説明

差動単相変換回路

【課題】チップ面積を縮小させ、電力効率を向上させた差動単相変換回路を提供すること。
【解決手段】差動単相変換回路1は、ソースフォロア増幅器10とソース接地増幅器20から構成される。ソースフォロア増幅器10は、差動信号の非反転信号INを同相のまま出力する。ソース接地増幅器20は、差動信号の反転信号INXを反転させて、非反転信号INと同位相にする。点Aにおいて、共に同相の2つの差動信号IN、INXが加算されて単相信号OUTとして出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号を単相信号に変換する差動単相変換回路に関する。詳しくは、チップ面積を縮小させ、電力効率を向上させた差動単相変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位相が夫々異なる差動信号から単相信号に変換する差動単相変換回路がある。例えば、差動単相変換回路は、変換後の単相信号を1本のアンテナに出力して通信を行う携帯電話や無線LANなどで用いられる。
【0003】
従来の差動単相変換回路としては、受動素子であるトランス101(又はバラン)を用いたもの(図9(A)参照)や、トランジスタ104、105を用いたもの(図9(B)参照)が一般的である。いずれも、2つの入力端子IN、INXから差動信号が入力され、出力端子OUTから単相信号が出力される。
【0004】
また、トランジスタから構成されるカレントミラー回路を複数組み合わせて、歪みの小さいシングルエンド信号を得るようにした差動・シングルエンド変換回路も開示されている(例えば、以下の特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−288762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図9(A)に示すトランスによる差動単相変換回路ではトランス101の分だけ、チップ面積も大きくなる。また、図9(B)に示すトランジスタによる差動単相変換回路では、入力される差動信号の反転信号INXの出力側のみ用いて単相信号OUTを得ているため、電力損失が大きい。
【0006】
更に、上記特許文献1では複数のカレントミラー回路を組み合わせているため、部品点数が多くなり同様にチップ面積が大きくなる。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、チップ面積を縮小させ、電力効率を向上させた差動単相変換回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施態様によれば、差動単相変換回路において、逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号を同相で出力する同相出力増幅器と、前記同相出力増幅器と容量結合され、前記差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号の位相を反転させ、前記第1の差動信号と前記位相が反転された第2の差動信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の実施態様によれば、前記差動単相変換回路において、前記差動前記同相出力増幅器はドレイン側を接地したソースフォロア増幅器で構成され、前記反転出力増幅器はソース側を接地したソース接地増幅器で構成されることを特徴とする。
【0010】
更に、本発明の他の実施態様によれば、前記差動単相変換回路において、前記同相出力増幅器はゲート側を接地したゲート接地増幅器で構成され、前記反転出力増幅器はソース側を接地したソース接地増幅器で構成されることを特徴とする。
【0011】
更に、本発明の他の実施態様によれば、前記差動単相変換回路において、前記ソース接地増幅器のドレイン側若しくはソース側、又は前記ソースフォロア増幅器の出力側に前記第1の差動信号又は前記第2の差動信号の位相差を調整する位相調整器が接続されることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の他の実施態様によれば、前記差動単相変換回路において、前記ソース接地増幅器のドレイン側若しくはソース側、又は前記ソースフォロワ増幅器の出力側に前記第1の差動信号又は前記第2の差動信号のゲインを調整するゲイン調整器が接続されることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の他の実施態様によれば、前記差動単相変換回路において、前記ソースフォロア増幅器の出力側に前記