説明

差速回転濃縮機における運転制御方法並びに運転制御装置

【課題】 汚泥濃度の変動に対し、薬注率、スクリュー軸回転数、外筒スクリーン回転数の優先順序を決定して段階的に変化させ、濃縮汚泥濃度を制御する。
【解決手段】 濃縮汚泥の汚泥受槽(20)に電力検出器(24)を配設し、電力検出器(24)が検出した濃縮汚泥濃度の電気信号を受信し、そのデータを演算して判別する判別器(28)と、判別器(28)の判別結果の指令信号を受信して外筒駆動機(13)とスクリュー駆動機(14)を操作するコントローラ(29)と、判別器(28)の判別信号を受信して、凝集剤の薬注率(α)を段階的に増減させる比例設定器(30)と、比例設定器(30)からの指令信号を受信して高分子供給ポンプ(18)を操作するコントローラ(31)を配設して、薬注率、スクリュー軸回転数、外筒スクリーン回転数を制御するもので、濃縮汚泥濃度が最適値に維持されて、薬品使用量を削減でき、濃縮後の処理工程管理も容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水混合生汚泥、下水消化汚泥、活性余剰汚泥等に凝集剤を添加して、外筒スクリーンとスクリュー軸を差速回転させながら汚泥を濃縮する差速回転濃縮機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、懸濁物質を含有する原液に凝集剤を添加して、懸濁物質のフロックを形成させ、脱水汚泥の含水率の低減を図っている。この難ろ過性の有機物を含有する汚泥を濃縮・脱水させる装置として、外筒スクリーンに内設したスクリュー軸を回転させ、目詰まりしやすいろ過面を再生しながら、濃縮・脱水するスクリュープレスは良く知られている。そして、外筒スクリーンとスクリュー軸を互いに逆回転するように構成し、外筒スクリーンの駆動機に負荷検知装置を設け、負荷検知により外筒を減速させて、過負荷を防止するスクリュープレスも、特許文献1に記載してあるように公知である。また、ろ過体の内部に回転可能にスクリューを設けたろ過装置に、供給圧力の検知手段と、スクリューのトルク検出手段と、スクリューの回転数の制御手段を設け、供給圧力とトルクの検出結果によりスクリューの回転数を制御して、処理物の含水率を一定とする制御装置も、特許文献2に記載してあるように公知である。
【0003】
【特許文献1】特開平4−238699号公報(請求項2、図1)
【特許文献2】特開2002−239314号公報(請求項4,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスクリュープレスは、粘性の少ないろ過性の良い汚泥に対しては、スクリューの回転数を制御することにより、過負荷防止と、均一な含水率のケーキが得られるものであるが、難ろ過性の汚泥に対しては、ろ過室の容積を減少させて圧搾脱水すると、早期に外筒スクリーンのろ過面が目詰まりする。あるいは、急激に圧搾すると、汚泥がろ液とともに外筒スクリーンから排出され、ろ液が懸濁する恐れがある。また、原液の濃度や供給量を検知して、濃縮汚泥濃度やトルクを制御する装置にあっては、常時供給汚泥量や汚泥濃度の変化があり、スクリュー軸や外筒スクリーンに掛かる回転トルクが変動し、濃縮汚泥の濃縮汚泥濃度を均一化させることが困難であった。この発明は、濃縮する汚泥濃度を一定に保つために、変動頻度が減少された濃縮汚泥の濃度を検知して、スクリュー軸と外筒スクリーンの差速回転数と、凝集剤の薬注率を段階的に切替えて、濃縮汚泥濃度の変動の少ない差速回転濃縮機における運転制御方法と運転制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る差速回転濃縮機における運転制御方法の請求項1に記載の発明は、回転自在な外筒スクリーンにスクリュー軸を内設し、外筒スクリーンの始端部に供給した原液を、スクリュー軸を差速回転させながら外筒スクリーンからろ液を分離して、外筒スクリーンの終端部から濃縮汚泥を排出する差速回転濃縮機において、予め基