連の、又は、他のノイズが最小にされる能性がある。
【0050】
ステップ225にて、S1相中に発生する第1LVAピークの、本明細書で「ピーク−ピーク差(ピーク間差)」と呼ばれる、最大振幅又は総偏位(excursion)が決定される。この最大振幅又はピーク−ピーク差は、心臓収縮性の測度として記憶される。他の検知された生理的データ及び/又は日時ラベル及び/又は他のパラメータ情報などのLVAデータと共に、付加的な情報が記憶されてもよい。方法200が外部システムによって実行される時、LVAデータは、リアルタイムに表示されるか、又は、監視エピソードの後に続いて、記憶され、提示されてもよい。方法が埋め込み式デバイスによって実行される時、LVAデータは、表示及び医師による見直しのため、後で外部デバイスへアップリンクするために、記憶されてもよい。
【0051】
先に示したように、LV側壁加速度は、治療最適化のために監視されてもよい。図6は、左心室側壁加速度に基づいて治療を最適化する方法に含まれるステップを要約するフローチャートである。方法300は、治療が、通常設定又は用量で送出されるか、又は、施されるステップ305にて開始する。治療は、心臓ペーシング又は再同期化治療又は他の心臓調律管理治療、心筋虚血を処置する治療、医療治療、又は心臓収縮性を改善する任意の他の知られている治療であってもよい。説明されるように、左心室自由壁加速度の測定値に基づいて、心臓収縮性を最大にするために治療が送出されるべき最適設定又は用量を決定するために、反復手法が実施されてもよい。
【0052】
施される治療のタイプに応じて、治療の変化に対する血行力学的反応が、LVAを監視する前に安定化することを可能にするための、オプションの安定化期間が、ステップ310にて、設けられてもよい。安定化期間は、送出される治療に応じて、数秒から数分、数時間、又は、さらに数日の範囲であってもよい。
【0053】
ステップ315にて、好ましくは、先に説明した等容性収縮相にわたって延びる、データ収集窓が設定される。ステップ320にて、LVA信号は、所定の時間間隔中の各心周期にわたって、又は、所定の数の心周期に、データ収集窓の間にサンプリングされる。代替の一実施形態では、LVA信号は、所定の時間間隔又は所定の数の心周期の間に連続して取得され、その後、等容性収縮相に関連する、より詳細には、等容性収縮中の第1加速度ピークに関連する成分を分離するために処理されてもよい。時間間隔又は心周期の数は、好ましくは、呼吸によるLVA測定値の変動をなくすために、呼吸サイクルにわたるLVA信号の平均が実施されるように、少なくとも1呼吸サイクルにわたって延びる。一実施形態では、LVAデータ取得の開始及び停止は、呼吸サイクルを検知することによってトリガされてもよい。呼吸は、インピーダンス測定又は当該技術分野で知られている他の方法に基づいて検出されてもよい。
【0054】
決定ステップ325にて、データ取得間隔中における安定した心拍数の確認が実施される。異所性心拍動又は他の不規則の存在などの、心拍数の不安定性は、特異なLVデータを生じるであろう。したがって、心拍数は、好ましくは、指定された範囲内に留まる。一実施形態では、心拍数の安定性は、データ取得期間の間に心周期長の平均及び標準偏差を求めることによって確認されてもよい。心周期長は、心室ペーシングパルス及び任意の検知されたR波を含む連続する心室事象間の間隔として決定される。平均心周期長又はその標準偏差が、規定の範囲外である場合、データは信頼性がないと考えられる。信頼性のあるデータが、最新の治療設定について収集されるまで、データ取得が、ステップ320に戻ることによって反復されてもよい。
【0055】
ステップ330にて、呼吸関連の又は他のノイズの影響を最小にするために、信号平均化が実施される。データ収集間隔にわたって各心周期中に取得される信号は、全体の平均LVA信号を取得するために平均される。ステップ335にて、試験治療設定における心臓収縮性の指標として平均されたLVA信号から、1つ又は複数の信号特徴部が決定され、対応する試験設定情報と共にデバイスメモリに記憶される。先に説明したように、等容性収縮相(S1)中に発生する第1加速度ピークの最大振幅又はピーク−ピーク差は、好ましくは、ステップ335にて決定される。
【0056】
全ての治療試験設定がまだ適用されていない、と決定ステップ340にて判断される場合、方法300は、ステップ345にて、次の試験設定に対して治療を調整し、オプションのステップ310に戻り、ステップ315〜335を繰り返して新しい試験設定について心臓収縮性のLVA指標を決定する。全ての試験設定が適用されてしまうと、ステップ350にて、記憶されたLVAデータに基づいて最適な設定が識別される。一実施形態では、最適な設定は、等容性収縮中の第1LVAピークの最大ピーク振幅に対応する。
【0057】
本発明に含まれる方法は、心臓再同期化治療中の心室間(V−V)ペーシング間隔を最適化するのに特に好適である。本発明の発明者が見出したことは、等容性収縮中のLVA信号の第1ピークの振幅は、心房−2心室ペーシング中のV−V間隔に依存し、心房−心室(A−V)間隔に依存しないことである。
【0058】
図7は、様々なA−V及びV−Vにおいて心房−2心室ペーシング中に取得したLVA信号を表示するグラフのセットである。各欄が固定V−V間隔を示す状態で、140、170、及び200msのA−V間隔を試験した結果が、上部から底部へ移動するグラフで示される。20ms(−20ms)だけ左が先行する(left-led)ペーシング、左右心室の同時ペーシング(0ms)、及び20ms(+20ms)だけ右が先行する(right-led)ペーシングのV−V間隔を試験した結果は、各行が固定A−V間隔を示す状態で、左から右へ移動するグラフで示される。LVA信号は、様々なV−V間隔(左から右へ移動する)について振幅及び形態が変化すると考えられる。LVA信号は、様々なA−V間隔(上部から底部へ移動する)について変わらないと考えられる。等容性収縮相中に発生する第1LVAピークの最大振幅は、各グラフでA1として示される。
【0059】
図8は、様々なA−V及びV−V間隔における心房−2心室ペーシング中のLVA信号から決定された最大振幅(A1)のプロット図である。A1は、3つの異なるV−V間隔(VVI)についてA−V間隔に対してプロットされる。所与のV−V間隔について、A1振幅は、A−V間隔の変動によって変わらない。所与のA−V間隔について、A1振幅は、明らかにV−V間隔に依存する。そのため、2心室ペーシング中のV−V間隔は、等容性収縮中の第1LVA信号ピークに基づいて、A−V間隔と無関係に最適化される可能性がある。示されるサンプルデータセットについて、20ms(取り決めにより−20ms)だけ左が先行するV−V間隔は、最大LVAを提供する。
【0060】
第1ピークの最大振幅以外の他の信号特性は、左心室収縮性と関係し、心臓再同期化治療中にA−V間隔と無関係にV−V間隔を最適化するため、又は、他の治療を最適化するために使用されてもよい。たとえば、ピーク傾斜、積分又は他の信号特徴又は参照点が、等容性収縮中の可変LVA信号から導出され、患者監視又は治療最適化手法のための心臓収縮性の指標として使用されてもよい。
【0061】
図9は、左心室加速度に基づいて最適V−V間隔を決定する方法に含まれるステップを要約するフローチャートである。ステップ405にて、A−V間隔は、以前に決定された最適設定又は基準設定にプログラムされる。A−V間隔最適化手法は、V−V間隔を最適化する前に実施され、最適A−V間隔設定が決定される。A−V間隔は、当該技術分野で知られている方法に基づいて最適化されてもよい。たとえば、A−V間隔は、エコー検査の評価に基づいて心室充満を打ち切らない最も短いA−V間隔として選択されてもよい。代わりに、最適A−V間隔は、RV心尖部に設置された加速度計によって検出される、RV先端運動に基づいて選択されてもよい。A−V間隔は、代わりに、ステップ405にて、基準設定に設定され、V−V間隔を最適化した後、A−V間隔最適化が実施されてもよい。
【0062】
ステップ410にて、V−V間隔が試験間隔に設定される。試験間隔の範囲は、予め決められ、ランダムな、全体が増加する、又は、全体が減少する方式で送出されてもよい。試験間隔の範囲は、左心室の前に右心室がペーシングされることをもたらす間隔、右心室の前に左心室がペーシングされることをもたらす間隔、及び、右と左の心室の同時ペーシングをもたらす間隔を含んでもよい。例示的な試験間隔のセットは、左心室ペーシング前20ms及び40msでの右心室ペーシング、左と右の心室の同時ペーシング(0msのV−V間隔)、及び右心室ペーシング前20ms及び40msでの左心室ペーシングを含む。
【0063】
方法400は、先に説明した治療を最適化する反復手法と同じ方法で、最適V−V間隔の決定に進む。ステップ415にて、データ収集窓が設定され、各心周期に適用されたデータ収集窓の間で、ステップ420にて、所定の時間間隔又は所定の数の心周期の間、LVAデータが収集される。ステップ425にて、安定した心拍数を確認した後に、ステップ430にて、信号平均化が実施され、ステップ435にて、等容性収縮相中における第1加速度ピーク(A1)の平均ピーク振幅又は平均ピーク−ピーク差が決定されることが可能になる。A1は、最新の試験設定について記憶され、方法400は、ステップ410に戻って、全ての試験V−V間隔が適用されたと、決定ステップ434にて判断されるまで、次の試験設定が適用される。ステップ450にて、最適V−V間隔は、最大A1振幅に対応する間隔として識別される。
【0064】
方法400が外部ペーシングシステムによって実行される時、LVAデータは、リアルタイム表示に利用可能であるか、又は、推奨されるV−V間隔と共に、最適化手法に続いて記憶され、提示される。担当の臨床医は、それに応じて、V−V間隔をプログラムするか、又は、外部システムは、V−V間隔を最適設定に自動的に調整してもよい。最適V−V間隔を識別する方法400が、埋め込み式デバイスによって実行される時、LVAデータは、表示及び医師による見直しのため、外部デバイスへ後でアップリンクするために処理され、記憶されてもよい。埋め込み式デバイスは、識別した最適間隔に基づいてV−V間隔を自動的に調整してもよい。
【0065】
図10は、心臓再同期化治療中にA−V及びV−V間隔を最適化する方法の概要を提供する。ステップ505にて、A−V間隔は、基準設定にプログラムされる。ステップ510にて、最適V−V間隔は、図9の方法400を使用して識別される。ステップ515にて、V−V間隔は、最適設定に自動又は手動でプログラムされる。V−V間隔を最適設定に維持した状態で、ステップ520にて、A−V最適化手法が実施される。最適A−V間隔は、先に説明したように、当該技術分野で知られている方法に基づいて識別される。ステップ525にて、A−V間隔は、最適設定に自動又は手動でプログラムされる。V−V間隔が、本発明に含まれる方法に従って、A−V間隔に無関係に、最初に最適化される可能性があるため、多腔心臓ペーシング中のA−V及びV−V間隔の最適化は、1つのパラメータの変調が他のパラメータに与える可能性がある作用によって制限されないか、又は、複雑にならない、簡単で論理的な方法で実施される可能性がある。
【0066】
そのため、左心室心臓収縮性を監視し、且つ加速度センサを備えた左心室リード線を使用して測定した左心室側壁加速度に基づいて心臓治療を最適化する方法及び装置が説明された。本明細書で説明する方法は、有利には、埋め込み可能なデバイス、又は、外部のデバイスに関連する長期継続又は短期適用を含む多くの心臓監視又は治療モダリティにおいて適用されてもよい。
【0067】
当該技術分野で知られているように、先に説明したトランスデューサの他に、他のタイプのトランスデューサが使用されてもよい。ただし、一般に、こうしたトランスデューサが、密封され、(少なくとも、外部表面上が)ほぼ生体適合性材料で作製され、所与の適用について適切な大きさに作られる場合に限る。適切な寸法に関して、経静脈的配備を目的とするトランスデューサは、カテーテル又はオーバザワイヤ送出が可能でなければならない。そのため、半径方向寸法は、約11フレンチ未満、好ましくは、約8フレンチ未満程度であるべきである。同様に、トランスデューサは、安全に、静脈系を航行し、冠状静脈洞を通過し、冠状静脈洞から分岐する血管(たとえば、大心静脈など)に入ることができるように、多少柔軟性があるが、長手方向寸法が長過ぎてはならない。これらの寸法は、側壁に隣接して機械的に結合するようになっている固着機構によって胸部の一部を通して(たとえば、開胸術によって)配備することを目的とするトランスデューサについては軽減される可能性がある。2つの隣接場所は心外膜及び心膜を含む。寸法は、心外膜がトランスデューサを収容する場合に、大幅に軽減され、心膜の一部に対しては、少し軽減される場合がある。よく知られているように、心膜は、心臓並びに大動脈及び他の大きな血管の根元を囲む、血清流体で満たされた膜嚢(membranous sac)である。心外膜適用のための適切な固定装置の一例は、心外膜の表面にねじ込まれる、らせん部が先端についたリード線である。心膜固定のために、らせん部が先端についたリード線などの活性固定部材に加えて、密封部材(たとえば、心膜嚢の両側の圧縮性ガスケット又は対抗部材)が使用されてもよい。
【0068】
センサ及びトランスデューサに関連する技術分野で同様に知られているように、加速度計は、2つのトランスデューサ、1次トランスデューサ(通常、加速度を変位に変換する単一自由度振動マス)及び(サイズモ系マスの(seismic mass))変位を電気信号に変換する2次トランスデューサとして説明され得る。ほとんどの加速度計は、2次トランスデューサとして圧電素子を使用する。圧電素子は、静的(たとえば、一定加速度)状況下では信号を提供することができないが、圧電デバイスは、歪を受けると、歪に比例した電圧を出力する。加速度計の重要な特性は、加速度の範囲、周波数応答、横感度(非作動方向の運動に対する感度)、搭載誤差、温度及び音響ノイズ感度、及びマスを含む。
【0069】
加速度計の内部機構を説明する、1つのタイプの1次トランスデューサは、ばね保持式サイズモ系マスを含む。ほとんどの加速度計では、加速度は、ばねによって抑制される被制動(damped)サイズモ系マスを圧迫し、その結果、被制動サイズモ系マスは、単一軸に沿ってケーシングに対して移動する。2次トランスデューサは、その後、サイズモ系マスに関連する変位及び/又は力に応答する。マスの変位及びばねの伸長は、振動が自由振動以下である時のみ加速度に比例する。別の加速度計のタイプは、1次トランスデューサとして2重片持ち梁を使用し、2重片持ち梁は、ばね−マス−ダッシュポットとしてモデル化することができ、サイズモ系マス1次トランスデューサのみが説明されるであろう。
【0070】
機械的変位から電気信号を生成する方法を説明する、2次トランスデューサのタイプは、圧電素子、電位差素子、磁気抵抗素子、サーボ素子、歪ゲージ素子、容量素子、振動素子などを含む。これらは、初心者のための導入部として簡潔に説明される。
【0071】
圧電トランスデューサは、振動検知加速度計において使用されることが多く、ショック検知デバイスにおいて使用されることもある。圧電結晶(たとえば、石英又はセラミック)は、或る加速度下でサイズモ系マスによって力が加えられると電荷を生成する。石英板(2枚以上)は、結晶に加えられた正又は負の力の変化が、電荷の変化をもたらすように予め装填される。圧電加速度計の感度は、他のタイプの加速度計に比べて比較的低いが、圧電加速度計は、最も高い範囲(100,000gまで)と周波数応答(20kHzを超える)を有する。
【0072】
電位差加速度計は、電位差計に沿って移動する、ワイパ腕に機械的に連結した、ばね−マスシステムの変位を利用する。システムは、気体、粘性、磁気流体、又は磁気制動を使用して、ワイパ腕の接触抵抗によって生じる音響ノイズを最小にする可能性がある。電位差加速度計は、通常、ばねの剛性に応じてゼロ〜20−60Hzの周波数範囲を有し、高レベル出力信号を有する。電位差加速度計はまた、ほとんどの他の加速度計より低い、通常、15〜30Hzの周波数応答を有する。
【0073】
