説明

巻き上げ食品の製造方法および巻き上げ食品

【課題】
シナモンロールのような渦巻き模様を呈する巻き上げ食品を製造する際に、シナモンシュガーのようなフィリング材が巻き上げ食品から漏出することを防止可能とし、さらに、焼成等熱処理された巻き上げ食品を食する際に、渦状の合わせ部分からの剥がれによる巻き解けを抑制可能な巻き上げ食品の製造方法を提供するものである。
【解決手段】
フィリング材を渦巻き状に内在する連続棒状食品生地の軸に対し直角方向から切断して分割食品に分割する際、前記分割食品の両端の切断面の内、一方の切断面を前記フィリング材が露出しないように外周の食品生地で被覆しながら押圧切断する工程と、他方の切断面が前記フィリング材による渦巻き模様が露出するように切断する工程とを含み、さらに、前記食品生地で被覆された切断位置が下面に位置するよう載置部に載置する工程を含むことを特徴とする巻き上げ食品の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦巻き模様を呈する巻き上げ食品の製造方法、およびその製造方法を用いて製造した巻き上げ食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばシナモンロールのような渦巻き模様を呈する巻き上げ食品の製造方法は、一定厚みのシート状生地の上面にシナモンシュガーをほぼ一様に塗布または散布し、次いで、シート状生地をその端部から巻き上げて棒状食品生地に成形した後、該棒状食品生地の長手方向に対して直角の方向から切断刃により切断し、シナモンシュガーの渦巻き模様を呈する切断面を上下方向に向けて天板などに載置し、発酵、焼成を行っていた。
連続したシート状のパン生地から巻き上げ食品を製造する方法として、シート状のパン生地側端より巾方向に巻き上げて連続した棒状の生地に成形し、この棒状生地の軸に対し直角方向から押圧して切断する際に、切断面が露出しないように外周の生地で被いながら切断し、さらに、この切断された生地の切断位置が上下の位置となるようにして搬送させ、発酵、焼成を行うことを特徴とするパン生地等の製造方法があった(特許文献1)。
また、餡などの内包材をパン生地などの外皮材で被った二重構造の連続棒状食品生地から分割食品に分割する際に、分割食品の下部は外皮材で包被し、上部は内包材が露出するようないわゆるフチ付き製品の製造方法および装置があった(特許文献2)。
【特許文献1】特許第2860937号公報
【特許文献2】特許第2876516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の渦巻き模様を呈する巻き上げ食品では、シナモンシュガーやジャム等のフィリング材が切断面から漏出してしまう為、食品の風味が均一にできなかった。その上、フィリング材の損出が多く経済的な負担になっていた。また、切断面から漏出したフィリング材が連続製造工程で用いられる搬送コンベアや天板などの載置部に付着してしまい、製造装置を汚すという問題があった。さらに、焼成されることにより焼きつきとなって天板に付着してしまい、焼成された巻き上げ食品の外観を悪くするとともに、天板の掃除を困難にしていた。さらに、焼成された巻き上げ食品は、食する際に、渦状の合わせ面にフィリング材があるためその部分から剥がれ易く渦巻きが解けてしまい、食べこぼしの原因となっていた。
【0004】
特許文献1の開示されたパンの製造方法は、渦状に巻き上げた連続棒状食品生地から分割食品に分割できるものの、渦状に巻き上げられた食品生地が外周の生地で被われているため渦巻き模様を呈する巻き上げ食品を製造することはできない。
【0005】
また、特許文献2に開示されたフチ付き食品の製造手段は、内包材と外皮材による二重構造の切断面を露出するものであり、渦巻き模様を呈する巻き上げ食品を製造するものではない。さらに、渦状に巻き上げられた食品生地の巻きほどけを防止する効果は示唆されていない。