準の濃縮汚泥濃度、薬注率、外筒スクリーンの回転数、スクリュー軸の回転数と、これらの上限値と下限値を設定し、濃縮汚泥が上限汚泥濃度以上に上昇した時に、凝集剤の薬注率を段階的に減少させ、汚泥濃度が上限汚泥濃度以下になるまでこの操作を繰り返し、凝集剤が下限薬注率になった時、スクリュー軸の回転数を段階的に増速させると共に、濃縮汚泥が下限汚泥濃度以下に下降した時に、スクリュー軸の回転数を段階的に減速させ、汚泥濃度の下限汚泥濃度以上になるまでこの操作を繰り返し、スクリュー軸が下限回転数になった時、高分子凝集剤の薬注率を段階的に増加させるもので、汚泥を基準濃縮汚泥濃度に維持することができ、最小限の凝集剤の添加が可能となる。
【0006】
請求項2に記載の運転制御方法の発明は、スクリュー軸が上限回転数になった時、外筒スクリーンの回転数を段階的に減速させ、汚泥濃度の上限汚泥濃度以下になるまでこの操作を繰り返すと共に、スクリュー軸が下限回転数になった時、外筒スクリーンの回転数を段階的に増速させ、汚泥濃度の下限汚泥濃度以上になるまでこの操作を繰り返し、外筒スクリーンが上限回転数になった時、高分子凝集剤の薬注率を段階的に増加させるので、濃縮汚泥濃度を最適値に維持することができ、汚泥がろ液とともに外筒スクリーンから排出される恐れもない。
【0007】
請求項3に記載の運転制御方法の発明は、凝集剤が下限薬注率になった時、スクリュー軸の回転数を段階的に増速し、同時に外筒スクリーンの回転数を段階的に減速すると共に、濃縮汚泥が基準の汚泥濃度の下限汚泥濃度以下に下降した時に、スクリュー軸の回転数を段階的に減速し、同時に外筒スクリーンの回転数を段階的に増速して、外筒スクリーンが上限回転数またはスクリュー軸が下限回転数になった時、高分子凝集剤の薬注率を段階的に増加させるので、迅速に濃縮汚泥濃度の変動に対応できる。そして、請求項4に記載の運転制御方法の発明は、同時に増減させるスクリュー軸の増減回転数と、外筒スクリーンの増減回転数の和を一定とすれば、制御が簡単になる。
【0008】
差速回転濃縮機における運転制御方法を実施するための請求項5に記載の運転制御装置の発明は、回転自在な外筒スクリーンにスクリュー軸を内設し、外筒スクリーンの始端部に供給した原液を、スクリュー軸を差速回転させながら外筒スクリーンからろ液を分離して、外筒スクリーンの終端部から濃縮汚泥を排出する差速回転濃縮機において、濃縮汚泥を貯留する汚泥受槽に汚泥濃度を検出する電力検出器を配設し、電力検出器が検出した汚泥濃度の電気信号を受信し、そのデータを演算して判別する判別器と、判別器の判別結果の指令信号を受信して外筒駆動機とスクリュー駆動機の回転数を操作するコントローラと、判別器で判別して送信した信号を受信して、凝集剤の薬注率を段階的に増減させる比例設定器と、比例設定器からの指令信号を受信して高分子供給ポンプを操作するコントローラを配設すると共に、予め設定した基準の濃縮汚泥濃度、外筒スクリーンの回転数、スクリュー軸の回転数と、これらの上限値と下限値を判別器に入力し、薬注率とその上限値と下限値を比例設定器に入力したもので、凝集剤の薬注率の調節と、差速回転させる外筒スクリーンとスクリュー軸の回転数の調整を制御して、濃縮する汚泥濃度を平均した濃縮汚泥濃度に維持されて、凝集剤の薬品使用量を低減させることができる。
【発明の効果】
【0009】
濃縮汚泥濃度の変動に対し、薬注率、スクリュー軸回転数、外筒スクリーン回転数の3つのパラメータの優先順序を決定して段階的に変動させるので、濃縮汚泥濃度を一定に保つことができ、汚泥性状の変動に対応して、薬品使用量も減らすことができる。そして、濃縮汚泥の汚泥濃度が安定するので、濃縮後の処理工程の管理が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明に係る差速回転濃縮機における運転制御方法と運転制御装置を図面に基づき詳述すると、図1は差速回転濃縮機の縦断側面図であって、差速回転濃縮機1は周部にろ過面を有する外筒スクリーン2の内部に、スクリュー羽根3を巻き掛けたスクリュー軸4が配設してある。