第1又は第2の差動信号のゲインを増幅することで当該ゲインを調整するゲイン増幅器を備えることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の他の実施態様によれば、前記差動単相変換回路において、前記ソースフォロワ増幅器の出力側に前記第1又は第2の差動信号の位相を調整する位相調整器を備えることを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の他の実施態様によれば、前記差動単相変換回路において、前記ソース接地増幅器の出力側に接続され、前記第1又は前記第2の差動信号の位相差又はゲイン差を検出する検出回路と、前記検出回路の検出結果に基づいて調整量を演算する演算回路とを備え、前記位相調整器又は前記ゲイン調整器は前記調整量に基づいて位相調整又はゲイン調整が行われることを特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するために、本発明の他の実施態様によれば、差動単相変換回路において、逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号の位相を反転させた反転信号を出力する反転出力増幅器と、前記反転出力増幅器と容量結合され、前記一対の差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号と同相の同相差動信号を得、前記反転信号と前記同相差動信号とを加算して単相信号を出力する同相出力増幅器とを備えることを特徴とする。
【0017】
更に、上記目的を達成するために、本発明の他の実施態様によれば、差動単相変換回路において、逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号を同相で出力する同相出力増幅器と、前記同相出力増幅器と容量結合され、前記差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号の位相を反転させ、前記第1の差動信号と前記位相が反転された第2の差動信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器と、前記同相出力増幅器の入力側にキャリブレーション回路とを備え、前記キャリブレーション回路から同相キャリブレーション信号を発生させ、前記反転出力増幅器の出力側において前記第1及び第2の差動信号の位相差又はゲイン差が検出される際にキャリブレーション期間における前記第1及び第2の差動信号の位相調整量又はゲイン調整量が測定され、その結果が記憶装置に記憶され、実動作の際に前記記憶装置に記憶された前記位相調整量又はゲイン調整量に基づいて、前記第1及び前記第2の差動信号の位相調整又はゲイン調整が行われることを特徴とする。
【0018】
更に、上記目的を達成するために本発明の他の実施態様によれば、差動単相変換回路において、逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号を同相で出力する同相出力増幅器と、前記同相出力増幅器と容量結合され、前記差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号の位相を反転させ、前記第1の差動信号と前記位相が反転された第2の差動信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器と、前記同相出力増幅器の入力側にキャリブレーション回路と、前記キャリブレーション回路から同相のキャリブレーション信号が出力されるとき、前記反転出力増幅器の出力段において前記第1又は第2の差動信号の位相調整量又はゲイン調整量を検出する検出部と、前記検出部で検出した前記位相調整量又は前記ゲイン調整量を記憶する記憶部と、前記キャリブレーション回路から前記キャリブレーション信号が出力されないときに、前記記憶部から前記位相調整量又は前記ゲイン調整量を読み出して前記第1及び第2の差動信号の位相又はゲインを調整する調整部とを備えることを特徴とする。
【0019】
