差し込みプラグ
【課題】トラッキング発火防止の実効性が高い差し込みプラグを低コストで製造できるようにする。
【解決手段】突出する2本の栓刃12を有するとともに、過熱状態を検知して電流を遮断するサーモスタット13を内蔵した差し込みプラグ11であって、前記栓刃12を離間保持する栓刃保持部材21を備え、該栓刃保持部材21の栓刃12を保持する部分に、被差し込み部に対して露出する露出面22が形成され、該露出面22における前記栓刃12に挟まれる栓刃間部22aと隣接する部位に、該栓刃間部22aと一体の平面を有して平板状をなす被検温部22bが形成され、該被検温部22bの裏側に前記サーモスタット13を収納する凹所が形成され、該凹所に前記サーモスタット13の感温部13cを面接触させる内底面が形成された差し込みプラグ11。
【解決手段】突出する2本の栓刃12を有するとともに、過熱状態を検知して電流を遮断するサーモスタット13を内蔵した差し込みプラグ11であって、前記栓刃12を離間保持する栓刃保持部材21を備え、該栓刃保持部材21の栓刃12を保持する部分に、被差し込み部に対して露出する露出面22が形成され、該露出面22における前記栓刃12に挟まれる栓刃間部22aと隣接する部位に、該栓刃間部22aと一体の平面を有して平板状をなす被検温部22bが形成され、該被検温部22bの裏側に前記サーモスタット13を収納する凹所が形成され、該凹所に前記サーモスタット13の感温部13cを面接触させる内底面が形成された差し込みプラグ11。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラッキング現象による発火を未然に防ぐ差し込みプラグに関し、より詳しくは、低コストで実効性を高めることができるような差し込みプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
トラッキング発火を防ぐ差し込みプラグとして、出願人は下記特許文献1の発明を提案した。これは、差し込みプラグの2本の栓刃間の温度をサーミスタで検知して、発火に至る前に電流遮断装置で電流を止めようとするものであり、所望の効果が得られている。
【0003】
しかし、サーミスタを用いるため、信号線や電流遮断装置が必要で製造コストがかかる。このため使用範囲も自ずと制約を受けることになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4031026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこでこの発明は、トラッキング発火防止の実効性が高い差し込みプラグを低コストで製造できるようにすることを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのための手段は、突出する2本の栓刃を有するとともに、過熱状態を検知して電流を遮断するサーモスタットを内蔵した差し込みプラグであって、前記栓刃を離間保持する栓刃保持部材を備え、該栓刃保持部材の栓刃を保持する部分に、被差し込み部に対して露出する露出面が形成され、該露出面における前記栓刃に挟まれる栓刃間部と隣接する部位に、該栓刃間部と一体の平面を有して平板状をなす被検温部が形成され、該被検温部の裏側に前記サーモスタットを収納する凹所が形成され、該凹所に前記サーモスタットの感温部を面接触させる内底面が形成された差し込みプラグである。
【0007】
この構成では、サーモスタットの感温部が栓刃保持部材の凹所の内底面に面接触しており、栓刃間での放電により露出面の被検温部が過熱状態になったときには、サーモスタットが被検温部表面の過熱状態を検知して電流を遮断し、発火を防ぐ。
【0008】
好ましくは、前記栓刃保持部材の被検温部が、前記栓刃を前記被差し込み部に対して水平に差し込んだときに上側になる部位に形成されるとよい。トラッキング現象は差し込みプラグとコンセント又はテーブルタップとの間に溜まったほこりと湿気によって放電が起こることが原因となり、放電時に生じる熱は上昇するので、より早い段階で過熱状態の検知ができる。
【0009】
前記栓刃保持部材の被検温部は、前記栓刃間部と接する又は一部重なる部位に形成されるとよい。放電が起こる部位に近いので、より早い段階で過熱状態の検知ができる。
【0010】
前記栓刃保持部材の栓刃間部に栓刃間の沿面距離を長くする凹溝を有するものであってもよい。栓刃間部や被検温部の厚さを薄くすることにもなるので、過熱状態の検知が速やかになされる。
【0011】