外筒スクリーン2の端部に入口フランジ5と出口フランジ6が嵌着してある。入口フランジ5をスクリュー軸4に軸支して、出口フランジ6に連結した外筒駆動軸7をろ液受槽8に支架した軸受9に軸支してある。スクリュー軸4に連結したスクリュー駆動軸10が外筒駆動軸7に挿通してある。スクリュー軸4の前端部に汚泥の供給路11が設けてあり、外筒スクリーン2の始端部に複数個の供給口11aを開口し、出口フランジ6に複数の排出口6aが設けてある。外筒スクリーン2とスクリュー軸4の間にろ過室12を形成してある。
【0011】
図1に示すように、外筒スクリーン2の外筒駆動軸7とスクリュー軸4のスクリュー駆動軸10に外筒駆動機13とスクリュー駆動機14が個別に連動連結してあり、外筒スクリーン2とスクリュー軸4を逆方向に差速回転させる。スクリュー軸4の供給路11からろ過室12に供給した汚泥を、外筒スクリーン2とスクリュー軸4を逆回転させながら、外筒スクリーン2からろ液を分離して、濃縮した汚泥を出口フランジ6の排出口6aから排出する。外筒スクリーン2とスクリュー軸4を差速回転させることにより、相対的にスクリュー羽根3の回転数を高め、外筒スクリーン2のろ過面の摺接回数を増加させる。目詰りせんとする外筒スクリーン2のろ過面を再生してろ液の排出を促進させ、濃度の低い汚泥の大量処理を可能とする。なお、符号15は外筒スクリーン2に沿って配設した洗浄水管であって、目詰まりした外筒スクリーン2のスクリーン面に高圧水を噴射してろ過面の目詰まりを解消させる。
【0012】
図2は制御装置を配設した差速回転濃縮機の構成図であって、差速回転濃縮機1の前段に凝集装置16が配設してあり、貯留タンク等からの余剰汚泥を供給する汚泥供給ポンプ17の汚泥回路17aと、高分子供給ポンプ18の薬注回路18aが凝集装置16に連結してある。汚泥供給ポンプ17と高分子供給ポンプ18から凝集装置16に供給された汚泥と凝集剤を、撹拌機19で撹拌混合して凝集フロックを生成させ、その汚泥を差速回転濃縮機1に供給する。差速回転濃縮機1の終端部に汚泥受槽20が配設してあり、差速回転濃縮機1でろ液を分離した濃縮汚泥を汚泥受槽20に排出する。
【0013】
図3は汚泥受槽に配設した濃縮汚泥濃度測定装置であって、濃縮汚泥を貯留する汚泥受槽20に駆動モーター21を連結した検出体22が垂下してあり、駆動モーター21の出力側の電源ケーブル23に電力検出器24を接続してある。差速回転濃縮機1で濃縮した汚泥濃度の変動により、検出体22の摺接抵抗が変動し、電源装置25から駆動モーター21に供給する電力値を変化させる。駆動モーター21の電力値を出力側の電源ケーブル23から電力検出器24が電圧値として汚泥濃度を検出する。なお、符号26は汚泥受槽20に配設した水位を維持するための溢流堰である。
【0014】
図2に示すように、差速回転濃縮機1に配設した制御操作盤27には、電力検出器24が検出した濃縮汚泥濃度Xの電気信号を受信して、そのデータを演算して判別する判別器28と、判別器28の判別結果の指令信号を受信して外筒スクリーン2の回転数Cとスクリュー軸4の回転数Sを操作するコントローラ29と、判別器28で判別して送信した信号を受信して、凝集剤の薬注率αを段階的に増減させる比例設定器30と、比例設定器30からの指令信号を受信して高分子供給ポンプ18を操作するコントローラ31が配設してある。
制御操作盤27に配設した判別器28には、予め、
1.基準の濃縮汚泥濃度X、その上限汚泥濃度Xmax、及び下限汚泥濃度Xmin
2.外筒スクリーン2の基準の回転数C、増減を中止する下限回転数Cmin、及び上限回転数Cmax、外筒スクリーン2の回転数Cから段階的に増減させる1回の増減回転数b(b=1〜2min-1
3.スクリュー軸4の基準の回転数S、増減を中止する下限回転数Smin、及び上限回転数Smax、スクリュー軸4の回転数Sから段階的に増減させる1回の増減回転数a(a=1〜2min-1
の条件を設定し、入力してある。
【0015】