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、シナモンロールのような渦巻き模様を呈する巻き上げ食品を製造する際に、シナモンシュガーのようなフィリング材が巻き上げ食品から漏出することを防止可能とし、さらに、焼成等熱処理された巻き上げ食品を食する際に、渦状の合わせ部分からの剥がれによる巻き解けを抑制可能な巻き上げ食品の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、第一の発明は、連続した一定厚みの帯状食品生地を搬送する工程と、前記帯状食品生地の上面にフィリング材をほぼ一様に供給する工程と、前記帯状食品生地を一方の端部から幅方向に巻き上げて、前記フィリング材を渦巻き状に内在する連続棒状食品生地に巻き上げる工程と、前記棒状食品生地の軸に対し直角方向から切断して分割食品に分割する際、前記分割食品の両端の切断面の内、一方の切断面を前記フィリング材が露出しないように外周の食品生地で被覆しながら押圧切断する工程と、他方の切断面が前記フィリング材による渦巻き模様が露出するように切断する工程とを含み、さらに、前記食品生地で被覆された切断位置が下面に位置するよう載置部に載置する工程を含むことを特徴とする巻き上げ食品の製造方法である。
また、第二の発明は、第一の発明による巻き上げ食品の製造方法を用いて得られる巻き上げ食品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、巻き上げ食品の側部や底部を食品生地で被うことにより、巻き上げ食品に内在するフィリング材が漏出することがなくなった。
したがって、フィリング材が巻き上げ食品内で偏在するようなことがなく、均一な風味を持つ巻き上げ食品を製造することができた。
さらに、フィリング材の損出を防止することが可能となり経済的負担が低減された。
また、フィリング材が載置部に漏出することがなくなり、載置部を衛生的に保つことが可能となった。
また、焼成等の熱処理後の食品の側部や底部の表面にフィリング材が付着することがなくなり、焼きつきなどによる食品の外観を損なうことが防止できた。
さらに、巻き上げ食品の底部を外周の食品生地で被うようにしながら押圧切断する際に、巻き上げられた渦状の生地同士が中心に集まり結着するため、渦状の生地の合わせ部分からの剥がれによる巻き解けを抑制することが可能となり、食べこぼしや手を汚すことのない食べやすい食品を製造することが可能となった。
また、食品生地で被った切断位置を食品の下面に位置するよう載置部に載置して焼成等の熱処理を行うことにより、腰持ちのよいボリュームのある高品質の渦巻き模様を呈する巻き上げ食品の製造が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る巻き上げ食品製造装置1について図面に基づき説明する。図1は、巻き上げ食品製造装置1の概要を示す上面図である。図2は、巻き上げ食品製造装置1の概要を示す正面図である。巻き上げ食品製造装置1は、搬送コンベア3、吐出装置4、散粉機5、巻き上げ装置6、切断装置7、受け取りコンベア8を設けている。図3は、巻き上げ食品製造装置1に設けられた切断装置7による切断工程を示す説明図である。
【0010】
パン生地からなる帯状食品生地2は、例えば特許第2917003号公報に開示された公知の生地吐出装置から連続して吐出され、あるいは、その吐出生地を例えば自転・公転する遊星ローラー群により延展されて一定厚みに成形された生地である。搬送コンベア3は、無端状のベルト31を備えた公知の搬送装置であり、帯状食品生地2をベルト31上に載置して連続的に搬送するものである。
【0011】
フィリング材Fを供給する装置の一例として、吐出装置4を搬送コンベア3の上方に設けている。吐出装置4は、細長状の吐出口を備えており、該吐出口からフィリング材Fとしてのジャムやクリーム等のペースト状食品F1をほぼ均一な帯にして帯状食品生地2の上面に吐出する。なお、吐出装置4は、ペースト状食品F1を棒状に吐出し、それを板状部材などで押し均すようにしてもよい。
【0012】
また、フィリング材Fを供給する装置のその他の例として、散粉機5を搬送コンベア3の上方に設けている。散粉機5は、粉体F2を収容するホッパーの底部に設けられたメッシュなどから粉体F2をほぼ均一に散布するものであり、連続的に搬送される帯状食品生地2の上面にシナモンシュガーなどの粉体F2をほぼ均一に散布する。
【0013】
なお、本実施例においては、吐出装置4や散粉機5を設けるよう説明したが、例えばフィリング材Fとしてオニオン風味のオイルなどの液体F3を噴霧して帯状食品生地2の上面に供給してもよい。これらのフィリング材供給装置は、帯状食品生地2に巻き込むフィリング材Fに応じて、単独あるいは組み合わせて適宜選択すればよい。