磁気抵抗加速度計は、サイズモ系マスの運動に比例する出力電圧を生成する線形可変差動トランスデューサと同様のインダクタンスブリッジを使用する。インダクタンス−ブリッジ加速度計におけるサイズモ系マスの変位によって、2つのコイルのインダクタンスが反対方向へ変わる。コイルは、インダクタンスブリッジの2つの腕として働き、抵抗は他の2つの腕として働く。ブリッジのAC出力電圧は加えられる加速度と共に変わる。AC信号をDCに変換するために、復調器が使用される可能性がある。AC信号の周波数が、加速度の周波数よりかなり大きい限りにおいて、DC電源が使用される時に必要とされるAC電流を生成するのに発振器が使用される可能性がある。
【0074】
サーボ加速度計では、加速度によって、サイズモ系マス「振り子」が運動する。運動が位置検知デバイスによって検出されると、閉ループサーボ系の誤差信号として働く信号が生成される。定常状態成分を除去するために、信号が復調され、増幅された後、信号は、受動減衰ネットワークを通過し、マスの回転軸に位置するトルク伝達コイルに印加される。トルク伝達コイルによって生成されたトルクは、印加された電流に比例し、加速度によりサイズモ系マスに作用するトルクに対抗し、さらなるマスの運動を妨げる。したがって、トルク伝達コイルを通る電流は加速度に比例する。このデバイスはまた、サイズモ系マスが釣り合いを保つ限り、角加速度を測定するのに使用される可能性がある。サーボ加速度計は、比較的高いコストで、高精度及び高レベル出力を提供し、非常に狭い測定範囲(1g未満)について使用される可能性がある。
【0075】
「圧電抵抗型」加速度計と呼ばれることが多い、歪ゲージ加速度計は、ホイーストンブリッジの腕として働く歪ゲージを使用して機械的歪をDC出力電圧に変換する。ゲージは、ばねか、サイズモ系マスと静止フレームの間のいずれかに取り付けられる。歪ゲージ巻き線は、ばね作用に寄与し、応力が加えられ(すなわち、張力が2つ、圧縮が2つ)、加えられた加速度に比例するDC出力電圧が、ブリッジの4つの腕によって生成される。
【0076】
これらの加速度計は、半導体ゲージ及びより硬いばねによって感度を上げられる可能性があり、より高い周波数応答及び出力信号振幅が得られる。他のタイプの加速度計と違って、歪ゲージ加速度計は、定常状態の加速度に応答する。
【0077】
容量性加速度計では、加速度の変化によって、容量性加速度計の可動電極と固定電極間の空間の変化が生じる。可動電極は、通常、仕切板支持式(diaphragm supported)サイズモ系マス又は撓み支持式(flexure-supported)円板形状サイズモ系マスである。素子は、発振回路のLC又はRC部分のコンデンサとして働く可能性がある。結果として得られる出力周波数は、加えられる加速度に比例する。
【0078】
振動素子加速度計では、サイズモ系マスの非常に小さな変位が、永続的な磁界内のタングステンワイヤの張力を変える。磁界の存在下でワイヤを通る電流によって、ワイヤがその共振周波数で(ギターの弦のように)振動する。回路機構は、その後、加えられた加速度に比例する周波数変調(中心周波数からの偏差)を出力する。こうしたデバイスの精度は高いが、デバイスは、温度変動に非常に敏感であり、比較的費用がかかる。
【0079】
したがって、本発明は、特定の実施形態の文脈で本明細書で説明されたが、本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態の多くの変形が採用されてもよいことが認識されることを、当業者は認識するであろう。したがって、本明細書で提供される説明は、添付特許請求の範囲に関して、制限するのではなく、例示的であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1A】本発明を実施することができる、例示的な埋め込み可能な多腔心臓ペースメーカの図である。
【図1B】経静脈的心内膜リード線、及び、加速度センサを備えた付加的な左心室心外膜リード線を介して患者の心臓に結合する例示的な埋め込み可能な多腔心臓ペースメーカの図である。
【図2】再同期化治療の送出を提供し、左心室加速度信号入力を処理することが可能な例示的な多腔埋め込み可能パルス発生器のブロック略図である。
【図3】患者の心臓に結合した代替の心外膜リード線システムを示す図である。
【図4】LV側壁加速度を検知することに基づいて心臓収縮性を監視する方法の概要を提供するフローチャートである。
【図5】1心周期にわたって取得したサンプルLV側壁加速度データ及び同時血行力学的データのプロット図である。
【図6】左心室側壁加速度に基づいて治療を最適化する方法に含まれるステップを要約するフローチャートである。
【図7】様々なA−V及びV−V間隔において心房−2心室ペーシング中に取得した左心室側壁加速度信号を表示するグラフのセットである。
【図8】様々なA−V及びV−V間隔における心房−2心室ペーシング中の左心室加速度信号から決定された最大振幅(A1)のプロット図である。
【図9】左心室加速度に基づいて最適V−V間隔を決定する方法に含まれるステップを要約するフローチャートである。
【図10】心臓再同期化治療中にA−V及びV−V間隔を最適化する方法の概要を提供する図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、心機能不全を監視又は処置する埋め込み可能医療デバイスに関し、より詳細には、心臓の収縮性を監視し、左心室自由壁の加速度に従って治療を最適化するデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
左心室機能の評価は、診断と治療適用の両方にとって重要である。心臓が正常に機能する間、心房及び心室は、心周期の収縮期(収縮)相と拡張期(弛緩)相の間に一貫した時間依存の関係を観測する。病理学的状況に伴い、又は、続く心臓関連の外科処置の後の心臓機能不全の間に、これらの時間依存の機械的関係が変化することが多い。心筋の弱化の作用と結合すると、この変化は、収縮の強さを生成する心室の能力を低下させ、血行力学的機能不全をもたらす。
【0003】
冠状動脈バイパスグラフト(CABG)手術に続く心室同期異常(dyssynchrony)は、比較的しばしば出くわす問題であり、術後の一時的なペーシングを必要とする。心房−2心室ペーシング(atrio-biventricular pacing)は、こうした処置に続く術後の血行力学を改善することがわかった。
【0004】
長期継続の心臓再同期化治療(CRT)は、うっ血性心不全を病む患者の心臓機能の指標を改善することを臨床的に立証した。心臓ペーシングが、一方又は両方の心室、或いは、一方又は両方の心房を含む複数の心腔に適用されて、心腔の協調が改善され、次に、心拍出量及びポンプ効率が改善されると考えられている。再同期化治療を受ける患者の臨床的追跡調査は、心臓機能、左心室容積、及び壁運動の血行力学的測度の改善を示した。しかしながら、全ての患者が心臓再同期化治療に好都合に反応するわけではない。医師は、利益を得ることになる患者を選択すること、及び、心腔収縮を再同期させるために適用される最適ペーシング間隔を選択することを要求される。
【0005】
心房−心室(A−V)及び心室間(V−V)ペーシング間隔の選択は、最良の短時間の(acute)血行力学的反応をもたらす設定を決定するために実施される心エコー検査による研究に基づくことが多い。しかしながら、無侵襲監視方法を使用して、著しい血行力学的変化が個々の患者において、常に短時間に観測可能であるとは限らない。したがって、パラメータの選択は、心室充満の変更又は妨害を回避することに基づく場合がある。本発明者が理解している、心臓再同期化治療を評価するために行われるMIRACLE臨床試験では、心エコー検査によって観測される、心房の寄与を切り捨てることなく、心室充満を最大にするようにA−V間隔を短くすることによって、A−V間隔が、患者において個々に最適化された。
【0006】
心エコー検査手法は、CRTを最適化する開ループ方法のみを提供する。ペーシング間隔の様々な組み合わせの血行力学的作用を評価した後、医師は、所望のパラメータを手作業で選択し、プログラムし、患者のデバイスの最適設定が、次の再最適化が起こるまで変わらないままであると仮定しなければならない。多腔ペーシング中にペーシング間隔を選択する自動化システムが提案されている。右心臓弁閉鎖又は右心室収縮のタイミングを決定し、左心室ペースパルスを送出するタイミングを調整するための、インピーダンス検知を含む4腔ペーシングシステムは、Bakels他に発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第6,223,082号に全体が記載される。埋め込み可能な多腔心臓刺激デバイスにおいて、患者に最適な血行力学的利益を提供するために選択されるプログラム可能な結合間隔は、Levineに発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第6,473,645号に全体が記載される。
【0007】
心筋収縮率及び収縮の強さを評価するために、ドプラ組織画像化が臨床的に使用されてきた。組織ドプラ画像化から導出される、等容性収縮中の心筋加速度は、指標すなわち右心室収縮性として調査されている。心筋加速度は、等容性収縮中は一定であると推定された。ドプラ組織画像化はまた、どの患者が心臓再同期化治療から利益を受ける可能性があるかを予想するために、中隔壁運動と側壁運動との間の協調を調査するのに使用されてきた。証拠が示唆することは、患者の反応が、治療の前後での心室同期性の程度に依存することである。ドプラ組織画像化研究が示したことは、左心室の中間から中間−基底セグメントが、心臓再同期化治療の後の短縮において最も大きな改善を示すことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、左心室の壁運動の検出及び監視は、心臓再同期化治療を最適化する際に有用であるであろう。心筋収縮性は、心室機能の血行力学的測度ほどには、前負荷依存でなく、自律的に敏感でもない。したがって、心筋収縮性に基づく心臓再同期化治療の最適化は、自律的影響又は前負荷の変更下で急激に変化すると思われる血行力学的パラメータに基づく最適化に比べて一過性でないことが期待される。しかしながら、加速度計によって直接測定される時、心筋加速度は等容性収縮中に一定ではない。したがって、心臓の収縮性を評価し、CRTを最適化する時に使用するために、特に左心室において心筋加速度を監視する方法が必要とされる。
【0009】
右心室を基準にして使用するための、心壁運動を監視する埋め込み可能センサが、説明され、実施されてきた。心臓マス(heart mass)のモーメント又は速度を監視することによる、心臓機能の監視のために心臓マスに埋め込まれたセンサは、Vallana他に発行された米国特許第5,454,838号に全体が開示される。カテーテル先端又は先端に近接して加速度トランスデューサを有する、心臓の収縮性を監視するための心室内挿入用のカテーテルは、Cunninghamに発行された米国特許第6,077,236号に全体が開示される。加速度計ベースの心壁運動センサを組み込む埋め込み可能リード線は、Moberg他に発行された米国特許第5,628,777号に全体が開示される。自然な心臓加速度を検知するデバイスは、Plicchi他に発行された米国特許第5,693,075号に全体が開示される。心臓収縮による曲げモーメント(bending)を受ける位置において配設された張力測定要素を含む心筋張力測定のためのシステムは、Ferek-Petric他に発行された米国特許第5,261,418号に全体が開示される。先に引用した特許は全て、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0010】
A−V間隔を最適化するために右心室心尖部のピーク心内膜壁運動を検出することは、臨床的に確認されている。心臓壁運動センサ信号を使用して心拍数及びAV間隔について血行力学的に最適な値を提供するシステム及び方法は、Bornzin他に発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第5,549,650号に全体が記載される。たとえば、心臓加速度を含む、心臓性能パラメータの最適化をもたらすように、ペーシングモードと1つ又は複数のペーシングサイクルパラメータの両方を自動的に最適化するように設計された心臓刺激システムは、Tockman他に発行された米国特許第5,540,727号に全体が開示される。
【0011】
CRT中にA−V間隔とV−V間隔の両方を最適化することは時間がかかるプロセスであり得る。最適化が、前負荷依存の血行力学的指標に基づく時、1つの調整は、他についての最適な設定に影響を与える可能性がある。したがって、心筋の収縮性などの、心室機能の比較的前負荷に依存しない指標に基づいてV−V間隔を最適化し、それによってV−V間隔の最適化がA−V間隔の最適化とは無関係になるようにする方法を提供することが望ましい。
【0012】
左心室の心筋の収縮性を監視し、且つ心腔の同期化を、長期に継続して、又は、短期に改善するために送出される多腔又は2心室ペーシング中に、左心室収縮性の最大の改善を生じる、最適な心臓ペーシング間隔を選択するデバイス及び方法を提供する必要性が残っていることが、先の説明から明らかである。改善された左心室収縮性の指標は、心腔全体の同期性及び機能の改善を反映し、且つ一般に、心臓効率の正味の改善をもたらすことが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、左心室自由壁の加速度の検出に基づいて、左心室の機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法及び装置を提供する。一実施形態では、本発明は、埋め込み可能な多腔パルス発生器及び関連するリード線システムを含む心臓再同期化システムにおいて実現され、左心室冠状静脈洞リード線又は左心室心外膜リード線は、左心室の、本明細書で「側壁」とも呼ばれる、自由壁の加速度を検出するセンサを備える。代替の一実施形態では、一時的外部パルス発生器が、加速度センサを備えた左心室の一時的ペーシングリード線を含む一時的ペーシングリード線に結合される。
【0014】
好ましい一実施形態では、センサは加速度計であり、単軸、2軸、又は3軸加速度計であってもよい。左心室側壁の加速度に比例する信号を生成することが可能な他のタイプのセンサで置き換えることができるであろう。センサは、好ましくは、中間の、又は、中間−基底の左心室自由壁セグメントに、又は、それに近接して設置される。
【0015】
埋め込み可能な、又は、外部のシステムは、加速度センサ信号を受信し、処理して、等容性収縮中の左心室自由壁加速度(LVA)に基づいて心臓収縮性の指標を決定する。信号処理が実施されることによって、加速度信号が測定され、1つ又は複数の信号パラメータが心臓収縮性の指標として導出される。好ましい一実施形態では、等容性収縮相中に発生する第1加速度ピークの最大振幅が、心臓収縮性指標として決定される。心臓収縮性指標は、監視目的及び/又は診断目的で、他のパラメータデータ又は生理的データと共に記憶される可能性がある。
【0016】
自動化された、反復的な試験ルーチン中に、心臓治療は、心臓収縮性のLVA指標に基づいて最適化される。一実施形態では、CRTは、心室間(すなわち、心室−心室又は「V−V」)間隔を変化させ、且つ等容性収縮中のピークLVAを決定するアプリケーションを含む反復最適化法を実行することによって最適化される。等容性収縮中に発生する第1加速度ピークの最大振幅を生成するV−V間隔が、心臓再同期化治療を送出するために選択される。このV−V間隔は、最適な心室間同期性を生じ、長期の閉ループCRT制御を提供することが示された。心不全の患者に対してこうした最適なCRT制御を提供するために本発明が実施される場合、こうした患者のNYHAクラスが徐々に改善していくことができると考えられる(たとえば、NYHAクラスIVからNYHAクラスIII、又は、NYHAクラスIIへなど)。さらに、本発明は、いわゆる、「逆再モデル化」の作用を増大する場合があり、長期継続CRTに応答して、こうした心不全の患者についての、心臓の形状、心臓のサイズ、及び/又は、心臓機能などが、徐々に相当に改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