そして、判別器28には、
4.濃縮汚泥濃度Xが上限汚泥濃度Xmax、又は下限汚泥濃度Xmin以内であれば、現状の状態を維持し、濃縮汚泥が上限汚泥濃度Xmax以上に上昇した時と、外筒スクリーン2の回転数Cが上限回転数Cmaxになった時、判別器28から比例設定器30にそのデータを送信するように、予め設定してある。
なお、判別器28に、
5.外筒スクリーン2の回転数Cを段階的に減速させ、下限回転数Cminになった時、警報信号を出すように設定しても良い。
また、濃縮汚泥濃度の異常に高い値と異常に低い値を設定して、濃縮汚泥濃度の異常を検知して、警報信号を出すように設定しても良い。
【0016】
比例設定器30には、予め、
1.汚泥に添加する凝集剤の基準の薬注率α、
2.濃縮汚泥が上限汚泥濃度Xmax以上に上昇した時と、下限汚泥濃度Xmin以下に下降した時に、凝集剤を段階的に増減させる1回の添加率d(d=0.01〜0.03%)、
3.凝集剤の添加の増減を中止する凝集剤の薬注率の下限薬注率αmin及び上限薬注率αmax、
の条件を設定し、入力してある。
そして、比例設定器30には、
4.凝集剤が下限薬注率αminになった時、下限薬注率αminの状態を維持しながら、比例設定器30から判別器28にその情報を返信するように設定してある。
なお、比例設定器30に、
5.凝集剤の薬注率αを段階的に増加させ、上限薬注率αmaxになった時、警報を出すようにしてもよい。
【0017】
図4は差速回転濃縮機の制御方法のフローチャートであって、先ず、基準の薬注率αの凝集剤を添加した一定容量の原液を差速回転濃縮機1に供給し、外筒スクリーン2とスクリュー軸4を基準の回転数C、Sで互いに逆回転させながらろ液を分離して、基準の濃縮汚泥濃度Xの濃縮汚泥を排出させる。汚泥性状と原液容量の変動に基づく濃縮汚泥が、上限汚泥濃度Xmaxと下限汚泥濃度Xminの範囲に入るように、差速回転濃縮機1の制御を開始する。濃縮汚泥の濃度を所定時間(例えば、10分)ごとに電力検出器24で電圧を検出し、検出した電圧値を判別器28に送信して濃度を算出し、予め設定した基準の濃縮汚泥濃度Xと比較演算する。Xmax≧X≧Xminの範囲であれば、現状の状態を維持する。
【0018】
差速回転濃縮機1で濃縮された汚泥が上限汚泥濃度Xmax以上に上昇した時に、判別器28から比例設定器30にその情報を送信し、比例設定器30からコントローラ31に凝集剤の薬注率αを低減させる指令信号を発信する。コントローラ31は、高分子供給ポンプ18を制御して、凝集剤の薬注率αから添加率d(d=0.01〜0.03%)だけ減少させる。所定時間(10分)後の汚泥が、まだ上限汚泥濃度Xmax以上であれば、濃縮汚泥が上限汚泥濃度Xmax以下になるまでこの操作を繰返し、段階的に凝集剤を減少させる。凝集剤が下限薬注率αminになった時、下限薬注率αminを維持しながら、比例設定器30から判別器28にその情報を返信する。
【0019】
比例設定器30からの凝集剤が下限薬注率αminになった情報に基づき、判別器28からコントローラ29にスクリュー軸4の回転数Sの増速指令信号を発信する。コントローラ29はスクリュー駆動機14を操作して、スクリュー軸4の回転数Sを増減回転数a(a=1〜2min-1)だけ増速し、所定時間(例えば、10分)後に、電力検出器24で差速回転濃縮機1から排出される濃縮汚泥の濃度を検出する。また、濃縮汚泥が上限汚泥濃度Xmax以下になっていなければ、その情報に基づき、判別器28からコントローラ29に指令信号を発信し、濃縮汚泥が上限汚泥濃度Xmax以下になるまで段階的に、この操作を繰り返す。スクリュー軸4が上限回転数Smaxになった時、上限回転数Smaxを維持しながら、判別器28からコントローラ29に外筒スクリーン2の回転数Cの減速指令信号を発信する。コントローラ29は外筒駆動機13を操作して、外筒スクリーン2の回転数Cを増減回転数b(b=1〜2min-1)だけ減速し、濃縮汚泥が上限汚泥濃度Xmax以下になるまでこの操作を繰り返す。外筒スクリーン2が下限回転数Cminに低下した時、異常警報を出して、プログラムを修正する。