【0014】
また、フィリング材を供給する幅を帯状食品生地2の幅より若干狭くすることにより帯状食品生地2を棒状食品生地21に巻き上げた際、棒状食品生地21の巻き終わり部分からフィリング材が漏出すること防止することができる。
【0015】
巻き上げ装置6は、モーター61に連動連結されたローラー63を備えている。ローラー63は、搬送コンベア3の上方にわずかな隙間を設け、さらに、ローラー53の回転軸方向を搬送方向に対して少し傾けて設けている。回転するローラー53は、粉体F2が散布された帯状食品生地2の一方の端部から生地を巻き上げ、粉体F2を渦状に内在した連続する棒状食品生地21を成形する。
【0016】
切断装置7は、搬送コンベア3の下流端部の下方に設けられ、例えば特許第2860937号公報(特許文献2)に開示された切断装置である。切断装置7は、複数のブロック片71を直線的にスライドさせ、中央にできる開口79を開閉してこの開口79を通過する棒状食品生地21を分割生地23に切断する。切断装置7は、前記切断動作に同調して上下動可能に設けられている。
【0017】
ブロック片71は、前記開口側に位置する傾斜面72とブロック片71の下面73とが交差するエッジ部74を備え、エッジ部74に隣接する下面73に凹部75を備えている。
【0018】
受け取りコンベア8は、切断装置7の下方に設けられ、切断装置7により棒状食品生地21から切断された分割生地23を受け取り次工程に搬送する無端状のベルト81を備えた載置部としての搬送コンベアである。受け取りコンベア8は、切断装置7の上下動と同調して上下動する上下プレート83をベルト81の下方に備えている。
【0019】
次に、巻き上げ食品の製造工程について説明する。連続した一定厚みの帯状食品生地2を搬送コンベア3に載置して連続的に搬送し、その帯状食品生地2の上面にフィリング材FとしてのシナモンシュガーF2をほぼ一様に散布する。シナモンシュガーF2が散布された帯状食品生地2を搬送しながら巻き上げ装置6の回転するローラー63により帯状食品生地2の一方の端部から幅方向に巻き上げて、シナモンシュガーF2を渦巻き状に内在する連続した棒状食品生地21に巻き上げる。そして、棒状食品生地21を搬送コンベア3の下流端部から垂下し、切断装置7の開口79を通過させ、棒状食品生地21の軸に対し直角方向から切断して分割食品23に分割する。
【0020】
この分割工程を図3の(a)から(e)に従って説明する。(a)は、ブロック片71が開口79を通過した棒状食品生地21に入り込む直前の状態である。(b)は、ブロック片71が棒状食品生地21に入り込み切断中の図である。この時、ブロック片71の傾斜面72に当接する棒状食品生地21が中心方向に誘導される。また、この間に棒状食品生地21は、ブロック片71のエッジ部74に切断され、下面73の凹部75の存在で下面73に接触することなく綺麗に切断される。(c)は、各々のエッジ部74が開口79の中心に集合し、開口79が閉じた状態であり、棒状食品生地21から分割食品23が形成された状態である。(d)は、ブロック片71がさらに進行している過程である。ブロック片71の傾斜面72が食品生地を押圧して中心方向に誘導し、さらに、渦状の生地同士を結着することによりブロック片71の上側の棒状食品生地21の切断面(棒状食品生地の下端部)をシナモンシュガーF2が漏出しないよう外周の食品生地で包被している。(e)は、ブロック片71の切断工程が終了した状態である。傾斜面72による生地誘導効果と結着効果により棒状食品生地21の下端に位置する切断面は包被され、(a)の状態に戻る。このように、分割食品23の両端(図3の紙面上では上下)の切断面の内、上方の切断面はシナモンシュガーF2による渦巻き模様を呈するように切断され、下方の切断面はシナモンシュガーF2が露出しないように外周の食品生地で被覆しながら押圧切断される。
【0021】
受け取りコンベア8のベルト81は、切断装置7の上下動に同調して上下動し、棒状食品生地21から分割生地23を切断する際、棒状食品生地21の下端部(包被された切断面)を支持しながら下降する。そして、分割食品23が切断成形された後、分割食品23を次工程に搬送する。この時、分割食品23の包被された切断面が下面に位置するよう載置されているため、シナモンシュガーF2が受け取りコンベア8に付着するようなことがない。