先に示したように、本発明は、等容性収縮相中に、心臓収縮性を監視し、且つ左心室自由壁加速度を監視することに基づいて心臓治療を最適化する方法及び装置を提供することを対象とする。特に、本発明は、心不全を処置するのに使用される長期継続再同期化治療中に、心室間ペーシング間隔を最適化するのに役立つ。本発明はまた、術後心室同期異常を処置するために適用される一時的ペーシング中に使用されるペーシングパラメータを選択する際に役立つ。したがって、本発明は、2腔又は多腔ペースメーカ及び関連するリード線のセットを含む埋め込み可能な心臓ペーシングシステムにおいて具体化されてもよい。代わりに、本発明は、関連する一時的ペーシングリード線を有する外部ペーシングデバイスを含む一時的ペーシングシステムにおいて具体化されてもよい。
【0018】
図1Aは、本発明を実施することができる、例示的な、埋め込み可能な多腔心臓ペースメーカ14を示す。多腔ペースメーカ14は、必要である場合に、1つ又は複数の心腔に対してペーシングパルスを送出することによって、心室同期性を回復し、心臓活性化シーケンスを制御することを可能にする。ペースメーカ14は、3本のリード線16、32、及び52によって、患者の心臓10とつながっているものとして示される。心臓10は、上部心腔すなわち右心房(RA)と左心房(LA)、及び、下部心腔すなわち右心室(RV)と左心室(LV)、及び、右心房内の開口から、横方向に、心房の周囲へ延びて、大心臓静脈48を形成し、中心静脈(inferior cardiac veins)を形成するように分岐する冠状静脈洞(CS)を示す部分断面図で示される。
【0019】
本明細書で「埋め込み可能パルス発生器」又は「IPG」とも呼ばれるペースメーカ14は、皮膚と肋骨の間の患者の体内に皮下的に埋め込まれる。3本の経静脈的心内膜リード線16、32、及び52は、それぞれ、IPG14をRA、RV、及びLVに接続する。各リード線は、少なくとも1つの電気導体及びペース/センス電極を有する。遠隔不関筐体(remote indifferent can)電極20は、IPG14のハウジングの外部表面の一部として形成される。ペース/センス電極及び遠隔不関筐体電極20は、ペーシング及び検知機能のために、多数の単極及び双極ペース/センス電極の組み合わせを提供するために選択的に採用される可能性がある。
【0020】
図示する双極心内膜RAリード線16は、静脈を通って心臓10のRA腔内に通され、RAリード線16の遠位端は、取り付け機構17によってRA壁に取り付けられる。双極心内膜RAリード線16は、インラインコネクタ13がIPGコネクタブロック12の双極穴に嵌合した状態で形成され、インラインコネクタ13は、リード線本体15内にあって、RAペーシングを達成し、RA電位図(EGM)信号を検知するために設けられた遠位先端RAペース/センス電極19及び近位リングRAペース/センス電極21に接続された、一対の電気絶縁した導体に結合する。
【0021】
双極心内膜RVリード線32は、RAを通ってRV内に通され、その近位リング及び先端RVペース/センス電極38及び40は、従来の遠位取り付け機構41によって心尖部の適所に固定される。RVリード線32は、インラインコネクタ34がIPGコネクタブロック12の双極穴内に嵌合した状態で形成され、インラインコネクタ34は、リード線本体36内にあって、RVペーシングを達成し、RV EGM信号を検知するために設けられた遠位先端RVペース/センス電極40及び近位リングRVペース/センス電極38に接続された、一対の電気絶縁した導体に結合する。RVリード線32は、オプションで、RV壁運動センサ60を含んでもよい。RV壁運動センサ60は、RV先端領域の運動すなわち加速度を検出するために、RV心尖部内か、又は、RV心尖部に近接して位置決めされてもよい。右心室内における加速度センサの埋め込みは、先に引用したPlicchi他に発行された米国特許第5,693,075号に全体が記載される。
【0022】
図示するこの実施形態では、単極心内膜LV CSリード線52は、RAを通ってCS内に、さらに、心臓静脈内に通されて、遠位LV CSペース/センス電極50をLV腔に沿って延ばし、LVペーシング及びLV EGM信号の検知を達成する。LV CSリード線52は、IPGコネクタブロック12の穴内に嵌合する近位端コネクタ54で結合する。遠位LV CSペース/センス電極50を、大心臓静脈48から分岐する心臓静脈内の深いところに入れるために、直径の小さい単極リード線本体56が選択される。
【0023】
本発明によれば、冠状静脈洞リード線52は、左心室自由壁の加速度に比例する信号を生成することが可能なセンサ62を装備する。センサ62は、好ましくは、比較的小さいサイズ及び直径のカプセル内に収容される、単軸、2軸、又は3軸加速度計として具体化されることによって、センサ62が、リード線の直径を実質的に増加させることなく、又は、左心室ペーシング及び検知部位へリード線を方向制御する能力を実質的に損なうことなく、冠状静脈洞内に組み入れられるようになる。長手方向加速度としてLV壁加速度を評価し、且つペーシング間隔を最適化する時に、半径方向加速度は有用でない場合があり、したがって、単軸加速度計が、これらの目的に適合している場合がある。センサ62は、代わりに、光学センサ、音響センサ、又は、左心室加速度に比例するか、若しくは、そこからLV加速度の変動が導出される可能性がある可変信号を生成する、圧電性、誘導性、容量性、抵抗性、又は他の素子を有するセンサなどの、別のタイプのセンサとして設けられてもよい。センサ62は、好ましくは、CSリード線52上に位置し、それによって、CSリード線52がLVペーシング及び検知のために位置決めされると、センサ62が、左心室自由壁の中間−側面から中間−基底セグメントの上にほぼ配置される。右心腔及び左心腔内、又は、その周囲にある、図1Aに示すリード線及び電極の図示する位置は、近似であり、例示にすぎない。たとえば、左心室加速度センサ62は、代わりに、CSリード線52上に位置し、それによって、センサ62が、冠状静脈洞内、大心臓静脈内、又は、任意のアクセス可能な中心静脈内に位置決めされる。さらに、RA、LA、RV、及びLV上か、その中か、又は、それを基準にしたペーシング又は検知部位に設置するようになっている代替のリード線及びペース/センス電極が、本発明と共に使用されてもよいことが認識される。
【0024】
4腔の一実施形態では、LV CSリード線52は、LAをペーシングし、又はLA EGM信号を検知する時に使用するために、LAに隣接する大きな直径の冠状静脈洞内にあるように、リード線本体に沿って位置決めされた近位LA CSペース/センス電極を搭載するであろう。その場合、リード線本体56は、より近位のLA CSペース/センス電極(複数可)から近位に延び、且つ双極コネクタ54で終端する絶縁リード線導体を収納することになる。
【0025】
図1Bは、経静脈的心内膜リード線、及び、加速度センサ62を備えた付加的な左心室心外膜リード線を介して患者の心臓に結合する、例示的な埋め込み可能な多腔心臓ペースメーカを示す。患者は、加速度センサを装備しない冠状静脈洞リード線52を含む経静脈的リード線システムを、既に埋め込まれていてもよい。こうした患者は、再同期化治療を最適なペーシング間隔で提供するように、閉ループフィードバックシステムで使用するためのLV加速度信号を提供するための、コネクタ66を介してIPG14に結合する加速度センサ62を装備する心外膜リード線64の設置から利益を得る場合がある。
【0026】
心外膜リード線64は、付加的に、ペーシング及び/又は検知電極として役立つ場合がある固定部材63を備える。場合によっては、冠状静脈洞リード線をLV自由壁上の比較的小さな心臓静脈内に進めることが難しいために、心外膜リード線が冠状静脈洞リード線に比べて好ましい場合がある。冠状静脈洞リード線の設置は、心臓静脈の蛇行性のために厄介な仕事になる可能性がある。したがって、少なくとも一部の患者では、ペーシング、EGM検知、及び加速度監視のために、LV側壁上に位置決めされる可能性がある心外膜リード線を提供することが望ましい場合があり、それによって冠状静脈洞リード線に対する必要性がなくなる。代わりに、別個のLV心外膜リード線がLV側壁加速度を検知するために位置決めされた状態で、LVペーシング及びEGM検知のための小さい直径の冠状静脈洞リード線を配備することが望ましい場合がある。
【0027】
図1Bに全体が示される実施形態は、再同期化治療ペーシング部位を選択する時に使用されるのに特に有利である。心外膜リード線64が、LV側壁加速度を評価するために所望の場所に固定された状態で、1つ又は複数の心腔内の異なる場所におけるペーシング作用は、経静脈的ペーシングリード線16、32、及び52を異なる場所へ配備することによって評価される可能性がある。特に、LV加速度センサ62からの信号を解析することに基づいて最適な場所が識別されるまで、冠状静脈洞リード線52は、異なる場所に進められる場合がある。加速度センサ62を別個の心外膜リード線64上に設けることによって、冠状静脈洞リード線52上に設けられたペーシング電極50の位置が、センサ62と無関係に調整されることができる。ペーシング電極50の位置が調整を必要とする場合、加速度センサ62は、LV側壁上の所望の測定部位に固定されたままとなることができ、それによって、異なるペーシング間隔及び/又はペーシング部位について同じ場所で繰り返された測定間の比較を行うことが可能になる。
【0028】
図2は、再同期化治療の送出を提供し、且つ左心室加速度信号入力を処理することが可能な、図1A又は図1Bに示すような、例示的な多腔IPG14のブロック略図である。IPG14は、好ましくは、マイクロプロセッサベースのデバイスである。それに応じて、組み込まれるタイプ及び機能の特徴に応じて、精巧さ及び複雑さが変わる、マイクロプロセッサベースの制御及びタイミングシステム102は、関連するRAM及びROMに記憶される、ファームウェア及びプログラム式のソフトウェアアルゴリズムを実行することによって、IPG14の機能を制御する。制御及びタイミングシステム102はまた、ウォッチドッグ回路、DMAコントローラ、ブロックムーバ/リーダ、CRC計算器、及び、当該技術分野で知られる方法で、パス又はツリーにおけるオン−チップデータバス、アドレスバス、電力、クロック、及び制御信号線によって共に結合される他の特定ロジック回路機構を含んでもよい。IPG14の制御及びタイミング機能は、プログラム式マイクロコンピュータではなく、専用回路ハードウェア又は状態マシンロジックによって達成される可能性があることも理解されるであろう。
【0029】
IPG14は、患者の心腔の特定の部位に配置されるセンサ及びペース/センス電極から信号を受け取り、且つ心臓ペーシングを送出して患者の心調律を制御し、心腔活性化を再同期させるインタフェース回路機構104を含む。したがって、インタフェース回路機構104は、制御及びタイミングシステム102の制御下で心臓ペーシングインパルスを送出することを目的とする治療送出システム106を含む。2つ以上の心腔へのペーシングパルスの送出は、心房−心房(A−A)、心房−心室(A−V)、及び心室−心室(V−V)間隔を含む可能性がある、プログラム可能なペーシング間隔の選択によって部分的に制御される。
【0030】
生理的な入力信号処理回路108は、患者の心調律を決定するために心臓電位図(EGM)信号を受け取るために設けられる。生理的な入力信号処理回路108は、さらに、左心室壁加速度センサ62、オプションで、RV壁運動センサ60からの信号を受け取り、これらの信号を処理し、さらなる信号解析のために、信号データを制御及びタイミングシステム102に提供する。本発明の可能性のある使用を具体的に示すために、治療送出システム106と、入力信号処理回路108と、ペース/センス電極、加速度センサ、及びRA、LA、RV、及びLVと動作可能に配置される任意の他の生理的センサとの間で電気接続するためのリード線接続のセットが示される。
【0031】
制御及びタイミングシステム102は、心腔同期性を改善することを目的として、2心房、2心室、又は多腔心臓ペーシングパルスの選択された間隔での送出を制御する。IPG14によるペーシングパルスの送出は、Struble他に発行され、参照によりその全体が援用される、米国特許第6,070,101号に全体が開示される、プログラム可能な伝導遅延窓時間、又は、Levineに発行され、先に引用した米国特許第6,473,645号に全体が本明細書に開示される、プログラム可能な結合間隔などの、プログラム可能なペーシング間隔に従って提供されてもよい。プログラム可能なペーシング間隔の選択は、好ましくは、以下でより詳細に説明されるように、センサ62信号から導出される左心室側壁加速度の決定に基づく。
【0032】
治療送出システム106は、オプションで、患者の心調律を制御するための心臓ペーシングパルスに加えて、カーディオバージョン/ディフィブリレーション治療を送出する回路機構を含むように構成されてもよい。それに応じて、患者の心臓とつながるリード線は、さらに、高電圧カーディオバージョン又はディフィブリレーションショック電極を含むであろう。
【0033】
電池136は、IPG14の部品及び回路機構に電力を供給し、電気インパルスを心臓に送出するための電気刺激エネルギーを提供する電気エネルギー源を提供する。通常のエネルギー源は、パワー−オン−リセット(POR)能力を有する電源/POR回路126と結合する、高エネルギー密度の低電圧電池136である。電源/POR回路126は、1つ又は複数の低電圧電力(Vlo)、POR信号、1つ又は複数の基準電圧(VREF)源、電流源、選択交換インジケータ(ERI)信号、及び、カーディオバージョン/ディフィブリレーション能力の場合において高電圧電力(Vhi)を治療送出システム106へ提供する。これらの電圧及び信号の従来の相互接続の全てが図2に示されているわけではない。
【0034】
現在の電子多腔ペースメーカ回路機構は、通常、圧電結晶132及び圧電結晶132に結合したシステムクロック122によって提供されるクロック信号CLKを必要とするクロック駆動式CMOSデジタルロジックIC、並びに、1つ又は複数の基板或いはプリント回路板にICと共に搭載される、ディスクリート部品、たとえば、インダクタ、コンデンサ、変圧器、高電圧保護ダイオードなどを採用する。図2では、システムクロック122によって生成された各CLK信号は、クロックツリーを介して全ての適用可能なクロック駆動式ロジックに送られる。システムクロック122は、システムタイミング及び制御機能のために、また、テレメトリI/O回路124におけるアップリンクテレメトリ信号伝送をフォーマットする際に、動作電池電圧範囲にわたって、電池電圧と無関係である1つ又は複数の固定周波数CLK信号を提供する。
【0035】
マイクロプロセッサベースの制御及びタイミングシステム102内に含まれるRAMレジスタは、ダウンリンクテレメトリ伝送による取り出し又は呼び掛け命令を受信するとすぐアップリンクテレメトリ伝送するために、検知されたEGM信号、加速度信号から編集した、且つ/又は、デバイス動作履歴又は他の検知された生理的パラメータに関係するデータを記憶するのに使用されてもよい。データ記憶をトリガする基準は、ダウンリンクされる命令及びパラメータ値によってプログラムされる可能性がある。加速度データを含む生理的データは、トリガごとか、又は、定期的に、又は、生理的な入力信号処理回路108内の検出ロジックによって記憶されてもよい。場合によっては、IPG14は、磁界に応答して閉じる磁界感知スイッチ130を含み、閉じることによって、磁石モードで応答する磁気スイッチ回路120が、制御及びタイミングシステム102にスイッチ閉鎖(SC)信号を出す。たとえば、患者は、皮下に埋め込まれたIPG14の上で適用され得る磁石116を備えてもよく、それによって、スイッチ130を閉じ、制御及びタイミングシステムが、治療を送出する、且つ/又は、生理的データを記憶するよう指示する。事象関連データ、たとえば、日時及び現在のペーシングパラメータは、後の呼び掛けセッションにおけるアップリンクテレメトリのための記憶された生理的データと共に記憶されてもよい。
【0036】
