説明

差圧式調圧弁

【課題】広範囲に圧力調整可能な差圧式調圧弁を低コストにて提供すること。
【解決手段】流入する使用液の圧力を調整するための調圧室1にその一部が進入するピストン3、又は、このピストン3が通されると共に調圧室1内の使用液を排出するための余液口1cを形成する弁座2に対しての当該ピストン3の離座/着座をガイドするピストンガイド4の何れか一方に、Oリング溝を複数異径位置に設け、これらのOリング溝3a,3bの何れかにOリングを配設する構成とし、低圧使用液に適用する場合には、大径位置のOリング溝3aに大径のOリング6を配置することで低圧用の差圧を設定し、高圧使用液に適用する場合には、小径位置のOリング溝3bに小径のOリング16を配置することで高圧用の差圧を設定し、このようにOリングを変更するだけで差圧を最適に設定可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧式調圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流入する使用液の圧力を調整する調圧弁として、以下の特許文献1に記載の差圧式調圧弁が知られている。この特許文献1に記載の差圧式調圧弁を始めとした従来の差圧式調圧弁の基本構成を示したのが図3である。
【0003】
図3に示すように、調圧弁300は、ボディ50に、流入口51a、流出口51b及び余液口51cを有する調圧室51を具備したもので、余液口51cは、調圧室51に固定された筒状の弁座52の筒孔により上下方向に延び、図示上下方向に移動可能で円柱形状を成すピストン53が、付勢手段(不図示)により矢印の如く下方に付勢されることで、その下部が調圧室51内に進入し弁座52に上方から着座する構成とされている。ピストン53は、調圧室51の内壁面の上部を構成すると共にピストン53が挿通するピストンガイド54によって、離座/着座時の移動がガイドされる。そして、ピストン53の外周面に周設されたOリング溝53aに、ピストン53とピストンガイド54との間を液密に封止するためのOリング55がバックアップリング56と共に収容される。
【0004】
このような調圧弁300によれば、調圧室51内の使用液の液圧が設定圧力以下の場合には、付勢手段の付勢力によりピストン53は弁座52に着座して余液口51c側の流路を閉とする一方で、使用液の液圧が上記設定圧力を越えると、ピストン53が弁座52から上方に離座して余液口51c側の流路を開とし使用液の一部が余液口51cを通して戻される。
【特許文献1】特許第3913055号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記調圧弁300にあっては、差圧を決定する部位は、弁座52とピストン53のシート面外径Dと、ピストン53とピストンガイド54との間のOリング55の外径と、による投影断面積比である。従って、この調圧弁300を、低圧の使用液に適用する低圧タイプとすると、当該調圧弁300を、変更部品点数をできる限り少なくして高圧の使用液に適用させるには、低圧タイプの場合より小さい外径のOリング及びバックアップリング、このOリングの変更に伴い低圧タイプの場合より小さい外径のピストン及び小さい内径のピストンガイドを用いる必要がある。
【0006】
しかしながら、このように変更部品点数をできる限り少なくしているが、さらなる変更部品点数の低減による低コスト化が求められている。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、低圧から高圧まで広範囲に圧力調整可能な差圧式調圧弁を低コストにて提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による差圧式調圧弁(100,200)は、流入する使用液の圧力を調整するための調圧室(1)と、調圧室(1)内の使用液を排出するための余液口(1c)を形成する弁座(2)と、調圧室(1)内にその一部が進入し、使用液の圧力が設定圧力以下の場合に、弁座(2)に着座し流路を閉とする一方で、使用液の圧力が設定圧力を越えると、弁座(2)から離座し流路を開とするピストン(3)と、ピストン(3)が通され当該ピストン(3)の離座/着座時の移動をガイドすると共に、移動するピストン(3)との間を液密に封止するためのOリング(6,16)がピストン(3)との間に配設されたピストンガイド(4)と、を具備した差圧式調圧弁において、ピストン(3)又はピストンガイド(4)の何れか一方が、Oリング(6,16)を収容するためのOリング溝(3a,3b)を複数異径位置に備えると共に、これらのOリング溝(3a,3b)の何れかにOリング(6,16)が配設されていることを特徴としている。
【0009】