【0022】
さらに、分割食品23は、公知の移載装置などにより天板上に配列され、常法により発酵、焼成される。焼成される分割生地23は、その側面や底面が食品生地で被われているので、シナモンシュガーF2が漏出するようなことがなく、天板にシナモンシュガーF2の焼きつきを起こすことがない。なお、分割生地23を載置部としての天板に配置するにあたり、天板を切断装置7の下方に配し、分割生地23を直接天板に配列してもよい。また、分割食品23を載置部としてのアルミカップなどの容器に収容して発酵、焼成してもよい。
【0023】
焼成された分割食品23は、腰持ちのよいボリュームのある高品質の渦巻き模様を呈する巻き上げ食品となる。なた、シナモンシュガーF2による焼きつきがなく外観が綺麗である。また、渦状の食品生地同士が巻き上げ食品の中心に集合して結着しているので、食する際に巻きほどけがなく、はがれによる食べこぼしや手を汚すことがない。
【0024】
また、フィリング材Fとして流動性の高いジャムやクリーム等のペースト状食品F1を用いた場合においても、巻き込まれたペースト状食品F1が分割食品23から漏出することなく、分割食品23の巻き合わせ部分にほぼ均一に内在することが可能となった。
【0025】
本発明の実施の形態に係る巻き上げ食品の製造装置1の説明は、概ね上記のとおりであるが、これに限定されるものでなく、特許請求の範囲を逸脱しない構成において各種変更可能である。例えば、食品生地はパン生地に限らずパイ生地やデニッシュ生地のような積層生地でもよく、また、中華万生地などを用い蒸成による熱処理を行う場合であっても本発明の効果がある。また、切断装置7は、本実施例のごとく垂下した棒状食品生地21を水平方向から切断する装置に限らず、特開2004−8210号公報に開示されたような水平方向に搬送される棒状食品生地を鉛直方向から切断する切断装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る巻き上げ食品製造装置1の概要を示す上面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る巻き上げ食品製造装置1の概要を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る巻き上げ食品製造装置1に設けられた切断装置7による切断工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 巻き上げ食品製造装置
2 帯状食品生地
21 棒状食品生地
23 分割食品
3 搬送コンベア
4 吐出装置
5 散粉機
6 巻き上げ装置
7 切断装置
71 ブロック片
72 傾斜面
73 下面
74 エッジ部
75 凹部
79 開口
8 受け取りコンベア
F フィリング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した一定厚みの帯状食品生地を搬送する工程と、前記帯状食品生地の上面にフィリング材をほぼ一様に供給する工程と、前記帯状食品生地を一方の端部から幅方向に巻き上げて、前記フィリング材を渦巻き状に内在する連続棒状食品生地に巻き上げる工程と、前記棒状食品生地の軸に対し直角方向から切断して分割食品に分割する際、前記分割食品の両端の切断面の内、一方の切断面を前記フィリング材が露出しないように外周の食品生地で被覆しながら押圧切断する工程と、他方の切断面が前記フィリング材による渦巻き模様が露出するように切断する工程とを含み、さらに、前記食品生地で被覆された切断位置が下面に位置するよう載置部に載置する工程を含むことを特徴とする巻き上げ食品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法を用いて得られた巻き上げ食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−6825(P2007−6825A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193852(P2005−193852)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000115924)レオン自動機株式会社 (98)
【Fターム(参考)】