アップリンク及びダウンリンクテレメトリ能力は、遠くに配置される外部医療デバイスか、患者の体の上又は体内のより近位にある医療デバイスのいずれかとの通信を可能にするために設けられる。記憶されたEGM又はLV加速度データ、並びに、リアルタイムに生成される生理的データ及び非生理的データは、ダウンリンク遠隔送信呼び掛けコマンドに応答して、アップリンクRFテレメトリによって、IPG14から外部プログラマ又は他の遠隔医療デバイス26に送信されてもよい。したがって、アンテナ128は、アップリンク/ダウンリンクテレメトリ動作のために、無線周波数(RF)送受信機回路124に接続される。アンテナ128と、アンテナ118を同様に装備する外部デバイス26の間でのアナログとデジタルの両方のデータの遠隔送信は、埋め込み可能デバイスで使用するための技術分野で知られている多くのタイプのテレメトリシステムを使用して達成されてもよい。
【0037】
生理的な入力信号処理回路108は、増幅し、処理し、場合によっては、電気的センス信号又はセンサ出力信号の特性からセンス事象を検出する、少なくとも1つの電気的信号増幅器回路を含む。そのため、生理的な入力信号処理回路108は、心腔を基準にして配置されるセンス電極からの心臓信号を検知し、処理するための複数の心臓信号センスチャネルを含んでもよい。こうしたそれぞれのチャネルは、通常、特定の心臓事象を検出するセンス増幅器回路、及び、サンプリングし、デジタル化し、記憶するか、又は、アップリンク伝送において送信するために、EGM信号を制御及びタイミングシステム102に提供するEGM増幅器回路を含む。心房及び心室センス増幅器は、それぞれ、P波又はR波の発生を検出し、心房センス又は心室センス事象信号を制御及びタイミングシステム102に提供するための、信号処理段を含む。タイミング及び制御システム102は、特定の動作システムに従って応答して、適切である場合には、ペーシング治療を送出するか、若しくは、変更し、又は、当該技術分野で知られている種々の方法でアップリンクテレメトリ伝送のためのデータを収容する。そのため、ペーシングパルス送出に対する必要性は、有効である特定の動作モードに従って、EGM信号入力に基づいて決定される。ペーシングパルスが送出される間隔は、好ましくは、LV壁加速度データの評価に基づいて決定される。
【0038】
したがって、入力信号処理回路108はさらに、LV壁加速度センサ信号を、受け取り、増幅し、フィルタリングし、平均し、デジタル化し、又は、その他の方法で処理する、信号処理回路機構を含む。さらなる加速度又は他の壁運動センサ、たとえば、RV壁運動センサが、関連するリード線システムに含まれる場合、さらなる壁運動信号処理回路機構が、必要に応じて設けられてもよい。加速度信号処理回路機構は、さらに、最大及び最小ピーク振幅、傾斜、積分などの1つ又は複数の加速度信号特性、又は、加速度の指標として使用される場合がある、他の時間又は周波数ドメイン信号特性の検出及び/又は決定のために設けられてもよい。LV側壁加速度センサ信号からの加速度データは、最適なLV加速度を生成するペーシング間隔を識別するために実施されるアルゴリズムで使用するために、LV MOTION信号線を介して制御及びタイミングシステム102に利用可能にされる。RV壁運動センサが存在する場合、さらなるRV MOTION信号線が、RV壁運動信号データを制御及びタイミングシステム102に提供する。
【0039】
図3は、患者の心臓に結合した代替の心外膜リード線システムを示す。心外膜リード線は、長期継続の埋め込み可能なペーシングシステムか、一時的な外部ペーシングシステムのいずれかと共に使用されてもよい。図示する実施形態では、RV心外膜リード線80は、右心室におけるペーシング及び検知のために、活性固定電極82がRV心外膜組織と接触するように位置決めされるように、RVの心尖部の近くで活性固定電極82によって固定されているのが示される。RV心外膜リード線80は、オプションで、RV先端領域の運動すなわち加速度を検出するためのRV壁運動センサ84を装備してもよい。左心室におけるペーシング及び検知のために、活性固定電極72が、LV心外膜組織と接触するように位置決めされるように、LV心外膜リード線70がLV自由壁内に活性固定電極72によって固定されているのが示される。LV心外膜リード線70は、LV自由壁の加速度を検出する加速度センサ74を装備する。心外膜リード線システムは、さらに、心外膜RA及び/又はLAリード線を含んでもよい。心外膜リード線及び経静脈的心内膜リード線の種々の組み合わせもまた、2心室又は多腔心臓刺激システムと共に使用することが可能である。
【0040】
図3では、外部の一時的心臓ペーシングデバイス90に結合した、LV心外膜リード線70及びRV心外膜リード線80が示される。外部ペーシングデバイス90は、好ましくは、LV及びRVペース/センス電極72及び82へのペーシングパルスの送出を制御するために、ファームウェア及びプログラム可能なソフトウェアを記憶し、実行するための、関連するRAM及びROMを有するマイクロプロセッサ96を含むマイクロプロセッサ制御式デバイスである。外部デバイス90は、LV心外膜リード線本体76及びRV心外膜リード線本体86に含まれる導体を介してLV及びRVペース/センス電極72及び82に対して信号を受け取り、電位パルスを送出する。EGM信号、LV側壁加速度信号、及び、オプションで、RV壁運動信号は、入力信号処理回路機構94への入力として受け取られる。ペーシングインパルスは、以下でより詳細に説明されるように、LV加速度センサ74から受け取られる信号に基づいて決定される間隔で、検知されたEGM信号に基づいて、必要に応じて出力回路機構92によって送出される。LV加速度センサ及びオプションでRV壁運動センサを含む、図3に示すような心外膜リード線システムは、代わりに、先に説明し、図1A及び図2に示した多腔システムなどの埋め込み可能ペーシングシステムと共に使用されてもよいことが認識される。
【0041】
図3の外部デバイス90及び図1A、図1B、及び図2の埋め込み可能デバイス14は、検知/監視能力とペーシング送出能力の両方を提供するために示される。所望である場合、一定のデバイスの特徴が使用可能にされるか、又は、使用不能にされてもよい。たとえば、ペーシング治療を送出することなく、LV側壁加速度を監視することが望まれる場合がある。したがって、加速度センサ信号データは、後の解析及び臨床医による見直しのために、埋め込み可能デバイス又は外部デバイスによって、受け取られ、処理され、記憶されてもよい。
【0042】
図4は、LV側壁加速度を検知することに基づいて心臓収縮性を監視する方法の概要を提供するフローチャートである。監視は、先に説明した加速度センサを備えたLVリード線と関連する埋め込み式デバイス又は外部デバイスを使用して、短期的又は長期継続的に実施されてもよい。監視は、診断、予後、又は治療評価のために実施されてもよい。したがって、監視は、医療治療又はデバイスが送出した治療の後に続く薬剤注入中に術後的に、又は、患者の状態についての通院での監視又は治療の最適化及び評価のために長期継続的に実施されてもよい。
【0043】
診断と治療の両方の適用について、左心室収縮性の評価が重要である。そのため、本発明の態様は、治療の最適化又は評価があるか、又は、それがない状態で、心臓監視のために採用されてもよいことが認識される。したがって、図4で要約される方法200は、LV壁加速度信号に基づいて心臓収縮性の指標を導出し、記憶することによって、LV収縮性を監視するための、図1A、図1B、及び図3に示すデバイスなどの埋め込み可能デバイス又は外部デバイスにおいて実施されてもよい。こうしたデバイスの治療送出機能は、選択的に使用不能になってもよく、又は、使用可能な場合、LV加速度に基づく治療最適化が、選択的に、使用可能になるか、又は、監視機能のみが使用可能になるように使用不能になってもよい。方法200は、代わりに、治療送出能力を含まないが、加速度センサを備えたLVリード線と連携して 、LV加速度データを処理し、記憶することが可能な内部デバイス又は外部デバイスにおいて実施されてもよい。
【0044】
監視は、連続して、定期的に、又はトリガによって実施されてもよい。たとえば、LV機能は、1時間ごとに、1日ごとに、1週間ごとに、又はその他の期間でなど、定期的に評価されてもよい。さらに、又は、代わりに、LV機能は、手動又は自動トリガであってもよいトリガごとに評価されてもよい。自動トリガは、特定の心拍数範囲、活動、又は他の条件などの、LV機能評価がその間に望まれる所定の条件を検出するとすぐに発生するように設計されてもよい。
【0045】
一実施形態では、LV加速度は、連続して監視され、LV加速度データの記憶は、限定はしないが、心拍数、活動、又はLV加速度に関係する条件などの、所定のデータ記憶条件を検出するとすぐにトリガされる。たとえば、LV加速度は、連続して検知されてもよく、LV加速度パラメータが、閾値を交差するか、又は、他の所定のデータ記憶基準を満たす場合、LV加速度パラメータ(複数可)が記憶される。
【0046】
LV加速度検知及び/又はデータ記憶についての手動トリガは、たとえば、患者が兆候を感じる時に、臨床医又は患者によって送られてもよい。生理的データの埋め込み可能デバイスへの記憶を手動でトリガする方法は、Klein他に発行され、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許第5,987,352号に全体が記載される。
【0047】
方法200は、定期的、連続的、又は、トリガ式動作モードに従って使用可能になるステップ205にて開始する。ステップ210にて、データ収集窓が設定される。LV加速度データは、好ましくは、心室収縮期中、最も好ましくは、等容性収縮相中に収集される。一実施形態では、データ収集窓は、検知されたR波又は心室ペーシングパルスによってトリガされる固定時間間隔である。データ収集窓は、R波又は心室ペーシングパルスの検知直後、又は、検知後の一定間隔に続いて始まり、好ましくは、等容性収縮相を通して、通常継続時間が30〜180ms(ミリ秒)程度延びる。
【0048】
図5は、1心周期にわたって取得したサンプルLV側壁加速度データ及び同時血行力学的データのプロット図である。一番上の線は、比較的振幅の大きな通常のQRS群とそれに続く比較的小さな振幅のT波を示す心室EGM信号を表す。QRS群は、心筋組織の電気的活性化を表し、脱分極及びその後の心筋線維の収縮を引き起こす。2番目の線は、LV自由壁加速度を測定するために設置された加速度計から取得される左心室加速度(LVA)信号を表す。LVAは、QRS群の直後にピークに達しているのが見られる。グラフ上で示すS1相は、心室収縮期の等容性収縮相に対応し、収縮期の始めに発生する第1心音(S1)に関連する。本明細書で「S1相」とも呼ばれる、この等容性相中の左心室自由壁加速度は一定ではない。示す例では、LVAは、S1相中に、2つのピーク、A1及びA2を形成する。条件の変動によって、等容性収縮相中に、1つ、2つ、3つ、又は、おそらくそれ以上のLVAピークが生じる場合がある。4番目の線上で示すように、等容性収縮中に、左心圧(LVP)の大きな増加が生じる。LVPの1次微分(dP/dt)である3番目の線でも示すように、等容性相中に、LVPが急速に上昇する。LVPがピークに達すると、大動脈弁が開き、収縮期駆出相及び一番下の線で示す大動脈流(Ao FLOW)の関連した増加が始まる。LVPが降下した後、大動脈弁が閉じる。第2心音S2を伴う、この相の間に、LVA信号は、通常S1ピークより振幅が小さい、1つ又は複数のピークを示す。本発明の好ましい実施形態では、LVA信号は、等容性のS1相の、少なくとも一部の間、又は、その全ての間で取得される。
【0049】
したがって、図4では、データ収集窓が、ほぼ始めから等容性収縮相の終わりまで延びるようにステップ210にて設定されたデータ収集窓の間に、方法200は、ステップ215にてLV側壁加速度信号を検知する。好ましくは、加速度センサは、先に説明したように、LV自由壁内に、又は、LV自由壁に近接して埋め込まれる。より好ましくは、LV加速度信号は、加速度計が、左心室自由壁の中間−側部、中間−基底、又は基底セグメントの上に位置するように位置決めされた冠状静脈リード線又は心外膜リード線上に配置される加速度計から取得される。ステップ215にて、いくつかの心周期にわたって、好ましくは、少なくとも1呼吸サイクルにわたって、LV側壁加速度信号が取得され、その結果、ステップ220にて、信号平均化が実施され、呼吸関連の、又は、他のノイズが最小にされる能性がある。
【0050】
ステップ225にて、S1相中に発生する第1LVAピークの、本明細書で「ピーク−ピーク差(ピーク間差)」と呼ばれる、最大振幅又は総偏位(excursion)が決定される。この最大振幅又はピーク−ピーク差は、心臓収縮性の測度として記憶される。他の検知された生理的データ及び/又は日時ラベル及び/又は他のパラメータ情報などのLVAデータと共に、付加的な情報が記憶されてもよい。方法200が外部システムによって実行される時、LVAデータは、リアルタイムに表示されるか、又は、監視エピソードの後に続いて、記憶され、提示されてもよい。方法が埋め込み式デバイスによって実行される時、LVAデータは、表示及び医師による見直しのため、後で外部デバイスへアップリンクするために、記憶されてもよい。
【0051】
先に示したように、LV側壁加速度は、治療最適化のために監視されてもよい。図6は、左心室側壁加速度に基づいて治療を最適化する方法に含まれるステップを要約するフローチャートである。方法300は、治療が、通常設定又は用量で送出されるか、又は、施されるステップ305にて開始する。治療は、心臓ペーシング又は再同期化治療又は他の心臓調律管理治療、心筋虚血を処置する治療、医療治療、又は心臓収縮性を改善する任意の他の知られている治療であってもよい。説明されるように、左心室自由壁加速度の測定値に基づいて、心臓収縮性を最大にするために治療が送出されるべき最適設定又は用量を決定するために、反復手法が実施されてもよい。
【0052】
施される治療のタイプに応じて、治療の変化に対する血行力学的反応が、LVAを監視する前に安定化することを可能にするための、オプションの安定化期間が、ステップ310にて、設けられてもよい。安定化期間は、送出される治療に応じて、数秒から数分、数時間、又は、さらに数日の範囲であってもよい。
【0053】
ステップ315にて、好ましくは、先に説明した等容性収縮相にわたって延びる、データ収集窓が設定される。ステップ320にて、LVA信号は、所定の時間間隔中の各心周期にわたって、又は、所定の数の心周期に、データ収集窓の間にサンプリングされる。代替の一実施形態では、LVA信号は、所定の時間間隔又は所定の数の心周期の間に連続して取得され、その後、等容性収縮相に関連する、より詳細には、等容性収縮中の第1加速度ピークに関連する成分を分離するために処理されてもよい。時間間隔又は心周期の数は、好ましくは、呼吸によるLVA測定値の変動をなくすために、呼吸サイクルにわたるLVA信号の平均が実施されるように、少なくとも1呼吸サイクルにわたって延びる。一実施形態では、LVAデータ取得の開始及び停止は、呼吸サイクルを検知することによってトリガされてもよい。呼吸は、インピーダンス測定又は当該技術分野で知られている他の方法に基づいて検出されてもよい。
【0054】
決定ステップ325にて、データ取得間隔中における安定した心拍数の確認が実施される。異所性心拍動又は他の不規則の存在などの、心拍数の不安定性は、特異なLVデータを生じるであろう。したがって、心拍数は、好ましくは、指定された範囲内に留まる。一実施形態では、心拍数の安定性は、データ取得期間の間に心周期長の平均及び標準偏差を求めることによって確認されてもよい。心周期長は、心室ペーシングパルス及び任意の検知されたR波を含む連続する心室事象間の間隔として決定される。平均心周期長又はその標準偏差が、規定の範囲外である場合、データは信頼性がないと考えられる。信頼性のあるデータが、最新の治療設定について収集されるまで、データ取得が、ステップ320に戻ることによって反復されてもよい。
【0055】
ステップ330にて、呼吸関連の又は他のノイズの影響を最小にするために、信号平均化が実施される。データ収集間隔にわたって各心周期中に取得される信号は、全体の平均LVA信号を取得するために平均される。ステップ335にて、試験治療設定における心臓収縮性の指標として平均されたLVA信号から、1つ又は複数の信号特徴部が決定され、対応する試験設定情報と共にデバイスメモリに記憶される。先に説明したように、等容性収縮相(S1)中に発生する第1加速度ピークの最大振幅又はピーク−ピーク差は、好ましくは、ステップ335にて決定される。