前記栓刃保持部材の被検温部の厚さは1mm〜3mmであるとよく、より詳しくは、2mmであるとよい。強度を有しながらも即応性のある温度検知が可能になる。この場合、前記凹溝の深さは1mmであるとよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、栓刃間での放電により露出面の温度が過熱状態になったことを、栓刃間部と一体で隣接する部位の被検温部の温度により検知し、電流を遮断する。このため、発火に到る前の段階で、電流を止めることができ、トラッキング発火防止の実効性が高い。しかも、サーモスタットを用いるので、信号線や電流遮断装置が必要なく、製造コストを抑えることができる。この結果、差し込みプラグを使用できる範囲を広げることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】差し込みプラグの斜視図。
【図2】差し込みプラグの背面側を示す平面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】図3のB−B断面図。
【図5】図2のC−C断面図。
【図6】栓刃保持部材の平面図。
【図7】図6のD−D断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は差し込みプラグ11を栓刃12側から見た斜視図であり、図2は栓刃12と反対側の背面側を示す平面図である。これらの図に示すように、差し込みプラグ11は、2本の栓刃12を有するとともに、過熱状態を検知して電流を遮断するサーモスタット13を内蔵している。
【0015】
栓刃12とサーモスタット13は、例えばメラミン等からなる熱硬化性樹脂製の栓刃保持部材21にコード14と共に保持され、この状態が、栓刃保持部材21を被覆するプラグボディ31で保持されている。すなわち、差し込みプラグ11は、予め形成された栓刃保持部材21に栓刃12、サーモスタット13及びコード14を搭載してから、例えば塩化ビニル等からなる熱可塑性樹脂を用いて射出成形を行うことによって製造される。図3はA−A断面図、図4はB−B断面図、図5はC−C断面図である。
【0016】
前記栓刃12とサーモスタット13は周知のものであり、図4に示したように、コード14の2本の導線のうちの一方の導線14aが1つの栓刃12に接続され、他方の導線14bがサーモスタット13の一方の端子13aに接続される。サーモスタット13の他方の端子13bと残りの栓刃12は、前記コード14とは別の接続線15によって接続されている。
【0017】
前記栓刃保持部材21は、図6、図7に示したような構造であり、前記栓刃12を差し込んだ際に被差し込み部であるコンセントやテーブルタップ(図示せず)に当接する露出面22を有する。換言すれば、前記プラグボディ31を成形しても、栓刃12を突出する面を露出面22として露出している(図1参照)。
【0018】
前記露出面22は平らであり、栓刃保持部材21は前記露出面22を底面とする有底箱状に形成され、露出面22の裏側に、前記栓刃12を保持する栓刃保持部23と、前記サーモスタット13を収納する凹所24が形成されている。
【0019】
栓刃保持部23は、図6に示したように、平面視形状が全体として略縦長の長方形状をなす栓刃保持部材21の縦方向の中間から下に形成されている。この栓刃保持部23は、所定間隔を隔てて前記露出面22に開口する保持孔23aと、この保持孔23aに差し込んで保持した栓刃12の基部を保持する保持空間23bを有する。2個の栓刃保持空間23は上方で一体となり、前記コード14の端部を保持するコード端部保持部25に連通する。
【0020】
コード端部保持部25の端部には、コード14を引き出す引き出し口26が形成されている。図中、27は、コードを規制する規制突起である。
【0021】
前記保持孔23aに栓刃12を差し込むと、図1に示したように栓刃保持部材21の露出面22から2本の栓刃12が突出し、これらの栓刃12は離間保持されることになる。露出面22のうち2本の栓刃12の間の部位が、栓刃間部22aである。
【0022】
前記凹所24は、栓刃保持部材21の縦方向の中間から上に形成されている。具体的には、前記栓刃間部22aと隣接する部位に、該栓刃間部22aと一体の平面を有して平板状をなす被検温部22bが形成され、この被検温部22bの裏側に前記凹所24が形成されている。前記被検温部22bは、前記のように縦方向の中間から上に形成されているので、前記栓刃12を被差し込み部に対して水平に差し込んだときに上側になる部位に形成されていることになる。
【0023】
被検温部22bの形成位置は、図7に示したように、前記栓刃間部22aと接する又は一部重なる部位である。このように、被検温部22bは栓刃間部の極近い部位に形成されている。
【0024】
この被検温部22bは前記のように平板状をなすので、前記凹所24の内底面24aは平らであって、収容される前記サーモスタット13の感温部13cを面接触させることができる。また被検温部22bの厚さtは必要な強度を考慮しつつ材質に応じて極力薄く設定される。具体的には1mm〜3mmであるとよく、より好ましくはメラミンを使用した場合、2mmであるとよい。