このような差圧式調圧弁(100,200)によれば、流入する使用液の圧力を調整するための調圧室(1)にその一部が進入するピストン(3)、又は、このピストン(3)が通されると共に調圧室(1)内の使用液を排出するための余液口(1c)を形成する弁座(2)に対しての当該ピストン(3)の離座/着座をガイドするピストンガイド(4)の何れか一方に、Oリング溝(3a,3b)が複数異径位置に設けられ、これらのOリング溝(3a,3b)の何れかにOリング(6,16)が配設される構成のため、低圧使用液に適用する場合には、大径位置のOリング溝(3a)に大径のOリング(6)を配置することで低圧用の差圧を設定でき、高圧使用液に適用する場合には、小径位置のOリング溝(3b)に小径のOリング(16)を配置することで高圧用の差圧を設定でき、このようにOリング(6,16)を変更するだけで差圧を最適に設定でき、従って、広範囲に圧力調整可能な差圧式調圧弁(100,200)を低コストにて提供することができる。
【0010】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成としては、具体的には、ピストン(3)は、その外周面に段差を有し、ピストンガイド(4)は、その内周面に段差を有し、当該内周面がピストン(3)の外周面に所定の嵌め合い公差で対面し、Oリング溝(3a,3b)は、ピストン(3)又はピストンガイド(4)の何れか一方の段差による異径位置に設けられる構成が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、広範囲に圧力調整可能な差圧式調圧弁を低コストにて提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る差圧式調圧弁の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「上」、「下」等の語は、図面に示す状態に基づいており、便宜的なものである。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る差圧式調圧弁を示す縦断面図であり低圧使用液に適用した場合の縦断面図、図2は、高圧使用液に適用した場合の縦断面図であり、本実施形態の差圧式調圧弁は、例えば農薬等の使用液を噴霧する動力噴霧機や洗浄機等に用いられるものであって、使用液を吐出するポンプの吐出側に取り付けられ、ポンプから吐出される使用液の圧力を調節するためのものである。
【0014】
先ず、図1を参照しながら、低圧使用液に適用する低圧タイプとした差圧式調圧弁100について説明する。この差圧式調圧弁100は、一方の側部に流入口1aが、これとは反対側の側部に流出口1bが各々形成されると共に、これらの流入口1aと流出口1bとの間の下部に余液口1cが形成されたボディ10を備えている。流入口1a、流出口1b及び余液口1cは、ボディ10内に形成された調圧室1を介して互いに連通し、例えば、流入口1aはポンプの吐出口に、流出口1bは噴射ノズルに、余液口1cはポンプが接続されるタンクに、各々配管等を介して接続される。
【0015】
調圧室1の余液口1c側には、円筒状に構成されて上下方向に軸線を有する弁座2が調圧室1側から挿入され、当該弁座2の外周面の円環状のOリング溝に装着されたOリング5が、これに対向するボディ10の内周面に圧接することで、弁座2がボディ10に液密に装着されると共に、弁座2の筒孔が、下方に続く余液口1cのその上部を形成する構成とされている。
【0016】
弁座2に対しては、ピストン3が調圧室1内で上側から着座するように構成されている。このピストン3は、上下方向に軸線を有する段付円柱状に構成されて弁座2と同軸に配置され、下端面であるシート面3sが、弁座2の上端面であるシート面2sに着座する。
【0017】
ピストン3は、外周面に段差を有し、上側が大外径部3x、下側が小外径部3yとされ、その大外径部3x及びその小外径部3yの外周面に、Oリングを収容するための円環状のOリング溝3a,3bが各々周設されている。すなわち、ピストン3は、Oリング溝を複数異径位置に備えている。
【0018】
そして、ここでは、低圧用の差圧を設定すべくOリング溝3aが選択され当該Oリング溝3aに大径のOリング6及びバックアップリング7が装着されている。
【0019】
また、ボディ10には、調圧室1に連通し上下方向に延びる断面円状の貫通孔10aが形成され、この貫通孔10aの内周面に、上下方向に軸線を有する段付円筒状に構成されてピストン3と同軸に配置されたピストンガイド4が挿嵌されている。
【0020】
このピストンガイド4は、内周面に段差を有し、上側が大内径部4x、下側が小内径部4yとされている。
【0021】