【0056】
全ての治療試験設定がまだ適用されていない、と決定ステップ340にて判断される場合、方法300は、ステップ345にて、次の試験設定に対して治療を調整し、オプションのステップ310に戻り、ステップ315〜335を繰り返して新しい試験設定について心臓収縮性のLVA指標を決定する。全ての試験設定が適用されてしまうと、ステップ350にて、記憶されたLVAデータに基づいて最適な設定が識別される。一実施形態では、最適な設定は、等容性収縮中の第1LVAピークの最大ピーク振幅に対応する。
【0057】
本発明に含まれる方法は、心臓再同期化治療中の心室間(V−V)ペーシング間隔を最適化するのに特に好適である。本発明の発明者が見出したことは、等容性収縮中のLVA信号の第1ピークの振幅は、心房−2心室ペーシング中のV−V間隔に依存し、心房−心室(A−V)間隔に依存しないことである。
【0058】
図7は、様々なA−V及びV−Vにおいて心房−2心室ペーシング中に取得したLVA信号を表示するグラフのセットである。各欄が固定V−V間隔を示す状態で、140、170、及び200msのA−V間隔を試験した結果が、上部から底部へ移動するグラフで示される。20ms(−20ms)だけ左が先行する(left-led)ペーシング、左右心室の同時ペーシング(0ms)、及び20ms(+20ms)だけ右が先行する(right-led)ペーシングのV−V間隔を試験した結果は、各行が固定A−V間隔を示す状態で、左から右へ移動するグラフで示される。LVA信号は、様々なV−V間隔(左から右へ移動する)について振幅及び形態が変化すると考えられる。LVA信号は、様々なA−V間隔(上部から底部へ移動する)について変わらないと考えられる。等容性収縮相中に発生する第1LVAピークの最大振幅は、各グラフでA1として示される。
【0059】
図8は、様々なA−V及びV−V間隔における心房−2心室ペーシング中のLVA信号から決定された最大振幅(A1)のプロット図である。A1は、3つの異なるV−V間隔(VVI)についてA−V間隔に対してプロットされる。所与のV−V間隔について、A1振幅は、A−V間隔の変動によって変わらない。所与のA−V間隔について、A1振幅は、明らかにV−V間隔に依存する。そのため、2心室ペーシング中のV−V間隔は、等容性収縮中の第1LVA信号ピークに基づいて、A−V間隔と無関係に最適化される可能性がある。示されるサンプルデータセットについて、20ms(取り決めにより−20ms)だけ左が先行するV−V間隔は、最大LVAを提供する。
【0060】
第1ピークの最大振幅以外の他の信号特性は、左心室収縮性と関係し、心臓再同期化治療中にA−V間隔と無関係にV−V間隔を最適化するため、又は、他の治療を最適化するために使用されてもよい。たとえば、ピーク傾斜、積分又は他の信号特徴又は参照点が、等容性収縮中の可変LVA信号から導出され、患者監視又は治療最適化手法のための心臓収縮性の指標として使用されてもよい。
【0061】
図9は、左心室加速度に基づいて最適V−V間隔を決定する方法に含まれるステップを要約するフローチャートである。ステップ405にて、A−V間隔は、以前に決定された最適設定又は基準設定にプログラムされる。A−V間隔最適化手法は、V−V間隔を最適化する前に実施され、最適A−V間隔設定が決定される。A−V間隔は、当該技術分野で知られている方法に基づいて最適化されてもよい。たとえば、A−V間隔は、エコー検査の評価に基づいて心室充満を打ち切らない最も短いA−V間隔として選択されてもよい。代わりに、最適A−V間隔は、RV心尖部に設置された加速度計によって検出される、RV先端運動に基づいて選択されてもよい。A−V間隔は、代わりに、ステップ405にて、基準設定に設定され、V−V間隔を最適化した後、A−V間隔最適化が実施されてもよい。
【0062】
ステップ410にて、V−V間隔が試験間隔に設定される。試験間隔の範囲は、予め決められ、ランダムな、全体が増加する、又は、全体が減少する方式で送出されてもよい。試験間隔の範囲は、左心室の前に右心室がペーシングされることをもたらす間隔、右心室の前に左心室がペーシングされることをもたらす間隔、及び、右と左の心室の同時ペーシングをもたらす間隔を含んでもよい。例示的な試験間隔のセットは、左心室ペーシング前20ms及び40msでの右心室ペーシング、左と右の心室の同時ペーシング(0msのV−V間隔)、及び右心室ペーシング前20ms及び40msでの左心室ペーシングを含む。
【0063】
方法400は、先に説明した治療を最適化する反復手法と同じ方法で、最適V−V間隔の決定に進む。ステップ415にて、データ収集窓が設定され、各心周期に適用されたデータ収集窓の間で、ステップ420にて、所定の時間間隔又は所定の数の心周期の間、LVAデータが収集される。ステップ425にて、安定した心拍数を確認した後に、ステップ430にて、信号平均化が実施され、ステップ435にて、等容性収縮相中における第1加速度ピーク(A1)の平均ピーク振幅又は平均ピーク−ピーク差が決定されることが可能になる。A1は、最新の試験設定について記憶され、方法400は、ステップ410に戻って、全ての試験V−V間隔が適用されたと、決定ステップ434にて判断されるまで、次の試験設定が適用される。ステップ450にて、最適V−V間隔は、最大A1振幅に対応する間隔として識別される。
【0064】
方法400が外部ペーシングシステムによって実行される時、LVAデータは、リアルタイム表示に利用可能であるか、又は、推奨されるV−V間隔と共に、最適化手法に続いて記憶され、提示される。担当の臨床医は、それに応じて、V−V間隔をプログラムするか、又は、外部システムは、V−V間隔を最適設定に自動的に調整してもよい。最適V−V間隔を識別する方法400が、埋め込み式デバイスによって実行される時、LVAデータは、表示及び医師による見直しのため、外部デバイスへ後でアップリンクするために処理され、記憶されてもよい。埋め込み式デバイスは、識別した最適間隔に基づいてV−V間隔を自動的に調整してもよい。
【0065】
図10は、心臓再同期化治療中にA−V及びV−V間隔を最適化する方法の概要を提供する。ステップ505にて、A−V間隔は、基準設定にプログラムされる。ステップ510にて、最適V−V間隔は、図9の方法400を使用して識別される。ステップ515にて、V−V間隔は、最適設定に自動又は手動でプログラムされる。V−V間隔を最適設定に維持した状態で、ステップ520にて、A−V最適化手法が実施される。最適A−V間隔は、先に説明したように、当該技術分野で知られている方法に基づいて識別される。ステップ525にて、A−V間隔は、最適設定に自動又は手動でプログラムされる。V−V間隔が、本発明に含まれる方法に従って、A−V間隔に無関係に、最初に最適化される可能性があるため、多腔心臓ペーシング中のA−V及びV−V間隔の最適化は、1つのパラメータの変調が他のパラメータに与える可能性がある作用によって制限されないか、又は、複雑にならない、簡単で論理的な方法で実施される可能性がある。
【0066】
そのため、左心室心臓収縮性を監視し、且つ加速度センサを備えた左心室リード線を使用して測定した左心室側壁加速度に基づいて心臓治療を最適化する方法及び装置が説明された。本明細書で説明する方法は、有利には、埋め込み可能なデバイス、又は、外部のデバイスに関連する長期継続又は短期適用を含む多くの心臓監視又は治療モダリティにおいて適用されてもよい。
【0067】
当該技術分野で知られているように、先に説明したトランスデューサの他に、他のタイプのトランスデューサが使用されてもよい。ただし、一般に、こうしたトランスデューサが、密封され、(少なくとも、外部表面上が)ほぼ生体適合性材料で作製され、所与の適用について適切な大きさに作られる場合に限る。適切な寸法に関して、経静脈的配備を目的とするトランスデューサは、カテーテル又はオーバザワイヤ送出が可能でなければならない。そのため、半径方向寸法は、約11フレンチ未満、好ましくは、約8フレンチ未満程度であるべきである。同様に、トランスデューサは、安全に、静脈系を航行し、冠状静脈洞を通過し、冠状静脈洞から分岐する血管(たとえば、大心静脈など)に入ることができるように、多少柔軟性があるが、長手方向寸法が長過ぎてはならない。これらの寸法は、側壁に隣接して機械的に結合するようになっている固着機構によって胸部の一部を通して(たとえば、開胸術によって)配備することを目的とするトランスデューサについては軽減される可能性がある。2つの隣接場所は心外膜及び心膜を含む。寸法は、心外膜がトランスデューサを収容する場合に、大幅に軽減され、心膜の一部に対しては、少し軽減される場合がある。よく知られているように、心膜は、心臓並びに大動脈及び他の大きな血管の根元を囲む、血清流体で満たされた膜嚢(membranous sac)である。心外膜適用のための適切な固定装置の一例は、心外膜の表面にねじ込まれる、らせん部が先端についたリード線である。心膜固定のために、らせん部が先端についたリード線などの活性固定部材に加えて、密封部材(たとえば、心膜嚢の両側の圧縮性ガスケット又は対抗部材)が使用されてもよい。
【0068】
センサ及びトランスデューサに関連する技術分野で同様に知られているように、加速度計は、2つのトランスデューサ、1次トランスデューサ(通常、加速度を変位に変換する単一自由度振動マス)及び(サイズモ系マスの(seismic mass))変位を電気信号に変換する2次トランスデューサとして説明され得る。ほとんどの加速度計は、2次トランスデューサとして圧電素子を使用する。圧電素子は、静的(たとえば、一定加速度)状況下では信号を提供することができないが、圧電デバイスは、歪を受けると、歪に比例した電圧を出力する。加速度計の重要な特性は、加速度の範囲、周波数応答、横感度(非作動方向の運動に対する感度)、搭載誤差、温度及び音響ノイズ感度、及びマスを含む。
【0069】
加速度計の内部機構を説明する、1つのタイプの1次トランスデューサは、ばね保持式サイズモ系マスを含む。ほとんどの加速度計では、加速度は、ばねによって抑制される被制動(damped)サイズモ系マスを圧迫し、その結果、被制動サイズモ系マスは、単一軸に沿ってケーシングに対して移動する。2次トランスデューサは、その後、サイズモ系マスに関連する変位及び/又は力に応答する。マスの変位及びばねの伸長は、振動が自由振動以下である時のみ加速度に比例する。別の加速度計のタイプは、1次トランスデューサとして2重片持ち梁を使用し、2重片持ち梁は、ばね−マス−ダッシュポットとしてモデル化することができ、サイズモ系マス1次トランスデューサのみが説明されるであろう。
【0070】
機械的変位から電気信号を生成する方法を説明する、2次トランスデューサのタイプは、圧電素子、電位差素子、磁気抵抗素子、サーボ素子、歪ゲージ素子、容量素子、振動素子などを含む。これらは、初心者のための導入部として簡潔に説明される。
【0071】
圧電トランスデューサは、振動検知加速度計において使用されることが多く、ショック検知デバイスにおいて使用されることもある。圧電結晶(たとえば、石英又はセラミック)は、或る加速度下でサイズモ系マスによって力が加えられると電荷を生成する。石英板(2枚以上)は、結晶に加えられた正又は負の力の変化が、電荷の変化をもたらすように予め装填される。圧電加速度計の感度は、他のタイプの加速度計に比べて比較的低いが、圧電加速度計は、最も高い範囲(100,000gまで)と周波数応答(20kHzを超える)を有する。
【0072】
電位差加速度計は、電位差計に沿って移動する、ワイパ腕に機械的に連結した、ばね−マスシステムの変位を利用する。システムは、気体、粘性、磁気流体、又は磁気制動を使用して、ワイパ腕の接触抵抗によって生じる音響ノイズを最小にする可能性がある。電位差加速度計は、通常、ばねの剛性に応じてゼロ〜20−60Hzの周波数範囲を有し、高レベル出力信号を有する。電位差加速度計はまた、ほとんどの他の加速度計より低い、通常、15〜30Hzの周波数応答を有する。
【0073】
磁気抵抗加速度計は、サイズモ系マスの運動に比例する出力電圧を生成する線形可変差動トランスデューサと同様のインダクタンスブリッジを使用する。インダクタンス−ブリッジ加速度計におけるサイズモ系マスの変位によって、2つのコイルのインダクタンスが反対方向へ変わる。コイルは、インダクタンスブリッジの2つの腕として働き、抵抗は他の2つの腕として働く。ブリッジのAC出力電圧は加えられる加速度と共に変わる。AC信号をDCに変換するために、復調器が使用される可能性がある。AC信号の周波数が、加速度の周波数よりかなり大きい限りにおいて、DC電源が使用される時に必要とされるAC電流を生成するのに発振器が使用される可能性がある。
【0074】
サーボ加速度計では、加速度によって、サイズモ系マス「振り子」が運動する。運動が位置検知デバイスによって検出されると、閉ループサーボ系の誤差信号として働く信号が生成される。定常状態成分を除去するために、信号が復調され、増幅された後、信号は、受動減衰ネットワークを通過し、マスの回転軸に位置するトルク伝達コイルに印加される。トルク伝達コイルによって生成されたトルクは、印加された電流に比例し、加速度によりサイズモ系マスに作用するトルクに対抗し、さらなるマスの運動を妨げる。したがって、トルク伝達コイルを通る電流は加速度に比例する。このデバイスはまた、サイズモ系マスが釣り合いを保つ限り、角加速度を測定するのに使用される可能性がある。サーボ加速度計は、比較的高いコストで、高精度及び高レベル出力を提供し、非常に狭い測定範囲(1g未満)について使用される可能性がある。
【0075】
「圧電抵抗型」加速度計と呼ばれることが多い、歪ゲージ加速度計は、ホイーストンブリッジの腕として働く歪ゲージを使用して機械的歪をDC出力電圧に変換する。ゲージは、ばねか、サイズモ系マスと静止フレームの間のいずれかに取り付けられる。歪ゲージ巻き線は、ばね作用に寄与し、応力が加えられ(すなわち、張力が2つ、圧縮が2つ)、加えられた加速度に比例するDC出力電圧が、ブリッジの4つの腕によって生成される。
【0076】
これらの加速度計は、半導体ゲージ及びより硬いばねによって感度を上げられる可能性があり、より高い周波数応答及び出力信号振幅が得られる。他のタイプの加速度計と違って、歪ゲージ加速度計は、定常状態の加速度に応答する。
【0077】
容量性加速度計では、加速度の変化によって、容量性加速度計の可動電極と固定電極間の空間の変化が生じる。可動電極は、通常、仕切板支持式(diaphragm supported)サイズモ系マス又は撓み支持式(flexure-supported)円板形状サイズモ系マスである。素子は、発振回路のLC又はRC部分のコンデンサとして働く可能性がある。結果として得られる出力周波数は、加えられる加速度に比例する。
【0078】
振動素子加速度計では、サイズモ系マスの非常に小さな変位が、永続的な磁界内のタングステンワイヤの張力を変える。磁界の存在下でワイヤを通る電流によって、ワイヤがその共振周波数で(ギターの弦のように)振動する。回路機構は、その後、加えられた加速度に比例する周波数変調(中心周波数からの偏差)を出力する。こうしたデバイスの精度は高いが、デバイスは、温度変動に非常に敏感であり、比較的費用がかかる。
【0079】
したがって、本発明は、特定の実施形態の文脈で本明細書で説明されたが、本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態の多くの変形が採用されてもよいことが認識されることを、当業者は認識するであろう。したがって、本明細書で提供される説明は、添付特許請求の範囲に関して、制限するのではなく、例示的であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1A】本発明を実施することができる、例示的な埋め込み可能な多腔心臓ペースメーカの図である。
【図1B】経静脈的心内膜リード線、及び、加速度センサを備えた付加的な左心室心外膜リード線を介して患者の心臓に結合する例示的な埋め込み可能な多腔心臓ペースメーカの図である。