【0025】
前記栓刃保持部23と凹所24の周囲には、後で成形するプラグボディ31との密着性を得るべく、適宜の凹凸や貫通孔28が形成されている。
【0026】
前記露出面22における栓刃間部22aには、主として栓刃12間の沿面距離を長くするための凹溝29が平行に2本、栓刃12の幅方向に延びるように形成されている(図1参照)。この凹溝29の深さは適宜設定されるが、前記被検温部22bの厚さtが2mmである場合には、凹溝29の深さは1mmに設定されるとよい。
【0027】
前記プラグボディ31は、栓刃12を突出する側の面が前記栓刃保持部材21の露出面22と面一になるように適宜成形される。また、前記サーモスタット13は上端面に復帰スイッチ13dを有する構造であるので、プラグボディ31の成形はその復帰スイッチ13dを露出するように行われる。その他、フラグボディ31の形状は適宜設定される。
【0028】
このように構成された差し込みプラグ11では、露出面22と被差し込み部との間にほこりと湿気がたまって栓刃12間での放電が起こると、栓刃間部22aが熱を持つ。このまま放置して放電を許していると、栓刃間部22aの炭化が進行してトラックが形成され、火花が発生し、発火に到ることになる。しかし、内蔵されたサーモスタット13が栓刃間部22aと一体で隣接する被検温部22bの温度を面で検知して、所定温度以上に高温の過熱状態が検知された場合には、電流を遮断する。このため、前記のような炭化の進行を防いで、トラッキング発火が起こるのを未然に防止することができ、安全を確保できる。
【0029】
被検温部22bは平板状であり、凹部24に収納されたサーモスタット13は凹部24の内底面24aに面接触してその面の温度を検知するので、一点の温度を検知するのと比較して、広い範囲の温度変化を検知できる。そのうえ、被検温部22bは放電が起こる栓刃間部22aに隣接する位置にあり、しかも栓刃間部22aの上であるので、一刻を争う状況のなか、より早い段階で感度よく過熱状態の検知ができる。
【0030】
また栓刃間部22aには凹溝29が形成されているため、沿面距離を長くして絶縁性を高められる上に、この凹溝29の存在によって、強度を有しつつも被検温部22bへの温度伝達が円滑になる。この点からも即応性があり、感度のよい過熱状態の検知ができる。
【0031】
さらにサーモスタット13を用いるので、信号線や電流遮断装置が必要でない。このため、製造コストを抑えることができて、差し込みプラグ11の使用場面を拡大することができる。
【0032】
このように、トラッキング発火防止の実効性が高い差し込みプラグを低コストで得られるので、広い範囲でトラッキング火災から守ることができる。
【0033】
以上はこの発明を実施するための一形態であり、この発明は前記の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することができる。
【0034】
例えば、サーモスタットには手動復帰型のほか、自動復帰型のものを用いてもよい。
【0035】
また差し込みプラグは、前記のように栓刃の突出方向とコードが引き出される方向とが直交する形状のものではなく、栓刃の突出方向とコードが引き出される方向とが同一となる形状のものでもよい。
【符号の説明】
【0036】
11…差し込みプラグ
12…栓刃
13…サーモスタット
13c…感温部
21…栓刃保持部材
22…露出面
22a…栓刃間部
22b…被検温部
23…栓刃保持部
24…凹所
24a…内底面
29…凹溝
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラッキング現象による発火を未然に防ぐ差し込みプラグに関し、より詳しくは、低コストで実効性を高めることができるような差し込みプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
トラッキング発火を防ぐ差し込みプラグとして、出願人は下記特許文献1の発明を提案した。これは、差し込みプラグの2本の栓刃間の温度をサーミスタで検知して、発火に至る前に電流遮断装置で電流を止めようとするものであり、所望の効果が得られている。
【0003】