更に、上記目的を達成するために本発明の他の実施態様によれば、差動単相変換回路において、逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号を同相で出力する同相出力増幅器と、前記同相出力増幅器と容量結合され、前記差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号の位相を反転させ、前記第1の差動信号と前記位相が反転された第2の差動信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器と、前記単相信号に基づいて通信を行う通信部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、チップ面積を縮小させ、電力効率を向上させた差動単相変換回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明が適用される差動単相変換回路1の構成例を示す図である。差動単相変換回路1は、逆相関係にある一対の差動信号の一方の信号の位相を増幅させるとともに当該信号の位相を同相で出力するソースフォロア増幅器(同相出力増幅器)10と、逆相関係にある一対の差動信号の他方の信号の位相を増幅させるとともに当該信号の位相を反転させて出力するソース接地増幅器(反転出力増幅器)20と、ソースフォロア増幅器10とソース接地増幅器20とを直列に接続するコンデンサ13と、位相差検出回路30を備える。
【0023】
また、ソースフォロア増幅器10は、第1のトランジスタ11と、定電流源12を備える。
【0024】
第1のトランジスタ11のゲート側には、差動信号の非反転信号INが入力される。また、第1のトランジスタ11のソース側に電源VDDが接続され、ドレイン側に定電流源が接続される。更に、ドレイン側にはコンデンサ13が接続される。定電流源12の一方の側は、グランド(GND)に接続される。
【0025】
ソース接地増幅器20は、出力される単相信号OUTを増幅させるためのロード回路21と、第2のトランジスタ22と、位相差検出回路30の検出結果に基づいて差動信号の位相を調整する位相調整器23を備える。
【0026】
ロード回路21は、抵抗或いはインタクタにより構成され、電源VDDと接続される。第2のトランジスタ22は、ロード回路21と接続されるとともに位相調整器23と接続される。位相調整器23は、グランド(GND)とも接続される。
【0027】
ロード回路21と第2のトランジスタ22との間にある点Aにおいて、コンデンサ13の出力側が接続され、点Aから単相信号OUTが出力される。
【0028】
位相差検出回路30は、ソース接地増幅器20からの単相信号OUTが入力され、単相信号OUTから差動信号IN、INXの位相差を検出してその検出結果を位相調整器23に出力する。位相調整器23は、その検出結果に基づいて、第2のトランジスタ22のゲート側に入力される差動信号の反転信号INXの位相(或いは、差動信号の非反転信号INの位相)を調整する。尚、図1に示すように、位相差検出回路30と位相調整器23等によりフィードバックループが形成される。
【0029】
このように構成された差動単相変換回路1における動作は以下のようになる。即ち、差動信号の非反転信号INは第1のトランジスタ11のゲート側に入力されて、定電流源12により、ドレイン側から出力する。そして、非反転信号INはコンデンサ13を介して点Aに出力される。
【0030】
一方、差動信号の反転信号INXは第2のトランジスタ22のゲート側に入力される。ロード回路21は電源VDDに接続され、一定値の抵抗等により構成されるため、ゲート側に入力された反転信号INXの入力電圧が高くなると、ロード回路21に流れる電流は大きくなり、従って第2のトランジスタ22のドレイン側の電圧は低くなる。つまり、反転信号INXの入力電圧が高くなると第2のトランジスタ22のドレイン側の電圧は低くなる。
【0031】
また、第2のトランジスタ22のゲート側に入力される反転信号INXの入力電圧が小さくなると、ロード回路21に流れる電流は大きくなり、ドレイン側の電圧は高くなる。
【0032】
即ち、差動信号の反転信号INXの電圧が高くなると、第2のトランジスタ22のドレイン側の電圧は低くなり、反転信号INXの電圧が低くなるとドレイン側の電圧は高くなるため、第2のトランジスタ22のドレイン側からは反転信号INXの位相が反転した、非反転信号INと同位相の信号が出力される。
【0033】
従って、点Aにおいて、差動信号の非反転信号INと、この非反転信号INと同位相の差動信号の反転信号INX(非反転信号INと同位相)とが加算された単相信号OUTを得る。
【0034】
このように、入力差動信号IN、INXの双方を用いて単相信号OUTに変換しているため、電力損失を抑えた差動単相変換回路1を得る。また、トランスや、複数のカレントミラー回路等を用いていないため、チップ面積を縮小させた差動単相変換回路1を得る。
【0035】
次に図2乃至図6を用いて、差動単相変換回路1の具体的な構成例について説明する。
【0036】