【図2】再同期化治療の送出を提供し、左心室加速度信号入力を処理することが可能な例示的な多腔埋め込み可能パルス発生器のブロック略図である。
【図3】患者の心臓に結合した代替の心外膜リード線システムを示す図である。
【図4】LV側壁加速度を検知することに基づいて心臓収縮性を監視する方法の概要を提供するフローチャートである。
【図5】1心周期にわたって取得したサンプルLV側壁加速度データ及び同時血行力学的データのプロット図である。
【図6】左心室側壁加速度に基づいて治療を最適化する方法に含まれるステップを要約するフローチャートである。
【図7】様々なA−V及びV−V間隔において心房−2心室ペーシング中に取得した左心室側壁加速度信号を表示するグラフのセットである。
【図8】様々なA−V及びV−V間隔における心房−2心室ペーシング中の左心室加速度信号から決定された最大振幅(A1)のプロット図である。
【図9】左心室加速度に基づいて最適V−V間隔を決定する方法に含まれるステップを要約するフローチャートである。
【図10】心臓再同期化治療中にA−V及びV−V間隔を最適化する方法の概要を提供する図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2心室心臓ペーシングモダリティを動作させるようにプログラムされたデバイスにおいて左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法であって、
心臓の左心室腔の一部の運動を直接検知するようになっているトランスデューサを配設し、且つ前記運動に関係する信号を提供すること、
前記信号を、前記運動を検出する手段に結合すること、
1つの心室と電気的に接続する第1ペーシング電極と、他の心室と電気的に接続する第2ペーシング電極との心室間(V−V)タイミングパラメータを、時間的な値の範囲にわたって反復して調整すること、
心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つのそれぞれについて、該心室間(V−V)タイミングパラメータ、及び、心周期の等容性収縮部分の間に取得された信号の第1ピークに対応するピーク振幅値を記憶すること、
該記憶したピーク振幅値の大きさを比較すること、及び、
前記記憶した最も高いピーク振幅値に対応する前記心室間(V−V)タイミングパラメータを使用して、最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムすること、
を含む左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項2】
前記トランスデューサは、冠状静脈洞血管の一部、すなわち、前記冠状静脈洞に流体結合した血管内に配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項3】
前記トランシジューサは加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項4】
前記加速度計は、前記心臓の左心室心尖部(apex portion)に向かってほぼ整列した長手方向検知軸を有する単軸加速度計を備える請求項3に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項5】
前記トランスデューサは2軸加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項6】
前記トランスデューサは3軸加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項7】
前記トランスデューサは、前記心臓の前記左心室の心外膜の一部に隣接して配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項8】
前記心外膜の前記一部は、前記左心室の側壁(lateral wall)の一部である請求項7に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項9】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の基底部分である請求項8に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項10】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底(mid-basal)部分である請求項9に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項11】
前記トランスデューサは、前記心臓の心膜内に配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項12】
前記デバイスは、埋め込み可能医療デバイスを備える請求項3に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項13】
前記第1ペーシング電極又は前記第2ペーシング電極は、前記デバイスに結合した検知回路と電気的に接続するセンス電極をさらに備える請求項12に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項14】
2心室心臓ペーシングモダリティを動作させるようにプログラムされたデバイスにおいて左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法を実施するための命令によってプログラムされたコンピュータ可読媒体であって、
配備式(deployed)運動トランスデューサによって心臓の左心室腔の一部の運動を検知し、且つ前記運動に関係する、前記トランスデューサからの信号を測定するための命令と、
1つの心室と電気的に接続する第1ペーシング電極と、他の心室と電気的に接続する第2ペーシング電極との心室間(V−V)タイミングパラメータを、時間的な値の範囲にわたって反復して調整するための命令と、
前記心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つを記憶するための命令と、
前記心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つのそれぞれについて、心周期の等容性収縮部分の間に取得された信号の第1ピークに対応するピーク振幅値に対して、それぞれの記憶した心室間(V−V)タイミングパラメータを関係付けるための命令と、
前記記憶したピーク振幅値の大きさを比較するための命令と、
前記記憶した最も高いピーク振幅値に対応する前記心室間(V−V)タイミングパラメータを使用して最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムするための命令と、
を含むコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記トランスデューサは、冠状静脈洞血管の一部、すなわち、該冠状静脈洞に流体結合した血管内に配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記トランシジューサは加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記加速度計は、前記心臓の左心室心尖部に向かってほぼ整列した長手方向検知軸を有する単軸加速度計を備える請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記トランスデューサは2軸加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記トランスデューサは3軸加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記トランスデューサは、前記心臓の前記左心室の前記心外膜の一部に隣接して配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項21】
前記心外膜の前記一部は、前記左心室の前記側壁の一部である請求項20に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項22】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の基底部分である請求項21に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項23】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底部分である請求項22に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項24】
前記トランスデューサは、前記心臓の心膜内に配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項25】
前記デバイスは、埋め込み可能医療デバイスを備える請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項26】
前記第1ペーシング電極又は前記第2ペーシング電極は、前記デバイスに結合した検知回路と電気的に接続するセンス電極をさらに備え、コンピュータ可読媒体は、
脱分極波活動(depolarization wave activity)を測定し、該測定した脱分極波活動に関係する少なくとも1つのパラメータを少なくとも一時的に記憶するための命令をさらに含む請求項25に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記デバイスに結合し、前記心臓に隣接して配設された少なくとも1つの高電圧電極と電気的に接続する可変電圧ディフィブリレーション回路をさらに備える請求項26に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項28】
心室間(V−V)同期性を最適化し、該最適化の結果として、閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置であって、
左心室の側壁の一部の運動を測定し、且つ該運動に関係する運動信号を提供するための、パルス発生器に結合する運動測定回路に結合するトランスデューサ手段と、
前記左心室の一部と電気的に接続し、且つ前記パルス発生器のペーシング回路に電気結合する左ペーシング電極と、
右心室の一部と電気的に接続し、且つ前記パルス発生器のペーシング回路に電気結合する右ペーシング電極と、
少なくとも1つの心周期の間に心室間(V−V)間隔を反復して変更し、且つ心周期の等容性収縮部分の間に取得された前記運動信号の第1ピークに対応するピーク振幅値を、前記心周期中に使用される前記心室間(V−V)間隔について記憶し、また、該記憶したピーク振幅を比較し、その後、前記最大のピーク振幅に対応する心室間(V−V)間隔に基づいて最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムするための心室間(V−V)間隔最適化手段と、
を備える閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項29】
前記パルス発生器は、埋め込み可能パルス発生器である請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項30】
前記パルス発生器は、心臓の少なくとも1つの腔と電気的に接続する少なくとも1つのディフィブリレーション電極、及び、前記パルス発生器内に配設された高電圧回路機構をさらに備える請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項31】
前記トランスデューサ手段は、加速度計をさらに備え、前記左ペーシング電極は前記加速度計に結合される請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項32】
前記トランスデューサ手段は加速度計を備える請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項33】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底部分である請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項34】
前記左心室の前記一部は、心外膜部分、心内膜部分、又は心膜部分のうちの1つである請求項33に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項35】
心房腔と電気的に接続し、前記パルス発生器の前記ペーシング回路に電気結合するペーシング電極をさらに備える請求項33に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2心室心臓ペーシングモダリティを動作させるようにプログラムされたデバイスにおいて左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法において、
心臓の左心室腔の一部の運動を直接検知するようになっているトランスデューサを配設し、且つ前記運動に関係する信号を提供すること、
前記信号を、前記運動を検出する手段に結合すること、
1つの心室と電気的に接続する第1ペーシング電極と、他の心室と電気的に接続する第2ペーシング電極との心室間(V−V)タイミングパラメータを、時間的な値の範囲にわたって反復して調整すること、
心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つのそれぞれについて、該心室間(V−V)タイミングパラメータ、及び、心周期の等容性収縮部分の間に取得された信号の第1ピークに対応するピーク振幅値を記憶すること、
該記憶したピーク振幅値の大きさを比較すること、及び、
前記記憶した最も高いピーク振幅値に対応する前記心室間(V−V)タイミングパラメータを使用して、最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムすること、
を特徴とする左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項2】
前記トランスデューサは、冠状静脈洞血管の一部、すなわち、前記冠状静脈洞に流体結合した血管内に配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項3】
前記トランシジューサは加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項4】
前記加速度計は、前記心臓の左心室心尖部に向かってほぼ整列した長手方向検知軸を有する単軸加速度計を備える請求項3に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項5】
前記トランスデューサは2軸加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項6】
前記トランスデューサは3軸加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項7】
前記トランスデューサは、前記心臓の前記左心室の心外膜の一部に隣接して配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項8】
前記心外膜の前記一部は、前記左心室の側壁の一部である請求項7に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項9】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の基底部分である請求項8に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項10】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底部分である請求項9に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項11】