しかし、サーミスタを用いるため、信号線や電流遮断装置が必要で製造コストがかかる。このため使用範囲も自ずと制約を受けることになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4031026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこでこの発明は、トラッキング発火防止の実効性が高い差し込みプラグを低コストで製造できるようにすることを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのための手段は、突出する2本の栓刃を有するとともに、過熱状態を検知して電流を遮断するサーモスタットを内蔵した差し込みプラグであって、前記栓刃を離間保持する栓刃保持部材を備え、該栓刃保持部材の栓刃を保持する部分に、被差し込み部に対して露出する露出面が形成され、該露出面における前記栓刃に挟まれる栓刃間部と隣接する部位に、該栓刃間部と一体の平面を有して平板状をなす被検温部が形成され、該被検温部の裏側に前記サーモスタットを収納する凹所が形成され、該凹所に前記サーモスタットの感温部を面接触させる内底面が形成された差し込みプラグである。
【0007】
この構成では、サーモスタットの感温部が栓刃保持部材の凹所の内底面に面接触しており、栓刃間での放電により露出面の被検温部が過熱状態になったときには、サーモスタットが被検温部表面の過熱状態を検知して電流を遮断し、発火を防ぐ。
【0008】
好ましくは、前記栓刃保持部材の被検温部が、前記栓刃を前記被差し込み部に対して水平に差し込んだときに上側になる部位に形成されるとよい。トラッキング現象は差し込みプラグとコンセント又はテーブルタップとの間に溜まったほこりと湿気によって放電が起こることが原因となり、放電時に生じる熱は上昇するので、より早い段階で過熱状態の検知ができる。
【0009】
前記栓刃保持部材の被検温部は、前記栓刃間部と接する又は一部重なる部位に形成されるとよい。放電が起こる部位に近いので、より早い段階で過熱状態の検知ができる。
【0010】
前記栓刃保持部材の栓刃間部に栓刃間の沿面距離を長くする凹溝を有するものであってもよい。栓刃間部や被検温部の厚さを薄くすることにもなるので、過熱状態の検知が速やかになされる。
【0011】
前記栓刃保持部材の被検温部の厚さは1mm〜3mmであるとよく、より詳しくは、2mmであるとよい。強度を有しながらも即応性のある温度検知が可能になる。この場合、前記凹溝の深さは1mmであるとよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、栓刃間での放電により露出面の温度が過熱状態になったことを、栓刃間部と一体で隣接する部位の被検温部の温度により検知し、電流を遮断する。このため、発火に到る前の段階で、電流を止めることができ、トラッキング発火防止の実効性が高い。しかも、サーモスタットを用いるので、信号線や電流遮断装置が必要なく、製造コストを抑えることができる。この結果、差し込みプラグを使用できる範囲を広げることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】差し込みプラグの斜視図。
【図2】差し込みプラグの背面側を示す平面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】図3のB−B断面図。
【図5】図2のC−C断面図。
【図6】栓刃保持部材の平面図。
【図7】図6のD−D断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は差し込みプラグ11を栓刃12側から見た斜視図であり、図2は栓刃12と反対側の背面側を示す平面図である。これらの図に示すように、差し込みプラグ11は、2本の栓刃12を有するとともに、過熱状態を検知して電流を遮断するサーモスタット13を内蔵している。
【0015】
栓刃12とサーモスタット13は、例えばメラミン等からなる熱硬化性樹脂製の栓刃保持部材21にコード14と共に保持され、この状態が、栓刃保持部材21を被覆するプラグボディ31で保持されている。すなわち、差し込みプラグ11は、予め形成された栓刃保持部材21に栓刃12、サーモスタット13及びコード14を搭載してから、例えば塩化ビニル等からなる熱可塑性樹脂を用いて射出成形を行うことによって製造される。図3はA−A断面図、図4はB−B断面図、図5はC−C断面図である。
【0016】
前記栓刃12とサーモスタット13は周知のものであり、図4に示したように、コード14の2本の導線のうちの一方の導線14aが1つの栓刃12に接続され、他方の導線14bがサーモスタット13の一方の端子13aに接続される。サーモスタット13の他方の端子13bと残りの栓刃12は、前記コード14とは別の接続線15によって接続されている。
【0017】
前記栓刃保持部材21は、図6、図7に示したような構造であり、前記栓刃12を差し込んだ際に被差し込み部であるコンセントやテーブルタップ(図示せず)に当接する露出面22を有する。換言すれば、前記プラグボディ31を成形しても、栓刃12を突出する面を露出面22として露出している(図1参照)。
【0018】