図2の差動単相変換回路1は、定電流源12として第3のトランジスタ121、ロード回路21として一定の抵抗値を有する抵抗211、位相調整器23として可変抵抗231を用いている。更に、ゲイン差検出回路40と、ゲイン調整器としての可変コンデンサ232とを付加している。それ以外の構成は、図1と同様である。
【0037】
可変コンデンサ232は、位相差検出回路30により検出された検出結果に基づいて、その容量を可変にすることができ、2つの差動信号IN、INXの位相差を調整する。
【0038】
ゲイン差検出回路40は、単相信号OUTに基づいて、2つの差動信号IN、INXのゲイン差を検出し、その検出結果を可変抵抗231に出力する。可変抵抗231はその検出結果に基づいて抵抗値を可変にすることができ、これにより差動信号の反転信号INXのゲインと非反転信号INのゲインとを略同じになるように調整することができる。尚、可変抵抗231はスイッチによる切り替えで抵抗値が制御される。
【0039】
点Aにおいて、差動信号の非反転信号INと同位相の反転信号INXが第2のトランジスタ22から出力され、コンデンサ13からの非反転信号INとが加算される点は、図1の例と同様である。従って、図2に示す差動単相反転回路1でも、チップ面積を縮小させ、電力損失を抑えることができる。
【0040】
また、図2に示す例では、可変抵抗231により、ゲインが略同じになるように調整された差動信号IN、INXを得ることができる。
【0041】
次に、図3に示す差動単相変換回路1について説明する。同図に示す差動単相変換回路1は、図2と比較して、第1のトランジスタ11をnMOSではなく、pMOSで構成した例である。第1のトランジスタ11のソース側を点Aと接続させ、ドレイン側を端子AVS、可変抵抗231、及び可変コンデンサ232と接続させている。
【0042】
この差動単相変換回路1では端子AVSを接地させている。従って、定電流源12(第3のトランジスタ121)を設ける必要がない。
【0043】
また、第1のトランジスタ11のソース側は抵抗211と接続されているため、第2のトランジスタ22のソース側に与える負荷と第1のトランジスタ11のソース側に与える負荷は略同じである。図2の例のように、コンデンサ13により差動信号の非反転信号INを一定量蓄積して出力させる必要はなく、コンデンサ13を設ける必要がない。
【0044】
従って、第1のトランジスタ11をpMOSで構成することにより、定電流源12とコンデンサ13とを設ける必要がないため、図2の差動単相変換回路1と比較して更に部品点数を少なくすることができる。それ以外の構成は図2と同様のため、本例の差動単相変換回路1でもチップ面積を小さくし電力損失を抑えることができる。
【0045】
図4は、位相差検出回路30とゲイン差検出回路40との検出結果をデジタル信号として出力し、ゲイン調整器(可変抵抗231)と位相調整器(可変コンデンサ232)とをデジタル制御する例である。それ以外の構成は、図2と同様である。
【0046】
即ち、位相差検出回路30の出力側に、第1の演算処理部31と第1のDAC(D/Aコンバータ)32を順次接続し、ゲイン差検出回路40の出力側に、第2の演算処理部41と第2のDAC42を接続する。
【0047】
位相差検出回路30は、上述の例と同様に位相差を検出し、デジタル信号に変換して出力する。第1の演算処理部31は、例えば内部テーブルを備え、位相差検出回路30からの位相差に対応する調整量を読み出して出力する。位相調整器23である可変コンデンサ232は調整量に基づいて容量が制御される。
【0048】
尚、可変コンデンサ232がアナログ制御の場合は、第1の演算処理部31からのデジタル信号を第1のDAC32によりアナログ信号に変換してその容量が制御される。
【0049】
ゲイン差検出回路40と、第2の演算処理部41、及び第2のDAC42も同様に動作する。ゲイン調整器である可変抵抗231がデジタル制御される場合は、第2の演算処理部41からの調整量に応じたデジタル信号に基づいて制御され、アナログ制御される場合は第2のDAC42によりアナログ値に変換されて制御される。
【0050】
それ以外の構成は、図2と同様であるため、本例による差動単相変換回路1でもチップ面積を少なくし、電力損失を抑えることができる。
【0051】
次に図5の例について説明する。本例の差動単相変換回路1は、ソース接地増幅器20の前段にバッファ50を設け、後段にソースフォロア増幅器10に代えゲート接地増幅器60を設けた例である。
【0052】
バッファ50は、第4〜第7のトランジスタ51〜54を備える。第4のトランジスタ51のゲート側に差動信号の反転信号INXが入力され、ソース側は電源VDD、ドレイン側は第6のトランジスタ53のソース側と接続される。