前記トランスデューサは、前記心臓の心膜内に配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項12】
前記デバイスは、埋め込み可能医療デバイスを備える請求項3に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項13】
前記第1ペーシング電極又は前記第2ペーシング電極は、前記デバイスに結合した検知回路と電気的に接続するセンス電極をさらに備える請求項12に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項14】
2心室心臓ペーシングモダリティを動作させるようにプログラムされたデバイスにおいて左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法を実施するための命令によってプログラムされたコンピュータ可読媒体において、
配備式運動トランスデューサによって心臓の左心室腔の一部の運動を検知し、且つ前記運動に関係する、前記トランスデューサからの信号を測定するための命令と、
1つの心室と電気的に接続する第1ペーシング電極と、他の心室と電気的に接続する第2ペーシング電極との心室間(V−V)タイミングパラメータを、時間的な値の範囲にわたって反復して調整するための命令と、
前記心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つを記憶するための命令と、
前記心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つのそれぞれについて、心周期の等容性収縮部分の間に取得された信号の第1ピークに対応するピーク振幅値に対して、それぞれの記憶した心室間(V−V)タイミングパラメータを関係付けるための命令と、
前記記憶したピーク振幅値の大きさを比較するための命令と、
前記記憶した最も高いピーク振幅値に対応する前記心室間(V−V)タイミングパラメータを使用して最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムするための命令と、
を特徴とするコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記トランスデューサは、冠状静脈洞血管の一部、すなわち、該冠状静脈洞に流体結合した血管内に配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記トランシジューサは加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記加速度計は、前記心臓の左心室心尖部に向かってほぼ整列した長手方向検知軸を有する単軸加速度計を備える請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記トランスデューサは2軸加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記トランスデューサは3軸加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記トランスデューサは、前記心臓の前記左心室の前記心外膜の一部に隣接して配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項21】
前記心外膜の前記一部は、前記左心室の前記側壁の一部である請求項20に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項22】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の基底部分である請求項21に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項23】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底部分である請求項22に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項24】
前記トランスデューサは、前記心臓の心膜内に配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項25】
前記デバイスは、埋め込み可能医療デバイスを備える請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項26】
前記第1ペーシング電極又は前記第2ペーシング電極は、前記デバイスに結合した検知回路と電気的に接続するセンス電極をさらに備え、コンピュータ可読媒体は、
脱分極波活動を測定し、該測定した脱分極波活動に関係する少なくとも1つのパラメータを少なくとも一時的に記憶するための命令をさらに含む請求項25に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記デバイスに結合し、前記心臓に隣接して配設された少なくとも1つの高電圧電極と電気的に接続する可変電圧ディフィブリレーション回路をさらに備える請求項26に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項28】
心室間(V−V)同期性を最適化し、該最適化の結果として、閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置において、
左心室の側壁の一部の運動を測定し、且つ該運動に関係する運動信号を提供するための、パルス発生器に結合する運動測定回路に結合するトランスデューサ手段と、
前記左心室の一部と電気的に接続し、且つ前記パルス発生器のペーシング回路に電気結合する左ペーシング電極と、
右心室の一部と電気的に接続し、且つ前記パルス発生器のペーシング回路に電気結合する右ペーシング電極と、
少なくとも1つの心周期の間に心室間(V−V)間隔を反復して変更し、且つ心周期の等容性収縮部分の間に取得された前記運動信号の第1ピークに対応するピーク振幅値を、前記心周期中に使用される前記心室間(V−V)間隔について記憶し、また、該記憶したピーク振幅を比較し、その後、前記最大のピーク振幅に対応する心室間(V−V)間隔に基づいて最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムするための心室間(V−V)間隔最適化手段と、
を特徴とする閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項29】
前記パルス発生器は、埋め込み可能パルス発生器である請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項30】
前記パルス発生器は、心臓の少なくとも1つの腔と電気的に接続する少なくとも1つのディフィブリレーション電極、及び、前記パルス発生器内に配設された高電圧回路機構をさらに備える請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項31】
前記トランスデューサ手段は、加速度計をさらに備え、前記左ペーシング電極は前記加速度計に結合される請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項32】
前記トランスデューサ手段は加速度計を備える請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項33】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底部分である請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項34】
前記左心室の前記一部は、心外膜部分、心内膜部分、又は心膜部分のうちの1つである請求項33に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項35】
心房腔と電気的に接続し、前記パルス発生器の前記ペーシング回路に電気結合するペーシング電極をさらに備える請求項33に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項1】
2心室心臓ペーシングモダリティを動作させるようにプログラムされたデバイスにおいて左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法であって、
心臓の左心室腔の一部の運動を直接検知するようになっているトランスデューサを配設し、且つ前記運動に関係する信号を提供すること、
前記信号を、前記運動を検出する手段に結合すること、
1つの心室と電気的に接続する第1ペーシング電極と、他の心室と電気的に接続する第2ペーシング電極との心室間(V−V)タイミングパラメータを、時間的な値の範囲にわたって反復して調整すること、
心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つのそれぞれについて、該心室間(V−V)タイミングパラメータ、及び、心周期の等容性収縮部分の間に取得された信号の第1ピークに対応するピーク振幅値を記憶すること、
該記憶したピーク振幅値の大きさを比較すること、及び、
前記記憶した最も高いピーク振幅値に対応する前記心室間(V−V)タイミングパラメータを使用して、最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムすること、
を含む左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項2】
前記トランスデューサは、冠状静脈洞血管の一部、すなわち、前記冠状静脈洞に流体結合した血管内に配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項3】
前記トランシジューサは加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項4】
前記加速度計は、前記心臓の左心室心尖部(apex portion)に向かってほぼ整列した長手方向検知軸を有する単軸加速度計を備える請求項3に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項5】
前記トランスデューサは2軸加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項6】
前記トランスデューサは3軸加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項7】
前記トランスデューサは、前記心臓の前記左心室の心外膜の一部に隣接して配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項8】
前記心外膜の前記一部は、前記左心室の側壁(lateral wall)の一部である請求項7に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項9】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の基底部分である請求項8に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項10】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底(mid-basal)部分である請求項9に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項11】
前記トランスデューサは、前記心臓の心膜内に配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項12】
前記デバイスは、埋め込み可能医療デバイスを備える請求項3に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項13】
前記第1ペーシング電極又は前記第2ペーシング電極は、前記デバイスに結合した検知回路と電気的に接続するセンス電極をさらに備える請求項12に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項14】
2心室心臓ペーシングモダリティを動作させるようにプログラムされたデバイスにおいて左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法を実施するための命令によってプログラムされたコンピュータ可読媒体であって、
配備式(deployed)運動トランスデューサによって心臓の左心室腔の一部の運動を検知し、且つ前記運動に関係する、前記トランスデューサからの信号を測定するための命令と、
1つの心室と電気的に接続する第1ペーシング電極と、他の心室と電気的に接続する第2ペーシング電極との心室間(V−V)タイミングパラメータを、時間的な値の範囲にわたって反復して調整するための命令と、
前記心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つを記憶するための命令と、
前記心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つのそれぞれについて、心周期の等容性収縮部分の間に取得された信号の第1ピークに対応するピーク振幅値に対して、それぞれの記憶した心室間(V−V)タイミングパラメータを関係付けるための命令と、
前記記憶したピーク振幅値の大きさを比較するための命令と、
前記記憶した最も高いピーク振幅値に対応する前記心室間(V−V)タイミングパラメータを使用して最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムするための命令と、
を含むコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記トランスデューサは、冠状静脈洞血管の一部、すなわち、該冠状静脈洞に流体結合した血管内に配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記トランシジューサは加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記加速度計は、前記心臓の左心室心尖部に向かってほぼ整列した長手方向検知軸を有する単軸加速度計を備える請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記トランスデューサは2軸加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記トランスデューサは3軸加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記トランスデューサは、前記心臓の前記左心室の前記心外膜の一部に隣接して配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項21】
前記心外膜の前記一部は、前記左心室の前記側壁の一部である請求項20に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項22】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の基底部分である請求項21に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項23】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底部分である請求項22に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項24】
前記トランスデューサは、前記心臓の心膜内に配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項25】
前記デバイスは、埋め込み可能医療デバイスを備える請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項26】