そして、ピストンガイド4の外周面の円環状のOリング溝に装着されたOリング8が、これに対向するボディ10の内周面に圧接することで、ピストンガイド4がボディ10に液密に装着されている。
【0022】
このピストンガイド4の上側には、上下方向に軸線を有する円筒状に構成されたバネ筒9がピストン3と同軸に配置され、このバネ筒9が、貫通孔10aの上部に螺合することで、ピストンガイド4が下方に押圧されボディ10に固定されている。
【0023】
この状態で、ピストン3はピストンガイド4に挿通され、ピストン3の大外径部3x及び小外径部3yの外周面が、ピストンガイド4の大内径部4x及びその小内径部4yの内周面に所定の嵌め合い公差でそれぞれ対面し、ピストン3の大外径部3x外周面のOリング溝3aに装着されたOリング6が、ピストンガイド4の大内径部4x内周面に圧接することで液密に摺接すると共に、ピストン3が軸線方向に摺動可能に案内される。
【0024】
そして、この差圧式調圧弁100にあっては、弁座2、ピストン3のシート面2s,3sの外径と、ピストン3とピストンガイド4との間のOリング6の外径と、による投影断面積比によって、低圧用の差圧が決定されている。すなわち、Oリング溝3aにOリング6を装着することで、低圧用の差圧が決定されている。
【0025】
また、上記ピストン3の後端は、ピストン3と同軸に配置されたバネ受け11と連結し、このバネ受け11は、バネ筒9の筒孔内に圧縮され上下方向に積層された複数の皿バネ(付勢手段)12によって軸線方向に付勢されている。これにより、ピストン3は、バネ受け11を介して弁座2へ着座する方向に付勢され、余液口1cを閉とする。なお、付勢手段は皿バネに限定されるものではなく、例えば圧縮コイルバネ等を用いても良い。
【0026】
また、バネ筒9の上部には、調圧キャップ13が螺合され、この調圧キャップ13の上下方向の螺子込み位置を調節することで、調圧キャップ13とバネ受け11との間に配置された複数の皿バネ12の初期荷重が調節されている。
【0027】
このように構成された差圧式調圧弁100によれば、図1に示す状態で、ポンプを起動し低圧使用液がタンクから供給され、流入口1aを通って調圧室1に流入すると、使用液の圧力が低圧用の設定圧力以下の場合には、ピストン3は弁座2に着座した状態で余液口1c側の流路は閉とされ、使用液は調圧室1の流出口1bを通ってノズルへ供給され、使用液の圧力が低圧用の設定圧力を越えると、ピストン3が弁座2から上方に離座し余液口1c側の流路が開とされ、ピストン3と弁座2との隙間から余液口1cを通して余液として流出し、配管等を介してタンクに戻される。そして、使用液の圧力が上記設定圧力以下になると、ピストン3が弁座2に着座し余液口1c側の流路が閉とされる。
【0028】
このような差圧式調圧弁100を、高圧使用液に適用する高圧タイプの差圧式調圧弁200とする場合には、大径のOリング6及びバックアップリング7を大径のOリング溝3aから外し、図2に示すように、これらのリング6,7より小径のOリング16及びバックアップリング17を、小径のOリング溝3bに装着すれば良い。
【0029】
このような差圧式調圧弁200にあっては、ピストン3とピストンガイド4との間のOリング16の外径が差圧式調圧弁100のOリング6に対して小さくされ、これにより、他の部品を変更することなく上記低圧用の投影断面積比が変更されて高圧用の差圧が決定され、高圧タイプの差圧式調圧弁とされている。従って、この決定された高圧用の差圧に基づいて、ピストン3が弁座2に対して離座/着座することになる。
【0030】
なお、ここでは、ピストン3が、Oリング6,16を収容するためのOリング溝を複数異径位置に備えると共に、これらのOリング溝3a,3bの何れかにOリング及びバックアップリングを配設することで、高圧用にも低圧用にも適用できる差圧式調圧弁としているが、ピストンガイド4が複数の異径位置にOリング溝を備えると共に、これらのOリング溝の何れかにOリング及びバックアップリングを配設し、高圧用にも低圧用にも適用できようにしても良い。
【0031】
このように、本実施形態においては、流入する使用液の圧力を調整するための調圧室1にその一部が進入するピストン3、又は、このピストン3が通されると共に調圧室1内の使用液を排出するための余液口1cを形成する弁座2に対しての当該ピストン3の離座/着座をガイドするピストンガイド4の何れか一方に、Oリング溝が複数異径位置に設けられ、これらのOリング溝3a,3bの何れかにOリングが配設される構成のため、低圧使用液に適用する場合には、大径位置のOリング溝3aに大径のOリング6を配置することで低圧用の差圧を設定でき、高圧使用液に適用する場合には、小径位置のOリング溝3bに小径のOリング16を配置することで高圧用の差圧を設定でき、このようにOリングを変更するだけで差圧を最適に設定でき、従って、広範囲に圧力調整可能な差圧式調圧弁100,200を低コストにて提供することができる。また、このようにOリング及びバックアップリングの変更のみで良いため、圧力設定の異なる差圧式調圧弁100,200において、部品を共通化することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、Oリングとバックアップリングだけを付属品とすることで、ユーザーがが選択し希望する圧力を設定できる。