前記露出面22は平らであり、栓刃保持部材21は前記露出面22を底面とする有底箱状に形成され、露出面22の裏側に、前記栓刃12を保持する栓刃保持部23と、前記サーモスタット13を収納する凹所24が形成されている。
【0019】
栓刃保持部23は、図6に示したように、平面視形状が全体として略縦長の長方形状をなす栓刃保持部材21の縦方向の中間から下に形成されている。この栓刃保持部23は、所定間隔を隔てて前記露出面22に開口する保持孔23aと、この保持孔23aに差し込んで保持した栓刃12の基部を保持する保持空間23bを有する。2個の栓刃保持空間23は上方で一体となり、前記コード14の端部を保持するコード端部保持部25に連通する。
【0020】
コード端部保持部25の端部には、コード14を引き出す引き出し口26が形成されている。図中、27は、コードを規制する規制突起である。
【0021】
前記保持孔23aに栓刃12を差し込むと、図1に示したように栓刃保持部材21の露出面22から2本の栓刃12が突出し、これらの栓刃12は離間保持されることになる。露出面22のうち2本の栓刃12の間の部位が、栓刃間部22aである。
【0022】
前記凹所24は、栓刃保持部材21の縦方向の中間から上に形成されている。具体的には、前記栓刃間部22aと隣接する部位に、該栓刃間部22aと一体の平面を有して平板状をなす被検温部22bが形成され、この被検温部22bの裏側に前記凹所24が形成されている。前記被検温部22bは、前記のように縦方向の中間から上に形成されているので、前記栓刃12を被差し込み部に対して水平に差し込んだときに上側になる部位に形成されていることになる。
【0023】
被検温部22bの形成位置は、図7に示したように、前記栓刃間部22aと接する又は一部重なる部位である。このように、被検温部22bは栓刃間部の極近い部位に形成されている。
【0024】
この被検温部22bは前記のように平板状をなすので、前記凹所24の内底面24aは平らであって、収容される前記サーモスタット13の感温部13cを面接触させることができる。また被検温部22bの厚さtは必要な強度を考慮しつつ材質に応じて極力薄く設定される。具体的には1mm〜3mmであるとよく、より好ましくはメラミンを使用した場合、2mmであるとよい。
【0025】
前記栓刃保持部23と凹所24の周囲には、後で成形するプラグボディ31との密着性を得るべく、適宜の凹凸や貫通孔28が形成されている。
【0026】
前記露出面22における栓刃間部22aには、主として栓刃12間の沿面距離を長くするための凹溝29が平行に2本、栓刃12の幅方向に延びるように形成されている(図1参照)。この凹溝29の深さは適宜設定されるが、前記被検温部22bの厚さtが2mmである場合には、凹溝29の深さは1mmに設定されるとよい。
【0027】
前記プラグボディ31は、栓刃12を突出する側の面が前記栓刃保持部材21の露出面22と面一になるように適宜成形される。また、前記サーモスタット13は上端面に復帰スイッチ13dを有する構造であるので、プラグボディ31の成形はその復帰スイッチ13dを露出するように行われる。その他、フラグボディ31の形状は適宜設定される。
【0028】
このように構成された差し込みプラグ11では、露出面22と被差し込み部との間にほこりと湿気がたまって栓刃12間での放電が起こると、栓刃間部22aが熱を持つ。このまま放置して放電を許していると、栓刃間部22aの炭化が進行してトラックが形成され、火花が発生し、発火に到ることになる。しかし、内蔵されたサーモスタット13が栓刃間部22aと一体で隣接する被検温部22bの温度を面で検知して、所定温度以上に高温の過熱状態が検知された場合には、電流を遮断する。このため、前記のような炭化の進行を防いで、トラッキング発火が起こるのを未然に防止することができ、安全を確保できる。
【0029】
被検温部22bは平板状であり、凹部24に収納されたサーモスタット13は凹部24の内底面24aに面接触してその面の温度を検知するので、一点の温度を検知するのと比較して、広い範囲の温度変化を検知できる。そのうえ、被検温部22bは放電が起こる栓刃間部22aに隣接する位置にあり、しかも栓刃間部22aの上であるので、一刻を争う状況のなか、より早い段階で感度よく過熱状態の検知ができる。
【0030】
また栓刃間部22aには凹溝29が形成されているため、沿面距離を長くして絶縁性を高められる上に、この凹溝29の存在によって、強度を有しつつも被検温部22bへの温度伝達が円滑になる。この点からも即応性があり、感度のよい過熱状態の検知ができる。
【0031】
さらにサーモスタット13を用いるので、信号線や電流遮断装置が必要でない。このため、製造コストを抑えることができて、差し込みプラグ11の使用場面を拡大することができる。
【0032】