前記第1ペーシング電極又は前記第2ペーシング電極は、前記デバイスに結合した検知回路と電気的に接続するセンス電極をさらに備え、コンピュータ可読媒体は、
脱分極波活動(depolarization wave activity)を測定し、該測定した脱分極波活動に関係する少なくとも1つのパラメータを少なくとも一時的に記憶するための命令をさらに含む請求項25に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記デバイスに結合し、前記心臓に隣接して配設された少なくとも1つの高電圧電極と電気的に接続する可変電圧ディフィブリレーション回路をさらに備える請求項26に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項28】
心室間(V−V)同期性を最適化し、該最適化の結果として、閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置であって、
左心室の側壁の一部の運動を測定し、且つ該運動に関係する運動信号を提供するための、パルス発生器に結合する運動測定回路に結合するトランスデューサ手段と、
前記左心室の一部と電気的に接続し、且つ前記パルス発生器のペーシング回路に電気結合する左ペーシング電極と、
右心室の一部と電気的に接続し、且つ前記パルス発生器のペーシング回路に電気結合する右ペーシング電極と、
少なくとも1つの心周期の間に心室間(V−V)間隔を反復して変更し、且つ心周期の等容性収縮部分の間に取得された前記運動信号の第1ピークに対応するピーク振幅値を、前記心周期中に使用される前記心室間(V−V)間隔について記憶し、また、該記憶したピーク振幅を比較し、その後、前記最大のピーク振幅に対応する心室間(V−V)間隔に基づいて最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムするための心室間(V−V)間隔最適化手段と、
を備える閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項29】
前記パルス発生器は、埋め込み可能パルス発生器である請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項30】
前記パルス発生器は、心臓の少なくとも1つの腔と電気的に接続する少なくとも1つのディフィブリレーション電極、及び、前記パルス発生器内に配設された高電圧回路機構をさらに備える請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項31】
前記トランスデューサ手段は、加速度計をさらに備え、前記左ペーシング電極は前記加速度計に結合される請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項32】
前記トランスデューサ手段は加速度計を備える請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項33】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底部分である請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項34】
前記左心室の前記一部は、心外膜部分、心内膜部分、又は心膜部分のうちの1つである請求項33に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項35】
心房腔と電気的に接続し、前記パルス発生器の前記ペーシング回路に電気結合するペーシング電極をさらに備える請求項33に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2心室心臓ペーシングモダリティを動作させるようにプログラムされたデバイスにおいて左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法において、
心臓の左心室腔の一部の運動を直接検知するようになっているトランスデューサを配設し、且つ前記運動に関係する信号を提供すること、
前記信号を、前記運動を検出する手段に結合すること、
1つの心室と電気的に接続する第1ペーシング電極と、他の心室と電気的に接続する第2ペーシング電極との心室間(V−V)タイミングパラメータを、時間的な値の範囲にわたって反復して調整すること、
心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つのそれぞれについて、該心室間(V−V)タイミングパラメータ、及び、心周期の等容性収縮部分の間に取得された信号の第1ピークに対応するピーク振幅値を記憶すること、
該記憶したピーク振幅値の大きさを比較すること、及び、
前記記憶した最も高いピーク振幅値に対応する前記心室間(V−V)タイミングパラメータを使用して、最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムすること、
を特徴とする左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項2】
前記トランスデューサは、冠状静脈洞血管の一部、すなわち、前記冠状静脈洞に流体結合した血管内に配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項3】
前記トランシジューサは加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項4】
前記加速度計は、前記心臓の左心室心尖部に向かってほぼ整列した長手方向検知軸を有する単軸加速度計を備える請求項3に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項5】
前記トランスデューサは2軸加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項6】
前記トランスデューサは3軸加速度計を備える請求項2に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項7】
前記トランスデューサは、前記心臓の前記左心室の心外膜の一部に隣接して配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項8】
前記心外膜の前記一部は、前記左心室の側壁の一部である請求項7に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項9】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の基底部分である請求項8に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項10】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底部分である請求項9に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項11】
前記トランスデューサは、前記心臓の心膜内に配設されるようになっている請求項1に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項12】
前記デバイスは、埋め込み可能医療デバイスを備える請求項3に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項13】
前記第1ペーシング電極又は前記第2ペーシング電極は、前記デバイスに結合した検知回路と電気的に接続するセンス電極をさらに備える請求項12に記載の左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法。
【請求項14】
2心室心臓ペーシングモダリティを動作させるようにプログラムされたデバイスにおいて左心室機能を評価し、且つ心臓ペーシング間隔を最適化する方法を実施するための命令によってプログラムされたコンピュータ可読媒体において、
配備式運動トランスデューサによって心臓の左心室腔の一部の運動を検知し、且つ前記運動に関係する、前記トランスデューサからの信号を測定するための命令と、
1つの心室と電気的に接続する第1ペーシング電極と、他の心室と電気的に接続する第2ペーシング電極との心室間(V−V)タイミングパラメータを、時間的な値の範囲にわたって反復して調整するための命令と、
前記心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つを記憶するための命令と、
前記心室間(V−V)タイミングパラメータの少なくとも2つのそれぞれについて、心周期の等容性収縮部分の間に取得された信号の第1ピークに対応するピーク振幅値に対して、それぞれの記憶した心室間(V−V)タイミングパラメータを関係付けるための命令と、
前記記憶したピーク振幅値の大きさを比較するための命令と、
前記記憶した最も高いピーク振幅値に対応する前記心室間(V−V)タイミングパラメータを使用して最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムするための命令と、
を特徴とするコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記トランスデューサは、冠状静脈洞血管の一部、すなわち、該冠状静脈洞に流体結合した血管内に配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記トランシジューサは加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記加速度計は、前記心臓の左心室心尖部に向かってほぼ整列した長手方向検知軸を有する単軸加速度計を備える請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記トランスデューサは2軸加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記トランスデューサは3軸加速度計を備える請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記トランスデューサは、前記心臓の前記左心室の前記心外膜の一部に隣接して配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項21】
前記心外膜の前記一部は、前記左心室の前記側壁の一部である請求項20に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項22】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の基底部分である請求項21に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項23】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底部分である請求項22に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項24】
前記トランスデューサは、前記心臓の心膜内に配設されるようになっている請求項14に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項25】
前記デバイスは、埋め込み可能医療デバイスを備える請求項16に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項26】
前記第1ペーシング電極又は前記第2ペーシング電極は、前記デバイスに結合した検知回路と電気的に接続するセンス電極をさらに備え、コンピュータ可読媒体は、
脱分極波活動を測定し、該測定した脱分極波活動に関係する少なくとも1つのパラメータを少なくとも一時的に記憶するための命令をさらに含む請求項25に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記デバイスに結合し、前記心臓に隣接して配設された少なくとも1つの高電圧電極と電気的に接続する可変電圧ディフィブリレーション回路をさらに備える請求項26に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項28】
心室間(V−V)同期性を最適化し、該最適化の結果として、閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置において、
左心室の側壁の一部の運動を測定し、且つ該運動に関係する運動信号を提供するための、パルス発生器に結合する運動測定回路に結合するトランスデューサ手段と、
前記左心室の一部と電気的に接続し、且つ前記パルス発生器のペーシング回路に電気結合する左ペーシング電極と、
右心室の一部と電気的に接続し、且つ前記パルス発生器のペーシング回路に電気結合する右ペーシング電極と、
少なくとも1つの心周期の間に心室間(V−V)間隔を反復して変更し、且つ心周期の等容性収縮部分の間に取得された前記運動信号の第1ピークに対応するピーク振幅値を、前記心周期中に使用される前記心室間(V−V)間隔について記憶し、また、該記憶したピーク振幅を比較し、その後、前記最大のピーク振幅に対応する心室間(V−V)間隔に基づいて最適化した心室間(V−V)間隔をプログラムするための心室間(V−V)間隔最適化手段と、
を特徴とする閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項29】
前記パルス発生器は、埋め込み可能パルス発生器である請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項30】
前記パルス発生器は、心臓の少なくとも1つの腔と電気的に接続する少なくとも1つのディフィブリレーション電極、及び、前記パルス発生器内に配設された高電圧回路機構をさらに備える請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項31】
前記トランスデューサ手段は、加速度計をさらに備え、前記左ペーシング電極は前記加速度計に結合される請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項32】
前記トランスデューサ手段は加速度計を備える請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項33】
前記側壁の前記一部は、前記側壁の中間−基底部分である請求項28に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項34】
前記左心室の前記一部は、心外膜部分、心内膜部分、又は心膜部分のうちの1つである請求項33に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【請求項35】
心房腔と電気的に接続し、前記パルス発生器の前記ペーシング回路に電気結合するペーシング電極をさらに備える請求項33に記載の閉ループ心臓再同期化治療を送出する装置。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2006−519085(P2006−519085A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508768(P2006−508768)
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/004902
【国際公開番号】WO2004/078257
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/004902
【国際公開番号】WO2004/078257
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【Fターム(参考)】
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