【0020】
また、凝集剤を下限薬注率αminに減少させても、濃縮汚泥が上限汚泥濃度Xmax以上の時に、外筒スクリーン2とスクリュー軸4の応答速度を速くするための運転制御方法は、判別器28からコントローラ29に外筒スクリーン2とスクリュー軸4の回転指令信号を同時に発信する。コントローラ29は外筒駆動機13とスクリュー駆動機14を操作して、外筒スクリーン2の回転数Cを増減回転数b(b=1〜2min-1)だけ減速し、スクリュー軸4を増減回転数a(a=1〜2min-1)だけ増速させ、濃縮汚泥が上限汚泥濃度Xmax以下になるまでこの操作を繰り返しても良いものである。
【0021】
また、電力検出器24で検出した濃縮汚泥の電圧値を判別器28で演算、判別した汚泥の濃度が、下限汚泥濃度Xmin以下に低下した時には、判別器28からコントローラ29にスクリュー軸4の回転数の減速指令信号を発信する。コントローラ29はスクリュー駆動機14を操作して、スクリュー軸4を増減回転数a(a=1〜2min-1)だけ減速し、汚泥が下限汚泥濃度Xmin以上になるまでこの操作を、段階的に繰り返して減速する。スクリュー軸4が下限回転数Sminになった時、下限回転数Sminを維持しながら、判別器28からコントローラ29に外筒スクリーン2の増速回転の指令信号を発信する。コントローラ29は外筒駆動機13を操作して、外筒スクリーン2の回転数Cを増減回転数b(b=1〜2min-1)だけ増速し、濃縮汚泥が下限汚泥濃度Xmin以上になるまでこの操作を繰り返す。外筒スクリーン2が上限回転数Cmaxに上昇した時、判別器28から比例設定器30にその情報を送信し、比例設定器30からコントローラ31に凝集剤を増加させる指令信号を発信する。コントローラ31は、高分子供給ポンプ18の回転数を制御して、凝集剤を添加率d(d=0.01〜0.03%)だけ増加させる。濃縮汚泥が下限汚泥濃度Xmin以上になるまで段階的にこの操作を繰返す。凝集剤が上限薬注率αmaxになった時、異常警報を出して、プログラムを修正する。
【0022】
また、判別器28で演算、判別した濃縮汚泥が、下限汚泥濃度Xmin以下に低下した時に、外筒スクリーン2とスクリュー軸4の応答速度を速くするための、差速回転濃縮機における運転制御方法は、判別器28からコントローラ29に外筒スクリーン2とスクリュー軸4の回転指令信号を同時に発信する。コントローラ29は外筒駆動機13とスクリュー駆動機14を操作して、外筒スクリーン2の回転数Cを増減回転数b(b=1〜2min-1)だけ増速し、同時にスクリュー軸4を増減回転数a(a=1〜2min-1)だけ減速させ、濃縮汚泥が下限汚泥濃度Xmin以上になるまでこの操作を繰り返しても良いものである。スクリュー軸4が下限回転数Smin、或いは外筒スクリーン2が上限回転数Cmaxになった時には、判別器28から比例設定器30にその情報を送信し、比例設定器30からコントローラ31に凝集剤を増加させる指令信号を発信してもよい。段階的に増減させる1回のスクリュー軸4の増減回転数aと、外筒スクリーン2の増減回転数bの和{a+(−b)=0}を一定とすれば、制御が簡単となる。
【実施例】
【0023】
差速回転濃縮機の濃縮汚泥濃度に対する薬注率、スクリュー軸回転数、外筒スクリーン回転数の各操作因子の影響を調査した。先ず、凝集剤の薬注率が濃縮汚泥濃度と回収率に及ぼす影響を調査した。表1は横軸に薬注率(%TS)、縦軸に濃縮汚泥濃度(%)とSS回収率(%)を表わしている。
1.薬注率:薬注率の増加により、濃縮汚泥濃度と、汚泥の回収率がともに良くなる。凝集剤の過剰添加になると、逆効果になる場合がある。
次ぎに、スクリュー軸の回転数が濃縮汚泥濃度と汚泥の回収率に及ぼす影響を調査した。表2は横軸にスクリュー軸回転数(min-1)、縦軸に濃縮汚泥濃度(%)とSS回収率(%)を表わしている。
2.スクリュー軸回転数:スクリュー軸の回転数は、増速により濃縮汚泥濃度が低下する。回収率の影響は少ない。