【0053】
第5のトランジスタ52のゲートには差動信号の非反転信号INが入力され、ソース側は電源VDD、ドレイン側は第7のトランジスタ54のソース側と接続される。
【0054】
第6のトランジスタ53のゲート側は端子VGと接続され、ドレイン側は接地された端子AVSと接続される。また、第7のトランジスタ54のゲート側も端子VGと、ドレイン側は端子AVSと接続される
また、第4のトランジスタ51のドレイン側はソース接地増幅器20の第2のトランジスタ22のゲート側と接続され、第5のトランジスタ52のドレイン側はコンデンサ13と接続される。
【0055】
一方、ゲート接地増幅器60は、第8及び第9のトランジスタ61、62を備える。第8のトランジスタ61のゲート側は接地(端子AVSと接続)され、ドレイン側は単相信号OUTが入力され、ソース側は第9のトランジスタ62のソース側と接続される。第9のトランジスタ62のゲート側は端子VGと接続され、ドレイン側が接地される。
【0056】
バッファ50は、差動信号IN、INXをバッファリングして、負荷が大きい回路(ソース接地増幅器20等)に対して適切な出力が得られるようにその駆動力を高めるためのものである。差動信号の非反転信号INは、第5のトランジスタ52及びコンデンサ13を介して、第8のトランジスタ61のドレイン側に出力される。そして、第8のトランジスタ61のソース側において(点Bにおいて)、入力された非反転信号INと同位相の信号を得る。
【0057】
一方、差動信号の反転信号INXは、第4のトランジスタ51を介して第2のトランジスタ22のゲート側に入力される。図1等の例と同様にして第2のトランジスタ22のソース側で位相が反転されて、非反転信号INと同位相の信号が出力される。
【0058】
尚、第9のトランジスタ62は、ソースフォロア増幅器10の第1のトランジスタ11(定電流源)に相当する。
【0059】
点Bでは、同位相の2つの信号(反転信号INXと非反転信号IN)が加算されて、単相信号OUTを得る。従って、図1等と同様に、本例による差動単相変換回路1でも電力損失を少なくすることができる。
【0060】
また、位相差検出回路30やゲイン差検出回路40等は図4の例と同様のため、位相差調整器(可変コンデンサ232)やゲイン調整器(可変抵抗231)に対しデジタル制御やアナログ制御により位相差の制御等を行い得る。
【0061】
図6は、ソース接地増幅器20に可変アンプ25を設けた例である。差動信号の反転信号INXのゲインが高い場合に、差動信号の非反転信号INのゲインをこの可変アンプ25により高くして、2つの差動信号IN、INXのゲインを略同じレベルに調整するためのものである。そのため、コンデンサ13と点Aとの間に可変アンプ25を設けている。
【0062】
それ以外の構成は、図2と同様のため、本例による差動単相変換回路1でも電力損失を抑え、チップ面積を小さくすることができる。
【0063】
図7は、図1に示す差動単相変換回路1のソースフォロア増幅器10と、ソース接地増幅器20とを入れ替えた構成の差動単相変換回路1の例である。ソースフォロア増幅器1とソース接地増幅器20の構成は、図1と同様である。
【0064】
ソース接地回路20から出力された反転信号INXの反転信号(非反転信号INと同位相の信号)と、ソースフォロア増幅器10による非反転信号INとが点Bにおいて加算され、単相信号OUTを得る。
【0065】
従って、上述した例と同様に電力損失を抑え、チップ面積を小さくした差動単相変換回路を得る。
【0066】
次に、2つの差動信号IN、INXの入力側にキャリブレーション回路70を追加した構成の差動単相変換回路1の例について説明する。図8はその一例であり、図5の差動単相変換回路1に対してキャリブレーション回路70と記憶装置80とを追加した構成の差動単相変換回路1の例を示す図である。
【0067】
キャリブレーション回路70から同相のキャリブレーション信号を発生させると、出力段OUTでは本来なら信号は出力されない。しかし、2つの差動信号IN、INXに位相差やゲイン差があると信号が出力される。キャリブレーション信号が発生する期間であるキャリブレーション期間に、位相差とゲイン差を夫々位相差検出回路30とゲイン差検出回路40で検出する。そして、第1及び第2の演算処理部31,41は検出結果から内部テーブルに基づき調整量を出力する。出力された位相調整量やゲイン調整量は記憶装置80に記憶される。その後、キャリブレーション回路70からキャリブレーション信号が発生しない期間(この期間を「実動作」期間という)において、記憶装置80から位相調整量やゲイン調整量が読み出され、ゲイン調整器(可変抵抗231)や位相調整器(可変コンデンサ232)に出力されて、ゲイン差や位相差が調整される。