【0033】
なお、例えば圧力振動等により、一のOリング溝に傷が生じても、他のOリング溝を使用することで、製品寿命を延長することができる。
【0034】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、Oリング及びバックアップリングを備える差圧式調圧弁に対する適用を述べているが、バックアップリングが無い差圧式調圧弁に対しても適用可能である。
【0035】
また、上記実施形態においては、Oリング溝を2箇所の異径位置に設けているが、3箇所以上の異径位置に設け、これら3箇所以上のOリング溝の何れかにOリングを配設することで、3段以上の圧力を設定することも可能である。
【0036】
また、上記実施形態においては、ピストンガイド4とボディ10は別部品とされているが、ボディの一部がピストンガイドを兼ねる場合もある。
【0037】
なお、本発明は、例えば特開2001−59579号公報に記載の調圧弁のように、調圧室に流入口、余液口(流出口)を有し、通常時は、余液口がピストンにより閉じられて調圧室が袋状空間とされている調圧弁に対しても適用可能であり、要は、使用液の圧力が設定圧力以下の場合に、ピストンが弁座に着座し流路を閉とする一方で、使用液の圧力が設定圧力を越えると、ピストンが弁座から離座し流路を開とする差圧式調圧弁に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る差圧式調圧弁を示す縦断面図であり低圧使用液に適用した場合の縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る差圧式調圧弁を示す縦断面図であり高圧使用液に適用した場合の縦断面図である。
【図3】従来技術に係る差圧式調圧弁の基本構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…調圧室、1c…余液口、2…弁座、3…ピストン、3a,3b…Oリング溝、4…ピストンガイド、6,16…Oリング、100,200…差圧式調圧弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入する使用液の圧力を調整するための調圧室(1)と、前記調圧室(1)内の使用液を排出するための余液口(1c)を形成する弁座(2)と、前記調圧室(1)内にその一部が進入し、使用液の圧力が設定圧力以下の場合に、前記弁座(2)に着座し流路を閉とする一方で、前記使用液の圧力が前記設定圧力を越えると、前記弁座(2)から離座し前記流路を開とするピストン(3)と、前記ピストン(3)が通され当該ピストン(3)の離座/着座時の移動をガイドすると共に、移動する前記ピストン(3)との間を液密に封止するためのOリング(6,16)が前記ピストン(3)との間に配設されたピストンガイド(4)と、を具備した差圧式調圧弁において、
前記ピストン(3)又は前記ピストンガイド(4)の何れか一方が、前記Oリング(6,16)を収容するためのOリング溝(3a,3b)を複数異径位置に備えると共に、これらのOリング溝(3a,3b)の何れかに前記Oリング(6,16)が配設されていることを特徴とする差圧式調圧弁(100,200)。
【請求項2】
前記ピストン(3)は、その外周面に段差を有し、
前記ピストンガイド(4)は、その内周面に段差を有し、当該内周面が前記ピストン(3)の外周面に所定の嵌め合い公差で対面し、
前記Oリング溝(3a,3b)は、前記ピストン(3)又は前記ピストンガイド(4)の何れか一方の前記段差による異径位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の差圧式調圧弁(100,200)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−96307(P2010−96307A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268847(P2008−268847)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】