更に、外筒スクリーンの回転数が濃縮汚泥濃度と汚泥の回収率に及ぼす影響を調査した。表3は横軸に外筒スクリーン回転数(min-1)、縦軸に濃縮汚泥濃度(%)とSS回収率(%)を表わしている。
3.外筒スクリーン回転数:外筒スクリーンの回転数は、ある一定以上であれば、増速により、緩やかに濃縮汚泥濃度が高くなり、汚泥の回収率は低下する傾向がある。
【0024】
【表1】

【表2】

【表3】

【0025】
これらの薬注率、スクリュー軸回転数、外筒スクリーン回転数に対する濃縮汚泥濃度の調査の結果から、濃縮汚泥濃度の変動に伴い、汚泥濃度が設定巾を超えて変化した場合に、差速回転濃縮機の薬注率、スクリュー軸回転数、外筒スクリーン回転数の各操作因子を組合せ、表4のように優先順序を決めて、制御を開始することにした。
1.濃縮汚泥濃度が、設定値を超えて変動した場合に、薬注率、スクリュー軸回転数、外筒スクリーン回転数を優先順序に従って段階的にステップ制御を行うことにした。
2.それぞれの設定値を超えても、濃縮汚泥濃度が設定巾に入らなければ、優先順位の操作因子を変更することにした。応答速度を早めるため、スクリュー軸と外筒スクリーンの変更は、予め定めた方法に沿って同時変更を実施することも検討する。
3.スクリュー軸と外筒スクリーンの回転数の和が一定も検討する。
4.設定巾、制御ステップ巾については、標準値として設定しておくが、それぞれの処理場の対象汚泥ごとに設定を見直す。
濃縮汚泥濃度の変動に対し、薬注率、スクリュー軸回転数、外筒スクリーン回転数の3つのパラメータの優先順序を決定して段階的に変動させれば、濃縮汚泥濃度を一定に保つことができ、汚泥性状の変動に対応して、薬品使用量も減らすことができる。濃縮汚泥の汚泥濃度が安定するので、濃縮後の処理工程の管理が容易となる。
【0026】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明は差速回転濃縮機から排出される濃縮汚泥の濃度を計測し、凝集剤の添加率と、互いに逆回転させる外筒スクリーン及びスクリュー軸の回転数を段階的に制御するので、過負荷防止と、濃縮汚泥濃度を一定に保つことができ、汚泥性状の変動に対応して薬品使用量も減らすことができる。濃縮汚泥の汚泥濃度が安定するので、濃縮後の処理工程の管理が容易となる。従って、比較的ろ過性のよい下水混合生汚泥、下水初沈汚泥、或いは、難ろ過性の活性余剰汚泥等の汚泥処理に適した差速回転濃縮機となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係る差速回転濃縮機の縦断側面図である。
【図2】同じく、制御装置を配設した差速回転濃縮機の構成図である。
【図3】同じく、汚泥受槽に配設した濃縮汚泥濃度測定装置の概念図である。
【図4】同じく、差速回転濃縮機の制御方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 差速回転濃縮機
2 外筒スクリーン
4 スクリュー軸
13 外筒駆動機
14 スクリュー駆動機
18 高分子供給ポンプ
20 汚泥受槽
24 電力検出器
28 判別器
29、31 コントローラ
30 比例設定器
a スクリュー軸の増減回転数
b 外筒スクリーンの増減回転数
α 薬注率
αmin 下限薬注率%
C 外筒スクリーンの回転数
Cmin 下限回転数
Cmax 上限回転数
S スクリュー軸の回転数
Smin 下限回転数
Smax 上限回転数
X 濃縮汚泥濃度
Xmin 下限汚泥濃度