【0068】
キャリブレーション回路70は、図1に示す差動単相変換回路1に接続されてもよいし、図2〜図4等に示す差動単相変換回路1に接続されてもよい。いずれの場合もキャリブレーション回路70は、2つの差動信号の入力端子IN,INXと、第1及び第2のトランジスタ11,22との間に接続される。このような場合でも、キャリブレーション期間で位相差検出回路30やゲイン差検出回路40で2つの差動信号の位相差やゲイン差を検出して、各調整量を記憶回路70に記憶させ、実動作期間に調整量に基づいてゲイン調整器や位相調整器でゲイン差や位相差が調整される。
【0069】
上述したいずれの例においても、差動信号の反転信号INXに対して位相を反転させ、非反転信号INと同位相にするものとして説明した。勿論、差動信号の非反転信号INが入力される端子に反転信号INX、反転信号INXが入力される端子に非反転信号INを出力させるようにすれば、非反転信号INの位相を反転信号INXの位相と同位相にして単相信号OUTを得ることができる。この場合でも、上述した例と同様にチップ面積を縮小させ、電力損失を抑えた差動単相変換回路を得ることができる。
【0070】
また、上述した例において、位相調整器とゲイン調整器は第2のトランジスタ22のドレイン側に設けるものとして説明した。勿論、第2のトランジスタ22のゲート側に設けるようにしてもよい。この場合でも、上述した例と同様の作用効果を奏する。
【0071】
尚、上述した差動単相変換回路1は、例えば、携帯電話や無線LANなどの通信装置に適用して好適である。例えば、差動単相変換回路1からの単相信号を、アンテナ等の通信部に出力させて通信部により他の通信装置と通信を行うように構成することができる。
【0072】
以上まとめると付記のようになる。
【0073】
(付記1)
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号を同相で出力する同相出力増幅器と、
前記同相出力増幅器と容量結合され、前記差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号の位相を反転させ、前記第1の差動信号と前記位相が反転された第2の差動信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器と
を備えることを特徴とする差動単相変換回路。
【0074】
(付記2)
前記同相出力増幅器はドレイン側を接地したソースフォロア増幅器で構成され、前記反転出力増幅器はソース側を接地したソース接地増幅器で構成されることを特徴とする付記1記載の差動単相変換回路。
【0075】
(付記3)
前記同相出力増幅器はゲート側を接地したゲート接地増幅器で構成され、前記反転出力増幅器はソース側を接地したソース接地増幅器で構成されることを特徴とする付記1記載の差動単相変換回路。
【0076】
(付記4)
前記ソース接地増幅器のドレイン側若しくはソース側、又は前記ソースフォロア増幅器の出力側に前記第1の差動信号又は前記第2の差動信号の位相差を調整する位相調整器が接続されることを特徴とする付記2又は3記載の差動単相変換回路。
【0077】
(付記5)
前記ソース接地増幅器のドレイン側若しくはソース側、又は前記ソースフォロワ増幅器の出力側に前記第1の差動信号又は前記第2の差動信号のゲインを調整するゲイン調整器が接続されることを特徴とする付記2又は3記載の差動単相変換回路。
【0078】
(付記6)
前記ソースフォロア増幅器の出力側に前記第1又は第2の差動信号のゲインを増幅することで当該ゲインを調整するゲイン増幅器を備えることを特徴とする付記4記載の差動単相変換回路。
【0079】
(付記7)
前記ソースフォロワ増幅器の出力側に前記第1又は第2の差動信号の位相を調整する位相調整器を備えることを特徴とする付記4記載の差動単相変換回路。
【0080】
(付記8)
前記ソース接地増幅器の出力側に接続され、前記第1又は前記第2の差動信号の位相差又はゲイン差を検出する検出回路と、
前記検出回路の検出結果に基づいて調整量を演算する演算回路とを備え、
前記位相調整器又は前記ゲイン調整器は前記調整量に基づいて位相調整又はゲイン調整が行われることを特徴とする付記4記載の差動単相変換回路。
【0081】
(付記9)
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号の位相を反転させた反転信号を出力する反転出力増幅器と、