このように、トラッキング発火防止の実効性が高い差し込みプラグを低コストで得られるので、広い範囲でトラッキング火災から守ることができる。
【0033】
以上はこの発明を実施するための一形態であり、この発明は前記の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することができる。
【0034】
例えば、サーモスタットには手動復帰型のほか、自動復帰型のものを用いてもよい。
【0035】
また差し込みプラグは、前記のように栓刃の突出方向とコードが引き出される方向とが直交する形状のものではなく、栓刃の突出方向とコードが引き出される方向とが同一となる形状のものでもよい。
【符号の説明】
【0036】
11…差し込みプラグ
12…栓刃
13…サーモスタット
13c…感温部
21…栓刃保持部材
22…露出面
22a…栓刃間部
22b…被検温部
23…栓刃保持部
24…凹所
24a…内底面
29…凹溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出する2本の栓刃を有するとともに、過熱状態を検知して電流を遮断するサーモスタットを内蔵した差し込みプラグであって、
前記栓刃を離間保持する栓刃保持部材を備え、
該栓刃保持部材の栓刃を保持する部分に、被差し込み部に対して露出する露出面が形成され、
該露出面における前記栓刃に挟まれる栓刃間部と隣接する部位に、該栓刃間部と一体の平面を有して平板状をなす被検温部が形成され、
該被検温部の裏側に前記サーモスタットを収納する凹所が形成され、
該凹所に前記サーモスタットの感温部を面接触させる内底面が形成された
差し込みプラグ。
【請求項2】
前記栓刃保持部材の被検温部が、前記栓刃を前記被差し込み部に対して水平に差し込んだときに上側になる部位に形成された
請求項1に記載の差し込みプラグ。
【請求項3】
前記栓刃保持部材の被検温部が前記栓刃間部と接する又は一部重なる部位に形成された
請求項1または請求項2に記載の差し込みプラグ。
【請求項4】
前記栓刃保持部材の栓刃間部に栓刃間の沿面距離を長くする凹溝が形成された
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の差し込みプラグ。
【請求項5】
前記栓刃保持部材の被検温部の厚さが1mm〜3mmである
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の差し込みプラグ。
【請求項1】
突出する2本の栓刃を有するとともに、過熱状態を検知して電流を遮断するサーモスタットを内蔵した差し込みプラグであって、
前記栓刃を離間保持する栓刃保持部材を備え、
該栓刃保持部材の栓刃を保持する部分に、被差し込み部に対して露出する露出面が形成され、
該露出面における前記栓刃に挟まれる栓刃間部と隣接する部位に、該栓刃間部と一体の平面を有して平板状をなす被検温部が形成され、
該被検温部の裏側に前記サーモスタットを収納する凹所が形成され、
該凹所に前記サーモスタットの感温部を面接触させる内底面が形成された
差し込みプラグ。
【請求項2】
前記栓刃保持部材の被検温部が、前記栓刃を前記被差し込み部に対して水平に差し込んだときに上側になる部位に形成された
請求項1に記載の差し込みプラグ。
【請求項3】
前記栓刃保持部材の被検温部が前記栓刃間部と接する又は一部重なる部位に形成された
請求項1または請求項2に記載の差し込みプラグ。
【請求項4】
前記栓刃保持部材の栓刃間部に栓刃間の沿面距離を長くする凹溝が形成された
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の差し込みプラグ。
【請求項5】
前記栓刃保持部材の被検温部の厚さが1mm〜3mmである
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の差し込みプラグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−164461(P2012−164461A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22603(P2011−22603)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(391018732)富士電線工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(391018732)富士電線工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
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