Xmax 上限汚泥濃度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な外筒スクリーン(2)にスクリュー軸(4)を内設し、外筒スクリーン(2)の始端部に供給した原液を、スクリュー軸(4)を差速回転させながら外筒スクリーン(2)からろ液を分離して、外筒スクリーン(2)の終端部から濃縮汚泥を排出する差速回転濃縮機(1)において、予め基準の濃縮汚泥濃度(X)、薬注率(α)、外筒スクリーン(2)の回転数(C)、スクリュー軸(4)の回転数(S)と、これらの上限値と下限値を設定し、濃縮汚泥が上限汚泥濃度(Xmax)以上に上昇した時に、凝集剤の薬注率(α)を段階的に減少させ、汚泥濃度の上限汚泥濃度(Xmax)以下になるまでこの操作を繰り返し、凝集剤が下限薬注率(αmin)になった時、スクリュー軸(4)の回転数(S)を段階的に増速させると共に、濃縮汚泥が下限汚泥濃度(Xmin)以下に下降した時に、スクリュー軸(4)の回転数(S)を段階的に減速させ、汚泥濃度の下限汚泥濃度(Xmin)以上になるまでこの操作を繰り返し、スクリュー軸(4)が下限回転数(Smin)になった時、高分子凝集剤の薬注率(α)を段階的に増加させることを特徴とする差速回転濃縮機における運転制御方法。
【請求項2】
上記スクリュー軸(4)が上限回転数(Smax)になった時、外筒スクリーン(2)の回転数(C)を段階的に減速させ、汚泥濃度の上限汚泥濃度(Xmax)以下になるまでこの操作を繰り返すと共に、スクリュー軸(4)が下限回転数(Smin)になった時、外筒スクリーン(2)の回転数(C)を段階的に増速させ、汚泥濃度の下限汚泥濃度(Xmin)以上になるまでこの操作を繰り返し、外筒スクリーン(2)が上限回転数(Cmax)になった時、高分子凝集剤の薬注率(α)を段階的に増加させることを特徴とする請求項1に記載の差速回転濃縮機における運転制御方法。
【請求項3】
上記凝集剤が下限薬注率(αmin)になった時、スクリュー軸(4)の回転数(S)を段階的に増速し、同時に外筒スクリーン(2)の回転数(C)を段階的に減速すると共に、濃縮汚泥が基準の濃縮汚泥濃度(X)の下限汚泥濃度(Xmin)以下に下降した時に、スクリュー軸(4)の回転数(S)を段階的に減速し、同時に外筒スクリーン(2)の回転数(C)を段階的に増速して、外筒スクリーン(2)が上限回転数(Cmax)またはスクリュー軸(4)が下限回転数(Smin)になった時、高分子凝集剤の薬注率(α)を段階的に増加させることを特徴とする請求項2に記載の差速回転濃縮機における運転制御方法。
【請求項4】
上記同時に増減させるスクリュー軸(4)の増減回転数(a)と、外筒スクリーン(2)の増減回転数(b)の和を一定とすることを特徴とする請求項3に記載の差速回転濃縮機における運転制御方法。
【請求項5】
回転自在な外筒スクリーン(2)にスクリュー軸(4)を内設し、外筒スクリーン(2)の始端部に供給した原液を、スクリュー軸(4)を差速回転させながら外筒スクリーン(2)からろ液を分離して、外筒スクリーン(2)の終端部から濃縮汚泥を排出する差速回転濃縮機(1)において、濃縮汚泥を貯留する汚泥受槽(20)に汚泥濃度を検出する電力検出器(24)を配設し、電力検出器(24)が検出した汚泥濃度の電気信号を受信し、そのデータを演算して判別する判別器(28)と、判別器(28)の判別結果の指令信号を受信して外筒駆動機(13)とスクリュー駆動機(14)の回転数を操作するコントローラ(29)と、判別器(28)で判別して送信した信号を受信して、凝集剤の薬注率(α)を段階的に増減させる比例設定器(30)と、比例設定器(30)からの指令信号を受信して高分子供給ポンプ(18)を操作するコントローラ(31)を配設すると共に、予め設定した基準の濃縮汚泥濃度(X)、外筒スクリーン(2)の回転数(C)、スクリュー軸(4)の回転数(S)と、これらの上限値と下限値を判別器(28)に入力し、薬注率(α)とその上限値と下限値を比例設定器(30)に入力したことを特徴とする差速回転濃縮機における運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−289308(P2006−289308A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116491(P2005−116491)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】