前記反転出力増幅器と容量結合され、前記一対の差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号と同相の同相差動信号を得、前記反転信号と前記同相差動信号とを加算して単相信号を出力する同相出力増幅器と
を備えることを特徴とする差動単相変換回路。
【0082】
(付記10)
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号を同相で出力する同相出力増幅器と、
前記同相出力増幅器と容量結合され、前記差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号の位相を反転させ、前記第1の差動信号と前記位相が反転された第2の差動信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器と、
前記同相出力増幅器の入力側にキャリブレーション回路とを備え、
前記キャリブレーション回路から同相キャリブレーション信号を発生させ、前記反転出力増幅器の出力側において前記第1及び第2の差動信号の位相差又はゲイン差が検出される際にキャリブレーション期間における前記第1及び第2の差動信号の位相調整量又はゲイン調整量が測定され、その結果が記憶装置に記憶され、実動作の際に前記記憶装置に記憶された前記位相調整量又はゲイン調整量に基づいて、前記第1及び前記第2の差動信号の位相調整又はゲイン調整が行われることを特徴とする差動単相変換回路。
【0083】
(付記11)
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号を同相で出力する同相出力増幅器と、
前記同相出力増幅器と容量結合され、前記差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号の位相を反転させ、前記第1の差動信号と前記位相が反転された第2の差動信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器と、
前記同相出力増幅器の入力側にキャリブレーション回路と、
前記キャリブレーション回路から同相のキャリブレーション信号が出力されるとき、前記反転出力増幅器の出力段において前記第1又は第2の差動信号の位相調整量又はゲイン調整量を検出する検出部と、
前記検出部で検出した前記位相調整量又は前記ゲイン調整量を記憶する記憶部と、
前記キャリブレーション回路から前記キャリブレーション信号が出力されないときに、前記記憶部から前記位相調整量又は前記ゲイン調整量を読み出して前記第1及び第2の差動信号の位相又はゲインを調整する調整部と
を備えることを特徴とする差動単相変換回路。
【0084】
(付記12)
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号を同相で出力する同相出力増幅器と、
前記同相出力増幅器と容量結合され、前記差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号の位相を反転させ、前記第1の差動信号と前記位相が反転された第2の差動信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器と、
前記単相信号に基づいて通信を行う通信部と
を備えることを特徴とする通信装置。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、差動単相変換回路の構成例を示す図である。
【図2】図2は、差動単相変換回路の具体的な構成例を示す図である。
【図3】図3は、差動単相変換回路の具体的な構成例を示す図である。
【図4】図4は、差動単相変換回路の具体的な構成例を示す図である。
【図5】図5は、差動単相変換回路の具体的な構成例を示す図である。
【図6】図6は、差動単相変換回路の具体的な構成例を示す図である。
【図7】図7は、差動単相変換回路の具体的な構成例を示す図である。
【図8】図8は、差動単相変換回路の具体的な構成例を示す図である。
【図9】図9(A)及び(B)ともに従来の差動単相変換回路の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 差動単相変換回路、 10 ソースフォロア増幅器、 11 第1のトランジスタ、 12 定電流源、 13 コンデンサ、 20 ソース接地増幅器、 21 ロード回路、 22 第2のトランジスタ、 23 位相調整器、 30 位相差検出回路、 31 第1の演算処理部、 32 第1のDAC、 40 ゲイン差検出回路、 41 第2の演算処理部、 42 第2のDAC、 50 バッファ、 51〜54 第4〜第7のトランジスタ、 60 ゲート接地増幅器、 61 第8のトランジスタ、 62 第9のトランジスタ、 70 キャリブレーション回路、 80 記憶装置、 121 第3のトランジスタ、 211 抵抗、 231 可変抵抗、 232 可変コンデンサ、 IN 差動信号の非反転信号、 INX 差動信号の反転信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号を同相で出力する同相出力増幅器と、
前記同相出力増幅器と容量結合され、前記差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号の位相を反転させ、前記第1の差動信号と前記位相が反転された第2の差動信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器と
を備えることを特徴とする差動単相変換回路。
【請求項2】
前記同相出力増幅器はドレイン側を接地したソースフォロア増幅器で構成され、前記反転出力増幅器はソース側を接地したソース接地増幅器で構成されることを特徴とする請求項1記載の差動単相変換回路。
【請求項3】
前記同相出力増幅器はゲート側を接地したゲート接地増幅器で構成され、前記反転出力増幅器はソース側を接地したソース接地増幅器で構成されることを特徴とする請求項1記載の差動単相変換回路。
【請求項4】
前記ソース接地増幅器のドレイン側若しくはソース側、又は前記ソースフォロア増幅器の出力側に前記第1の差動信号又は前記第2の差動信号の位相差を調整する位相調整器が接続されることを特徴とする請求項2又は3記載の差動単相変換回路。
【請求項5】
前記ソース接地増幅器のドレイン側若しくはソース側、又は前記ソースフォロワ増幅器の出力側に前記第1の差動信号又は前記第2の差動信号のゲインを調整するゲイン調整器が接続されることを特徴とする請求項2又は3記載の差動単相変換回路。
【請求項6】
前記ソースフォロア増幅器の出力側に前記第1又は第2の差動信号のゲインを増幅することで当該ゲインを調整するゲイン増幅器を備えることを特徴とする請求項4記載の差動単相変換回路。
【請求項7】
前記ソースフォロワ増幅器の出力側に前記第1又は第2の差動信号の位相を調整する位相調整器を備えることを特徴とする請求項4記載の差動単相変換回路。
【請求項8】
前記ソース接地増幅器の出力側に接続され、前記第1又は前記第2の差動信号の位相差又はゲイン差を検出する検出回路と、
前記検出回路の検出結果に基づいて調整量を演算する演算回路とを備え、
前記位相調整器又は前記ゲイン調整器は前記調整量に基づいて位相調整又はゲイン調整が行われることを特徴とする請求項4記載の差動単相変換回路。
【請求項9】
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号の位相を反転させた反転信号を出力する反転出力増幅器と、
前記反転出力増幅器と容量結合され、前記一対の差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号と同相の同相差動信号を得、前記反転信号と前記同相差動信号とを加算して単相信号を出力する同相出力増幅器と
を備えることを特徴とする差動単相変換回路。
【請求項10】
逆相関係にある一対の差動信号のうち第1の差動信号を増幅させるとともに前記第1の差動信号を同相で出力する同相出力増幅器と、
前記同相出力増幅器と容量結合され、前記差動信号のうち第2の差動信号を増幅させるとともに前記第2の差動信号の位相を反転させ、前記第1の差動信号と前記位相が反転された第2の差動信号とを加算して単相信号を出力する反転出力増幅器と、
前記同相出力増幅器の入力側にキャリブレーション回路とを備え、
前記キャリブレーション回路から同相キャリブレーション信号を発生させ、前記反転出力増幅器の出力側において前記第1及び第2の差動信号の位相差又はゲイン差が検出される際にキャリブレーション期間における前記第1及び第2の差動信号の位相調整量又はゲイン調整量が測定され、その結果が記憶装置に記憶され、実動作の際に前記記憶装置に記憶された前記位相調整量又はゲイン調整量に基づいて、前記第1及び前記第2の差動信号の位相調整又はゲイン調整が行われることを特徴とする差動単相変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−109645(P2008−109645A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249801(P2007−249801)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】